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35218 | ドラスレ! 19 | とーる URL | 2011/5/30 17:18:47 |
記事番号35207へのコメント 第十九話 「……さあ」 氷の笑みをはりつかせたまま、ゼルガディスは言う。 「早いとこ見せてもらおう。お前の力ってやつを。――それとも 今ので腰でも抜かした?」 「……さすがに“レゾの狂戦士”だけのことはあるな。 貴様に精霊魔術がある限り、この俺に勝算はないか……」 「へえ。それじゃあまるで、剣なら私に勝てるとでも?」 「そう言ってるのさ」 獣人は背負ったかなり長めのシミターをズラン、と抜いた。 巻き込まれるのはごめんだと、俺はさっさと身を引く。 ついでに、止めようとするアメリアも。 ガウリイお嬢ちゃんは剣という言葉が出た時にはすでに、身を引いていた。 お嬢ちゃんは俺たちとは違ってれっきとした剣士であるがゆえ、 ゼルガディスたちの戦いに手を出そうとはしないのだろう。 「リナさん、ゼルガディスさんがっ!」 「あっちは大丈夫だろ。アメリア、俺たちはこっち」 「え?」 トロルの残骸の向こう側に、初めて見る顔がいくつかある。 うち一人は明らかに魔族の奴。 ディルギアとトロルたちを俺たちに向ける第一軍とするならば、 魔族と『その他大勢』がいる第二軍ってことか。 「……たいそうなお出迎えね」 ガウリイお嬢ちゃんが剣を構えなおしながら、その軍勢を見据える。 ちらりと後ろを見れば、未だ剣をぶつかり合わせるゼルガディスたち。 とはいえ、俺の目から見ても腕はゼルガディスの方が上なので、 それほど長くは続かないだろう。 逆に言えば、魔族のいる第二軍の方がやっかいだ。 おーし、やったるわいっ! 俺は口の中で、低く呪文の詠唱を始めた。 「ファイアー・ボール!」 俺の放つ一撃が、戦闘開始の合図になった。 完全に不意をついた形となり、オーガたち『その他大勢』を炎に巻き込む。 「ディグ・ヴォルト!」 「ダム・ブラス!」 一気になだれ込んで来る敵に、俺とアメリアが攻撃呪文を叩き込む。 それを逃れた奴らをガウリイお嬢ちゃんが斬っていく。 一応俺は先頭の魔族を狙ったのだが、あっさりと交わされてしまった。 代わりに背後にいたバーサーカーを一人葬るが、これはかえって 魔族の注意を俺に引きつける結果になってしまった。 案の定、魔族は俺の方に進路変更。 えーい、来るなら来い! 「エルメキア・ランス!」 「かあっ!」 ギリギリの所で攻撃を避け、速度を増した魔族と間合いが一気に詰まる。 下級とはいえ、さすがは純魔族。 その掌から炎のムチが伸び、俺は冷気の呪文を放って空中で薙ぎ払う。 しばしの距離を置いて、対峙する。 「……このゾロムにちょっかいを出すとは、いやはや元気のいい 坊ちゃんじゃ」 「……このリナを相手にするとは、いやはや命知らずな魔族だな」 負けじと言い返す俺に、ゾロムは低く笑う。 ぶっちゃけた話、ここで俺の大得意の魔法をお披露目して すぐさまこの戦闘を終わらせてもいい。 ただそうなると魔法の威力上、『その他大勢』だけではなく、 ガウリイお嬢ちゃんたちをも巻き込むことになる。 そしてここを退けたとしても、レゾが遅れて登場した場合を考えると 魔力の残りがまずいことになる。 ……はあっ。 こんなことならラ・ティルトを真面目に習得しとくべきだった……。 「わしから行くぞ!」 ゾロムの額がぱっくりと割れ。 そこから何条かの銀光が俺に向かって駆る。 ――早い! キィン! 銀の針が乾いた音と共に地に落ちる。 素晴らしいタイミングで剣を振るうは―― 「大丈夫? リナ」 ウインク一つ。 「ガウリイお嬢ちゃん!」 「ほう……あの軍勢を抜けられる仲間がいたか」 ゾロムの問いに、お嬢ちゃんは首を振る。 「『仲間』じゃないわ。私はこの人の『傭兵』よ」 「ふむ……まあ、何でもよいわ。とにかくわしとお前は敵同士、 ということになるのだろう?」 「そうなりますね、ご老体」 「なら、ぬしから倒してやろうぞ」 「できるかしらっ!」 言うなり、お嬢ちゃんが走る。 ゾロムから繰り出される炎のムチと銀の針をたやすく交わし、 一気に間合いを詰める。 剣が一閃した。 速い!! NEXT. | |||
35217 | ドラスレ! 18 | とーる URL | 2011/5/30 17:09:20 |
記事番号35207へのコメント 第十八話 俺は目を覚ました。 眠ってからそれほど時間は経ってないようだ。 陽の傾き具合と体の回復の度合いとで、それくらいは分かる。 それに、見張りの交代に起こされたわけでもない―― 俺が目を覚ましたのは、小屋を取り巻いている殺気のせいだ。 それも一人二人じゃない。 俺も十人くらいまでなら、魔道を使わなくても相手の気配だけで 人数を言い当てることが出来るが、今は出来ない。 すなわち、敵の数がそれ以上だということ。 「囲まれたよ」 あっさりとゼルガディスが言う。 別段、声を殺そうなどとはしない。 まあ、居場所が知られているのに、そんなことをしても全く無駄だからな。 「相手は誰でしょうか?」 「トロルが二、三十匹ってとこね。レゾは来ていないようだし、 何とかなると思う」 アメリアの問いに、気楽に答えるゼルガディス。 しかし、本当に大丈夫なんだろーか。 先ほどよりはだいぶ回復したらしいゼルガディスは立ち上がり、 マントを羽織って真っ先に小屋の外へ向かう。 俺たちもすぐに後を追って外に出た。 「さあて。――決着をつけようぜ、ゼルの姐御」 聞き覚えのある声がした。 ゼルガディスの言う通り、木々の間にちらほらとトロルたちの姿が 見え隠れしている。 俺は意識して大きな声を出す。 「よう、ディルギアさん。大変だな、わざわざこんな所まで遠征とは」 俺の言葉に、一人の獣人が意外と近くの木の陰から現れた。 「名前を覚えておいてくれたとは……こいつぁ光栄だな」 「忘れるかっ! ゼルガディスから聞いたぞ、今までさんっざん ザコけしかけてきたのはお前だとっ! この恨み、必ずこの俺に代わって ゼルガディスが晴らしてくれるに違いない! さあ行け、ゼルガディス! 世界が君を待っている! いよっ、美人っ! がんばれっ!」 「……あんた……その性格、何とかならないの……」 「なんない」 ゼルガディスがジト目でこっちを見るが、俺はきっぱりと言う。 別に好きこのんでやってるわけじゃない。 これは、あくまでも敵の気を殺ぐための言動だ。 ……本当だっつーの。 「――ディルギア、貴様、この私に忠誠を誓ったのではなかったのか?」 冷たくゼルガディスが言う。 言葉の奥底に、ごりっとしたコワイものが潜む。 しかし、その言葉を獣人は鼻先で笑い飛ばした。 「俺が忠誠を誓ったのは“ゼルガディス”じゃねえ、“赤法師が創った 狂戦士”に対してだ。貴様がレゾ様を裏切った以上、もはや 俺にとって貴様は敵以外の何者でもないわ!」 「……ほう……」 獣人の笑い声に、すうっとゼルガディスの目が細まった。 こーゆー表情をするとこの女、いかにも“魔戦士”といった風である。 「獣人風情がこの私に勝てるとでも、思っているのではないだろうな……」 「ではその獣人風情の力、とくと見せてやる。――かかれ!」 吠えるディルギア。 武装したトロルの群れが、一気に間合いを詰めてくる。 ――馬鹿が。 ゼルガディスは小さな笑みを浮かべながら、右手を高々と差し上げた。 目には見えぬ何かを右の掌に持ったまま、それを勢いよく大地へと 叩きつけるような動き。 「ダグ・ハウト!」 げげっ! すぐに察したアメリア、そして俺は剣を構えていたガウリイお嬢ちゃんの 手を引っ掴んで、慌ててゼルガディスの傍に駆け寄る。 水面のごとく大地が脈動し、流れ、激しく波打つ。 「ハッハァ!」 ゼルガディスはパニックに陥るトロルたちを見て狂気の笑みを浮かべながら、 右手を再び大きく振り上げた。 「大地よ! 我が意に従え!」 岩が、土が、ゼルガディスの呼びかけに応える。 大地はまたたく間に無数の錐と化し、トロルの群れを真下から突き上げ、 貫き―― 一瞬の勝負だった。 多くのトロルが錐に貫かれる凄惨な光景だが、俺もあまり他人のことを 言えた義理もない。 『リカバリィ』の応用でトロルをしばき倒したのはつい先日のことだ。 アメリアも何か言おうとしたのだろう。 口を開くが、結局、言葉を飲み込むしかなかった。 NEXT. | |||
35216 | Re:あわわわわ!! | とーる URL | 2011/5/30 16:58:07 |
記事番号35212へのコメント こ、こんにちは、Kouさん。 お返事が本気で遅くなってごめんなさぁぁぁい!! 新年はただ忙しかっただけですが、三月からこっち…… あまりにも色々とあったもので……。 Kouさんは地震、大丈夫でしたでしょうか。 > 口説いているのか! お前は! あはは、やっぱりそう取れますよねー。 アメリアの口説き文句(笑)は、NEXTを参照しております。 > なんか、勘違いした姉ちゃんが有象無象に現れそうだ。 きっとまったく気づかないんでしょうね、アメリアは。 ゼルガディスがヤキモキしてればいいと思います← それを見てリナとガウリイが笑ってればいいと思います←←← 本当にお返事遅れてすみませんでした……。 ありがとうございます! とーる | |||
35215 | 白魔術都市狂想曲 121 | フィーナ | 2011/5/8 20:25:02 |
