◆−大空位の幻想−CANARU(6/26-21:25)No.10727 ┗やっぱり運命の恋〜♪−P.I(6/28-00:29)No.10738 ┗同じ事を〜〜!!−CANARU(6/28-12:23)No.10740
10727 | 大空位の幻想 | CANARU E-mail | 6/26-21:25 |
2時間半で書いた上・・・・。 かなり速攻の上、あたしにしてはクサイ台詞書いた話しです・・・。 ああ・・・・須く原因で右手サンが笑ってます・・・。 13世紀半ばのボヘミア王国がメイン舞台で書いてみました!! リナちゃん・・・人格違うよ・・(汗) ************************** 無神経な足音。 「そうシズシズ歩かれても困るのだが〜〜・・・。」 金髪の青年は困った様に言う。 「アンタこそ無神経、ドタバタ歩いたら鳩が逃げるじゃないの?」 夕闇の中、確かに無数の鳩の姿が見うけられる・・・・・・。 「あ・・・。ごめん・・・・・・。」 手紙は・・・破り捨てようか?いいや・・・。止めておこう。 「気をつけなさいよね。鳩は幸運の鳥なのよ?」 ウィーンの一角にある寂れた・・しかし並木の美しい公園での出来事。 『あの時』の再現だとは・・本人達も気付かないうちに。 「ガウリイ、暇そうだな。」 大学院での何時ものカフェ。オーストリアの首都、ウィーンでの何時もの光景である。 学友のゼルが眠たそうにコーヒ―カップを目の前に座り込んでいるガウリイを見て言う。 「・・・・・・・眠い・・・・・・・・・・。」 「徹夜でレポート書くからだ。前もってきちんとやれ。」 「・・・・・・・・。手伝ってくれたっていいだろ・・・。」 眠たそうにガウリイが欠伸を再度しそうになったその時だった。 「ゼルガディスさ〜〜ん・・ガウリイさん〜〜〜・・・。」 泣きそうな声を出しながら一人の黒髪の男が此方にやって来る。 「ヤバイな・・・・。」「ああ・・。愚痴モードだ・・・。」 この大学の理事長ゼラスの息子にして何故か図書館司書をやっているゼロスである。 「聞いてくださいよぉぉぉ〜〜〜〜・・・。今日は悲惨な日です・・・。 大学部の問題児女学生に・・・・僕の私書籍をふんだくられたんですよおおおお〜〜〜・・。あれ・・13世紀半ばの高級・・・・・。」 自慢だか愚痴だか分からない文句が飛び出す前に退散したほうが履行と言うものだ。 「すまない。俺は家の手伝いが。」 「俺!!用も無く公園の散歩に行く予定なんだ!!」 ゼルとガウリイは一斉にそうとだけ言い放ちながら勘定を押しつけがてらにゼロスの居る席から逃げ出す。 「そんな〜〜〜・・・。ゼルガディスさんはともかく・・・。 ガウリイさん・・それって『まったくの暇』って意味でしょう・・・?」 情けない声は更に無視。 かくして・・・ガウリイは用も無く公園を散歩する状況に陥ってしまった。 「え〜〜っと・・・・・・。ったく・・。ナンでレポートばっかり書かせるのかしらね。」言いながらリナはカフェを注文がてらに手元の古ぼけた本で用例を探し出し原稿用紙に書き上げて行く。 ついでにフォークに一切れのザッハトルテを刺しながら口に運びかける・・・。 「リナさん!!」 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ〜〜〜〜〜〜!!! 口の中に先程入れかけたばかりのザッハトルテを吐き出さない様にしながらリナ はその声の主のほうを振りかえる。 先程注文したカフェが到着したのが丁度良い。 いっきに飲み干して喉に詰まったお菓子を流し込む。 「げほ・・・・あ・・アメリア・・。いきなり声をかけないでよ・・・・。」 更にせき込みかけるのを押さえながらリナ。 「ま〜〜ったカフェでレポート書いてますね。前もってやってないから・・・。 