◆-というわけで・・・。-投稿者:サハラ イワリ(11/18-19:11)No.52
 ┣┳〜1:PAST  VARGARV〜-投稿者:サハラ イワリ(11/18-19:13)No.53
 ┃┗━〜2:PAST  FILLA〜-投稿者:サハラ イワリ(11/18-19:15)No.54
 ┣━〜3:PAST  AMERIA〜-投稿者:サハラ イワリ(11/18-19:18)No.55
 ┣━〜4:PAST PRESENT  ZELGADISS-投稿者:サハラ イワリ(11/18-19:19)No.56
 ┣━〜5:PAST  XELLOSS〜-投稿者:サハラ イワリ(11/18-19:20)No.57
 ┣━〜6:FUTURE  THE ”LINA=INVER-投稿者:サハラ イワリ(11/18-19:22)No.58
 ┣┳〜6:FUTURE  THE ”LINA=INVER-投稿者:サハラ イワリ(11/18-19:23)No.59
 ┃┗┳Re:〜6:FUTURE  THE ”LINA=INVER-投稿者:ももじ(11/19-23:42)No.89
 ┃ ┗━ももじさんへ♪-投稿者:サハラ イワリ(11/20-17:50)No.105
 ┣┳Re:というわけで・・・。-投稿者:松原ぼたん(11/18-23:17)No.60
 ┃┗━松原 ぼたんさまへ♪-投稿者:サハラ イワリ(11/20-17:16)No.101
 ┣┳Re:というわけで・・・。-投稿者:たりしん(11/19-10:14)No.66
 ┃┗━たりしんさんへ♪-投稿者:サハラ イワリ(11/20-17:24)No.102
 ┣┳Re:というわけで・・・。-投稿者:りう(11/19-11:49)No.67
 ┃┗━りうさまへ♪-投稿者:サハラ イワリ(11/20-17:31)No.103
 ┣┳Re:というわけで・・・。-投稿者:まっぴー(11/19-12:42)No.68
 ┃┗━まっぴーさまへ♪-投稿者:サハラ イワリ(11/20-17:36)No.104
 ┣┳やったぜっ、サハラッチ!!-投稿者:水彩まり(11/23-15:42)No.140
 ┃┗━水彩まりさんへ☆-投稿者:サハラ イワリ(11/26-01:07)No.171
 ┗┳サハラちゃぁぁん☆へ-投稿者:(11/25-16:31)No.156
  ┗━洸ちゃ〜ん!!へ☆-投稿者:サハラ イワリ(11/26-01:40)No.175


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52というわけで・・・。サハラ イワリ E-mail 11/18-19:11

これは、今や冬眠中の猫南蛮亭の話題別掲示板に載せた、私サハラの恥ずかシー小説です(笑)

只今「6」まで書いていたので、それを再掲示した後に、また新しく3話ほど書くかもしれないです(^^)

思ったより好評をいただいて、嬉しいかぎりです(幸)
こんな私に感想をくれたお方、励ましてくださった方、そして見たいとおっしゃってくださった方(ありがたすぎですぅ・涙)ありがとうございます!!!

どうぞ末永く見守ってやってくだされば幸いですぅ(^^)

ではでは、駄文ですが、どうぞ。

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53〜1:PAST VARGARV〜サハラ イワリ E-mail 11/18-19:13
記事番号52へのコメント
『1:Past Vargarv』

安らかに、清らかに。
その竜は眠っていた。小さなゆりかごの中で、衣に包まれながら。
そして、暖かい、自分を見守ってくれる視線を感じながら・・・。


どおんっ!!

どこかで爆発がおこる。しかし、炎の海の中での爆発音は、悲鳴や怒号にかき消されるだけだった。
金色の竜たちは、逃げまどう黒い古代竜の羽を、身体を、そして心を、手にした黄金の槍で貫いていく。

・・・ごぉっ。
うなるような音をたてて、炎が目の前に散りかかる。
「やだよぉ・・・父さぁん・・・・・母さぁんっ・・・」
ひとつの民家の片隅で、1人の古代竜が泣いていた。
「怖いよぉ・・・・・助けてよ・・・・・」
逃げなければいけない。だが動けない。ここに居ても、炎で死んでしまうだけなのに。
あふれる涙を止める方法を知らない、幼い竜は、ただ炎のけむりに痛むのどから、声を絞り出して泣いていた。

「ヴァル・・・!」
炎の向こうから、声が聞こえた。はっと顔をあげると、そこにいたのは古代竜の母親だった。
血にまみれ、火傷を負った身体を、何かに支えられて歩いてくる。
「母さんっ!無事だったんだねっ・・・・・・」
歓喜の声をあげ、ふみ寄ろうとする竜。母は、ゆっくりと幼子に手をのばし・・・。

とさっ・・・。

のばされた手は、炎の舞う空をかき、地に落ちた。
「・・・・・!!」
竜が息を飲み、倒れる母の姿を見る。母の胸を貫いているのは・・・黄金に輝く槍だった。
母の背中を槍で突き刺し、一匹の黄金竜がその後ろに立っている。
その黄金竜のすぐ下・・・足下には、もう一匹の古代竜が死んでいた。
「とー・・・さん・・・」
涙は出なかった。幼い古代竜の思考は、信じるという事を理解しなかった。
「うそだよねっ・・・・ねぇ・・・・死んじゃったりなんかしないよね・・・?」
古代竜は、のどから声をしぼり出す。
「忌まわしいエンシェント・ドラゴンの血族よ」
炎を逆光に・・・黄金竜が言った。
古代竜は、ほうけた目でそいつを見上げる。

・・・こいつは誰なんだろう?僕たちとは違う・・・なんでこんな所に、知らない奴がいるのかな・・・・

「偉大なる神の名の元に、汝等に制裁を下す」
黄金竜が、無機質な声で、そう告げた時。

・・・ちがう。
古代竜は理解した。
・・・父さんは死んだ。母さんも死んでしまった。殺したのはこいつだ。
目の前にいるこいつ。
忌まわしい? 神? 何故?

「神さま・・・?」
古代竜は、小さくつぶやいた。
黄金竜が、母の背中を貫いていた、その槍をかざして近づいてくる。
「助けてくれないの・・・・?」
「死ね」
黄金竜のつぶやきが耳に入り。その瞬間。

・・・・ずっ!

古代竜は、金色の鋼に、その手のひらを貫かれた。
「ああああああああっ!!?」
痛みか、怒りか、悲しみか。彼は叫んだ。
ひきつる腕をかかえて、古代竜はうずくまる。

・・・神さま?

「すぐ楽にしてやろう」

・・・僕や、父さんや母さんは何かをしたんですか?

古代竜の、遠のく意識の中で、ただ炎と血が、愉快なくらい降りかかる。

・・・助けてくれないの?

「・・・僕たちがっ・・・」
古代竜はうめいた。黄金竜が槍を振り下ろす!
「何をしたっていうんだよおぉぉぉぉっっ!?」
ばさっ・・!
広げられた漆黒の翼・・・・黒いかぎ爪。

ざんっ!!

