◆−Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜フィリア〜−真人(6/11-15:15)No.10464
 ┣凄いです〜−扇(6/11-15:24)No.10467
 ┃┗Re:凄いです〜−真人(6/14-23:17)NEWNo.10532
 ┃ ┗おひさ〜なひさ〜−扇(6/15-18:18)NEWNo.10550
 ┗をを!ヴァルフィリ!!・……………(済みません、嘘ついてます)−真人(6/14-23:21)NEWNo.10533
  ┗嘘じゃない! ・・・とおもいます。−扇(6/15-18:25)NEWNo.10551


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10464Ave Caesar,nos morituri te salutamus〜フィリア〜真人 E-mail 6/11-15:15


お久し振りです。真人と申すものです。
以前掲載させて頂いた『Ave Caesar,nos morituri te salutamus』
の続きです。
「読んでも良いよ」と言う方が一人でもいらっしゃれば、幸いです。
それでは。

Ave Caesar,nos morituri te salutamus

フィリア:追憶の波に揺られて

 旧い友人から手紙が届いた。
「フィリア。これ」
 小さな手が私にそれを差し出す。かつての大戦では、未だ赤子だった竜。
だが、彼ももう私に手紙を渡せるようになった。
 この歳月は、人間ではどのくらいのものだろうか…?
 私は礼を言ってそれを受け取りながら、そんな事を思った。

 世界は光で満ちていた。落ちてきそうな蒼穹の天。濡れたように光る緑の野原。
その間を風が通り、全てのものに生命を与えている。
「ヴァルガーヴ」
 私は、一人で何やら机に屈み込んでいる被保護者に声をかけた。
「お昼は、外で食べましょう」
「本当かっ!?」
「ええ」
 私が頷くと、嬉しそうに顔を輝かせる。
 この笑顔を見ることが、今の私の幸せだった。
そんな彼の姿を見ながら、私は書を読むためにかけていた眼鏡を外し、部屋を後にした。

「フィリア−。早くしろよー」
 ヴァルガーヴがこだかい丘の頂上で私を呼ぶ。ちぎれんばかりの勢いで両手を振って。
私は苦笑しながら歩を速め、一番景色の良い場所に白く大きな布を広げた。
 ふうわりと、柔らかく動く布に、ヴァルガーヴは面白そうにまとわりついた。
 その姿を見ながら、私はかつて、これと同じことをした人のことを思い出していた。

 手紙の主は、昔旅を共にした人間からだった。その時は、まだ幼い姫だった。そして、私がこの地へやってきて間もなく、彼女は女性でありながら一国を担うことになった。
 懐かしいはずの仲間。あれから、一度も連絡は取らなかった。
 しかし、彼女は、面白い子を見つけたから身に来ないかと、まるで昨日別れたばかりのような書き方で、手紙を綴っていた。書いている彼女の姿をそのまま想像できて、微笑みながら続きを読んだ。
 そして、思わず手を止めた。

 その子は、とてもリナさんに似ているのだと−−−
 初めて見たとき、思わず彼女だと錯覚したほどと−−−

 ……そう書いてあった。

 緑に濡れる野原を、ヴァルガーヴが駆けている。その姿に、彼を救った一人の少女のそれが重なった。

 あれは、何時だっただろうか。
 今のように、何もない野原で、皆で食事をした。
 同じように白い布を敷いて。
 小柄なからだが、布を掴んで放さなかった。
 頭から被って、駆けまわる。布は、長い栗色の髪と共に空を舞った。
 −−−リナさん。もう、返してください。
 −−−んー。もうちょっと(はあと)
 −−−リナさん。ずるいですう。
 −−−へへんだ。掴まえられるもんなら掴まえてごらん。
 蒼い空に白を広げ、彼女は軽やかに踊る。その後を走る黒髪の少女も笑ってる。
 −−−やれやれ。
 −−−まあ、いいじゃないか。たまには、こーゆーのも。
 二人を目で追いながら、ため息をつく魔剣士に、青い目の青年がのんびりと声をかけた。