記事番号35153へのコメント 喧騒が続く王宮の中、あたしはロビーで待ち合わせをしていた。 思惑が渦巻くのが政治の常とはいえ、その渦中には巻き込まれたくないと思うのが、 ―――貴族や王族とは無縁の世界で生きる、日々の日常に身を置く人々であろう。 小休憩が終わり、数人の文官たちが書類を持って部屋の中に入っていくのを尻目に、貴族たちは硬い表情を時折見せた。 物騒そうな雰囲気をうまく隠せているが、動揺まではごまかしきれなかったみたいである。 ・・・・・・どうやら、ガウリイたちがうまく捌いたようだ。 シルフィールの親戚であり、王宮の神殿で働いていたグレイさんにも協力してもらっている。 会議が始まる前のグレイさん曰く、呪法のプロセスの構成が高度すぎる・・・・・・ ―――というよりも、人の力では到底及ばない種類のもの。 そして、なんとか呪法の進行は抑えているものの、よくても夕方から今夜が峠だというお墨付きをもらった。 ・・・・・・まあ、あの呪法は魔族。 それも魔王のだから一筋縄ではいかないわな。 むろん魔族といってもレッサー・デーモンあたりならともかく、高位魔族や魔王がいるなどいっても、いまだその存在たちのことを信じられない人間というのも多い中、バカ正直に言っても混乱するのが関の山。 他の神官たちにも、うまくごまかしつつ説明して見せた。 貴族や文官たちが部屋の中に入っていき、目の前の扉がゆっくりと閉められる。 静寂が訪れる王宮のロビー。 あたしの手の中に輝くマジック・アイテムを、手のひらで弄びつつ時間を潰す。 どれほど時がたっただろう。 静寂に包まれた空間を破るように、馴染み深い気配が近づいてきた。 こつこつと足音が響き渡り、あたしの前で音が止まる。 姿を見せた彼に、あたしは開口一発いってやった。 「か弱い乙女を待たせるなんて、男の風上にも置けないわね」 「・・・・・・あんたのどこが『か弱い乙女』なんだ?」 疲れた口調で憮然とした様子のゼルガディス。 「中に入らなくていいのか」 「大丈夫でしょ」 肩をすくめて言うあたし。 「動いている人たちもいたことだし、なにより中にアメリアもいるしね」 「そうか」 あたしの手の中に在る『それ』に、ゼルは視線を向けた。 「・・・・・・それが残りのやつか」 「そーゆーこと。急ぎましょう」 会議が決着つくまでには、まだしばらくのときがかかるはずだから。 「やあ。ひさしぶり」 軽く手を上げ、気楽そうに手を振る一人の男。 「ひさしぶりです。オリヴァーさん」 「やだなぁ。そんな堅苦しくしなくても、もっと気軽にしたらどうだい?」 軽く笑いながら言いながらも、その細められた目は彼が油断してはならない人種だとあたしに告げている。 以前知り合った商人で、マジック・アイテムを扱う一見人当たりのよさそうななりをしている。 ・・・・・・が、その実態はこのあたしをして、感嘆させるほどの手腕を持つ、一癖も二癖もあるアクの強い人間である。 「なんだってオリヴァーさんがここに?」 警戒を表に出さず、あたしは彼がここにいる理由を尋ねた。 「んー。商売?」 「商売?」 オウム返しに聞き返すあたし。 「そう、商売。 王宮内で面白いことが起きてるって、伝手に聞いてね」 「伝手だと」 「そう、伝手だよ」 ゼルの声にそう返す。 こちらに視線を向け、笑みを浮かべる。 見透かすような視線の強さに、無意識のうちに構えた。 「そんなに警戒しなくても、君たちには何もしないよ」 あたしたちが構えたのを見て、彼は少し困ったように言う。 「・・・・・・それであんたは、どうしようっていうんだ」 「僕は別に、王宮や君たちと敵対しようなんて考えてないよ。 少しの労力で、最大限の利益を得られると踏んでね。ローリスク・ハイリターンってやつだよ」 いって取り出したのは、あたしが持っているやつと同種のマジック・アイテムであり、 そのなかに強大な力を秘めていることが分かる、地竜王ランゴートの癒しの波動。 私利私欲のため、浅はかな貴族たちが難癖つけてアレンから押収した、ひらたくいうと『ぶんどった』ストック・ジュエルである。 「それをどこから?」 「そこの彼に協力してもらってね。親切にも返してもらったんだよ」 ゼルの顔を見てみると、眉間にしわを寄せている。 その表情は『あれのどこが親切なんだ』と物語っていたりする。 ・・・・・・どーやらかなり、無茶な目にあったよーである。 聞いたら胃が痛むこと請け合いなような気がひしひしとしたので、話を変えてみた。 「それで・・・・・・それをどうするつもりなんです?」 「どうするつもりもないよ。 まあ、しいていうならアフター・ケアかな」 オリヴァーさんは苦笑を浮かべた。 「本当はアレン君一人で全部やりたかったみたいだけど、ああみえてアホで抜けてるからね」 ずばりとバッサリ切り捨てながら、言葉を続ける。 「まあ商品作る際に、経験や知識を基にした、目の届かない穴のある構成のバックアップや、魔道士協会や神殿への強制パシリ・・・・・・雑用とか自発的にしてくれたからね」 うん・・・・・・力関係がよく分かる。 たぶん本人漠然とうっすら感じとっていたものの、こきつかわれてたこと・・・・・・あんまり気づいてなかったんだ。 「なんだいそんな微妙な顔して」 「あー・・・なんでもないです」 ぱたぱた手を振りつつ、こたえるあたし。 「なに考えてるのか分かるけどね、べつにいいようにこきつかってただけじゃないよ」 胡乱げな笑顔を浮かべつつ、説得力のない事を言う彼。 「それによく言うだろう? 『人事を尽くして天命を待つ』って。 アレン君がやってきたことのほとんどは、意味を持つことだったんだよ」 | |||
35214 | 白と茶と緑の来訪者と金色に消えた存在たち B | kou | 2011/1/1 12:16:40 |
記事番号35159へのコメント k 新年明けましておめでとうございます。お正月です。去年は、スレイヤーズのDVDボックスが発売されたりとすごかったですね。 L そうねー。今年は、スレイヤーズはどんなふうに発展するのかしらね。 k 個人的には、またアニメ化とかして欲しいですね。 L いや、アニメ化は無理じゃないの? k 見もふたもありませんが………。とにかく、2011年初めての白と茶と緑の来訪者シリーズでございます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 『アホかぁぁぁぁ!』 クウにレビやマント。そして、ガウリィ以外のその場の全員が美技なまでに唱和してガウリィにそう怒鳴ったのは、その時だった。 スッパァァァン と、スリッパでガウリィの頭をひっぱたいたリナは、 「このクラゲ頭。あんた少しは、脳細胞を使わないとそのうち、脳みそがただの筋肉細胞になるわよ! つか、もうすでになっているんじゃないの!」 「て、そんな事を言っている場合じゃないだろうが!」 ビシリとゼルガディスが突っ込むと、同時に二人の首根っこをつかんで駆け出す。それと同時に、アメリアとシルフィールも駆け出す。 数テンポ遅れて、クウはレビとマントを連れて後を追う。 「なあ。マント。ありゃ、誰だ?」 「今、判断したところですが……。魔王シャブラニグドゥの五人の腹心の中で最も強い力を持つ冥王フェブリゾです」 「また、舌を噛みそうな名前だな」 しみじみと、つぶやくクウ。 そして、しばらく考えて、 「なあ。そいつは滅んだんじゃなかったのか?」 「はい。混沌に飲み込まれたはずです。水竜王や赤い竜神と違って欠片も残さずに滅びました」 「う〜ん。こりゃ、マント。お前の推測が当たりそうだな」 「元々、可能性そのものは高いですからね。第一、あのような術をあれだけ使えば、何かしら影響が出来ますよ」 しみじみとした口調で、マントはそうつぶやいたのだった。 | |||
35213 | Re:白魔術都市狂想曲 120 | フィーナ | 2010/12/26 16:21:54 |
記事番号35210へのコメント > お久しぶりです! フィーナさん。kouです。 > 続きを楽しみにしていたので、とっても嬉しいです! こんにちは。お久しぶりです。 >>「最終的な裁きを下すのは父さんですけど、皆さんなら正しい裁きをしてくださると信じています」 > 信じている。あえて言うなら、それは皮肉ですね。なんというか、彼らよりリナの方を信じているでしょうしね。まあ、場合によるとリナの方が信用できない状況もあるでしょうけれど……。 場合によりけりですね。 彼女の立場上の関係もありますから。 >>相好を崩し、目上の者に対する最敬礼を、アメリアに行うお偉いさんたち。 > どっちかというと、おべっか? と、いう気もしますけれど……。 ご機嫌取りとも、ゴマをすってるともいえるかも。 >>番犬としては、まさに適任である。 > 頭は帽子を乗せるための飾り。体は一人で小さな騎士団並の戦闘能力。その名は、ガウリィ! 都合が悪くなったとき、暗殺されないための保険です。 >>一方的に相手の非を挙げて、自分たちの優位に持ち込ませようとするのって、裁判としてどーよ? 的なのが現在のあたしの心情であったりする。 >> >>それに乗っかってるのが、利権に目が眩んだ貴族たちや高官だというのだから、始末が悪い。 > なんというか、身分が高い人間の中には、もっと身分がほしい。ほしい。と、望むやつが居るんですよね。そういうやつほど、器は小さいんだよな。これが……。 そういった権力者たちにとって、考えてみるとアルフレッドは扱いやすかったんでしょうね。 >>「調査によると、無謀にもエルドラン国王陛下のお命を奪おうとしたらしく、数年前から呪術の研究に手を染め始め・・・・・・」 >>ずいぶんと脚色されてんなー。 > エルドラン国王……えっと、ああ。アメリアの爺ちゃんか……。影が死ぬほど薄いから忘れていた。きっと、三男の影が薄いのもそのせい……かな? >>証言によると、呪術の研究に手をつけたのは事実だが、それは解呪の類のものに使用されたものだということだった。 > と、いうか本当に解呪のために研究していたんだからな。つか、怪我を治すために怪我について調べる人も居るだろうが! と、叫びたいな。 アレンの場合、ある意味時間制限つきでの探求でしたからね。 いつ呪いに飲み込まれるか、本人の気力がもってたから目立ちませんでしたけど。 >>下手に暴れようもんなら、最悪のばあい指名手配されること請け合いである。 > そんな事になったら、姉ちゃんにしかられますね。 > と、言うことを言うとリナに、「あたしは姉ちゃんにしかられないと思ったら指名手配されても良いと考えていると思っているのか!」 > と、怒鳴られそうですけれど……。 > アレン……。大ピンチですね。でも、まあ。半分は自業自得とも言えますけれど……。ようやっと、狙っていたところを両思いになれたと喜んでいる彼女も居ますし…… どちらかというと、それは彼の弟のほうなきもしますけど。 もうアレン自身は、やれることをすべてやり終わって、今は呪いに飲み込まれつつあります。 他の神官たちも食い止めようと頑張っていますけど、彼等の技術ではどうしようもできません。 一介の権力を持たない人間である彼が、王宮と言う巨大な力を持つ組織に対抗するのはどう考えても難しいです。 王宮編がもうすこしで終わり、エピローグ部分までまだ時間がかかります。もう少し気長にお待ちください。 | |||
35212 | Re:ドラスレ! 17 | kou | 2010/12/19 16:08:23 |