「・・・っがあああああああっ!」
古代竜の、恐ろしい力で突き出された鋭い爪刃は、黄金竜の胸をひとつきに・・・・・黄金竜は、のたうった。
「・・・この・・っ!
 邪悪なる・・・・邪悪なる・・・
  汚れた・・・・竜め・・・・っ!」
それだけをうめき・・・・黄金竜は力つきた。

古代竜は、その力の抜けた黄金竜を愕然とながめ・・・。
死に絶えた母と父に目をやり・・・。
血にぬれた自らの腕を、呆然と見やり・・・・。
古代竜は・・・ただその場にうずくまって叫んだ・・・・・。



ヴァルガーヴは、自らの腕を見た。

あの時の血は、まだ残っているだろうか・・・。

そう、ふと考えて、自分の考えに嫌悪の顔をする。
「いいだろう・・・あんたらと手を組もうじゃねえか」
振り払うかのように、目の前の異世界の者に言い放った。
ぐっ・・・と手を握りしめ、前へ突き出す。
「ガーヴ様を殺した奴らを、皆殺しにできるならなっ!!」

古代竜は、いつか見た甘い夢を捨てたのかもしれない。
あの炎と血の、紅の中に。


安らかに、清らかに・・・・・・。
その竜は眠っていた。小さなゆりかごの中で、衣に包まれながら。
そして、暖かい、自分を見守ってくれる視線を感じながら・・・。

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54〜2:PAST FILLA〜サハラ イワリ E-mail 11/18-19:15
記事番号53へのコメント
『2:Past Filia』


大聖堂には、小さな灯火が浮かんでいた。
青白く光るそれは、唯一この空間にある光源。
闇の中にそれはただよい、張りつめられた空気を、よりいっそう冷たいものにしていた。


きぃぃっ・・・。

小さく扉がきしみ、小さな少女が入ってくる。
金色の髪をたなびかせ、足音もたてずに、静かに大聖堂の中央へと歩み寄った。
大聖堂のつきあたりにある、火竜王、スィーフィードの神像へと、手をにぎって祈る。

「何をしているんだ?フィリア・・・・」
唐突にかけられた声に、少女はびくっと身をふるわせて振り返った。
「お父さま・・・・」
そこにいたのは、大神官バザード=ウル=コプト。少女の父親であった。
白く、紫色の縁取りのある神官服を身につけた彼は、ゆっくりとフィリアに近づく。
「何をしているんだ?」
さきほどと同じ質問を、バザードはくりかえした。
「・・・祈りを捧げていました・・・」
フィリアは、静かに答える。
「何を祈っていた?」
バザードの言葉に、しばらく息を飲む。
「・・お父さま・・・・
 火竜王様は、正義をふみはずしたりはしませんよね?」
「何があった・・・・・フィリア」
父の問いに、フィリアはしばらく目を閉じ・・・・顔をあげた。
「炎の・・・血の色が見えます・・・
 しばらく前から、その意識が流れ込んでくるのです。
 そして・・・・どこかで、誰かが泣いているんです」
涙といっしょに、フィリアは最後の言葉を放った。
「その誰かに聞いてみました。
 何故泣いているのか・・。
 すると、彼はこう言いました。『僕は神さまに殺された』と」
バザードは、黙って娘の言葉を聞いている。
「火竜王様は、どうしてその方を救って差し上げないのですか!?」
フィリアの叫びに・・バザードは困ったように肩をすくめただけだった。
「お父さま?」
「フィリア・・・火竜王様は、悪い者には、それなりの罰を下す。
 その彼が救われないのは、きっと汚れた者だからだ」
「嘘です!!」
フィリアは断言した。
「彼は、汚れてなどいませんでした!」
「落ち着きなさい、フィリア」
バザードは、少女の肩に手を置いて、フィリアの瞳をのぞきこむ。
「正義というものは、自分自身のものでしかない。
 火竜王様は、常に正しい正義を下されるのだ」
「分かりません・・・」
フィリアは苦しげに頭をふった。
「本当の正義とは、なんなのですか?」
「それは、納得がいかないのなら、お前自身が見つければいい・・」
少女は、ますますわけのわからないという風に首をかしげる。
バザードは苦笑して、フィリアの肩から手を放した。
「それは最長老様も同じ事・・・私は、その正義に従う決意をしたまでだ」
そう言って、バザードは大聖堂から姿を消した。
去っていく父の後ろ姿を見て、フィリアは途方にくれて、火竜王を見た。
神像は、全くの無言で大聖堂を見下ろしている。

・・・納得がいかないのなら、お前自身が見つければいい・・・

父の言葉が頭の中で響き、少女は、神像の火竜王に、寒気を感じた。
「・・・どうか、彼を救ってあげてください」
それだけをつぶやくと、フィリアは父を追って大聖堂から飛び出した。


「フィリア=ウル=コプト。お前を、聖位一位の巫女として、火竜王の祝福を与える」
最長老の厳かな声が大聖堂に響き、それとともに、差し出されたゴールド・ドラゴンの宝玉を、フィリアは静かに受け取った。
淡く、青白く光るその宝玉は、どこか惚けたように輝いている。
それを見て、フィリアはかすかに顔に憂いを走らせた。

「私はか弱き者たちを救い、火竜王様の正義の元に進みます」

その儀式を見ていた父、バザードは、穏やかに苦笑した。


大聖堂に飾られた神像は、全くの無言で、黄金色の竜たちを見下ろしていた。


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55〜3:PAST AMERIA〜サハラ イワリ E-mail 11/18-19:18
記事番号52へのコメント
『3:Past Ameria』


「アメリア、よく聞くんじゃぞ・・・」

いつもと違って、父の顔は怒っているように見えた。

「母さんが死んだ」


知ってた・・・・・。

アメリアは、静かに思い出していた。
母が死んだ時、アメリアの姉、グレイシアは、その現場を目の当たりにしたらしい・・・。

「ねーさん、どうしたの?」
部屋にいる姉にそうたずねても、グレイシアは何も答えなかった。
夜もふけた遅く・・・・。
部屋のランプもつけないで、グレイシアは沈痛な顔をしていた。


聖王都は、白く染まっていた。
朝から曇った空が、灰色の光を降らせている。
神官達の礼服、集まっては去っていく人々の喪服・・・その中で漆黒に輝くものは、神殿の中央にあるひつぎだった。

アメリアは、その黒いひつぎを、黙ってじっと見ていた。
歯をくいしばるように頬を固くして、耐えるようにまゆをひそめて。
手に持った白いバラをぐっと握りしめて、静かにふるえている。
順に花を捧げていく親族たちに見向きもせずに。