 ……もう、2度と戻ることの叶わない過去……
 もう、2度と戻らない人−−−

 だから、私は、その手紙には応じるつもりはない。
 あの人がいなくなった場所、セイルーンへは行かない……

 蒼と碧に囲まれて、私と小さな龍は食事を取った。
お腹が一杯になったのだろう。小さく欠伸をすると、ヴァルガーヴはそのまま眠ってしまった。

 魔族を操るなんて簡単なのよね−−−リナさんは言った。
「どうやるんですか?」
「呪よ」
「呪?」
 再び問う私に、リナさんは答えなかった。代わりに、私に向かってこんな話をした。
「フィリア。もし、貴方が魔族だと仮定して」
「ぬわあぁぁぁぁんですって!?何故、私があんなど腐れ魔族なんかにならなくてはいけないんですかあぁぁぁぁぁ!」
「だ・か・ら!仮定よ!仮定。落ち着いてよ。もう」
 ハンマーと取り出す私に、リナさんは慌てて言った。
「…なんで、私が…」
しぶしぶながら、それをしまうと、リナさんは先を続ける。
「あなたは、どこの命令系統にも属してはいない。とゆーより、下っ端だから、誰も気に止めない」
「リナさん……」
「だから、仮定だってば!!」
 私の視線に気付いてか、ぱたぱたと手を振る。
「そこで、新たな魔族が来る。そいつは、かなりの高位魔族。そいつは、『人間が勝手な行動をしてる。このまま野放しにしておくのは良くない』ってね」
「取り合わなければ?」
 私の言葉に、彼女は首を竦めた。
「魔族はこう言うでしょう。『お前は、本当は人間ごときに滅ぼされると恐れて動こうとしないのだろう!?』ってね。それで、動くわ」
「そんなことで!?」
「……そう。魔族は、自分の存在理由を疑ってはならない。自分の力を疑ってはならない。答えないことは認めること。それは、純粋な精神体にとっては致命的な打撃を受けることになる…だから、呪なのよ」
「でも……誰が……何の為に……」

 −−−リナさんは、何も言わなかった。唯、前を、見つめていた。

 穏やかに眠っているヴァルガーヴを起こさないように、私は席を立った。

 −−−一体、あの戦いは何の為に起こったのだろう…?
 その疑問は、今も解決されてはいない。
 人間達は、あれを『第二次降魔戦争』と発表した。
 しかし、ルビー・アイを見つけられたわけでも、人間を滅ぼされたわけでもない。それに、果たして魔族が彼らにとって『家畜』である人間に、それほど重きを置くだろうか?
 その疑問は、当然、アメリアさん達も持っていた。だが、それを国民達に知らせるわけにはいかなかった。だから、そういうことにしたのだ。

 ……けど、ほんとの理由は、誰も知らない……
 多分、あの人以外には−−−

 あれだけ魔族が現れた割には、被害は少なかった。勿論、私達龍族や妖精族の力もあったのは大きい。
 だが−−−
 魔族自体もそれほど高位ではなく、倒した数は、来た数より明らかに少なかった。
 と、すれば、当然、それを操っている存在があることが分かってくる。しかし、私達の誰もが、倒した相手にそれを見つけられなかった。

 そして……リナさんは……帰ってこなかった……

「俺達はあいつにハメられたのさ!!」
 ゼルガディスさんは、吐き捨てるようにそう言った。

 もし、相手がリナさんによって滅ぼされたのなら、リナさんは帰ってくるだろう。
 もし、相打ちだとしても、少なくとも、遺体は残っているはずである。また、リナさんが倒されたのなら、被害はこんなものでは済まないだろう。
 つまり、彼女は、自分が魔族に殺されたかのように、空き地に攻撃呪文を叩き込み、そのままどこかへ消えたのだ。そうでなければ、彼女のジュエルズ・アミュレットが無傷で残っているわけがない。
「大方、あそこから立ち去る時に、落として行ったんだろうぜ」
 ゼルガディスさんは、そう結論付けたのだ。