苦労するんですよ。」 「・・・・。ま〜〜ね。その為に参考文献ゼロスのボンボン坊ちゃんからかっぱらったのよ。」 言いながらリナは先程図書館司書のゼロスの私書籍から強奪した13世紀半ばの古文書をアメリアに見せる。 「・・・中世の・・・チェコ語ですね・・・・・。」 「そう。『大空位時代』末期くらいもモノね・・・。」 言いながらリナは更にレポートを書き進める。 「大空位時代って・・・・・・????」 「『神聖ローマ帝国』皇帝の地位が空であった時代よ。ま、ヨーロッパの戦乱中の中世の出来事・・とでも思えば早いわねって・・・・。」 アメリアに説明しながらリナは一枚の古ぼけた紙を拾い上げる。 「手紙・・・でしょうか・・・?」 「そのようね・・・。中世のスラヴ・・・チェコの文字・・・・・。」 リナは信じられない思いでその手紙を見つめる。 13世紀半ば・・・・700年は昔の物なのに・・・・。 はっきりと書かれて文字・・『リナ=インバース殿・・何時もの公園で待つ』と・・・・。 プラハ・・・・・・・・・。 13世紀半ばのと、ある夏の出来事である。 バーベンベルク家の断絶を機会にプシェミスル家のオタカル二世がオーストリアとハンガリーをボヘミア王国に併合。 おりしも「金持ち王」と呼ばれて権勢を振るっている時期の出来事であった。 「ゼルガディスさん!!カレルさん!!」 不意にボヘミア貴族の娘、しいて言えばプシェミスル家の一族であるアメリアが同様に貴族のゼルガディスに声をかけてくる。 「アメリア姉様!!」 カレルと呼ばれた線の細い印象の少年がやはり同じ一族のアメリアの呼びかけに嬉しそうに答える。 無論、彼の身分は王子でありアメリアはあくまでも一介の貴族に過ぎないのだが・・。 「リナは?」 何時も一緒に居るカレルの従姉でもあり・・・万が一この少年に何かが起こった場合は王女の立場にもなりえる人物が彼女の傍らに居ない・・・? そんな事がかつて無かったので不思議に思ったゼルは聞いてみる。 「ああ・・何かと・・お忙しいよ〜です〜。」 何時に無く曖昧にぼかしたように言うアメリア。 「まあ。アイツもイベント好きな奴だしな・・・・・。」 半ば諦めた様にゼル・・・・。 数日後、このボヘミア王国きっての騎馬試合が行われるのだ。 本国はもとよりも国王の支配が及んでいる地域の騎士が全員参加する。 そんな事をお祭り好きのリナが盛り上げないはずは無いのだ。 「そうか・・・。つまらないなあ・・・。」 言いながらカレルは練習中であった槍を放りだし馬から飛び降りる。 が・・・・・・。 がしゅああああああああああああああああああああああああああ〜〜〜〜んん!!! 不意に聞こえる物々しい音・・・。 「アイツ・・・・。誰かとぶつかったな・・・。」 もともと運動神経は皆無なカレルである。無理やり試合に参加させられる事も遭って 気が散ったのだろう。 鎧を纏った一人の騎士とマトモに正面衝突したらしい・・・。 「あああ〜〜〜ごめんなさい!!ごめんなさい!!」 泣きそうな顔をしながらカレルはその騎士の方を見ながら言う。 「はぁ〜〜〜びっくりしたぜ〜〜〜・・・。」 マトモに少年とぶつかり合って思わず尻餅をついた男は動作に似合わないのほほ〜〜んと した声でそういう。 「あ・・・ごめんなさい・・・え〜〜っと貴方は・・・?」 兜を取りながらその男はけらけら笑い出しそうな声で言う。長い金髪が辺りに舞う。 「お・・凄いな!!ボヘミア王の王子様が俺にぶつかったのか〜♪俺か?俺は 『貧乏人』のハプスブルクの一族・・。ガウリイ=ガブリエフって言うんだ〜♪」 楽しげにカレルを起こしながら言うガウリイ。 「おっと・・いけね〜!!」 そうとだけ言ってさっさと何処へとも無く行ってしまうその騎士・・・・。 呆然とそれを見送るカレルの後ろから聞こえる聞きなれた声。 