記事番号35211へのコメント お久しぶりです。とーるさん。第十七話、待ちかねておりました! >「ゼルガディスさん!」 > >「な、何?」 > >「たとえレゾが強敵であろうとも、僕とリナさん、ガウリイさんは > 共に戦います! 貴女一人が適わなくとも、四人の力を合わせれば > きっと出来ることはあるはずです!」 > > >破顔一笑。 > >そこに何の根拠もあるわけではないだろうに、アメリアは笑顔で >自信たっぷりゼルガディスに言い放つ。 >束の間、呆気にとられていたゼルガディスが少しだけアメリアを >眩しそうに眺める。 >まあ、今までのあいつの様子からじゃアメリアみたいな猪突猛進で >明るいタイプは周りにはいなかったんだろう。 >そんなタイプが、アメリアの他にもいたらいたですごいが。 まあ、悪い人間じゃあない。悪い人間じゃあ……。ちょっと迷惑かもしれないが……。 > >「それと、すみません。……勝手にフードと口布を取ってしまって」 > >「……ああ」 > > >アメリアに言われたゼルガディスは、今初めて気がついたように >口元に手を当ててベッドの上にあるマントに目線を移す。 > > >「……驚かせたようね。悪かったわ」 > >「はい……まさか貴女が女性だと思っていなくて。僕としたことが」 > >「……ん?」 > > >マントを手に取って苦く笑うゼルガディスに、アメリアは肩を落とす。 >だが、アメリアが悄然と言った言葉に、ゼルガディスは耳を疑い、 >不思議そうな表情をして、眉をひそめた。 > >分かる、分かるぞ、お前の気持ち。 > >怪訝そうにするゼルガディスに気づかず、アメリアは頭を下げた。 > > >「あんなにきっちりフードと口布をしていましたし……出来るなら > 隠しておきたかったんですよね? すみませんでした!」 > >「……え、いや、別に性別を隠そうとしたわけじゃなくて…… > 私はこのキメラの体を隠していただけで」 > >「体を? どうしてですか?」 > >「は――」 > >「とても綺麗なのに……隠すなんてもったいないですよ」 口説いているのか! お前は! なんというか、恋愛フラグが立ちまくっているような気がする。しかも、天然で……。なんというか、女の子なら可愛いのに男でこうだと……。しかも、王子。なんか、勘違いした姉ちゃんが有象無象に現れそうだ。 などと思ってしまいます。 なんというか、急激に寒くなってきましたがとーるさんも風邪を引かないようにお気をつけください。 以上、kouでした。 | |||
35211 | ドラスレ! 17 | とーる URL | 2010/12/18 21:01:55 |
記事番号35207へのコメント 第十七話 俺はかなりやりきれない空気に内心辟易しながらも、 つとめて明るい声で言う。 「……とにかく、これで大体のところは分かったな」 「ええ、そうね」 ガウリイお嬢ちゃんもひとつ頷く。 ……いや、お嬢ちゃん、その言葉に俺は不安を感じるが。 すると今まで俯いていたアメリアが勢いよく顔を上げて、 ぎゅっと拳をかたく握る。 それを見た俺は顔をしかめた――これはまさか。 「おのれ、赤法師レゾ! 己が願いに他者を欺き、その果てに 魔王復活を目論むなどという何とあくどい所業! 何も知らぬ 皆々に賢者と崇められようとも、このアメリア、真実という 正義の下において悪の心根を決して許しはしません!」 「……!?」 「あー、あれはあいつの一種のクセだから。気にすんな」 「って……」 がっつりポーズを取りながら燃えているアメリアに、 目を瞬かせて驚くゼルガディス。 やっぱりこうなったかと思いながら、ぱたぱたと軽く手を振りつつ 俺は呆然とするゼルガディスにそう言う。 最近になってきてよーやく、俺はアメリアの『正義スイッチ』が 入る前の空気を掴めるようになった。 まあ、突発に入るってことも時々あるけどさ。 「ゼルガディスさん!」 「な、何?」 「たとえレゾが強敵であろうとも、僕とリナさん、ガウリイさんは 共に戦います! 貴女一人が適わなくとも、四人の力を合わせれば きっと出来ることはあるはずです!」 破顔一笑。 そこに何の根拠もあるわけではないだろうに、アメリアは笑顔で 自信たっぷりゼルガディスに言い放つ。 束の間、呆気にとられていたゼルガディスが少しだけアメリアを 眩しそうに眺める。 まあ、今までのあいつの様子からじゃアメリアみたいな猪突猛進で 明るいタイプは周りにはいなかったんだろう。 そんなタイプが、アメリアの他にもいたらいたですごいが。 「それと、すみません。……勝手にフードと口布を取ってしまって」 「……ああ」 アメリアに言われたゼルガディスは、今初めて気がついたように 口元に手を当ててベッドの上にあるマントに目線を移す。 「……驚かせたようね。悪かったわ」 「はい……まさか貴女が女性だと思っていなくて。僕としたことが」 「……ん?」 マントを手に取って苦く笑うゼルガディスに、アメリアは肩を落とす。 だが、アメリアが悄然と言った言葉に、ゼルガディスは耳を疑い、 不思議そうな表情をして、眉をひそめた。 分かる、分かるぞ、お前の気持ち。 怪訝そうにするゼルガディスに気づかず、アメリアは頭を下げた。 「あんなにきっちりフードと口布をしていましたし……出来るなら 隠しておきたかったんですよね? すみませんでした!」 「……え、いや、別に性別を隠そうとしたわけじゃなくて…… 私はこのキメラの体を隠していただけで」 「体を? どうしてですか?」 「は――」 「とても綺麗なのに……隠すなんてもったいないですよ」 晴れやかな笑顔を見れば、本気だと分かるアメリア。 絶句したあと、複雑そうな表情を赤紫に染めるゼルガディス。 思わず唖然とした俺。 ガウリイお嬢ちゃんは相変わらずのほほん。 そりゃあ、ゼルガディスとしては複雑だろうなあ…… あんな体にされたからこそレゾに復讐しようとしてきたのに、 その体を真っ直ぐに綺麗だとか言われたら……。 ぱくぱくと物言えぬ口を開閉していたゼルガディスだったが、 にっこりと笑っているアメリアに何を言おうと無駄だと 悟ったらしく、やがて疲れたように大きく肩を落とした。 俺はそれが会話の切れ目だと感じ、軽く背伸びをする。 「とりあえず、明日のために少し寝ておいた方がいいだろ。 ゼルガディスも少し寝たら? 疲れてるだろ?」 そう訊けば、ゼルガディスは軽く首を振る。 「確かに、疲れてはいるけど……起きたばかりだし、寝込みを 襲われたらことよ。ベッドの上ででも見張りをしておくわ。 ――しばらくしたら起こすから、その時に替わってもらうわね」 「じゃあ、僕もお付き合いしますよ」 アメリアがそう言い、俺は手をひらりと振った。 「りょーかい。じゃあ先に、俺とガウリイお嬢ちゃんで休むから。 おやすみ」 「二人とも、おやすみなさい」 俺はマントを外して毛布代わりにくるまり横になり、お嬢ちゃんは 剣を抱えて壁に背もたれ、目を閉じた。 心地よい眠りに飲み込まれるまで、さしたる時間は必要としなかった。 NEXT. | |||
35210 | Re:白魔術都市狂想曲 120 | kou | 2010/12/6 21:47:26 |
記事番号35209へのコメント お久しぶりです! フィーナさん。kouです。 続きを楽しみにしていたので、とっても嬉しいです! >「最終的な裁きを下すのは父さんですけど、皆さんなら正しい裁きをしてくださると信じています」 信じている。あえて言うなら、それは皮肉ですね。なんというか、彼らよりリナの方を信じているでしょうしね。まあ、場合によるとリナの方が信用できない状況もあるでしょうけれど……。 >「アメリア様にそこまで言われて、悪い気はいたしませんな」 > >相好を崩し、目上の者に対する最敬礼を、アメリアに行うお偉いさんたち。 どっちかというと、おべっか? と、いう気もしますけれど……。 >「ではわたしは、まだやらなければならないことがあるので」 > >「おお。お呼び止めて長居までさせてしまって申し訳ない」 > >「では私も失礼させてもらうよ」 > >言葉を交わし、それぞれの席に着く彼ら。 > >ちなみにあたしは、いちおー弁護人兼アドバイザーとしてここにいたりする。 > >ガウリイはこういった作業には問題外なんで、もしもの時のためにアレンの傍に置かせている。 > >番犬としては、まさに適任である。 頭は帽子を乗せるための飾り。体は一人で小さな騎士団並の戦闘能力。その名は、ガウリィ! >一方的に相手の非を挙げて、自分たちの優位に持ち込ませようとするのって、裁判としてどーよ? 的なのが現在のあたしの心情であったりする。 > >それに乗っかってるのが、利権に目が眩んだ貴族たちや高官だというのだから、始末が悪い。 なんというか、身分が高い人間の中には、もっと身分がほしい。ほしい。と、望むやつが居るんですよね。そういうやつほど、器は小さいんだよな。これが……。 >まあ・・・・・・アレンもこうなると知ってて、実行に移したんだから同罪ではある。 > >もっともアレンの場合、苦肉の策で必死だったみたいだし、王宮の連中とは違い可愛げもあったからまだマシである。 > >・・・・・・意識があったとき、一発ぶん殴ってて正解だった。 > >「――そして彼の神官は、神に仕えし者として許しがたいことに、アメリア姫を手にかけようとしていたのを多くのものが目撃しており、それは本人は認めております」 > >ま、それは『事実』である。 > >「調査によると、無謀にもエルドラン国王陛下のお命を奪おうとしたらしく、数年前から呪術の研究に手を染め始め・・・・・・」 > >ずいぶんと脚色されてんなー。 エルドラン国王……えっと、ああ。アメリアの爺ちゃんか……。影が死ぬほど薄いから忘れていた。きっと、三男の影が薄いのもそのせい……かな? >「異議あり!」 > >友人の一人である神官がこれに抗議し、裁判長はそれを許可した。 > >証言によると、呪術の研究に手をつけたのは事実だが、それは解呪の類のものに使用されたものだということだった。 と、いうか本当に解呪のために研究していたんだからな。つか、怪我を治すために怪我について調べる人も居るだろうが! と、叫びたいな。 >他にも薬草の調合など、神官としての腕は確かだったとアレンの上司である別の老神官もそう証言したところで、時間になったため裁判官の声が小休憩を告げた。 > >こういうピリピリした空気のなか大人しくしてるってのは、どーも性に合わない。 > >王族をはじめとするお偉いさん方がいる以上、いくらあたしでも気を遣わなければならないというのは、きょうび五歳の子供でも分かる常識である。 > >・・・・・・いつかガウリイに、たとえ他人がどうあろうと、絶対自分のペースで突っ走るといわれたこともあったが。 > >下手に暴れようもんなら、最悪のばあい指名手配されること請け合いである。 そんな事になったら、姉ちゃんにしかられますね。 と、言うことを言うとリナに、「あたしは姉ちゃんにしかられないと思ったら指名手配されても良いと考えていると思っているのか!」 と、怒鳴られそうですけれど……。 アレン……。大ピンチですね。でも、まあ。半分は自業自得とも言えますけれど……。ようやっと、狙っていたところを両思いになれたと喜んでいる彼女も居ますし……。みんな笑えるハッピーエンドを期待しています。 以上、kouでした。 | |||