 ……全員がその考えに賛同したわけじゃあない。
 けど。
 リナさんが、私達に何かを隠していたことだけは事実だった。
 そして−−−
 はじめに『降魔戦争の再来』という考えを私達に植え付けたのは彼女だった。

 でも………
 ゼルガディスさんですら、リナさんがどうして、私達に嘘をついたのか、その理由は思いつかなかった。

 −−−それ以来、私達は逢っていない。皆、それぞれの道を歩み出した。
 国を継ぐ者。故郷へ帰る者。旅を続ける者……
 私達に、本来接点は無かったのだ。それを繋いでいた人物がいなければ。

 風に揺れる碧の合間に、私は小さな人間の少女を思い出した。確かに、彼女は私達を騙していたのかもしれない。
 けど。
 彼女が、魔族と手を組んだとはどうしても信じられなかった。
『あたしは負けない!』−−−彼女の口癖。『リナ=インバース』であることに誇りを抱いていた少女。
「リナさん…」
 思わず、問いかけた。誰も答えてくれぬことは分かっていたのだけど。
「貴方は、貴方ですよね。最期まで貴方らしく、『リナ=インバース』であったのでしょう…?」

 当たり前じゃない……

 声が、聞こえた。
 丘の上に一本だけ生えている、毎年、美しい白い花を咲かせる木。
 その下に、一人の少女が立っていた。

「リナ…さん……?」
 
 そこに、記憶の中そのままの姿があった。
 背筋を伸ばして立っている、真っ直ぐな紅い瞳。自信に満ちた微笑が、誰よりも彼女を美しく見せていた。

「リナさん・・・・・・」

 視界が滲んで、ぼやけていく。碧と蒼、そして、彼女の瞳の色。全てが曖昧になって−−−
 慌てて目をこすった時、もうリナさんの姿はかき消すように消えていた。
 私は木の下まで走って辺りを見回した。だが、矢張り、彼女の姿はない。
 代わりに、小さな十字の墓標が目に入った。あの時亡くなった、全ての尊い生命に捧げた墓標。
 それを見ながら、私は気が付いた。今まで、悲しんでいたのは、彼女が私達を裏切ったからじゃあない。そりゃあ、仲間に何も言わないままで行ってしまったのは寂しいことではあるけれど。
 でも、それよりも、彼女が彼女じゃないものになってしまったのではないかと思っていたからだ。
 あの『リナ=インバース』でなければ意味が無い。私に『人間』を認めさせた彼女でなくては。
 ・……そうですね。私には分からなかったけど、貴方はきっと、一番貴方らしい選択をしたのでしょうね……
 貴方は『リナ=インバース』なのだから……
「フィリア…」
 驚いて振り返ると、そこに、ヴァルガーヴが居た。
「何で泣いてんだ?誰かに苛められたのか?」
 気が付けば、私の頬は濡れていた。私は彼に笑いかけ、首を振った。
「いいえ」
「じゃあ、何で泣いてんだ!?」
 小さな龍と同じ目線になるまで腰を落とすと、私はヴァルガーヴの目を覗き込んだ。
「貴方が大きくなったら、話してあげるわ。昔、あったこと。私が知っている全てを……」
 帰りましょう、私の言葉に、彼は頷いた。物を片して、その場を立ち去る。ヴァルガーヴは、何か言いたそうだったが、それでも大人しく後をついてきた。

 振り向けば、遥かな昔、輝いた時間がそこで駆けている。時間の止まったままの姿で屈託無く笑い合う仲間達。
 もう2度と戻れない思い出たち。

 だからこそ、私は全てを覚えていよう。更なることを知ろう。
 そして、次へと伝えていこう。
 最後まで戦っていたあの人達のように。
 私は、私のやり方で戦っていこう。

