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ドラスレ! 27
とーる
http://blacktail.blog.shinobi.jp/
2012年5月19日22時09分54秒


 




第二十七話





数日のあと――。
俺たちはアトラス・シティの目前まで来ていた。

遠くに見える街並みに目をやりながら、俺は声を上げる。


「おー、見えてきたな。アトラス・シティ」

「本当ですね!」

「これで今夜はうまいものが食べられて、ふかふかのベッドで
 ゆっくり眠れるってもんだ」


何だかんだで野宿ばっかりだったもんなあ……ここ最近……。
特に襲撃が頻繁になってきたあとは。
やっぱりいち人間としては、うまいものをたくさん食べて、
ぐっすりと眠るのが何より大事なことだろ。

さすがに俺の髪の色はまだ、もとの栗色には戻ってはいないものの、
疲れの方は完全に回復している。
ガウリイお嬢ちゃんがくすりと笑った。


「えらく長い旅になっちゃったわね」

「そうだなー」

「さて――それじゃあ私は、そろそろこの辺で退散させてもうとするわ」

「――え?」


唐突なゼルガディスの言葉に、俺とお嬢ちゃんの声がハモる。
ゼルガディスは肩をすくめてみせた。


「私は今までにも色々やらかしてきてるし、顔もそこそこ知られてる。
 ああいう大きな町はちょっとね。――目立つ風貌だし」


ああ、確か『白のゼルガディス』とか言ったっけか。
俺は頭の片隅にあった情報を思い返し、頷いた。


「そっか……じゃあ、どうすんだ? お前はこれから」

「ひとまず、ロディマスとゾルフを探して合流しないといけないわ。
 それからは――」

「僕も一緒に行こうと思います」

「えっ?」


にっこりと笑うアメリア。
今度は俺とお嬢ちゃんとゼルガディスの声がハモった。

ぎょっとしているゼルガディスの驚きからして、そういうことは
何も相談してなかったことらしい。
ただの思いつきなのか、考えていたことなのか――。
いやまあ、確かにアメリアは俺たちの方についてくるもんだと
思ってたけど……何となく……。


「確かにゼルガディスさんはお強いですけど、女性の一人旅は
 何かと危ないですし。せめてお二人と合流するまでは、
 ゼルガディスさんにお供させて下さい!」

「ちょっ、待って――そんな」

「ね、ゼルガディスさん」


慌てて断ろうとしたゼルガディス。
だが、アメリアの素晴らしく輝いた笑顔を向けられてしまう。
あまりにも純粋なそれにゼルガディスは何も言えなくなり、
さすがに負けたようだった。

あーあ……ああやって、いいひとっぷりを全面に押し出されると、
なかなか断れないんだよなあ……。
俺もそんな経験がある。

大きな溜息をついたあと、ゼルガディスは俺の方を振り返った。


「それで、どうすんだ?」

「一人できままに――とは言えなくなったみたい。とりあえず、
 何とかやっていくわ。貴方たちには色々と迷惑をかけたわね……」


照れているのか、少しだけ視線をずらす。


「お互い、生きていたら、またいつかどこかで会いたいものね……
 まあ、貴方たちには迷惑かもしれないけど……」


俺はその前に右手を差し出す。
ゼルガディスも微笑し、右手で優しくにぎり返す。


「またいつか――な」

「――またいつか」


不思議と暖かな右手を離す。


「リナさん、ガウリイさん、お元気で! また会いましょう!」

「ゼルガディスもアメリアも元気でね」

「ええ、貴方たちも――」


ゼルガディスはそう言うと、そのまま背中を向ける。
アメリアは笑顔で大きく手を振ったあと、ゼルガディスのあとを追った。





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親記事: ドラスレ! 16-投稿者:とーる
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