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ドラスレ! 17
とーる
http://blacktail.blog.shinobi.jp/
2010年12月18日21時01分55秒
第十七話
俺はかなりやりきれない空気に内心辟易しながらも、
つとめて明るい声で言う。
「……とにかく、これで大体のところは分かったな」
「ええ、そうね」
ガウリイお嬢ちゃんもひとつ頷く。
……いや、お嬢ちゃん、その言葉に俺は不安を感じるが。
すると今まで俯いていたアメリアが勢いよく顔を上げて、
ぎゅっと拳をかたく握る。
それを見た俺は顔をしかめた――これはまさか。
「おのれ、赤法師レゾ! 己が願いに他者を欺き、その果てに
魔王復活を目論むなどという何とあくどい所業! 何も知らぬ
皆々に賢者と崇められようとも、このアメリア、真実という
正義の下において悪の心根を決して許しはしません!」
「……!?」
「あー、あれはあいつの一種のクセだから。気にすんな」
「って……」
がっつりポーズを取りながら燃えているアメリアに、
目を瞬かせて驚くゼルガディス。
やっぱりこうなったかと思いながら、ぱたぱたと軽く手を振りつつ
俺は呆然とするゼルガディスにそう言う。
最近になってきてよーやく、俺はアメリアの『正義スイッチ』が
入る前の空気を掴めるようになった。
まあ、突発に入るってことも時々あるけどさ。
「ゼルガディスさん!」
「な、何?」
「たとえレゾが強敵であろうとも、僕とリナさん、ガウリイさんは
共に戦います! 貴女一人が適わなくとも、四人の力を合わせれば
きっと出来ることはあるはずです!」
破顔一笑。
そこに何の根拠もあるわけではないだろうに、アメリアは笑顔で
自信たっぷりゼルガディスに言い放つ。
束の間、呆気にとられていたゼルガディスが少しだけアメリアを
眩しそうに眺める。
まあ、今までのあいつの様子からじゃアメリアみたいな猪突猛進で
明るいタイプは周りにはいなかったんだろう。
そんなタイプが、アメリアの他にもいたらいたですごいが。
「それと、すみません。……勝手にフードと口布を取ってしまって」
「……ああ」
アメリアに言われたゼルガディスは、今初めて気がついたように
口元に手を当ててベッドの上にあるマントに目線を移す。
「……驚かせたようね。悪かったわ」
「はい……まさか貴女が女性だと思っていなくて。僕としたことが」
「……ん?」
マントを手に取って苦く笑うゼルガディスに、アメリアは肩を落とす。
だが、アメリアが悄然と言った言葉に、ゼルガディスは耳を疑い、
不思議そうな表情をして、眉をひそめた。
分かる、分かるぞ、お前の気持ち。
怪訝そうにするゼルガディスに気づかず、アメリアは頭を下げた。
「あんなにきっちりフードと口布をしていましたし……出来るなら
隠しておきたかったんですよね? すみませんでした!」
「……え、いや、別に性別を隠そうとしたわけじゃなくて……
私はこのキメラの体を隠していただけで」
「体を? どうしてですか?」
「は――」
「とても綺麗なのに……隠すなんてもったいないですよ」
晴れやかな笑顔を見れば、本気だと分かるアメリア。
絶句したあと、複雑そうな表情を赤紫に染めるゼルガディス。
思わず唖然とした俺。
ガウリイお嬢ちゃんは相変わらずのほほん。
そりゃあ、ゼルガディスとしては複雑だろうなあ……
あんな体にされたからこそレゾに復讐しようとしてきたのに、
その体を真っ直ぐに綺麗だとか言われたら……。
ぱくぱくと物言えぬ口を開閉していたゼルガディスだったが、
にっこりと笑っているアメリアに何を言おうと無駄だと
悟ったらしく、やがて疲れたように大きく肩を落とした。
俺はそれが会話の切れ目だと感じ、軽く背伸びをする。
「とりあえず、明日のために少し寝ておいた方がいいだろ。
ゼルガディスも少し寝たら? 疲れてるだろ?」
そう訊けば、ゼルガディスは軽く首を振る。
「確かに、疲れてはいるけど……起きたばかりだし、寝込みを
襲われたらことよ。ベッドの上ででも見張りをしておくわ。
――しばらくしたら起こすから、その時に替わってもらうわね」
「じゃあ、僕もお付き合いしますよ」
アメリアがそう言い、俺は手をひらりと振った。
「りょーかい。じゃあ先に、俺とガウリイお嬢ちゃんで休むから。
おやすみ」
「二人とも、おやすみなさい」
俺はマントを外して毛布代わりにくるまり横になり、お嬢ちゃんは
剣を抱えて壁に背もたれ、目を閉じた。
心地よい眠りに飲み込まれるまで、さしたる時間は必要としなかった。
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親記事:
ドラスレ! 16
-投稿者:
とーる
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Re:ドラスレ! 17
-投稿者:
kou
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