◆−『朋友 まみえる』−白いウサギ(7/15-16:40)No.11036 ┣『朋友 まみえる』 1−白いウサギ(7/15-16:42)No.11037 ┣『朋友 まみえる』 2−白いウサギ(7/15-16:49)No.11038 ┣『朋友 まみえる』 3−白いウサギ(7/15-16:54)No.11039 ┣『朋友 まみえる』 4−白いウサギ(7/15-16:58)No.11040 ┣『朋友 まみえる』 5−白いウサギ(7/15-17:01)No.11041 ┣『朋友 まみえる』 6−白いウサギ(7/15-17:03)No.11042 ┗『朋友 まみえる』 7−白いウサギ(7/15-17:06)No.11043 ┣はじめまして〜☆−羅紗(7/16-15:04)No.11046 ┃┗はじめましてっ!羅紗さん(^^)−白いウサギ(7/17-01:46)No.11051 ┗Re:『朋友 まみえる』−ブラントン(7/20-01:06)NEWNo.11082 ┗感想&批評&考察感謝!(笑)−白いウサギ(7/21-03:15)NEWNo.11090
11036 | 『朋友 まみえる』 | 白いウサギ E-mail | 7/15-16:40 |
挨拶の詳しいことはあとがきにまわさせていただきますが、お久しぶりです。 初めましての方々よろしくお願いします。白いウサギともうします。 今回はロスト・ユニバース長編、『朋友 まみえる』をお届けします。 執筆依頼を下さった心当たりのある方、どうもありがとうございました。 ……挨拶や語りはあとがきの方にまとめて置いてあるんで、前置きは短くしておきます。 では、ロスト・ユニバース長編、『朋友 まみえる』 よろしければお楽しみ下さい。 『朋友 まみえる』 1 プロローグ 2 セピア=スカイ 3 突入(チャージ) 4 最後の砦(ファイナル・フォートレス) 5 ミアヴァルド 6 エピローグ 7 あとがき |
11037 | 『朋友 まみえる』 1 | 白いウサギ E-mail | 7/15-16:42 |
記事番号11036へのコメント プロローグ かつて宇宙に戦いがあった。 遺失宇宙船(ロストシップ)と呼ばれる、時の漂流者たちの戦いが。 彼らは二つに別れていた。 一方は恐怖を糧とし、絶対なる静寂、秩序を望む者。 一方は希望を糧とし、不確実な未来を望む者。 完全に相反するはずの二者は共に、かつての人間によって作り出されたものである。 それは厳然たる事実にして現実。 二者は遥かなる時間を置いて、対峙し、再び戦いが繰り返された。 気の遠くなるほどの長い――長い戦いにも幕が下りる。 それは希望を糧とした、未来を望む者の――いや、未来を紡ぐ力を持つ者達の勝利であった。 人々は知らない。 そこに戦いがあったことを。 そこに力があったことを。 そこに恐怖があったことを。 そこに希望があったことを。 そこに闇があったことを。 そこに光があったことを。 そこに――輝ける未来があったことを―― もう、半年ほど前のことである。 「――ケイン、少しいいですか?」 「ああ、わかった。 ちょっと待ってくれ」 そう言ってケイン=ブルーリバーはディスプレイに目を落としたまま返事をした。 表情は暗い。 おそらくこれからのことについて話があるのだろう。 ケインはそう思った。 自然と溜息が出る。 薄暗い室内にはディスプレイが生み出す僅かな光のみ。 そこには様々なニュースがネットで飛び交っていた。 戦いに終止符は打たれ、ナイトメアは解体。 抵抗する力も気力も失せていた組織の残党を宇宙軍(ユニバーサル・フォース)ガードの元、星間警察(ユニバーサル・ガーディアン)がそれを処理するのは楽とは言えないまでも、苦労という苦労は殆どしていない。 せいぜいがその数の多さで処理に時間がかかる程度のものだった。 もとより無差別殺戮で部下の支持をなくしていただけあって、見事にバラバラになっていた。 ある者は他の組織に流れ込んだり、何事もなかったかのように足を洗った者もごく少数。 ナイトメアは――悪夢は消え去っていた。 ――そう――全ては終わったのである。 ケインはスイッチを切ってくるりと後ろに振り返った。 「で、いくらになった?」 ――多額の借金を残して。 「あはははは………」 キャナルは泣きそうな表情で、そう絞り出すのがやっとだった。 |
11038 | 『朋友 まみえる』 2 | 白いウサギ E-mail | 7/15-16:49 |
記事番号11036へのコメント 2 『セピア=スカイ』 「…………今月……給料まさかマイナスとか言わないでしょーね……」 「……………………お、おう。当たり前じゃねーか」 ――今の間は一体……? わき上がる不安の声を必至に押し殺しながら、ミリィは何とか沈黙することに成功した。 操縦室(コックピット)を支配する凍てついた空気。ぼんやりとペンギンが見えたよーな気がしたのはやはり気のせいなのだろうか。 更にしばしの間を置いた後、キャナルがポケットから取り出したハンカチで目の端を押さえると、辛気くさく泣き出した。 「ううっ……この部屋に自分の雇い主の経済状態よりも我が身を考える乗組員が居るなんて…… そんな――そんな人をわたしは乗せてるんですね――」 ふるふると悲劇のヒロインモードでかぶりを振ると、やがて外の宇宙空間に目をやりながら―― 「わたし、耐えられません…… ……外に吐き出したくなっちゃいますねー……」 ぽつりと付け足すように言った一言がかなり怖い。 「あ、あんたねぇ…… どこの世界に自分の雇い主の借金肩代わりする健気な従業員が居るってのよっ!?」 「こ・こ(はあと)」 「そうかー、わりぃな、ミリィ」 笑顔で床を指差すキャナルに、腕組みしながらこくこく頷くケイン。 「本気で悪いわよっ! だいたい、前に使った隠し口座の方のお金はどうなったのよっ!」 「修理にいくらかかったと思ってるんですか? 残ってませんよ」 ――前ほどには。 ぽつりと胸の内で付け足すキャナル。 「それにしても――だ。 外装を前まで――ソードブレイカーの登録時と同じもんを揃える必要あったのか?」 そうなのである。ソードブレイカーの外装は、依然と全く同じ姿へと戻っていた。 選り好みしなければ遥かに安い――とはいかないまでも、費用はもっと安く済んだはずである。 なにしろ、ソードブレイカーの外装は、何世代か前のデザインの物を使用していた。 つまり、流通量が少ないのである。 さすがにプレミアムが付いて値段が高騰――とはいかなかったのだが、あちこちでパーツを買い集めたので、その分の費用は馬鹿にならない。 そのような費用を出してでも前と同じ外装にしたのは、理由がある。 キャナルは溜息をつきながら、ケインに向かい、 「当たり前じゃないですか。 いきなり全然別の姿をしていたら、あっちこっちに怪しまれますよ。 艦籍だって普通のを使用していたんですから、ごまかしはききませんし」 「単に前の格好が好きだったからだったりして……」 「……う゛っ………!」 ジト目でぽつりと呟いたミリィの言葉にキャナルの表情がひきつる。ご丁寧に額に汗まできっちし浮かべていたりするのだから侮れない。 「……をい……」 同じくジト目でキャナルの方へと冷たい視線を送るケイン。 二人の冷たい視線に晒されながら、笑顔でじりじりと後退するキャナル。 しかしやがて目を閉じて深い溜息。 「……人間って……金銭的余裕が無くなると人格が破綻する生き物なんですねー……」 「哀れみを込めて言うなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 誰のせいだと思ってやがるっ!?」 「ほら、やっぱり人のせいにして……」 「事実お前のせいだろうがっ!」 「まあ、それはともかくっ!」 反省の欠片もなく、びしぃっと指を天井へと突き上げながら、 「過去の失敗を責めても何も解決しません」 『……………………………………………』 ツッコミを入れたいところは山ほどあったが、言ってもどうにもならないと仕方なく物言いたげな目でキャナルを見つめる二人。 その視線を感じ取って無視しているのか、それとも元々気付いてないのか、キャナルはそのまま言葉を続ける。 「と、なれば―――さくさく仕事してくださいね。お二方」 「……あたし、この頃仕事って言うかボランティアなんだけど……」 「泣くなミリィ。俺も同じ気持ちだぜ……」 二人はどうしようもないやるせなさに襲われていた。 『――久しぶりだな。ケイン』 「……なんだ。レイル警視殿か」 とある宇宙空域を飛行するソードブレイカーに、通信が入る。 キャナルがそれをつなぎ、見知った顔が出てきたわけである。 ケインは隠そうともせずに、不機嫌な顔を見せる。 実は、数ヶ月前にレイルは警部から警視へと昇進した。 理由は言わずもがな。 ナイトメアの解散の功績を評価して、である。 実際、彼はよく働いた。 ナイトメアの本拠地、ヘカトンケイル撃沈後、あちらこちらから湧き出てくるナイトメアの残党を、片っ端から逮捕。他、証拠の発見、押収、そして立件。 数々の賞与が彼に送られ、ついに警視へと昇進。 この彼の働きぶりには、実は、罪滅ぼしの意味もあったのだが、それを知る者は誰一人としていない。 『いやぁ、はっはっは。 やっかい事請負人(トラ・コン)なんて不良な家業ではないところで、俺は真面目に働いてるからな。 ちなみに出世祝いなら無期限で受け取るぞ。遠慮せずにお前もどうだ?』 「……用がないなら切るぞ」 『ちょっと待てっ!……ったく、相変わらず冗談の通じない奴だな……』 「冗談だったのか?」 『2割ほど』 「キャナル、通信を終わる」 『だから待てってっ! ――こんな奴が遺失宇宙船(ロスト・シップ)に乗ってるんだからな…… 英雄視している連中に報告してやりたいよ。まったく』 ヘカトンケイル崩壊後――つまり、ナイトメアの実質的な崩壊後、当然、宇宙軍(U・F)は正体不明の宇宙船、ソードブレイカー、いや、ヴォルフィードのことを問題にあげた。 突如現れ、突如ナイトメアを倒し、そのまま姿を消した。 わかっていることは、その船が宇宙軍(U・F)に比べて、あまりにも大きな力を持っていること。 そして、その船がおそらく世界を救ったのだということ。 現実主義な軍人が集まる宇宙軍(U・F)の中にでさえ、その船を『神の御使い』と呼ぶことを納得させた。第一級の箝口令がしかれた現在でさえ、その闘う姿を見た者はささやき続ける。 それは闇を打ち砕く最後の光 それは悪夢を終わらせる唯一の暁 それこそは未来へと導く神の船―― 余談だが、それを聞いた瞬間、レイルは大爆笑したものである。 真実は覆い隠されるからこそ神秘となり、神格化する。 ――まぁ、早い話が、世の中には知らない方がいいこともあるという例である。 ともあれ、宇宙軍(U・F)、星間警察(U・G)の上層部は、始め、躍起になってその存在を探した。 ある者は単純に興味から。 ある者は軍備拡大のヒントを得るため。 しかし――である。 その捜索は間もなく打ち切られた。 それは、自分たちが管理するには大きすぎる存在のような気がしたのだ。 確かに、その船を見つけだし、研究すれば軍事力は増大するであろう。 しかし、大きすぎる力は不幸を招く。 その結論を見いだせないほど、人類は未熟ではなかった。 そのまま抑えられるほど成熟もしてなかったが。 その結果現在、両組織は静観という名前で、硬直している。 組織内で意見が対立している事も要因としてあげられる。 見つけだし、軍事研究を求める一派と、静観し、軍拡への加速を止めようとする一派とで。 その他の理由では、正直、それどころじゃないと言うところがあった。 星間警察(U・G)内、宇宙軍(U・G)内の組織腐敗。 ナイトメアが崩れたことで、数々の職員の罪が明るみになり、内部粛正の動きはかつてないほど活発化していた。実はその調べはレイルの所まで及んでいたのだが、いつかそうなる事態を予測していたレイルは一切の証拠を残していなかった。 ヘカトンケイルへの違法捜査も、その事実を知っている者は誰一人として生き残っていない。 記録を載せた船も、全て撃沈されている。文字通り、真実は闇の中、である。 『ところで――仕事の話を持ってきたんだが、今何か他の仕事請け負ってるか?』 「けっ、ざまーみろ。つい先程受けたばっかりだ」 コントロール・パネルにひじを突きながら、悪態を付くケイン。 『そうか――まいったな。こいつは』 先程までの軽口の叩き合いとはうって変わって、真剣な面もちで腕組みをするレイル。 その変化に気付いたケインが怪訝な顔をする。 「何かあったのか?」 『ちょっと――な。 仕事を受ける気のない奴に詳しいことは話せないが、 悪夢をぶっ潰せるような、非常識かつ、はた迷惑な破壊力及び、冗談みたいな戦闘力を持つ船に乗っているお前が適任だったんだが――まぁ、いい。なんとかするさ』 「へぇぇぇ――どんな船ですって?」 ぴぴくぅっ! 突如ケインの隣に現れたキャナルの言葉に、モニターのレイルは凍りつく。 『い、いや……その……』 慌てまくるレイルに哀れな視線を送るケイン。 「レイル……おめーも懲りねぇな。本気で」 『いや……だからなぁ…… も、もちろん、時代に捕らわれず、自己の美を追求し、なおかつ、戦女神のような力を持たれた船――ですよ。はっはっは』 言って無意味にから笑い。額にはもちろん汗が光っていたりする。 「あら、じゃあわたしの聞き間違いでしたか」 『そ、そうですよ!そうですとも!』 「では巻き戻し―――再生スタート」 優雅な仕草で右手の人差し指をくるくると回し、横へ一閃。 どうやらこれが巻き戻しと再生のサインらしい。 『へ………?』 星間警察の警視は間抜けな声をあげて、口を開く。 やがて両船に響く再生音。 『悪夢をぶっ潰せるような、非常識かつ、はた迷惑な破壊力及び、冗談みたいな戦闘力を持つ船に――』 言うまでもなくレイルの声である。 沈黙が支配する室内。 キャナルは冷ややかな目でレイルを見つつ、右手でもう一度同じ動作。 『悪夢をぶっ潰せるような、非常識かつ、はた迷惑な破壊力及び、冗談みたいな戦闘力を持つ船に――』 再び沈黙。 ややあって、わざとらしい仕草でキャナルが口に手を当てる。 「あらあら。………うふふふ」 表情はまるっきし笑顔なのだが、まとわりつく空気が怒気をはらんでいる。はっきり言って怖い。 レイルはもちろん、ケインとミリィも無言の迫力に耐えかねて、汗を流す。 『悪夢をぶっ潰せるような、非常識かつ、はた迷惑な破壊力及び、冗談みたいな戦闘力を持つ船に――』 飽きもせずにもう一回。 さすがに、沈黙を保ち続けるというわけにはいかなかった。 これ以上繰り返されたら精神衛生上、とても、悪い。 『ええっと………はっ!いかんっ!緊急の出動要請だ。ではまた連絡する』 「サイレンこちらに聞こえませんけど」 モニターに映るレイルの右手が通信オフにするスイッチの前で凍りつく。 それに星間警察の警視ともなろう人物が、緊急連絡ならともかく、緊急出動などまず、ない。 またもや冷たい空気が流れ込み――レイルはぱっと笑顔を見せると、そのままぷつりと通信が切れる。 誤魔化す以外に方法が思いつかなかったらしい。 腐れ縁のレイルの姿に、呆れとも哀れみともつかない表情を浮かべてモニターに視線を送るケイン。 そこにはすでにレイルの姿はない。 「ケイン――撃沈しに行きましょう」 「頼むから真顔で言うなって……お前は……」 心底疲れ切った顔でシートに埋もれるケイン。 ふと、室内を見渡すと、一人人数が少ない。 「あれ……?ミリィはどうしました?」 「そーいえば……トイレかなんかじゃねーのか?」 「ふむ――」 親指と人差し指で顎を挟み、考え込む仕草。その間に船全体へ乗組員の位置のスキャン。 発見は一瞬だった。しかし、それを認めることが出来ない。 「まさか――そんな――」 キャナルの顔がみるみると青ざめていく。 おかしい。 あの場所には入れるはずがないのだ。悪い予感が沸き上がる。 知りたくないような気もしたが――事実を確認しなくては。 映像をその場へと切り替える。 頭の中にその映像が浮かび上がり、キャナルは硬直する。 「どうかしたのか?」 シートから身を乗り出して問うケイン。 その動作にも、マントはしわにならないよう避けている。 直後――― どぐあらごぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!! 爆音が衝撃緩和システムを搭載した艦内を揺らす。 「な、なんだっ!?どっかからの砲撃かっ!?」 「いいえ――もっと悪いです」 キャナルは絶望の口調で言葉を紡ぐ。 ゆっくりとケインの方へ振り返ると涙をだくだく流しながらマップの一点を指差した。 ――厨房。 「ふっ。やっぱり仕事の前祝いって言ったらミリィちゃん特製のミートパイよね♪」 コックピットの入り口から、煌めく逆光をバックにして、ミリィは開口一番にそう言った。 ノリは殆ど『宇宙人、UFOより現る』である。 「みりぃぃぃぃぃっ! なんってことしてくれるんですかっ!? あなたの料理という名を借りた、艦内攻撃は、宇宙軍(U・F)の砲撃一斉射撃より効くんですからねっ!」 「いや……そーいう言い方は宇宙軍(U・F)に失礼かなー、とか思うんだけど」 「事実ですっ!」 「そ、そお……」 片手にミートパイを掲げ、装甲服を着込んだままのミリィは曖昧に返事をした。 ところどころ装甲服にヒビがはいってたり、焦げ付いていたりするところが、死線をくぐり抜けた戦士の鎧のようである。 ミートパイさえなければそう言っても信じる人はいるかもしれない。 「だいたい、最近の経済状態を考えて、間違えて料理をしないように厨房の扉はロックしてあったはずなんですけど――どーやって入ったんですっ!?」 「ああ。そう言えば最近ロックされてたわね。でも今日はなかったわよ。扉ごと」 あっさりそう言うミリィに、キャナルの目が点になる。 「は………?」 扉ごとなかったとは一体……? さすがに思考の許容範囲を超えたのか、キャナルは沈黙する。 しかし答えは意外にも直後に出てきた。 「あ。わりー。俺が斬った」 ずがしゃぁぁぁぁっ!! キャナルはその一言に盛大にずっこける。 効果音をつける余裕はあったようだが、明らかに狼狽した表情で、 「き……斬った………? なんでまたそんな………?」 「ここんとこ仮想ターゲットのデータ作るエネルギー代も、もったいないとか言って、なにも斬らなかったもんだから……つい――な」 「つ、ついって……ケイン…… やばいわよ……さすがにそれは………」 さすがにミリィも笑顔のまま汗を光らせる。 キャナルもなんとかおぼつかない足取りながらも体勢を立ち直し、びしぃぃっとミリィ、ケインを交互に指差しながら、 「家に巣食うシロアリですかっ!?あなた達はっ!! 罰として酸素供給五時間ストップ!」 ソードブレイカー内の質量を考えると、五時間なら窒息死することはないが、間違いなく息苦しくなる。 「ちょっ、ちょっとそれはっ……!」 「問答無用ですっ!」 「勘弁してくれぇぇぇぇっ!」 とりあえず―――ソードブレイカー内に完全な平和はあり得ないらしい。 惑星リヴァイア。 そこは水に覆われた星だった。 惑星の表面積の九割が海面で、地表に人工建造物を加えてやっと一割。 意外に知られていないことだが、陸からあまりに離れた場所――わかりやすく言えば海のど真ん中にはあまり生物は豊富でない。もちろん皆無ではないのだが、魚は好んで陸の側で生息する。 水が多いことと、人類が主に生活する陸が少ないため、この星では海の生命体が豊富である。 そのような特性から、リゾート地として発展した星であった。 恒星との距離も恵まれ、人工的な処置も殆ど必要としなかったことも幸いし、星は発展した。 この星にあちこちに立てられたリゾートホテル、マンションはいつも客足の絶えることはない。 季節もちょうど夏。 夏と言っても、標準時刻で公転の周期は四分の三ほどなので、サイクルが早い分、夏が終わるのも早い。人々は短い夏を楽しもうと、あちらこちらではしゃいでいた。 そんな中、惑星リヴァイアの衛星、デフィからの定期便のシャトルが、リゾート地の一角に降り立っていた。 「あ……あのガキ……マジで五時間酸素止め……っやがった……」 「仕事する前に死ぬかと………思ったわ……」 周りの活気溢れた姿から明らかに目立った二人組は、疲れ果てた様子で――実は酸欠ぎみなのだが――時間を潰していた。 仕事の話まではまだ時間があるので、早く行っても仕方がないのと、なにより休憩を取りたかったため、倒れるようにソファーへと座り込む。 程良い室温に保たれた空調機も、彼ら二人には快適という二文字を届けることは出来ないらしい。 ロビーのソファーでぐったりすることしばし。 なんとか気持ちも落ち着き、周りの様子が視界に入り始める。 ロビーからは、海が一望できていた。 充分な大きさの窓ガラスの向こうには、一面に広がる海。 観光客だろう、混雑で不快を与えない程度にばらけた人々があちこちでそれぞれの海を、夏を満喫している。 「……ね、ケイン」 「磯釣りはまた今度な」 「………………………」 先手を打たれ、沈黙するミリィ。 しばし、ぼーっと景色を眺め、一息つくと、 「おし。そろそろ行くか。 地理に詳しくねーんだから早めに行かねーとな」 「ええー?もう?」 明らかに不満の声をあげるミリィ。 「じゃあ、好きなだけ休憩してろ。置いてくぞ」 言って、ばさりとマントを翻して出口へと向かうケイン。 真夏の気候だというのにやはり、はずす気はないらしい。 「ちょっと待ってよっ!ケイン!」 慌ててぱたぱたとミリィはケインの後を追った。 夏の太陽はまだ沈みそうにない。 「……この路地、通るの3回目かなー、なんて思ったりするんだけど」 「う、うるせーぞっ!ミリィっ!黙って歩けっ!」 ケインは汗をだくだく吹き出しながら、暑さを紛らわすかのように大声を張り上げた。 無論、よけい暑くなるだけなのだが。 あの後――待ち合わせの場所まで距離がたいしてないことと、資金が乏しいのとで、徒歩で目的地へ向かうことにしたのである。 始めのうちは、物珍しさも手伝って、海の景色を眺めながら気分良く歩いていたのだが――あっさり二人は道に迷っていた。 辺りはいつの間にか海は見えなくなっている。 そのくせ海付近特有のじっとりとした空気がまとわりつく。これで不機嫌にならないはずはない。 ケインの右手に収められたマップの出力装置は限界を超えた圧力で握られ、軋んだ音を立てた。 「だいたい入り組んでるこの道がわりーんだ。 片っ端からたたっ斬りゃ少しは視界がひらけるかも知れねーけどな」 そう言って、鬱陶しげにマントを払いのける。 前にも述べたがこの場所の季節は真夏。 真っ黒なマントの太陽光の吸収の良さと言ったら言わずとも知れている。 それでもはずさないとは、かなりの根性の持ち主なのか、はたまたは単に意地なのか。 理由はともかく――暑いことだけは確かだった。 「またそー言う無茶なことを……」 マントはさすがにつけていないが、同じく暑さと疲れにやられ、疲れた口調でミリィは言う。 「冗談だよ。しかし、マジで道に迷っちまったなー」 「だからケチんないでタクシーで行こうって言ったのよ」 「そんな余裕があったら始めっから乗ってるぜ。 ともあれ、そこらに人でも通りゃとっ捕まえて道を聞くんだが……」 「とっ捕まえてって……乱暴なことしないでしょーね……」 「相手の出方による」 疲れながらも声だけははっきりしているところがかなりコワイ。 「逃走中の指名手配犯じゃないのよ……?あたしたちは……」 「そりゃそうだけどよ――っと?」 疲れ切った足取りで前を行っていたケインの足がぴたりと止まる。 気配を探れば、こちらに近付く気配が3つ。 ただの通行人――でもないらしい。 もしそうなら、緊張感と敵意を振りまきながらこちらに走ってくる必要はない。 「ミリィ、気をつけろよ。どーやらやっかい事みてーだ」 「また……?」 「またってお前……――まあ、いい。来るぞ」 そう言って、ケインは腰のサイ・ブレードの発信器に手をかけた。 「まちやがれっ!このアマっ!」 「よくも他の奴らをっ!」 月並みなセリフを吐いて、追跡者らしい二人は前を行く一人の女性を追いかけていた。 「……自業……自得でしょーが……!」 片手で腹部を押さえながら、彼女はつぶやいた。 足取りは重い。 追跡中に足でも撃たれたのか、先程まで感じ取っていたスピードで逃げることは出来なくなっているらしい。 それでも気丈に側の壁に背を寄りかかりながら、男達と対峙する。 「へっ!追いつめたぜ。 さあ、おとなしく来てもらおうか」 悪役ばりばりのセリフを口にしながら、男達はにじり寄る。 彼女はぎりっと奥歯を噛み締めながら睨み付ける。 目の前の男達――ではなく、隠れていたケインに向かって。 「そこのあなた。 助けてくれると……助かるんだけど」 「なにっ!?」 慌てて後ろに振り向く男二人。 その視線の先にはサイ・ブレードを抜きはなったケインが立っていた。 一瞬硬直する男達。 ――刹那―― どごっ! 鈍い音を立てて、男の一人は倒れ込む。 女性が後ろから、男の一人の後頭部に、一抱えほどある石を片手で投げつけたのである。 常識はずれの力である。 「――いやな。隙見て斬りかかろうと思ってたんだが……助け必要ねーんじゃねーか?もしかして」 ぽりぽりと頬の辺りをかきながら、言うケイン。 「そーでもないわ……よ……」 そう言って女は力尽きたかのように、背を壁へと預けながら崩れ落ちる。 一人残った男は倒れた女とケインを交互に見比べて――やがて、ケインの方へと向き直る。 どうやら倒れた女は後回し。今は目の前にいるケインの方が危険、と判断したらしい。 「何者だっ!?てめえっ!?」 「道に迷ってただけだぜ。言っておくが」 とても信じちゃくれないだろうとは思いつつ、ケインは肩をすくめる。 「迷子だとっ!?」 「やかましぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!迷子って言うなっ! 斬られてーかっ!?てめーはっ!」 いつにもまして危険なセリフが多いケイン。 どうやらキャナルの仮想ターゲットでの特訓禁止令は、ケインにかなりストレスを貯めたらしい。 「けっ!やれるもんならやってみろっ!女顔っ!」 そう言って男は懐からナイフを取り出し、身構える。 じわりっ…… 右足を滑らせるように前へと出して、間合いを僅かに詰めた瞬間、くたり、と倒れ込む。 「ふっ。残念だったわね。あたしもいたのよ」 男の死角だった場所から姿を表したミリィが不敵に笑う。 右手にはいつもの麻痺銃(パラライズ・ガン)。 麻痺銃(パラライズ・ガン)をホルダーへと戻し、何処か格好を付ける仕草で前髪を掻き上げる。 「安心しなさい。今のはただの麻痺銃(パラライズ・ガン)よ。 半日も立てば元通りに――」 「っのやろうっ!誰の顔が女顔だっ!?」 「のわひぃぃぃぃぃっ!ケインっ!落ち着いてっ! 昏倒している人間にサイ・ブレードはまづいわよっ!」 ミリィはキメゼリフの途中で慌ててケインの背中にしがみつく。 太陽は無責任なことに暑かった。 「なるほど……そーいうわけですか……」 キャナルは溜息をついて、片手におさまった読みかけの本を閉じた。 この映像がどういう意味を表しているのかというと、それはケインにもわからない。 ただわかるのは、キャナルがこういう人間くさい仕草が無性に好きだという事のみ。 「まーな。 麻酔銃(パラライズ・ガン)で撃たれただけで、特に大きな外傷もないし………正直すぐに目ぇ醒ますと思ったんだがよ。 これが三日間こんこんと寝てやがる。 ま、本当なら医者にでも見せりゃあいいんだろーが、なにか訳ありっぽかったしなー」 そういって操縦席(パイロット・シート)に後ろ頭で手を組みながら背をもたらせるケイン。 あの後、ケイン達は女性――セピア=スカイをホテルへと運んだ。 それで簡単な置き手紙を置いて、仕事に入っていたわけだが、実は仕事が終わっても目が覚めなかったりする。 彼女の名前がわかったのは身につけていた衣服のポケットに、ネームプレートが入っていたからである。 「それで、このソードブレイカーに運び込んできた、と」 「おう。そーだ」 何故か胸を張るケイン。 その一言を効いた直後、キャナルは手近なデスクをばんっと叩くと、ケインを睨み付ける。 