35209 | 白魔術都市狂想曲 120 | フィーナ | 2010/12/5 20:04:08 |
記事番号35153へのコメント 王宮の近くにそびえたつ、大人数が入れるような一室。 離れにあるその場所では、戸惑いを隠せない様子のお偉いさん方がちらほらとみうけられる。 「ですから、今なんとおっしゃった?」 「先ほどもいったとおり、彼は意識不明の昏睡状態に陥っていて、到底起きる気配がないのです」 原因はいまだ不明ですが、とアメリアは難しい表情で続けた。 「だからこそ、ここにはこられないというわけか!? なら何故裁判のある明日ではなく、今日に我々を集められたのだ」 彼女は落ち着いた様子でいった。 「その理由は他でもありません。 魔法医たち数人がかりでも、どうにもできないほどアレンのコンディションが優れないんです。 脈拍も酷く弱く、予断を許さない状況で、生命の危険に常にさらされているような状態だから」 「・・・・・・なるほど。だからこそ早めに行おうというわけか」 別の一人のお偉いさんが、アメリアの説明に納得したように相槌をうった。 「最終的な裁きを下すのは父さんですけど、皆さんなら正しい裁きをしてくださると信じています」 「アメリア様にそこまで言われて、悪い気はいたしませんな」 相好を崩し、目上の者に対する最敬礼を、アメリアに行うお偉いさんたち。 「ではわたしは、まだやらなければならないことがあるので」 「おお。お呼び止めて長居までさせてしまって申し訳ない」 「では私も失礼させてもらうよ」 言葉を交わし、それぞれの席に着く彼ら。 ちなみにあたしは、いちおー弁護人兼アドバイザーとしてここにいたりする。 ガウリイはこういった作業には問題外なんで、もしもの時のためにアレンの傍に置かせている。 番犬としては、まさに適任である。 一方的に相手の非を挙げて、自分たちの優位に持ち込ませようとするのって、裁判としてどーよ? 的なのが現在のあたしの心情であったりする。 それに乗っかってるのが、利権に目が眩んだ貴族たちや高官だというのだから、始末が悪い。 まあ・・・・・・アレンもこうなると知ってて、実行に移したんだから同罪ではある。 もっともアレンの場合、苦肉の策で必死だったみたいだし、王宮の連中とは違い可愛げもあったからまだマシである。 ・・・・・・意識があったとき、一発ぶん殴ってて正解だった。 「――そして彼の神官は、神に仕えし者として許しがたいことに、アメリア姫を手にかけようとしていたのを多くのものが目撃しており、それは本人は認めております」 ま、それは『事実』である。 「調査によると、無謀にもエルドラン国王陛下のお命を奪おうとしたらしく、数年前から呪術の研究に手を染め始め・・・・・・」 ずいぶんと脚色されてんなー。 「異議あり!」 友人の一人である神官がこれに抗議し、裁判長はそれを許可した。 証言によると、呪術の研究に手をつけたのは事実だが、それは解呪の類のものに使用されたものだということだった。 他にも薬草の調合など、神官としての腕は確かだったとアレンの上司である別の老神官もそう証言したところで、時間になったため裁判官の声が小休憩を告げた。 こういうピリピリした空気のなか大人しくしてるってのは、どーも性に合わない。 王族をはじめとするお偉いさん方がいる以上、いくらあたしでも気を遣わなければならないというのは、きょうび五歳の子供でも分かる常識である。 ・・・・・・いつかガウリイに、たとえ他人がどうあろうと、絶対自分のペースで突っ走るといわれたこともあったが。 下手に暴れようもんなら、最悪のばあい指名手配されること請け合いである。 外に出て、大きく伸びをする。 あー。 肩が凝って仕方ない。 しかしこれで、狙いははっきりした。 彼等の狙いは、まず間違いなくアレンの王宮への幽閉である。 当初の予定では、おそらく『更正』の名目で入れるつもりだったんだろう。 ゆっくり時間をかけ、すべて聞き出してからどうするのかは・・・・・・ ・・・・・・いらないことや知りすぎた者を、普通はどう思うだろうか。 過激な思想を持つものや、現状維持など数あれど。 良心的なものがいたのなら、良ければ監視つきの生活か一生幽閉。 しかし悪ければ・・・・・・あとは想像にお任せしよう。 沈黙を守ったままの勢力の狙いは、果たして何か。 さて、これからが本番である。 | |||
35208 | 白と茶と緑の来訪者と金色に消えた存在達 A | kou | 2010/11/7 20:44:23 |
記事番号35159へのコメント 「ま、そんなことはさておいてだ」 ゼルガディスは空気を変えるように言う。 「おそらく、子供はここに居るのだろう。なら、探し出すべきだ」 「そうです。どうして異世界に来てしまったのかは解りませんが、とにかく迷子の子供を見つけ出すのが先決です!」 拳を握りしめて宣言して、アメリアが宣言する。 「そうですね。行方不明者リストは持っていますから、探しましょう」 「無事ならなー。最後のやつなんかは、空腹で飢え死にしているかもしれないが」 シルフィールの言葉にクウはあっさりとそういう。 「……クウ。あんたね……」 クウの言葉にリナは引きつった声を出す。 「何言っているんだ。三日、飲まず食わずでも人間死ぬんだぞ。実際に、俺は五歳の時に親に捨てられたとき死にかけたぞ」 「感想に困るような事を堂々と言わないでちょうだい!」 リナが思わず叫ぶ。 そこに、 「なぁ。リナ」 「なによ。ガウリィ」 「あれ」 「あれ?」 リナはガウリィの指さしたものを見る。 『…………』 つられてみた全員が絶句した。 ガウリィが指さした先には、一人の少年が居た。 向こうも自分たちと同じような驚愕と嫌悪感にあふれた形相をしていた。 漆黒の髪の毛をおかっぱにしている年の頃は、十代前半。一見すると、美少女と見まごうほどの美形だ。あと何年もすれば、美青年と呼ばれるだろう。 リナ達には見覚えがあった。 「あ、あいつは……」 「リナ。あいつ、見覚えないか?」 ずごろしゃぁぁ ガウリィの言葉にクウとレビそして、目の前の少年……冥王フェブリゾまでもすっころんだのだった。 | |||
35207 | ドラスレ! 16 | とーる URL | 2010/10/27 21:03:50 |
第十六話 「あの男、裏でどんなことやってるんだ?」 「知ってるでしょう? あるものを探してる」 「――じゃあ、魔王シャブラニグドゥを復活させようとしてるのは、 お前の方じゃなくてあいつの方だったのか?」 俺が尋ねると、ゼルガディスはきょとんと目を瞬かせた。 「シャブラニグドゥ……? なんのこと?」 「ん……?」 「あいつが私たちに命じさせて探させていたもの――こうなったら 言ってしまうけど、実はかの有名な“賢者の石”ってやつよ」 げ。 俺は盛大に顔をしかめて絶句した。 「そ……それじゃあ……?」 アメリアの声に、ゼルガディスは小さく頷いた。 「貴方たちが持っている神像、あの中に“賢者の石”が入ってる」 賢者の石――。 魔道をやっている者なら知らぬ者はいないだろうし、 たとえ魔道方面にそういう知識がなくとも、そこいらの協会や道端の 伝説や御伽話などで聞き知っているものは多いだろう。 古代の超魔道文明の遺産、世界を支える“杖”の欠片……。 まあ色々と説はあるものの、それが魔力の増幅器であることは確か。 それも、すこぶる強力な。 多分話として一番有名なのは、一人の見習い魔道士の手によって 一国が滅んでしまったという史実だろう。 レゾのように、伝説に近くも実在する物質。 まさかこんな風にお目にかかることになろうとは――。 「……だ……だが、あいつはそんなものを手に入れて、一体何を……」 “赤法師レゾ”が流れている噂通りのやつであるならば、 今更そんなものを手にしなくても充分強いだろうに。 俺の否定したがるような言葉に、ゼルガディスはふと目線を落として ゆるりと首を横に振る。 「レゾが前に言ったことがある。『ただ、世の中が見てみたいだけ』と――」 「……世の中が……?」 「そう。噂通り、レゾは生まれつき盲目だった。あいつは自分の目を 開かせるためだけに白魔術を習い始めた。目を治療する実験台として、 諸国の様々な患者を救って。でも、何故だか自分の目だけは 開かせられなかった。そこで考えたのさ、何かが足りないんだとね。 レゾは精霊魔術や黒魔術にも手を出し、それらを白魔術と組み合わせて 高度な魔術をも生み出した。それでも目は開かない。そんな時に、 あいつが目をつけたのが――」 「伝説級のシロモノ、“賢者の石”ってことですね」 ゼルガディスは頷き溜息をつく。 「――私はあいつを邪魔するのではなく、倒したい。それにはどうしても “石”が必要だ。悔しいけれど、今の私にはあいつを倒す力がない…… だから貴方に襲撃をかけた」 その酷く悔しげな、苦しげな表情からして、話すことを決めた ゼルガディスは嘘をついてるわけではなさそうだった。 ガウリイお嬢ちゃんにはともかく、俺を上回るほど剣を扱える奴が 『かなわない』と認めている。 評されるレゾは当然、かなりのものに違いない。 「あいつを倒す――って、やっぱり、そんな体にされたからか?」 かなり直球な俺に対して、ゼルガディスは睨むように目を細め、 むきだしの掌をじっと見つめる。 しかし、瞳の奥にあからさまな憎悪をこもらせ、冷たい声色で肯定した。 「――ある日、あいつが言った。私の手伝いをするのならお前に力を 与えてやろうと。私は……頷いた。それが何を意味するかも知らずに」 「――レゾと知り合ったのは、いつなんですか?」 雰囲気を変えようとしたらしいアメリアの質問に、ゼルガディスは 少し驚いた表情をしでアメリアを見やる。 けれどすぐに気まずそうに視線を外し、自嘲めいた笑みを浮かべつつ やや間をおいてから答えた。 「――私が生まれた時から――あいつは私の爺さんか、ひい爺さんに あたるはずでね……よくは知らないし、知りたいとも思わないけれど」 「……え!?」 「ああ見えても、百年かそこらは生きてるみたいね。とにかく、 私の中にはレゾの血がいくらか流れてるってこと」 「訊いてはいけないことでしたね……すみません」 きまりが悪そうにアメリアが目を閉じる。 やはり不思議そうな目をしたゼルガディスは、珍しいものを見るかのように アメリアに視線を戻して、どことなく悲しげに首を振った。 うーむ、やりきれないなあ……。 NEXT. | |||
35206 | Re:こんばんは | とーる URL | 2010/10/27 20:47:19 |