「カレル!!明日の騎馬試合の主役は貴方よ!!」 それは・・意気揚揚とした・・悪戯っぽい笑いを浮かべた姉貴分のリナだった・・・。 「リナさん。何さっきからニヤけてるんです?」 騎馬試合を観戦しているリナの隣でアメリアが先程から意味深な含み笑いを漏らしている 彼女に向かって不審そうな声で尋ねる。 「何よ?アメリア。ゼルがあのハプスブルク家の・・かしら?騎士に負けちゃったから 不機嫌なわけ?」 ・・・・・・・・・図星・・・・。けど・・・。 「そんな事ありません!!けどリナさん・・・。」 「ま〜〜ねえ・・・・。」 「王子」と言う立場だけでシードを嫌々ながら食らい・・・。 ゼルでさえ勝つ事の出来なかったあの金髪の騎士と戦うのは文人肌の大人しい王子のカレルなのだ・・・。 しかも・・完全に足が震えてマトモに地面に立っている事すらままならない程怯えきった少年が・・・・・あの威風堂々とした剣士に勝てるはずがない。 「リナさん・・・・。止めるように王様に頼んでみます?」 が・・そんなアメリアの言葉にリナは・・・。 「ま〜〜見てなさいって。」 この一言だけ返すのだった。 「ぎゃあああああああああああああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」 殆ど・・いや・・完璧に泣き声・・と言っても過言ではないカレルの絶叫が競技場一面に響く。家臣団ですら平気で王子をここぞとばかりに失笑している有様である。 「あっちゃ・・・・・・・・・。」 ホレ見た事かと言わんばかりにアメリアの大げさな溜息・・・。 「まあ・・見てなさいって。」 あいも変わらず平然としたリナの声。 金髪の剣士が思いきりのそ剣を振り上げてカレルを落馬させにかかる・・・・。 その刹那・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 どんがらがっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんんんんんん〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!! 情けな音をたてて・・・・その金髪の騎士はド派手にすっこけたのだった・・・・。 「いでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・。誰だよ・・。馬が滑る様に板に石鹸水ぶちまけたのは・・・・・・・・・・・。」 マトモに落馬して・・・兜が転げ落ち素顔を曝したガウリイは情けない声で腰を摩りながら言う。 「・・・・・・・・・。何も言わずにコイツを殴れ!!」 「ちょっと〜〜〜〜〜〜〜!!!!何するのよ!!ゼル!!!」 つい先程、ガウリイと対戦した騎士・・・。 確かゼルガディスとか言っただろうか・・・????ともあれ彼がガウリイの目の前に一人の少女を突き出す。 「あの〜〜・・。その子は・・・???」 困惑しながらガウリイはジタバタしている・・恐らくボヘミア王家の一員であろう服装の少女を再度眺める。 「石鹸水ぶちまけた張本人だ。殴りたいだけ殴れ・・。」 「何よ〜〜〜!!アンタも犠牲になった訳では無いでしょ!!!」 「リナさん!!悪です!!悪です!!!!」 リナ・・・と呼ばれた王女は睨む様に仲間を見やる。 「良いでしょう!!たまには・・・・カレルに・・・・・・・・。」 なるほど・・。弱虫の一族の少年を勝たせてやりたい・・・と思ってのことか・・。 「あ〜。分かった、分かった。俺の負けだ〜。勝利はカレル王子だ!!」 可笑しくて仕方ない、と言った口調でガウリイ。 どうやら・・彼にも勝てないものはあるらしかった。 「ふいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい・・・・。」 何時もの公園・・・・・・・。少々眠気がする。 叔父の国王に昨日の「オイタ」を散々に怒られて。 息抜きに何時もの公園で油を売っているその時だった。 「今日は石鹸水は作らないのか〜?」 本当に僅かながらよく見知った声が聞こえる。 しかも・・・・・『石鹸水』の事柄を知っているともなれば・・・・・・?? 「よ!!」 予想していた通りである・・・。オーストリの貴族。 俗に言う『ハプスブルクの貧乏人』と言われているガウリイ!! こうして見ると・・・・・到底ボヘミア王国属国の下級貴族とは思えない顔立ちをしている。 金髪はともかくとして、ハプスブルクの一族の以上に伸びた顔や鷲鼻、更には厚めの唇は一切受け継いではいない。 いや、むしろ全てがその正反対と言っても良かった・・・。 「あ〜・・。言いたい事は分かる。俺は母親似なんだ。兄貴がハプスブルク家の血を 完璧に引いているんだ。」 聞かれててもいないのに気軽にリナに答えて・・・・・・・。 更には彼女の隣に座ってくる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 何と無く・・・。石鹸事件の事もあって話し掛けにくい思いがする。 「あ〜♪良い天気だな〜♪」 しかし・・・ガウリイはそんな事一考に構っている様子すらない。 ゴロリ〜と横になって空を仰ぎ見ている。 「暢気ね〜〜・・・。」 陽気な様子のガウリイをさしものリナも可笑しくてたまらない用紙で見遣りながら言う。 「そりゃ〜〜まあ。こんな綺麗な所に住んでれば少しは浮かれてくるだろ?」 なるほど・・・・・。 オーストリアの寒村に住んでいれば。 プラハの陽気、モルダウ川の流れは豊かで軽快に思えるかもしれない。 「そ〜でも無いのよ。あの従弟・・カレルに何かあったら・・。ヤなことはみ〜んなアタシに回ってくるし・・・。叔父貴の野心にもも〜アキアキよ。」 言いながらリナも何年振りかに芝生の上に横になってみる。 「・・・・・・そっか・・・・・・。」 リナの叔父・・オタカル二世は長い事空位になっている位・・・。 『神聖ローマ帝国皇帝』の地位を虎視眈々と狙っているのだ。 そして、彼自身も皇帝を選出できる権利を持つ『選帝侯』と言う地位を持っているのだ。「金持ち王」と言われる彼なら恐らく不可能は無いだろう。 「・・・・・・・・。そ〜したら・・・。」 暫くここ・・ボヘミアに留まるとはいえ・・・。 リナとこうして合う事も不可能になるだろう。 そう思ったことが顔に出たらしい。 「何言ってるのよ。アンタ。今日にアタシと会ったのは2回目よ?」 「・・・・・・。一回目のときはとんだ遭い方だったがなあ〜〜〜・・・。」 ぐさ・・・・・・・・・・・・・。 リナが後ろめたい思いをしている事を平気でアッサリと言ってやる。 「・・・そんな事を言うためにだけ来たわけ・・・?」 「・・・・・・。そ〜でもないけど・・・。」 流石に偶然一人で姫君が居る所を発見して・・お近づきになってみた・・。 とガウリイは言う事は出来なかった。 「まあ・・いいわ。暇なら時々ここに遊びに来なさいよ。アタシ、 授業から逃げ出して結構毎日晴れてる日は脱走してきているのよね。」 実は・・この公園通りのイスパニアシャボンを買い求めて・・・。 石鹸水を作り出した・・と言うのはトップシークレットである。 「そうだな。結構露店とかあって面白そうだし!!」 墓穴を掘ったかもしれない・・・。が・・。ガウリイは気にしている素振りさえない。 「明日・・・晴れると良いな〜♪」 そう言ってガウリイはさっさと騎士の宿泊所にだろう。立ち去って行くのだった。 「リナさ〜ん!!大変です!!」 宮殿に戻ったリナを迎えたのはアメリアの絶叫であった。 