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    タイトル : 白魔術都市狂想曲 123
    投稿者  : フィーナ
    投稿時間 : 2012年4月28日19時09分47秒

「んー。やっぱ人間の作ったものが媒体じゃ、これが限度かねぇ」

「あんた・・・・・・もしかしなくても、ヴラなの?」

「おうよ!」

こきこき首を鳴らしながら、ベッドの上――正確に言うとアレンの胸の辺りでふんぞりかえるヴラ。

ただその姿がどう見ても、

「・・・・・・トカゲ?」

「トカゲだよなー」

そう。

あたしたちの目の前に現れたのは、体長十センチほどの赤いトカゲ(断言)である。

「トカゲいうな! わかってても腹立つわ!」

器用に尻尾をこちらにびしぃっ! と突き出し抗議の声を上げるヴラ。

「どうみたってトカゲじゃないか」

抗議の声も何のその。

ガウリイはのほほんと頬をかきながらそういった。

「竜王目の前にして、そーゆー酷い発言する人間初めて見たぞ」

「駄目よガウリイ、そんなにボロクソいっちゃあ。
こんなんでも、いちおーカミサマとか呼ばれてる存在なんだから」

「・・・引っかかる言い方だがまぁいっか」

「爬虫類の王様でもあるんだから、もうちょっと敬うフリとかしなさいよね!」

「前言撤回! てめぇの発言のほうが酷いわっ!」

ガウリイのフォローにはいったあたしに、なぜかヴラが噛み付いた。

・・・・・・ふむ。

せめてサラマンダーの上位種といったほうがよかったかもしんない。

「もうなんでもいいや。時間が押してるんでサクサク用件いくぞ」

「用件?」

オウム返しで尋ねるあたし。

「いまお前らの前にいる俺は、そのマジック・アイテムを媒体に具現化した分体みたいなもんだ」

「じゃあ本物のあんたは」

「とっくに他の地にいる」

ガウリイの問いに、ヴラはそう答えた。

「ってことは、いまあたしたちの前にいるあんたは、ヴラの残留思念ってこと?」
          俺                                                       この俺
「少し違うな。 本体 の意思や思考を同時に共有しているが、火竜王とは異なる意志を持つのが マジック・アイテムから具現した姿 だ」








ヴラはおもむろにアレンの頭のほうまで近づき、額同士を重ねるように合わせた。

「・・・・・・なにやってんだ?」

「巣くっている呪いの状態を検索してんだよ」

「一瞬でできないの?」

「本体ならできるが、そもそも力は使わないぞ」

「なんでだ?」

ガウリイの質問に、ヴラはその状態を維持したまま

「神の力はそれ自体が強大な力だからさ。湖に一石を投じてできる波紋のように、周辺に良くも悪くも影響を与えちまう――姿に関してもそうだな」

「姿って?」

「地上に降りる際は、様々な制約と多くの制限をかけて人の姿で降り立つ。理由は以下同文」

「大変なんだなー」

他人事のように言うガウリイ。

・・・・・・実際他人事だが。

「・・・魔族の力に対抗する力は何だと思う?」

唐突に放たれた問いに、あたしはしばし考えて、

「・・・・・・魔族の力を超えるには、それより高位の魔族か、神の力をもってするのみ」
                 クレアバイブル
以前ある事情で知りえた 異 界 黙 示 録 よりもたらされた知識を答える。

「そう。そして魔王の力に対抗できるのは、俺たち竜王と呼ばれる神の力あるいは――すべての混沌を生み出せし金色なる母なる存在」

アレンと額を合わせながらそういったヴラの視線だけは、射抜くようにこちら――あたしをみていたのだった。


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白魔術都市狂想曲 111-投稿者:フィーナ なし