◆−影(ヴァルフィリ)−人見蕗子(7/10-16:08)No.10946
 ┗お久しぶりです。−ささはら 朋(7/13-16:17)NEWNo.11004
  ┗ゼロリナさんだったんですか。−人見蕗子(7/14-17:49)NEWNo.11014


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10946影(ヴァルフィリ)人見蕗子 7/10-16:08


 パラレルもいいところですよもう!!訳の分からないとりあえずヴァルフィリです。ヴァルフィリ書ければなんでもいいわ・・・。





               影


 何だか、無性にヴァルガーヴに会いたくなった。


 蝉の声を聞くと、首筋の汗が妙にひんやりとかんじる。目眩がする。
 目の前の大きな森からは、何千何万の蝉の声が時雨のように降っている。こんな北の果てにも夏が来るのかと思うと、可笑しくなった。
 古代竜の神殿の跡地。雪と氷に閉ざされていたこの地が豊かな緑に覆われる日が来るとは・・・。数百年という時間のブランクを急に感じてしまう。
 そうだ。この地の元の姿を知っているものは、もう三人しか生き残ってはいない。私とゼロス、そしてヴァルガーヴ。ゼロスはともかく、ヴァルガーヴとはあの日からいちどもあってはいない。そう−−−私が人妻となった日から。 


 ダークスターとの決戦から二年、私とヴァルガーヴは恋人だった。二年目の夏、火竜王の神殿の生き残りを捜していた黄金竜たちが私を見つけ、大神官の妻にと私を呼んだ。彼らなりの気遣いだったのだろう。彼らが崇拝しているのは火竜王ではない。聖位一位の巫女であった私を同じ黄金竜だという理由で迎え入れるためには、私が火竜王を捨てるか、一般人となるか、そのどちらかしかない。見知らぬ男と結婚する気は無かったが、再び同族と暮らせるという甘い誘いに私の心は揺らいだ。
 あの頃、私はヴァルガーヴと暮らしていた。時々ゼロスが顔を見せた。黄金竜たちは、それを不思議がり、訝しく思っていた。リナさんたちはもう、新しい冒険に旅立っていた。私は、一人で決めるしかなかった。止めてくれるはずだ、と期待していたのに、ヴァルガーヴは「お前の思うとおりにしろ」とだけ言った。その声には怒りも悲しみも滲んではおらず、ただ、無関心だった。そのよそよそしさが急に恐くなり−−−、私は見知らぬ夫を持つことと引き替えに同族との生活を手に入れたのだった。


