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    タイトル : ドラスレ! 4
    投稿者  : とーる
    URL    : http://blacktail.blog.shinobi.jp/
    投稿時間 : 2010年2月16日22時39分46秒

 




第四話





正直言って、このミイラ男の目的は完全に俺だろう。

指を差しているのは間違いなく俺だし、該当する方向にいる
人間はもう一人いるが、残念だがどう見てもガウリイお嬢ちゃんを
男に見立てることは不可能。
鎧を着込んでたって、美少女ぶりが消えるわけじゃない。
トロルを操っているということは、このミイラ男は魔道士らしい。


「うーん、人違いですよー」


これは関わっても面白いことにはならないだろうと思った俺は、
とっさにサラリと髪をすいて爽やかな笑みを浮かべてみせる。


「俺、ソフィールって言います。きっと貴方たちの探している
 人とは……」

「やかましいっ! 名前など知るか、気持ち悪いっ! とにかく
 お前――六日前、盗賊のアジトからごっそりお宝を荒らして
 いった奴だ!」


おっと。


「それにアジトで俺に大怪我を負わせたお前のことを、忘れるわけ
 ないだろうが!」

「あらあらあら……リナ、そんなことしてたの?」


ガウリイお嬢ちゃんが呆れた目で俺を見る。


「ま、それはあとで説明する。今はとりあえずこいつらを……」


俺は肩をすくめながらお嬢ちゃんにそう言い、トロルたちと対峙した。

トロルは頭は人間よりもでかく、パワーもある上に俊敏。
一番やっかいなのはその再生能力で、生半可な傷だとすぐに再生する。
つまり、倒すなら一撃必殺。
とはいえ……派手な攻撃呪文だと店の中はメチャクチャになるし、
関係のない他の客をも巻き込むことになる。


「よーし、分かった。ケリをつけよう、表に出な」

「いやだ!」

「あいやあっ」


ま、まさか断られるとは……。
こいつ、怒ってるわりには案外冷静なのか?

俺が別の手を考えようとすると、ミイラ男は鼻で笑った。


「あの時、奪っていったお宝を全て返すなら、それでよしとするが?」

「冗談じゃない。人のものをタダで持っていこうだなんて
 あつかましいにもほどがあるぞ、この盗っ人魔道士」

「リナだって盗っ人魔道士じゃない」

「やかましーっ! 俺は悪人からしか盗んないからいいんだよ。
 “悪人に人権はない” って言葉もあるんだ」

「……聞いたことないけど」


俺はトロルたちに臨戦態勢を取りながら言う。

いや、この言葉は本当に存在する。
俺の郷里の方では、よく頻繁に使われてる言葉なんだからな。
俺は郷里でそれを聞きながら育ち、旅に出るまでずっと過ごして来た。
きっと郷里に住む皆からにしてみれば、何を当たり前のことを
言ってるんだと口をそろえるだろうに。


「ええい、やれいっ!」


ミイラ男の合図で、トロルと俺は同時に動く。
トロルの武器は鋭い爪とパワー。
あまりそーぞーしたくないが、いくら俺の服が魔道士特有の
護符になってるとしても、まともにくらったら大怪我じゃすまない。
一発ぶん殴られれば、首くらいあっさりへし折れる。

だが、俺は負けるつもりはこれっぽっちもない!

俺はトロルたちの攻撃を軽々と避けつつ、必ず全てのトロルに
一度は手を触れるようにして間を抜けていく。
そうして全てのトロルをタッチし終えた俺は、トロルの間を
一周するようにしてお嬢ちゃんの所へと戻ってきた。


「あら、お帰りなさい」

「ただいま」


さっきまで呆れたような目をしていたガウリイお嬢ちゃんは、
もういつもと同じのほほん状態に戻っていた。
護衛だ何だのと言ってたわりに、何にもせずにじーっと見てるだけ。
まあ、でしゃばられても少しばかり勝手が悪いけどな……
お嬢ちゃんの腕はともかく、見た目は美少女なんだし。

ちなみに、トロルの数は減ってない。
早い話が一匹も倒してない。


「おのれ、小僧! ちょこまかと……」


焦れてきたのか、ミイラ男が苛立った声を上げる。
トロルにいちいち相手してたら、俺が疲れるっての。


「ガウリイお嬢ちゃん! トロルを傷つけることって出来るか?
 どんな小さいのでもいいから!」

「……ええ、分かったわ」


俺の言葉に目を瞬かせたガウリイお嬢ちゃんは、テーブルに乗ってた
おつまみの皿に手を伸ばし、木の実を掴む。
次の瞬間、その手が動いた――ように見えた。


「ぎっ!」

「がうっ!」


この美少女から放たれたとは到底思えないほど、見事なつぶて。
鋭く飛んだ木の実は、トロルたちの固い皮膚を突き破った。
へー、やるじゃん。





NEXT.


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親記事コメント
なし ドラスレ! 7-投稿者:とーる
Re:ドラスレ! 4-投稿者:井上アイ
ドラスレ! 5-投稿者:とーる
ドラスレ! 6-投稿者:とーる