「どうしたの?アメリア・・・・。」 どうやら・・・。 勉強がイヤで家庭教師をちょとまかして逃げ出した事がばれた・・・・。 その程度の問題では無さそうな状況である。 「カレルさんが・・・・大変なんです!!」 「カレルが・・・・・・・・・・・・・?????」 兵士の訓練所・・・・。 あまりにも物々しい雰囲気を漂わせるその場所にリナは一瞬たじろいた。 少なくとも『立派な騎士様』が集合している場所の様には見えない。 いや・・それどころか『ならず者の傭兵』達が国王に正式に 雇われて居るとはいえ溜まり場と化しているような一角だった。 「いやだ〜〜〜いやだああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」 泣き叫んで抵抗しているカレルを兵士達が強引に連行していく。 その様子を黙って眺めている叔父、オタカル。 「叔父上・・・・・・・・・・・・?????」 その冷徹な様子にリナは多くの言葉を発する事すら出来ない。 「リナか・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 反逆者の塔にカレルが連行されて行く事は間違いが無さそうだ。 「どう言う事なのです・・・・・・・・???」 世継ぎの息子に対して・・・そんな事が出切るであろうか・・・・??? 困惑しながらリナは思う。 「そやつは・・・反逆者なんだ!!」 行き場の無い怒りがその拳には篭っている。 「何を・・何を言ってるんですか・・?神聖ローマ皇帝にもなろうというお方が・・?」 「それは・・皮肉か・・・?」 何時もならリナは戸惑い無く「はい、そうです。皮肉です。」 と言ってやっただろう。だが・・・・・・・・。 今日は雰囲気からしてそうは言えない・・・。叔父の冷たい冷笑がリナの 言葉を喉もとでいとも簡単に凍りつかせる。 「あの息子は・・・。ハプスブルク家と通じていた!!あやつのせいで・・・。 ハプスブルクの一族が!!あの騎士・・ガウリイの兄が 神聖ローマ帝国皇帝に選出されたんだ!! あのような裏切り者は・・・・・・・・・・。」 カレルが・・あの一件以来ガウリイを慕って居る事は知っていた・・・・。 だが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「リナ・・・。行くのか・・?」 ハプスブルク家・・ガウリイの一族とリナ達ボヘミア王国の一族との亀裂は日に日に目に見えて 深くなっていた。 ガウリイとの約束がある・・・・・・・。 そうとだけ言って日課通り勉強から抜け出して・・・・・・。 更に言えばガウリイが待っているであろう公園に行くと言う事は相当の 危険を伴う事をリナは悟っていた。 「ええ・・・。」 約束は・・約束だし。例え・・それが反逆罪に繋がりかねないとしても・・・・。 「お〜〜〜い!!リナ!!やっぱり本物だ!!」 お互いに戦わねばならない一族に対して送る微笑だろうか? 能天気にリナに手を振ってくるガウリイにリナは苦笑して答える。 「来てくれたんだね。ガウリイ・・・。」 「ま〜な。なにがったて・・。約束だしな〜♪」 まるでお互いの一族に何事も無かったかのような微笑を再度リナに向けるガウリイ。 「それは・・・?」 肩に止まった・・純白の鳥。 「ああ〜♪伝書鳩だぜ〜♪『リマ』って言うんだ〜♪」 「イヤな名前ね〜〜・・・。」 苦笑しながらリナはそう言う。ガウリイの合図で見事に羽ばたく伝書鳩。 口笛に・・・掛け声に・・・・。 自由に駆け回っている様でも鳥は確実的にガウリイの命令にしたがっていた。 「ガウリイ・・・・・・・・・・・・・・。」 「リナ・・・・・・・・・・????」 今・・縋れる人物は・・おそらく彼しか居ない・・だろう・・・。 