1.新規記事を投稿
2.コメントを投稿
3.戻る

ドラスレ! 14
とーる
http://blacktail.blog.shinobi.jp/
2010年7月9日16時51分03秒


 




第十四話





魚が岸へ上がるのを見たゼルガディスは、イラついたように舌打ちする。
ぺたり、と一歩前に進み出た魚は、ふとゼルガディスを見やる。
そしてゆっくりと口を開いた。


「ゼル……ガディス、ここで…何してる?」

「何でお前が……っ!」

「おい、この魚はお前の仲間なのか?」

「魚…などと呼ぶな。俺の名は……ヌンサ。お前が持つものを……
 取り返しにきた……刺客……だ」


俺が顔をしかめて立ち尽くすゼルガディスに問うと、
のっぺりとした感じで答えた魚こと、ヌンサ。

ふむ……?
ゼルガディスとヌンサの様子からすると、お互いこの場所に
いるはずじゃなかったってことか?

今まで明確な意思を持つ刺客たちで考えてみると、ディルギアとこいつは
何だかゼルガディスの配下っていう感じには見えないな。


「ゼルガ…ディス……お前やること…違う……お前の…命令は……」

「黙れ、ヌンサ!」


――命令?
俺は二人の会話にどこか違和感を覚えつつ、気づかれないように
戦闘体制を作る。
それにガウリイお嬢ちゃんとアメリアも、俺がそれを言わなくても
自分でちゃんと気がついたらしい。
お嬢ちゃんは俺の斜め前へ、アメリアは俺の横に並んで背後を警戒する。

ゼルガディスは誰かの命令を受けていた。
そう考えるとすると、ラスボスはゼルガディスじゃないってことか?
さっきも “その方がいいかもしれない” なんて言ってたしな。


「まあいい……おとな…しく例のものを……渡せ……」


ヌンサは溜息のようなものをついて、すっと前かがみになった。
刹那、背筋に嫌なものが走り、俺はその場を飛びのく。



ギィンッ!

ガキン!



同じく、鋼のぶつかる音が二つ。
目を向けてみると、お嬢ちゃんとゼルガディスが剣を抜いている。
だが、両者の剣がぶつかっているのではなく、
二人とも何かを払い落としたような構え方をしていた。

俺が先ほどまで立っていた場所には、何かが刺さっていた。
それは薄い楕円の形をしていて、掌ほどの大きさ。
おまけにぬらりとしている。

ガウリイお嬢ちゃんが、驚いたように顔を上げた。


「何、今のは!?」

「それは……俺のウロコだ……仕方、ない……こうなれば」


ヌンサはそう言うとポイっと手にしていた剣を捨てる。
そしてぐっと力をこめて――やばい!



ドドドドドドドドドッ!!



「うわわわわわわ!!」

「うわきゃーっ!!」


思った通り、ヌンサはミサイルのように間髪いれずに
己のウロコをこっちに向かって飛ばしてきた。

魚のウロコとはいえ、かなり硬い。
これで防がずにいようものなら、人間の肌などすっぱり切れるだろう。
かくいう俺も短剣で飛ばされるウロコを弾くのが精一杯で、
術に集中するのは無理がある。


「耐えろ!」


ウロコ攻撃の中、ゼルガディスが叫ぶ。


「もうすぐあいつは――」


ぴたりと。
ふいにウロコ攻撃が止まり、その場に沈黙が流れる。
眉をひそめてヌンサを見やれば、何故か冷や汗を流して
川の方へとゆっくり後ずさりしている。
するとゼルガディスがさっと一歩前に進み出て、剣を構えた。


「前にも言っただろう。そのウロコで攻撃と防御はできるが、
 失くなってしまえばただの魚だと」

「ま……待て……ゼルガ…ディス……お前は……その体を」


その言葉の先を、ゼルガディスはヌンサに言わせなかった。
お嬢ちゃんにこそ及ばないものの、俺よりは上だろう太刀筋で
ヌンサを一刀両断したのだ。

剣を振り払ってから静かに鞘に納めたゼルガディスは、
これで邪魔者はいなくなったというように、清々とした態度で
俺たちの方をゆっくりと振り返る。
そして――がくりと膝をついた。


「?」

「く……っ」


さっきまではマントに隠れて分からなかったが、
よく見れば脇腹の辺りが赤く染まっていて、心なしか呼吸も荒い。


「ぬ、ヌンサにやられたんですか?」


おそるおそるアメリアが問いかけるが、ゼルガディスは何も答えない。
ゆっくりと立ち上がろうとして、そのまま地面に崩れ落ちた。


「リナさん……」

「ったく」


困ったようなアメリアの視線を受けて、ゼルガディスに近寄ってみる。
一体全体、何がどうなってんだか……?





NEXT.
2.コメントを投稿
親記事: ドラスレ! 8-投稿者:とーる
コメント: Re:ドラスレ! 14-投稿者:井上アイ

3.ツリー表示
4.番号順表示