「『そーだ』じゃありませんっ! いくらレイル警部から星間警察(U・G)の内情を密告して(チクって)もらってるとはいえっ! まだまだソードブレイカーの行方を追ってる連中は居るんですよっ! さすがにおおっぴらに探しているわけではないみたいですが―― だからと言って!そんな素性のわからない人間をぽこぽこ連れてきてどーするんですかっ!?」 「だからってなぁ……追われて怪我している人間放っておくわけにもいかねーじゃねーか」 「ま、まあそれはそーですが…… 人の心配している場合じゃないと思うですけどねー。わたしは」 「うーん……」 ぽりぽりと額の辺りをかきながら、考え込むケイン。 その様子を見て溜息をつくキャナル。 「ま、今更何を言っても無駄でしょうけどね。 それにこの問題はどちらの意見が必ず正しい、というわけでもないですし…… なんにしてもお付き合いしますよ」 「サンキュー。 ――しかし、改まって『お付き合いします』なんて言うほどおおごとか? 行き倒れの人間介抱しているだけじゃねーか」 その言葉に眉をひそめるキャナル。 「ケイン……この頃ニュース見てます?」 「いいや。ちっとも」 ふるふるといやに可愛らしい動作で首を振るケイン。 「……産業スパイで指名手配されてますよ。彼女」 「っにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?本当かっ!?」 「嘘ついてどーするんですか。ほら」 そう言ってケインの正面にディスプレイが浮かび上がる。 画面では、たしかにキャナルの言うとおりの報道が流れている。 ご丁寧に右下にはセピアの顔写真が写っていたりする。 「……うーん……スパイねぇ……」 言って、腕組みするケイン。 「そう言う感じじゃなかったんですか?」 「ああ。もしセピアがスパイなら、追いかけてくるのは当然警官か警備員だろ? だが、追いかけてきたのはそこらに転がっているようなごろつき二人だ。 連中との会話に、『よくも他の奴らを』って、言っていたしなー…… で、その後のセピアの言葉だが――『自業自得』って言ったんだよな。 もしスパイなら間違ってもそんな言葉でてこねーと思うんだが」 「なるほど。確かに変ですね。 で、ミリィはどーしてんです?」 「ああ。ミリィなら予備の部屋でセピアの介抱を――」 言葉の途中で、ケインは振り返る。 いつの間にか操縦室の入り口には、あからさまに不機嫌な顔のセピアと、困った顔のミリィが立っていた。 「――しているはずだったんだけどな」 ひょいと肩をすくめてみせるケイン。 「お体はもう良いんですか?セピアさん」 「………おかげさまで。 あまり迷惑かけたくないんで今直ぐにでもこの船を降りたいんですが」 キャナルの友好的な態度をあっさり無視し、セピアはいきなり自分の要求を切り出した。 女性としては少々長身であろうか。すらりとした体型に、長い黒髪が背中の中程までかかっている。 歳の頃は二十歳前後。まだ幼さの抜けきっていない顔には、はっきりと焦りの色が含まれていた。 「まあまあ。そう言わずに。 お茶でもどう?」 困った顔で紅茶ポッドをパールに見せるミリィ。 「気持ちだけもらっておくわ。 ゆっくりできないのよ。あたしは」 手でそれを制すると、ケインの方へと向き直る。 「訳あり――だな」 「ええ。訳ありなの。 だから降ろしてもらえないかしら?ミスター」 心の内を見透かすようなケインの視線をあっさり受け流すと、セピアは辺りを見渡した。 「ケイン=ブルーリバーだ。 その紅茶を取り上げられているのがミリィ。俺の相棒だ。 で、説教をしているのがキャナル。 ……この船の制御コンピューターだけどな」 「そ、そお……」 どことなく間抜けな紹介の仕方をされて、思わず力の抜けるセピア。 ひとしきりミリィへの説教を終えたキャナルがパールへと向き直る。 「はじめまして。セピア=スカイさん。 それで、『降ろしてもらいたい』と言うあなたの要求ですけど――却下します♪」 「……なんでよ……?」 にこやかに断られ、思わず憮然とするセピア。 「訳ありの人間放り出すことが出来る人間はこの船にいないですから。 頑張って説得するか、事情説明するか―― どちらかに成功した場合にはじめて、どっかの衛星に寄りますので」 「そーいうこったな」 頷くケイン。 「ね?とりあえずお茶でも飲んで落ち着いて……」 「だからミリィっ!お茶が飲みたいならこの部屋から出ていってくださいっ!」 「この部屋で飲むのがおいしーのよ♪」 「そーいう迷惑な錯覚を持たないでくださいっ!」 「錯覚じゃあないわよ。 ここから瞬く星々を見渡しながら飲むのがまた格別なのよねー」 「そーいう感覚わたしにはわかりませんけど――って、瞬く星々っ!?」 言われて慌てて外へ目をやると、一隻の船がこちらへと向かっている。 大気のない宇宙で星が瞬くと言うことは、何かがその光を遮ったというわけである。 確認してみると、確かにレーダーに一機の艦影が映っている。 「うーん……紅茶にすっかり気を取られて気付きませんでしたねー……」 「本当にあなたコンピュータなの……?」 あまりに人間くさい発言に半ば呆れ顔で言うセピア。 確認するまでもないことだが、普通コンピュータが紅茶のせいでレーダーのチェックを怠るなどということはまずあり得ない。 「悲しいことに紛れもない事実よ」 「長年付き合ってる俺も実は騙されてんじゃねーかと思う時が何度もあるな」 こくこくと、調子を合わせるように頷くミリィにケイン。 「ふっ。そこらの船とは一味も二味も違いますからね。わたしは」 ふわさり、と前髪を掻き上げて、腕組みをし、得意げに言うキャナル。 「確かに他の船とは違うわな。色々な意味で」 「……いや、もうそのことはいいから……船が一隻近付いているんでしょ?」 ジト目でキャナルを見ながら言うケインに、困ったように呟くセピア。 「ええ。適当に挨拶かわしときますよ。 ……どうかしたんですか?セピアさん」 彼女の瞳には困惑と疑惑の色が浮かんでいる。 しばし考え込んで―― 「その船の映像、出せる? 出来ればその船の名前も」 「訳ありって言ってたことに関係あるのか?」 急速に真剣な顔へと戻っていくセピアに声を掛けるケイン。 「それを知りたいのよ」 それだけ言って言葉をきる。 しばしセピアを見つめるキャナル。 その瞳から何かを感じ取ったか、こくりと頷いた。 「映像、映します。 船の名前は――」 拡大し、人間にも視認できるサイズにし、ディスプレイに映写。 その姿は、ごく平凡な船だった。 最新鋭の装備でもなく、大昔の装備でもない。 何の変哲もない船である。外見上は。 しかし、 「――ミアヴァルド。 船の名前はミアヴァルド。……違う?」 「その通りです……… ………………」 視線がセピアに集中する。 周りはキャナルの表情の変化に気付かない。 視線を向けられた本人は口をつぐむ。 セピアはどうやら言うべきか言わざるべきか、もしくはどう言ったものか思案しているらしい。 しかし、考えがまとまったのか、決心したような表情になり、口を開きかけた瞬間。 『こちら、星間警察(U・G)のガルズ=ゴート。 貴艦、ソードブレイカーと見受ける。 至急停船されたし』 通信が突如入り込む。 その通信に慌てたのは船員全員。 こちらは指名手配犯を船に乗せているのである。慌てないはずはない。 しかし、混乱したのはセピアただ一人だった。 「ソードブレイカー? ちょっと待って。 この船は……ソードブレイカーって言うのっ!?」 「え……?あ、ええ。そうよ」 その剣幕に押され気味に、ミリィは答える。 「……そう…… ――わかったわ。事情を話します。 だけどその前に――逃げて」 「っなっ!? 逃げろって――」 「いいから早く!! あたしは――こんな所で止まっている場合じゃないのよ。 逃げてっ!」 驚きの声をあげるケインに強い口調で言うセピア。 今度こそ室内は沈黙する。 「事情は全て話すわ……だから――!」 「全くわからねーが、わかったぜ。 キャナル!離脱だ!」 ケインは操縦席(パイロット・シート)に戻ると、命令を下す。 「け、けど――!」 「いいから全速前進!通信は聞こえないフリしとけっ!」 「――っわかりましたっ!」 答えると、ソードブレイカーは一気に加速する。 胸の内に広がりはじめた闇は、ますます大きくなっていった。 「目標、通信に応答せず! 離脱するもようです!」 通信士の報告に、ガルズ=ゴートは舌打ちした。 エネルギー反応も普通のパトロール艇のものと同じ。速度も同じ。通信も通常と変わらぬ言葉で伝えた。 しかし、目的の船は止まるどころか、加速している。 ――なぜ、気付いた――? ガルズ=ゴートは気付かぬ内に深い笑みを浮かべていた。 「全速で追え!聞こえたな、全速で、だ」 「それはつまり――」 「遠慮はいらん」 振り返る通信士にガルズは冷淡に答えた。 「了解しましたっ!」 頷くと、通信士は各機関への指示をはじめる。 その光景を見下ろしながら、ガルズは笑みを深めた。 「さて――お手並み拝見といこう」 ガルズのかけた漆黒のサングラスが、パネルの薄暗い光を映し出す。 心地よい加速の圧力(プレッシャー)を感じながら、ガルズは目の前のソードブレイカーを――いや、ヴォルフィードを見つめていた。 「で!どうするんですかっ!? いきなり声かけられてダッシュで逃げ出して! めちゃくちゃ『こちらは何かやましいことがありますよぉぉぉぉっ!』って、言ってるようなもんだと思うんですけど!」 「気にすんな!今に始まった事じゃねーっ!」 「普通気にするわよ……ふつーは」 思わずジト目になるミリィ。 「やかましいぞっ!ミリィっ! キャナル、さっきのパトロール艇との距離はどれだけ開いたっ!?」 「逆ですっ!距離が縮まっていますっ!」 「なにぃぃぃぃっ!?手ぇ抜いてるんじゃねーだろーなっ!キャナルっ!」 「馬鹿言わないでくださいっ! この状況で追いつかれて捕まったら本気でどーしよーも無いじゃないですか!」 「ふつーの状態でとばしてるんでしょっ!?だったら全力で――」 さすがに今回は砲撃手の出番はないため、ミリィはシートの上で後ろを向きながら正座してキャナルの方へと声を掛ける。 つまり、遺失宇宙船(ロスト・シップ)の技術を使用した上での移動。 「そうはいいますけどね……!目があるんですよ!?」 通常には意味不明の会話だが、遺失宇宙船(ロスト・シップ)だという事がばれる、と言う意味である。 もちろんその目というのは、転がり込んだ指名手配犯、セピア。 それに後ろについて来るパトロール艇の乗組員。 「ちっ!たかが星間警察(U・G)ごときの船が振り切れねーだとっ!? あのやろう、職権濫用で私腹肥やして改造しまくってんじゃねーかっ!?」 「いや、あの……たかが星間警察(U・G)ごときって……」 酷い言われようにさすがに汗を流すミリィ。 しかしそれを無視してキャナルが強く頷く。 「ありえますね! 映像出てきたのはこのたいして光もないところにサングラスかけた怪しい真っ黒おやぢでしたから!」 「おっしゃっ!間違いねーなっ!」 完璧な偏見なのだが、二人は少しも気にしていないらしい。 しかし、その会話を気にする人間が居た。 「逃げる気あるのっ!?あなた達はっ!?」 こめかみの辺りを目に見えるほどひくひくさせながら、セピアは激昂した。 無理もない話である。 やっとの思いで逃げることに了承してくれたと思えば、あっさり追いつかれかかっている。 おまけに会話は大声なのだが、全く緊張感がない。 セピアにとってはからかわれてるも同じである。 「そういわれますけど……どうします?ケイン」 「職権濫用者に手加減無用っ!ぶっちぎれっ!」 「だから職権濫用って決まった訳じゃ……」 「ふっ。まだまだ甘いですね。ミリィ。 世の中には確実に事態を把握しなくても、遠慮なく相手をぶち倒してもいい人間も居るんですよ。 似合ってもいないグラサンかけてるおやぢはその種類の人間の一人です!」 「きっぱり言うなぁぁぁぁぁっ! キャナル、あなたなにか嫌な過去でもあるの……?」 「レディーに過去を聞くのは野暮ってもんですよ。ミリィ。 ――行きますっ!」 ツッコミを入れる間も与えずに、ソードブレイカーは今度こそ全速で加速する。 セピアの不安の色はますます濃くなっていた。 「うおっしゃあっ!今度こそっ! ――グラサンとの距離はっ!?」 「グラサンも加速してきました!距離、広がりません!」 なぜか追撃してくるパトロール艇をグラサンと呼ぶことに決まってしまったソードブレイカー内。 キャナルの信じられない発言に、一同は動揺した。 「ちょっと!キャナル! 何処かまだ故障が治りきってないとかじゃないのっ!?」 「そりゃあ、久しぶりの全速ですから依然と同じと言うわけではありませんが――それでも異常ですよ!この速さは! やはりあの船は――」 「遺失宇宙船(ロスト・シップ)よ。 名前でわかると思ったけど。ヴォルフィードさん?」 溜息をつきながら、いうセピア。 「――そういうことですか!」 「……どーいうことだよ……?」 一人納得するキャナルに、突っ込むケイン。 「わたしも全てわかった訳じゃあありませんけど――気をつけて下さいね。 半年前闘った船達と――いや、もうセピアさんはどうやら事情を多少は知っているようですし、直接話しても構いませんか。 最悪の場合、ナイトメアのあの船達と同じぐらいの力を持っていますよ。あの船は」 「ナイトメアって……ちょっとまさかっ!」 「そのまさか、です」 「もう全部終わったんじゃなかったのかっ!?」 顔色を変えるミリィにケイン。 ナイトメアのあの船達――つまりそれは――毒牙爪(ネザード)、風具風弓(ガルヴェイラ)烈光の剣(ゴルンノヴァ)、瞬撃槍(ラグド・メゼギス)、破神槌(ボーディガー)、そして生体殲滅艦『デュグラディグドウ』。 かつて、遠い昔、伝説に登場する、魔王と、その魔王の五つの武器の名を持つ船―― 世界に滅びを撒いたもの。世界を闇に閉ざしたもの。 しかし、その船は半年ほど前、全てケイン達が倒している。 何かの間違いで残っていたとは考えられにくい。 「ですから!わたしも事情が全て解った訳じゃないんですってば! 詳しい話を聞きたいところですが……こんなところでゆっくりお話って訳にもいかないでしょう!」 「だから逃げてって言ったのよ!」 「あんたがとっとと事情はなさねーからこーなったんだろーがっ!」 「あたしはこの船がソードブレイカーだって知らなかったの! ふつーの通りがかりで助けてくれた人達に、『実は遺失宇宙船(ロスト・シップ)がらみで、おおごとになってるんです。助けて下さい』なんて言えると思うっ!? 頭がおかしいと思われるのがオチよっ!」 結局ふつーの通りがかりじゃなかったわけだが、まさかいきなり都合良く出てくるとは思わない。 彼女の判断は当然である。 遺失宇宙船(ロスト・シップ)は世間一般では未だに噂上の存在なのだ。 『町のはずれにいた若い女性の幽霊に呪いをかけられた。助けてくれ』――と同じノリである。 相手が本気にしてくれるはずもない。 それに遺失宇宙船(ロスト・シップ)の場合、やっかいなことに信じてくれてもどうしようもない出来ないことが殆どである。 「だからってなぁ――」 「敵艦、エネルギー増大! 回避するか応戦するか、決断をお願いします!」 ケインの言葉を遮ってキャナルの報告が部屋を支配する。 「攻撃っ!?星間警察(U・G)なんでしょっ!?」 「遺失宇宙船(ロスト・シップ)に乗り込んでる奴らがまともな警官なわけねーだろっ!」 「つまり、同じ遺失宇宙船(ロスト・シップ)に乗っているあなた達もまともではない、と?」 冷ややかにツッコミを入れるセピア。なんだかんだ言って実は余裕があるのかも知れない。単に図太い性格なのかも知れないが。 「そーいう質問は後だ! エンジンカット!サイ・バリア展開!」 「了解!」 ずどごうぅぅぅぅんっ! 声と同時に、船体が大きく震える。 どうやら衝撃緩和システムの許容範囲を超えた攻撃である。 バリアを張らなければどうなっていたことか。 「冗談じゃねぇっ! こっちも反撃するぞっ! 合図と同時にバリア解除!その後蛇行しつつ反転! 砲撃はミリィ!まずは通常兵器で応戦だっ!頼んだぜっ!」 「オーケイっ!」 ウィンク一つし、砲撃パネルの上へ手をのせるミリィ。 「さあて、久しぶりに――暴れるぜぇっ!」 ケインは不敵に笑って、敵艦を睨み付けた。 「敵艦、反転しました!」 「砲撃開始!3番から8番の砲門の使用を許可する! 但し撃沈はするなよっ!」 「了解っ!」 ガルズの指示に、答える通信士。 艦内は慌ただしかった。 いくら自分の手を回した者達しかこの船に乗っていないとは言え、対する船の情報は与えていない。 ガルズ以外は、この船と同等以上に渡り合える船が居るなどと言うことは知るはずもないし、想像すらしたことない。 だが――この船でも追いつけないとは。 さすがに離されることはないようだが、それでもうろたえる部下を忌々しげな目で見ながら、隣で無言で佇む青年に声を掛ける。 「どうした?不満そうだな?」 「……多いに不満ですね」 目を閉じ、腕を組み、微動だにせず、いらだちを押し殺した声で青年は言った。 歳の頃は二十歳前後。 金の短髪。青と白の服が目に付く青年である。 周りの者が着ている星間警察(U・G)の制服ではない。 かつて大昔に登場する宮廷の騎士の礼服とも、軍服の礼服ともつかない、変わった服である。 しかし、似合うはずもないその場の雰囲気に、しっかりと溶け込んでいる。 「……ふん。だからといって何もできないだろう?」 冷笑を浮かべながら、ガルズは言うと、直後、通信士の報告が入る。 「敵艦への砲撃、全弾回避されましたっ! 敵艦加速っ!こちらへ来ますっ!」 「なんだとっ!?」 ずがうんっ!!! 言葉と同時に衝撃が船を襲う。 「左舷後方部被弾っ!損害軽微っ! 戦闘への支障はありませんがこのまま続くと――!」 片隅に光る赤い警告ランプに室内に同様が走る。 「貴様まさかっ!?」 「……単に操縦者と砲撃手との腕の差です。 勝手に誤解しないで頂きたい」 掴みかかるガルズに冷静に答える青年。 「くっ!砲撃手に伝えろっ! 殺されたくないなら当てろとなっ!」 「通常兵器すら僅かしか触ったことのない警官じゃ話になりませんよ。 相手は超一流のプロですよ? 自分の力を過信しすぎなんですよ。あなたは」 「黙れっ!」 「ああ、そうですよね。あなたの力じゃあありませんでしたっけ」 「黙れと言っているっ!」 懐から銃を抜き放つガルズ。 銃口はぴたりと青年の額にポイントされている。引き金を引けば、まずはずれることはない。 「……何の真似ですか?それで僕が言うことを聞くとでも?」 しかし、青年は冷たい目を返すのみ。 「貴様――」 「ガルズ様っ!指示をっ! このままでは――っ!」 「ええいっ!うるさいっ! 操縦データをこちらによこせっ!」 「は、はいっ!」 慌てて通信士は伝達と作業をはじめる。 その部下の様子には構わずにガルズは一人呟いた。 「調子に乗っていられるのも今の内だ……」 ガルズの瞳には徐々に、だが確実に、狂気の光が宿りはじめていた。 「ちょっと待てキャナルっ!弱いぞっ!あいつっ!」 「どこがナイトメアの船と一緒よっ!?驚かせるのも時と場合を考えてよねっ!」 言いながらも指を休めずに言うケインにミリィ。 相手の船と同様、こちらも動揺していた。 但しこちらは拍子抜けで、だが。 「知りませんよっ! こっちだって驚いてるんですから! 性能はかなりのはずなんですけどねー………よっぽど操縦者に恵まれてないんでしょう」 「所詮、星間警察(U・G)ってかっ!?」 言いながら、コントロールレバーを強引に倒すケイン。 船の先程まで居た位置に光が過ぎ行く。 「船のスピード、旋回能力、砲撃威力。 先程までのデータで検証すれば、信じがたいことに殆どわたしと同レベルです。 更に信じがたい事は、その船を難なく圧倒してるって事ですけど」 「ふっ!つまりあたしとケインの腕が相手より勝ってるって事ねっ!」 「そう言う言い方されると、わたしが役立たずみたいに聞こえるんですけど……」 思わず突っ込むキャナル。 「気にしちゃだめよ。不幸になるだけだから」 「ミリィ……あなたを不幸にしましょうか?」 「じょっ、冗談だってばっ! そんな冷たい目で見ないで(はあと)キャナルってば(はあと)」 ミリィとキャナルもじゃれ会う程度の余裕が出てきている。 しかし、ますます不安の表情になっているのはセピアだった。 彼女は知っている。 あの船が本来の力で戦闘を始めたときの強さを。 確かにこの船は強い。 乗組員も能力に置いては文句を付ける点はない。 だが――しかし。 それでも――安心はできないのだ。 あの船の本来の力を知る者として。 「今の内にエンジンにダメージ負わせて離脱しましょう。 中央のそびえ立つ三つの大きな砲門の斜め下に、白い部分が見えるわね。 あそこへ砲撃を!」 「そんなことをしなくても撃沈できるんじゃあ……?」 完全に相手を嘗めきってるミリィは小首を傾げる。 「星間警察(U・G)を撃沈するんですか……?」 「え?……あ!いや!そーいえば…… でも偽物だとか言ってなかったっけ?」 「言ってねーが……」 まともな星間警察(U・G)ではない、とは言ったのだが、偽物とは言っていない。 まともであろうが、まともでなかろうが、悪事がばれてなければ、相手は権力を持った警官であることは変わりない。 「えええええっ!?だから砲撃してたんじゃないのっ!?」 「決まってんだろーがっ! 突然現れただけならまだしも、星間警察(U・G)のくせに遺失宇宙船(ロストシップ)を追いかけ回すだなんて芸かましてくれたあげく、いきなり砲撃なんつー嘗めた真似してくれたから仕返ししているだけだっ!」 操縦しながら胸を張るという器用な芸をするケイン。 「えばるんじゃないっ!どーすんのよっ! 下手すりゃ犯罪者よ!はんざいしゃ!」 「気にすんなっ!ンなことしょっちゅうだっ!」 「……あたし……やっぱし就職先間違ったかも……」 今更ながらに呟くミリィ。 「いつまでもふざけてないで!あの白いのを――!」 「サイ・バリア展開っ!」 セピアの怒りの声を遮って、ケインが叫ぶ。 がきゅぅぅぅぅぅっ!! 声と同時にバリアが展開され、耳障りな音を立てながら、再び同じ衝撃が――いや、先程よりも数倍強い衝撃が船を襲う。 エネルギー光が過ぎ行くのを確認してから、ケインは指示を出す。 「バリアカット! ミリィっ!サイ・ブラスターで砲撃! キャナル!今のはっ!?」 「……敵艦からの……砲撃です……!」 キャナルの顔に珍しく驚きの表情が浮かぶ。 「ンなこたぁわかってるっ! 今の砲撃の威力はっ!?」 「……先程の3、23倍です……! こちらの火力を上回っています。何で突然こんな――!」 「落ち着けキャナル! 感想は後回しだっ! セピア!奴の本来の能力は!?」 「単なる火力馬鹿――と言いたいところだけど……本調子ならまだまだ上がるわよ。 火力。回避能力。バリアの出力……だから早く逃げろって……」 片手で額から顔を覆いながら、半ば絶望すら滲ませ彼女は言う。 「おしっ!それならなんとかなるっ!」 「なんとかって……なんとかなるんですかっ!?」 セピアの言葉と対照的に言うケインにキャナルは思わず聞き返した。 「たりめーだ。 今の話を聞く限り、あっちじゃなにかトラブルが起こってるんだろ? やつはさっきまでの砲撃で、ある程度ダメージを負っている。 本調子なら食らうはずのない砲撃をだ。 つーことは、全力を出せない理由があるんだろーよっ!」 そう言って再びパネルを操るケイン。 ソードブレイカーは殆どでたらめな動きで全弾を回避する。 「ってぇことはっ! 今の内にエンジンぶっ壊してトンズラだっ! とりあえずセピアの話を聞いてから後のことを考える!」 不敵に笑いながら、回避を続けるケインの横顔に、キャナルは苦笑した。 ――本当に……成長しましたね。ケイン。 かつて彼の祖母の陰に隠れて怯えた表情を浮かべていた、在りし日の姿はつい最近のことのように思えるのに。 間違いなく時は、流れていたのだ。 頼もしく思えるマスターを見て、キャナルは顔を引き締める。 「了解しました! 一気に撃破しましょう!」 「よっしゃいくぜいっ!」 ケインは勢い良くレバーを倒した。 輝く星が斜めの線を描く。 そして、突如その線が歪んだ。 がしゅぅぅぅっ!! 「右舷前方被弾っ!」 「気にすんなっ!かすり傷だっ! ミリィ砲撃!!」 「了解っ!」 目標は正面三つの砲門の下、白い部分。 ソードブレイカーが回避行動を続けているのに構わず5連射。 正確に光は突き進み――相手に突如張られたバリアに吹き散らされる。 「バリアの出力も上がって来たってことねっ! ――それならっ!」 そういって再びパネルを操作し――再び5連射。 2発目はリープ・レールガンを紛れ込ませている。 これならバリアごと消失し、残りのサイ・ブラスターで攻撃可能! しかし、相手はバリアを解くと、回避してそれをかわす。 「そんなっ!?気付かれるなんてっ!」 「調子が上がってきたか、操縦者が変わったか―― なんにせよ、ちったぁ面白くなりそうだぜ!」 ミリィの驚愕をよそに、ケインは不敵に笑みを浮かべ、再び弾を回避する。 敵の銃弾はますます数を増やしつつあった。 「ちぃっ!いつまで遊んでいるっ!?」 「………だったら自分でやられたらいかがです」 ソードブレイカーに対する遺失宇宙船(ロストシップ)、『ミアヴァルド』の艦内はまさに混乱の極みだった。 自分たちが無敵と信じて疑わなかった船が圧倒され、その後にコントロールする者を変えただけで見る間に互角の戦いを続けている。 知る以上の力を持つ敵に、知る以上の力を見せる自船。 コントロールを切り替えたとたんに戦況が向上したのだから、操縦者、砲撃手は立場がない。 「……あまり調子に乗るなよ。アレス。 後悔するのは貴様自身だぞ」 冷淡に言い放たれたガルズは声を押し殺して青年にそう言った。 言われた当人――アレスは無言で反応を示さない。 「ふん。まぁ、いい。 あと十分以内に相手を行動不能にしろ。 出来なければ――わかっているな?」 あまりにも使い古された言い回しに、溜息が漏れそうになるのを何とかこらえるアレス。 何とか平静を装おうと、下のロッジへと目を向ける。 丁度見計らったようにメイン・ディプレイに映像が浮かび上がった。 『お久しぶりですね。ガルズ艦長』 友好的な物言いとは別の感情がこもった言葉を言ったのは、長い黒髪の女性。 ――セピア=スカイ。 「強制通信ですっ!」 通信士が叫ぶと同時に―― どがうんっ!! 盛大な音と、衝撃が艦内に響き渡り、レッドランプがまばらに光り出す。 いきなり撃沈ということはなかったが、エンジンがやられたらしく、加速が半減する。 『やっぱり当たりましたか。 あなたにあんな操縦は出来ないだろうからおそらく……とは思ったんだけど。大当たりですね』 「セピア=スカイっ!? 貴様何故そんなところにっ!?」 動揺が走る部下たちを無視し、ガルズは悲鳴に近い声をあげる。 『あなたが次に何処に現れるかは予想できていたんでね。 先回りさせてもらったわ』 実は全くの偶然なのだが、本当のことを言ってどうなるもんでもなし。 適当なことを言って動揺してもらった方が得と判断し、嘘八百を並び立てるセピア。 ちなみに今の発言でソードブレイカーにいるミリィは首を傾げたのだが、画面には映らない。 後ろにキャナルの顔がちょこっと映ってはいるのだが、さすがにこちらは調子を合わせて笑顔を送っている。 「くそっ!どおりでっ!ソードブレイカーが停船せんわけだっ!」 叫んで手元のパネルを叩きつけるガルズ。 『――アレス。いるわよね? もう少し時間かかるけど必ず助けに行くから……もうちょっと囚われのお姫様役よろしく』 「……あのなぁ……」 あまりの言いように困った顔をするアレスだが、やがてそれも苦笑に変わる。 「ま……元気そうで何より」 『おかげさまで。 じゃあ、そっちがダメージ受けてる間にこっちはトンズラするので。 また近い内に――必ず』 真剣な表情になったセピアの映像が途切れる。 やがてレーダーに映る、遠く離れていく艦影。 「くっ……!何をしているっ!?追えっ!」 「無理だ……ですよ。 先程の砲撃で加速30%減。 相手とフルパワーで互角なのに、これ以上は無理です」 「ならさっきと同じシステムを起動させればいいだろうっ!」 「不可能ですよ。 パワーで機体が持たずにあちこち誘爆して、そのまま宇宙の藻屑になるのが関の山ですね」 「ぐっ…………!!」 「初戦敗退です。元軍人らしく撤退は速やかにしたらいかがですか?」 口調は先程までと変わっていないのだが、いやに明るい。 セピアの通信が入ってからである。 「貴様に指図される言われはないっ!」 顔を真っ赤にしながら言ったガルズの叫びが、混乱のブリッジにこだました。 |
