◆−狂おしき心の呪縛−両住 蓮 改め 秋 珊瑚(6/20-01:01)No.10634 ┗狂おしき心の呪縛 その2−秋 珊瑚(6/25-02:14)No.10710
10634 | 狂おしき心の呪縛 | 両住 蓮 改め 秋 珊瑚 E-mail URL | 6/20-01:01 |
こんにちわ。 数日前にゲームで負けた罰ということで、「両住 蓮」が、使えなくなりました。(爆) 長年使っていて愛着があったのに・・・・・・・。(負けた私が悪いのか?!) そんなわけで 「秋珊瑚」 植物から取ってきました。 今後とも宜しくお願いします。 忘れた頃の投稿なくせして、シリアスのつもりがすっかり暗い話しになりそうで ちょっと戸惑っています。 内容は多分「ゼロリナ風 頭痛和え」です。(何それ?) でも、読んでくだされば幸いです。 ************************************* 「狂おしき心の呪縛」 把握するのが遅かった。すべての原因は遅すぎた事にあった。 降魔戦争の折に魔族が張った結界は、一人の少女によって解かれた。冥王フィブリゾが滅ぼされたのだ。この機を逃さず、神族は巻き返しを図った。 魔族がそれに気づいたのは、既に先手を打たれた後であった。 神々による結界。 皮肉にも、降魔戦争の時に自分たちが使った手段を、今度は神々の手によって返されたのだ。 結界の影響によって、弱体化、あるいは力を封じられた魔族には、為す術など殆ど無いに等しい。 ――そして、カタート山脈に縛られていた北の魔王は滅びた。 「魔を滅する者」と呼ばれている、結界を解いた少女の手によって。 人々はしばしの平和に活気づき、そして、やがて繰り返されるであろう悪夢を憂いた。伝説の昔に封じられた魔王の分身は、今は遠くとも、いつの日にか必ず解き放たれる。 駆り立てられた不安は、やがて一つの行動を起こさせた。 魔族狩り。 それまでの行動が仇となり、彼ら魔族は人間に追われるようになったのだ。 結界によって力が使えず、精神世界面とも隔離され、帰ることも、姿を変えることも容易で無くなった魔族たちは、次々に死に、或いは滅んでいった。 結界が張られた時点で、運良く精神世界面にいたものや、人の型をしていた高位魔族はひとまず難を逃れた。だが、それでも無力な事には変わりない。 人間に紛れてやり過ごそうとする者も多かったが、竜族やエルフたちが人間に力添えをした為に、人型だったものたちも、少しずつ、けれど確実に狩られていった。人間の目は欺けても、彼らの目はごまかせない。 人間たちが危惧するとおり、新たな魔王の破片が復活すれば、状況はまた一変するかも知れないが、残された魔族にはそれを待つ時間も無く、今では、その存在は風前の灯でとなっていた。 そして今、かつては竜族に恐れられ、忌み嫌われていた彼もまた、狩られる側に回っている。 「そろそろですかね」 巨木の根に腰を下ろし、かすかな木漏れ日を浴びながらそれは軽く目を開けた。季節は秋に傾きかけている。涼やかな午後の昼下がり。 「見つけたわよ、ゼロス」 黒い法衣を纏った彼はその声を認めると、ゆっくりと発せられたほうを見た。その先に現れたのは一人の女魔道士。逆光で姿がはっきりとしないが、その声だけで、彼には、それが誰であるかは分かったようだ。 「お久しぶりですね、リナさん」 ゼロスは静かに声をかけた。その心うちに焦りや緊張は微塵もない。 リナは何も答えなかった。ただゆっくりと、魔族へと歩み寄る。 彼女が近づくごとに、ゼロスは不思議な高揚感に煽られていた。しかし、危機感は沸かない。 ---------何故に、こんなにも穏やかでいられるのでしょうかね。 彼はふと、そう不思議に思う。こんな気持ちは知らないし、今まで味わったこともない。人間に殺されるなど、屈辱以外のなにものでもないのに。それでも彼は、何時もと変わらぬ笑顔を浮かべて言う。 「どうやら僕も、消える時が来たようですね。それでも貴方に殺されるなら、不服はありませんよ」 人間を面白いと思ったことはある。そして、彼女となら、一緒にいて楽しいと感じたことも。 内に抱いていた主観的な関心。 それが何であったか。今なら分かるような気がする。 再び会えた今ならば・・・・・・・・・・。 覚悟などではない。