タイトル : 白魔術都市狂想曲 127
投稿者 : フィーナ
投稿時間 : 2013年9月25日13時04分26秒
王宮内にある不透明な部分は、決して表に出てくることなく、彼の身柄は身内のものが引き取ることになった。
そこでもまた、セイルーン内で養生させるべきだという意見が出てひと悶着あった。
(意訳)自国で監視し、手元においておきたい
ならば誰の手元に? と、争点がすりかえられ、ならば我も我もと名乗りを上げはじめ・・・・・・収拾がつかなくなりそうな論争が起きたようだが。
そこはフィルさんの「家族や身近なものの傍の方がリフレッシュできるだろう」と、いう一言でその場はなんとか収まった。
収まったものの、それはフィルさんの言葉に胸を打たれてという心温まる理由ではなく。
病状に臥せっている、エルドラン現国王の代理で政務をこなしている第一王位継承権の発言だったからに他ならない。
ほとんどの国が王制を敷いているのは、あたしたちこの世界の住人なら誰でも知ってる周知の事実。
フィルさんは代理とはいえ、国内で最大の発言権を持つ。
例えばの話だが、いくら公爵の位を持つ発言権の高い貴族であろうと、フィルさんの決定に真っ向から逆らう意見を発したらどうなるか・・・・・・
まあ・・・・・・碌な目にあわないわな。
ともあれ、アレンの引渡しは近いうち内密に行われる。
ゼルガディスは、不測の事態に備えその護衛として、しばらくセイルーンに留まるそうである。
アレンの他国への引渡しが、これほど早く決定されたのには理由がある。
そうするほどの事態が、これまでの過程の中であったからなのだ。
いくら国の決定とはいえ、不穏分子は排除すべきだという過激派はやはり存在する。
・・・・・・現に時折、刺客が送り込まれたし。
そのときのことを思い出すと、柄にもなく憂鬱な気分になった。
場所は人目がそれなりにある王宮の中。
談笑していた文官や貴族たちが次々と倒れていった。
どうやら飲んでいた香茶のなかにしびれぐすりが入っていたらしい。
暗殺者たちが殺到し、その場はからくも迎撃・撃退したものの、暗殺者の数名はあたしたちにはめもくれず、しびれて動けない彼らを手にかけようとしたのだ。
彼らはアレンを擁護していた派閥で、アレンの知識や応用力を高く評価していた。
一人ならともかく、彼ら全員をかばいながら戦うのは、さしものあたしたちも厳しく、防戦一方にならざるを得ない状況だった。
正規の兵士たちが機転を利かし、動けない彼らを一箇所に集めてくれなかったら正直危ない場面がいくつかあった。
襲撃の報せを受け、王宮は貴族たち暗殺の可能性の危険を重く受け止め、二の舞を踏まぬように出した結論がそれだった。
ヴィジョン
王宮から魔道士協会に 隔 幻 話 によるつなぎをつけ、アレンの身内がいるレイスン・シティに連絡を取り。
そして、都合のついた更に数日後。
「そんじゃ、いこっかアレン君」
「う?」
にっこにこと、自然なほど人好きのする笑顔で、アレンに語りかける壮年の男性。
「うん。君が根回しをしてくれてたおかげで、僕も自由に動くことができた」
「うーあー」
わしゃわしゃとアレンの頭を撫で回し、彼は頬を綻ばせた。
「さて、ひさしぶりだね」
こちらに視線を向け、先ほどアレンに向けた柔らかな笑みとは違う。
不敵ともいえる笑顔を目の前の男は浮かべた。
「久しぶりですオリヴァーさん」
「どうも」
そう。あたしたちの前にいるこの人は、アレンの親戚でありマジック・アイテムを扱っている商人のオリヴァー・ラーズそのひとだった。
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