11039 | 『朋友 まみえる』 3 | 白いウサギ E-mail | 7/15-16:54 |
記事番号11036へのコメント 3 『突入(チャージ)』 「――とまあそう言うわけで。 なんとかミアヴァルドも振り切ったことだし、作戦会議といきましょーか」 「おう。 なんかもーキャナルの物言いに警戒しまくった相手はやたらと弱いと思ったら異様に強くなるし、説明は今更って感じがしねーでもないが、わかんねーことだらけでいい加減腹立ってきたところだ。 がんがんやってくれ」 ミアヴァルドの艦影が見えなくなってから、そのまま相転移航法(フェイズ・ドライブ)に移り、しばらくの時間が経ってから。 おもむろに口を開いたセピアに、殆どやけくそに言い放つケイン。 「……いや、あの…… とりあえず、あたしのこと信用してくれてありがとう。助かったわ」 「どいたしまして。ま、あたし達も色々な経験あるから。 気にしない、気にしない」 微笑むセピアにぱたぱた気楽な口調で言うミリィ。 右手にはどこから取り出したか、チョコレートがおさまっていたりする。 「さて、どっから話せばいいものか…… とりあえず、簡単なところから。 もう気付いているとは思うけど、さっきの船――『ミアヴァルド』は、遺失宇宙船(ロスト・シップ)よ」 頷く一同。 「ま、あんだけ非常識なスピードで追いかけ回した船が普通の船なわけねーわな」 「詳しいいきさつは省くけど、ちょっとした事件でガルズに遺失宇宙船(ロスト・シップ)だって言うことがばれて……情けないことに策略にはまってあたしは追われる身ってことね」 「それで逃げ回っているところを見つかって応戦している所にあたし達と会ったって事?」 言ってチョコを一かじり。 「あ……いや……それはその…… 見つかったというか……待ち伏せされてたのよね。これが」 どことなく顔を赤くしながら、うつむくセピア。 「待ち伏せ?」 「……その……家に逃走資金と道具を取りに行ったから……」 しばしの間。 「ま、まぁ……そりゃあ、見つかるわな……」 「それにしても良く無事でしたねー。 追跡者の自宅なんて一番ガードが堅そうな所に戻って。 意外に手薄だったりしたんですか?」 「いやぁ……それが…………………ざっと50人ばかし」 げふげほげふっ! 聞いた瞬間の度にチョコレートを詰まらせるミリィ。 「なんでそれで引き返さなかったんですかっ!?あなたはっ!?」 「だ、だって……! 二日ほど何も食べてなかったんだもんっ! そこでまわれ右してたら餓死してたわよっ!」 「だからって50人もの武装した相手がたまってるところに突っ込むかっ!?」 「多分大丈夫かなーって。 一応小さな頃から訓練受けてたし。あははははっ♪」 顔を赤くしたままで頬を掻くセピア。 ――小さな頃から50人の武装した兵士を相手に出来る訓練をしてるこいつって一体……? 思わず口にしかかったその言葉をすんでの所で飲み込むケイン。 「……何か突っ込めば突っ込むほど話がそれそうなんでもとに戻すが…… 結局奴らの目的は何なんだ?」 「……第二のナイトメア」 言われて目をぱちくりとさせてから、顔を逸らし、うんざりした目で溜息混じりに呟くセピア。 再びわき起こる沈黙。 目を閉じ、腕組みをし、やがて頬をぽりぽりかくケイン。 しばらくそうやって時間が経ってから口を開く。 「…………………………笑っていいか?」 「どーぞ。ご自由に。 あたしが笑われてるわけじゃないから」 「――で、具体的にはどんなことをしたがってるんですか?」 「遺失宇宙船(ロストシップ)を―― 『ミアヴァルド』と『ソードブレイカー』を手に入れること」 パールの言葉に重苦しい空気が場を満たす。 「……『ソードブレイカー』ですか? 『ヴォルフィード』ではなく?」 「……連中は『ヴォルフィード』って言う名前は知らないから……」 苦笑を浮かべるセピア。 「なるほど。たいして詳しいことは知らないんですか。 では奴らは遺失宇宙船(ロストシップ)が欲しいのではなく、大きな力を持った宇宙船が欲しい、と」 「そういうことね」 こくりと頷くセピア。 「……どういうことよ……?」 さっぱり訳が分からず、またもやセピアとキャナルだけで話が進んでしまっている。 取り残された気分になって、ミリィは眉をひそめる。 「ヴォルフィードさん。彼女たちにはどれくらい話したの? それによって説明の量が変わるんだけど……」 「わたしのことはキャナル、と呼んでください。 気に入ってるんですよ。この名前。 ミリィ達には――わたしが話します」 そしてキャナルは、昔話を再び繰り返す。 キャナルが――いや、ヴォルフィードが生み出されたばかりの時代。 そこには今とは違う、人間達が生活していた。 今の現代とは遥かに高度な文明を持った彼らでも、人間の本質は変わらないらしく、争いが起こっていた。 やがて――二つに割れた陣営の一方が、世界に魔王を生み出した。 恐怖を糧とし、恐怖を生んだ者に死を与える――システム・ダークスターを乗せた宇宙船。 ――生体殲滅艦『デュグラディグドゥ』―― さらに、その『デュグラディグドゥ』を護る五つの船。 それぞれには魔王の武器の名が与えられた。 すなわち。 『ネザード』、『ボーディガー』、『ゴルンノヴァ』、『ラグド・メゼギス』、『ガルヴェイラ』。 恐怖を糧としたそれ――いや、彼らが、自らを作り出した者達を滅ぼした。 そして。 人々は再び作り出す。 人々の正の感情――即ち、希望。 希望を糧とし、魔王を討ち、戦闘を終わらせるものを。 システム・ダークスターを相互のエネルギーを打ち消しあうシステム――消去(イレイズ)システムを乗せた船。 ――戦闘封印艦『ヴォルフィード』―― それは、この世界を護るとされている伝説の神。 漆黒の竜神(ナイト・ドラゴン)、『ヴォルフィード』。 それこそが―― 今、ケイン達が乗る、『闘いの剣を砕く者(ソードブレイカー)』。 ここまでは、かつてケインやミリィに話したことだった。 話しには続きがある。 いや――あったのだ。 人々は、『ヴォルフィード』の他にもう一つの船を造っていた。 漆黒の竜神(ナイト・ドラゴン)『ヴォルフィード』の祝福を受けし戦士。 黒竜の騎士(ヴォルフィード・ナイト)『ミアヴァルド』―― しかし。 かつて起こった戦いには姿を現さなかった。 ヴォルフィードは判断した。 すでにこの世界には残っていないのだろう、と。 ヴォルフィード自身、事情を知らなかったとは言え、味方とも言える人間に砲撃され、長い修復の時間をかけ、元へと戻ったのだ。 ならば。 自分と同じ状況があちらにも起き、再起不能に陥った―― そう判断したのも無理からぬ事である。 だが、しかし、再び長い時間をかけ、『ミアヴァルド』と出逢ったのだ。 「先程の通信で――名前を聞いたときは、偶然かとも思いました……」 しかし、その一方で、偶然に出てくる名前ではないと言う思いもあったのだ。 だから、あの時キャナルは動揺した。 「それで――ナイトメアの奴らと同等、か……」 こくり、と頷くキャナル。 「つまり――」 一同を見渡しながら、おもむろにミリィが口を開く。 「大昔も、この間の死闘にも顔ださなかった奴が、今更良くおめおめと顔を出せたもんだな、と?」 「……あのなぁ……」 真顔で呟くミリィに思わず脱力するケイン。 「ま、まぁそういう言い方もできますけどね。 ……かなりニュアンスは違いますが」 「すいません……返す言葉がないです……」 思わず涙ながらに呟くセピア。 「いやなにも泣かなくても……」 自分が言った手前、どうしても罪悪感が生まれ、おろおろするミリィ。 「実は、その事情聞かされたのは半月前で…… ――って、言っても言い訳にすらならないけど。 どうやら戦いにあたしを巻き込みたくなかったらしいし」 「ふーん」 興味なさそうに呟いて、シートにもたれるケイン。 「ふーんって……他に何とも思わないんですかっ!?ケインっ!?」 「そーは言うけどな、キャナル。 今何か言って変わるもんでもないしなぁ…… そりゃあ確かにお前は昔の因縁とかで気になるのもわかるけどよ。 現状の実際問題は、『ミアヴァルド』をどうやって取り戻すか、だろ?」 「そりゃまぁそうですけど…… なにか考えでもあるんですか?」 「とりあえず、レイルと連絡を取る」 「レイルと?」 考えが掴めず、眉をひそめるミリィ。 「誰それ?」 「星間警察(U・G)にいるちょっとした知り合いだよ。 ナイトメアとのこともこの船のことも知っているし……何て言ったっけ…… あの、グラサンのことも調べるのに都合いーだろ」 「調べるって……何を?」 いまいち考えが掴めないミリィは再び問いかける。 「あのなぁ……仮にもキャナル達と同じタイプの船が、ふつーの人間が『侵入してきました、制圧されました、どーにかしてください』なんて間抜けな話しあると思うか? ――キャナル。もしおめーが俺達が居ない間に、訳わかんない人間がこの船に乗り込んできたらどーする?」 「そーですねー……」 しばし小首を傾げて考え込むキャナル。 「とりあえず命令無視して宇宙に出て、生命維持装置(ライフ・システム)を切ったフリして、怯えて叫び始めたところでわざと姿消して意味ありげな笑い声を艦内中にエンドレスで流して、泣いて謝り始めたところで――」 「……いや……もーいい……」 ひきつりまくった声で遮るケイン。 明日は我が身のような気がして、冗談で済ますことが出来ずに視線は自然と下を向く。 もちろんキャナルが相手では実際、冗談では済まさないだろう。 ――間違いなくこいつはやる……! ケインとミリィは心の中で同時に叫んでいた。 「……ま、まぁ程度はどうあれ……言いなりってのも変だろ? それとも何かその辺は聞いてるのか?セピア」 「いや……実はあたしもそれが気になっていたのよね。 それでまぁ何かあるんだろうと思って、とりあえず『ファイナル・フォートレス』に乗り込もうかなーとは思っていたんだけど」 「『ファイナル・フォートレス』?」 聞き返すケイン。 「ああ。そっか……その辺も話していなかったっけ。 実はあたしが所有……って言って良いのかわからないけど、ともあれ、昔の遺産として一緒にいたのは、遺失宇宙船(ロスト・シップ)『ミアヴァルド』と、それを作り出した製造基地『ファイナル・フォートレス』でね。 ……もともと、宇宙船が完成したのはほんの一ヶ月前だし、いつもは『ファイナル・フォートレス』の方にいたのよ」 さらりと言ったセピアの言葉に硬直する一同。 「……遺失宇宙船(ロスト・シップ)の……製造工場……っ!?」 「うん」 どことなく子供っぽい仕草で頷くセピア。 「『うん』じゃないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!! 聞いてないわよっ!そんなことはっ!」 「言ってないもんねぇ」 思わず頭を抱えるミリィを横目に見ながら、いやに落ち着いた声で答えるセピア。 「そんなもん残ってたんですかっ!?今だにっ!」 「いやその……残ってたというか、なおした、と言うか……」 「どーやってやったんだっ!?んなことっ!」 「まぁ、10年ほどかけて地道にこつこつと……」 言って無意味に照れ笑い。 思いっ切り誤解を招きそうだなぁとは思いつつ、説明がめんどくさいため言葉を濁すセピア。 「……人が死闘やってる時にンな呑気なことを……」 「だから知らなかったんだって……!」 ジト目で言うキャナルに叫ぶセピア。 「まぁ……それはいいですけど…… なんか、初めてあったときと印象変わりましたねー。 最初は嫌にせっぱ詰まった表情でつんけんした人だと思ったのに」 「そういうことは普通本人目の前にして言わないと思うんだけど……」 額に汗を流しながら、苦笑を浮かべるセピア。 本人にして見れば当然のことである。 突然策略にはまり、指名手配犯にされたあげく、目が覚めれば見知らぬ船。 不安を紛らわすために必至に強がっていたのである。 当然話すわけにはいかないことだが、始めはケイン達のことをガルズのスパイという可能性も考えていたのである。 スパイにしろ、無関係な人間にしろ、あまり側にいるわけにはいかなかったので、いらいらするのも仕方ないだろう。 結局、自分が関わり合いにならなくても、いずれ関わっていたはずの人物だったので不謹慎かも知れないが、少しほっとしたのである。 そして通信で……アレスと話しが出来たこと。顔が見れたこと。 これが大きかった。本人は心の中で否定するが。 「いいじゃないですか。私は気にしませんし」 「……………………………」 なんとなくキャナルという人格がわかったような気がして、黙り込むセピア。 「まぁ……ともかく、だ。 レイルと連絡取ってくれ。キャナル」 「了解しました」 ケインの言葉に頷くキャナル。 室内にはしばし呼び出し音が鳴り続いた。 「目標、ソードブレイカー消失しましたっ!」 「わかっているっ! いちいちくだらないことを伝えるなっ!」 「……も、もうしわけありません……」 通信士の張り上げた声に、ガルズの理不尽な怒声が『ミアヴァルド』に響き渡る。 ガルズの苛立ちはまだ消えそうにない。 ――なにもかも気にいらん……! 不機嫌を隠そうともせずに、デスクに載った書類を忌々しげに払いのける。 その隣では変わらず冷淡にガルズを見つめるアレス。 一番気に入らないのはアレスの目だった。 何もかも見通した上で、自分の立場すら越えて、こいつは私を見下している。 この、私を。 ――ふとその時、頭の中で何かが弾けたような気がした。 「……くっくっく……私は笑いものだな…… 遺失宇宙船(ロスト・シップ)まで手に入れたと言うのに……!」 「奪ったものは砂と同じです。 どんなに力を込めて得ても、すぐに消えてしまう」 「くっくっく……ははっ! そーかい、そーかい…… おいっ!砲撃コントロールをこっちによこせっ!」 「……………………?」 眉をひそめるアルス。 すでにソードブレイカーはレーダー範囲外だ。 今更撃ったところでソードブレイカーにはなんの被害も与えない。 「どうしたっ!?命令が聞こえんのかっ!?」 「い、いえ……わかりました!」 ガルズの真意がわからずに戸惑う部下達。 しかし、わからないままにも命令に従い、コントロールをガルズへと受け渡す。 「何を……?」 「憂さ晴らしさぁっ!」 呟くアルスに、狂気じみた声で答えるガルズ。 同時にパネルの上に指が滑る。 与えられたプログラムを理解すると、アレスの顔が青くなる。 「何を考えて……っ!?」 「何も考えちゃあいないさ……くっくっく……」 プログラム命令了承。 第3番から6番の砲門安全装置解除。 発射準備に移行。 スタンバイ、完了。 「さぁーて、少しは楽しましてくれよぉっ!!」 「やめ…………っ!!」 ずぅぃずどぉぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!! 艦内に砲撃の余韻が残る。 エネルギー光は真空すらも揺るがし、真っ直ぐに突き進む。 その先には――一つの惑星があった。 『―――――――――っ!?』 艦内に衝撃が走る。 しかし、誰かが驚きの声をあげるより早く。 惑星は一斉射撃をまともに受け、一瞬で砕け散る。 砕け散った破片の端々から赤い閃光がほとばしり、自身を嘗めつける。 「なんて……ことを……!」 「ほう――なかなか美しいものだな」 目の前で起こる連続的な爆発の光をサングラスで反射させながら、ガルズは他人事のように呟いた。 「あそこには……たった今まで人々が暮らしていたのに――!」 力無く。 アレスはひざから崩れ落ちる。 ついほんの一瞬前に、たった今かき消えたあの場には、人々が生活をしていた。 笑い、歌い、時には泣いて…… それが――消え去った。 理由すら、知らないだろう。 彼らは――おそらく自分が消えたことさえ気付かない。 「ふん……私の気晴らしにはなれたんだ。 奴らも本望だろう」 ――なん……だって……? 一瞬アレスはこの男が何を言ったのかわからなかった。 ゆっくりと、顔を上げる。 そして、理解すると同時に叫んでいた。 「ガルズっ!貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 アレスは頭の中で何かが弾け出そうとしているのを感じた。 沸き上がる何かと同時に、心が急速に空虚になっていく。 「叫くな。何ならもう一つや二つ滅ぼしてもいいのだぞ」 「……ぐっ……!!」 思わず掴みかかりに行ったアレスの右腕が止まる。 その様子を見て、冷ややかに、薄い笑みを浮かべるガルズ。 「それと――勘違いをしてもらっては困る。 あの星を消したのはお前だぞ。アレス。 …………………少々調子に乗りすぎたな。貴様も、奴らも」 「――なっ!?」 動きを止めるアレス。 もちろん、砲撃したのはガルズである。 照準を絞ったのも。砲撃のスイッチを入れたのも。 ガルズが言う言葉は詭弁に過ぎない。 ――本当にそうだろうか? アレスの心の奥底で誰かが呟く。 確かに、ガルズが砲撃しなければ星は消えなかった。人々の生活も消えはしなかった。 しかし、そのガルズに砲撃させたのは――? 己の私的な感情でガルズの怒りを煽った。 それも、そうなると知っていて、アレスは挑発した。 自分自身の苛立ちから。 アレスの投げかけた言葉でガルズは…… そして思う。 星の人々をしに追いやったのはガルズの力ではなく―― 「星を消したのは……………………」 どれだけの時間をかけても、次の言葉は続けることが出来なかった。 「よ。思ったより遅かったな」 「まーな。追われる身やってると手続きが面倒で……」 ケイン達が衛生港につくなり、気楽な口調の見知った顔が出迎えた。 結局、あのあとレイルと連絡を取り、この星で落ち合うことにしたのである。 ――惑星『リヴァイア』。 そう。セピアと出逢った星である。 「それよりレイル。良く都合合わせられたわね。 忙しいんでしょ?昇進してから」 ひょいとケインの肩越しに背伸びして挨拶するミリィ。 「いやぁ、ミリィさんとお会いできるんなら、殺人犯を射殺してでも片付けて駆けつけますよ。はっはっは」 爽やかにかなり物騒なことを言い放つレイル。 「……変わってねーし、懲りてもねーな……」 相変わらずミリィに弱いレイルをジト目で言うケイン。 「……本当に警視さんなの?」 ケインのマントの端をちょいちょいっと引っ張って耳打ちするセピア。 「おう。 さんざん自慢、嫌み、昇進祝いの催促されたからな。まちがいねーぜ」 「ああ。あなたが今回の件で被害者になっているセピアさんですか。 いやぁ、おかわいそうに。僕は手配書が廻されたときに変だと思っていましたよ。 あなたのような可愛らしい方がそんなことするわけないですもんねぇ」 さりげなくミリィの肩に手をやりながら、同意を求めるようにミリィに微笑むレイル。 「……ぺらぺら良く喋る奴……」 背中の辺りがかゆくなり、思わず小声で呟くセピア。 彼女はこういうタイプが苦手な人種だった。 「は……?」 「あ、いえ、なにも。 すみませんが協力お願いします」 慌てて笑顔を取り繕うセピアだった。 その笑顔に気をよくしたかどうかはともかく、レイルは笑顔を向けて、手をさしのべる。 「ええ。もちろん。どうぞ、車を待たせてありますので。 そーいうことだ、ケイン」 「なにがだ……?」 笑顔でケインへと手を振る仕草をするレイルの言っている意味がいまいち掴めず、聞き返すケイン。 レイルは変わらぬ笑みをしていった。きっぱりと。 「俺の車に男は乗せない主義なんだ」 「お前なぁぁぁぁぁっ!!」 「叫んでもダメだ。歩け。 こっから署まで10km程だ。大したことはないだろう」 「あるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! なんっでこんなくそ暑いところを10kmも歩かなきゃならねーんだっ!」 「なんだ。走りたいのか? 構わないぞ。俺はそれでも」 めんどくさそうに肩越しで振り向いて、ケインを手で払うような仕草をするレイル。 「ちっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁうっ!!」 力の限り叫ぶケイン。 ケインとレイル。二人の視線が火花を散らしあっているのをミリィは見たような気がした。 すっかり野次馬が集まっている辺りを見渡してさすがに頬に汗を流しながら、 「まーまー。ケイン、落ち着いて。 あまり目立っちゃまずいってば! そーいうことだから、レイル。ケインも一緒にお願い。ね?」 両手を組んで、頬に当てながら、レイルにウィンク。 「ふっ。ミリィさんの頼みとあらば断れませんね。 ……おい、行くぞ。ケイン。もたもたしてないでとっととついてこい」 「あぁぁのぉぉなぁぁぁ…………!」 ジト目でレイルを見るケインだが、さすがにこれ以上騒ぎを起こして注目を集めるのはまずい。 と、言うかすでに充分まずい状態になっているのだが、それはこの際パスである。 結局ケインはぶちぶちと愚痴を言いながら素直にレイルの後を着いていく。 「……軽い……」 セピアはうんざりした口調でこっそりと呟いた。 「…………………………」 アレスは無言で『ミアヴァルド』を見上げていた。 『ファイナル・フォートレス』の発着地に、深い沈黙が場を支配していた。 無慈悲に冷たい手摺りにもたれながら、ただ黙って『ミアヴァルド』を見上げる。 出来ることなら泣きたい気分だった。 黒い、生物――それも、昆虫を思わせるような、有機的なフォルム。 『ソードブレイカー』との戦闘で受けた左舷後方部には自動修復装置の丸い機体が張り付いている。 損害は酷くない。すぐに治るだろう。 ――何事もなかったかのように。 焼き付いて離れない、衛星の消滅時の映像。 赤黒い閃光。崩れ行く砂のように、自身で消え去る星。 その直前、衛星を貫いた閃光は―― 「……なにやってんだろうなぁ……」 くしゃりと自分の髪を右手で潰して、手摺りに肩までもたれる。 ふと、声が聞こえたような気がした。 慌てて視線をしたからはずし、その声の主を捜す。 周りには誰もいなかった。 居るはずがないのだ。彼女は。 だが聞こえた声は……? ――なーにやってんのよ。情けないぞ、アレス! それは、心配の言葉でも、励ましの言葉でもなかった。 だが、その言葉に滲むものは、暖かみ。 ――まったくだ…… アレスは苦笑を浮かべて、床へ座り込んだ。 「出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 ケインの叫びがリヴァイアにある、とある一つの署内の応接間の一室に響き渡る。 肩をわなわなと震わせ、こめかみにははっきりと見て取れる青筋。 確認しないでも怒っている。 「そうは言うがな、ケイン。 俺としてもこれ以上の協力は無理だぞ」 手元にあるファイルに目を向けたまま、涼しげに答えるレイル。 「まぁ、その辺が妥当なところよね」 「なに落ち着いてんだっ!?セピアっ! ンな所に忍び込めるわけねーだろうがっ!!」 出されたコーヒーをかきこきストローでかき混ぜながら言うセピアに、ケインが再び叫ぶ。 「と、とにかくケイン。あまり叫ぶのは勘弁…… ただでさえ指名手配犯が警察署内にいるってのに、そんな大声出さないでってば。 正直さっきからびくびくしているんだから」 慌ててケインをなだめるミリィ。 視線は辺りをきょろきょろ彷徨っている。 実はレイルと連絡を取ったときに知ったのだが、ケインとミリィも指名手配リストに加えられていた。 容疑は時価3000クレジットという馬鹿高いティー・セットの窃盗犯。 この星に来たときに受けた仕事に、ティー・セットを取り返して欲しいという依頼があったのだが、どうやらその時から罠が張られていたらしい。 つまり、適当な依頼を頼んだフリをして、ケイン達に濡れ衣を着せるように仕組んだのである。 上手くいけば逮捕、監禁してそのままソードブレイカーの押収。 たとえ調べがきちんとされ、ケイン達の容疑が晴れたとしても、取り調べの最中にソードブレイカーを奪う算段だったのだろう。 偶然セピアが乗り合わせていたおかげであっさり逃れたわけだが。 「う゛……! そ、それはまぁそうだが…… だからと言って、星間警察(U・G)上層部でトップ・シークレットとなっているデータが保管してあるところへ忍び込むのは無茶だと思うぞ。俺は」 星間警察(U・G)上層部でトップシークレットとなっているデータの集合体―― それは、この惑星リヴァイアに保管されていた。 それも、星間警察(U・G)ではなく、地方警察に。 辺境といえなくもない、水の惑星の観光リゾート地。 星間警察(U・G)の支部も近くの惑星にはあるが、この惑星にはない。 ――探している連中も、まさか今な所にあるとは思うまい。 それが上層部の思惑らしい。 確かに意外という意味では良い保管場所なのかも知れない。 加えて、水。 この星の表面の約9割を占める水も、更に条件を向上避ける役割を持っているらしい。 なにしろ、空気などの大気に比べ、水という物質は探索を困難にさせる。 水に育てられ、発展した都市に眠る、記録。 そこに、半年前のナイトメアとの戦いの記録が極わずか、残っているという。 ブラック・ボックスと呼ばれ、海底奥深くに。 「ほぉ。『無茶』と言う言葉を知っていたのか、ケイン」 心底感心したように、ケインを見るレイル。 「当たり前だっ!」 銀河最大の裏組織へ宇宙船一機で喧嘩を売った、やっかい事請負人(トラブル・コントラクター)は胸を張って答えた。 「ううっ……全然説得力がない……」 涙ながらに呟くミリィ。 「まぁ、苦労することは想像つくが……俺でも立入禁止の区域だ。 ……だいたい、場所を突き止めるだけでもこっちは苦労したんだぞ? 前にも言ったとおり、ガルズ=ゴートは元宇宙軍(U・F)所属で、ナイトメアとの戦い後、星間警察(U・G)へ移動した。その時からどうも周りとぎくしゃくし始めて、上層部の決定にしたがわず、なにをとち狂ったかソードブレイカーに手を出したって話しだ。 ……ったく、ただでさえ警察内部のごたごたで身動き取りにくいってのに、早速問題起こしてくれるとはな。平和だったのは半年だけか?ん?」 ファイルをぱたんと手元で閉じて、皮肉たっぷりに言うレイル。 「やかましいっ! だいたいこっちは好きでごたごたやってる訳じゃねぇっ! こっちは被害者だぞっ!被害者っ!」 「ああ、そうかい。そいつはいい気味だ」 言って笑うレイル。ますますケインは怒り出すが、怒りにまかせて話しをしてもどうにもならない。 ぐっと怒りをこらえ、黙り込むケイン。もちろん目はレイルを睨み付けているし、殺気も出ているが。 しばしどす黒い険悪なムードが場を支配する。 「まぁ結局は、そこに行ってみなきゃガルズがどうにかなった手がかりは見つかるはずがない――」 飲み終わったコーヒーをテーブルに置いて言うセピア。 「――そして。 行ってみても手がかりが見つかる保証はない、か…… なかなか危険な賭よね」 ストローを指で弾く。乾いた音を立て、氷が涼しげな音を立てた。 非公式ながら、ガルズがブラック・ボックスへ出向いた記録が残っていた。 そして、その前後から、彼の行動はおかしくなっていたという。 つまり、ブラック・ボックスで何かがあったというのはまず間違いないだろう。 それでも、おそらくナイトメアとの戦いで何かが引っかかっていたガルズがただ好奇心からブラック・ボックスへ手を出したとも考えられるのだが。 しかし、好奇心を満たすためだけに星間警察(U・G)と宇宙軍(U・F)の両陣営の上層部が保持するトップシークレットのたまり場に行くとは考えにくい。 やはり、前々から彼には何かがあったと考えるのが妥当だろう。 「わたしとしても、あまり行くのはお勧めできませんね。正直、わたしではフォローしきれません。 ケインはともかく、ミリィさんやセピアさんが行くことは賛成しかねます」 「だから……おめーは……」 しつこいレイルに多少疲れのようなものを感じるケイン。 「でも、行くしかないんじゃない? 