本当は胸の何処かで、ずっとこの時を待っていたのかもそれない、彼はそんなふうにすら思えていた。 だが、そんなことは露ともしてないリナは、いきなりゼロスの胸座を掴むと、 「ったくもう、何こんな所で落ち着きはらってんのよう!あんたねぇ、今の自分の立場わかってるの?」 前後に荒く揺さぶりながら、それだけ言うと、突き放すように手を外した。 一方のゼロスは何度か咳込みながら「り、リナさん、いきなり何するんですか」と、困った顔を向けるにとどまった。 「何するもどうするもないわよ。黒い神官姿の魔族がここに居るって聞いて、もしやと思って来てみれば、案の定あんただったってわけよ!」 形の良い眉をつり上げ、彼女は言う。 「何やってんのよ、こんな所で!」 しかしゼロスは、間近で改めてみるリナの姿に、一瞬戸惑いの色を浮かべた。 何と言うことではない。ただ、久しぶりに見た彼女の変わり様に驚いただけである。 年齢に沿って、少女から大人へと変わりつつあるリナは、離れていた時間の分、ゼロスの知っているあどけない少女から、若い女へと成長を遂げていた。癖のある長い栗色の髪、透明感のある白い健康的な肌色、以前にも増して輝きが灯る紅の瞳。初めて会った時の面影も柔らかに、それでも、翻すマントが飾る姿にはある種の風格さえ漂いはじめている。幾分にか残る幼さも、こうなってはもはや魅惑的なスパイスでしかない。人間たちの間に飛び交う噂は耳にはしていたが、それに違わぬ容姿を現在のリナは備えていたのである。磨けば光るという言葉があるが、リナはまさしく至宝の逸品だろう。よくまぁ、たった数年の間に、これほどまでに成長したものである。 「先ほど言いませんでしたか?リナさんを待っていたのですよ」 声に些かの変化を見せないところは、さすがは獣神官である。 それどころか、 「それにしても、しばらくお会いしなかった間に、随分と綺麗になりましたね」 正直にでも、そんなお世辞とも取れる言葉をあっさり口にするところも、また、彼らしいところであった。 「当たり前じゃない」 リナは顔を赤くしながらも、そう言ってのけた。その際に自信もあらわに、無い胸を張るところは、依然とちっとも変わりない。 「殆ど詐欺です」 間髪入れずに返すゼロス。 「なんか言った?」 睨みがきつくなるリナに、神官は手を振って答えを表した。 こうしてみると親しみがもてるのはよいが、しかし、現実には、以前とは状況が違うのだ。今の二人は、その辺でお茶を飲むような関係を、簡単につくるわけにはいかない。 「それで――」 最初に本題を切り出したのは、今や人間たちの標的となった魔族からだった。 彼はかつての旅の連れに、滅ぼしに来たのかと、まっ直ぐに聞く。 「いやぁ、そういうわけでもないけど・・・・・・・」 リナは返答に窮した。 ここへ何をしに来たか。 当の彼女も、実はその辺を追求する事を避けていたのだ。複雑な心境と向かいあい、結論を出すのは、誰でも苦しいことである。 「おやおや。『魔を滅する者』ともあろう者が、魔族を目の前にして狩らないというのは、些か問題ですよ」 酷なまでにゼロスは言い放つ。しかし、自分にとっても深刻な問題であるにも関わらず、馴染みの笑み顔と何気ない態度でそんな言葉を吐かれては、さすがのリナも怒らずにはいられない。 だが、ゼロスはその反論を許さなかった。 「滅ぼしておいたほうがいいですよ。それが、お互いのためです」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 笑みを抑えて、冷静な面もちで神官は言葉を吐いた。 「深くは追求しないけど・・・・・・・・・。ずいぶんと悟ったような事を言うのね。だけど――」 目前に歩み出たリナの口を、神官の人差し指が静止した。紅い瞳が射るようにゼロスへと向けられる。疑惑を孕んだ視線は正確に彼を捕えていた。だが、当の指の主はそんな事もお構いなしである。もともと、そんな細やかな神経など持ち合わせている奴では無いし、何より、敵意や悪意は彼の最も好むであり、そういう意味では、今のリナが出す感情は、すこぶる心地の良いものだったろう。 「なぜここで待っていたか、分かりますか?」 ゼロスは言う。 無論、理由などリナの知るところではない。 しかし、彼の口から出た理由は、リナの想像からは遥かに離れた予想外のものだった。 