◆−夕陽−紫(7/4-23:22)No.10861 ┗はじめまして−月の人(7/10-08:41)NEWNo.10943
10861 | 夕陽 | 紫 | 7/4-23:22 |
西の空が赤く染まっていくのをあたしは黙って見つめていた。 風が吹いて森のこずえが揺れても あたしの服も髪も揺らぐことはない。 街が一望できる丘の上で、あたしは人々の営みってヤツを一日眺めていたことになる 朝日を浴びて輝いていた人々の暮らしが、今、夕日の赤に染まっていく。 空はゆっくりと 赤から藍へ染まって行く。 人の一日のなんと短く、そして、活気に満ちていることか。 今まで、あたしが居た場所。 「リナさん、どうかしたんですか。」 隣に気配を感じた。 振りかえると、黒衣の神官服が風になびいて、見慣れた笑顔があった。 「ゼロス…。」 あたしは隣の人物を認めると視線を街の様子に移した。 「後悔してますか?」 静かな声があたしに問いかける 「いいえ。」 きっぱりと答えてから、静かに街を眺めつづけた。 「……、やぱり、すこしは、してる、かな。」 小さく付け足した。 イメージしなければ、風になびくことをしない髪。 影さえも、その意識下に置かないと、現れない。 そうして見ると、ゼロスってやっぱりすごかったんだなあ。 「そうなんですか…」 暖かさをなくしたあたしの体。 もう、鼓動の音もしないし、涙を流すこともない。 そう、あたしは魔族と契約したんだ。 契約したのは後悔してない、これしかゼロスと一緒にいることができなかったんだもん。 でも。 風を感じることができなくなったのが、たまらなく悲しいだけなの。 夕日を綺麗だと感じる心は失ってないのに、なんの感動もできないのが悲しい。 「そんなに、嫌だったですか?」 「ううん、契約自体は後悔なんかしてないわ。 でも、ちょっとね。淋しいかなって。」 あたしの笑顔は、いかにも造ったかのようだった。 街を見つめるあたしの 視線をさえぎるようにゼロスがあたしを抱きよせた。 「リナさん。」 優しい声が耳元で囁く。 二つの冷たい体。 重なり合っても冷たいよね。 「そんなに、遠い目をしないで下さいよ。 嫉妬してしまいますよ?」 声と同時に、街の方向で悲鳴と爆音があがった。 「もうしてるじゃない。」 ため息をついて、街の方を見つめた。 空が赤く染まっているのは、炎のせいか。 あの下で、今この瞬間にあの街の人々の生活が終っているのか…。 何の感慨もなくそう思った。 それ以上、思うことができなかった。 ああ、こんなにも あたしは変わってしまった。 リナ=インバースだったらこんなとき、街に向かって走り出したんだろうな。 それよりも。 ここで、ゼロスの腕の中にいるほうが大切に思えてしまう。 「もう、行きますか?」 「そうね。もう 夕陽どころじゃなくなっちゃったしね。 行こうか…。」 あたしはゼロスに抱きついたまま、小さく頷いた。 ゼロスが満足したようにあたしを抱き寄せて、闇に溶ける、 後悔はしない。 ずっと一緒にいると決めたこと。 永遠に近い時間を。 あたし達の 存在が闇に溶ける瞬間まで…。 おわり |
10943 | はじめまして | 月の人 E-mail | 7/10-08:41 |
記事番号10861へのコメント はじめまして、紫様、月の人といいます。 小説、読みました、では、感想です。 リナちゃん、魔族になっちゃったんですね。イメージしないと髪もなびかないか・・・ゼロス様は凄かったんですね。だって、すごく人間の振りが上手いですよね。契約をしたんですね、ゼロス様と・・・。 一緒にいる為にはこの方法しかなかったから・・・リナちゃんの強い想いが感じられました。 でも、淋しいんですね。夕陽が綺麗だと思う心があっても感動できない、感情がないんですよね。リナちゃんの淋しそうな後姿がイメージされて、胸がきゅうんと なります。後ろから抱きしめて安心させたい・・・(すいません、壊れが・・) ゼロス様がリナちゃんを抱き寄せましたね。きゃっ、いいですね。 でも、お互い体は冷たくて・・・でもね、リナちゃん、愛してる人との抱擁は いつしか温かくなるんだよって、私は言いたくなりました。 ゼロス様、独占欲強いですね。リナちゃんが見ているものを破壊するなんて、魔族 ですよね、でも、それだけリナちゃんへの想いが深いということで、私はちょっと 顔がにやけてしまったんですが・・・ 滅びるまでずっと一緒に、過ごしていくリナちゃんとゼロス様。 確かにリナちゃんは一生懸命前向きに生きてきた・・・本当はかなり悩んだでしょうね。でも、それよりもゼロス様への想いが大きかったから、一緒にいたかったから・・・そう決断をしたリナちゃんがとても潔くて、可愛くて・・・ 街は破壊されているのに、なぜかこの二人の間の空気というか雰囲気は静かで、 ゆっくりと時間が流れているのが素敵でした。 小説の感想でした。しかし、かなり支離滅裂且つ暴走しています。 紫様、体には気を付けてくださいね。 素敵な小説、ありがとうございました。 |