. ツリー表示 . 番号順表示 . 一覧表示 . 新規投稿 .
質問がある方はこちらの掲示板へ ←ここをクリック    読みまくれ1  読みまくれ2  著者別  練習
カテゴリー別検索 ツリー内検索 過去ログ検索 ▼MENU


    タイトル : ドラスレ! 6
    投稿者  : とーる
    URL    : http://blacktail.blog.shinobi.jp/
    投稿時間 : 2010年2月17日20時56分53秒

 




第六話





俺とお嬢ちゃんは同時に動く。
俺は荷物をベッドの裏手にさっと隠し、ガウリイお嬢ちゃんは
ドアの傍に張り付いてノブに手をかける。
それを確認してから、俺は問う。


「誰だ?」

『――あんたと商売がしたい。あんたの持っているあるものを、
 そちらの言い値で引き取ろう』

「……怪しいな」

『ああ、確かにかなり怪しいだろうな。だが、とりあえず今は危害を
 加えるつもりはない』


あっさり怪しいことを認めた相手に、俺は呆れる。


「入ったとたん、つもりが変わるってことは?」

『あんたは不可思議な術を使うだろう?』


前の町でトロルを倒した時に使った術のことを言ってるのか、
相手の声には少しばかり刺が含まれていた。
そりゃあ、確かに嫌だろうけどな……仲間があんな攻撃にやられたら。
夢にも出てきそうだし。


「言っとくが……変なマネしようとしたら、ありったけの攻撃呪文
 叩きこむからな」


どうやら俺が相手をさっさと追い返すと思ってたらしい
ガウリイお嬢ちゃんが、驚いたように俺を見る。
俺は軽くウインク一つして、ベッドに深く座りなおす。


「部屋に入れるつもり?」

「大丈夫さ、頼もしい傭兵がいるからな」


俺が頷いてみせると、ガウリイお嬢ちゃんは一瞬だけためらった様子を
見せたが、ゆっくりとドアを開いた。
部屋に入ってきた男は二人。
ローブを深めに羽織るがっしりとした体つきの中年男と、宿屋に
トロルたちを連れて殴りこんできたミイラ男。
ガウリイお嬢ちゃんが後ろ手にドアを閉めると、ミイラ男がびくりと
反応し、中年男は少しだけお嬢ちゃんを見て俺の方へ視線を戻す。
二人はちょうど、部屋の真ん中で立ち止まった。
俺がミイラ男を見たのに気づいたのか、中年男が先に口を開く。


「すまん、こいつはゾルフという。責任感は強いが、先走りも多くてな」

「――まあいいさ。その分、値段に上乗せすればいいし」


言いながら、俺はさりげなく中年男の腰に視線を移す。
どうやら中年男は剣士であるらしく、ローブの下から少しだけ
剣の鞘がはみ出しすのがちらちらと見えている。
きっとお嬢ちゃんも、そのことには気がついてるだろう。


「……ふむ。では先に手に入れた品物それぞれに値段をつけてくれ。
 欲しいものを言い値で引き取る」

「へえ、なるほどな」


つまり、向こうが手に入れたい品物はこの時点では明かさない。
欲しがっている品物を知った俺が、金額をふっかけたり、
好奇心で手離さないことを考えてるわけだ。
見た目や雰囲気からしてあの盗賊の仲間ってわけじゃなさそうだが、
ちゃんと考えてるもんだ。


「さっそく商談に入るか――まず、ナイフが……」


俺が次々と品物に値段をつけていくと、部屋の中の緊張感が薄れた。
中年男が大きく目を見開き、ゾルフが引きつった顔で後ずさり、
ガウリイお嬢ちゃんはあんぐりと口を開く。

……たかだか相場の百倍だったり、城がまるごと買えるぐらいの
値段やそこらがつくことぐらい、ちょっとは予想しとけよ。
いや……無理か……?
ははは。

俺が中年男を見据えると、中年男は大きく溜息をついた。


「……交渉決裂ということか……。こちらに手を貸せば、一年、いや、
 半年ほどでその値の三倍を支払うと言ったとしても、その様子では
 受け入れないだろうな? 若いの」

「残念だな」


今言った金額が、半年で三倍になって返ってくるなんて信じられない。
それがもしも本当だったとしても、俺たちに支払われるのは
ヤバイ報酬であることは間違いないだろうからな。


「……やはり、力ずくか」


戦闘態勢に入る二人に、ガウリイお嬢ちゃんが俺を睨んでくる。
あー、はいはいごめんなさいよ、簡単に部屋に入れて。
とはいっても、トロルのようなうざい手下もなく、この二人だけが
相手なら俺はそれほど心配もしてないんだけどな。
ベッドから俺も立ち上がると、ゾルフが少しだけたじろいだ。


「ちなみに俺は手加減知らずだからな、おっさん」

「……ふっ……ロディマスだ」


堂々と胸を張って公言してやった俺に向かってニヤリと笑い、
中年男は律儀にも名前を名乗ってから剣を構える。
ドアの前に立ちふさがってるガウリイお嬢ちゃんに向けて、
ゾルフもゆっくりと手を構えた。

ガラン、と中年男が抜き放った鞘が床に落ちる音とともに、
部屋の全員が動きだす。

俺は間合いを取りながら、じわりじわりとつめ寄ってくる中年男を
視線で威圧しながら、口の中で呪文を唱えた。
そして、すぐさま――。





「――お待ちなさい、悪の手先よ! そこまでにするのです!!」





NEXT.


コメントを投稿する



親記事コメント
ドラスレ! 4-投稿者:とーる Re:ドラスレ! 6-投稿者:井上アイ
Re:ドラスレ! 6-投稿者:kou