 この森の中で、ヴァルガーヴが一人で暮らしているのは知っていた。別れる日の朝、彼は言っていた。「お前が帰るべき場所に帰るなら、俺も帰るかな」と。
 彼がここにいる、そう思うと胸が高鳴った。あの遠い二年間のように。私たちは、幸福だった。
 ハンカチを取り出し、額の汗を拭う。後ろ髪を持ち上げ、首筋も。膝までの豊かな金髪は、今はもう無い。肩のところで切りそろえてある。ベージュのサンドレスの裾を翻し、私は蝉時雨の中を軽やかに歩き始める。肩に担いだボストンバッグはずいぶん重いのだけれど。
 小川の流れに沿って、知らない森の中を歩いてゆく。こんな思い切ったことをするのは久しぶりだ。知らないものを恐れず、好奇心のままに行動できたのはヴァルガーヴとの二年間だけだ。火竜王の巫女だったときも、結婚してからも、私には必要なものが必要なだけ与えられていた。
「−−−フィリア!!」
 後ろから名前を呼ばれ、私は驚いて振り返った。ひどくハスキーな、穏やかでなんの迷いもない声。
「久しぶり」
 数百年が一日にまで縮まるようなあっさりしたあいさつ。実際、彼は何処も変わってはいない。見た目も、おそらくは内面も。雨に濡れたのだろうか、きらきらひかる薄紫の花を一束抱いている。
「驚いたよ。お前が来るとは思わなかったから」
 全然驚いていない様子で。「お前が」というところがきになった。
「−−−誰か来る予定が?」
 私の胸に不安がよぎる。そうだ、ヴァルガーヴといると、私は常に心のどこかが不安になるのだ。ざわざわした、とらえどころのない不安。
「いや・・・時々ゼロスが来るんだよ。暇なもんだな、魔族ってヤツも。まあ目的は俺を魔族にすることだろうけど。まだねらってるんだぜ、俺のこと。ちっと脅しかけるとケツ巻いて逃げていくクセして」
 どこか他人事のように言う。
 昔から右腕に巻かれた青い包帯を確認し、目を逸らす。いつだったろうか、ゼロスが私に会いに来たことがあった。
「フィリアさん、お願いですからヴァルガーヴさんのところへ戻って下さいよ。弱点がないんでやりにくくてたまんないんですよ」
「弱点にする為だけに私を利用しようと!?」
「そう言う訳じゃありませんよ・・・。ヴァルガーヴさん最近やばいんです・・・」
 ある獣王軍の魔族がヴァルガーヴのスカウトにいったところ、突然自分の左手首を切った。彼に死なれては元も子もないので、その魔族はゼロスを呼んだという。
「僕だって生物の延命なんてできないんですけどねえ。行ってみたら、自分で止血してましたけど。それが、そのときが初めてじゃないみたいなんです。どう見ても自殺ごっこというかためらい傷が左手じゅうにあって」
 目眩がした。そんなことのできる、いや、そんなことをする人だとは思わなかった。
「すげえ荷物だな、それ。持ってやるからこの花を持ってくれ」
「いいですよべつに」
 言い終わる前に、胸に花束を押しつけられる。
 私の全てを詰めたバッグがヴァルガーヴの肩に掛かってしまうと、それは大したものではないように見える。切りそろえた毛先を空いた手で弄ぶ。
「そーいや髪切ったんだな」
「ええ。あなたは髪、伸びたわ」
 ヴァルガーヴの髪は腰くらいまで伸び、黒いリボンでポニーテールのように結わえてある。どうしてこんな、少女めいた髪型が似合ってしまうんだろう。夫には絶対に似合わない。彼は、ふたまわりも年上だった。
「旦那と旅行中なの?こんな大荷物でさ」
 私は、言おう言おうと思っていたことを口にしてみた。ヴァルガーヴの口調に似せて、あっさりと、他人事のように。
「−−−離婚したんです、私」
「そう」
 拍子抜けした。もっと驚くと思ったのに。黄金竜たちは皆、驚いていた。もちろん夫も。多分、彼が一番驚いたんだろう。夫と別れるということは、もうここで生活できないということだから。私にはもう、行くところがない。
 私が結婚したことをひどく驚き、そして怒ったのはリナさんたちだった。あんたはヴァルガーヴを守るんだと思ってたのに。その台詞は、全く的はずれなものだった。私は、ずっとヴァルガーヴに守られてきた。心を。
「よかった」
「え!?」
 私が驚いたのは、ヴァルガーヴの言葉にではない。
「よかったよ」
 そういったヴァルガーヴがまるで前世からの友のように優しく微笑んだのと、その声が初めて感情のこもった声だったから。
 ざわり。不安は尽きない。
「旦那、お前に暴力振るったりした?」
「まさか。離婚したのは私の考えですよ。−−−私が、私の弱さに負けただけです。あのときのように」
「あのとき?」
「あなたとの別れを決めたとき。あなたでは駄目、私と同じ黄金竜でなければ駄目、と思い込んででていったのに−−−、夏が来るたびあなたのことを、同じ日のことを考えていたの」
 森の中まで夏の明るい太陽は侵入してくる。鬱陶しくむしむしする澱んだ空気を殺菌しているつもりだろうか、馬鹿げている。拭っても拭っても汗は流れ落ち、抱きしめている花の露となる。
「どんなところに住んでいるんですか?」
「てきとーに建てたあばらやだよ。まだまだ先だけど。休憩するか?」
「はい・・・」
 返事と共におおきくいきをはき、木の根本に腰掛ける。影の中は、ほんのわずかに涼しい。顔の汗を拭いたとき、ヴァルガーヴも汗をかいていることに気づいた。無意識のうちにハンカチを握った手を伸ばし、首筋を拭いてやる。かれは驚いたような顔をしたが、抵抗はしなかった。
 そういえば、夫の汗を拭ってやったことは一度もない。ヴァルガーヴの汗はよく拭いたが、あれは若かったからそういうことができたのだとおもってた。でも、今再び私は彼の汗を拭いている。これはどういうことだろう。夫とは、手すらつながなかった。戸棚においてあった人形の方が、まだ愛されていた。
「暑いな」
「−−−うん」
 ラフな言葉遣いをするのは久しぶりだ。
「子供がいなくてよかったね」
「−−−うん」
 ヴァルガーヴは本当に喜んでいる。そんな気がした。蝉の声が一段と大きくなる。夕闇が、迫っている。
「いきましょ。夜が来るわよ」
「ああ、そうだな」
 オレンジの森に私とヴァルガーヴの影が伸び−−−、やがて消えた。