他に方法ないんだし、このまま何もしなくて事態が好転するとは思えないし…… もしかしたら、あたし達が動くことで事態が好転するどころか、よけい悪くなるだけかも知れないわ。 ――だからと言って、何もしないのは性に合わないでしょ?ケイン」 そう言ってウィンクするミリィ。 彼女も数々の修羅場をくぐってきている。見かけに寄らず、芯は強い。 「まーな。 つーことで、俺達は行くぜ。ブラック・ボックスに」 そう言ってケインはレイルを見据える。 その瞳は拒否を許さない、一種の迫力を秘めていた。 「――わかった。 メンテナンスやガードマンの入れ替え時のデータなどを集める。 さすがに手引きはしてやれんが、情報ぐらいは何とかしてやるさ。 それでも出来ることは限られてくるが……な」 「ああ。助かる」 言って立ち上がるケイン。 このままここに留まっても仕方ない。レイルの調べものもすぐには無理だろう。時間が必要だった。 となれば、指名手配犯の身でここにこれ以上留まるのは得策とは言えない。 ミリィとセピアも立ち上がろうとしたとき、不意にノックが鳴る。 「――レイルだ。 何か用か?」 動揺の気配を必死で押さえて、レイルはドア越しに声を掛ける。 「あ、はい。 実はお電話がかかっているのですが……」 返ってきたのは中年男性の渋い声だった。 声からしてレイルより年上のようだが、星間警察(U・G)警視のレイルと言う肩書きに弱いタイプの人間らしい。 「電話?誰からですか?」 「申し訳ありません。わたしは聞いていないのですが……」 誰からか気になるところだが、これ以上聞いても無駄だろう。 仕方なくレイルは立ち上がってドアへと近付く。 静かにそのドアを開けると、そこにはレイルの見覚えのある顔があった。 「たしか……副署長さんでしたよね。 わざわざありがとうございます」 言ってにこやかに笑みを向けるレイル。 「い、いえ。お気になさらず……」 そういって副署長は奥の方へ手を伸ばし、 「電話はこちらの方に繋がっております」 「はい。わかりました。 ――じゃあ、そういうことだ」 振り向いて、ケインの方へ視線を投げかける。 「おう。わかった」 言ってひらひら手を振るケイン。 その姿を見て、レイルは静かに扉を閉じ、その場を離れた。 その気配がある程度遠くまで去ったことを確認し、ケインは口を開いた。 「おい、逃げるぞ。バレたみてぇだ」 「は……? なんでそーなるのよ?」 飲みかけのコーヒーを飲み干して、ミリィは間抜けな声をあげる。 「レイルさんを電話で呼び出しに来たのは副署長さんだったでしょ? つまり、そう言う事よ」 言いながらも、上着を着込み、てきぱきと外へ出る準備をするセピア。 「いや、だからそれが何でそーなるのよ……?」 「――いいか、ミリィ。 呼びに来たのは副署長だ。 そこらの下っ端でもなく、わざわざお偉いさんが使いっ走りをやったんだぜ。 普通そんなことやるはずはねぇ。 つまり、普通じゃないことが起きたんだよ。 例えば、星間警察(U・G)の警視殿が指名手配犯と仲良くしゃべっている、とかな」 「な、なるほどー……って、それってめちゃくちゃやばいじゃないっ!!」 「やばいよっ!だから逃げるっつってんだろーがっ!」 マントをばさりと跳ね上げ、叫ぶケイン。 それで先程やはり異変に気付いたレイルがわざと、『副署長さんでしたよね』と言ったわけである。 ケイン達の方へ振り向いて『そういうことだ』と言ったのは、電話があるらしい、ではなく、ばれたぞ、と伝えたのである。 ともあれ、このままでは本格的に長居は無用。 とっとと逃げ出すに限る。 ドアノブを掴み、外へ出るケイン。 とたん、動揺の気配が広がる。 物影に隠れているのと、気配が余りにも多いため正確な数はわからないが、明らかにこちらに注意を注いでる。 ――さて、どうやって自然に外へ出るかな…… あくまで自然な動作で後ろに続くセピアとミリィに目配せし、思案するケイン。 とたん、殺意が生まれた。 「伏せろっ!!」 ドアを逆側に勢い良く蹴り飛ばし、ミリィとセピアの頭を掴んで床へ押しつける。 ぱんっ!! 直後に響き渡る銃声。 「いきなり撃つかっ!?ふつーっ!」 「冗談じゃないわよっ!警告もなしに撃つなんてまるっきし悪役じゃないっ!」 「ミリィさん……気持ちはわかるけど、それじゃあ警官達余計に怒らすだけだって」 それぞれに言いながら、一斉に駆け出す。 出口に、ではない。 そちらの方にはかなりシャレにならない気配が固まっている。 もし全員が銃を持っていたら一瞬で蜂の巣である。 そんな最後はごめんだった。 「待てっ!奴らの狙いはこの署の最深部にある最上級機密だっ! どんなことをしてでもそこへ行かすなっ!!」 「はっ!!」 後ろで聞こえる良く知った声。レイルの指示がはっきりとこちらに聞こえた。 「あああああっ!! 薄情者があっちにっ!」 勝手なことを言うミリィの右手を掴み、乱暴に壁の影に引っ込めるケイン。 ミリィの残像を貫く銃弾。 「確かにはくじょうもんかも知れねーがなっ! 今のセリフに関して言えば、ブラック・ボックスはこの署の最深部にあるってこっちへ教えてくれたんだろーよっ!」 そう言って床を転がりながら、鉢植えの陰に隠れるケイン。 「そ、そういえばっ!」 言われて気付くミリィ。 確かに先程の客間では何処からブラック・ボックスに行けるかまでは話していなかった。 おそらくブラック・ボックスに関するデータと一緒に教えてくれるつもりだったのだろうが、こうなってはそれも不可能に近い。 「どうやら日を改めてって訳にもいかねーよーだぜ」 そう言って壁越しに出口へと続く道にいる気配を探るケイン。 とても無事に脱出できるとは思えない。 逆に言えば、戦力が出口に集中し、最深部へは比較的入りやすいと言うことである。 ケインは迷うことなく決断した。 「よっしゃ突入っ!!」 盾代わりにしていた鉢植えを人混みの方へ投げつけて、その後を追うようにケインは奥へと走り出した。 「じーざすっ!!」 「何て無茶を……!!」 頭を抱えるミリィに毒づくセピア。 それでも二人は走り出した。ケインの方へと向かって。 「まいりましたねー……」 ちっともまいっていない口調でそう言ったのはキャナルだった。 惑星『リヴァイア』の衛生港『デフィ』。 そこに、ソードブレイカーは待機していた。 いつも通り、暇つぶしに兵器のカタログを見て、値段が高くて言ったわけではない。 ――と、言うか、高くても平気でケインにねだるので『まいりました』などと言ったことはないのだが。 ともあれ、キャナルが『まいった』と呟いたのはもっと別のことだった。 「リヴァイアの方にスパイが何人かはいるだろうとは思っていましたが……いきなり撃つとは……」 そう、リヴァイアの地方警察には数人ガルズの部下が紛れ込んでいた。 そのスパイの何人かが発砲許可がおりた、もしくはそれに近いことを言い、ケイン達を狙い、亡き者にする。始末した後で、命令の行き違いや、なすり付けは警察が内部粛正に動いて浮き足立っている今なら何とか誤魔化せる――とでも思っているのだろう。キャナルはそう判断した。 「さて……と、なると……」 言いながら、この衛生港の出入口のデータにハッキングするキャナル。 彼女にとってはこんな事を一瞬でこなすことなど造作もないことだった。 そこには次々と入場してくる警官のデータ。 「やはり……同時に仕掛けてきましたか。 身の程知らずさん達のご登場です。さてさて……どうしましょうかね」 キャナルはおもちゃを手に入れた子供みたいに無邪気な笑みを見せた。 その直後、通信が入る。 「……………? はい。こちらはソードブレイカーのキャナルです」 『こちらレイルだ。 どうやらそっちはまだ無事みたいだな』 どうやら心配してくれてるらしい。 キャナルは苦笑をうかべる。 「いやぁ、そうでもないですけどね。 なんかぽこぽこスパイが衛生港になだれ込んでる見たいですし」 『ほう……奴らなかなか行動が素早いな。 ああ、そうだ。 多分ケイン達は連絡まで手が回らないだろうから気を利かして連絡してやろうと思ったんだが――』 「あ。リヴァイア地方警察内部でのことなら知ってます」 ぱたぱたと手を振るキャナル。 『は……? どうやって……』 画面のレイルは間抜けな顔を浮かべる。 しかしキャナルはにこにこしながら言った。きっぱりと。 「やっぱり盗聴器は必須ですよね」 何故か満足げに頷くキャナル。 『…………………………』 ちなみに盗聴器はサイ・ブレードの増幅器の端っこに付けてある。 そこに仕掛けておけば、ケインは肌身離さず持ち歩くと踏んでのことだった。 自分のマスターの動向はきっちり読んでいる。 『……さすが……』 賞賛とも呆れともつかない声でレイルは呟いた。 『――しかし、こっちのことはどうかな? そちらのケインとミリィさん、さらにセピアさんに衛星消滅の重要参考人という事項が追記されたことは』 「衛星……消滅……?」 さすがにキャナルは眉をひそめる。 聞いてないどころか、全く心当たりがない。 『実はつい先日、衛星が原因不明で消滅した。空間座標は――』 言われてキャナルは絶句する。 そこはミアヴァルドと逃走、追跡のレースをしていた付近である。 ミアヴァルドの機動力を殺し、離脱した直後に、おそらく―― キャナルはスカートを握る手に力を込めた。 スカートがくしゃりとしわを作る。 ――かなりシャレにならない事態になってきてますね…… これからのことを考えると頭が痛くなりそうだった。 『――心当たりはあるみたいだな』 「ええ。まぁ……ところでレイル警視」 『……なんでしょう……?』 「……いま、露骨に顔しかめましたね」 『……このパターンであなたと話して良いことが起こった試しがないもので』 「なるほど。ではリクエストにお答えして――実は今回もまたネタがあるんです♪」 『……………………………』 「違法捜査なんてまた思い切った手段にでましたねぇ」 『なっ、なんでそれをっ!?』 「ヘカトンケイル周辺に浮かんでいた船の残骸にメモリーチップが残ってたんです」 『なるほど。さすがは『遺失宇宙船(ロスト・シップ)』のキャナルさん』 ひきつりながらも笑顔を取り繕うレイル。 脅そうとしても、こっちがソードブレイカーを遺失宇宙船(ロスト・シップ)なんだと言っていることは知っているんだぞ、という嫌みである。 「いやいや。『星間警察警視』のレイルさんほどでは」 負けずに嫌みをとばすキャナル。 もちろん違法捜査などと言うことを公表されては星間警察(U・G)警視などと言う肩書きは一瞬にして崩れ去る。 あわれ不毛な嫌み合戦は続くのか。 二人はしばし笑顔で沈黙し―― 「8000クレジットほどで手を打ちません?」 『うちませんっ!』 即座に切り返すレイル。 「じゃあ9000――」 『増えるなっ!こらっ!』 「じゃあ、5000――」 まるでいつかのような会話が続く。 『せめて200っ!』 「……学習してるんですね」 『あたりまえだっ!』 ラストだけ違う展開にキャナルは内心舌打ちした。 ちなみにいつかのような展開とは、キャナルの見事な会話回しで相場の2倍もの金額(2000クレジット)を払わされたことである。念のため。 「まぁもうしばらくレイルさんと遊んでいてもいいんですけど……どうやら邪魔が入りそうなんで。 今回はこれで失礼します」 ここでの邪魔とは、衛生港に入り込んできている警官達のことである。 『遊んでって……』 苦笑いを浮かべるレイル。 「うふふ。では♪ また今度商談しましょーね」 『いや……それはちょっと……』 頬に汗を光らせるレイルを見た後、キャナルは一方的に通信を切った。 そして、おもむろに腕まくりをする。 「さぁて、行きましょーか」 意味のない動作をして気合いを入れて、キャナルは自分の周囲にディスプレイを浮かび上がらせた。 「うをををっ!!」 急激な銃弾の横殴りの雨がしゃがんだ頭の上を過ぎ行き、思わずミリィはおかしな声をあげた。 そのすぐ隣には、同じくしゃがんでサイ・ブレードを抜刀しているケイン。 正確には抜刀とは言わない。 サイ・ブレードとは人の精神力をエネルギー変換し、刃を生み出すものである。 「ちっ!奴らこっちが反撃しないと思って好き放題やりやがってっ!」 「そのサイ・ブレードも出したことでおさまるどころか、ただ刺激しただけみたいねっ! ちっともビビってくれないわっ!」 「しかしハッタリ以上のことやるのはなぁ……っと!」 壁から顔を出して奥の様子を伺ったとたん銃弾がこちらへと迫り、慌てて顔を引っ込めるケイン。 手薄なところから下へ下へと進んできたつもりなのだが、すでに今何階にいるのかわからない。 そもそも最深部ってぇのは一体何階だ……? 地下3、4階辺りまでならきちんと把握していたのだが、すでにもうわからなくなっている。 いくらか降りた後から単純な通路の先に又階段。その先にはまた単純な通路、その先に階段と決まったパターンが繰り返され、すっかり頭が麻痺してきている。 この階のちょっと前から、いやにだだっ広いフロアがあって、その下へは螺旋階段が続いている。 好奇心からちょいと下へ覗いてみたケインだが、暗いせいもあるだろうが、底が見えない。 下から吹き上げる上昇気流が前髪をとかし、注意深く見ようと身を乗り出すと、すかさず下から発砲である。確認など出来るはずがない。 下へと続く螺旋階段もコンパスで描いたように綺麗に整理されておらず、ところどころ、作業場のような所があったり、通路、扉があったりといろいろである。 おかげであちこちからちょっかいは飽きもせずに続いてくる。 ――一気に降りるって訳にもいかねぇか…… とたん、背後で気配が動いた。慌ててそちらの方へと向くが、相手に殺気はない。 「待てっ!撃つなっ! 発砲を許可した覚えは――」 どっ………… おそらくそれなりに地位の高い人間だったのだろう。 まわりに発砲をするなと叫ぼうとして――床に崩れ落ちた。 眉間に鉛の弾をめり込ませて。 あまりにあっけないあの世への切符。 「くそっ!奴らとうとうこっちに撃ってきやがったぞっ! 指名手配犯がっ!」 「ちょっと待てぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」 あまりの発言に叫ぶケイン。 こちらの武器に実弾が撃てる銃はない。 唯一ミリィが銃を持ってはいるのだが、彼女のは麻痺銃(パラライズ・ガン)。 どんなに根性入れてみせても鉛の弾を撃ちだして相手を即死させることは出来ない。 「どうせ濡れ衣着せるつもりなんでしょ。言っても無駄よっ!」 「こっちは実弾打てる銃なんか持ってねぇんだぞっ!?」 しゃがみ込んで奥の気配を探るようにするセピアに怒鳴るケイン。 「信じちゃくんないわよ。 どうせ、どさくさに紛れてどっかに隠したんだろう、っていうふうに言われるのがオチよ。 たとえ無実が証明されても、長い間彼らに拘束される。 そうなれば、ソードブレイカーも乗っ取られるわ。 つまり、濡れ衣で無実が証明されようが、しばらく時間が稼げればそれだけで奴らの勝ちなのよ」 「ううっ……めちゃくちゃ不利……」 思わず泣きそうになるミリィ。 「結局は強引に奥へ行くしかないって事か……」 「そういうこと。はい、そっちから5匹」 びしぃっと指差す方向には確かにおそるおそる銃を明後日の方向に向けながら、歩いてくる警官が5人。 「新米キャリア軍団は引っ込んでろぉぉぉっ!!」 言ってケインは隠れていたテーブルの上に載っていた頭の先が変にとんがったぬいぐるみを投げつけた。 「ああっ!!我らがアイドル、ピ○ポ君がっ!!」 悲鳴を上げてそれを拾い上げようとする5人。 無論、5人そろってそんなものを拾い上げようとすれば、お互いが邪魔をしあい、おまけに通路を塞ぐ。 おかげで後ろの援軍が困っている気配が感じられた。 「やかましいっ!ンな宇宙人のなり損ないみてぇなのを掲げるなっ!! 怪しい宗教団体かっ!?てめぇらはっ!」 「ケイン……そーいうセリフはやばいのでは……?」 笑顔を浮かべながらも額に汗を流すミリィ。 「そもそもこの世界で宇宙人という言葉すらあるのかしら……」 『は……?』 ぼそりと呟いたセピアの言葉にケインとミリィはそろって間抜けな声をあげる。 「あー……まぁ、気にしない。気にしない」 ぽりぽりと頬をかいて気まずそうに沈黙し、やがてぱたぱた手を振るセピア。 その言葉で気にならなくなったわけではないが、気にかけている余裕もない。 「それにしてもまいったな…… 下手に手を出すわけにはいかねぇし、だからといって手を出さずにこれ以上、だましだましいけるとは思えねぇし……」 「とりあえずそこらの手摺りをサイ・ブレードで斬って、下の階段で待ちかまえてる奴に蹴り落としてみるってのは?」 「そりゃまた強引な……」 「ケイン、あなたにだけには言われたくないわ」 真顔になってしみじみ言うミリィ。 どういう意味か詳しく聞いてみたいところだが、答えが予想できるのであえて黙り込むケイン。 「――ンじゃまぁそれでいってみっか」 言って物影から飛び出すケイン。 そのまま勢いに乗せてサイ・ブレードを逆袈裟切りに一閃させる。 ごとっ…… 鈍い音を立てて、手摺りの一部が重力に捕まり下へと落ちる。 それを右足で受けとめて、方向変換させて下へと蹴り飛ばす。 そのとたん。 「しまっ……!!」 舌打ちするケイン。飛び出すことでこちらに注意が向くことは予想していたが、4人がこちらへ銃口を突きつけている。蹴り飛ばした直後のためバランスが悪い。避けきれない。 「このぉっ……!」 すかさずフォローに入るミリィ。 素早く1人を倒すが、一瞬で4人は無理である。 ケインが半ばダメージを覚悟したそのとたん。 光が、ケインの頭上を過ぎた。 「…………?」 そのまま光は4人の頭上――シャンデリアを直撃する。 「――――!!」 悲鳴を上げるいとまもあらばこそ。 4人はあっさりシャンデリアに押しつぶされ、動かなくなっていた。 「……ふぅ……」 いやに疲れた溜息をついて、セピアは右手の銃を降ろした。 否、それは銃ではない。 一般のものが見れば銃にしか見えないが、ケインもミリィもその武器は良く知っていた。 「サイ・ブレードっ!?」 「そです。 あー……疲れた」 言って襟元を緩めながら、ぱたぱた中へと風を送り込むセピア。 「バンダナと増幅器(ブースター)は……つけてないわね……… ――と、言うことは……ケインと同類……」 本来、サイ・ブレードというものは、バンダナ、増幅器(ブースター)、発信器の三組で一セットとなる。 人間の精神力では本来、発信器だけで刃を打ち出すことは不可能だった。 「そーいうめちゃくちゃ危険物を見るような目で見ないで欲しいんだけど……」 「一応言って置くけどな。ふつーの人間は出来ねぇんだぞ。そういう芸当は」 「らしいわね。 でも刃は出せないわよ。一瞬で、しかも単発の銃型の時だけ」 「ふっ。まだまだ修行がたりねぇな。 俺は出せるぜ。長時間は無理だが」 何故か胸を張るケイン。 「悪かったわね。一点集中型なのよ。あたしは」 「ていうか普通どっちにしろ出来ないはずなんだけど……」 二人の常識はずれな人間に挟まれて、思わず自分がおかしいんじゃないかとすら思えてくるミリィ。 「修行……っていうか訓練だって1、5Gの所で仮想ターゲットとの戦闘訓練ぐらいしかやってないわ」 「なにぃぃぃぃぃぃっ!? そーいうレアな趣味を持っている奴が居るとはっ!?」 「なんでまたそんなことを……?ケインじゃあるまいし……」 「をい……」 思わず憮然とするケイン。 「決まってるじゃない。そっちの方が人生燃えるからよっ!」 瞳に危ない炎を灯しながら、叫ぶセピア。ひょっとしたら……いや、たぶん。彼女も危ない人種の人間の一人なのだろう。ミリィは額に汗を光らせながらそう思った。 「んで?楽しいか?人生は?」 「悪いけど、そういう質問は死ぬ直前にまとめて答えることにしているの」 ひょいと肩をすくめるセピア。どことなく楽しげにすら見える。 「なるほど。そいつぁ感心」 頬をぽりぽりと掻きながら、苦笑を浮かべるケイン。 「あれ……? でもそーすると何でバンダナと増幅器(ブースター)装備してないの……?」 「あ。いやその……家に置きっぱなしで……」 「変なところで抜けてるな……」 呆れ顔で呟くケイン。 「ほっといてちょうだい。 いいから、先進むわよ」 ぷいっと顔を背けて一人出先へ進むセピア。 その頬が赤かったのはおそらく照明のせいではないだろう。 ケインとミリィは顔を見合わせて、その後に続いた。 最近頭が痛い。 アレスははっきりとそう感じ取っていた。 原因は分かっている。 ただ原因が分かっているからといって、どうしようもないこともアレスは知っていた。 「結局は……待つしかないんだよな……」 ソファーに埋もれながら、クッションを抱え、溜息をつくアレス。 こんなに自分が情けないと思ったのは初めてだった。 目の前で衛星を消された。 改めて知る、『ミアヴァルド』の威力。 人間に眠る狂気の深さ。 そして、自分の無力さ加減。 目の前で惨殺が行われ、なおかつそれをどうすることも出来なかった。 なにより自分に腹が立つ。 ふと、部屋の入り口にアレスの苛立ちの塊が入ってきたことに気付く。 「……何か用ですか?ガルズさん」 クッションをソファーの反対側に押しのけて、声を低くして言うアレス。 何がおかしいのか、ガルズは笑みを浮かべていた。 「まぁそんな邪険にするな。 さっきは言い過ぎた。反省している」 笑いをこらえながら言っているらしい。 完璧にこちらを見下している。 ますますアレスは腹が立ってきた。 「僕に対する言動より、あなたの行動を反省してもらいたいですね」 「そいつは無理な相談だ」 あっさりと即答するガルズ。 「星を一つ消して、反省の欠片も無し、ですか。人間性が伺えますね」 「ふん……なんとでも言ってもらって結構。 だがな、これだけは言っておく。 君が好もうと好まざろうとに関わらず、私の行動は止められない。 違うかね?」 「……お話はそれだけですか」 しばし睨んだ後、アレスはくるりとガルズに背を向けて、ソファーに寝ころんだ。 「いいや。まだだ。 はっきり言ってね。君とこのような関係でぎすぎすするのは不毛だと思っている。 私は君には望んで私の側にいて貰いたいんだ」 アレスは言われて、ゆっくりとソファーから立ち上がった。 そして振り向き、視線が交錯する。 「僕は……」 ダーク・ブルーの瞳が部屋の僅かな光を捕らえ、淡く輝いた。 「――あなたが大嫌いです」 そうとだけ言って、部屋の奥へと消えた。 一人残されたガルズは不気味な笑いを続けた。 ――実に面白い。最高の気分だ。 ガルズはアレスが去った扉を見ながら、一人笑みを深めた。 「うーん……うっとうしいですねー……」 キャナルは辺りを取り巻く宇宙船を見渡しながら、そう言った。 先程衛生港に突入してきた警官達が、手続きに手間取っている間に、キャナルは港を出港していた。 もちろん、他に乗員は居ない。 それでも出航できたのは、キャナルのハッキングでのデータ偽造のおかげである。 それはともかく、警官が突入した直後に飛び立った容疑者の乗る船。 疑われないはずがない。 きっちりパトロール艇が出動し、追いかけてきている。 ひっきりなしに通信が入ってきているが、キャナルはどこかのチケット予約現場のように際限なく続く通信を受け取る趣味はない。 ともあれ出航したことで警官が中に入ってくるのは防げたが、あまり遠くへ行くとケイン達との合流がやっかいだった。 しばらく思案するキャナル。 「うーん……よし。決めたっ!」 ぽんっと手を着くと、キャナルはおもむろに通信を開いた。 「もしもーし。こちらソードブレイカーのキャナルですけど」 『キャナルっ!? わりーがこちとら手一杯だっ!話が長くなるんなら――っとぉっ!!』 声と同時にケインの姿がかき消える。 おそらく銃弾を避けるために身をかがめたりか何かしたのだろう。 「いえいえ。長くなりません。 しばらくわたしはお出掛けするので頑張って下さいね」 どがっ! めきっ! ざしゅっ! ――あ。斬った。 断片的に聞こえてくる音に耳を傾けながら、どことなく他人事のように心の中で言うキャナル。 『ほいよ。了解。 ――って、ちょっと待てっ!お前が出かけるって事は――』 「はい。リヴァイア星を出ます」 『なにぃぃぃぃぃぃっ!?置き去りかっ!?俺たちはっ!』 叫びと同時にディスプレイに浮かぶケイン。 かなり驚いたのか、映像には口しか映っていない。 「いやぁ、傷付きやすい年頃の女の子がちょっと殺伐とした戦いを忘れてみるのもいいかなーって思いまして」 『誰が傷付きやすい年頃だっ!? てめーはそこらのビーム砲でも平気で弾きとばすだろーがっ!!』 キャナルの言葉に鋭いツッコミを入れるケイン。 言われてキャナルは腕組みし、考えるような仕草を見せて、 「じゃあ、ちょっと旅が恋しいお年頃、と言うことで」 『やかましいぃぃぃっ!! こっちゃあ銃弾の雨プレゼントされまくってんだぞっ!!』 「さすがはわたしのマスターですね♪モテる、モテる♪」 『馬鹿なこと言ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇっ!!』 思わず叫ぶケイン。 その後ろで悲鳴を上げるミリィの声が聞こえた。 そりゃそーだろう。今の発言では敵に場所を教えてるようなものである。 「ともあれこっちはもうすでにリヴァイア星出てるのでどーしよーもないです。 根性で頑張って下さい。では」 『ちょっと待――』 ぶつっ………… 一方的に切って、回路を遮断するキャナル。 「さて、許可も取りましたし、報告もしましたし。 少々逃げますかねー」 無論本気で言っている。 ソード・ブレイカーはエンジンを吹かし、一気に駆け出す。 パトロール艇がレーダーにすら映らなくなるのに、さして時間は必要なかった。 「あいつぅぅぅぅぅぅぅぅっ!! 絶対にいつか仕返ししてやるっ!!」 「……あたしは巻き込まないでね……」 応答しなくなった腕の通信機に叫ぶケインに、薄情なセリフを吐くミリィ。 しかし、それも当然である。 いつもケインが仕返しすると言って何かをやった次の日は、2倍どころか、何十倍にして返ってくるのだ。そして結局謝り倒して、何とかうやむやになっている。 毎度そのパターンである。 それでも、ケインだけに仕返しが行くのならミリィはまだ構わないのだが、大抵がソードブレイカー内全域に被害がいくものである。 よって、二人の喧嘩に一番被害を被っているのはミリィだった。 「……どうでもいいけど、銃弾止んでるわよ。 気配も消えたみたいだけど……」 「へ……?」 言われて辺りをきょときょと見渡してみるミリィ。 確かに殺気どころか気配もない。 急に静けさが場を襲う。 「なんで急に…… ――って、考えてもわかるわけねーか」 「ケイン……そういう判断するにしても早すぎない……?」 「判断は迅速が一番だぜ」 言ってすたすた無造作に階段を下りるケイン。 途中足を止めると、壁にめり込む形のドアを見つけた。 こつん、とそこを叩くと、軽く乾いた音が響く。 それほど厚いわけではないらしい。 「どーするの……?」 「斬る」 おそるおそる尋ねるミリィに、ケインは簡単にそう言った。 ぶうぃんっ!! 鈍い音を立てて、頼もしいはずのシステムを備えたドアは一瞬にして崩れ落ちた。 崩れたドアの破片を踏み分けて、奥へ進むことしばし。 そこにはエレベーターがケイン達を待ちかまえていた。 「……あらま。らっき」 言って口笛を吹くミリィに、脱力するケインとセピア。 「なによ?そんな疲れた顔して」 思わず怪訝な顔をして聞くミリィ。 「あのなぁ……奴らが玄関の方に集中して人員を配置していたのは言ったよな? その割には人が異様に多いと思わなかったか?ここに来るまで」 「そーいわれてみれば……」 「つまり、先回りする手段があるってこと。 だいたい、底が見えないほど深い所へ行く方法に階段だけのはずはない。 エレベーターの一つもあるのは当然じゃない」 言って、下行きのボタンを押すセピア。 「ちょっ、ちょっと待ってよっ! まさか、だからって密室のエレベーターを使おうってんじゃ……」 「さあ……どうしようかしらね」 ミリィの方へと振り返らず、エレベーターの到着を待つセピア。 しばしの時が過ぎると、エレベーターの到着音が響く。 用心のため、3人は物影に隠れ、構えてドアが開くのを待つ。 開いたドアには誰もいなかった。 すかさずドアのサイドを右手で押さえながら、ケインは中に入り込む。 