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ドラスレ! 12
とーる
http://blacktail.blog.shinobi.jp/
2010年6月3日01時01分32秒
第十二話
「赤法師レゾ!」
俺はようやくこの僧侶の正体に気がついた。
アメリアも俺の言葉に息を呑む。
まあ見るからに盲目で赤い法衣を身にまとってる時点で、
早く気づけよ――とは俺も思うものの。
目の前の僧侶は苦笑するに留めるが、否定こそしなかった。
「そんな風に呼ばれることもありますね」
赤法師レゾ――。
その名の通り赤い法衣をまとい、多大なる霊力を持って諸国を回り歩き、
人々に救済の手を差し伸べているという現代の五大賢者の一人。
彼が伝説級の相手であるということは、街にいる五歳ほどの子供でも
普通に知っていることだ。
「では、俺たちも一緒に戦います」
「え」
俺の言葉に驚くレゾ。
すると、アメリアが横から割って入ってくる。
「リナさんの言う通りですよっ! そうと聞いて簡単に、
あとはよろしくなど言えるわけがありません! それこそ非道です!」
「……お心遣いは感謝しますが」
「いえ、万が一にでも魔王が復活しようものなら、それこそ人ごとでは
ありません。この私にも魔道の心得がございますし、このガウリイ、
アメリア、ともに力ある仲間です。決して足手まといになる真似は
いたしません」
とても困ったようなレゾに、俺は自信に満ち溢れたような
微笑みを浮かべながら胸に手を当てて言い切る。
隣ではアメリアが大きく頷き、ガウリイお嬢ちゃんはぽんやりしてる。
大きく息をついたレゾは、静かに頷いてみせた。
「分かりました。そこまで言われては仕方ありません。
共に戦いましょう……それでは “鍵” は」
「私たちにお任せ下さい」
俺のきっぱりとした言葉に、レゾは怪訝そうな表情をする。
俺は笑みのまま、言葉を続けた。
「このまま “鍵” が法師様に渡れば、奴らはまた作戦を立て替えて
くることでしょう。それでは私たちが囮になる意味がなくなって
しまいます――どうか、このリナをお信じ下さい」
見えないことは承知で、レゾの目の辺りをまっすぐに見やる。
深く苦笑したレゾはこの場で俺を説得しようとすることを諦めたのか、
分かりましたと頷く。
杖をついて、ゆっくりと法衣をひるがえす。
「では――くれぐれもお気をつけて」
穏やかにそう言い残して、レゾは茂みの奥へと進んでいく。
レゾの気配が俺たち以外全て消えたあと。
俺はようやく肩から力を抜いて、深く溜息をついた。
「す、すごいです! これは本当に悪が動きだしているんですね!」
「……まったく」
めちゃくちゃ興奮するアメリアはわあわあと騒ぐが、
俺としてはあまりの話の膨らみ方に疑問を抱くばかりだ。
俺たち魔道士はともかく、一般人にとっちゃ御伽話でしかない
魔王を復活させるだのと……何つー目的を持つ黒幕だ。
すると、置いてけぼり気味だったお嬢ちゃんがようやく俺の傍まで
歩み寄ってきて、くいくいとマントを引っ張る。
「リナ」
真剣な表情をしているお嬢ちゃんだが、俺はガウリイお嬢ちゃんが
何を考えているか――むしろ何が考えられないか分かっている。
ここまで長くもなく短い付き合いだったとはいえ、
それほどお嬢ちゃんに無関心だったわけじゃないからな。
「それで、何が分からないんだ?」
「……全部。」
そのあと、興奮するアメリアを差し置いて、俺はお嬢ちゃんにも
ちゃんと分かるような簡単な例えを使いながら、
魔王シャブラニクドゥのことやレゾについて話してやった。
それで本当に理解してくれたかは不明だが。
レゾのことを話し終えた時、お嬢ちゃんが俺のことを見つめる。
「うん、凄い人なのは分かったわ――でもレゾさんのこと、
リナはあんまり信用してなかったみたいだけど」
お嬢ちゃんが声を低めて、鋭いことを言う。
そのせいかアメリアは聞こえなかったらしいが、構わないだろ。
「本物だって証拠はないからな。ほとんど伝説に近い人だし」
「レゾの名を騙る、ゼル何とかの仲間かもしれないってことね」
「そういうこと」
「……そうすると、よく私を信用したわね?」
「してないかもな」
悪戯っぽく俺は言う。
「手厳しいわね」
「冗談だよ。こう見えても、人を見る目はあるつもりだからな」
「ありがとう、リナ」
背伸びして俺の頭をなでるお嬢ちゃん。
……普通、反対じゃないか?
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親記事:
ドラスレ! 8
-投稿者:
とーる
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Re:ドラスレ! 12
-投稿者:
kou
Re:ドラスレ! 12
-投稿者:
井上アイ
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