記事番号35202へのコメント どうもこんばんは、希悠さん。 初めまして、とーるです。 お返事が遅くなってしまい申し訳ないです。 『ドラスレ!』の閲覧ありがとうございます。 私も最初はどんな風になるかなと思っていたのですけど、 書いてみるとわりと違和感がなくて驚いてました。 楽しく書かせていただいてます。 >やっぱり女性バージョンゼルはアメリアよりかなり細身で小柄なのでしょうか? 女性ゼルとしては、身長はリナより少し小さいぐらいですね。 すらりとしたスタイルのせいか、華奢ではあっても あまり小柄な印象は受けない感じのイメージで書いてます。 >・・・もしや! >アメリアにお姫様抱っこされるゼルガディスという貴重なシーンが裏で展開されていた!? >という想像(妄想)も発生しております アメリアもゼルが敵だったとはいえど、怪我人を肩に担いだり、 腕に抱えるような荷物運びはしないと思います(笑 魔王戦まであと少しだけ話数がありますが、良ければお付き合い下さい。 ではでは。 とーる | |||
35205 | Re:こんばんは | とーる URL | 2010/10/27 20:36:35 |
記事番号35187へのコメント どうもこんはんは、kou さん。 お久しぶりです……お返事遅くなり申し訳ありません。 >え! そっち! アメリアにとっては、まさかの岩肌であるよりも 女性だったことに衝撃を受けたことだったようですねえ(笑 リナたちも驚いたでしょうが果たしてゼルの反応は……。 反応頂けて嬉しいです(笑 ではでは。 とーる | |||
35204 | 白と茶と緑の来訪者と金色に消えた存在達 | kou | 2010/10/16 20:57:23 |
記事番号35159へのコメント 「……異世界」 「異世界」 引きつったリナの感想につられたようにうめくゼルガディス。 ガウリィはぼんやりとしていて、アメリアはあんぐりと口を開けている。シルフィールは目を見開いて呆然としている。 ゼロスもさすがに驚いている様子だった。 「まあ、正確に言うなら紙一重に違う世界ですけれど……」 「ひょっとして」 リナはよやっと声を出した。 「子供とか行方不明者は、この世界に入り込んだの?」 「確証はありませんが、確率は高いですね」 「どう言う意味だ?」 「そうかもしれない。と言っているのよ」 マントの言葉にクエスチョンマークを頭に浮かべるガウリィ。 「とにかく、探すわよ。召喚魔法を使えば、元の世界に戻れるかもしれないし……」 「無理だったらどうするんだ?」 ガウリィに言われてリナとアメリアとゼルガディスが絶句する。 三人の脳裏には、『二重遭難』『ミイラ取りがミイラになる』などと言ったことわざが浮かぶ。 「大丈夫だ」 そう言ったのはクウだった。 「便利アイテムがあるだろ」 と、クウが指さしたのはゼロス。 「え゛」 ゼロスは驚く。 「なるほど」 「そういえばそうですね」 「なら安心だわ」 口々につぶやく三人に、 「ちょっと、待ってください。僕は良いですよ。なんて、一言も……」 「あんたこのまま、何もしなかったらただクウにいじめられるためだけに出てきたようなもんよ」 リナに言われてゼロスは涙ぐむ。 「ああ。天国のお母様。 ゼロスは苦難の道を歩いていますが、どうか見守ってください」 「ゼロスの母ちゃんて死んでいるのか?」 「勝手に殺したんじゃないのか?」 「まあ。金色の母は確かにあの世と言えばあの世にいるわね」 ガウリィにクウ。そしてリナに好き勝手言われてさらに落ち込むゼロスだった。 | |||
35203 | 白と茶と緑の来訪者と黄昏色の十字路 I | kou | 2010/9/28 20:40:11 |
記事番号35159へのコメント k お久しぶりです。kouです。誕生日を終えて、またすこし老けました。 L 老けたと言うよりも、大人の階段を上ったと言うべきじゃないの。あんたの年齢ならさ。 k どう言おうと、一つ年を取ったことは変わらない。 L 未成年で三十路も言っていないから言えるのね。 k ちなみに、誕生日プレゼントにスレイヤーズ劇場版DVD−BOXを買ってもらった。 L ああ、そういえば最近、発売されたもんね。 k すぺしゃる&えくせれんとにしようかと考えたけれど、やっぱり映画版の方が魅力的だったんだよね。すぺしゃるとえくせれんとのビデオならありますし……。 L 寮ではビデオが見れないくせに……。 k 家出見るから良いんです。中古でめちゃくちゃ安かったし……。 L 悲しい本音ね……。 k それは、さておき黄昏時の十字路の最終話です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「黄昏時ね……。確かに、逢魔が時とまで言われているとおり不吉ね。実際に、魔王を指すカオスワーズに使われているしね」 夕暮れ時の十字路でリナはぼんやりとつぶやいた。 「十字路も不吉なんだぞ。辻道と言われているからな」 「辻道? どう言う意味だ」 ゼルガディスの質問にクウは、 「そのまんまの意味だ。二つの道が交わる場所。 異なる世界が重なる場所とも言われているからな。ある世界だと、邪悪な魔物が出てくると言われているしな」 「へー。よく、異世界の事なんて知っているな」 『…………』 クウの言葉に関したしたように言うガウリィ。そして絶句する面々。 「ガウリィ……。クウは異世界から来たんだってば……」 リナの言葉にガウリィは、しばらく沈黙して、 「おお、そういえばそうだったな」 絶句する面々だった。 「……。まあ、良いとしてだ。マント、なんかわからないか?」 気を取り直すようにクウが言えば、 「確かに気になるところがありますね。ゼロス殿も気づいているでしょう」 「まあ、たしかに気にはなりますけれど……」 マントに話を振られ、嫌そうにゼロスは言う。 「なによ?」 「リナさんも知っていると思いますけれど、この街で冥王様がある作戦をお考えになっていたことはご存じですよね」 「ご存じも何も、ほぼ当事者です!! 知っているに決まっているじゃないですか!!」 「アメリア。当事者は、リナとガウリィにせいぜいシルフィーユだろ。俺たちは、勝手についてきていただけだ。居なくても居ても、同じだろ」 ゼルガディスの言葉にアメリアはむぅとふくれる。 「とにもかくにも、その時にまあ、ここでは特殊な事が起きたんです」 「あー」 リナが明明後日の方を見る。 金色の魔王。混沌そのものが降臨したのだ。まあ、普通の状態ではないだろう。 そういえば、ルークがこの街に一種の異世界を作った時、金色の魔王と冥王の魔力そして、ザナッファーの障気を元に作ったと言っていたな……。と、ぼんやりと思い出す。 ガウリィもその場にいたのだが、理解しているのかどころか、覚えているかも怪しい。 と、言うか百パーセント覚えていないに違いない。と、リナは思っている。 などと、考えているとぐにゃりと周りがゆがみ始めた。 そして、ゆがみが消えたときには……。 「どこ? ここ?」 「さあ?」 思わずつぶやいたリナの言葉にガウリィは首をかしげた。 一瞬で夜になったのかと思いたくなるほどの暗闇の奇妙な街が目の前に広がっていた。 「どうやら……」 ゼロスが珍しく焦ったようにつぶやいた。 「異世界のようですね。ここは」 続く。 | |||
35202 | Re:ドラスレ! 15 | 希 悠 | 2010/9/26 22:28:29 |
記事番号35186へのコメント ども!はじめまして。 希 悠と申します。 ドラスレ!素敵です。 性別逆転のスレイヤーズも何気会話とか違和感あんまり無いですね。 ゼルガディスも合流してついに正義の4人組結成でしょうか? クライマックスな感じに入ってきた感じで続きが楽しみです。 >「この方……ゼルガディスさんって……女性だったんですよ!!」 > >「そっちか!?」 > > >アメリアの叫びに俺は思わずコケた。 私も読みながら心の中で盛大にズッコケました(笑)。 ナイス!アメリア。 >確かに、顔つきやマントを取った体つきからして、女だと分かる。 >考えてみれば、岩にも等しい重そうな身体のゼルガディスを >アメリアが一人でも抱えられたくらいだったからな。 やっぱり女性バージョンゼルはアメリアよりかなり細身で小柄なのでしょうか? ・・・もしや! アメリアにお姫様抱っこされるゼルガディスという貴重なシーンが裏で展開されていた!? という想像(妄想)も発生しております。 4人で対レゾ戦(っていうか対魔王戦)を楽しみにしております。 以上。拙い感想ですみません。。。 | |||
35201 | 白と茶と緑の来訪者と黄昏色の十字路 H | kou | 2010/9/14 21:09:03 |
記事番号35159へのコメント 「なるほど、間違いなく商人が関わっているわね」 すべてを聞いて、リナはそうつぶやいた。 「なあ。リナ」 「商人は顔や姿を自由に変えられるの。魔族みたいに! で、あんたの顔が気に入ってあんたの顔をまねているの」 「いや、それはわかるんだけれどよ」 ガウリィの疑問に答えたリナだが、ガウリィは困ったように、 「なんで、あいつ俺の髪の毛の色と瞳の色をまねなかったんだ?」 その言葉に、全員が黙る。 「ねえ。ゼロス。魔族とかって絶対に変えられないとかそういう何かがある?」 「まあ、実力によっては人間そっくりに化けれないとか。実力までまねるとか記憶の模倣は不可能ですけれど、瞳の色とか髪の色とかは別ですね。 例外を言えば、魔王様ですね。赤い瞳の異名通り、その瞳の色を変えることはしません。とはいえ、それは当人の意志ですけれど……」 ゼロスは困ったように言う。 「珍しいな。そこまで、詳しく説明するとは」 ゼルガディスの言葉にゼロスは肩をすくめて、 「どうせ、僕が言わなくてもマントさんが知っていて言うんでしょ」 「理解が早いようですね」 あっさりと肯定されて、ゼロスはこめかみをすこしだけひくつかせたのをリナは見逃さなかった。 「銀髪に黒い瞳であることになにか意味があると言うことかもしれないな」 クウが独白に近い形でつぶやいた。 「とにかく、行方不明者は夕暮れ時に起きているんだな」 「は、はい」 急に話題を変えたクウにシルフィールは、すこし戸惑いながらも頷く。 「ええ、ですから、最近は対策として夕暮れ時は出歩かないようにしています」 「黄昏時の辻か……」 「つじ……なに?」 クウのつぶやいた言葉にリナは、怪訝な顔をして聞き返す。 「辻。わかりやすく言えば、十字路。クロス・ロードのことだ。二つの道が交錯しあっている道のことだ」 クウの言葉でリナは気づく。行方不明者が居る場所は、すべて十字路だと言うことに……。 「黄昏時は言わずもながら、魔が現れる時。 この世界じゃ、魔王を意味する言語ですらある。 辻はこの世とあの世の境目とか言われていて、不吉とされているんだ」 「そういえば、そんな文献を読んだことがあるな」 クウの言葉にゼルガディスがつぶやく。 黄昏時の十字路は文字通り、魔への入り口となっていたのかもしれない。 クウが言わんとしていることに気づいて、リナはあることに気づいた。 「そういえば、ルークを見た場所も十字路だった」 「! レゾを見たところもだ」 「冥王を見た所もです」 「………僕も十字路でしたね」 リナの言葉を皮切りに、全員がつぶやく。 「黄昏時の十字路。 行ってみないか。俺のカンが正しければ、真相を知るのに一番の近道だ。しかも、商人がいる気がする」 クウは不敵な笑みを浮かべてそう宣言した。 | |||