「アメリア」
父の呼びかけに、ひとつ、びくっ、と身を振るわせると、静かに椅子から立ち上がって、ひつぎへと歩み寄る。

ひつぎの中には、ひとりの女性がいた。
白い花の中にうずもれて、白い白粉をぬったその肌のなかで、黒く輝くその髪が妙に印象的だった。

「かーさん・・・」
ぽつり、と少女は呟いた。
涙がぽろぽろとこぼれていくのは分かっていたが、どうにも止められなかった。


かーさんは殺されたのよ。

アメリアは、ひとり自分の部屋で考えていた。

「なんでそんなことをする人がいるんだろう・・・・」
つぶやいて、難しい表情を浮かべて寝返りを打った。
「そんなの、したって何にもいいことないのに」


「ねぇ・・・とーさん」
フィリオネルは、親戚達への手紙を書いている最中だった。
忙しくペンを動かす父に、アメリアは遠慮がちに声をかける。
「・・おっ、なんじゃ、アメリア?」
アメリアの姿に気付くと、フィリオネルはあくまで陽気に振り返った。
アメリアが部屋に入るのをためらっていると、父は娘のところまで歩いていって、頭をなでながら微笑んだ。
「今日は早く寝るんじゃなかったのかのう」
アメリアは、ふるふると頭を横にふって、父を見上げる。
「とーさん、かーさんは、どうして殺されたの?」
フィリオネルは驚いた顔をしていたが、少し目をふせて答える。
「世の中には、そういう正義に歯向かうけしからん奴がおるんじゃ」
「せーぎ?」
「そうじゃ!」
フィリオネルはおおげさにうなずいて、わしゃわしゃと髪をなでながら、ぐっとこぶしを握る。
「自らの野望のため、他人のことなど眼中に無い奴ら、それはすなわち悪じゃ!!
 正義というものはな、そーいう奴らを絶対に許してはいかんのだ」
力いっぱいにそう言う父を、呆気にとられたように見つめながら、アメリアの中で、何かが組み立っていった。
「アメリア・・・母さんが死んだことは決して忘れてはいかんぞ。
 だが、ただいつまでも、そこで悩んでいるのでは、どうにもならんからのう」
父は優しくそう言うと、アメリアをひょいとかつぎあげた。
「わあぁっ!」
いきなり高くなった視界に目を見張って、アメリアは声をあげる。
「どれ、眠れんなら、父さんがついておってやるわ」
笑いながら自分を支える父を、アメリアは初めて上から見下ろした。


「へっ!?ねーさん、いなくなったの!?」
父の言葉に、アメリアはすっとんきょうな声をだした。
「そうなんじゃ・・・・修行の旅に出るとかで、あっという間におらなくなってしもうた」
フィリオネルは困った顔でそう言うと、グレイシアの残した手紙をアメリアに差し出す。
「ねーさん・・・・・」
手紙に目を通した後、アメリアは静かにつぶやくと、そっと微笑した。

ひとりで、悩むように考えていたグレイシアをふと思い出す・・・。

ねーさん、何か分かったのかな。
・・・・それとも、これから見つけるのかもしれないな。

そう考えて、アメリアは父の顔を見上げた。
「なんじゃ?」
フィリオネルは不思議そうにアメリアの顔を見返す。
「とーさん、絶対、『あく』なんかに負けないよねっ!」
父はその言葉を聞いて、嬉しそうににやりと笑った。
「とーぜんじゃいっ!!」
「ならわたしも負けないっ!」
アメリアも笑って、ぐっ、と拳をかかげた。


「あ」
アメリアは、本から出てきたひとつの絵に、小さく声をあげていた。
それは・・・ひとりの女性の肖像画。
黒く長い髪をもって、こちらを見ている人に、アメリアはにっこり笑いかける。
「かーさん、泣いたりしてごめんね」
そうつぶやいて・・・・・・。
アメリアはその写真を、机の上に置いた。


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56〜4:PAST PRESENT ZELGADISSサハラ イワリ E-mail 11/18-19:19
記事番号52へのコメント
『4:Past&Present Zelgadiss』


雷音が響いた。

ゼルガディスは閃光から間をおかずに降りた轟音に、立ち止まった。
嵐の兆しを肌に感じて、彼は空を仰ぎ、小さく眉をしかめる。
マントの下に隠した剣をかかえて、近くの酒場の扉を押した。


酒場という名のつくところには、どこも薄闇と独特なにおいがしきつめられている。
「独特のにおい」・・・とはいえ、ここにいる奴らからは、全てそのにおいがしているだろうが・・・。

闇が空の青を隠すころになると、その雰囲気が強くなる。

俺からもそんな匂いがするのか。

苦笑といっしょに、そんな思いをかみ殺し、ゼルガディスは酒場の隅のテーブルに腰掛けた。
アルコールの臭い。裏のある笑い。本気のない雑談。
それらを静かに眺めながら、彼は外に響く雨音に耳をすませていた。
それは次第に音を増していき、外の地面や建物を打っているのだ。

「こら、ぼーず」
唐突にかけられた声に、冷たい思いでゼルガディスは視線を送った。
目深におろしたフードごしに見た先には、予想通り下卑た笑みを浮かべた男どもが立っている。

赤らんだ顔にアルコールの臭いがつきまとい、ただでさえ悪い顔が、さらに落ちて見えた。
まわりに座っている男たちもにやけながらこちらを見ている。

・・・カモにされたな。

冷静にそう考えると、彼は男に向かって言い放つ。
「悪いが、お前達につき合う金と言葉は持ち合わせていない」
突き放した言い方が気に入らなかったか、男は赤い顔をさらに赤くすると、ゼルガディスに詰め寄ってくる。
「ああ?何様のつもりだ、てめぇはー・・」
そう言ったかと思うと、おどしのつもりか手にしたジョッキを、机の上に、どかんと投げ出す。
まわりの男達が、一斉に歓声をあげて騒ぐ。

単細胞な男だ。

さげすみもこめて男を見上げ、ゼルは問答無用で席をたち、扉を押した。
「こ・・っこらっ!無視すんじゃねえっ!」
あわてて追ってくる男に目もくれず、ゼルガディスは雨の外へ出た。


雨・・・・。
嫌いなわけではない。だが、今は雨に濡れていられるほどの心が持てなかった。
しかし、あの酒場でこれ以上話し込みたくなかった。

男からは「におい」がしていた。
彼はそのにおいをかいでいたくなかったのだ。

自分からも同じ「におい」が、するくせにな。

雨の降る通りを歩きながら、ゼルガディスはぬれるフードをうっとうしげに見つめた。

「待ちやがれっ!」
月並みにセリフが雨音に混ざったかと思うと、彼の周りをさきほどの男たちが囲む。

「お前達につき合うヒマなどないと・・・聞こえなかったか?」
「てめえのヒマなんざどうでもいいっっ!」
さきほどの男が頭から蒸気を出してさけぶ。
「人が甘く見てりゃ調子にのりやがって!なんでもいいから金をよこしなっ!」
「その必要はないな」

これくらいか・・・。

ゼルガディスは鼻で笑って、男に背を向けた。
「な・・・・なめんなよっ!」
そうほえて、男はナイフをつきだす!

・・きんっ!