右手で押さえているのでドアは閉じない。 「……今までの行程の50倍ちかくの距離があるが……歩くか……?」 ――なるほど…… 思わずミリィは心の中で呟いた。 下までの距離を調べるためにエレベーターを読んだのである。 しかし、50倍の距離を待ち伏せが『居るかなー、居ないかなー、わくわく』などと、ひたすら歩く気にはなれなかった。 「乗ります……」 敵が消えた理由は依然として不明だが、もし相手のトラブルだとしたら今が唯一のチャンスだろう。 だが、もし罠だったとしたら―― それでもやはり、答えは出なかった。 ケインの言うとおり、考えたってわからないのである。 「……またとんだ誕生日になっちゃったわね……」 うんざりした口調でぽつりと言って、セピアもエレベーターへと乗り込んだ。 セピアの誕生日――つまり、今日が終わるまで後4時間。 今年のバースデーケーキはお預けになりそうだった。 思ったよりそこは、散らかっていた。 エレベーターで特に何の襲撃もなく、無事に底へと辿り着いたケイン達。 何故か周りはガラス張りのようで、外は深海何メートルかはわからないが、グロテスクな生き物がちらりと見えたので、3000メートルよりは下だろう。 海の底とはいかないまでも、かなりの深さであることは確かだった。 そして、確かなことがもう一つ。 「で……どれがブラックボックスだ……?」 「さあ……?」 呆然と呟いたケインにやはり呆然と答えるミリィ。 身長の高い方であるケインよりも高く積み上げられている、書類の山。 そして、その先にかろうじて見えるのがパソコンの端末。 そこでデータ検索をしろ、ということなのだろうが…… 「……あ。やっぱり駄目だわ」 かたかたとキーボードパネルをいじって、パソコンに収められたデータを検索してみたのだが、そこには、『ウェルズ星系にはこびる裏組織との癒着者のリスト』とだけ出てきたのである。 わかったのは警察内部の腐り具合だけだった。 ミリィは呆れたような目で辺りを見渡した。 おそらく百や二百では聞かないパソコンの端末があちこちに乱設されている。 よく考えれば予想できる事態だった。 いくらトップ・シークレットと言っても、星間警察(U・G)と宇宙軍(U・F)の、全てである。 ちょっとやそっとの量とは思えないし、部外者が侵入さえすれば簡単に目当てのものを検索できるように設置されてるはずはない。 「片っ端から調べていくわけにもいかねーな。この量じゃ……」 ぽりぽりと頬の辺りをかきながら、呟くケイン。 「うーん……このパソコンなら全てのデータを掌握しているみたいだけど…… 検索コードを入力して下さいって書かれているだけで…… 全てのデータを羅列って言うのも、データ別に検索って言うのもできないみたいね。 どーする?」 一つだけ他のパソコンと違った機種があったのでそこを起動してみたミリィだが、やはりあまり当てにはならなかった。 「どーするっていわれてもなぁ……」 「あの……さ。 あたしが色々警察の内部事情知っていたことは不思議に思わなかった?」 突然ぽつりと呟くセピア。 「そりゃあ、思ったが……遺失宇宙船(ロスト・シップ)の『ミアヴァルド』だの、その製造基地の『ファイナル・フォートレス』だの、もっと驚くことがあったからそっちにゃあまり気が回らなかったな。 ……って、なんだ?いきなり」 セピアは自信なさげな表情をしながら、ちらちらと腕時計へと視線を移らせながら、 「……実はこのリヴァイア星の警察内部のハッキングをしょっちゅうやってたのよ。 それで、詳しかったのよね」 「……それって犯罪じゃねーか……」 「ケイン……説得力がないわよ……」 ぱたぱたと涙を流しながら手を振るミリィ。 キャナルがしょっちゅうハッキングをやっていることはケインもミリィも知っている。 事実それで何度も助けられたことがあった。 「で、話を続けるけど、ハッキングをしていたのはあたしじゃなくて相棒のアレスなんだけど…… 実はハッキングする時刻は決まっててね。もうすぐだと思うんだけど……」 言って、手近なパソコンに備え付けられたイスに座りながら、起動していく。 「それで?」 いまいち話が掴めないケインは先を促した。 「アレスなら、ここのデータを全てじゃないにしても……殆ど把握しているはずなの。 まして自身に関わったデータとなると、まず検索を終了しているはずなのよ」 「どーやって連絡取る気だよ?」 訝しげに問うケイン。 「……ちょっと待ってっ!ケインっ!」 「なんだよ、ミリィ?」 「いいからこれ見てっ!!」 「なんだよ、お前壊したんじゃねーだろーな……って、画面が……!」 覗き込んだケインの視界に入ったものは、先程までの画面とはうって代わり、青白い光を放っていた。 やがてその光がおさまると、いくつかの文字が見えてくる。 『 To princess. This is my present for you. please search < A−T−Z > From your kinght 』 ごんっ!! 驚くケイン達のその隣で、セピアはディスプレイに頭突きを――もとい、脱力して突っ伏した。 「……えーと…… 『 姫君へ これはあなたへの贈り物です。 <A−T−Z>を検索してみてください。 あなたの騎士より 』 ………………変わった人ね……アレスって」 「あぁぁぁのぉぉぉばぁぁぁかぁぁぁはぁぁぁぁ……!!!」 顔を真っ赤にして肩をわなわな震えさせるセピア。 ケイン達からは背中しか見えないが、怒りは声と雰囲気で充分すぎるほどわかる。 「まぁまぁ。落ち着けって。 多分これって検索コードだろ? 良かったじゃねーか」 「あなたにお姫君呼ばわりされた20の女の気持ちはわからないわよっ!」 「……いや、確かにそーいう経験はねーが……」 「……つまり、照れてるのね」 「ミリィさんっ!ずばっと突っ込まないでくれますかっ!? だいたい敵にとっ捕まってて騎士なんてよく言えるわねっ! どっちがお姫様よっ!どっちがっ!」 何故か画面に向かって指まで指して怒鳴り続けるセピア。 「……あー……キレてるぞ。ミリィ」 ぽりぽりと頭を掻きながら、ミリィに目配せするケイン。 「あたしに言わないで……」 「しかしなぁ……女は女同士……」 「ああいうのは特殊なの。 女だからって何もかも一緒なわけないじゃない」 頬を膨らませながら抗議するミリィ。 「……ま、とにかくあちらさんは放って置いて……」 ちらり、と肩越しに振り返るケイン。後ろではまだセピアが叫いている。 「せっかく教えてくれたんだし、検索しておこーぜ」 「……そうね。 よ……いしょ……っと」 軽やかにパネルを操作し、検索画面に切り替えた後、コードを入力していく。 やがて入力を終えると、画面は切り替わる。 またもや多くの分の羅列が現れ、それを黙読するケインにミリィ。 「これって………」 「――ああ。どうやらビンゴみてぇだな」 真後ろで画面を食い入るように見るケインの方へと振り返りながら呟くミリィに、頷くケイン。 「おい。セピア。 どーやら、これからますますやっかいなことになりそーだぜ……」 ――その文章の始めには日付が記されていた。 即ち――ナイトメアとの全面戦争の終結日である。 その日。 闇は消えた。 恐怖を食い、恐怖に食われ、その身を消した、一つの闇が。 そして――闇は闇へと消え去った。 全ては――終わったはずなのだ。 それは、彼らにとって甘い考えだったのかも知れない。 闇あるところに光あり。 光あるところに闇あり。 大きな闇が消え去った後には、小さな――それでも確かな闇が残っていた。 「てぇ、わけだ。わりーな、レイル。恩に着るぜ」 『勝手に恩に着るなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』 操縦室に、レイルの叫びがこだました。 「うるっせーなぁ…… こっちは慣れねー船で通信の音量までコントロールしなきゃならねーんだぜ。 もうちょい声落とせよ」 『慣れられてたまるかっ!! リヴァイア星のパトロール艇盗むなんてどーかしてるぞっ!!』 「盗んでねーぜ。ちょっと借りてるだけで」 『誰も許可は出していないっ!!』 そうなのである。 この操縦室(コック・ピット)はソードブレイカーのではなく、リヴァイアの警察署から拝借した、パトロール艦のものである。 当然の事ながら、キャナルは居ない。 おかげで慣れない通信までケインが処理しなくてはならなくなった訳なのだが…… ケインは借り物の船の中で、いらいらしていた。 反応速度が鈍い。 出力が低い。 兵装が少ない。 操作がめんどくさい。 勝手に奪っておきながら、酷いもんであるが、それも仕方のないことである。 20世紀末辺りの人間でたとえると、昨日までプレ○テ2で遊んでいたのに、突然ファミ○ンを与えられたもんである。 いくら元手がかかっていないとは言え、そんなものをプレゼントされて素直に喜ぶ人間は居ないだろう。 まぁ、ケインの場合、自分で盗んだので自業自得と言えばそれまでかも知れないが。 「文句の処理係はミリィだ。そっちに言ってくれ」 「なんであたしなのよっ!? 勝手にこの船に乗り込ませたのはケインでしょっ!?」 当然の事ながら非難するミリィにケインはちょいちょいと手招きする。 不審に思いながらもミリィは近付いた。 「いーか、ミリィ。 レイルはおめーに弱い。それが理由だ」 「……あのねぇ……」 溜息混じりに呟くミリィ。 『とにかく引き返せっ!ケイン!』 「んな余裕はねーんだよっ! こっちの事態はシャレになんねーとこまできてんだっ!!」 言いながら、ちらり、と無言で黙り込んでいるセピアの方へと視線を向ける。 「文句ならミリィ、苦情ならキャナルに言ってくれっ!」 『お前……実は結構ひどいだろ……』 画面の端で縦線背負いながら涙するレイル。 「それだけ切羽詰まってんだっ!! じゃーなっ!」 『おいまてっ!まだ話は――っ!』 ぶつっ。 一方的に通信を着るケイン。 直後に通信が入ったことを知らせる緑のランプが光り出す。 「ケイン、通信が入ってるみたいだけど……」 「慣れねー船だから受け取り方がわからんっ! わからねーから不可抗力っ! つーことで無視っ!」 「さっきまでレイルと話してたじゃない……」 苦笑しながらも言うミリィ。 「通信の入れ方はわかったが、受け取り方はわからねーんだよ」 笑いながら、わざとらしく肩をすくめるケイン。 もちろん嘘である。 「はいはい。 さてとそれじゃあ――」 「行くぜっ!『ファイナル・フォートレス』にっ!!」 コントロールレバーを思いっ切り倒し、ケインは吠えた。 噴射口から白光が吹き出す。 宇宙という闇に一筋の光が線を描いた。 |
11040 | 『朋友 まみえる』 4 | 白いウサギ E-mail | 7/15-16:58 |
記事番号11036へのコメント 4 『最後の砦(ファイナル・フォートレス)』 遥か昔。 『ミアヴァルド』は生まれた。 いや、生まれるはずだった。 戦闘封印鑑『ヴォルフィード』とともに。 漆黒の竜神(ナイト・ドラゴン)の祝福を受けた黒竜の騎士(ヴォルフィード・ナイト)の名を与えられ、『ヴォルフィード』のサポート艦として、生まれるはずだった。 まさしく――神に仕える騎士として―― 「了解しました。 そーいうことだったんですね」 ソードブレイカーの操縦室(コック・ピット)。 キャナルは乗員が誰もいないのに構わずに立体映像で姿をその場に出していた。 『ああ。そういう事情だからこっちは『ファイナル・フォートレス』に向かって居るんだが………』 「『――だが』?なんです?」 きょとんっとした顔で聞き返すキャナル。 『船が遅くてな………』 「泣いてどーするんですか。泣いて」 『だってなぁぁぁ! そもそもお前がリヴァイア星から勝手に出なきゃ、こんなちんたらやらずに済んだんだぞ』 「なに言ってるんですか。男が過ぎたことをぐちぐちと、みっともない」 チェアーに腰掛け、ぱたぱたと扇子で扇ぎながら言うキャナル。 キャナルにも先に脱出した正当な事情があったので、そちらを説明すればケインはすぐ黙り込むはずなのだが、キャナルはあえて言わない。 『じゃあ、ミリィかセピアに言わせればいいのか?ぐち』 「言いませんよ。女は男と違ってねちっこい生き物じゃないんです」 『ほぉぉぉぉ……… それじゃミリィに変わってやる。 いいな!通信きるんじゃねーぞ!』 「はいはい。わかりましたよ」 完璧に聞き流していつの間にか出現させた紅茶のカップを口へと傾ける。 しばしの時間を置くと、画面にミリィの顔が映し出された。 「そちらの旅は順調ですか?ミリィ」 『ケインの言ったとおり、カメもライバル心燃やすほど順調よ。 それよりキャナルっ!リヴァイア星の宇宙港勝手に発射したことだけど――』 言葉の途中で、キャナルは無言でカップの底をミリィへと向けた。 しばしミリィは硬直し―― 『ま、まぁ、あなたのことだから、色々あったんでしょ。 ケインがなんと言おうと、あたしは信じてるわ』 「ありがとうございます♪ いやー、さすがに女の子同士、話が分かりますね♪」 画面には映っていないが、ケインがミリィに文句を言ってる声が聞こえた。 このまま話を続けると、なにかしら、また話が続くだろう。 キャナルはそう判断した。 「じゃ、わたしはこれで。 ケインによろしくと伝えて置いて下さい。では」 そう言って通信を切ると、キャナルはカップをテーブルへと置いた。 底に『来月のお給料、無事だといいですね』と書かれたティーカップを。 そして、キャナルは外へと目を向けた。 こちらに急速に近付いてくる『気配』が一つ。 パトロール艇はすでに振り切っている。 そもそも、パトロール艇にはこのようなスピードが出せるはずがない。 「――さてと。ずいぶんお早いお着きですね。 『ミアヴァルド』さん?」 キャナルは不敵に笑い、そう言った。 戦いは避けられそうにない。 『ミアヴァルド』の開発の追い込みで、あちこちから騒がしい音が聞こえる開発基地、『ファイナル・フォートレス』。 その中の一角、主司令室(メイン・オーダールーム)に一本の通信が入った。 そしてその通信を受け取った場にいる人間は全員沈黙した。 あまりの知らせに言葉すら失って。 そんな中、一人の中年男性がよろよろと外へと歩いていた。 この場の現場監督である彼が持ち場を離れて良いはずがない。 それでも誰も止める者は――いや、止められる者は居なかった。 焦燥をその顔に張り付かせ、ゆっくりと出てきた中年男性に青年は気付き、不審に思い、声を掛けた。 「所長?」 「アレス主任か……」 疲れた顔をアレスと呼ばれる、開発部の責任者へと向けた。 「……どうかしたんですか……?顔色が悪いですよ」 ――そりゃあ、悪くもなるさ…… 所長は声には出さず、その胸の内で呟いた。 「――ヴォルフィードが………やられたそうだ………」 「なっ!?まさか連中が嗅ぎ付けて―――っ!?」 絶望の色を滲ませて、言う所長の声に取り乱しながらアレスは悲鳴を上げかける。 「そうじゃない……そうじゃないんだ……」 力無く、所長は首を振る。 「なら一体……っ!?」 「――我々人間自身だよ…… 敵軍の砲撃を受けたらしい。完成直後にな。 生命反応は……すでにないらしい……」 「なっ―――!?」 今度こそ、アレスは絶句した。 戦争の道具ではないのに、『ヴォルフィード』は撃沈された。 その翼をはためかせる前に。 「はは……我々はどうやら滅びる運命にあるらしい…… 自らが生み出した魔王によって――な。 こいつは……けっさくだな……はは」 「………………………………」 答えないアレスの肩をぽんっと叩き、所長はすれ違おうと歩き出した。 「アレス君。 『ミアヴァルド』の建設は中止だ。 消去(イレイズ)システムのデータも技術者も、『ヴォルフィード』とともに、もういない。 休暇を与える」 つまり、それは『最後に好きなことをしろ』と言う言葉だった。 元々たいして仕事が好きでもないアレスなら喜んで従っただろう。 この宇宙に魔王が現れなければ。 そして、所長の真意のセリフに『最後に』がなければ。 だが、しかし。今のアレスは違うのだ。 「……失礼します」 「――待ちたまえ」 言って歩き出したアレスを、振り返らずに所長が声を掛けた。 「どこへ行く?そっちは仕事場しかないぞ」 「――ええ…… ですから、こっちでいいんです。 ――作業に――戻ります――」 アレスも振り向かず、声だけで答えた。 しかし、所長はその言葉に振り返り、叫んだ。 「はっ!馬鹿なことをっ! 『ヴォルフィード』のなき今――何が出来ると言うんだっ!? もう――終わったんだ――終わったんだよ……アレス君!」 「終わってなんかいないっ!!」 アレスは気が付くと叫び返していた。 右拳を壁へと叩きつけ、油断すれば吹き出す感情を押し込んで。 「我々はまだ生きてるじゃないですかっ! それに――『ヴォルフィード』だって残骸が確認されたわけでもないんでしょうっ!? どんな時でも――諦めない限り、可能性は消えないんですよ。所長」 その言葉に所長は押し黙り、うつむいた。 「『ミアヴァルド』はサポート艦だ。 主役が居なくちゃ話にならん」 「なら――主役にさせるまでです。 この、アレス=アソォートの名にかけて。 ――消去(イレイズ)システムは、僕が作り出します」 「その件に関しては君は素人だっ!出来るわけがないっ!」 「それでも我々は人類の――いえ、宇宙の未来に対する責任があるんです。 僕は闘います。 絶望なんか――してやりません。絶対に」 そう言ってアレスは作業場へと戻っていった。 遠ざかる背中を見つめながら、それでも所長は動けずにいた。 ただ、遠ざかる足音だけがはっきりと聞こえた―― 「『ファイナル・フォートレス』って……言うなれば空母みてーなもんだったんだなー……」 目の前に、遠慮なく宇宙に浮かぶ黒い物体――『ファイナル・フォートレス』を目にして、ついケインは呟いた。 おそらく全長は500Mほど。 船としては大きい方だが、要塞や基地と比べるにはあまりにも小さい。 それでも見る者が見ればわかる。 闇に閉ざされた宇宙の中でも何故かはっきりと見て取れる黒いフォルム。 間違いなく過去の遺産の一つであった。 「遺失宇宙船(ロスト・シップ)の製造工場って言っても、あくまで『ミアヴァルド』専用だから………」 「なるほど……それで移動していた訳ね」 セピアは自分がよく居たと言うだけあって、『ファイナル・フォートレス』の居場所を指し示すポイントレーダーを持っていた。 それでも、『ファイナル・フォートレス』が移動したりしたので、少々着くのに時間がかかってしまった。 「でもまぁ……エネルギーの無駄遣いしないように移動はたいしてしないんだけどね。 それより――行きましょう。中へ」 「おう!」 「了解っ!」 そう言ってケインはパネルを操り、船をセピアの指示通りの位置へと近づけた。 「――あそこか……」 眼下に見えた、接弦チューブの方へと慣れない船ながらも巧みに操り、接弦を完了させるケイン。 三人は再び侵入を始めた。 「……今回は人を乗せていないんでしょう? それとも、お年頃の可愛い女の子と話すのは苦手だとでも言うんですか?」 話しかけ、対峙している相手――『ミアヴァルド』に返事がなく、キャナルは再度声を掛けた。 しばし待ってみるが、それでも返事はない。 「無口でも、かわいげがない無口は嫌われますよ」 それでも返事はない。 溜息をつきながら、キャナルは言った。 「――事情は、セピアさんから聞いています。 あなたとわたしが争う理由はないはずです。 わたしにはあなたと闘う意思はありません」 腕組みをしながら、眼前の船を見据えながら、静かにキャナルは言った。 『そちらにはなくても――こちらにはある』 やっとの事で帰ってきた声は、ずいぶんと素っ気なかった。 「心当たりがないんですけど?」 『……………………………』 「………本気で嫌われますよ。あなた」 溜息をつきながら、頭を掻くキャナル。 突如、『ミアヴァルド』のエネルギー反応が増大した。 「結局はやるしかないんですかねっ!」 言って、右手を横に一閃させた。 それと連動して砲門が『ミアヴァルド』へと向けられる。 一瞬先に、相手の砲撃。 「サイ・バリア展開っ!」 ぶうぃ………んっ! ソードブレイカーを青い光が包み込む。 ごかきゅぃぃぃぃぃっ!! 耳障りな音を立てて、光はバリアをかすめて過ぎ行き虚空へと消えた。 「出力はあちらが上か……それでも、やるしかないですねっ! サイ・ブラスター発射っ!」 声と同時に、バリア・カット。 そしてサイ・ブラスターが『ミアヴァルド』の所へ直進する!! 闇をかき分け、光は『ミアヴァルド』へと突き進み―― ――捕らえた! 思った瞬間、『ミアヴァルド』の機体が淡く輝き出す。 理解した直後、サイ・ブラスターはかき散らされていた。 「サイ・バリアまで…… ――ったく、わたしに仕える騎士じゃなかったんですかねぇ、『ミアヴァルド』って」 『申し訳ないとは思って言る。 名前に関してはな』 抑揚のない声がキャナルへと届いた瞬間『ミアヴァルド』は動き出していた。 砲門の死角となり安い場所――つまり、有利な角度に移動しようとしているのだ。 ――そうはさせないっ! キャナルもその後を追うように走り出す。 「申し訳ないと思っているのならっ! 理由ぐらい教えてくれてもいいんじゃないですかねっ!」 お互いの船の高速での移動で辺りの星が曲線を描いてる中、会話は続けられた。 『――力づくで言わせてみるんだな』 「そうですか。 それじゃあお望み通り――と、いきたいところですけどね。 そういう力押しって嫌いなんですよ。わたしは」 にっこりとキャナルは微笑んだ。 再び『ミアヴァルド』は黙り込み――代わりに砲撃を再開した。 四つの砲弾は弧を描くようにソードブレイカーの横へと回り込む。 ――ミリィならこんなのすぐにたたき落としてくれるんですが……居ない人を頼っても仕方ないですね。 キャナルは更に加速する。 その背後で、互いに破裂しあう砲撃の衝撃を受け、更に加速する。 二つの船の距離が縮まり、キャナルはリープ・レールガンを発射した。 効果範囲から自船は僅かにはずれている。 加えてこの至近距離。逃れられるはずがない。 そう判断し、キャナルはエンジンをカットし、バーニアを逆噴射した。 「ケイン!プラズマ・ブラ―――あああああっ!しまった今はいないんだったぁぁぁぁぁっ!!」 思わず頭を抱えるキャナル。その正面には右舷後方部が欠けた『ミアヴァルド』。 直前で自身の砲撃を右後方で破裂させ、その衝撃も加味して回避行動をしたらしい。 その衝撃で右後方部が欠けたと言ってもそれはわずか。 それでも、その判断は無茶である。 「ちょっと!『ミアヴァルド』! なんて無茶な戦いするんですかっ!? そっちにマントを着た男の人乗せてないでしょうねっ!」 『後半は意味が分かりかねるが――― 無茶は承知の上。 なにより元々は私より高位の船だからな。そちらは』 「言葉の隅に『今は違う』とでも言いたげですね」 『ミアヴァルド』は答えなかった。 それでもキャナルにはわかっていた。 同じ遺失宇宙船(ロスト・シップ)同士だけがわかる感覚で。 彼は笑ったのだということに。 作業は熾烈を極めた。 一般の作業員達には情報を操作し、こう知らされていた。 『ヴォルフィード』は今だ健在。現在進行形で建設中である、と。 本当のことを知っているのは主司令室(メイン・オーダールーム)とアレスのごく一部だった。 万が一、またも敵軍に発見された場合に備えて、話し合いが出来る程度、最悪の場合には相手の撃沈を持って基地を、そして『ミアヴァルド』を守れるよう、基地内、基地外のガードシステムも強化された。 ただのサポート艦とはいかなくなってしまったため、計画は大幅に遅れた。 計画の遅れは焦りを生み、焦りは進行を妨げる。 そんな悪循環の中で、最悪の事態が訪れた。 敵軍ではなく――魔王に彼らは発見された。 基地は瞬く間に混乱に陥った。 闇の魔王は死の宣告を彼らに与える。 ――汝の恐怖が汝を殺す―― ――汝の闇が汝を包む―― ――恐怖するなかれ―― ――命惜しくば―― それは警告ではなく、耳にした者を冥府へと強制的に旅立たせる、死の呪文。 ――『システムダークスター』。 一人、また一人と人々は倒れていく。 苦悶の表情をその顔に張り付かせて。 そんな中一人の所員は『ミアヴァルド』のメインコンピューターの側にいた。 アレス=アソォート。 「負……っけてたまるか……!!絶対に……! この船は最後の希望なんだ!」 額から流れ落ちる汗を拭おうともせずに、アレスはひたすらプログラムを打ち込んでいく。 まわりに五感は解放しない。 それがかろうじて恐怖を遮断する手段。 思考能力、判断力すら手放して、アレスはただプログラムを打ち込んでいた。 すぐ側で彼の仲間が次々と肉の塊へと果てていくことに彼は気付かない。 いや、理解しようとしないのだ。 彼は声をあげて叫んだ。 ともすればあふれ出そうになる恐怖を押さえ込むために。 「『ヴォルフィード』だってまだわからないっ! オレが造った船だぞ……!簡単に消えられてたまるかっ!!」 邪魔な機材を外へと乱暴に放り出し、彼はプログラムを起動させた。 淡くパネルが輝き出す。 「主任、アレス=アソォート。 目覚めた君に命令を与える。 もっと世話してやりたかったが、無理らしい。 悪いな……こんな中途半端な状態で…… ――これからは自己の判断で行動しろ。 そし………てっ!こ……の宇…宙を……頼む……」 ――モニター、起動。システム確認。動作環境やや難あり。設備…… 次々と無機質な声が船の中でこだました。 その時すでに、アレスは倒れ込んでいた。 息が苦しい。 視界がかすむ。 だが、自然と出たのは――笑みだった。 仰向けに寝転がりながら、アレスは指を天へ――いや、宇宙(そら)へと向けた。 「ざまあみやがれ。 もうお前ら魔王に未来はない。 今度は……オレが宣告する! いつかお前達は滅びる。何百、何千、何万、何億――どんなにかかろうとも、必ずだ! こ……れは、予言ではなく……宣告……だ! ざ……まあ………みやがれ……クソ親父!! てめーの……作った……悪夢は……………………」 ぱたりと、アレスの腕は床へと落ちていた。 最後まで諦めず、青年は生きていた。 声も出なくなり、床に身をゆだねたまま、青年は『ミアヴァルド』の確かな気配を感じとる。 青年は信じていた。 人間の持つ負の感情が決して正には勝てないことを。 負の感情はやがて滅びることを。 青年は信じていた。 悪夢がいつか終わることを―― そして、『ボーディガー』の砲撃が、基地を貫いた。 『ガードシステムナンバー068起動。 侵入者を駆除します』 「うどわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 ざうぃぃぃんっ!! 突如壁から顔を出した無数の砲身をケインは声と同時に斬りとばしていた。 それでも無事だった砲身が侵入者―――ケイン達を見つけ、発射。 慌てて物影へと隠れながら、それでも追いすがる光線をセピアが横から撃ち落とした。 「罠があるって言わなかったっけ? 遺失宇宙船(ロスト・シップ)を守る基地なのよ?甘く見てたんじゃないでしょーね」 両手に光を灯したサイ・ブレードを構えるセピアは溜息をついて言った。 彼女は両手に、二本のサイ・ブレードを持っている。 つまり、二刀流である。 あいも変わらずバンダナも増幅器(ブースター)もつけていない。 彼女の並外れた精神力が逆境の中でとうとう目覚めた――訳では決してない。 この基地、『ファイナル・フォートレス』には、サイ・エネルギーを保存、蓄積する技術が保有されていた。 長い間この基地で生活していたセピアのサイ・エネルギーを本人が気付かない程度、少しずつ保存していたのである。 そして、そのエネルギーはセピアの持つサイ・ブレードにリンクしており、この『ファイナル・フォートレス』内ではバンダナ、増幅器(ブースター)なしでも使用可能だった。 なんでも、『サイ・コンデンサー』と言う技術らしいが、ケインには理解不能だったし、それより罠の回避法が知りたかった。 「甘く見てなんかねぇっ! だからってわかってりゃ避けられるってもんでもねぇだろーがっ!」 「そ……それは……まあ、おいといて……!!」 ぜえぜえと肩で息するミリィはセピアを見ていった。 「なんでセピアは罠が発動しないのよ……?」 