35200 | Re:白と茶と緑の来訪者と黄昏色の十字路 G | kou | 2010/9/12 19:34:30 |
記事番号35197へのコメント >どうも、kouさん。 お久しぶりです。セスさん。 >>「なんだよ。それならそうと行ってくれよな」 >>「……いっているが……」 >> ガウリィの言葉にゼルは半眼でうめく。 >ガウリイの場合、大抵は重要なことを聞いていても意味を理解していないか、覚えていないかのどちらかですよね(笑 右から左へと聞いていることがそのまま、流れている。と、言ったところですかね。 >>「どう言うことですか?」 >> 魔族のゼロスにいわれて、シルフィールはひっ! と、悲鳴を上げるが、 >あ、やっぱり怖がられていますね、後姿がゴキブリ似だけあって(おい) ゴキブリ呼ばわりが、ほぼ定着していくゼロス……。獣神官なのに、たとえが動物ではないのは、屈辱かな? (いえ、それ以前の問題ですが……。ゼロス) >> 黒いローブで顔を隠していたが、下からのぞき上げる形になってしまったので顔がはっきりと見えた。 >> 確かに、端正な顔立ちはガウリィそっくりだったが流れるような金髪と青いひとみではなかった。 >> 冷たい銀髪にどこか恐怖を覚える黒い瞳。 >> 常にのんき……もとい、常春にいる人を穏やかにさせる雰囲気とは違って、氷河に置き去りにされた感覚になった。 >普通は顔立ちが整っていると、近づきがたい感じがするけど >ガウリイの場合、のほほんとした笑顔のおかげでそういうのは皆無ですしね。 そうですね。まあ、顔立ちが整っている。整っていないと言うよりも、その人の持つ雰囲気が一番、重要だと思います。 以上、kouでした。 | |||
35199 | にせものの心 | セス | 2010/9/11 20:47:34 |
「こんにちは」 不意に響いた若い男の声は、優雅と表現してもいいほど柔らかく耳朶に触れた。 しかし、それを聞きつけた娘は、びくりと怯えたように細い肩を震わせる。 「・・・何しに来たんですか?」 「おやおや、それが客に対する店員の態度ですか?」 怯えたことを恥じるように凛と澄んだ声を出す女に、声の主の態度はあくまで飄々としたままだ。 それに気を悪くしたように、女はやや吊り気味の大きな碧眼を一層吊り上げて相手を睨む。 「尻尾、出てますよ」 「・・・な!?」 にこやかな微笑をたたえたまま相手――漆黒の法衣を纏う若者が指摘すると、女はびくん、と先ほどより大きく身を震わせ、艶やかに流れる豊かな金髪も大きく揺れる。 「やー、相変わらず変身の魔法は未熟みたいですねー」 「・・・こ、この・・・」 「おっと、あまり騒ぐとヴァルガーヴが起きちゃいますよ?フィリアさん」 「・・・」 フィリアと呼ばれた女は怒りを押し殺して身を震わせながら、殺人光線じみた視線で相手を射抜いた。 「それは、そうと来客に茶の一杯ぐらい出してもらえないんですか?」 「な・・・なんで、私が貴方なんかにお茶を出してあげなきゃいけないんです!?」 「へー、お茶の一杯も出せないほど貧乏なんですね、この店」 「な・・・なんですってえええ!?」 ――小一時間ほど言い合いをした後。 「一杯だけですわよ!?」 だん!とテーブルに叩きつけるような勢いでティーポットを置きながらフィリアは言い放つ。 「やー、いい香りですね」 華やかな美貌に宿る殺気にあふれた表情に、毛ほども怯えた様子を見せずにのほほんと微笑している。 「・・・あ、あなたね・・・」 「あ、そうそう、フィリアさん。このクッキー、ここに来る前に買ってきたんですけどおいしいですよ」 「・・・」 疲れたようにがっくりと肩を落とすフィリアに構わずに、神官風の青年は自分でティーカップに、澄んだ琥珀色の液体を注いでいく。 「大体、なんで魔族のあなたがお茶飲んだりする意味があるんですか!?」 「意味?」 神官が不思議そうに首をかしげ、切りそろえられた漆黒の髪がさらりと微かな音を立てて揺れる。 「意味など無いですよ、ただの戯れです。大体すべての存在に意味なんてありませんよ?」 「え・・・」 フィリアは絶句する。 「無意味に生まれて、無意味に他者と争って、無意味に他者を食い物にして、無意味に他者を犠牲にして・・・無意味に生きようともがき続けて最後は等しく死ぬ」 「そ・・・それは・・・」 「生きることに意味なんて無い。意味があるのだと思い込んでいるだけです、貴方たち命ある者たちだけが」 「そ・・・そんなこと・・・」 咄嗟に反駁しようとして、フィリアは何事か言いかけ・・・沈黙する。しかし、すぐに唇をかみ締めて強い光を宿した蒼い瞳で相手を睨みすえ 「そんなことを言うのは、それこそ貴方たちだけでしょう?貴方たちのような心を持たないものだけが・・・」 言いかけて、フィリアは絶句する。 黒衣の神官からいつもの微笑が消えていた。胡乱にさえ見えるにこやかな笑みが欠落した白い面は、精巧な作り物のように見えた。 否――これは、実際作り物なのだ。 人でないものが人の姿を真似ているだけ。 命を持たないものが命あるものの姿をしているだけ。 心を持たないものが、心があるように見せかけているだけ。 「・・・ええ、そうですね」 しばしの沈黙の後、黒衣の神官は淡々と答えた。 「ですが・・・心なんてあっても何の役にも立ちませんよ」 笑みが消えた切れ長の双眼がフィリアに向けられる。 「何かを失うたびに悲しみ、または怒る。・・・どうしてそんなことをするのか僕には分かりません、生きている以上何かを失うのは当たり前なのに」 「・・・っ」 フィリアは顔をこわばらせる。昏い紫に見まがうほどに深い闇夜の色を宿した瞳がそれを眺めている。哀れむ眼でも無く、嘲笑う眼でも無い。事実を事実として語る口調と同じく淡々としている。 「・・・だから、なの?」 「?」 「誰が死のうが何も感じない。だから、いざとなれば一緒に旅をしていたリナさんでも殺せるの?」 「・・・ああ、あの時のことですが」 闇色の神官は苦笑を浮かべながら頷く。 「リナさんたちは、お会いしたときから変わった方たちだなあ・・・とは思いましたよ。一緒にいると退屈しないし・・・楽しかったですよ、『楽しい』ってこういうのを言うのかなって思いました」 「・・・え?」 フィリアは訝しそうに形の良い眉をひそめた。 「・・・でもね、命令とあらば僕はためらいませんよ。なぜなら、創造主に従うことのみが僕が存在している『意味』なんですから」 「・・・でも・・・」 「それに・・・さっき貴方がおっしゃったでしょう?僕ら魔族は元々心を持たない。よしんば何かに喜びや怒りを感じていても、それは所詮錯覚でしかない。人間の姿を真似て、人間の振る舞いを真似て、人間の心を真似ているだけ。どれほど精密に真似ても、僕らが持てるのは『心のニセモノ』だけですよ」 よどみなく滔々と流れるように言い放つ端正な白い顔に浮かぶ表情は、いつの間にかにこやかな微笑に戻っている。そこには悲哀や自嘲の色合いは無い。 だが―― 「・・・だとしたら」 「?」 ほとんど無意識のうちに口をついて出た言葉に、今度は神官が訝しそうに眉をひそめる。 「・・・貴方たちは酷く悲しい存在だと思う」 「・・・哀れみ、ですか?同情なんて優越感の裏返しでしかありませんよ。それに悲しんでいただく必要なんてありません」 神官は口元だけをゆがめて冷ややかに笑う。笑みを宿さない漆黒の双眸は、底の知れない虚無の色を秘めたまま。 それを見据える黄金竜の娘の、いつも勝気な光を宿す鮮やかな紺碧の瞳は酷く痛ましそうに翳っていた。 | |||
35198 | 白魔術都市狂想曲 119 | フィーナ | 2010/9/11 19:39:18 |
記事番号35153へのコメント 「わたしもだけど、為政者ならあの力を一度目にした以上、手中に収めたくなるわ」 アメリアは、ぽっかりと大穴をあけた天井を見上げてつぶやいた。 「空が割れた・・・・・・と、表現したほうがいいわね。これは」 ・・・・・・いつになく苦い笑みを浮かべて。 朝から曇り気味だった灰色の空が、ここ王宮の一帯だけ青が広がっている。 ダム・ブラス 普通 振 動 弾 など、術で壁を破壊したら、すくなからず瓦礫ができるはずだが、それが一切ない。 さらさらと流れる白い砂のようなものが、あたしたちの頭や肩にかかっていたり、薄く地面に積もっているくらいである。 おそらくは、先ほどの術が天井を貫通した際、術の余波かなんかで瓦礫が粉々に粉砕されたとみたほうがいいだろう。 「大気を震わせ、曇天の空さえ吹き飛ばすほどの力。 ヴラさんのため、ディーが人々の魂から作り出した呪法を、わたしたちの手で取り除くのが目的だったはずなのにね」 王宮がアメリアに、執行権をつかわせる前に神の力のことを言わなかったのは、貴族たちを味方につけるため。 そして、彼ら王宮の利益につながっていることに他ならない。 貴族たちの多くは、いくつもの企業を抱えている。 絵画などの転売や、宝石商など様々。 そんな彼らにとって、これは格好のビジネスにつながると踏んだのだろう。 そして、それは王宮にとっても、魅力を秘めた事柄でもある。 白魔術都市として名高いこの大国で、先駆けて神の力を使うことができたなら。 国としての地位が上がるばかりか、他国に対して優位な立場を取れるばかりでなく。 神の力に関する技術や知識を、セイルーンが独占することだって可能である。 政治的な意味合いのほかに、魔族への対抗手段として、各神殿や他の町の魔道士協会に高値で売りつけたり、 どうあっても得にはなるが、損にはならないということである。 ・・・・・・まあ、魔族にとって脅威となる知識を、人間の間で広がっていくことを、彼らが静観しているかどうかは疑問だが。 それに、アレンの呪いの進行は、あたしたちの現在の魔道技術では・・・・・・ ヴラとの接触で、アレンを蝕む呪いが急速に加速し、もはやランゴートの癒しの力だけでは。 呪いの進行を遅らせることはできても、取り除くことは不可能。 ・・・・・・だからこそ・・・・・・ 万が一のときのために、布石を打っておいた。 「・・・・・・ここか」 彼はフードを目深にかぶり、そびえたつ研究機関をみあげた。 厳重に張り巡らせた、見張りの兵士たちを眠らせて。 「正直に言ったところで、頭の固いお偉いさんは聞く耳を持たない・・・・・・か。 