固い音が雨音に響き、男のナイフは軽い音をたてて地面に落ちた。
ゼルガディスの腕にはじかれて。

「ばっ・・・ばかな!?」
驚愕の声をあげ、男は数歩後じさる。
落ちているナイフのつかを蹴って手元まではじき、ゼルガディスはそれを無言で投げつけた。
「ひっ!」

ざっ!
ナイフは男の髪を数本宙に踊らせて、向かいの壁につきたった。
こしをぬかした男に向かって、剣を、すっ、とつきつけて、ゼルガディスは静かにつぶやいた。
「お前達ごときチンピラの命に興味はない。
 さっさと失せろ・・・」
「な・・・っんだとぉっ!?てめ・・・・」
まだじたばたと暴れる男に、ゼルガディスは冷たく剣をおしつける。

「死ねっ!」
唐突に、後ろから、他の男どもが一斉に斬りかかった!
とっさに前の男につきつけていた剣をひとふりする!
がっ!
ゼルガディスの剣が、男たちのナイフをすべてはじきとばした。

その時・・・・。

ゼルの目をひた隠しに守ってきたフードが、風で後ろへすべる。
銀色の、鋼の髪。灰色の岩の肌。
それらが、雨の滴にさらされた。

「・・・・キメラ・・・・!?」
男のひとりがそううめき、男たちが息をのむ。

かっ・・・。
雷の光にうつしだされたゼルガディスの顔は、明らかに・・・『人間ではなかった』

「人間じゃねぇぞっ・・・・!」

にんげんじゃない。

そのひとことに・・・ゼルガディスは剣をふりあげて叫んだ。
「失せろ!」
男達は、雨の通りを我先にと逃げ出していく。

人間じゃない。

ゼルガディスは、しばらくその場所で、男たちの逃げていった方を、睨んでいた。
その視線を、自分の腕におろし・・・・。
がっ!
自分を斬りつけた。自分のにぎった剣で、自分の腕を貫こうとする。
だが・・・肌は、剣にふれても傷さえつかない。
苦笑して、彼は剣を納めた。


きぃ・・・。
さきほどの酒場の扉をもう一度押した。

「オヤジ・・・・雨宿りの礼だ」
そう言って、銅貨をカウンターに投げ出して・・・・彼はその酒場に背を向けた。


「お前さん・・・・」
マスターの声に、ゼルガディスは立ち止まる。
「人間じゃあないな」

『人間』じゃない。

ゼルガディスは、口に皮肉な笑いを浮かべて、マスターへと振り返った。
「どうでもいい・・・・そんなことは」


「ゼルガディスーっ!」

ゼルガディスは、名前を呼ばれてふりかえった。

「・・何ぼーっとしてんのよ、だいじょぶ?」
背中をつつきながら聞く女。

「昼飯のことでも考えてたのかあ?」
脳天気に言う男。

「ゼルガディスさん、何か考えごとですか?」
首をかしげて、心配そうに聞いてくる少女・・・。

しばらくゼルガディスは彼らを見つめて、ため息をひとつ。

「いや、まぁ・・・・
 どうでもいいことを、ちょっとな」

そう言って、空を見上げた。


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57〜5:PAST XELLOSS〜サハラ イワリ E-mail 11/18-19:20
記事番号52へのコメント
『5:Past Xelloss』


銀色の波が精神界にひびく。
針金をはりつめたような音が鼓膜をうった瞬間、華やかに火花が舞った。
宙に一直線の炎の大花が咲いた後・・・・
それを彩るように、鮮血の紅を散らしながら、竜たちは遙か下へと落ちていった。

「ずいぶんと呆気無いものなんですねえ・・・」
ゼロスは大地に姿を現し、累々と横たわる竜の群れを眺めた。


”冥王のたてた一つの計画・・・それは『赤眼の魔王』を復活させる、というものだった”


「・・・ぐぅっ・・・」
ゼロスの足下に転がる一匹の竜が、ぴくり、とうごめく。
それは乱れた息のまま、ゼロスの足をつかもうと、ふるえる手をつきだしてきた。
「へぇ・・・」
ゼロスはおどろきの声をあげた・・・楽しそうに、演技がかった仕草で。
「元気にのは良いですけど・・・・ま、とりあえず、仕事ですから。
 悪く思っていただいて結構ですよ」
そうつぶやいて、手にした錫杖を軽く上げ・・・・・

がっ。
「ぅああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
竜は断末魔の悲鳴を当たりに響かせた。
苦しげに痙攣を繰り返す手で地面をかきむしり、その手も、ふいに動かなくなる。

「下手に頑張るから、よけいに苦しむことになるんですよ?」
今や動かない竜に、人差し指をたて、子供をたしなめるようにゼロスは言った。


「あらかた片づきましたか」
いまだあちらこちらに感じる気配もあるが、とりあえず殺気まで放つ者はなくなったようだ。
それは敵意がないか、動けるほどの傷を負っているかのどちらか。
ならば戦力になるはずもなし・・・わざわざ殺しに行って力を使う必要はない。

ゼロスはやれやれと息を付き、近くの竜の死骸に腰掛けた。

彼の上司は、今は水竜王を封じる結界を張っている。
ゼロスは下手に力があるがゆえ、他の神官、将軍とは違って、水竜王をとりまく黄金竜たちの処分を申しつけられた。

まったく・・・なんでこんな雑用しなきゃいけないんでしょうねぇ・・・

そう思いつつも、冥王直々の任命なのだから逆らいようもない。

別にすぐ帰ってもいいんですけど・・・帰れば別の仕事を押しつけられるだけでしょうね。

周りを見回してみると・・・・黒々とそびえるカタートの山を染めるように、黄金と紅の色が続いている。遙かまで続く血の群。


”復活した『赤眼の魔王』と、神々の竜・・・・水竜王との戦いは熾烈を極めた”


こっ。
ふと、後ろで物音がした。

「おかぁ・・・さん・・・」
かすかに声が聞こえる。
ゼロスは、時間つぶしと興味半分で、ゆっくりと肩越しに振り返った。
そこには・・・1人の少女がいた。竜族のひとりだろう。

「おかぁさん・・・眠っちゃったの・・・?」
「お母さまがお亡くなりになられたんですね」
ゼロスの声に、少女は顔をあげた。眉をひそめて聞いてくる。
「だぁれ?」
「別にあなたを取って食おうという者ではないですよ」

にっこりと微笑んでゼロスは言った。
少女はしばらくゼロスの顔を眺めていたが、ふいに視線を落として足下の竜に手をあてた。
「おかあさんが寝ちゃったまま起きないの。
 あたし、さっきから呼んでるのに。おきてって」
困ったようにそうつぶやいて、首をかしげる。

「お母さんはもう起きませんよ」
少女が理解していないことに苦笑して、ゼロスは肩をすくめた。
「お母さんは死んでしまったんです」
少女はおどろいたようにゼロスを見た。
「死ん・・・・?」

その時。

ぎうんっ!!