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 訳分かりませんな、ホントに。
 元ネタはある作家さんの「夏の思いで」をテーマにした連作小説のひとつで、「私」と「M」を「私(フィリア)」と「ヴァルガーヴ」に置き換えてみたんですが・・・。あまりにもべつものなんで作家さんの名前もだせません・・・。あと、ここではないスレイサイトのヴァルフィリ小説からもヒントをいただきましたー。
ヴァルフィリとかガーヴァルとかヴァルの過去とかお笑いとかいろいろ手を出しすぎて青ざめてます。テスト明日で終わりだー!!そう!!すべての乱心はテストのせい!!ではなくてー・・・何か最近イライラ来ることばっか・・・やっぱり私って気が短いんだ・・・。
 ってわけで乱心したまま暴走したあげく、どれもネタに詰まって困ってます。次が何かは分かりませんが、どうぞよろしく。
 ここまで読んでくださった御方、ありがとうございます。では。
 

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11004お久しぶりです。ささはら 朋 7/13-16:17
記事番号10946へのコメント

人見蕗子さんは No.10946「影(ヴァルフィリ)」で書きました。

こんにちわ、ささはらです。
ものすげぇ久しぶりなので忘れられていられるかもしれません!
でもそれもまた一興とゆーことでっ!!(←いいのか、それで!?)

いままで本業(ゼロリナ)に精を出していて、ここへはしばらく来れなかったのですが・・・
んで久しぶりに来てみると・・・うわ、ものすごい量の小説を書いていらっしゃいますね。
あとで全部、読ませていただきますぅ♪

> パラレルもいいところですよもう!!訳の分からないとりあえずヴァルフィリです。ヴァルフィリ書ければなんでもいいわ・・・。

ああ立派なヴァリフィリ魂をお持ちで(^^)
たとえパラレルギリギリでもヴァルフィリはヴァルフィリですもんね。
現代モノでもスレ世界のモノでも、近代未来モノでも、はたまたその三つ全てのミックスであっても、人見様の書かれたヴァルフィリなら何でも読みますよ、私は(^^)

にしても今回は人妻フィリアさんですかぁ・・・・素敵ですね。
ってゆーか、離婚しちゃったんですかぁ。
それはびびったことでしょうね、黄金竜の皆様も。(私もびびった)
でも、まぁ、それほど彼女の想いは強かったとゆーことで。
人見様の書かれるフィリアって内に秘めた強さみたいな物があって、アコガレちゃいます。
(んでも時々少女のような幼さを持っていて、可愛いです)
始終ヴァルと見知らぬ夫を比べてるところなんて、(元)人妻!!って感じがしてニヤニヤ・・・って、いえ、何でもありません。
ヴァルくんは相変わらずかっこいいですね。
少女ヘアーが似合うってのも・・・素敵です。
ゼロスさん・・・出てますね。魔族のスカウトですか。
これじゃ完全なお邪魔虫さんだ(笑)

こうして読んでみるとわかりますが、人見様の文章力ってすごいものがありますね。
さすがとゆーかなんというか(^^)
読んでるうちにぐんぐんと引き込まれる引き込まれる。
ちょっぴしフィリアさん人妻ヴァージョンが頭から離れなくてヤバイ私です。

では、他の作品も読んできます〜
ささはら

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11014ゼロリナさんだったんですか。人見蕗子 7/14-17:49
記事番号11004へのコメント

