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Re: 原作寄り:ゼルガディスとアメリアが出会って翌日の朝食
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元記事
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>「あ、ゼルガディスさん?」
>食堂にいたのは一人の少女。つややかな黒髪を肩で切りそろえた、童顔の美少女だった。確か名前は…… アメリア。正義かぶれで何も考えていないように見えるが、戦闘中の状況判断、ときおり見せるシビアな言動などに、頭の良さと芯の強さをうかがわせるものがあった。リナやガウリイとどういったいきさつで一緒に旅をしているのかはわからないが、まあ変わった女のようだし、変わった事情などあるのだろう。とりあえず、俺のこの外見にも何一つ驚いた顔も疑問も呈さない時点で普通ではないが、正直そのニュートラルな態度は助かる。
>「朝ごはんまだですか? よろしければこちらに座りません?」
>ぱたぱたと、にこやかに右手を振りながら話しかけてくる。断る理由もないので、俺はうなずいて彼女の向かいの椅子に座った。
>「リナはまだ寝てるのか」
>尋ねる俺に、紅茶にがっぽんがっぽんと砂糖を放り込みながらうなずく。
>「昨日、なんだかんだでかなり魔力を使ったみたいですしね。疲れてるんじゃないかしら」
>「あんたはどうなんだ」
>メニューを開きながら尋ねると、少女はにこりと微笑む。
>「私はそれほど集中の必要な戦闘も状況もなかったので」
>「あれだけの施設で、ひとりで脱出騒ぎを起こしておいて、か」
>「ゼルガディスさんやリナがぶちあたったような面倒そうな敵には出くわさなかったんですもん。魔力を封じられた小娘ひとりと侮って、たいした警備はつけなかったんじゃないでしょーか」
> ウェイトレスに、モーニングセットAを頼んで、俺は向き直る。
>「その、魔力だが」
>「はい」
> パンケーキを優雅に、しかし見事なすばやさで切り分けながらアメリアは目だけをあげる。蒼く大きな瞳。リナの燃えるような紅い瞳とはまた違う狡猾さを秘めて。
>「封じられたといっていたが・・・・・・ 完全に封じられていたのか」
>「ええ。『光り』ひとつ使えませんでしたよ」
>「で、今は」
>「絶好調ですね。なんの支障も無い」
> そうか、とうなずいたところで俺の前に湯気をたてるオムレツが運ばれてくる。
>そこからもくもくと、ただ向かい合って食べ進める時間が続いた。
> 若い女と向かい合ってメシを食うことなどほとんどないが、アメリアとやらは、にこやかに振舞いこそすれ、余計な気遣いはほとんど持ち合わせていないらしく、それ以上の会話もジェスチャーも投げかけてはこない。媚態も緊張も見栄もなく食事に集中してはいるが、相手の存在は感知している。そういった態度だ。リナと一緒にいられる理由がわかる気がした。よっぽど強い自己を持っているか、あるいはガウリイのように何もかもを受け入れ、流し、認められる人間でない限り、あのドラまたと一緒に行動するなんざ不可能だ。
>「いいチョイスですね」
> 顔をあげると、ホットケーキを食べ終え、ナプキンで口もとをぬぐいながらアメリアがにこやかに俺の皿を見ていた。
>「……ああ、このメシのことか」
>「ええ! とてもふわふわでおいしそう。もし明日もここで朝ごはんを食べることになったら、わたし、それをいただこうかしら。あ、実際、味はいかがです?」
>「悪くないってとこだ」
> と、突然、アメリアが身を乗り出し、くんくんと、俺のオムレツの上で鼻を鳴らす。
>「見たところセイルーンのオムレツとちょっと違う風味がありそうですねー」
>「ああ、アトラスでよく使われる香草が入っているようだ。……あんた、セイルーンの出身なのか」
>「あ、そういえばちゃんと自己紹介してませんでしたね」
> にこりと微笑むとアメリアは、普通のトーンで、にこやかに言った。
>「私、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンと申します。セイルーンの火竜王神殿で巫女頭やってます。よろしくお願いします! で、ゼルガディスさんはどちらのご出身ですか?」
>「ああ、俺はどこかといえるような故郷も…… ってちょっと待て」
> 名前の最後につくセイルーン。
>あの白魔法大国・火竜王信仰総本山の巫女頭。
>そのふたつの条件が導き出す答えは……