「ここは僕がこの世界に初めて現れた場所。一番思い入れの深い場所なんですよ」 言葉を後押しするように、様々な音が聞こえてくる。 「あの時からここは変わっていません。まるで――」 刹那、翳りを見せるゼロス。リナはその仕種に、目の前にする神官の、胸の内が分かったような気がした。 木の葉の囁きに虫たちの演奏、緑の隙間から覗く青と白、流れゆく雲に爽やかな風。いかに時代が流れ、星が巡り、人の世が変わろうとも、そうしたものたちだけは決して変わることは無い。 -------そう、彼と同じように。 その顔はいつもと変わらないモノへと戻っている。無垢な笑顔とも取れる、魔性漂う妖獣の笑み。見た目こそ笑っているが、それが仮面であることは、初めて会ったときからリナは知っている。その奥に隠れている真の顔は、行動にはよく醸し出されるが、表の面に垣間見えることはかなり珍しい。それなのに、今日に限って、ゼロスは様々な表情を見せている。あたかも、思い出を残すように・・・・・・・・・・。 「やめてよ・・・・・・・・」 長く続くかに思えた沈黙を、言葉で乱したのはリナだった。 「そんな、そんならしくない姿見せるくらいなら、とっとと逃げなさいよ」 「リナさん?」 「今ここにはあたししかいない。だったら幾らでも逃げられるでしょう!」 リナはゼロスの服を握りしめる。先ほどまでの自信に溢れた姿が嘘のようだ。ダムが決壊したかのように、押し溢れる感情のままにリナは言葉を口にしていた。怒り、悲しみ、如何する事も出来ないもどかしさ、それらの感情が直にゼロスには伝わってくる。 「リナさん・・・・」 「あたしは、あんたにだけは滅んでほしくないの。だから――」 ゼロスは突然リナを抱きしめた。 刹那なめまい。 互いの温もりが広がり出す。 ************************************ はう。 すみません。ちょっと時間がなくなったので、一時ここで切ります。 ここまで読んでくださった方々、心より感謝! なのに、変なところで切っちゃってすみません。 続きも読んでくだされば至高の喜びです。(^^) |
10710 | 狂おしき心の呪縛 その2 | 秋 珊瑚 E-mail URL | 6/25-02:14 |
記事番号10634へのコメント こんばんわ。 中途半端だったので、とりあえず、続きを持ってきました。 ************************************ 胸に顔を埋めるリナ。だが、その先の鼓動は感じない。 『まあ、もともと僕に心臓なんてあるわけないからね、ないものが動くはずはない』 かつてリナは高位魔族にそう聞いたことがあった。それを改めて思い知らされる。ゼロスは人間ではない。この姿ですら、彼にとっては仮のものに過ぎないのだ。 それでも感じる冷ややかな温もり。そこにいる確かな証。 闇に抱かれて、空を見上げるリナ。 輝く彼女を包み、うつむくゼロス。 対照的な二人の上に、木漏れ日は降り注いでいた。 「そんな風に言わないで下さい」 そして、彼は静かに語りはじめた。 「僕たち魔族は、何かに執着を持つことは許されません。人間が言うところの愛情は、魔族には妄執としかうつらないんです。魔族にとって不可侵なものは滅びへの熱望とより高位の存在のみ。特に上者への服従は絶対です。それ故に、その関係を脅かす程に別の存在に固執することは、魔族にしてみれば裏切り行為でしかないんです。もはやこうなってはリナさんを殺すか、「赤眼の魔王」様を復活させるぐらいのことをしなければ、獣王様の元へも戻れないでしょうね。もっとも、遅かれ早かれ、このままでは、あなたへの思いに押しつぶされて滅ぶだけですが・・・・・・・・・・・」 抱き締める腕に入る力が、全てを教えていた。ゼロスは顔を合わせまいとしてか、リナの首筋に顔を隠しているが、それでもリナには、彼が自嘲気味に笑んでいるのが、痛いくらいに分かった。 「ゼロス・・・・」 リナは当惑した顔でゼロスを探し見た。だが、心情を全く反映しない彼の顔は、無言で左右に振り動いた。 「だから駄目なんです。いくらリナさんが望んでも、これは譲れません」 そして、ゼロスは、かつて聞かせたことがないほどに切ない声で、 「僕はリナさんを愛しています」 その言葉を紡いだ。 リナの顔を両の手で包みそっと持ち上げると、小さな唇に自分のそれを重ねる。 