「あたしの場合は『ファイナル・フォートレス』に登録されてるから…… ま、頑張ってね」 「あああっ!卑怯だぞっ!」 「卑怯って言われても……あ。右」 「でうあだぁぁぁぁっ!!」 訳のわからん悲鳴を上げて、ケインはその場を大きく飛び退いた。 過ぎ行く光の矢も、セピアの直前に弾け散る。 その光景を見て、ケインは気付いた。 「おい、セピア。 あんたはどんなことがあってもこの『ファイナル・フォートレス』内では攻撃受けねーのか?」 その言葉に壁に寄りかかってあくびをかみ殺しながら、成り行きを見守っていたセピアは首を傾げながら、 「多分、登録が解除されない限りは……って、なに?その手は?」 問いかけにケインは無視し、セピアを後ろから羽交い締めにした。 「ミリィっ!こっちだっ!」 「な、何やってんのよっ!?ケインっ!」 「いーから来いっ!」 言われてミリィはおとなしくケインの横へと辿り着く。 とたん発動する罠。 冷たい汗がセピアの背中を走り抜ける。 「ちょっ、ちょっと待ってっ!ストップ!タイムっ! まさか――っ!!」 「そのまさかだっ!!」 ミリィを狙う光の矢とミリィの間にセピアをちょいと押して割り込ませた。 とたんに消失する矢。 「おーしっ!ミリィっ!盾も手に入れたことだしとっとと進むぞっ!」 「誰が盾よっ!放しなさいっ!」 「い、いーのかなー……」 ばたばたもがくセピアを強引に羽交い締めしながら、走り出すケインに続くミリィ。 「良くないっ!放してって―――」 言葉半ばにセピアは絶句した。 背後から迫り来る無数の矢を視界に捕らえて。 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 とりあえず、セピアにとってのホラーゾーンはまだ続きそうだった。 長い間、彼は空を見つめていた。 他に出来ることは何もなかったから。 星の流れる様を、大地に草が芽吹く様を。 彼はひたすら眺めていた。 『ボーディガー』にその身を貫かれ、彼を作り出した者達ももういない。 目覚めた瞬間、誰かに何かを言われたようなのだが、思い出せない。 メモリーに損害が出ているのかも知れない。 自分が本来制御するはずの所まで支配が届いていない。 ただ空虚で、寂しい。 大事なものがなくなった感覚。 命令が思い出せない。 記憶が――ない。 ただ虚ろで、自分が溶けてしまいそうだった。 いや、そもそも――自分とは一体なんだ? 彼は答えのでない疑問を抱いた。 そして答えが出ぬまま、彼は一人の少女と出逢う。 セピア=スカイ。 右舷被弾。旋回能力5%減。 目標、今だ健在。 敵艦出力こちらの132.43%。 回避能力98.25%。 勝率―― 「――っと。ストップ。ストップ」 あまりに高速に判断する自分の処理能力に、慌ててキャナルは待ったをかけた。 勝率なんてあてにならない。 それは彼らに教わっていたことである。 「……わたしがそう思うのも何ですがねー……」 苦笑を浮かべながら、再び画面に浮かび上がる『ミアヴァルド』と対峙する。 サイ・ブラスター発射準備完了。 リープ・レールガン発射準備完了。 グレネード弾発射準備完了。 準備が完了した全ての砲門の角度、発射速度、瞬時に計算し、更にそれに対する敵の回避ルートを割り出して―― 「さてと、行きますよっ!」 ソードブレイカーは再び加速した。 通常兵器での牽制射撃。 それでも万が一のためか『ミアヴァルド』は回避行動を行う。 その回避行動に映る一瞬の隙を狙い、キャナルはサイ・ブラスターとリープレールガンを発射する。 サイ・ブラスターに混ざったリープ・レールガンに気付いたか、相手は急に減速、サイ・ブラスターとリープレールガンをやり過ごし、通常兵器をその身に受けた。 当然相手は遺失宇宙船(ロスト・シップ)。 ダメージはない。 『ミアヴァルド』はその場でこちらへと砲身を向ける。 ――まずいっ! キャナルは砲撃と船の操作で手一杯。 どうしてもバリアの展開などの動作には一瞬のタイム・ラグが生まれる。 そして、その一瞬は戦場にはあまりにも充分な時間だった。 青白い閃光が船体に直撃する。 「人を盾にするなんて、悪党っ!?あなた達はっ!?」 「『達』じゃないぃぃぃぃっ!!」 「人聞きのわりーこと言うなっ! 俺は合理的な手段をとっただけだぜっ!」 なぜだかぱったりと止んだトラップを過ぎて、三人はひたすら走っていた。 目指すは『ファイナル・フォートレス』中心部、主司令室(メイン・オーダールーム)。 「ものは言い様って奴っ!? あたしは認めないわよっ!」 「しつこい奴は女にモテねーぜっ!」 「あたしは女にモテなくていいわよっ!」 しつこく食い下がるセピアに軽口を返し、訳の分からない言葉の応酬をする二人。 「ちょっとケイン!セピア!ストップ!」 ミリィが制止をかけたのは、二人で言い合いをしながら通路に片足を出した瞬間だった。 直後、銃声が響き渡る。 慌ててその場を飛び退くケインにセピア。 「ちっ、奴ら隠れたぞっ!」 「構わんっ!追うなっ! この場で迎撃するっ!」 発砲した奴らもがやがやとわめき立てながらも銃口の持つ冷たい殺意はケイン達を待ち、静かにその場に佇んでいた。 物影に隠れると、セピアは頭を抱える。 「しまったぁぁ…… こっから先へはこの道を通らないと進めないわ。 だからと言って、連中が待ちかまえてる通路は隠れるものもない上にそれなりに距離があるし……」 「だからって出ていったら蜂の巣だ。 さっきの銃声とこの気配じゃあ、全弾かわしきって突っ込むなんて無茶だぞ」 「奴らの側にトラップとかないの?それをわざと発動させるとか――」 「――で、ミリィ。どーやってトラップが発動するほど連中に近付くんだ?」 「う゛っ…………!」 ケインに突っ込まれ、呻くミリィ。 「トラップ……そういう手があったわね」 その横で、セピアは納得したように顎に手を当てて頷いた。 「なんとかなるのかっ!?」 「ここはあたしの家も同然だからね。 構造はだいたい把握してるわ。 援護よろしくっ!」 言って、確認も取らずにセピアは走り出していた。 口でなにかケイン達には意味不明の言葉を言って走っていっているが、頭がどうかしたようには見えない。 仕方なしにケインとミリは通路の壁に張り付き、その様子を見守る。 やがて通路へと無防備に飛び出したセピアは右手の手のひらを前へと突きだした。 「―――――――!!」 聞き取りづらい言葉を叫ぶセピア。 そしてその無防備な彼女に銃弾が彼女の身体にめり込む――はずだった。 彼女の突き出した右手の手のひらの先に生まれた光さえなければ。 「なっ、なんだっ!?」 「一体何が起こった!?」 奥で銃の次弾を放つことも忘れて動揺するグレーの服に身を包んだ男達。 ケイン達も同じ思いだったのだが、とにかく今は疑問の念を押さえつけて成り行きを見守った。 再びセピアは正体不明の言葉を紡ぎ出す。 今度は声と同時に右手で何かの線を描くように、動かし、さらに左手も加え身振り手振りが激しくなる。 それはあたかも、魔道士が呪文詠唱時の印を切る動作のように。 「ひっ………!」 怯えた男の一人が発砲するが、またもやセピアの前に現れている光の壁にむなしく弾け散る。 そしてセピアが右の人差し指を天へと突き上げた後、男達の足下へと振り下ろし、声高に叫ぶ。 「――――――!!」 完全に理解できない言葉と同時に、足下から生まれ出た閃光が男達の身体を包み込んだ! 光に包まれた男達はびくんっ!と大きく脈打ち――そのまま崩れ落ちる。 「なっ、なにをしたんだっ!?」 「魔法を使っただけよ」 「な、何を馬鹿な……」 「遺失宇宙船(ロスト・シップ)があったんだから、魔法があったっておかしくないと思うけど?」 動揺する残った男達の言葉に、さも当然のように答えるセピア。 「ば、化け物だっ!!」 誰かが悲鳴を上げると、男達の戦意が恐怖へと変わっていく。 セピアは冷笑を浮かべると、再び正体不明の言葉を紡ぎ出す。 「ひぃぃぃぃっ!」 情けない悲鳴を上げ、完全に怯えた男達を撃退するのに、ケイン達はさして時間はかからなかった。 「セピア先生ぇ。種明かしをお願いしたいんですがね」 最後の一人を気絶させたケインは疑いの眼差しをセピアに向けてそう言った。 「まさかほんとーに……?」 好奇心半分、戸惑い半分で語りかけるミリィ。 「あー……魔法って言ったヤツ? 単なるプログラム言語よ。 ただ、『ミアヴァルド』が作られたときの言葉だから――ま、言うなれば、遺失言語(ロスト・ワーズ)って、ところかしら」 20世紀後半にも、音声でテキストを入力できるシステムがある。 それをプログラム言語で音声入力させて罠を起動させたのが先程である。 「その割には身振り手振りが大げさだったみてーだが……」 「ああ。それね。 単なるハッタリよ。びびってくれてやりやすかったじゃない」 化け物呼ばわりされたことなど何処吹く風で面白そうに言うセピア。 「……と、言うことはもしかしてっ!? さっきまであたし達が逃げ回っていた区域も攻撃中止のプログラム言ってくれれば良かったんじゃないのっ!?」 「……あ……」 「『あ』じゃなぁぁぁいっ!!」 ミリィはセピアの襟元を掴んでがくがく揺さぶった。 「ちょっ!ミリィさんタンマっ!」 「構わん。ミリィ。存分にやれ。俺が許す」 セピアの助けをケインはあっさり却下した。 「らぢゃーっ!!」 「ちょっ!本当に苦し………!」 「――その辺にしていただけないでしょうか?」 「――――――っ!?」 突然聞こえた声に、一同は慌てて振り向いた。 ミリィやセピアはともかく、ケインはすでにサイブレードを構えている。 「誰だ?てめーは」 油断なくサイ・ブレードを構えながら、ミリィとセピアを庇うように回り込むケイン。 それでもケインの額には汗が流れていた。 相手は全く気配を感じさせずに現れたのである。 そして今、なおも。 「――初めまして。僕はアレス=ミアヴァルド。 この『ファイナル・フォートレス』及び、『ミアヴァルド』の主制御システムです。 僕の主殿がお世話になったようで」 大げさな動作で一礼するアレス=ミアヴァルド。 その割には嫌みがないところが彼の特長なのかも知れない。 「『主殿』……?」 きょとんとした顔でミリィは放した右手で目の前で呼吸を整えるセピアを指差す。 向けられたセピアはまだ呼吸が整えきれてないらしく、ただ黙って頷いた。 「『アレス』……? 『主制御システム』……? つーことはキャナルみてーなもんか?」 「そうですね。ヴォ……『ソードブレイカー』のキャナルさんのような役目のものだと思ってくれて結構です。 僕の場合、この『ファイナル・フォートレス』内に限ってこのように実体を持てますが」 言って、人の良さそうな笑みを浮かべ、壁をこつこつと叩いたた。 「なに猫かぶってんのよ。アレス。 あたしに対していつもタメ口でしょーが」 「初対面の人にはこう言った方が便利なんだよ。不快感を与えにくいしな」 呼吸を整え終わり、ジト目で言うセピアに、しれっと答えるアレス。 「ったく、あんたは相変わらずね…… ま、無事で何より」 苦笑を浮かべながらも、安堵の息をもらすセピア。 「そうでもないさ。――残念だがね」 言ったアレスの左手がぼとり、と落ち、霧となって消えた。 「アレスっ!?」 顔色を変えてアレスに駆け寄るセピア。 アレスはただ心配をかけまいと微笑みを浮かべるのみ。 「――ブラックボックスの『A−T−Z』ファイル。 ……主制御システムの乗っ取り、及び書き換えのデータ……だな?」 サイ・ブレードをウェストポーチに収め、ケインは言った。 ブラックボックスでのデータ収集時、ケイン達はそのデータにぶち当たった。 つまり、主制御システムの乗っ取り及び書き換え。 例えばこの技術を使用すれば、キャナルですら書き換えられ、場合によってはケイン達を砲撃させることも可能である。 もちろん、一般のコンピュータならともかく、遺失宇宙船(ロスト・シップ)の主制御システムに影響を与えられるような技術は現代にはない。 ナイトメアに保有されていたデータが星間警察(U・G)、宇宙軍(U・G)のいずれかに回収され、リヴァイア星の海奥深くに保管された。 そして――それをガルズが持ち出し、『ファイナル・フォートレス』へと乗り込んできた。 「――ええ。そうです。 僕としたことが……油断しましたよ。 奴らがそんなものを持ち込んで来るとはね」 さすがにキャナルとは違い、脂汗を滲ませるという芸は出来ない――と、言うかしないようだが、それでも苦痛は感じて取れる。 「それでもまだ無事なのね?良かった」 「――正直言ってぎりぎりです。 今ここにこうしていられるのも、そんなに長くは持ちません」 何とか場をなごまそうと言ったミリィの言葉に、アレスは首を横に振った。 「わかった。俺達が何とかしてやるからおとなしく待っててくれ」 「ええ。ありがとうございま―― ――ぐうぅぅぅぅぅっ!!」 笑顔で差し出した右手がケインへと届く前に、アレスは頭を抱え込んで倒れた。 「アレスっ!?」 「はは……情けねーな……」 言いながらも、アレスの身体は湯気が沸くように少しずつ揺らぎ、白く染まって消えていく。 ――時間はあまりない。 「急ぐぞっ!悠長にしてられねぇっ!!」 「で、でも……アレスさんをこのまま置いてくのは……」 「ここにいても何にも変わらねぇっ! 奥の主制御システムのプログラム自体を何とかしなきゃ何ともならねーんだっ!」 「わ……わかったわっ!」 そう言ってすでにマントをたなびかせ手前を行くケインの後を追うミリィ。 セピアは少しだけためらって、立ち上がった。 「――アレス……必ず助けるからね――」 振り向きもせずにそう言って、セピアは走り出した。 前へと。 「期待……している……」 その場にはくぐもった音声だけが現れた。 残りの力を振り絞ってセピアへと会いに来た、青年の姿は消えていた。 初めて出逢ったとき、少女は脅えもせずにこう言った。 「ありがとう、お兄ちゃん」 そこは海底だった。 文字通り海の底まで沈んでいた『ファイナル・フォートレス』に久しぶりに舞い込んだ客人は、恐怖も、笑みも、涙もみせない少女だった。 先程、潜水艇で一人で漂う少女に気付いたのが事の始まりだった。 はじめのうちは、『ファイナル・フォートレス』の事など気付かない位置にいた少女の潜水艇は、突如動作不良を引き起こした。 完全にコントロールを失い、狭く、暗い闇の中に取り残されていた。 そして、少女は泣き続けていた。 彼はほんの気まぐれで、少女を自身へと招き入れた。 いくらシステムの大半が制御不可能だと言っても、酸素の供給ぐらいはコントロールできることだし、何よりセンサーの届く範囲で泣き続けられては耳障りだった。 「とっとと家へ帰れ。邪魔だ」 即席で作り上げた立体映像に、冷たく言い放らせた。 「おうちに帰っても……誰もいないもん」 「――親や兄弟はどうした?」 「先週死んじゃった」 「……………………………」 この時彼には知る由もなかったが、少女の親兄弟は、交通事故でなくなっていた。 ある買い物をしに、少女一人を取り残して。 バースデープレゼントである。 少女を驚かせようと、家族は意気揚々と車に乗り込み――帰らぬ人となった。 少女が一人で潜水艇なんてに乗り込んだのも、家族旅行で海底旅行をしたときの思い出にすがってのことだった。 「みんな……あたし一人置いてけぼりにして…… きっとあたしが悪い子だったから……! だから……うっ、ひぐっ!」 少女は大きな瞳に涙を一杯に溜め込んで泣くのを必至にこらえていた。顔をぐしょぐしょに歪ませて。 「泣きたいときは泣け。 誰も止めん」 「でも……っ!ひっ……」 「ここは海という涙の底だ。 泣きたいところに泣ける場所なんだ。 気にすることはない」 言って今度こそ、少女は大声を上げて泣き出した。 それ以上に、彼は狼狽していた。 自分は鬱陶しいと思ったから中へ入れたのではなかったのか? それなのに、自分は目の前で今、泣けと言った 矛盾している。 何故だ? エネルギー体で作り出した仮の実体の腕の中で泣き続ける少女を見ながら、彼は混乱しながらも学習していった。 それは、人の温かみだったのかも知れない。 「―――ふうっ。危なかったですね」 額の汗を拭いながら、キャナルはそう漏らした。 目の前には、右翼を半ば程までもげられた『ミアヴァルド』の姿。 先程、体勢を悪くし、サイ・バリアも張れない状態にキャナルは追い込まれ、『ミアヴァルド』は砲撃を開始しようとした。 その砲撃が発射されればソードブレイカーは直撃。 かなりの被害が出ていたことであろう。 ところが――である。 その前に発射したサイ・ブラスターが機動を変えて、直撃したのである。 『何をした――っ!?』 聞こえてきた声には疲労と、狼狽の気配を多分に含ませていた。 キャナルはにっこりと微笑みながら、 「ちょっとお料理を(はあと)」 ぽんっとシェフの格好へと姿を変えるキャナル。 胸の首のスカーフを直す仕草も、誇らしげであり、楽しげである。 実は、サイ・ブラスターの機動を変えたのは、攻撃の合間に射出した隔壁だった。 3メートル四方程度の小さなものなのだが、贅沢なことに簡易サイ・バリア付である。 そこにはずれたと見せかけたサイ・ブラスターを打ち込み、それを弾き散らさせることで目標へと直撃させた。当然の事ながら、おとりとして放ったリープ・レールガンは当たらず通過するように計算して撃っていた。 ともあれ、その隔壁もあまり何度もバリアの展開は出来ないのだが、一瞬ならば展開は可能。 ……実は対ミリィのお料理秘密兵器だったりするのだが。 ナイトメアの決戦で、ディグラディグドゥまでの道のりに、何枚も隔壁を閉ざし、更にバリアを展開させるという防御策を興味本位で真似てみたのである。 本来が厨房用だったため、自動修復装置を応用して所々デザインして飾りを作っている最中に、ミリィに『お料理』されたときはくらくらしたものである。 それでも脅かそうと思って黙っていたのだが―― 「サイ・ブラスターを弾き飛ばすお料理道具…… ……我ながらちょっぴし豪華すぎましたかねー……」 額に汗を流しながら、苦笑するキャナル。 確認しなくてもやりすぎである。 『戯れ言を……っ!!』 「さてと――どうします? 今の攻撃で旋回能力が大幅にダウン。 さらに、右翼の砲門は殆ど使用不可能ですね。 まだ続けますか?」 悪態つく『ミアヴァルド』を見据え、キャナルは腕を組みながらそう言った。 『――もちろんだ』 「正気ですかっ!?」 『知るものか。 私は闘い続ける』 外傷から見ても、表情から取っても、気配からも、『ミアヴァルド』は疲弊している。 滅びと沈黙、静寂、絶対なる秩序を求めていたナイトメア達と『ミアヴァルド』は違う。 『ミアヴァルド』は何を求めて闘うのか。 キャナルはどうしてもわからなかった。 「もういい加減教えてくれてもいいんじゃないですか……? なぜわたしとあなたは――争わなくてはならないのですか――?」 キャナルはむしろ静かに問いかけた。 |
11041 | 『朋友 まみえる』 5 | 白いウサギ E-mail | 7/15-17:01 |
記事番号11036へのコメント 5 『ミアヴァルド』 セピアと協力し、何年もかけて『ファイナル・フォートレス』、『ミアヴァルド』は修復された。 修復過程で自分の記憶回路、制御回路がいくつも分断されて機能するようになっていることを、彼は知る。 いくつものブロックに別れており、どれか一つがやられても、独立したそれぞれは無事となるように。 制作者は――アレス=アソォートはかなり用心深い人だったらしい。 そう――回路を全てつなぎ終わってみれば、彼は全てを思いだしていた。 どうして自分は作られたのか。 何のために自分はここに存るのか。 しかし――それでは―― 「どうしたの?アレス」 黙り込んでいた彼を心配するように、セピアは問いかけた。 少女が現れて以来、彼は『アレス』と名乗っていた。 初めての来客の少女――セピアは、暇さえあれば、いつでも『ファイナル・フォートレス』に遊びに来ていた。 最近では自宅にいることの方が少ないぐらいだ。 「いや……なんでもない……」 巻き込むわけにはいかなかった。 初めて出逢った少女を、暗い闇の中での戦闘には。 すでに彼女は深海の闇に飲まれかかった経験がある。 もう二度とそんな思いはさせたくなかった。 「ふうん…… それで――昔の人は何だって?」 「……あ、ああ。宇宙を守れってさ」 「へえ……」 信じていないのか、彼女は曖昧に言って、ソファーの上へ寝ころんだ。 『アレス』にとって、世界よりも、この少女の方が大切だった。 それでも今もなお悪夢が存在し、セピア達が住む世界を壊そうとしているのなら――放って置くわけにはいかない。 アレスはセピアには内密に小型探索基地をいくつか作りだし、宇宙へとばらまいた。 ――宇宙を頼む…… アレスは一人静かに頷いた。 「遅かったな――」 青白い光とも霧ともつかぬものをまとわせたその者は、厳かにそう言った。 セピアの案内のもと、主司令室(メイン・オーダールーム)に突入したケインがドアをぶち破るなり聞こえたその声と雰囲気に、三人は硬直した。 「なっ、なんだっ……!?」 部屋に満ちた異様な空気にケインは足を止める。 身体にまとわりつく青白い霧が体の中へ浸食しているような錯覚を覚える。 体が重い。 襲い来るプレッシャーに抵抗しながら、ケインは部屋の中へと進んだ。 声の主は逆光でまだ見えない。 ごとっ…… ケインの足下に、重い何かが当たった。 思わず足下に視線を送り、絶句する。 「ガルズ……?」 間違いなく、そこにはソードブレイカーに攻撃を仕掛けてきたガルズ=ゴートが倒れていた。 通信で顔を見ているので間違いない。 耳からずれ落ちたサングラスの下には恐怖とも狂喜ともつかない表情がそこにはあった。 ただ一つ確かに言えることは――まず普通ならこんな風に『死なない』ということ。 「この人……?」 「ああ。 ――死んでいる」 後ろでおそるおそる覗き込みながら言うミリィに、ケインははっきりとそう告げた。 「あんたが――やったのか?」 「――ああ。私がやった」 答える影。 声にも、動作にも抑揚は感じられない。 「彼らの希望通りの夢を見させ――眠りについた。 ただそれだけだ――」 その影の言葉に、その声に反応した者が居た。 「アレ……ス……?」 呆然と呟くセピアに、黒い影は首を横に振る。 そしてゆっくりと前へ歩き出した。 「私は『ミアヴァルド』だ。 『アレス』はもういない」 「嘘だっ!! アレスはっ!?アレスは何処に行ったのっ!?」 「ちょっと待てセピアっ!落ち着けっ!」 取り乱すセピアの肩をケインが押さえつけた。 それでもセピアはその手をはねのける。 「放してっ! アレスはっ!? あなたは――――っ!」 言葉の途中でセピアは凍りついた。 こちらへと歩み寄った『ミアヴァルド』の顔がディスプレイの微かな輝きを受けて浮かび上がる。 歳の頃は二十歳前後。 金の短髪。 かつて大昔に登場する宮廷の騎士の礼服とも、軍服の礼服ともつかない、変わった服を着込んだ青年。 そして、以前と同じディープ・ブルーの瞳であり、違う瞳。 その目はただひたすら、冷たい。 「言っただろう。私は『ミアヴァルド』だ。 アレスはおそらくもう二度と姿を表すことはない」 「遅かった……?」 ミリィが渇いた口でそう言った。 沈黙が場を支配する。 ケインは強く拳を握りしめた。 「なんでこんな事をした?」 「――宇宙を守ることこそが我が使命―― よって、宇宙に害為す者を滅ぼした。 ――ただそれだけのこと―― 我が名、ミアヴァルドの名に置いて」 言われて、すでに骸と化したガルズの方へと目をやるケイン。 「確かに――こいつはまともなヤツじゃあなかったろうよ」 「ケインっ!?」 非難の声をあげるミリィを無視してケインは続けた。 「だがな――こういうやり方はねぇんじゃねーか?」 男が危険だから消去する。 それだけなら方法はいくらでもあった。 それなのに、わざわざ狂気の淵へ追い込み、精神崩壊を引き起こさせてから殺した。 ケインには、それが許せなかった。 「手段は選ばん。 この宇宙にこの男は必要なかった。 だから処分した――」 「処分だと………? ――一つ教えておいてやる。 黒竜の騎士(ヴォルフィード・ナイト)『ミアヴァルド』さんよ。 てめぇのやったことは――てめぇが敵対する魔王『ディグラディグドゥ』と同じだぜ」 「な……んだと……?」 「てめぇがやってるのは悪夢を押しつけようとしてきたナイトメアの連中と一緒だっつってんだよ。 ――否定できねーだろ?」 「違うな。私はこの宇宙を救うためにここにいる。 この宇宙にその男は必要なかった。 そして――お前達も必要ない」 「な……何を言って……?」 麻痺銃(パラライズ・ガン)を構えることすら忘れて、ミリィは呟いた。 「この世界にあるはずの無い力は必要ない。 遺失宇宙船(ロスト・シップ)――『ヴォルフィード』も。 この『ファイナル・フォートレス』も、『ミアヴァルド』も―― ここに存在するだけで争いの種になる。 過ぎた力は必要ない。 ケイン=ブルーリバー。 ミレニアム=フェリア=ノクターン。 セピア=スカイ。 お前達も、この世界の人間の本来あるはずのない力を持っている。 消えるべきだとは思わんか?」 ケインは精神力と、船の旋回能力を。 ミリィは射撃の腕。 セピアは敵の弱点の探知と遺失言語(ロスト・ワーズ)。 『ミアヴァルド』は、本来人間にはあるはずのない能力だという。 だが、しかし―― 「思わねーな」 「思わないわね」 ケインとミリィの二人は迷うこと無く答えた。 「そうか――だが――私が殺す」 そういって、『ミアヴァルド』は右手をかざすと、そこにはサイ・ブレードと同じ光が灯った。 サイ・コンデンサーはここにも供給されている。 「へっ!やれるもんならやってみろっ! 暴走した正義を振りかざすてめーに負けるつもりは全くねぇっ!」 「ケインに同感っ!」 それぞれの獲物を構えて、二人は駆け出した。 呆然とするセピアを残して。 「殺す……? アレスが……あたしを……?」 瞳に灯る光を弱めて、セピアは床へ崩れ落ちた。 10年以上共に生活した仲間にそう宣言され、セピアの頭はからっぽになっていた。 仲間の――アレスの姿で、アレスの声で、殺すと言われたのだ。 『ミアヴァルド』と名乗った青年は、冷たい視線をセピアに投げかけるのみ。 ――違う。絶対に違うっ! 「――最後にもう一度聞くわ…… アレスは何処?」 「すでに我が内に」 淡々と答えるミアヴァルド。 感情が吹き出すよりも先に、両手に光が生まれていた。 「嘘だっ!!」 先に駆け出していたケインとミリィを追い抜いて、セピアは大きくサイ・ブレードを振りかぶった。 「ちょっと待てっ!セピアっ!」 ケインの制止の声を無視し――いや、耳に届いていないまま、鋭く剣を振り下ろす。 だがしかし、ミアヴァルドは無造作にその一撃を受けとめた。 右手に光を生み出して。 めげずに何度も斬撃を繰り返すセピア。 それでも――結果は同じだった。 全ての刃はミアヴァルドに届かない。 「――もし嘘なら、一撃ぐらい当たっている。 何故お前の刃は私に届かない? ――答えは単純だ。 お前の太刀筋のデータを持っているアレスが我が内にいるからだろう?」 「くっ!」 「目障りだな――消えろ」 ふぅい……ん…… ミアヴァルドの声と同時に、手にしたセピアのサイブレードの発信器から、光は消える。 『ファイナル・フォートレス』からのサイ・エネルギーの供給回路を断たれたのである。 つまり、これは少なくともこの部屋は『ミアヴァルド』の支配下にあるという事だった。 「こ……のぉ……っ!!」 刃の出ない柄を握りしめたまま、ミアヴァルドへとの間合いを詰めようとするセピア。 「――――っ!?」 不意に右手を捕まれ、動きが止まるセピア。 「落ち着け。そんなんじゃぁ、無駄だ。 ――俺がやる」 セピアの右手を掴んでケインは決意を込めてそう言った。 「だけどっ!」 「自分の手でやりてぇ、って気持ちは分かる。 だがな、今のあんたじゃ無理だ。 せめて気持ちの整理つけてからにしろ」 「………………………」 「ケインの言う通りね。少し整理した方がいいわ」 ぽんっとセピアの肩を叩きながら、ミリィは優しく微笑んだ。 ケインとミリィはお互い顔を見合わせて、大きく頷いた。 「選手交代だ。行くぜ」 「構わん。死ぬ順番が変わるだけだ」 「そいつぁ――どうかな?」 ケインは不敵な笑みを見せて、サイ・ブレードを構えた。 