「……それで、良いんですよね…?リナさん……」

 当たり前じゃない……

 声が、聞こえたような気が、した。


***************

 拙い文を最後まで読んでくださって有り難う御座いました。
 それでは、真人でした。




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10467凄いです〜6/11-15:24
記事番号10464へのコメント


 久しぶりです、真人さん。扇です〜☆
 読ませていただきました!
 いやぁ、最初ヴァルフィリかと錯覚しましたが(←ヴァルフィリ好き)
 どうやら、それだけでは無いようで・・・。
 ゼロスバージョンのも、読ませていただきました。
 凄いです〜。
 どっちも、そのキャラクターの心情をつかんでいて・・・。
 どきどき。
 真人さんは、そういうの上手ですね!

 ではでは、短いですが扇でした〜☆(凄すぎて、書く言葉がない・・・^^;)

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10532Re:凄いです〜真人 E-mail 6/14-23:17
記事番号10467へのコメント

扇さんは No.10467「凄いです〜」で書きました。
>
> 久しぶりです、真人さん。扇です〜☆

お久しぶりです。扇さん。真人です〜★

> 読ませていただきました!
> いやぁ、最初ヴァルフィリかと錯覚しましたが(←ヴァルフィリ好き)

有り難うございますっ!!ええ、扇さんがヴァルフィリ大好きなのは良く知っていましてよ(はあと)
 真人は、何を隠そうヴァルリナなのですけど(今までに書いてらっしゃる方を一人しか見たことが無い…誰か書いて頂けないでしょうか…)最近、ヴァルフィリにも傾き始めております★

> どうやら、それだけでは無いようで・・・。
> ゼロスバージョンのも、読ませていただきました。
> 凄いです〜。
> どっちも、そのキャラクターの心情をつかんでいて・・・。
> どきどき。
> 真人さんは、そういうの上手ですね!

うわーい。誉められちゃった!!
今回は、「それぞれから見たリナ」という視点から書いています。フィリアやゼロスは同じ人間であるガウリイ達よりも思い入れが深いかなあとか思って……それが
少しでも伝わっていれば嬉しいです。

> ではでは、短いですが扇でした〜☆(凄すぎて、書く言葉がない・・・^^;)

せっかくコメント頂けたのに、返事が送れて済みませんでした。
扇さんの作品はいつも読み逃げしてるんですけど(すみません。コメント書いてもらうのは凄く嬉しいんですけど、書くのはボキャブラリーの貧困が原因で苦手なんです。畏れ多いような気がして…でも、今度は書かせて頂きますね。)、いつも楽しみにしてるんですよ。続き待ってます。はあと。(単なる催促)

それでは。真人でした〜★

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10550おひさ〜なひさ〜6/15-18:18
記事番号10532へのコメント

真人さんは No.10532「Re:凄いです〜」で書きました。

>> 久しぶりです、真人さん。扇です〜☆
>
>お久しぶりです。扇さん。真人です〜★
 久しぶりです、真人さん、扇です〜☆(パート2)

>> 読ませていただきました!
>> いやぁ、最初ヴァルフィリかと錯覚しましたが(←ヴァルフィリ好き)
>
>有り難うございますっ!!ええ、扇さんがヴァルフィリ大好きなのは良く知っていましてよ(はあと)
> 真人は、何を隠そうヴァルリナなのですけど(今までに書いてらっしゃる方を一人しか見たことが無い…誰か書いて頂けないでしょうか…)最近、ヴァルフィリにも傾き始めております★
 ヴァルリナ・・・私も好き(笑)
 もしヴァルが卵にならずに生き残っていたら・・・あり得たことその1。
 わたしの小説(『天国〜』シリーズ)は、リナ・ヴァル・アメリアの三人が仲良し組なので、ちょっとヴァルリナ要素ありですよ☆
(ちなみに私が発見したヴァルリナ小説は2つ、ヴァルリナ絵は1つ)