「誰も居ないな・・・・・・。」 夜風は容赦無く・・・。夏とはいいえ冷え込むこの王宮の空気を冷たく駆けぬけて行く。 冷や汗も今となっては冷え切った液体と化した。 「気をつけろ・・・。」 言いながらガウリイは塔の梯子状の階段をリナの手を引きながら上っていく。 「まさか・・泥棒の真似事を皇帝の弟と・・ボヘミア王家の一族がやらかす事になるたはねえ〜〜・・。」 苦笑交じりにリナはガウリイに言う。 「あのなあ〜〜・・。お前がカレルを助けてくれ・・て言い出したんだろ?」 もっとも・・・・。 かな〜〜り楽しい展開なのでガウリイとしても文句は言わないが。 「そ〜でした。」 正直にリナも同意する。 腰に括りつけた巨大な鑢でカレルが幽閉されているであろう部屋の窓の鉄格子を破壊する。 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンン・・・・・。 鈍い・・金属音・・・。 「アンタ・・。皇帝の弟辞めて・・泥棒に転職したら?」 リナの正直な感想にガウリイは・・・。 「じゃあ・・お前は泥棒の女房じゃね〜か・・・。」 まったくもって・・今の状況を見ればその通りなのだが・・・・。 「突き落とす!!!」 「ぎゃああああああああああ〜〜〜〜〜!!リナ!!やめろ!!!!」 お互いに大声を出してでは無いこんなやりとりが少々情けない。 「誰・・・・・・・・・・・・????」 眠たそうなカレルの声・・・・・・。 「カレル!!私・・・・」 リナが言い終わらないその時であった・・・。 「逃げて!!!!!!!!!」 え・・・・・・・・・・・・・・・・・???????? カレルの声にリナが反応したその時は、既にもう遅かった。 「ガウリイ!!ごめん!!!」 冗談のつもりだったが・・・本当に突き落とす事になるとは・・・・。 少なくともカレルを抱きかかえている彼を助ける事は得策だろうし真下は大木の枝が生い茂っている!! 「リナ!!!!!」 ガウリイの抗議は無視!!既に塔の屋根には無数の松明の灯りとやはり無数の 弓矢で埋まっている。 大急ぎで片手のふさがっているガウリイにリナは蹴りを入れる。 咄嗟な事に本能的に防御の体制をとった・・更には片手にカレルを抱えているガウリイが マトモにバランスを崩すのは自明の理である。 「・・・・・・後は・・・頼んだわ・・・・。」 自分が捕まって・・カレル以上に頑丈な鉄格子に入れられることはまず間違いが無いだろう・・・・・・・・・。 「リナがイタリアのシチリア島の牢獄に幽閉されるだと!!?」 こっそりとガウリイのもとにアメリアとゼルが情報をもたらしたのはその日の夜だった。 「はい・・・・・・・・・・・・・・・。」 沈痛なアメリアの声・・・・。 「そうか・・・・・・・・・・。」 暫し考えたようにガウリイは低く呟く。が・・・やおら決心した様に・・。 「俺はハプスブルク家の軍勢として・・・。オタカニ国王と決戦に挑む・・・。」 言いながらガウリイは自家の紋章・・・。 方や雄、方や雌・・・。 二つの頭に一つの王冠を抱いた鷲の入った剣を握り締める。 「・・・・・・何時か来るとは思ったよ・・。ボヘミアとの戦争は・・・。 リナのタメに参戦はしない以降だったが・・。明日既に進軍している兄貴の陣地へ行くよ。」 遠い目をしながらガウリイは言う。 「・・・・・父は・・。暴君です・・。ガウリイさん・・僕も・・・。」 カレルが言いかけるその言葉を片手で遮るガウリイ。 「おまえさんは・・・・・。それ以上に大切な事を二つたのみたい・・・。」 「・・・・・・・・・大切な事・・・・・・・・????」 戦争・・・だろうか・・・・??? リナの閉じ込められ塔の中にまで時の声が聞こえる。 「おい!!さっさと支度しろ!!」 どうやら・・・。