なるほど、たしかにリナの言うとおりだな」 術の影響から逃れ、突っかかってくる兵士を、ブロード・ソードの柄でうちすえ昏倒させる。 エルメキア・ランス 「 烈 閃 槍 」 続けざま、別の兵士に術を叩き込む。 たまらず倒れる兵士。 「それとも、力を手に入れたことに狂喜した人間は、我を失うものなのか」 呆れともつかないため息を漏らす。 「・・・・・・でてきたらどうだ」 「ネズミにしてはやるほうだな」 音もなく彼の前に立ちはだかる男たち。 「養成施設・・・・・・いや、今は王宮の諜報部隊か。 情報操作などの諜報活動だけでなく、裏では暗殺をも請け負う隠密機関」 「貴様は・・・・・・容姿は大分変わったが、レゾの狂戦士か」 「その名で呼ばれるのも久しいな。あまり喜ばしいことではないが」 ゼルガディスは、ぴくりと片眉を動かし言った。 「何用だ」 「王宮が押収したあるものを取り返しにきた」 「・・・・・・例のマジック・アイテムか。 残念だが、そうはいかん」 「あの神官の所有物だ。返してもらおう」 「あれは王宮に捧げられた王宮のものだ」 じわりと、距離をつめる男たち。 「国が成り立つためには、なんらかの犠牲の上で成り立つ。 大事の前の小事ともいうが。裏家業に長年、足を漬かっていた貴様なら分かるだろう」 「たしかにおれも、昔汚れ仕事をしていた時期もあるから、わからなくもない。 だが、おれは今あの神官の護衛を依頼されている。そうおいそれとは頷けん」 ゼルガディスは、ブロード・ソードを正眼に構え、呪文を唱え始める。 「バックにいるものがアルベルトから変われど、我らのやることは変わりない。 ――侵入者は排除する」 合図とともに散開する男たち。 「――ずいぶん盛り上がってるねぇ」 殺気が立ち込めるのをものともせず、能天気そうな声が上がった。 ゼルガディスと、男たちが振り向く先にいたのは一人の男。 毒を含んだその笑みで、男は言った。 「僕も混ぜてくれないかな?」 | |||
35197 | Re:白と茶と緑の来訪者と黄昏色の十字路 G | セス | 2010/9/11 14:13:08 |
記事番号35195へのコメント どうも、kouさん。 >「なんだよ。それならそうと行ってくれよな」 >「……いっているが……」 > ガウリィの言葉にゼルは半眼でうめく。 ガウリイの場合、大抵は重要なことを聞いていても意味を理解していないか、覚えていないかのどちらかですよね(笑 >「どう言うことですか?」 > 魔族のゼロスにいわれて、シルフィールはひっ! と、悲鳴を上げるが、 あ、やっぱり怖がられていますね、後姿がゴキブリ似だけあって(おい) > 黒いローブで顔を隠していたが、下からのぞき上げる形になってしまったので顔がはっきりと見えた。 > 確かに、端正な顔立ちはガウリィそっくりだったが流れるような金髪と青いひとみではなかった。 > 冷たい銀髪にどこか恐怖を覚える黒い瞳。 > 常にのんき……もとい、常春にいる人を穏やかにさせる雰囲気とは違って、氷河に置き去りにされた感覚になった。 普通は顔立ちが整っていると、近づきがたい感じがするけど ガウリイの場合、のほほんとした笑顔のおかげでそういうのは皆無ですしね。 | |||
35196 | Re:白魔術都市狂想曲 118 | フィーナ | 2010/9/7 20:08:58 |
記事番号35193へのコメント こんばんは。はじめまして希 悠さん。 ここ最近パソコンに触れれる機会が少なくなり、返事を返すのが遅くなってしまいました。 希 悠さんからの初感想。とても嬉しく思います。 >著者別・過去ログを遡り 過去ログのほうからひろっていただいて・・・著者別のほう、蒼の記憶からしていませんね。そういえば。 >アレンの受難 この人の末路は、もう決まっていますが、人知れず秘めた願いというものがあります。 あるキャラの洞察で、おいおい明かされます。 >アメリアとゼルガディス アメリアは王族としての視点で行動していますから、かなりドライにふるまっています。 彼女にしてみても、神の力は王族として、巫女頭としても無視できませんからね。かなり葛藤しています。 ゼルガディス登場の意味は、かなり大きいですね。完全ではありませんけど、人の姿に戻れる可能性。その過程にある状態ですから。 ゼルとアレンの意外な共通点がネックですね。彼の今までの行動の意味が明かされます。 >聖王都の闇 王宮では互いに利用したり利用されたり、複雑に思惑が絡まっています。 今のセイルーンの状態は、エルドラン国王の病状の進行とか、それをいいことに台頭している機関があるということです。 貴族としてのマーシュ卿の意見は、かなり核心をつきます。それが懸念でもあるんですが。 >>正義 >そんな使われ方されて、正義が泣いてるぞー 正義を叫ぶ分にはいいですけど。 それを他人に押し付けるのは。もはや正義じゃありませんね。ただの押し付け。 そうするとアメリアが普段やってるのは、はたしていかがなものかという結論に(苦笑) 希 悠さんからの初感想。本当にうれしいです。 良くも悪くも、期待を裏切ることがおおい作品ですので、納得のいくラストにつながるように。 どうか気長にお待ちください。 | |||
35195 | 白と茶と緑の来訪者と黄昏色の十字路 G | kou | 2010/9/5 08:16:54 |
記事番号35159へのコメント k 前回、HじゃなくてFだった……。 L いくつ、すっ飛ばしているのよ!! k ……三つ? L 本当に答えろとはいっていない! k まぁ、細かいことはさておいて、 L 細かくない。 k 黄昏色の十字路 スタート! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「そんなことが……」 シルフィールに承認について説明し終えると、シルフィールはただつぶやいた。 「とはいえ、はっきり言って商人の仕業というのは、推測。状況証拠だけで、物的証拠が何一つとしてないが……」 「なぁ、リナ。ゼルのいっている。情操教育と沸点省益って、なんだ?」 「……ガウリィ。ゼルがいっているのは、状況証拠と物的証拠。 可能性が高い事態だけれど、はっきりとした根拠はない。といっているのよ」 「なんだよ。それならそうと行ってくれよな」 「……いっているが……」 ガウリィの言葉にゼルは半眼でうめく。 「あの、その商人は銀髪に黒い瞳のガウリィ様だといってましたよね」 「? うん。あいつ、ガウリィの顔をまねたんだけれど、髪の毛の色と瞳の色だけは変えなかったのよね」 「そういえば、そうですね。どうしてでしょう?」 シルフィールの質問にリナはうなずき、アメリアが疑問をつぶやく。 「それは、解りませんけれど……。それなら、心当たりがあります。 すべて説明がつくことが……」 「どう言うことですか?」 魔族のゼロスにいわれて、シルフィールはひっ! と、悲鳴を上げるが、何とか持ち直し、 「あれは、最初の行方不明者が出る三日前でした。わたしは、ちょうど風邪をこじらせて肺炎になったアリュエさんの所へ、治療に行く途中でした――」 ――老人の一人暮らしということもあって、お粥などの介護用品を用意していたら少し遅くなっていたために、走っていた。 消化に良い、リンゴが一つ転がり、拾ったときに 「あ、ガウリィ様……?」 一瞬、ガウリィかと思ったが違うとすぐに解った。 黒いローブで顔を隠していたが、下からのぞき上げる形になってしまったので顔がはっきりと見えた。 確かに、端正な顔立ちはガウリィそっくりだったが流れるような金髪と青いひとみではなかった。 冷たい銀髪にどこか恐怖を覚える黒い瞳。 常にのんき……もとい、常春にいる人を穏やかにさせる雰囲気とは違って、氷河に置き去りにされた感覚になった。 リンゴを拾ったときには、すでに人混みの中に消えていた。 顔立ちが似ていることから、印象には残ったがただの偶然と思って気にはしていなかったらしい。 それが、シルフィールのいう心当たりだった。 | |||
35193 | Re:白魔術都市狂想曲 118 | 希 悠 | 2010/9/3 23:57:39 |
記事番号35192へのコメント はじめまして! こんにちは。希 悠と申します。 つい最近「書き殴り」さんにお邪魔し始めたばかりで、「初」感想投稿です。 著者別・過去ログを遡り、蒼の記憶から(こっそり)読ませていただきました。 しょーじき量的に結構ヘビーでしたが(笑)一気に読んでしまいました。 アレンさん受難の日々(苦笑) 白魔術都市狂想曲に入ってますます大変なことになって行ってしまいこの先どーなってしまうのか・・・ドキドキしながら読んでいます。 アメリアとゼルガディスも登場してきて「ヤッターvv」と心の中で叫びました。(この二人もかなり好きなので前作ではちょっと寂しかったです。) アメリアは原作バージョンで結構ドライでシビア〜な感じですね。 ゼルはなにやらよーやく人間に戻る取っ掛かりが見つかったようでよかったです。でも、鍵を握るアレンさんがいなくなったらどうなっちゃうんだ? 聖王都といわれつつもかなり裏の部分では闇な動きがあるようで、勝手なことをいっている悪人(?)どもをなじりつつハラハラしています。 >「アメリア姫も、実にうまく動いてくださった。 −−−アメリア利用されてる!? >執行権は王族が握っている以上、複写した自白書に動揺している隙に、処刑日数の短縮を取り計らうこともできた」 > >「フィリオネル殿下だと、こうはうまくいかない」 −−−これは完全に利用されてる!! > >「正義のために」 そんな使われ方されて、正義が泣いてるぞー とつっこみながら読ませていただきました(笑) 拙い感想でしたが、どうぞ広いお心で受けとってくださいませ。 続きを楽しみにしております。 | |||
35192 | 白魔術都市狂想曲 118 | フィーナ | 2010/8/28 21:15:44 |