>> どうやら、それだけでは無いようで・・・。
>> ゼロスバージョンのも、読ませていただきました。
>> 凄いです〜。
>> どっちも、そのキャラクターの心情をつかんでいて・・・。
>> どきどき。
>> 真人さんは、そういうの上手ですね!
>
>うわーい。誉められちゃった!!
>今回は、「それぞれから見たリナ」という視点から書いています。フィリアやゼロスは同じ人間であるガウリイ達よりも思い入れが深いかなあとか思って……それが
>少しでも伝わっていれば嬉しいです。
 それぞれから見たリナ・・・読みたいです!!
 しかしリナ・・・どーなっちゃったのかしら?

>> ではでは、短いですが扇でした〜☆(凄すぎて、書く言葉がない・・・^^;)
>
>せっかくコメント頂けたのに、返事が送れて済みませんでした。
>扇さんの作品はいつも読み逃げしてるんですけど(すみません。コメント書いてもらうのは凄く嬉しいんですけど、書くのはボキャブラリーの貧困が原因で苦手なんです。畏れ多いような気がして…でも、今度は書かせて頂きますね。)、いつも楽しみにしてるんですよ。続き待ってます。はあと。(単なる催促)
 うにゅうにゅ、ありがとうございますです〜!

>それでは。真人でした〜★
 それでは、扇でした〜☆

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10533をを!ヴァルフィリ!!・……………(済みません、嘘ついてます)真人 E-mail 6/14-23:21
記事番号10464へのコメント

Ave Caesar,nos morituri te salutamus

ヴァルガーヴ:今日のできごと

○月○日 大晴

 本当は、オレはこんなものかきたくないんだけど、フィリアがかけとうるさいので、しょうがないからかいてやるぞ。
 今日は外でひるめしを食べた。
 久しぶりにフィリアが外でごはんを食べようといったのだ。オレは急いで場所を取り、フィリアはばあさんだから、ゆっくりとあとから歩いてきた。
 こーゆーのを「ぴくにっく」というらしい。ガキっぽいけど、天気が良かったので、まあ、楽しかった。フィリアも楽しそうだ。何となく気分がいい。

 はらがふくれたら、何だかねむくなったので、そのままごろりとよこになった。
 いつもなら「ぎょうぎよくありません」って、フィリアがおこるのだけど、今日はおこらなかった。やっぱり外で食べるのはとくべつみたいだ。
 オレはらっきぃと思って、そのままねむった。でも、すぐにおきた。フィリアが立ったからだ。おいていくつもりだって思ったんだ。
 別に、一人だって平気なんだけど、でも、やっぱりおいていかれるのはしゃくだから、おきたんだ。
 フィリアは、野原の中をずんずんすすむ。後からオレがついてるのも気がつかなかった。にびぃよなあ。
 そう思って、追っかけていると、ちょうど真ん中くらいで、きゅうに止まったんだ。

「リナさん…」

 フィリアは、たしかにそうつぶやいた。後の声は、聞こえなかった。
 りなさん?
 りなさんってだれだ!?オレ、知らないぞ。
 …なんだよ、フィリア。何でそんな顔、するんだ?
 オレ、初めて見るぞ。そんな、悲しそうな顔するの。
 
「リナ…さん……?」

 いつもは、おこってばっかなのに。オレのこと。
 でなければ、笑うじゃんか。いつも、いつも楽しそうじゃんか。
 悲しいことなんて、ないだろ?なのに、なんで、そんな顔、するんだよ?