コルシカ島にリナを連行する連中の一人らしい。 今まで王女としてのリナにへいこらしていたのに・・・。 犯罪人になった途端これである。いやな連中・・・。 そう思いながらそのうちの一人を牢屋の中に「準備が出来た」とかナンとか 適当な事を言って招き入れる。 「荷物は?」 「揃ったわ・・。それよりも・・戦場じゃ無いところで狼煙みたいな火が見えるんだけど・・。」 リナの言葉にその番人はいぶかしげな顔をして窓の外を覗く。 「どれ・・・・?」 「もっとこっち。身を乗り出さなくちゃあ見えないと思うけ、どぉっと!!」 言いながらリナの回し蹴りが番人に炸裂する!! バシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!! 「ま。二階だし。濠に落っこちたんだから・・。100%無事でしょ。明日風邪をひくことは確実でしょうけどね〜♪」 言いながらリナはケタケタと笑い出す。 「リナさん!!」 分かっているわよ。とでも言うようにリナはアメリア、ゼルと共に牢獄を脱出する。 「ガウリイを・・・探さなくちゃね・・・・。」 戦場の何処を・・・・・・・・・? 分からない。これから どうして良いのかさえも・・・・・・・・・・・・??? 「これで・・良いのかな・・?」 どちらかをリナは発見してくれるだろう。 ガウリイはそう言って二通の手紙をカレルに託した。 まるで・・リナが自力で牢獄から脱出でもするかのよう言いながら。 「行って!!リマ!!」 名前を呼ばれた事に反応したのだろう。 伝書鳩は元気良く空に羽ばたいていく。そして・・・。 もう一枚の手紙は・・・リナの部屋の机の上の本に挟んで置いておこう。 「僕も・・・。コレからは・・・・・・。」 王族なんかじゃなくて自由に生きられる。こんな王国はもういらない!! そう思いながらカレルはリナとガウリイの無事を祈った・・・。 白い・・鳥・・・・・・・・・・?? 伝書鳩・・・???? その鳩はリマであることは恐らく疑いない。 「リマ!!!」 ガウリイの鳥の名前をリナは呼んでみる・・。彼女にも良く懐いているはずの その鳥は此方には来ない・・・・・・・・? 「リマ!!!!」 再度リナはその鳥の名前を呼んでみる・・・・。 が・・・・・・・・・・・・・・・・・その鳥は急降下してあらぬ方向へ行く? その光景をただただ眺めてリナが呆然としたその時だった・・・。 「リナ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」 良く見知った金髪?????? 「ガウリイ!!!!!!無事だったのね!!!!」 気がつけば・・・・其処は何時もの公園だった・・・。 会えたんだ・・・無事に・・・また・・・・・・。 今は・・・その思いだけだった・・・・・・・・・・・・・。 「あ〜〜あ・・・・。レポート・・。けど・・。この紙一体ナンだったんだろね・・?」 13世紀の物なのに。自分の名前が書かれた薄っぺらい殴り書きの手紙。 『何時もの公園で待つ・・・・・・・・・』 とだけ書かれた・・・・。 ウィーンの公園は夕闇がますます濃くなってきている。 「あ・・・・・・・・・・・・・・・。」 鳩・・いいや・・・。伝書鳩・・・・? そう思いながらリナは足音をわざと消して・・そっと歩いてみる。 この場から逃したくない。それだけ・・・・・。 と、そう思ったその時だった・・・。 「お〜〜っと!!!」 公園の2メートルはあるだろう緑の植込みを簡単に・・・。 ピョイっと金髪の青年が着地する。 同時に・・バササササササササササササ〜〜〜〜〜〜!!! 羽音を立てて鳩達が飛び立った・・・。 無神経な足音。 「そうシズシズ歩かれても困るのだが〜〜・・・。」 金髪の青年は困った様に言う。 