長く、深く、永遠と錯覚するほどに・・・・・・・・ 辺りが紅に染まるころ、その場にはリナ一人が立っていた。そして物思いに沈んでいた。 「二度と会わない」 以前ゼロスと分かれたとき、リナはそう言って別れを告げた。だが、無論、本心からの言葉ではない。互いを思うがゆえの結果であった。 そして今は――。 「二度と会えなくなちゃったわね・・・・・・・」 リナは呟く。 二度と会わない。 二度と会えない。 同じような言葉だが、それが意味するところはまるで違っている。その意味の重さが、痛いほどに圧し掛かってくるようで、残された少女は自分の肩を強く掴み寄せた。 身体の芯が痛む。或いはそれは、大切な何かを失った、心の剥離がもたらしたものであったかもしれない。正直、ゼロスにはもう会えないのだと思うと辛かった。 ひとしずく、涙が頬を下っていく。 リナはそれを手の甲でぬぐった。 「もしも、この次があるとしたら。それはきっとリナさん、あなたに死が訪れんとするときです」 消える前に彼はそう言った。 「絶対にこの世界をやめないで下さいね」 ゼロスが残した最後の言葉は、魔族らしからぬ優しさを持った、まるで人間のようなセリフ。だが、リナにとっては何よりもゼロスらしい残酷な一言だった。 「生きろなんて・・・・・」 一人呟く。 リナにはわからなかった。 しかし、それ以上に世の中が理解し難いことだらけだった。 魔族狩りを正義と主張する者は多い。だが――。 個人によって、社会によって、種族によって、正義というものは様々な意味と定義を持っている。だがどれも、所詮は手前勝手な規律でしかない。 何が正しい、どっちが正しいなど言えやしない。真実や正義といったものたちは、綺麗に割り切れるほど単純なモノではない筈なのだ。 どれも正しくて、どれも間違っている・・・・・・・。 そんな定かでないモノに従い、魔族を狩る人間の様子は、リナにしてみれば「正義の押し付け」としか思えなかった。魔族の力が強大なときは恐怖の象徴とし、弱くなれば容赦なく駆逐しようとする。そんな人間たちに「魔を滅する者」の称呼で崇められるのは、「ドラまた」と言われるよりも不快感を煽った。 無論、リナにとってはゼロスが特別なだけであって、世間に逆らってまで魔族をかばう理由は一切ない。百歩譲って、人間が行き過ぎた考えを元に魔族狩りを推進しているとしても、自分にそれを阻止、あるいは矯正できる力があるかは別問題である。 それでも、目を瞑って見て見ぬふりができるほど、割り切った考えもまた、彼女は出来ない性分であった。それだけにもどかしい。今のリナには如何することも出来ないのだ。 昼間の熱をかき消す風が吹きぬけた。 魔族も人間も、一皮剥けば同じモノなのかもしれない・・・・・・・・・ そんな考えが頭を掠める。 「所詮あたしも“同じ”か・・・・・・・・・」 リナは再び涙をぬぐった。 太陽は地平線へと帰って行く。 世界が存在する限り、日々同じ行動をとり、周り続ける太陽は、自分の日常に果たして後悔はないのだろうか。 リナは今、時間が過ぎることの残酷さと、一日が終わり行くことに、言いしれぬ恐怖を初めて感じた。振り向きもせず立ち去ってゆく月日を、何度見送ったことだろう。分かり切った現在の中に、悔いを残さず生きることなど、出来るのだろうか。 「そうよね、ゼロスを滅ぼしたんだもの・・・・・・・・・」 誰よりも好きだった、この手で殺した愛しい存在。 それを思うと胸が締め付けられる。 頭の中は最低な状態でしか働いていなかった。同じ考えがさっきから堂々巡りをしている。けれどそれが明日になっても同じであるはずはなく、そして少なくとも、同じなままではいられない。過ぎた今を引きずることはリナ自身が許さなかった。それでも、この痛みは生涯忘れられないだろう。 踏み出すその足はひどく重い。 もう二度と、ここへは続かないであろう道を、突き進む為の一歩ゆえに。 ************************************* ふぅ。 どうにか形らしきものはできたかなぁ・・・・・。 続きを考えなくも無いのですが、泥沼に嵌りそうで、ちょっと引いて います。(ーー;) 気の向きままにということでしょうか。 なにはともあれ、ココまでお付き合いくださった方々、有難うございました。 |