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ドラスレ! 9
とーる
http://blacktail.blog.shinobi.jp/
2010年5月13日20時30分50秒
第九話
「正義をっ愛すーるっ、勇者たちっにーはっ♪」
「アメリア、それ何の歌?」
「 “勇者の祈り” という歌です!」
今日も今日とて。
朝一の襲撃を退けガウリイお嬢ちゃんのぽけぽけした雰囲気と、
アメリアの熱烈正義歌唱を耳にしながら、
俺たちはお昼すぎの街道をほてほてと歩いていた。
そう……。
何だかんだと騒いでた俺たちだったが、アメリアに正義を熱く
語られることにうんざりしてしまった俺とガウリイお嬢ちゃんは、
アメリアが同行するのを結局許してしまったのだ。
まあ、根は悪い奴じゃないからな。
重度の正義オタクなだけで。
俺たちの旅にアメリアが加わったことで、ロディマスたちの
襲撃パターンも変わってくるかと思いきや。
数日経った今でも、相変わらず同じように襲撃されている。
つまりロディマスたちとやらは、こっちに誰が加わろうと関係なし。
俺があいつらの狙う “何か” を持ってる限り、襲撃は続く。
そんな面倒なもんさっさと売っぱらえば……とも思ったりするが、
俺としては真相が知りたいのだ。
そう、ガウリイお嬢ちゃんやアメリアにはまったく言わないが
俺は奴らの狙いが何なのか気になっている。
たとえ雑魚ばかりといえど、俺たちに仕掛けてくる襲撃者を
せっせと集めるのは決して楽な仕事じゃないだろう。
何せトロルたちを集める労力もいれば、魔道士を雇う人件費だって
バカになるはずがない。
なのに、襲撃者の数も力も一向に減らないのだ。
そこまでして奪いたい、俺の持つ “何か” の意味とは?
――まあ、そんな風にカッコつけて考えてみたりしたが、
結局俺はゴタゴタに首を突っこまずにいられないタチなんだな。
郷里にいた時も、兄ちゃんにはさんざん呆れられてたけど。
そんな時、俺は耳をぴくりと動かし、同時にガウリイお嬢ちゃんが
ふっと立ち止まる。
歌うのを止めたアメリアは気配を変えた俺たちにきょとんとしてから
すぐに表情をきりっと引き締めた。
一拍のあと。
少し先の茂みから二つの人影……ロディマスとゾルフが出てきた。
宿屋で襲撃されてからこっち、あいつらが直接襲撃者として
前に出てくることはなかったから、何だか久々のような気がするな。
「よう、久しぶりだな」
「……ああ、そうだな」
俺が軽く挨拶すると、ロディマスは苦虫を噛み潰した表情で答える。
確かにあれほど襲撃を仕掛けた奴があっけらかんとしてちゃ、
そんな顔にもなるか……。
俺が肩をすくめると、隣のゾルフが俺を指差す。
「……悪いがそろそろ決着をつけたいんでね。例のものを渡して
もらいたいんだが、嫌だというなら直接奪い取ってやる。
さあ、どうするんだ、ソフィールとやら!」
――?
俺たち三人ははしばし顔を見合わせ。
俺とガウリイお嬢ちゃんが、同時にぽんと手を打つ。
誰のことかと思ったら、なんのことはない。
こいつ、俺が最初に襲撃された時に言ったでまかせの名前を、
未だに本名だと信じてたらしい。
てっきりロディマスから本名を聞いてるものだと。
首を傾げるアメリアは知らなくて当たり前。
あの時は一緒にいなかったんだから。
「俺は、 “リナ” だ」
「……は……?」
ゾルフが俺に突きつけていた指先をへたらせながら、
ぽかんと間の抜けた声を出す。
「リ、ナ。お前に最初に言ったのは、でまかせだ」
「えっと……」
「……言うのを忘れていたな」
リアクションに困って呆然と立ち尽くしているゾルフに、
ロディマスは頭痛がするのか、頭を押さえ、眉をひそめながら言う。
とりあえず、俺の考えた相手の気を殺ぐ作戦は成功だな。
……半分以上が “地” である、という説もあるかもしれないが、
それは禁句だ。
「名前なんざどうでもいいのさ」
後ろから別の声がして、するりと目をやる。
そこに立っていたのは一匹の獣人。
顔がほぼ狼だが体は人間、ナンセンスにレザー・アーマーを着込み、
ぎらりと輝くシミターを手にしてる。
……こいつ、絶対趣味悪い!
「要はこいつから神像をいただけば、それで終わりだろ」
「ディルギア!」
「あ?」
……その上、頭も悪いと。
ロディマスの叱責に、ようやく自分が何を口走ったか気づいたらしい。
「……ああ、そういやこいつらにモノが何か言ってなかったか……。
まあ、どちらにしろここで死ぬんだから同じことだ」
「勝手なこと言ってくれるよな」
俺はずいっと一歩前に出て、獣人に向かって鼻で笑ってやった。
NEXT.
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ドラスレ! 8-投稿者:とーる コメント:
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