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ドラスレ! 8
とーる
http://blacktail.blog.shinobi.jp/
2010年4月29日16時11分18秒
第八話
「魔王退治と一緒に、行方不明の兄を探してもいるんですけどね」
そう言って笑ったアメリアというにーちゃんに、
普通はそれが一番の理由だろうと思いつつも何も言わなかった。
とりあえず治療の礼を言って、さっさとアメリアを追っ払うことにした。
もしかしたら正義がどーだの悪が何だのとごちゃごちゃ言って
譲らないだろうとも思っていたら、そういうことに関しては
どうも察しは悪くはないらしい。
にっこりと笑ったアメリアは、お休みなさいと部屋を出て行った。
「あー、面倒なことになったなー」
「リナ……」
じっとりと不満そうな目でガウリイお嬢ちゃんが睥睨するが、
俺はするっと無視した。
「それにしても、リナ、どうしてあんな無茶な値をつけたの?」
「じゃあもしも、俺があいつらに適正な値段で “もの” を売ってたら、
お嬢ちゃんは俺を褒めたか?」
ガウリイは苦笑して、首を軽く横に振った。
俺はそれに肩を竦めて笑い返しながら、ぐぐんっと腕を伸ばす。
「さーて、今日はもう寝るか。睡眠不足は成長と健康の敵だ」
言うと、ガウリイお嬢ちゃんも頷いて――。
俺は思わずお嬢ちゃんの行動を目で追う。
ガウリイお嬢ちゃんは部屋の扉を閉めて鍵をかけると、
すみっこの方に予備のシーツを広げてゴロンと横になった。
「……おーい、お嬢ちゃーん? ここは俺の部屋だぞー」
「知ってるわ」
「……」
思わず無言になる俺。
「また夜襲をかけられるかもしれないでしょ」
「けどこの部屋にいたって……」
「一人より二人の方が心強いでしょ? だってリナは私の護衛で、
私はリナの傭兵よ?」
いつからそんなことになったんだろうと俺は思う。
確かに俺を護衛と呼んでここまで引っ張ってきたのは
ガウリイお嬢ちゃんではある。
とはいえ、このほけほけしたお嬢ちゃんは、
本当に危機感ってものが欠落してるんじゃなかろうか。
「……分かった。ならベッドに寝ろよ、俺が床で寝る」
「私が押しかけたのよ、出来ないわ」
「はいはい」
これ以上の説得は無駄だと悟り、俺はお嬢ちゃんとベッドを挟んだ
反対側の床にマントを敷いて横になる。
すると、俺のそんな行動に気づいたガウリイお嬢ちゃんが
怪訝そうに問いかけてくる。
「ベッドで寝ないの?」
「ぬくぬくと眠れると思うなよ」
「……怪我してるのに」
「治った」
いつもの俺ならば、相手が男だろうと女だろうと構わず
ベッドを占領して眠っていたはずだった。
だがさすがに、お嬢ちゃんが相手であるからかそうするのが憚られる。
こういうこと考える俺って、本当に繊細だよな。
「おやすみ、お嬢ちゃん」
「お休みリナ。いつお嬢ちゃんって止めてくれるの?」
俺はお嬢ちゃんの言葉を無視して眠りに落ちた。
翌朝、俺たちは宿を出たあとすぐに町を出る。
何度も同じ町で、面倒な襲撃を受けるわけにもいかないからな。
街道を歩いてしばらくすると、やっぱりというか何というか
バーサーカーの一群に俺たちは囲まれた。
晴れてぽかぽかした陽気の下で争いごとってのは、
あんまり気分は良くないが仕方ない。
ちらりと視線を交わしてお嬢ちゃんと背中合わせになる。
そこに。
「ファイヤー・ボール!」
チュドゴンッ!
いきなり攻撃呪文が炸裂し、バーサーカーたちの間で爆発する。
そのあといくつかの爆発音が響き少しすると
バーサーカーたちは倒れ、中央には青年が胸を張って立っていた。
昨日の、アメリアという正義おたく。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ」
にっこりと笑ったアメリアはこっちに向かってくると、言ってのけた。
「僕と “正義” 、しませんか!?」
「はあ?」
思わず俺とガウリイお嬢ちゃんは目を丸くして異口同音。
正義しないかって、何をとっぴょーもしないことを
言ってくるんだ……このにーちゃんは。
本当に関わらない方が身のためな気がしてきた。
「お二人に会った時、僕には分かりました。何かがどこかで動いている。
それはどうやらお二人も関わっている――僕は最後まで見届けたい!
それが悪ならば鉄槌を下すのみ! すなわち、僕はお二人と旅を
共にする運命にあるのです!」
何だそれ。
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