空気を削り取るような音が響き、光がゼロスに収束する!
・・・・ふ・・・・・
ゼロスは小さく息をつき、手にした錫杖をかかげた。

しゅっ・・・
光はあたりに散らばって、空間に溶けた。

「どこに隠れていたのかと思えば・・・・
 いきなり後ろから攻撃ですか?竜族としての誇りをもう少し大切になさった方がよろしいと思いますよ」
「黙れ!!魔族っ!」
怒りの声が辺りにひびき、ふっ、と金色の髪をした男が現れた。
「先に我ら竜族に手をだしたのはお前達だろう。
 一体何が目的だ!?」
ゼロスはにっこりと笑って、人差し指をふる。
「先に手を出されたのは冥王様です。
 冥王様のお許しがなければ、秘密ですね」
「ふざけるでない!」
男の一喝に、ゼロスは困ったように首をかしげる。
「嫌ですねぇ。怒ると身体に毒ですよ?
 僕がうけた命をお教えしますと・・・『水竜王側の竜の戦力を削れ』です」

づっ!

鈍い音がしたと思うと・・・竜族の長老は言葉なく悲鳴をあけた。
「だから・・・・僕はあなたを殺さなくてはならないわけです」
面倒くさそうにつぶやいて、頭をかいた。

「おにいちゃん・・・」
少女の声が小さく、耳に届く。
「おにいちゃんが、あたしのお母さんを起きないようにしたの!?」
間が抜けている・・・ゼロスにとって、間抜けなほどの質問が放たれた。
ゼロスはにっこりと微笑んで、
「ええ。
 その通りですよ」
少女は・・・その答えに、呆然と彼を見つめた。

「はっ!」
竜族の長老がひとつ叫び、ゼロスに光を浴びせる。
ゼロスは無言でそれをはねとばし、指を長老に向けた。
力が、目に見えるほど集まっていき・・・・・。

「長老様まで死んじゃうのっ!?おにいちゃん!」
少女の叫びに・・・ゼロスは答えず力を解き放った!
「おにぃちゃんっ!」
たっ・・・・

がっ!!

力の光が、長老の前に駆け寄った少女を真っ向から貫いた。
・・・・とさっ・・・・

少女はそのまま地面に倒れる。ゼロスは少女を一瞥して、頬をかきながらつぶやいた。
「おや・・・・はずしちゃいましたねぇ・・・」

竜族の長老は、愕然と、目の前で倒れた少女を見つめる。
少女からは・・・・紅い鮮血が、地に染み出していく・・・。
長老は、ぎりっ、と奥歯をかみしめて・・・ゼロスを見た。

「分かった・・・・。
 我が竜族は、何も手出しはしない・・・。
 長老の誇りにかけて・・・約束しよう」
ゼロスはその言葉に、いつものように微笑みを浮かべる。
「ご理解いただけて、何よりですよ」


”その中で、竜族の力を1人で凌駕したという魔族がいた。
 その例は、魔族の力の巨大さを知らしめる伝説として、魔導師たちの見聞に残った。”


長老は、ゼロスに向かって問いかける。
「名前だけ、聞いておこう」

「グレーター・ビースト、ゼラス=メタリオムに仕える者・・・・
 神官、ゼロス、といいます」

黒い神官は、それだけを言い残し・・・・
闇の裏側へ。溶け、消えた。

後は・・・・紅の中にたたずむ長老が残るのみ・・・・


”それは・・・・
 後の世に、『降魔戦争』として語られる事になる”


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58〜6:FUTURE THE ”LINA=INVERサハラ イワリ E-mail 11/18-19:22
記事番号52へのコメント
『6:Future The”Lina=inverse” a』


眠くなるような陽の光が、ゆっくりと地面を暖めていた。
風が草をなでて、静かな音があたりに響いている。
それは、ひとつの静寂なのかもしれない。

平らな丘の上に広がる、小さな草原が佇んでいる。
丘の上には、光を反射する黒い石盤がたっていた。
黒い石盤はだいぶ古いものだったが、その光沢は失われていないようだ・・・。


遠くから、子供のはしゃぐ声が聞こえてくる。
そして、それに答えて笑う女性の声。その声はゆっくりと石盤に近づいてくる。

「やったっ、ぼくが一番だよー!」
はずんだその声といっしょに、1人の少年が丘の向こうから駆けてきた。
「早いわねえ、ヴァル。お姉ちゃん、負けちゃったわ」
ゆっくりと、穏やかな調子で答え、女が少年のもとへ歩いていく。
「姉ちゃんが遅いんだよっ」
得意げに胸をはる少年に、女はやさしく微笑み、手にしたかごを手渡した。
その中に入っているのは、果物と水、そして花束。
「食べていいの?」
嬉しそうにかごの中をのぞきながら言う少年に、女は苦笑して言う。
「もう少しがまんしましょうね。
 ・・・・これは、お供え物なの」
「おそなえもの?」
おうむ返しに聞いてくる少年。女はゆっくりと頷いた。
「誰かのお墓に行くの?」
「ええ・・・・あそこよ」
女は、丘の先にある、草原の中に佇む石盤を・・・墓石のほうをふりかえった。

ざっ!

その時、強い風が草木をうった。女はあわてて片手で少年をかかえ、片手で自分の服のすそをおさえる。
少年は、手の中のかごが飛んでいかないように、必死でかかえこんだ。
風はあっという間にふきぬけ、後は何もなかったように、草原はそよいでいる。

「大丈夫だった?ヴァル・・・・」
「お供え物は無事だよっ」
かごを差し出して、嬉嬉として言う少年に、女は思わずふきだした。
風でぼさぼさになった髪を直して上げながら、かごを受け取る。
「分かりました。ちゃんと後で、何か買って食べましょうね」
「うんっ!」
張り切ってうなずく少年、女は微笑ましく笑って、かごの中身を確かめる。と・・・・。

「ねぇ・・・フィリア姉ちゃん」
男の子が不安げな声でつぶやき、女の服をひっぱった。
「どうしたの?」
「お墓の前に、誰かいるよ・・・?」
「え?」
何の気配もしなかったけど・・・。
女が訝って顔をあげると、その先には・・・・ひとりの黒い影があった。
2人には背を向けて、墓石に向かって立っている。
もちろん・・・それが誰なのか、女には・・・フィリアにはすぐ分かった。

「ゼ・・・・ゼゼゼゼゼロスっっ!!??」
フィリアは裏返った声でさけんだ。黒い法衣、肩まで切りそろえた黒い髪。
ゼロスはゆっくりと振り返った。
「おや?フィリアさん・・・・これはお久しぶりですね。
 百年とちょっと、といった所ですか?」
昔とまるで変わらない姿と微笑みで、ゼロスはフィリアに言った。
対して・・・フィリアの方は引きつりまくっている。まさかこんな所で会うなんて・・・!