ささはら 朋さんは No.11004「お久しぶりです。」で書きました。

>
>こんにちわ、ささはらです。
>ものすげぇ久しぶりなので忘れられていられるかもしれません!
>でもそれもまた一興とゆーことでっ!!(←いいのか、それで!?)
 いいえ、ささはら様を忘れるなんてできませんわ!!はじめて「書き殴り」をみつけたのが先月の11日・・・。「春眠」!!春眠がすてきだったから・・・。扇様、俺様さん、ももじ様、そしてささはら様の書くヴァルがもう・・・。私のヴァルフィリ書き原点は御四方ですから。それで勝手に「ヴァル溺愛四天王」と名付けていくつか小説を捧げましたが・・・扇様に「ももじ様はヴァル好きじゃない」と言われちゃいました。三天皇は変ですな。
>
>いままで本業(ゼロリナ)に精を出していて、ここへはしばらく来れなかったのですが・・・
 ゼロリナだったんですか!?知りませんでした・・・。「書き殴り」にはかかないんですか?ゼロリナ。自分のサイトを持ってるとか!?あ、私が見てないだけだったらごめんなさい・・・(汗)

>んで久しぶりに来てみると・・・うわ、ものすごい量の小説を書いていらっしゃいますね。
>あとで全部、読ませていただきますぅ♪
 あ・・・ゼラゼロ・・・(汗)
 でも、私ゼロスのことあんまり知らないので、今からでもゼロリナとかいけますよ。でもしらないから書けない・・・。けっこう小説にはだしてますが・・・ちょい役・・・。ごめんなさいごめんなさい。
>
>> パラレルもいいところですよもう!!訳の分からないとりあえずヴァルフィリです。ヴァルフィリ書ければなんでもいいわ・・・。
>
>ああ立派なヴァリフィリ魂をお持ちで(^^)
>たとえパラレルギリギリでもヴァルフィリはヴァルフィリですもんね。
>現代モノでもスレ世界のモノでも、近代未来モノでも、はたまたその三つ全てのミックスであっても、人見様の書かれたヴァルフィリなら何でも読みますよ、私は(^^)
 ああありがとうございます。愛だけで暴走中です。
 しかし「影」はちょっと・・・あんまりですよね(汗)これで「やばい!!」と思いギャグへ・・・『弾劾裁判』へ逃げたんですが。
 「影」はある文芸作品が元ネタです。私はホントは文芸読みの文芸書きなのです。そして・・・平気で暗いものを書く。「地」がでましたねー、これ。
 フィリアが離婚したくだりは元ネタ通りですが、ヴァルはてきとーにかんがえました。てきとー、で手首切らないで、ってかんじ?(死)しかも左手切って包帯右手に巻くし。
 どうも私が考えるヴァルって不幸なんですよ。
>
>にしても今回は人妻フィリアさんですかぁ・・・・素敵ですね。
>ってゆーか、離婚しちゃったんですかぁ。
>それはびびったことでしょうね、黄金竜の皆様も。(私もびびった)
>でも、まぁ、それほど彼女の想いは強かったとゆーことで。
>人見様の書かれるフィリアって内に秘めた強さみたいな物があって、アコガレちゃいます。
>(んでも時々少女のような幼さを持っていて、可愛いです)
 ひどい設定ですー(汗)
 ささはら様のフィリアはホントに乙女ですよねー。恋する乙女。私はそーゆー繊細なものがかけないので。

>始終ヴァルと見知らぬ夫を比べてるところなんて、(元)人妻!!って感じがしてニヤニヤ・・・って、いえ、何でもありません。
 人妻・・・ってなんかえっちな感じ・・・。私だけ!?(汗)
>ヴァルくんは相変わらずかっこいいですね。
>少女ヘアーが似合うってのも・・・素敵です。
 何故かmyブーム、ポニーテールヴァル。しかも黒のリボンにこだわりが。

>ゼロスさん・・・出てますね。魔族のスカウトですか。
>これじゃ完全なお邪魔虫さんだ(笑)
 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。。。。
>
>こうして読んでみるとわかりますが、人見様の文章力ってすごいものがありますね。
>さすがとゆーかなんというか(^^)
>読んでるうちにぐんぐんと引き込まれる引き込まれる。
 そう言っていただけると嬉しいです。野望は小説家。でも文学。(笑)
 じつはファンタジーに挫折した人間。

>ちょっぴしフィリアさん人妻ヴァージョンが頭から離れなくてヤバイ私です。
 書くんだ!!ささはら様!!(おいおい)
>
>では、他の作品も読んできます〜
 ありがとうございます。
>ささはら
では。
>