>「あんた……まさか」
>一応これでも、国際情勢には最低限通じている。そういう立場でそういう苗字の人間がどんな立場のどんな存在か聞いたことがある。目の前の女はその立場でそういう苗字だという。そんなわけあるか。いや、しかし、俺の本能が言っている。この女は嘘をついていない。第一リナとガウリイの仲間だ。多少変な素性でも、こんなところにいるわけがない存在でも、いるかもしれない。あいつらのいる世界に常識なんぞない。そしてそんな奴らにまたしてもぶちあたり、関わっている俺だって、まあ言ってみれば裏の世界の有名人で、実の祖父である某聖人に合成獣にされたという、ちょっとどころかとんでもなく妙な素性の持ち主だ。
>俺はこめかみを指で支え、気が進まないながらも訊くことにした。
>「つまり、あんた、セイルーンの第二皇女か?」
>「はい」
> あっさりとうなずくと、アメリアはテーブルの端にたてかけてあったメニューをとり、おもむろにデザートのページをめくる。
>「……なんでまた、お姫さまがこんなとこにいるんだ?」
>「そりゃもう、正義を広めるためですよ。あ、私今からウェイトレスさん呼んでデザート頼みますけど、ゼルガディスさんも何か頼みます?」
>「いらん」
>「そうですか。じゃ、ちょっと注文の間だけ“お互い”素性のお話はナシにしましょうね」
> 元気よくウィンクをすると、さっと手をあげて、ウェイトレスを呼ぶ。俺は思わず苦笑をもらした。
>『お互い』か。なるほど。
> プリン・ア・ラ・モードとかいう特大のデザートを頼み終え、ウェイトレスが厨房にひっこんだのを見届けると、アメリアは大きな蒼い瞳を猫のように輝かせて、ささやき声で言った。
>「今度は私の番です。“白のセルガディス”って、あなたですか?」
>「ああ」
> 俺はアメリアにまっすぐ視線をかえす。アメリアはでっかい目をますますでかくして俺を見つめている。恐れを知らない小動物のようなその姿に、思わず苦笑がもれた。
>「それにしてもあんた……単刀直入だな」
>「あなたはリナの友達でしょう? じゃあ、まわりくどく言っても仕方ないかな、と」
>「俺のことなんざ、どこで知ったんだ?」
>「名のある魔道士や剣士、暗殺者の名前や噂には常に目を光らせていました」
>「お姫さまに必要な知識とは思えないが」
>「それが意外と、必要なんですよね」
> 少し乾いた笑みを浮かべて少女は言う。そこではじめて、聖王国といえどもセイルーンはお家騒動が絶えず、フィリオネル王子の暗殺未遂など数々の血なまぐさい事件がおきたことを思い出した。アメリア第二皇女は、グレイシア第一皇女の失踪後、フィリオネルの唯一の子のはずだ。目の前で屈託無く紅茶を飲み、屈託無く笑い、話す少女が、肉親同士で命を狙いあう環境にずっといたことが、急に実感された。
>「なるほど。王族ってのも大変なもんなんだな」
> 思わず漏れた俺のつぶやきに、アメリアは「誰の人生だって大変なものですから」と大人びた表情で答えた。確かリナより2,3、年下のはずだったが、そうはとても見えないまなざしだった。
>「あなただって、大変な人生を送ってらっしゃるわけでしょう? ゼルガディスさん」
>「まあな。リナから聞いたか」
>「あらかたは。といっても、あなたの生まれ育ちは知らないわ。ただ、あなたの体がどうしてそうなったかは聞いた。あなたがそれを元に戻す術を探していることも」
> 楽な相手だ。俺はそう思った。
>「ああ。ダメでもともとで聞いてみるが、あんたはこういったものの治療方法は」
> アメリアは首をふった。それから、ごく適切な、少しだけすまなそうな表情を浮かべて言った。
>「現在、私たちの使える白魔術では、解毒や復活がせいぜいです。あと、巫女の私に許されているのは『カン』というか…… 何かを知らされる力だけ」
>「そうか」
>「すみません」
>「気にするな。ダメでもともとで聞いた、と言ったろう」
> 俺は紅茶のカップをもちあげ、アメリアのほうに少しだけ寄せた。それから不思議そうな蒼い双眸に、にやりと笑って見せてやる。
>「ま、しばらく一緒に動くことになりそうだ。よろしくな、お姫さん」
> アメリアは一瞬だけきょとんとしてから、にっこりと笑顔を浮かべた。
>「アメリアと、呼んでください。ここは旅の空ですから」
>「わかった、アメリア」
>「よろしくお願いします、ゼルガディスさん」
> アメリアも紅茶のカップを持ち上げた。俺たちは軽くカップをあわせて、静かに乾杯した。
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