「フィリア姉ちゃん・・・知り合い?」
きょとんとした顔でフィリアを見上げる少年・・・・ゼロスはそちらに視線を送って、おもしろそうに笑う。
「その子がヴァルガーヴですか。なかなか大きくなりましたね」
「そんなこと、あなたには関係ないでしょう!」
フィリアは刺々しく言い放つと、少年・・・ヴァルの前にさささっ、と立ちふさがった。
「そんなに邪険にしなくても、僕はその子を食べたりしませんってば」
困ったように頭をかくゼロスに見向きもせず、フィリアはヴァルにささやく。
「いいっ!?あいつには何を言われてもついて言っちゃだめよっ!絶対下心がある奴なんだからっ!!」
「う・・・うん・・・」
とまどったようにうなずくヴァル。
「ひどい言われようですねぇ・・・」
「当然の教育です。だいたい何であなたがこんな所にいるんです!?
 どこかの島で、半分なくなった結界を守ってる上司の所で書類の山でも片づけているんじゃなかったんですか?」
「あの・・・そーゆー言い方には少しむかっとくるものがあるんですが・・・」
昔のように嫌嫌オーラを発しつつ問うフィリアに、ゼロスもわずかにほっぺを引きつらせる。
「ま・・・・ともかく。
 僕がここに来たのは、とりあえず、墓参りというやつです」
「え・・・」
多少気をそがれたように、フィリアは間の抜けた声を出した。
「あの方がお亡くなりになられて、今日で百年たちましたからね・・・」
「魔族に墓参りなんてものがあるんですか・・・?」
「それはそれ、人間界の風習の研究の結果です」
半分あきれたように、そしてもう半分はおかしいようなフィリアの声に、ゼロスは人差し指をたてて言った。
「もちろん、花くらいなら待ってきましたよ」
「あら、準備がいいじゃないですか」
「ほら、アストラル・サイドに咲く、人喰い植物マンドラゴラ」
「・・・捨てなさい!そんなものは!」
ゼロスのとりだした、何やら妖しげな粘膜を放つ花に、フィリアはとりあえずつっこんだ。
「いけませんか?」
「当たり前です」
「しょうがないですねぇ」
残念そうにつぶやいて、花をしぶしぶどこかにひっこめる。

フィリアはジト目で、魔族の神官をにらみながら、かごの中から花を取る。
・・・もちろん、ちゃんとした花である。
未だ会話についていけないらしいヴァルの背中を押して、フィリアは墓石の前まで歩いていった。
「ヴァル、この人をあなたに会わせたかったの」
「僕に?」
目をぱちくりさせて、ヴァルは自分を指さした。フィリアは静かにうなずいて、その場にひざまずき、手を会わせる。
ヴァルもあわててそれに習った。
「お久しぶりです」
墓石の前に花を供えて、フィリアはぽつり、とつぶやいた。

「ねぇ・・・この人、誰なの?」
ヴァルが墓石を指して言う。
「私に、勇気をくれた方。・・・・・そして。あなたを救ってくれた人よ・・・」
フィリアはかごからリンゴを取り出して、ヴァルに渡した。
ヴァルはしばらく、受け取ったリンゴを見ながら考えていたが、そのリンゴを墓の元へ、供えた。


”next−B”

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59〜6:FUTURE THE ”LINA=INVERサハラ イワリ E-mail 11/18-19:23
記事番号52へのコメント
『6:Future The”Lina=inverse” b』


ぱさぱさっ・・・っと鳥が飛び立ち、風がただ木々をゆらす。

「全く・・・何度もこの世界を助けてくれましたね・・・・この方たちは」
黙祷を捧げた後、ゼロスは飛び立った鳥を目で追いながら笑った。
鳥は白い羽を羽ばたかせ、青い空にとけて見えなくなった。

「フィリアさん、ヴァルガーヴをよろしくお願いします」
「あら?どうしてあなたの口からそういう言葉がでたんでしょう」
「そのうち、僕の上司様からスカウトしに行けとのご命令があるでしょうからね」
あっさりと言ったゼロスの言葉に一瞬フィリアはぼーぜんとする。
「じょ・・っ冗談じゃありませんわっ!!」
フィリアは飛び上がってさけぶと、ヴァルをかばうようにかかえこんだ。
「またこの子を苦しみの中へ突き落とすつもりですかっ!?
 やっと幸せな人生が送れるんです!もうそっとしておいてあげて下さい!」

きっ!とゼロスをにらんで、フィリアは言い放った。
ゼロスはやれやれ、とため息をついて、ヴァルに近づく。
ぎゅっとヴァルをだきしめて、歩み寄るゼロスをにらみあげるフィリア。
ヴァルは不安げに、そんなフィリアと、歩いてくるゼロスを交互に見つめる。
ゼロスは、そのヴァルににっこりと笑って・・・・。
その少年の頭を、軽くなでた。

「は?」
フィリアは目を丸くして、ゼロスを見た。
「まったく、フィリアさんも変わっていませんねえ。
 もう百年たったんですから、少しは大人になったらいかがです?」
いきなり小馬鹿にしたように人差し指をたてて言うゼロスに、フィリアは始め呆気にとられていたが・・・。
「な・・・・・・なんですってえぇ!?
 あなたこそ!その減らず口!全然変わっていないじゃないですか!!」
「ね、姉ちゃん?」
怒り心頭に叫ぶフィリアに、ヴァルはびびった声をだす。
どうやら久しぶりにゼロスの嫌味を聞いて、逆上したようである。
「だいたい、何なんですか!いきなりお墓参りなんて来て!
 葬儀にはちゃんとでたの!?」
「いやですねえ、そんな昔のことを」
「たった百年じゃないですかっ!」
じたんだを踏んで怒るフィリア。ゼロスはそれを見て笑いながら、フィリアの攻撃をさけるため、ふっ、と空間を渡って、墓石の近くの木の上に現れた。
「ねっ、姉ちゃん!あの人も空間をわたれるの!?
 ひょっとしてあの兄ちゃん、ドラゴン?」
フィリアのすそに隠れたまま愕いた声でヴァルがさけぶ。
「ドラゴンなどといっしょにしないでいただきたいですね」
「魔族なんかとドラゴンを間違えちゃいけません!」
ヴァルの問いに、全く同時に答えるふたり。
ヴァルは困ったようにふたりを見比べ、墓石の影に隠れた。なんとなく、そこが一番安全な気がしたのだ。

「では、フィリアさん。またお会いできる日をたのし〜みに待ってます」
皮肉まじりに言い放って、ゼロスはふっ、と消えてしまった。
ゼロスのいなくなった木の上をにらんで、フィリアもふんっ!とそっぽを向いた。

「ヴァル・・・いつまでそこにいるの?」
自分を落ち着けて、未だ墓石のスミからこっちを見ているヴァルに呼びかける。

「もうおこってない?」
「怒ってませんよ」
微笑んで答えて、フィリアは手をヴァルにさしだした。
ヴァルは安心して、フィリアの手をつかむ。

「ねえ、フィリア姉ちゃん」
空になったかごをかかえて、丘をおりていく。
今日はずっと暖かだった。
「あのゼロスって兄ちゃん、どんな人なの?」
「人じゃなくて、魔族よ」
くすっと笑って、フィリアはつぶやくように答えた。
「陰険で、エゴイストで、人は簡単に見捨てるし、ろくでもない奴だけど・・・・
 まぁ、一応、恩人ってものかしら」
「恩人って、人じゃないんじゃなかったの?」
ヴァルの素早いつっこみに、フィリアは笑って軽く額をこずいた。