記事番号35153へのコメント 「浅はかなことを言い出しおって」 「まったく。人に神を捕らえる。ましてや支配することなど」 「定石では考えられん」 密かなざわめき。 「神が来られた以上、味方するものだと信じて疑わない愚か者よ」 「いい薬にはなっただろうよ。あの貴族にとっては」 倒れている彼らを、兵士たちが外へ運んでゆく。 「だが神は、気分を害しいってしまわれた」 「引き止めることはかなわぬとはいえ、惜しいことを」 その声には落胆はなく、どことなく薄ら寒く感じるものがあると思うのは、あたしの気のせいだろうか。 幕引きの声が上がり、各々が神殿から散り始める。 「・・・・・・リナ」 上座にいたアメリアは、あたしを呼び止めた。 「予定通り、アレンの処刑は明日。 これはすでに覆さないわ。今日の事で罪が多少軽減されてもね」 「そう」 短く返すあたし。 スィーフィードの近くに落ちているはずのそれを、探してみるも見当たらない。 「何を探しているの?」 「首飾り」 「それなら、物証として押収させたわ。 みるからにマジック・アイテムだったし。盗難防止もかねてね」 「・・・・・・どこにあるの」 「魔術の研究機関よ。 マジック・アイテムそのものではなく、込められている力の解析にむけて」 「あんたが許可したの?」 「・・・・・・アレンは、不利益になりうるような情報をむやみに言ったりはしないわ。 たとえ拷問されても、口を割ったりはしない。事実ではないことなら、わたしに反論してでもね」 「アレンの同僚や友人たちは?」 「すでに手続きを終え、解放されてるわ。 ・・・・・・報告によると、査問も白紙に戻したらしいわよ」 「浮かない顔してるわね」 「物証が出た以上、わたしは判を押さざるを得なかった」 あたしの前につきたてられた、一枚の紙。 報告書として書かれている断片的な事実。 内容は、数年前から呪術に関する本を重点的に集めていたこと。 神官兼魔法医なら、呪術を解除するため読んでいてもおかしくないのだが。 薬草の類よりはるかに多く、集めていたということ。 他にも、唐突にそれをやめ、マジック・アイテムについて学び始めたことなど。 そのどれもが、すべて客観的な事由として書かれていた。 「裏づけは取れているわ。これは事実だと、本人も肯定していた。 自分の名を上げるために、今回の事件を引き起こしたんじゃないだろうかってのが、元老院たち古参の機関の見解」 「アメリア。あんたはそれを信じるの?」 「そういう見解もあると受け止めているけど、鵜呑みにしてはいないわ」 ざわめく会場の中、マーシュ卿とフィルさんが、話をしているのを視界の隅に捕らえた。 「それが事実であっても、機関の見解が誤りだってこともあるはずよ。 どうして、正義と愛と真実の人であるあんたが」 「彼らから、アレンのものとおぼしき自白書を見せられたから」 あたしは、言葉を失った。 「文字のはねとか、特徴がそっくりだった。確認する前に下げられたけど。 ・・・・・・リナと一緒に、地下牢にいたアレンと面会する、少し前のことよ」 「・・・・・・それは、アレンが神の力を使えるって、本人から知らされる前?」 あたしの問いに、彼女は肯定の意味。 首を縦に振った。 「自白書の手配とは・・・・・・考えたな」 「神殿にある課題の論文。諜報員なら不安定化工作のため、要人の文字を複写することはよく行うからな。 他にも、同僚から頼まれた古代文字の翻訳など、あの神官の文字を複写することなど造作もないだろう?」 「たしかにな」 「アメリア姫も、実にうまく動いてくださった。 執行権は王族が握っている以上、複写した自白書に動揺している隙に、処刑日数の短縮を取り計らうこともできた」 「フィリオネル殿下だと、こうはうまくいかない」 「浅はかな思考の持ち主もいたものだ。 人が神を支配し、捕らえることなど無謀以外のなにものでもない」 「人が人を支配することは可能だがな」 「神の力の解析には時間がかかる」 「あの神官には、いくら詰問しても口を割らなかった」 「まったく強情な男よ」 「同僚や友人たちに査問を開けなかったのは痛いな」 「身近な人間を人質にしてやれば、こうも回りくどいマネをしなくてもすんだものを」 「金で雇うにしても、そこらのごろつきなら、嗅ぎまわっている人間たちに捕らえられた場合、口を割ってしまうかもしれん」 「煩わしいものよ。アメリア様と親交が深い魔道士と剣士。 そして、裏社会に精通し、こちらの動向を嗅ぎまわっている白の魔剣士」 「並みの相手なら、事故を装って消すこともできるが。 相手はかなりの手練。しかも悪名高いリナ=インバースときた」 「・・・・・・台風の勢力が通り過ぎるのを待つしかないか」 「明日の裁判が終わるまでだ」 「理由をつけて人知れず隔離してしまえば、おいそれと手出しはできまい」 「そのあとは、手段を問わず、じっくりと聞き出すとしよう」 「国の発展のために」 「神をこの地に呼び戻すために」 「正義のために」 | |||
35191 | Re:白魔術都市狂想曲 117 | フィーナ | 2010/8/28 18:26:08 |
記事番号35190へのコメント >こんばんは、フィーナさん。 こんばんは。セスさん。 >>「しかし、あなたは我らに借りがある。 >>人の魂と混ざり合った魔族の因子を、誰が取り除いてやったとおもっておられる。我々人間だとわすれたとはいわないでしょうな」 >なんつー恩着せがましい言い方・・・ この発言した人はまだ、浅い思考の持ち主。 >>「逃がすな! 神を捕らえろ!」 >神を捕らえるって・・・身の程知らずにも程がある。 身の程知らずでも、まだ明確にしている分ましです。 >>「気絶させただけだ。 >>だがまだ道を遮ろうってんなら、気絶だけじゃすませねぇぞ。 >>どうしてもってんなら、それなりの覚悟で来るんだな」 >>ヴラを捕らえようと号令した人間は、あの一瞬で傭兵たちと共に昏倒させられていた。 >身の程知らずな発言の報いを受けましたね まだまだ、これは序の口。 過激で、さらに容赦ない思惑を王宮は持っています。 >人間のこういうところって魔族から見たらどう映るんでしょうね・・・ 愚かしくも、付け入る隙のある存在だと。 神を捕らえることはかなわないけど、人間の欲は果てしないです。 | |||
35190 | Re:白魔術都市狂想曲 117 | セス | 2010/8/26 23:38:42 |
記事番号35189へのコメント こんばんは、フィーナさん。 >「しかし、あなたは我らに借りがある。 >人の魂と混ざり合った魔族の因子を、誰が取り除いてやったとおもっておられる。我々人間だとわすれたとはいわないでしょうな」 なんつー恩着せがましい言い方・・・ > >「逃がすな! 神を捕らえろ!」 > >一人の号令に、どこに隠れていたのか雇われた連中が包囲を狭める。 神を捕らえるって・・・身の程知らずにも程がある。 >「気絶させただけだ。 >だがまだ道を遮ろうってんなら、気絶だけじゃすませねぇぞ。 >どうしてもってんなら、それなりの覚悟で来るんだな」 > >ヴラを捕らえようと号令した人間は、あの一瞬で傭兵たちと共に昏倒させられていた。 身の程知らずな発言の報いを受けましたね 人間のこういうところって魔族から見たらどう映るんでしょうね・・・ | |||
35189 | 白魔術都市狂想曲 117 | フィーナ | 2010/8/23 22:16:14 |
記事番号35153へのコメント ヴラは不愉快そうにはき捨てた。 「てめぇら人間の都合なんぞしったこっちゃねぇ。 なんで自分勝手で傲慢なことに、俺が付き合わなければならねぇんだ」 「しかし、あなたは我らに借りがある。 人の魂と混ざり合った魔族の因子を、誰が取り除いてやったとおもっておられる。我々人間だとわすれたとはいわないでしょうな」 「誰が? 取り除いてやった?」 ヴラは鼻で笑った。 「はっ! それを驕りっていうんだ。 俺が留まったのは、安定しているこの場所に、魔族によって汚された人間の魂を浄化させるのに適しているからだ。 でなきゃ動乱の元になりかねない地に、俺が留まるわけねぇだろうが」 貴族や文官。 国のお偉いさんと思しき連中がざわめく。 「他にも俺自身が、因子ごと魂を焼き尽くすって方法があったが。 害そうとするものを消滅させるのに、俺が躊躇する理由はねぇからな」 「詭弁を!」 貴族の一人が憤ったようにさけぶ。 「詭弁だろうがなんだろうが、俺はもうここにはこねぇよ」 「ヴラさん!?」 アメリアの訴えるかのような呼びかけ。 「観光はまあまあ楽しめた。世話になったな」 アメリアに向けて片手をあげるヴラ。 「逃がすな! 神を捕らえろ!」 一人の号令に、どこに隠れていたのか雇われた連中が包囲を狭める。 「俺が、人間ごときに捕らえられるか」 刹那―― あたしが瞬きする間もなく、何がどうなったのか分からないが。 傭兵たちは一瞬のうちに吹き飛ばされていた。 気がついたら、彼らは地に伏せられていた。 比喩でもなんでもなく、まさに目にも止まらぬ速さで。 状況からしてそうなのだろうが。 ・・・・・・あたしはともかく・・・・・・ 野生並の反射神経を持つはずのガウリイにも、その姿は見えなかったらしく呆然としていた。 「気絶させただけだ。 だがまだ道を遮ろうってんなら、気絶だけじゃすませねぇぞ。 どうしてもってんなら、それなりの覚悟で来るんだな」 ヴラを捕らえようと号令した人間は、あの一瞬で傭兵たちと共に昏倒させられていた。 「さーてと。次はどこへ向かおうかねぇ」 遠巻きに見ている彼らを歯牙にもかけず、ヴラはのんきにつぶやいた。 | |||
35188 | 白と茶と緑の来訪者と黄昏色の十字路 H | kou | 2010/8/22 20:11:08 |
記事番号35159へのコメント 「ルークて、あのルークか?」 「珍しいですね。ガウリィさんが覚えているなんて」 「……アメリア、俺をなんだと……」 「だって、フェブリゾやガーウのことを忘れていたガウリィさんですよ。そのルークという人を忘れていても、おかしくありません!」 「論点はそこじゃないだろ」 力一杯宣言するアメリアにあきれながら、ゼルガディスは、 「三番目の魔王と言ったな。どう言うことだ?」 「ゼルとアメリアと別れて、ガウリィの新しい剣を探していた時に、トレジャーハンターと名乗る二人……。ミリーナとルークに会ったの。そして、覇王の策略というかずさんな賭みたいなのに、巻き込まれていろんな事件を解決した。 そして、ルークが愛していたミリーナがあるごたごたで死んで、ルークの中に封印されていた魔王が目覚めた……。 後で、ゆっくり説明するけれどとりあえずそう言っておくわ」 目線を落として、リナはゆっくりという。 「……死んだんですか?」 「間違いなくね」 ため息混じりにリナがそういえば、ガウリィも頷いた。 「死んだはずの人間に、滅んだはずの魔族。しかも、人間の方は魔族と関わりが強い……。と、言うか……」 「魔王と化した人間」 クウの言葉をゼロスがつなげる。 「どう言うことでしょう?」 シルフィーユの言葉に、マントは、 「推測ならいくつかあります。 一つは、よく似た他人。ただし、それが何度も続くのはどう考えても異様というかおかしいですが……。 二つ目は、実は滅んでいなかった。これは、あり得ませんね。間違いなく、魔竜王と冥王が滅んでいるのは、彼らを源とした呪文が使えなくなったことが証明しています。 三つ目は――」 「商人の仕業」 リナの言葉に、沈黙があたりを支配した。 | |||
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