光がケインへと集まる。 「もう一度お聞きします。 何故私とあなたが争わなくてはいけないんですか――?」 押し黙った『ミアヴァルド』へ、もう一度キャナルは問いかけた。 『本来あるはずのない力を持つ者の排除――宇宙の安定――それこそが我が望み』 「だからって……!」 『正直に言おうか?『ヴァルフィード』殿。 今回このような事件が起こったのは何が原因だ? ガルズ=ゴートか? それとも星間警察(ユニバーサル・ガーディアン)の堕落か? ――いいや、違うな。 原因は、我々遺失宇宙船(ロスト・シップ)だ』 「―――――っ!」 キャナルは言葉を失った。 心の奥でそれは考えていたことだった。 たとえナイトメアが無くなったとしても、自分が残っていればいずれ争いの元になる。 それは気付いていながら、目を背けていた事実だった。 『いつまで旧世代の者がこの世界に留まるのだ? あなたのわがままでこの世界に混乱が生まれている』 「わたしの……わがままで……?」 『あなたが居ることで混乱が生まれる。 私が居ることで争いが生まれる。 だからこそ――私はあなたと闘わねばならない。 あなたを無に帰し、私も無に帰る。 それがこの世界の――いや、宇宙のためだ。 私が言ってることは間違っているか?』 「そ……れは…………………」 言葉が続かなかった。 黙り込んでしまったのは今度はキャナルだった。 返す言葉がなかった。 今の自分の気持ちを言葉にすることに怯えていた。 『――あなたにもわかっているはずだ。 この世界に我々はいるべきじゃない、と』 「―――――――っ!」 今度こそ、キャナルは何も言えなくなっていた。 何かを言い返したいのに、言葉が出てこない。 ――何も言い返せない…… いつも慣らした舌先三寸、軽口合戦、に右に出る者は居ないキャナルだが、それでも、言葉は出てこなかった。 その時、動揺していたせいか、通信音が操縦室に鳴り響いた。 どうやら通信を無意識につなげてしまったらしい。 ――あんたは言ったよな……遺失宇宙船(ロスト・シップ)はこの姿から消えるべきだって。 「ケインっ!?」 そう。それはケインのサイブレードの増幅器(ブースター)につけていた、盗聴器からの音だった。 この時丁度、『ファイナル・フォートレス』ではミリィにセピアを任せ、ケインとミリィが歩き出した時だった。 ――『ヴォルフィード』も……『ミアヴァルド』も『ファイナル・フォートレス』も争いの種になる。 だからあんたは消すんだって。必要がねぇって―― その言葉にキャナルは身を堅くする。 怖かった。ケインがその先に言う言葉が。 拒絶されるのではないかと、怯えていた。 ――ふざけんじゃねぇぜ…… キャナルはなぁ――俺の大事な仲間だっ! 昔の因縁なんざ知ったこっちゃねぇし、争いが起ころーが関係ねぇっ!! あいつは俺の仲間だっ! 必要ねぇなんざ二度と言わせねぇっ!―― 「ケイン………」 キャナルは通信に聞き入っていた。 目の前に自分を滅ばす巨大な力があることも失念して。 胸が熱い。 何故か手が震える。 もしも自分が人間だったのなら――泣いていたのかも知れない―― キャナルはゆっくりと通信を切った。 もうこれ以上、彼の言葉は必要ない。 充分すぎるほど、言葉を――気持ちを受け取った。 キャナルははっきりとした声で『ミアヴァルド』へと声を掛けた。 「――あなたの言っていることは――正しいのかも知れません。 あなたの現在の状況は、わたしだったかも知れないんですから。 それでも――わたしはいなくなるわけにはいきません」 心のもやはすでに消え去っていた。 迷いも、戸惑いもすでに消えている。 『何故だ?』 「――帰りを待ってくれてる人が居ます。 旧世代の者だろうが、関係なく――手をさしのべて、お帰りと言ってくれる人が居るんです。 わたしは――その人達のためにも負けるわけにはいきません」 『…………………………』 「――そしてなにより――わたしも彼らの側にいたい。 わがままだと――思ってくれていいですよ」 そう言ってキャナルはにっこりと微笑んだ。 作り笑いでも、苦し紛れでもない、本当の笑顔。 『私は――もしかしたらあなたが羨ましいのかも知れない。 ふとそんな思いにかられる時がある。 だが――私にも約束がある。使命がある。 あなたは私と共に眠ってもらう』 「言っておきますけど――しぶといですよ。わたしは」 『承知の上。『ヴォルフィード』殿』 「――一つ訂正をお願いします」 そう言ってキャナルはちっちっちと指を振った。 「わたしの名前は『キャナル』です」 『了解いたした。『キャナル』殿』 そして、二つの船が交錯する。 互いの感情をぶつけながら。 この宇宙すら狭く感じるほど、二人は高速で辺りを舞った。 「…………………………」 セピアはただ虚ろな瞳でうつむいていた。 10数年以上共にした仲間の声で、姿で「殺す」と宣言され、何も感じないはずはない。 だが、今の自分では何もできない――そんな無力感と絶望を感じていた。 だからこそ、肩を揺さぶり、必至の呼びかけをするミリィの声も届かない。 「セピア……!!」 ミリィがセピアの肩を掴みながら、揺さぶってみても反応はない。 しばらくその動作が続くが、セピアは呆然としたままだった。 そしてミリィはそっとセピアの方から手をどけた。 直後、乾いた音が部屋へと広がる。 ――ぱしっ! 「あ……?」 じんわりと広がる痛みに、セピアは初めて気が付いたように、ミリィを見上げた。 「少しは目が覚めた?」 セピアの頬を叩いたミリィはそう言って、半ば睨み付けるようにセピアを見る。 「……眠ってなんかいないわよ……」 「ああ、そう。それじゃあもっと悪いわよ。 自分に出来ることもやらないで、ただ現実逃避しているだけじゃない」 「……何が出来るっていうのよ……」 自嘲気味な声で言って再びうつむくセピア。 そんなセピアを見下ろしながら、ミリィはふと横を向いて言葉を続けた。 「――昔、あたしには一人の祖父が居たわ」 「え……?」 「そいつにあたしの家族は無茶苦茶にされた。 両親を殺されたの。 少なくともあたしはそう思っている」 苦笑を浮かべ、視線をセピアへと戻しながらもミリィは言葉を続ける。 「何を言って……?」 「――いいから聞いて。 両親が殺された時――やっぱりあたしもかなりへこんでね。 まだ学生の時のことだったし。 それでやっぱり、やけおこしたり、自暴自棄になったり、呆然と一日を過ごしたり…… そんな時期もあったわ。 だけどね――何も変わらなかった。 ちっとも良くなってくれなかった。 それでそのうち、腹が立って…… 『こんな所で負けてたまるか。あいつの思うとおりになってたまるか』ってね。 それで無我夢中に働いて、生きようとして――そうしてなんとか生き抜いてきたの。 その時思ったわ。 絶望していても、誰も助けてはくれない。 自分自身を救えるのは自分しかいないの」 「ミリィさん……」 「目を逸らしたら駄目。 つらいことは消えてなんかくれないし……本当に大切なものまで見えなくなっちゃう」 それは自分自身の経験から出た言葉だった。 ミリィは、かつての自分にセピアを見ていたのかも知れない。 「そう――ですね…… なんとか頑張って――!」 笑顔を見せたセピアの表情が凍りつく。 何かを思いついたらしい。 「どうしたの?」 「いや――全てを終わらせる方法を思いついたんだけど……」 普通ならこの言葉を聞いたとき、喜ぶはずだった。 それでもミリィは黙って先を聞いた。 表情から感じ取れる何かがそうさせていた。 「……この方法は取りたくない……」 再びうつむくセピア。 表情は先程と違い、絶望は滲ませていない。 ただ、その表情にあるのは、戸惑い。 それでもミリィにはわかっていた。 先程までのセピアとは違うことに。 大丈夫。今度は冷静に自分のことを見つめ、その上で彼女は悩んでいる。 それならば―― 「――わかったわ。もう少しゆっくり考えてみて。 あたしはケインを助けに行くわ」 そう言って、微笑んでその場を去る。 彼女は歩き出した。 ならば、今度は自分の番だった。 自分自身が出来ることをしに行こう。 ――ケインの元へと。 二つの光は、宇宙に線を描く。 無限の宇宙すら、狭いと感じた。 そして何処かで、懐かしさを感じる。 初めて出逢った、旧友との戦い。 ただ一つ、願わくば――納得のいく結末を。 「ずいぶん遠くまで来ちゃいましたねー……」 砲撃の手を休めることなく、何処か呑気な口調でキャナルは言う。 先程から『ミアヴァルド』の砲撃は単純になっていた。 散発的な砲撃を避けるのは、いくらケインが居ないとはいえ、出来ないことではない。 結果、回避を続け、先程までの戦いの場からずいぶんと二つの船は移動していた。 おそらく、誘導。 『ミアヴァルド』にとって、戦いに有利な場へと引き込もうとしているのだろうか? それとも―― 「――こう……来ましたか……」 思わず苦笑を浮かべるキャナル。 ケインもミリィも居ないため、ディスプレイは表示されていない。 それでもキャナルには当然周りが見える。 小惑星の吹き溜まりと化した岩塊の群。 そしてその奥――虚空に漂う、いくつもの宇宙船。 その宇宙船も、あちこち装甲がはがれたり、崩れかかっているものばかり。 つまり、ここは―― ――宇宙船の廃棄場―― 「……女の子を誘うデートスポットにしちゃあ悪趣味ですね……」 『――だろうな』 はっきりと聞こえた『ミアヴァルド』の声は、どこか疲れているようにも感じられた。 正直――彼自身にも、何故ここに『ソードブレイカー』を誘い込んだのかわかっていない。 それでも、呼ばれるように、彼はここに現れた。 理屈はない。だがしかし、これでいいと思う。 相手にとっては皮肉以外の何物でもないが。 『ミアヴァルド』は自分の奇妙な自己完結に苦笑した。 『さあ――闘おう。 ここには我らのみ。邪魔は居ない』 「二人っきりってヤツですね。 ――高くつきますよ」 軽口を叩きながらも、油断はない。 キャナルはセンサーの機能をフルパワーにあげた。 岩塊や、廃棄物――避けながらの戦いとなる。 動きにくいことこの上ないが、機動性はこちらが上。 分の悪い戦いではない。 「行きますっ!」 声と同時に、サイ・ブラスターの三連射。 三条の光が『ミアヴァルド』へと肉薄する! がしゅぅぅぅっ!! 鈍い音を立てながらも、『ミアヴァルド』のサイ・バリアがそれを弾き散らす。 弾かれた光の飛沫が辺りの岩と宇宙船を貫いた! 遅れて届く衝撃。 竜巻に巻き上げられた紙のように岩石と宇宙船の残骸が弾け飛ぶ。 接触しても大した被害はないだろう。 ――回避すべきか、バリアで防御するか。 結局キャナルは後者を選んだ。 どがうぅぅぅぃぃぃんっ!! バリアが張り巡らされた直後、衝撃がソードブレイカーを襲う。 『ミアヴァルド』からの砲撃。 衝撃緩和の容量を超えた砲撃ではあるが、バリアを貫かれると言うことはない。 『――防戦一方では勝てんぞ』 「言ってくれますね…… いいでしょう。その挑発、乗ってあげるわっ!」 ソードブレイカーを包む青い光が消失する。 直後。 「エンジン全開っ!高速機動っ!」 ソードブレイカーの動力部が唸りを上げた。 突然の高速移動。 慣性中和の許容は超え、乗員が居たら本来は耐えきれない。 それでも、今はその心配はない。 今だからこそ、全力で―― 自然と口の端が笑みの形を作った。 「――いいな。二度と勝手なこと言うんじゃねぇぞ」 凄みすら効かせて、ケインは言った。 「それともう一つ。 ガルズが『ファイナル・フォートレス』内に、変なプログラムを流したことは知っているよな? つまりてめぇは――『ミアヴァルド』じゃねぇってことだ」 「……どういうことだ?」 「てめぇはその変なプログラム自身であって、本来の『ミアヴァルド』じゃねぇって言ってんだ。 おそらくプログラムの一部だかが混じりあっちまって意識と記憶が混同してるって所だろーよ。 なぜなら、『ファイナル・フォートレス』全体にてめぇの支配が行き届いていないこと。 もし行き届いてるんならアレスも現れなかったはずだし、ガードシステムがセピアのことを認識したままってぇのもおかしな話だろーが」 「黙れ……!」 明らかに動揺した様子で『ミアヴァルド』――いや、『ミアヴァルドと名乗った者』は、言葉を制止させようとする。 それでもケインは続ける。 「いーや。黙らねーぜ。 さっきセピアの戦いで、実体を持ったまま闘ったよな? 何故実体を持ったままで居るんだ? 人間がてめぇを傷つけるには実体を持ってくれなきゃ無理だ。 逆に言えば、実体さえなけりゃこっちは全く手出しが出来ない。 それでもてめぇは実体持ったままだ。未だにな。 未だに不安定な状態だから、てめぇは実体持ったままでしか具現できねーんだろ?」 「黙れと言っているっ!!」 「黙らねぇって言っているだろ? 早い話が――あんたをたたっ斬ってぶっ壊しゃあ、全て元通り、だ」 サイ・ブレードの先をミアヴァルドに突きつけて、ケインは言った。 ミアヴァルドは怒りに顔を歪めるが――右手を強く握りしめ、怒りを押し殺した。 「本当にそう思っているのか――?」 「ああ。思ってるよ」 はっきりそう言い放つケイン。 「なら、やってみるがいい」 「言われなくてもそうさせてもらうぜっ!」 ケインは瞬時に間合いを詰め、ミアヴァルドへと横凪へ一閃する! がきぃっ!! しかしそれをミアヴァルドは己のサイ・ブレードで受けとめる。 二つの光が反応しあい、辺りに閃光を発した。 構わずケインは咬み合った剣を視点に下へと滑り込み、更に間合いを詰める。 ミアヴァルドのガードが甘くなった腹部へとひざ蹴りを叩き込む。 どぐっ! ミアヴァルドの腹部から閃光がほとばしる! エネルギーが今の衝撃で奪われたのである。 ――効いてるっ! 心の中で安堵するケイン。 その一瞬の油断をついて、ミアヴァルドは吹き飛ばされた反動すらも利用し、半歩引いた足を支点にして、遠心力へと変換し、ケインを狙う! 油断していた上に、体勢も悪く、避けきれない。 その瞬間、寸分違わぬ正確さでミリィの弾丸がミアヴァルドの右腰を打ち抜く! ――はずだった。 ミアヴァルドがそれをサイ・ブレードで弾き飛ばさなければ。 銃弾を弾いたままの姿勢で、ミアヴァルドはミリィの方へと向いた。 「先程の女の相手はもういいのか?」 「おかげさまで。 今度はあなたの相手をさせてもらうわ」 言って再び銃を構え直す。 そのやりとりの間に、ケインは体制を整えていた。 「サンキュー!ミリィ!」 「まっかせなさいっ!」 お互い目も合わさずに声をかける。 「しかし、正気か?仲間に当たったらどうする気だ?」 「残念だったわね。そんなヤワな腕してないわよ。あたしは」 不敵に笑って、そう言いながら、じりじりと移動するミリィ。 そしてケインとミリィは急激な動きで、左右二人の場所が入れ替わるように移動する。 二人の姿が重なる瞬間、黒い影が上へ飛び出した。 慌ててそちらへと目をやり、サイ・ブレードの刃を打ち出すミアヴァルド。 そのままミアヴァルドのサイ・ブレードの刃がケインのマントを貫いた! ――そう。ケインのマントだけを。 二人の姿が重なる一瞬、ケインはマントを脱ぎ捨て真上に跳ね上げ、ケイン自身とミリィはそのまま横へ移動し、目眩ましをしたのである。 「な――!?」 驚愕しているそのスキに。 ケインのサイ・ブレードがミアヴァルドの腹を大きく薙ぐ。 その直後にだめ押しとばかりに、ミリィがミアヴァルドの右腕を打ち抜いた。 「しまっ――!!」 驚愕の言葉を言いきることさえ出来ず、膨大な光がミアヴァルドの身体からほとばしる! 光からの圧力。 それをはっきりとケインは感じた。 そしてそのまま、ミアヴァルドは白光を残して、消え去っていた。 「やった……の……?」 ケインはその問いに答えず、消え去ったその空間を睨み続けていた。 そして突如、嫌な予感に全身が泡立つ。 刹那背後に生まれる殺気っ! 振り向くことさえ適わずに、ケインは大きく横へと飛ぶ。 ざうぅいんっ!! ケインが先程までいた空間に、白刃が煌めく。 そして、その刃を持った者は答えた。 「――いいや。まだだ。 聞いていなかったのか?私のエネルギー源はサイ・エネルギーだ。 この『ファイナル・フォートレス』には、ここで生活してきたセピアのエネルギーがまだまだある。 だが――ケイン=ブルーリバーよ。 お前は後何回私を倒せる?」 嘲笑うかのようにそう言って、ミアヴァルドは再び右手に光を灯した。 「そんなっ!?倒してもキリがないなんてっ!」 「いいや、違うぜ。ミリィ。 何も無限にエネルギーがあるわけじゃない」 後ろで驚愕の声をあげるミリィケインはきっぱりと言った。 「だからって……セピアが何年間ここで生活していたかわかっているのっ!?」 「わかってるよっ! だったらそいつが尽きるまで闘うまでだっ! 何十回、何百回現れようが――全て斬り倒すっ!」 不敵な笑みすら浮かべ、剣をミアヴァルドへと突きつけるケイン。 その光には一片の乱れすら生まれない。 「全く相変わらず無茶なんだから……いーわよ。付き合ってあげよーじゃない」 苦笑を浮かべながらも、何処か楽しそうですらある、ミリィ。 「……………………………」 そんな二人を見ながら、ミアヴァルドは何かわだかまりのような物を感じていた。 始めはただ宇宙に害為す者への嫌悪だと思っていた。 だが――違うような気がした。 それでもその考えを認めることが出来ずに、ミアヴァルドは刃を奮った。 戦いは終わらない。 その時、宇宙は震えた。 『ミアヴァルド』のエネルギーが増大する事に共鳴するかのように。 それでも構わず――キャナルは砲撃を放った。 正面から、二つの光は衝突する。 エネルギーの出力は『ミアヴァルド』が上。 正面からの戦いは分が悪い。 それでも何故か、キャナルは迷うことがなかった。 どがしゅぅぅぅぅうっ!! 真空すらも弾けさせ、辺りの岩塊を吹き飛ばす! 廃棄された宇宙船の装甲も、熱されたバターのように、岩塊がその身にのめりむ。 砕けた岩塊と岩塊が衝突し、さらなる爆発を生み出す。 エネルギーの破裂と消滅。 光が弾け、闇に帰る。 そんなドミノ倒しが続き―― やがて振動がおさまった頃、二つの船はさして被害も受けずに虚空に浮かんでいた。 ――全くの互角―― 『――出力が上がった……? 何をした……?』 「……気力を……振り絞っただけですよ……」 『――ナンセンスだな』 「はは……そうですかねー……?」 疲労が身体を支配する。 エネルギーの消費が激しい。 マスターの居ない状態での長期間の戦闘は久しぶりだった。 それでも――負けるわけにはいかない―― 『だが――そろそろ終わりにしよう――』 『ミアヴァルド』は、間違いなくソードブレイカーより疲弊していた。 それは計器類を見ても間違いない。 だが、しかし、危機感を知らせる警報は未だ鳴り止まない。 そして再び、『ミアヴァルド』が砲撃を開始する。 先程の砲撃で岩塊は殆ど消滅していたが、注意をして奥に越したことはない。 ちらりとキャナルはレーダーに意識を集中した。 そして、何か引っかかるものを感じた。 そう感じたとき、『ミアヴァルド』は通常兵器の全砲門を使用してこちらの方へと砲撃を放つ。 引っかかったものは、確信へと変わる。 すぐさまキャナルはその砲撃に自ら当たるように、ソードブレイカーを操っていた。 本来なら、通常兵器での砲撃など、何でもない砲撃だった。 装甲に当たったところで、どうという事はない。 ――そう。装甲に当たったのなら。 ソードブレイカーの船体と、キャナルの砲撃によって殆どの攻撃を相殺したが、いくつかの砲撃がソードブレイカーの背後へと突き進む。 「防ぎきれなかったっ!?」 キャナルの悲鳴に近い叫びが宇宙に放たれる。 そして、衝撃。 ――…………ぐぉ…………ぅ!! 衝撃すらも爆音と化し――いや、音と判断するのも拒否されるような、空間の破裂。 ミアヴァルドの砲撃をその身に受け、ソードブレイカーの背後に先程まであった物体――それは宇宙船だった。 さきほどのレーダーに反応したのは、廃棄された宇宙船とは信じがたいほどの燃料が積み込まれたことにある。 ――キャナルには知る由もないが、それは警察内部の者が裏組織との取引用に用意しておいた、提供用の燃料である。 ブラック・ボックスと同じく、リヴァイア星の警察署の海深くに情報が保存されていた、あれである。 『ウェルズ星系にはこびる裏組織との癒着者のリスト』。 その情報のすぐ側に、取引日時も記載されていたのをアレスは知っていた。 そして、アレスを内に宿すミアヴァルドがそれを知っていて何の不思議があろう。 「くうううっ………!!」 苦痛の叫びを噛み殺し、キャナルはサイ・バリアを展開する。 生まれ出た光の蔦がソードブレイカーをからめ取る! がぐんっ!! 襲い来る衝撃に必至に耐えながら、船体のコントロールを持ち直そうと制御するキャナル。 その視界のはしに、同じく光の蔦に捕らえられ、装甲の一部を吹き飛ばされた『ミアヴァルド』が見えた。 刹那、操縦室に赤いランプがいくつか点灯した。 他のことに気を取られていては、やられる。 キャナルはサイ・バリアの出力を限界まで引き上げた。 セピア=スカイは困惑していた。 それでも――方法はあった。 全てを終わらせ、解決する方法は。 だが――それは後戻りの出来ない決断。 決して、やり直しのきかない手段。 それでも――他に解決法は浮かんではくれなかった。 しかし、それは『本当に』全てを終わらせてしまうことだ。 始まりから今日までの日々を。 何もかもを消し去ってしまうことだった。 ――主制御システムのデータリセット。 そうしてしまえば、ブラック・ボックスから生み出され、主制御システムに巣食う、異質の『ミアヴァルドと名乗る者』は消え去る。 共に過ごした仲間もろとも。 アレス=ミアヴァルド。 なにも恋愛感情があった訳じゃあない。 それでも――最高に愛した仲間だった。 自分自身の手で仲間を消すなんて……出来るわけがない…… 強く咬んだ唇からはすでに血が流れ出ていた。 それでも、鉄の味は感じられない。 主制御システムのデータリセット。 それは、人間で言えば、記憶を消し去ってしまうことだった。 共に過ごした日々が消えてしまう。 あの日の笑いも、あの日の涙も、あの日の安らぎも―― 全てが終わる。 全てが消える。 後には何も残らない。 「なんでこんな事を教えたのよ……」 漏らした言葉で、思い出したことがある。 遠い昔、かつて同じ質問をアレスにしたことに。 「何でこんな事を教えるの?」 「うん……? そうだな……自分を守るためかな」 「……意味がわかんないよ」 「そうだな。まだ君には難しかったかな。 それでも、これだけは覚えていておいて欲しい。 オレは……データだけの存在だ。 だから何より、誰より、記憶を――思い出を大切にしているつもりだ。 でもな……思い出を大切にするって言うことは、ずっと忘れないって言う事じゃあないと思うんだよ」 かすれた記憶の中で、確かにアレスは笑っていたような気がした。 「やっぱりわかんないや……」 「今はまだわからなくていい。 それでも覚えておいてくれ。 それだけで、オレがここにいる理由になると思う」 そう言って、優しげな笑みを浮かべて、セピアの頭を撫でていた。 遠い、遠い記憶。 彼は言った。 思い出を大切にするということは忘れずにいるという事ではないと。 幼い自分はどういう意味かさっぱりわからなかった。 だが――今なら少し、わかるような気がする。 言葉に出来るほどわかっている訳ではないが、それでも何かは感じ取れていた。 涙は止まらない。 セピアはかつてアレスから受け取ったサイ・ブレードを握りしめた。 そしてセピアは紡ぎだす。 ――遺失言語(ロスト・ワーズ)を―― 「しまったっ!!」 はじめに異変に気が付いたのは、やはりミアヴァルドだった。 自分自身の存在を危うくする力を持つ者に気付いたミアヴァルドは、攻撃優先目標をケインからセピアへと移行する。 ミアヴァルドは動揺の表情を浮かべていた。 即座に方向を切り返し、セピア=スカイへと走り出す。 しかし、次の瞬間、ミアヴァルドは大きく横へと飛んでいた。 「邪魔をするなっ!ケイン=ブルーリバーっ!」 突如セピアをかばうようにして現れたケインのサイ・ブレードを避けて、激昂するミアヴァルド。 「やなこった。 何をする気かは知らねぇがなっ! てめぇの好きにさせる気はねぇっ!」 「彼女が悩み、苦しんで出した結論っ! 邪魔なんて野暮はさせないわよっ!」 そのケインに重なるように後ろで銃を構えるミリィ。 「なんだ、ミリィ。お前事情知っているのか?」 「あんまし。でもそんなことは関係ないでしょう?」 「違いねぇ」 お互いの姿を見ることもなく会話を続ける二人。 ミアヴァルドには、それが酷く腹立たしかった。 「邪魔は……貴様らだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 ぐうぅぃんっ! 突如、部屋の空気が重くなる。 いや、部屋の重力が高くなっているのだ。 かつてセピアは幼い頃、疑似重力発生装置で高重圧下での訓練を受けていたと話していた。 確かにここであっても不思議はないが、戦闘下での突然の重力の変動は致命的となる。 沈みそうになる身体を必至に支えながら、ケインは眼前の敵を見据えた。 そして、部屋の壁という壁から砲門が姿を表した。 「な……っ!?」 驚くミリィ。 それも当然である。 この部屋はミアヴァルド自身でもある。 あれだけの銃を放ったら、殆ど大半はケインやミリィに当たらず、部屋へと突き刺さる。 自分自身への攻撃でもあるのだ。 光が砲門へと集まる。 「無に帰れっ!この宇宙に害を為す者よっ!!」 ケインは身動きがとれなかった。 立っている今の状態がやっとである。 あれだけの銃撃をかわすなどまず不可能だろう。 ならば――やることは決まっていた。 「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 強い光がケインの右手――いや、ケイン自身に集まっていた。 ケインは圧力を感じていた。 それはおそらく、疑似重力からではなく、光から。 光の奔流が生まれる。 そして、一条の光がケインの元へと届いた。 「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 ケインの意志に従い、光は放たれる。 高熱すら生み出すかのような光量の光が真っ直ぐにミアヴァルドへと突き進む! それでも、目を閉じる者は居なかった。 その場にいる者の目はただ光の行方を追う。 そして。 光の矢はミアヴァルドの胸へと突き刺さっていた。 砲門の光が消失し、疑似重力も元へと戻る。 「お……おお……」 ミアヴァルドは、胸に受けた傷から光がほころびはじめていた。 「ま、まだだ……っ!」 それでも再びサイ・エネルギーを供給しようと体勢を立て直したその瞬間、セピアの表情がミアヴァルドへと届いた。 それは、悲しみでもなく、怒りでもなく――哀れみ。 「―――――――――」 そして、セピアの主制御システムのリセットのプログラム言語の入力が終了する。 静かな声ははっきりと皆に届いた。 「お……おおお………」 主制御システムに巣食うミアヴァルドが無事なはずはない。 横線の集合体のように、ノイズでやられて姿がかすむ。 光がぼとり、とミアヴァルドの肘から落ちた。 床に落ちた粘液状となった光もやがて、溶け込むように消えていく。 それでも、よろよろとセピアの方へと歩き出すミアヴァルド。 足取りはひどく、重たく、頼りない。 「セピアっ!逃げてっ!」 ミリィの声に、セピアは無言で首を振った。 「私は……ワタシは…… まダ……なにも……シてイナイ……」 崩れゆく自身に構うことなく、ミアヴァルドはセピアの元へと進んでいた。 ミアヴァルドにすでに戦意は感じ取れなかった。 だからこそ、ケインは何も言わない。 「……マダ……ワたシハ…… なにモ……な……ニも…………………」 ミアヴァルドのその顔に張り付かせていたのは恐怖。焦燥。 そんな手を伸ばすミアヴァルドを、そっとセピアが両手で包み込んでいた。 「……もう……いいんだよ…… 寂しかったんだよね……怖かったんだよね…… おやすみ……ごくろうさま…… …………そして……ごめんね……」 光が崩れていく。 セピアが抱きしめることも適わずに、ミアヴァルドは崩れていく。 「おお……おおおおお………」 怒りとも歓喜とも判断の付かない声が部屋を満たす。 