「リナさん・・・・・・」

フィリアの眼が、いつもと違う風に光ってた。
 眼にいっぱい涙をためて、こぼれおちそうになるのを手でこすって、必死でこらえてた。
「−−−フィリア!」
 オレが、そうフィリアに聞く前に、フィリアは走り出した。
 オレは、あわてて後を走った。ぜんそくで走っても、フィリアのほうがずっとはやかった。
 そりゃあ、フィリアは黄金龍だし、オレよりずっと、上だけど・……なんか、すっげえくやしいぞ……

 やっと、追いついた時、フィリアは、木の下の、十字架の前で立っていた。これは、『ぼひょう』なんだと、前にフィリアが言っていたものだ。
 オレが生まれたばかりのころ、ま族がやってきて、たくさんの竜や、妖精や、人間を殺したんだ。そのれいをとむらうために、フィリアはこれを作ったんだ。
 フィリアが、これに手を合わせるのを、オレも真似してやったけど、本当は、なぜそんなことをやるのかちっともわからない。
 だって、そいつら死んだんだろ?だったら、こんなとこになんかいないじゃんか。
 けど、そう言うとフィリアはおこるだろうから、だまっててやるけどな。

 フィリアは、いつものようにそれを見て……でも、いつもとぜんぜん違う顔をしてた。
 まだ、泣いてたんだけど、さっきみたいなのじゃなくて……なんて言ったら良いのか、よくわかんないけど……ええと、雨が上がった後の空の色、のような顔だったんだ。
 
 ……なんだか、おもしろくないぞ。それも、「りなさん」のせいか?「りなさん」のせいで、おまえはそんな顔をしてんのか?
「フィリア…」
 オレが声をかけると、フィリアは驚いたように振り向いた。その顔は、いつもの、オレのフィリアだった。
「何で泣いてんだ?誰かに苛められたのか?」
 「りなさんか?」と聞こうとしたが、そうしたら、盗み聞きしてるのばれちゃうもんな。だまってよ。
「いいえ」
「じゃあ、何で泣いてんだ!?」
 フィリアは、困ったような、笑ってるような、不思議な顔をした。それから、しゃがみ込んで、オレの高さと同じになった。
「貴方が大きくなったら、話してあげるわ。昔、あったこと。私が知っている全てを……」
 …オレがチビだと思ってバカにしてるのか?オレは、やっぱりちょっと面白くなかった。
くやしいけど、けど、しょうがないよな。たしかにオレはチビだからな。
 帰りましょうという、フィリアの言葉に、オレはうなずいた。いやだなんて、駄々こねるのはガキのやることだ。
 持ってきて布やバスケットをかたづけて、オレ達は歩き始めた。今度はゆっくりだった。
 帰り道、一度だけ、フィリアは丘の方をふりかえった。でも、丘を見てるわけじゃないみたいだった。もっと、別の何か……遠いものを見ているようだった。
 オレもふりかえった。でも、オレには丘しか見えなかった。それが何かはわからないけど、さ。どうせ、聞いても、フィリアは答えないだろうしな。

 つまらないから、先に行こうとしたその時、丘の辺りが光ったような気がして−−−

 そこに、フィリアがいた。
 でも、フィリアだけじゃなかった。
 髪の長い奴や短い奴がいた。変な肌の奴もいた。竜じゃない、もっと弱そうな奴ら。でも、真っ黒な変な感じの奴もいた。フィリアが嫌いそーな奴だ。
 だって、前に髪振り乱してさけんでたもんな。「きぃやあぁぁぁぁっぁ!ごおぉきいぃぶりぃよおぉぉぉっ!」って。

 でも、ヘンなんだ。
 笑ってるんだ。
 フィリアも、フィリアじゃない奴らも。
 なんだか、すっげー楽しそうだ。
 オレといるときよりも。だって、オレといる時は、あんな風に大声で笑ったりしないもの。
 あいつらの中に「りなさん」がいるのか?
 フィリアは、「りなさん」がいいのか?オレといるより、楽しいのか?
 なんで、笑ってんだ?
 さっきまで、あんなに悲しそうだったじゃんかよ。そいつら、フィリアが悲しいの、ちっともわかってねーぞ?ただ、バカみたいにわらってるだけじゃねえか。
 なのに、そいつらといると楽しいのか?
 そう思ったら、なんか、むかむかした。