小さく、ゆれる炎。
フィリアお手製の、せとものの小さな教会の中にろうそくを入れて、ヴァルはその火を見ている。

きぃっ、とドアの開く音が聞こえて・・・フィリアが入ってきた。
「まだ眠っていないの?」
心配そうに聞いてくる、姉なのか母なのかよく分からない竜の女。
「うん」
ヴァルは炎からは目をはなさないで、返事をした。

この炎が、とても怖かった気がする。紅く燃える火に泣いたことがあるような気がする。
でも・・・今はとても暖かい。

「どうしたの?」
ベッドの側に座って、優しくフィリアは聞いてきた。
「今日行った、あのお墓・・・・。
 あの中にいるのは、どんな人なの?」
少し不安げに、そして大きな期待を持って、ヴァルはフィリアを見た。
フィリアは無言で、シーツをヴァルの肩まであげて、ろうそくの炎を目で追う。
「あの、炎みたいに・・・。
 すぐ亡くなってしまう、短い命の人間だけど、とても綺麗に燃えていたわ・・・・」
ヴァルは枕に顔をのせて、ろうそくの炎でゆらゆらと光るフィリアを見つめた。

フィリアの話は、ゆっくりと・・・ヴァルが寝付くまで、子守歌のように続いた。


「そして、あの方は、それからも多くの魔族を倒して」
フィリアがふと気付くと、ヴァルは、もう寝息をたてていた。
フィリアは微笑んで、ヴァルの額に小さく唇をあてると、ろうそくの炎を吹き消して・・・・
部屋のドアを閉めた。



『・・・それからも、彼の者は多くの魔族を打ち破り・・・・・
 多くの魔導師たちの間で、広く、賢者として敬われる事になった。
 我々は、彼の者を”魔を滅する者”と呼んだ・・・・・・』


「デモン・スレイヤーかぁ」
ひとりの少女が、ぽつりとつぶやいた。
栗色の髪をした、赤い瞳の少女である。
そこは魔導師協会の図書室で、しーんとした空気が漂っていた。
少女は手前に分厚い本を広げている。
「凄いなぁ・・・憧れちゃう。あたしも魔術使えるようになったら、こんなに強くなれるかな」
あくまで周りには聞こえないように、はずんだ独り言をする。
「よしっ!」
何かを決心したように言った。
そして、少女は・・・・・・・。

ぱたんっ、と、その本を閉じた。



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89Re:〜6:FUTURE THE ”LINA=INVERももじ 11/19-23:42
記事番号59へのコメント
やっと…読めたよ〜再掲示していたんですね、結局某所でつながらないまま終わってたんで
”母ちゃん、やったよ!!”と叫びたい気分です(^^)ワケわかりませんね(笑)

>アストラルサイドに咲く人喰い植物マンドラゴラ

…ツボに入った…こういうの、弱いんです、だめだおかしいっ(^^;)
”ギボアンドアイコ”と同じくらい笑ったますますワケわかりませんね(^^;)
そうそうヴァルかわいいね〜なごみますね〜”姉ちゃん”…か、かわいいな…
フィリアさんと仲良くね〜ゼロスとは犬猿の仲でいいな〜(笑)
最後に出てきた少女はやっぱり主人公ですか???
トリは主人公がしめるっていいな…リナ大好き!!!叫ぶなよ…また何か書いて下さいね(^^)

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105ももじさんへ♪サハラ イワリ E-mail 11/20-17:50
記事番号89へのコメント

>やっと…読めたよ〜再掲示していたんですね、結局某所でつながらないまま終わってたんで
>”母ちゃん、やったよ!!”と叫びたい気分です(^^)ワケわかりませんね(笑)

やった!!ももじさんにも6を読んでいただけたのですねっ!!(うるうる)
再掲示してよかったよぉ・・・・ホントに・・・・(T T)
ありがとうございます〜・・・(ぐすぐす)←嬉しくて泣いているサハラ


>>アストラルサイドに咲く人喰い植物マンドラゴラ
>
>…ツボに入った…こういうの、弱いんです、だめだおかしいっ(^^;)
>”ギボアンドアイコ”と同じくらい笑ったますますワケわかりませんね(^^;)

あははは(^^)笑っていただけたとは(笑)
このマンドラゴラ、下書き時点では全く存在してなかったんですよ。
それを、「猫南最後の小説なんやから、笑いをとるやつ(らしきもの)のひとつでも書きたい!」と思い立って、そっこーでつくったんです(恥)

良かった・・・笑っていただけて・・・(ほっ)
しかも、ももじさんに!!!(涙)幸せだ・・・・(T‐T)←じ〜ん・・・・


>最後に出てきた少女はやっぱり主人公ですか???

ふふふ、どうでしょう(ニヤッ)

>トリは主人公がしめるっていいな…リナ大好き!!!叫ぶなよ…また何か書いて下さいね(^^)

是非叫んで下さい!!(笑)
ううううう嬉しいです!感想、ありがとうございました!!!!
また書きます・・・・期待しないで待っていて下さいませ(T T)

ああ・・・・幸せ・・・・(*==*)←ぽっ

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60Re:というわけで・・・。松原ぼたん E-mail 11/18-23:17
記事番号52へのコメント
 再掲載ですか。うれしいです。
 おまけに新作あるんですか。すごくうれしいです。
 頑張って下さい。
 ああ、うれしい。

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101松原 ぼたんさまへ♪サハラ イワリ E-mail 11/20-17:16
記事番号60へのコメント
こんにちは〜(^^)松原さま!!
こちらでも読んでいただけたんですね・・・(感)
わざわざレスありがとうございます!!!(うるうる)

> 新作あるんですか。すごくうれしいです。
> 頑張って下さい。

うっ(^^;)、頑張ります!

> ああ、うれしい。

喜んでいただけてこちらも幸せです(涙)
松原さんの小説も楽しみにしていますからね〜(はぁと)

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66Re:というわけで・・・。たりしん E-mail 11/19-10:14
記事番号52へのコメント
猫南では読んでなかった(というより小説自体目を通す余裕がなかった)ので嬉しいです。
今日は目覚まし代わりに目を通させていただきました。
それぞれにいい小説ですね。面白くて一気に読んでしまいました。
特に,5と6がとても気に入りました。
さらにお書きになられるということで,楽しみにしています。

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102たりしんさんへ♪サハラ イワリ E-mail 11/20-17:24
記事番号66へのコメント

>猫南では読んでなかった(というより小説自体目を通す余裕がなかった)ので嬉しいです。

(*^^*)ありがとうございますぅ!!
ここに掲示したことで、目を通してくださった方が増えたなんて・・・っ!!
してよかったです・・・・しかもわざわざレスなんていただいちゃって・・・(涙)

>それぞれにいい小説ですね。面白くて一気に読んでしまいました。
>特に,5と6がとても気に入りました。

あああああ嬉しいです〜〜!!!(*><*)
そんなに言っていたいただけて、幸せです・・・・(幸)
5と6・・・猫南閉店土壇場で書き上げたものですが・・・・気に入っていただけたなんて・・・・書いて良かった・・・・(T T)

>さらにお書きになられるということで,楽しみにしています。

は〜い!!頑張りま〜す!!!
ありがとうございますっっっっ!!!!