「アンタこそ無神経、ドタバタ歩いたら鳩が逃げるじゃないの?」 夕闇の中、確かに無数の鳩の姿が見うけられる・・・・・・。 「あ・・・。ごめん・・・・・・。」 手紙は・・・破り捨てようか?いいや・・・。止めておこう。 「気をつけなさいよね。鳩は幸運の鳥なのよ?」 ウィーンの一角にある寂れた・・しかし並木の美しい公園での出来事。 『あの時』の再現だとは・・本人達も気付かないうちに。 「俺はガウリイ。お詫びにどっかでおごるよ。同じ学校の・・。 大学部の生徒だろ?」 「アタシはリナよ。そね。折角だからザッハトルテおごってもらおうかしら?」 夕日が更に濃くなる2000年初夏のウィーンの公園の出来事だった。 (お終い) ま・・まだ右手サンが笑ってる・・・。では!!また!! |
10738 | やっぱり運命の恋〜♪ | P.I E-mail | 6/28-00:29 |
記事番号10727へのコメント CANARUさん、こんばんはで〜す! ノリにノッてますね〜♪読ませていただく方としては嬉しい限り(^^) 槍試合に石鹸水・・・危ないでしょリナちん! いや、ガウリイは頑丈だからいいけど、一緒にコケた馬さんが可哀相(汗) 下手すりゃ骨折もんだよ〜! ゼルが問答無用で「殴って良し」としたのもわかる気が(^^;) 2通の手紙、1通は別れた二人を結びつけ、もう1通は新しい出会いを導いたん ですね〜(^0^)やっぱりガウリナはどこまで行っても赤い糸で結ばれた運命 なのかも。はぅぅぅ!(うっとり) 次回は現代モノなんかも読んでみたいな〜・・・なんて(てへ♪) 余談ですが、図書館で「ギリシア・ローマ盗賊綺譚」と「メディチ家の盛衰」 (上・下)という本を借りてきました〜。新刊なんですよ♪ ・・・自分が読みたくて入れたんだろう、と言われたら何も言い返せない ゼロスより悪徳司書のPです。あはは(^^;) それではまた〜♪ |
10740 | 同じ事を〜〜!! | CANARU | 6/28-12:23 |
記事番号10738へのコメント >CANARUさん、こんばんはで〜す! >ノリにノッてますね〜♪読ませていただく方としては嬉しい限り(^^) ははは!! 電車なのかで寝ながら思い付いたのろわれた話だったりします!! >槍試合に石鹸水・・・危ないでしょリナちん! >いや、ガウリイは頑丈だからいいけど、一緒にコケた馬さんが可哀相(汗) >下手すりゃ骨折もんだよ〜! ですねえ〜〜〜!! 以来、ガウリイ君を見たら馬さんは泣きながら逃げ出した!! な〜んて伝説ありそうですねえ・・・(汗) >ゼルが問答無用で「殴って良し」としたのもわかる気が(^^;) ははは・・・。 ゼルのこ〜んな介入が書いていて知らないうちに出ていました!! やっぱりお茶目な人ですねえ・・・。 >2通の手紙、1通は別れた二人を結びつけ、もう1通は新しい出会いを導いたん >ですね〜(^0^)やっぱりガウリナはどこまで行っても赤い糸で結ばれた運命 >なのかも。はぅぅぅ!(うっとり) はい〜〜♪ 実は「ナポレオンの手紙」がヒントになって思い付いた 話だったりします〜〜!! こっちはほんの100年・・ですけどねえ・・(汗) >次回は現代モノなんかも読んでみたいな〜・・・なんて(てへ♪) はううう!! なにか考えますわあ〜〜〜!!最近書いてない・・・・。 >余談ですが、図書館で「ギリシア・ローマ盗賊綺譚」と「メディチ家の盛衰」 >(上・下)という本を借りてきました〜。新刊なんですよ♪ >・・・自分が読みたくて入れたんだろう、と言われたら何も言い返せない >ゼロスより悪徳司書のPです。あはは(^^;) あたしも高校時代同じような事「読書部部長」の権限を利用して してました!! ああ・・リナちゃんより問題児!!? >それではまた〜♪ ではでは〜〜〜!! |