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白魔術都市狂想曲 124
フィーナ
2012年5月7日19時25分08秒
「そもそもこっちのほうに来たのは視察といったが、俺んところの眷属やらが魔族の脅威を実感せず過信してるんだよなぁ」
困ったことにな。と、ゆーうつそうに吐き捨てるようにつぶやいた。
「何か問題でもあるのか?」
「千年前からの交流が途絶え、忌まわしい神封じの結界に阻まれ、結界内と外――つまり俺らが統治する土地とで違いが生じた」
「違い?」
「技術の発展・・・まぁ、文化や環境における進化の過程だな」
あたしの問いに、ヴラはそうこたえた。
「あたしたち人間からしたら千年は長いわよ。
結界の中と外。別の過程をたどっても不思議じゃないわ」
「んー。そーゆーのとは少し意味合いが違うんだよなぁ。
この結界の中では、下っ端中の下っ端魔族による被害が俺らんとこより圧倒的に多い。割合で言ったら1:9だ」
「そんなにっ!?」
思わず声を上げるあたし。
にわかには信じられない話ではある。
「それには勿論いくつか理由がある。一つは俺ら竜王の存在」
「まあ、それは妥当な線ね」
「それとこれが大半を占めていた理由なんだが・・・・・・
物事や事象には、表や裏といったふうに、それに伴う二面性がある。
たとえば――壁についてはどう解釈する?」
試すような口調――いや、実際試しているのだろう。
「壁・・・ね」
「そう。壁だ」
「ここいらにある建築物とか、通路の壁とかじゃないよな」
ガウリイはそうはさんだが、それも一つの答えであり役割であることには違いない。
「質問の仕方を変えよう。壁の役割はなんだとおもう?」
あたしはヴラのセリフから、壁の役割についての表と裏。
すなわち、壁についての二面性をこう答えることにした。
「外的から身を守るもの。逆に危険なものを閉じ込めるもの」
「ほう・・・」
面白そうな、満足そうな様子で笑みを浮かべた。
「シャブラニグドゥの腹心たちが張った結界は、目には見えない『壁』の役割を果たした」
・・・・・・なるほど。
「魔族の視点から言えば、水竜王の顕在時は後者。それ以降は前者といったように壁の役割が変容したってことね」
「御明察。頭の回転も悪くない」
それは何の他意も感じられない、純粋な賞賛の言葉だった。
今の発言から、あたしはある確証を得た。
やはりヴラ――火竜王が結界の中へ入ってきたのは、観光の意味合いが強いといっていたが、ヴラ本人が言うように視察の意味も込められていたのだ。
「それで? あたしたちはあんたたち竜王・・・いえ、竜王の眷属からみてどう映るとおもう?」
我ながら意地の悪い聞き方をしてみる。
「・・・・・・あー。やっぱこの隔離された空間といい、あからさまだったか」
「ヴラが気にすることはないわ」
バツの悪そうな様子で言うヴラに、あたしはそういってやった。
ガウリイは話がつかめず、不思議そうな表情でこちらを見ている。
「ここにはいない火竜王本人も、どちらかというと放任主義者みたいだったし」
「まぁ。この空間は放っておいても、そのうち切れるから。
・・・・・・ああ時間のほうは、あちらのほうは全然経過してないから安心していいぜ」
「なあ、リナ。もしかしてここって魔族の結界のようなところなのか?」
「そうよ」
アストラル・サイド
魔族と同じように、 精 神 世 界 面 。
そして物質世界に、その身を深く置く存在である以上、空間を歪め、あたしたちだけをここに招待するのはそれほど難しいことではないだろう。
「なんだってそんな、まわりくどいことしたんだ?」
「あー。尻拭いはてめぇでやれっつっても、きかねぇ若い連中が多いっつーか」
「・・・・・・中間管理職みたいなセリフね」
「否定はできんなぁ」
「つまりはどういうことだ?」
「ぶっちゃけていうと、トチ狂った竜族がケンカ売りに来るかもしんないけど、俺は一切ノータッチでノーコメントっつーことだっ!」
「なにぃぃぃぃっ!?」
「ぶっちゃけすぎだわぁぁっ!」
ガウリイの驚愕の声と、あたしのツッコミの声がその場に響いたのだった。
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白魔術都市狂想曲 111-投稿者:フィーナ コメント:
なし
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