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67Re:というわけで・・・。りう E-mail 11/19-11:49
記事番号52へのコメント
 あぁ・・・夢が現実に・・・・!!
サハラ様っっ!!うれしいですっっ!!しかもあと3つ?!
はぁ〜・・・・幸せです・・・・そうすると、今度はいまだ出てきていないガウリイかな?
それとも違うシリーズ?いえいえ、どっちにしろ、楽しみにしてます!!
がんばってください☆

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103りうさまへ♪サハラ イワリ E-mail 11/20-17:31
記事番号67へのコメント

> あぁ・・・夢が現実に・・・・!!

みゅ〜(^^)夢だなんて・・・・(恥)
読んでいただけて嬉しいです〜(幸)

>サハラ様っっ!!うれしいですっっ!!しかもあと3つ?!
>はぁ〜・・・・幸せです・・・・そうすると、今度はいまだ出てきていないガウリイかな?
>それとも違うシリーズ?いえいえ、どっちにしろ、楽しみにしてます!!

はい(^^)ええと・・・とりあえず・・・ガウリイですね(ニヤリ)
それから・・・・リナの過去の話かな??これ、書きたくて書きたくて・・・(恥)
そして最後は・・・・むふふ(笑)

まぁ・・・これはあくまで予定です(^^)
あまり期待しないで待っていてくださいませ!!(ましてや楽しみなんて・・・!恥恥恥恥・・・・)

>がんばってください☆

は〜い!!頑張ります!!!!
暖かいお言葉・・・ありがとうございますっっっ!!!(感涙)

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68Re:というわけで・・・。まっぴー 11/19-12:42
記事番号52へのコメント
駄文じゃないですよーーーーーーーーー
面白いですよーーーー

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104まっぴーさまへ♪サハラ イワリ E-mail 11/20-17:36
記事番号68へのコメント

>駄文じゃないですよーーーーーーーーー
>面白いですよーーーー

ううううありがたいお言葉ありがとうございます!
痛みいります!!

読んでくださって、ありがとうございました(はぁと)

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140やったぜっ、サハラッチ!!水彩まり E-mail 11/23-15:42
記事番号52へのコメント
♪サハラッチもといサハラ イワリ様

 やった〜、やっと書き込めるよぉ!!(感涙)
 さてさて、感想、感想

ヴァルガーヴ・はぁっ、ひたすらチビヴァルが可愛い+可哀相
       あの、最初と最後の繰り返しの所が好きっちゅ(猫南でも、言いましたね)

  フィリア・おおっ!テレビでは名前のみだったフィリアのパパ登場!
       フィリアの的を射た質問もかっこよかったよ!

  アメリア・チビヴァルの時と同様、泣いちゃいましたねぇ(苦笑)
       フィルさんのカラ元気も可哀相でした、、、。
       グレイシャ(ナーガ)も可哀相、、、。ふぅ〜、犯人許すまじっ!

ゼルガディス・なんだようぅ、皆して、人間じゃないとか、いいやがって〜
       気にしてんだよ!ほっとけや!!

   ゼロス・伝説だね、ゼロス君(ぱちぱち)
       が、私は神族に一票!(清くないけど)
       もう、このままアンチ・ゼロス様で行くことにします(きっぱり)
       でも、描くのは好きぃ〜(アホ)

    リナ・チビヴァルがでた!チビヴァルがでたっ!(喜)
       なんか、いいよぉ〜、フィリアとゼロスの会話(はぁと)
       違和感なかったし。二人に同時ツッコミされたヴァルもたまらん(はぁと)
       リナの名前がでてこない所がまた、かっこいい!
       2代目リナ(?)もいいねぇ(はぁと)でもヴァル♪
       リナも伝説か、、、、、。そうだ、ここに(ごそごそ)
       人様の考えた文から、勝手ですが、拝借させてもらいます。

  
  〜そうして、おだやかに時は流れ、いゆしか私達も伝説の一つとなるだろう、、、。

  
   では、次回に期待して、、、。
    気長にまってると、何か良いことあるかもよ(良いことじゃないかもね、、、。)

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171水彩まりさんへ☆サハラ イワリ E-mail 11/26-01:07
記事番号140へのコメント
感想、ありがとうございます〜(^^)
ううっ、呼んでいただけて幸せですだ(T T)

  
>  〜そうして、おだやかに時は流れ、いつしか私達も伝説の一つとなるだろう、、、。

はは〜っ!ありがとうございます!!m(><)m
素晴らしい言葉だぁ(感)

リナのことを綴った本の最後のページに、リナの走り書きでそう書いてあったら・・・・・。
凄い、ドラマやなぁ・・・・(じ〜ん)

一気に感想、ありがとうございます(T T)


>   では、次回に期待して、、、。
>    気長にまってると、何か良いことあるかもよ(良いことじゃないかもね、、、。)

うっみ〜ぃ(><)是非次回もお付き合いください!
・・・・良い事?
水彩さんが、また小説書いてくれるのかな??(わくわくわくわく)


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156サハラちゃぁぁん☆へE-mail 11/25-16:31
記事番号52へのコメント
やぁぁぁぁぁぁと読めた!!!!!感想ひたすら遅くなっちゃってごめんよぉぅ!!!
ぢつは,これ猫の方に載ってた時,保存してたんだけど,こっちに再掲示してたのね。
ほほほほ・・・・・・(^^)

サハラちゃん☆面白かったよー!!
ま、あたしがゼロス様好きで,どう壊れるかはわかるだろうから,あえて触れないとして(笑)
ふふふふふ楽しみだわ・・・・
「6」以降もだけど、サハラちゃんの作品某友の会でも読めるのよね(はあと)

ではではー☆

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175洸ちゃ〜ん!!へ☆サハラ イワリ E-mail 11/26-01:40
記事番号156へのコメント
呼んでくれてありがとうっ!!(感)
嬉しいなぁ・・・・洸ちゃんにまで感想いただいて・・・(うるうるうる)

>サハラちゃん☆面白かったよー!!
>ま、あたしがゼロス様好きで,どう壊れるかはわかるだろうから,あえて触れないとして(笑)

ふふふっ(ニヤッ)
でも私なんかの小説で壊れて下さるなんて・・・・(涙)
ありがとう(T T)

>「6」以降もだけど、サハラちゃんの作品某友の会でも読めるのよね(はあと)

はっ、そーだー(恥)
まぁ・・・あっちでは、ちょっと作風を違えるかな、という気がしないでもないですけどね(ははは)

またの感想、楽しみにしてます!!
ホントに、わざわざありがとうm(−−)m