「ヴァルガーヴ?」
 後ろから声が聞こえたので、オレはびっくりして振り向いた。
「どうしたの?ヴァルガーヴ」
「あ…や…」
 どう言ったら良いものかって思って、もう一度丘のほうを見ると−−−そこには、もう何も無かった。
「あれ?」
 フィリアが首をかしげてる。
「……何でもねえよ」
 フィリアの方を見ないまま、オレは歩き出した。ちょっと、キツイ言い方だったかな。そう思って、こっそりフィリアを見ると、別になんとも思ってないようだった。さっきみたいな、悲しそうな、さびしそうな、でも、晴れた空のようなヘンな顔をしてる。…たぶん、さっきのあいつらのせいだ。「りなさん」のせいだ。
 だから、オレもやっぱりむかむかしてた。きっと、すっげーヘンな顔をしてるんだろう。
 と中、フィリアが声をかけてきたけど、聞こえないフリして先に帰った。よくないのは分かってる。けど、もどそうとしてももどらないんだ。なんでだかわかんないけど、なにをやっても、むかむかはおさまらない。
 一体どうしてだろ?すっげー大声で叫びたいぞ!

 オレは、「りなさん」が嫌いだ。

 フィリアを泣かせる、「りなさん」なんか大嫌いだ!


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10551嘘じゃない! ・・・とおもいます。6/15-18:25
記事番号10533へのコメント

真人さんは No.10533「をを!ヴァルフィリ!!・……………(済みません、嘘ついてます)」で書きました。

 こんにちは、扇です〜!
 ヴァルフィリ〜!!
 なので、ヴァルフィリトークをいっぱいしちゃいますぅ。

> はらがふくれたら、何だかねむくなったので、そのままごろりとよこになった。
 豚になっちゃいますよ(笑)

> フィリアは、野原の中をずんずんすすむ。後からオレがついてるのも気がつかなかった。にびぃよなあ。
 にびぃよなあ。

> やっと、追いついた時、フィリアは、木の下の、十字架の前で立っていた。これは、『ぼひょう』なんだと、前にフィリアが言っていたものだ。
> オレが生まれたばかりのころ、ま族がやってきて、たくさんの竜や、妖精や、人間を殺したんだ。そのれいをとむらうために、フィリアはこれを作ったんだ。
 魔族って・・・ゼロス!?

> ……なんだか、おもしろくないぞ。それも、「りなさん」のせいか?「りなさん」のせいで、おまえはそんな顔をしてんのか?
 心配するヴァル・・・えらいもん!

> だって、前に髪振り乱してさけんでたもんな。「きぃやあぁぁぁぁっぁ!ごおぉきいぃぶりぃよおぉぉぉっ!」って。
 フィリア・・・・・・(笑)

> だから、オレもやっぱりむかむかしてた。きっと、すっげーヘンな顔をしてるんだろう。
> と中、フィリアが声をかけてきたけど、聞こえないフリして先に帰った。よくないのは分かってる。けど、もどそうとしてももどらないんだ。なんでだかわかんないけど、なにをやっても、むかむかはおさまらない。
> 一体どうしてだろ?すっげー大声で叫びたいぞ!
 なら、空にかなたに向かってOK!!
 3、2、1、GO!!

> オレは、「りなさん」が嫌いだ。
>
> フィリアを泣かせる、「りなさん」なんか大嫌いだ!
 ナイスな叫びで(笑)

 いやぁ、楽しませていただきました!!
 ヴァル君可愛いし・・・(結局、それ)
 続き(?)楽しみにしてます〜!(てか、続きあるのかしら・・・?)
 ではでは〜!