ただケインには、その声が酷く悲しげに聞こえた。 そして、その宇宙から一つの光が消えた。 怖かったから、他者の使命を曲解してすがった。 寂しかったから、自分を滅ぼしたかった。 不安だったから、絶対の信頼を置いているケイン=ブルーリバーとミレニアム=フェリア=ノクターンに嫉妬した。 ――結局、自分を見つめることが怖くて、目を逸らした。 自分と闘う勇気が出せずに、自分を捨てた。 ――その時からこうなることは決まっていたのかも知れない―― 『ミアヴァルドと名乗った者』はそんな風に思う。 ――あれからどれくらい時間が経ったのか、キャナルにはわからない。 光の奔流に飲み込まれ、何処まで吹き飛ばされたのか。 桁外れなエネルギー量を感知したせいで、一時麻痺したセンサー類を放って、キャナルは辺りの様子を探った。 そして、そこにはソードブレイカーしかないことを――周辺に『ミアヴァルド』の反応がないことを知る。 「ごめんね……アレス……」 うつむきながら、セピアはそう言った。 「セピア……?今のは……」 「ここに来る前、プログラム言語を言って、ガードシステムを機能させたでしょう? それと同じ。 プログラム言語を使って――主制御システムのデータストックをリセットさせた。 ただ――それだけのことよ」 「それじゃあ、アレスとかって奴も………」 こくりと頷くセピア。 沈黙が場を支配する。 重力はすでに元に戻っている。それなのに、いや、それ以上に空気が重かった。 ケインはただ黙ったその場で立ちつくした。 そしてしばらくたった後。 『艦内にいる所員に通達します。 本船はブラック・ホールへの突入経路を続けています。 離脱不可能まで後3分。 まだ脱出を終えてない者は速やかに3番ゲートまでお急ぎ下さい』 「アレスっ!?」 声に驚き、振り仰ぐセピア。 しかし帰ってきた言葉は無機質だった。 『主制御システムの名前は今だ登録されておりません。 『アレス』と、登録しますか?』 「あ……」 言われて口を閉じるセピア。 そうだ。自分が消したのだ。 アレスはもういない。この声はリセットされた、何も覚えていない――アレスとは違う者。 それでも、ショックを受けている暇はなかった。 「ちょっとまってっ!ブラック・ホールっ!? 何でそんなとこに突入してんのよっ!?」 「くそっ!どーせさっきのミアヴァルドの仕組んだことだろっ!! 奴はこの世界に本来あるはずのない力を消そうとしていたんだ。 奴の判断じゃあ、オレもミリィもセピアもそれに入っている! だったらまとめてブラック・ホールに放りこみゃてっとり早いとでも思ったんだろっ!」 「そんな無茶なっ! それじゃあ、ミアヴァルド自身も消えちゃうじゃないっ!」 答えるケインに悲鳴を上げるミリィ。 「いーんだよっ!奴は自分自身も消そうとしてたんだからなっ! おいっ!なにしてんだっ!セピアっ! とっとと脱出するぞっ!時間がねぇっ!」 「悪いけど……先に行ってて。すぐに追いつくから」 「いーや、だめだねっ! あんた、このままここで一緒に死ぬ気だろ? どーせ、 『自分が殺したも同然なんだから、ここで自分も死のう。これも罪滅ぼしだ』 とかなんとか勝手に自己完結してっ! いいかっ!時間がねぇから手短に言うっ! そういうのはなぁっ!迷惑なんだよはっきし言ってっ! 俺だけじゃねぇっ! アレス=ミアヴァルドだって同じ気持ちのはずだぜっ! 記憶を無くさせちまって悪いことしちまったと思っているんなら、アレスのことを覚えているてめぇは何が何でも生き抜かなきゃいけねぇんだっ!」 「それは………」 振り返り、戸惑いを浮かべるセピア。 「ケインの言う通りよ。 それにね。もう一つあなたがあたし達と一緒に脱出しなくちゃならない理由があるわ」 「理由……?」 「ええ。あたし達、3番ゲートなんて何処にあるか知らないもの。 あなたが一緒に脱出しないのなら、あたし達も脱出できないわ」 そう言ってウィンク一つ。 「ずるいわよ……それは……」 「いいわよ。ずるくても」 苦笑を浮かべるセピアに、微笑むミリィ。 そしてセピアは大きく一つ頷いた。 「――わかったわ。脱出しましょう」 セピアは主司令室(メイン・オーダールーム)を飛び出した。 振動が『ファイナル・フォートレス』を襲う。 時間はあまりない。 「安全装置解除。 シャトルのロック解除。 ハッチ、解放!!」 時間ぎりぎりにケイン達は3番ゲートへと到着していた。 そこにはシャトルが一つ。 迷わずそこへと乗り込み、脱出の準備を進めていた。 「了解。ハッチ開放。 ……間に合ってお願いっ!」 ソードブレイカーと違うため、操作はミリィも手伝っていた。 それでも何とか、シャトルが動き出す。 そしてふいに。 ケインは頭の中に疑問が生まれた。 いくら遺失宇宙船(ロスト・シップ)と言えど、ブラック・ホールを離脱なんて出来るものなのだろうか? まして、これはシャトルである。 どう考えても不可能だった。 しかし、先程の警告音声では――― ……!!…… 思うと同時に、言葉が出ていた。 「おいっ!アレス=ミアヴァルドっ! 返事をしやがれっ! てめぇはまだ生きてるだろーがっ!!」 「ちょっとケインっ!?何をっ!?」 戸惑うミリィをケインは無視して続ける。 「返事をしろって言ってんだっ! シャトルじゃ、ブラック・ホールは脱出不可能なはずだっ! それでもあんたはまだ離脱可能だと言ったよなっ! 何を考えているっ!? 死んだフリしてまで俺達をシャトルに乗せて何をしようってんだっ!」 しばし艦内には沈黙が降りる。 そして、くぐもったノイズと共に、声が聞こえた。 『驚き……ましたよ…… 気付かれない自信はあったんですがね……』 「アレスっ!?」 一番驚いたのはセピアだった。 『確かに……まだ僕は生きています…… だけど……すぐにお別れをしなくてはならないのにそう言ったところで…… 落胆させるだけです。だから……このまま黙っていようと思っていたんですけどね……』 「アレスっ!?お別れってどういうことっ!?」 そう言ってセピアはシャトルの出入り口へと走り出した。 だがしかし、シャトルは急発進され、『ファイナル・フォートレス』が遠ざかる。 衝撃で乗組員は壁へと押しつけられる。 「ちょっとケインっ! セピアを『ファイナル・フォートレス』に戻させないためってのはわかるけど、もう少し手加減してよねっ!」 しかしケインの両手はシートを掴んだまま。 「俺じゃねぇっ!勝手に動いたんだよっ!」 『僕が操作させていただきました…… 必ず、あなた方は外へ帰します……アレス=ミアヴァルドの名にかけて』 「だからっ!いくら遺失宇宙船(ロスト・シップ)のシャトルっつっても無理だってんだよっ!」 『無理じゃないです……僕の自爆の際に生じるエネルギーに後押しされれば、ね……』 「ちょっと待ってよ……あんたそんな馬鹿なこと考えているの……?」 遠ざかる『ファイナル・フォートレス』に目をやりながら、信じられないものを見るような表情でセピアは言った。 『ああ。考えているよ。 ……ごめんな…… でも……他に方法がないんだ…… こういう終わり方も……黒竜の騎士(ヴォルフィード・ナイト)らしくていいと思っている…… 主のために……死ぬのも……悪くない……』 「前方に巨大岩石出現っ! このままじゃあぶつかるぞっ!!」 シャトルの船体コントロールはアレスがしているとは言え、それはあくまで『ファイナル・フォートレス』から離れるようにとの誘導のみ。 何とか船体を操り、回避しようとするケインだが、何しろ常識はずれな引力に捕まっている。 その上相手の岩石もそのでたらめな引力に捕まっているため、どう動くか予想がきかない。 「砲撃で粉砕は出来ないのっ!?」 「ただのシャトルにそんな機能はねぇに決まってんだろーがっ! くそっ!――ぶつかるっ!」 思わずケインは目を閉じた。 そして、瞼を通して届く光。 衝撃に船体が激しく揺れる。 だが、それだけだった。 「なんだ……?」 訝しげに目を開けると、そこに岩は跡形もなく消え去っていた。 代わりにその先に見えるのは戦闘終結艦『ミアヴァルド』。 「まさか……岩を吹き飛ばしたのか……っ!? 助けるためだけにブラック・ホールの中にっ!?」 『言ったでしょう……必ずあなた方は外へ帰すって……』 「だからって遺失宇宙船(ロスト・シップ)『ミアヴァルド』までっ!」 『もともと……『ファイナル・フォートレス』の爆発だけじゃあ無理なんですよ…… 『ミアヴァルド』もなくちゃ……だめなんです……』 遠ざかる『ファイナル・フォートレス』の一部が、高重圧に耐えきれず崩れ落ちた。 『もうそろそろ限界かな……』 頭に声が響いた直後、シャトルが青い光に包まれた。 ――サイ・バリア―― 推進力の無くなったシャトルはブラック・ホールへと流されていく。 慣性中和システムすらも越えて衝撃が船体を襲う。 「くぅぅぅっ! ――アレスっ!馬鹿な真似はやめなさいっ! お願いだから―――やめてぇぇぇっ!!」 シートにしがみつきながらも、セピアは叫んだ。 シャトルから覗く『ファイナル・フォートレス』と『ミアヴァルド』の間にアレスが見えたような気がした。 直後。 宇宙に光が破裂した。 ――楽しい夢をありがとう―― ケイン達にも、確かにその声が頭に聞こえていた。 そして、二つの遺失宇宙船(ロスト・シップ)はこの宇宙から姿を消した。 アレス=ミアヴァルドは夢を見ていた。 崩れゆく意識の中で。 彼は長い時に埋もれ、漂いながら、彼が彼で居られたのはほんの10数年だった。 それは彼が生み出された瞬く間の一瞬に過ぎない。 浮かんでは消えていくメモリー・データ――いや、思い出に彼は感情を出していた。 恐怖だろうか、悲しみだろうか、寂しさだろうか。 正体不明の感情は止まることを知らず、溢れ出す。 彼は10数年共に生きた少女が去った方向へと目をやった。 彼女は泣いていた。間違いなくこちらに目をやって。 やがてその映像も薄れていった。 映像装置もすでにおかしくなってしまったのだろうか。 それともこれは――涙というものなのだろうか――? 何度三人の間に沈黙が降りただろうか。 それでも、容赦なく時間は流れていた。 シャトルはすでにブラック・ホールの圏内からはずれている。 危険が去ったとは言え、誰も喜ぶ者は居なかった。 ただ言い様のないやるせなさが三人を襲う。 三人は微動だにせずに、外を見つめている。 シャトルは自動で動いていた。 途中からケインのコントロールを受け付けなくなったのだ。 それに抵抗する気も、何とかする気も起こらず、とりあえずコントロールの好きにさせている。 「結局……なんだったんだろうな……」 やっとの思いで出た言葉は、ひどくつまらないセリフだった。 「……誰を助けるためにあんなに苦労したんだかわかりゃしないわよ…… 全て台無しにしてくれちゃって……あの馬鹿……」 セピアは泣いてはいなかった。 涙がもう尽きていたのかも知れない。 そして、シャトルのディスプレイに映像が生まれた。 『間もなく、第三探索基地に到着します』 「探索基地って……?」 「……アレスがあたしに内緒でナイトメアの動きを探るためにばらまいた基地の一つよ。 主制御システムなんて詰んでいないけど、いくつか部屋があるから休むぐらいは出来るわ。 そこでソードブレイカーの到着を待ちましょう」 問いかけるミリィに答えるセピア。 どちらも酷く疲れた様子だった。 身体が疲れていたのも事実だが、それ以上に疲れていたのはもっと別の理由からだった。 シャトルは機械的に、基地へと接続を果たした。 自然と会話はない。 それでも基地の内部へと三人は到着した。 そして三人は絶句する。 そこにはずいぶんと鮮やかな装飾がされていた。 色とりどり、光を反射させる紙で作られたリングの飾り付け。 あちこちに浮かぶ風船。 「こ……れは……?」 呟くセピアだが、もちろん誰も答えられない。 やがて、部屋の中央に置かれたテーブルに置かれていたものに気が付いた。 そこには、ずいぶんと大きなケーキが置かれていた。 そして、そこにはろうそくが刺さっている。 「セピア、後ろ!」 「え……?」 振り返ると、入り口の真上に、夜に輝くネオンのようなものが置かれていた。 そしてそこには文字が輝いている。 『ハッピーバースデイ セピア』 「あ………」 それは、一日遅れの誕生日プレゼントだった。 何度、もう泣かないと誓っただろうか、それでも。 セピアの頬には涙が流れていた。 喜びと悲しみに混ざったその涙は止んでくれない。 その時、報告が艦内に響いた。 『1番ゲートに何かが漂着してきました。 至急確認を勧告します』 動けないセピアに気を利かせて、ケインが1番ゲートへと歩いていった。 そして、その正体を理解すると、ケインは元来た道を走りだしていた。 「おいっ!セピアっ! バースデイプレゼントが届いたぜっ!」 「ケイン、こんな時にそういう冗談は……」 「いーからこれ見てみろっ!」 ミリィの言葉を遮って、自慢げにケインは背中に隠していた物を前へと出す。 それは一抱えほどある、黒い金属質の箱だった。 「何これ……?」 『アレス=ミアヴァルドと言います。よろしく。主殿』 「えっ!?」 紛れもなくその黒い箱の中から聞こえた声に、セピアは驚きの声をあげる。 『いやぁ、さっきは潔いこと言って格好つけたんだけど…… やっぱり暗くて広い宇宙に一人きりっていうのは怖かったんでな』 映像すらない黒い箱は、それでも苦笑しているように見えた。 「この……ばか……!」 ――ハッピーバースデイ セピア―― そう聞こえたのを最後に、ケインはこの先の二人の会話は知らない。 なんとなく、居ては悪いような気がしたのだ。 ケインもミリィも、同じ意見だった。 そして、迎えに来たキャナルと共に、静かにそこを去っていった。 『ミアヴァルド』と『ファイナル・フォートレス』は当然の事ながら、全壊していた。 部品は全て吹っ飛び、塵と消えた。 爆発に紛れて飛ばしたアレス=ミアヴァルドのメモリーボックスにも、遺失技術(ロスト・テクノロジー)はあまり詳しく残ってはいなかった。 あちこちに漂流している探索基地から、何とか必要な部品を削り、新しい船を造るにはどれだけの時間が必要か―― それでも、二人には。 その時間さえ愛おしく、大切なものだと感じ始めていた―― |
11042 | 『朋友 まみえる』 6 | 白いウサギ E-mail | 7/15-17:03 |
記事番号11036へのコメント 6 『エピローグ』 ――海は広い。 今更ながらに、ふとそんなことを思う。 朝に生まれる霧はまだ晴れていない。 日の光に煙る海に、何か妙にもの悲しい神秘を感じるのは、やはりこの前あんな事があったからなのだろうか。 それでも、ミリィはいつまでも海を眺め続けた。 そしてやがて背後から近付く気配が一つ。 「よぉ。大物は釣れそーか?」 「マントを付けた奇妙な魚は釣れたみたいね」 ミリィの返事を聞きながら、ケインは黙ってミリィの横へと腰掛けた。 辺りはごつごつとした岩があちこちに転がり、眼下には海の白い溜息が見える。 ミリィにとって、久しぶりの磯釣りだった。 しばし波の音だけが時を流れる。 やがてぽつりとケインが漏らした。 「糸垂らしてぽけーっとして……楽しいか?」 「わかってないわねー。 釣り糸を揺らしながら、時間の流れだけを感じる。 最高に贅沢な過ごし方なのよ」 「そういうもんかねー……」 ケインは頭の後ろで手を組んで、ごろりと横になった。 リゾート地の端。更にまだ朝も早い時間のおかげか、人は他にいない。 思えばこんな朝早くに海を訪れるなんて初めてかも知れない。 ケインは静かに目を閉じて、その空気を楽しんだ。 「あの……さ。ケイン」 「ん?」 「――前にさ、ラグルド社で仕事受けたとき覚えてる?」 「ああ。宇宙海賊(スペース・パイレーツ)騒ぎのアレだろ。 裏で会社とグルになってたっていう……」 「そう。その時ケイン、あたしのこと助手だって言って紹介したわよね?」 「え……?ああ、多分そーだったと思うが……」 目は開いて、頭上を探るようにして答えるケイン。 「でもね……セピアにはあなた、相棒って言って紹介したのよ」 「……そうだな」 「大した違いはないって思うかも知れないけど――あたしは嬉しかったわ」 「…………」 「――話はそれだけ。 じゃ、帰りましょーか。ソードブレイカーへ」 いつのまにか釣りの片付けを終えたミリィが立ち上がる。 慌てて起きあがるケインの目とミリィの延長線上に、朝日が昇っていた。 眩しさに目を細めながらも、ケインは微笑んだ。 「ああ、そーだな。 キャナルには文句言わなきゃならねーこともあるしな。 ――帰ろう。ソードブレイカーへ」 海と朝日は静かに彼らを見送った。 心地よい風と共に。 「いや、ですからっ! わたしだって色々あったんですからっ!」 こちらはソードブレイカー。 ケインとミリィが操縦室(コック・ピット)に戻り、そこでは珍しくキャナルが慌てて弁明をしていた。 何故リヴァイア星で置き去りにしたのか。 実状を話せばすぐ納得して貰えるはずではあるが、キャナルは話そうとはしなかった。 遺失宇宙船(ロスト・シップ)『ミアヴァルド』との戦闘のことも、ケイン達には伏せてある。 誤魔化すために、外装も急ピッチで誤魔化せる程度にはなおして置いた。 場所によっては書き割りまがいの直し方もあるが、ともあれそれは後で修理することにしてある。 「ほぉぉぉぉ……… 色々か。それじゃあしょーがねぇよなぁ……」 「そーですよねっ!ええっ! しょーがないですっ!あははは(はあと)」 こくこくと首を勢い良く縦に振りながら、乾いた笑いをするキャナル。 「――と、普通は言うかも知れねぇがな。 あいにく俺は過ぎたことにぐちぐち言う男っていう性別なんだよ」 ――う゛っ………やっぱし根に持ってる…… 前にケインのことをからかった事でこういう返し技が来るとはキャナルも思ってもみなかった。 「いいかっ!?今日という今日は――」 「あ。通信が入りました」 言うと同時に通信をつなげるキャナル。 本来ならケインに伺いをたててからつなげる所なのだが、会話を遮るために行動が素早い。 『こちら星間警察(U・G)のレイル=フレイマーだ』 こめかみの辺りをぴくぴくしながら言う通信者に、ケインはつい後ずさる。 「よ、よおレイル!元気だったかー?」 『はっはっは。元気だったよ。 お前がさんざ引っかき回す前まではな』 ひききっ! 顔を青くしながらも、ケインはそそくさと逃げようとするミリィの首根っこを捕まえた。 「ちょっとっ!ケインっ!?」 「お前一人逃げようとすんじゃねぇっ! パトロール艇に乗ってたのはお前も一緒じゃねーかっ!」 「勝手に乗り込んだのはケインでしょっ!? 文句なんか言う暇なかったじゃないっ!」 『ま、なにはともあれ――パトロール艇は何処にやった? 反応が消失したんだが』 変わらぬ笑顔で言うレイル。 声だけは異様に低い。 その言葉に更に二人は凍りつく。 「あ、あれなー……ブラック・ホールに飲み込まれちまった」 言って、再びから笑い。 しばしぎすぎすした雰囲気の中で、男二人の笑いが流れる。 『――しめて10000クレジット。弁償してもらうからな』 「なにぃぃぃぃぃぃぃぃっ!? あんなボロ船がっ!?」 『お・ま・え・ら・のっ! 手配を解くための裏資金込みだっ! 嫌なら一生お尋ねもんで居るんだなっ!』 「いいっ!? 冗談じゃねーぞっ! 何とかならねーのかっ!?」 『これが限界だっ!!』 画面の中で叫ぶレイル。 そりゃあ確かに今内部粛正の警察内部では手配を解くだけで沢山のリスクを負うんだろうが……それでも1万は無茶である。 ただでさえ借金を抱え込んでいるって言うのに、これ以上の出費はまずかった。 「キャナルぅぅぅぅ!」 「知りません」 すがりつく間もなくあっさりと遮断するキャナル。 先程の会話などさっぱり忘れきることにしたらしい。 「こ、このガキ…… やっぱりセピアに遺失言語(ロスト・ワーズ)でも教わって復讐してやりゃよかった……」 「聞こえてますよ♪」 「う゛……」 思わず後ずさるケインだが、その背後にはレイルの通信画面。 ミリィは薄情にもいつのまにか姿を消していた。 『ケ〜イ〜ン〜?』 「けぇぇいぃぃん?」 二人に睨まれ、行き場を無くすケイン。 空調設備は快適なはずなのに、汗はだくだくと噴き出していた。 「何で俺ばっかりぃぃぃぃぃぃっ!!」 ケインの叫びが虚しく宇宙に広がり、溶け込んだ。 災難は続く。 ――『朋友 まみえる』 完―― |
11043 | 『朋友 まみえる』 7 | 白いウサギ E-mail | 7/15-17:06 |
記事番号11036へのコメント 7 『なんかもぉ言い訳の羅列になるような気がひしひしとするあとがき』 *この物語はフィクションの上にパロディです。 実際の科学考証・物理法則は一切関わりありません。 前作(哀夢 踊る)と同じ前置き(保険)を置いたところで、と。 お久しぶりの皆様も、初めましての皆様もご一読いただきありがとうございます。 白いウサギです。 受験のためにと引退表明(らしきもの)を一年ぐらい前に書き込んで、はや一年(当然) その間にロスユニは終わるは、スレイヤーズは終わるは…… K:あぶなぁぁぁぁぁいっ!! ざすっ! K:……うーん……さすが運動不足。あっさりイガグリ(季節はずれ)を顔面に受けるとは。 白:うどうああああああああああああああっ! K:さてさて。皆様お久しぶりです。 知っている人は知っている。知らない人は全く知らない。 白いウサギの妹、Kです。 白:んにきゃくあぁぁぁぁぁっ! K:このあとがきの形式も、好評のおかげで3年間以上もの期間、一部を除いて変わらずです。 当時はこの形式の後書きも珍しかったんですが、 なんかもぉぽこぽこ似たようなのが出てきて、オリジナリティの欠片もない状態ですね。 ま、もともと原作のあとがきすらパロディっちまえと言う安直な考えですから、もとよりオリジナリティなんぞ有りはしないのが正確なところですが。 白:どわひぃぃぃぃぃっ! K:……………………… 白:ひやぁぁぁぁぁっ! K:………沈め。 どがごごっ! K:さて、今回のロスト・ユニバース長編、いかがだったでしょうか。 正直、2ヶ月以内に書き上げるのが目標だったのですが、どうなっているのでしょうか? しばらく書いてない間に、某 ○井 隆 さんが売れまくって同姓同名の父上がかなり困ってるらしいのですが。 曰く。病院で呼び出されると場がざわつく。 曰く。取り調べの最中、名乗った瞬間吹き出される。 などなど、実に爽やかな生活模様が展開されています。 ちなみに、私も学校で家からの電話がかかってきたのに、『藤○ 隆』さんから電話ですなんぞと言われ、教室中物言いたげな目に晒されたこともあったりします。 うぉのれっ!許せんっ!何故家から電話ですと言えないのよっ! 等という、思いを視線で表しながら、受話器を受け取ったことも、まぁ若気の至りって奴ですね。 まだ高校生だけど。私。 そうそう、高校生と言えば―― 白:やかましぃぃっ! K:あ。復活した。 白:おうっ!復活したわいっ!死ぬ直前から戻ってきたわいっ! K:イヤだなぁ、姉ちゃん。 私の姉ともあろう者が、かき氷用の氷一殴りで死ぬわけ無いじゃない。 白:死ぬって。ふつー。 K:でも、氷だと凶器が溶けて無くなるから証拠が無くなるのよ? 白:………怖いぞ……その発言は…… K:まあ、それは冗談『かは』おいといて。 白:ふつー、冗談『は』おいといて、と言うはずなんだが…… K:私嘘嫌いだから。 白:……………………(滝汗) K:ともあれ、高校『ご卒業』おめでとうございます。 白:うくっ………ロコツな……… K:来年は入学おめでとうって言えるといーわね♪ 白:しくしくしく……… K:つー訳でもう一年、受験生頑張ってね。 白:うぃっす………了解しやした……… ――って、この話ふると私はともかく周りがひくからやめろって言っただろーがっ! K:私はともかくって……しっかり落ち込んでたみたいだけど……… 白:この際それは些細な問題。 K:そ、そお………ま、いー加減話が逸れまくってるので元に戻すと、 今回は無謀にも第五巻後のお話でした。 白:おうっ!無謀だよっ!確かにっ! K:本人が胸はって言うなってーの。 ともあれ、今回のお話ですが、毎度の如く、行き当たりばったり? 白:そーやって人が成長してないみたいに……… K:してるの?成長。 白:………………………………………………… K:いーわ。今の沈黙が全てを物語ってるから。 白:……………………ううっ………… K:はい、そこー。泣くなら他でやってねー。うっとーしーから。 白:妹よ……姉ちゃんは悲しい…… K:さて、今回の一番の波乱はなんと言ってもっ! 『漆黒の騎士(ヴォルフィード・ナイト)』ですねー。 白:ぐはっ! K:血を吐くな。血を。 ともあれ、白ウサのネーミングセンスがわかったよーな気がします。 白:で、でもっ!別にあーいった船が造られても不思議はないと思うんだが…… K:確かに不思議はないわね。でもネーミングセンスは関係なしっ! 白:い、いやあの………っ! 最初は魔王が武器持ってんなら、竜神様が何か手ゴマみたいなの持ってても良いんじゃないかなーと思って。最初はならこっちも武器だっ!と思ったんだけど――― K:安直すぎてやめた、と。 白:そうっ!ならば武器ではなく防具にしようかとも思ったんだけど、 そーすると神様が仲間盾にしながらってイメージ出ちゃうし――― 他には、竜の峰(ドラゴンズ・ピーク)みたいに神様の住処みたいな物も考えたんだけど結局やめて。 K:結局騎士にした、と。 白:そーです。赤竜の騎士(故郷の姉ちゃん)も居ることだし、黒竜の騎士(ヴォルフィード・ナイト)でも問題ないでしょう。 細かく考えれば世界違うしスレだしおおありだけど。 K:それって問題あると言うんじゃあ………? 白:最初は漆黒の騎士(ダーク・ナイト)にしたんだけど、完璧悪役っぽいし(無視) K:それで故郷の姉ちゃんみたく、ヴォルフィード・ナイト? 白:そーです。ちなみに、ミアヴァルドって名前は勝手に私が作り出しました。 ゴルンノヴァ、ガルベイラ、ボーディガー、ネザード、ラグドメゼキス、 ディグラディグドウ、ヴォルフィード。 感覚似たよーな名前はない物かと悩みまくったあげくに出てきた名前です。 ちなみにその後に、ヴォルフィードから名前をとって、ミアヴォルドにする、と言う案も出たんですが、別にいいか、とやめました。 K:そう言えば、今回の話しを書く準備で一番最初に決まった事よね。その名前。 白:うん。今回の話しを書く順番としては、 ロスユニの長編を書こう!→ 前作(哀夢 踊る 参照)の船はやたらと弱かったんで、強い遺失宇宙船(ロスト・シップ)を出そう!→ つーことはただのロスト・シップじゃあまずいから神話の名前もらってる奴を出そう!→ うーん…………ミアヴァルドでいっか。つーリズムです。 K:リズムなの………? 白:いや、まぁ解釈は人それぞれに任せる、ってことで。 K:そう………んじゃあ、このままでっち上げ品について解説をしてもらおうかしら。 白:でっちあげって………そう言う言い方は……… K:ま、お気になさらずに。まずは異界黙示録(クレアバイブル)まがいのブラック・ボックス! 白:く、クレアバイブルときたか………まぁたしかに知識の集合体って意味では似てるかも……… あまり深い意味はないです。おそらく。 K:をい………それで終わり……? 白:いや、出来ればこの話題は触れないでくれると後々助かるんだけど……… K:そ、そお………じゃあ、アレス。それも大昔ver(アレス=アソォートのことね)いこー! 白:ああ。大昔verね。 んーとね。大昔の人は大変だったんだよってことだけ。言いたいことは。 K:をい……… 白:まぁ、確かに私の頭ん中では父親との確執とかのドラマがあったりするんですが、別にかたらんでも…… K:乗りかかった船よ。話しなさい。 白:じゃあ、少しだけ。 おやじ、ダークスターとその子分を作り上げて大出世。 すっかり調子に乗ったおやじは酒飲む、女遊びはする、家には帰らないと悪行の限り。 その遊びの最中、ダークスターの攻撃でご臨終。 親父の知識、技術を教え込まれた息子、アレスぐれる。 白:いじょ。 K:嘘を付くな。嘘を。 白:えーと……… 技術を教え込まれながら、父のやり方に反発。喧嘩別れした日に父親の死を知る。 複雑な気分になりながらも、政府のお偉方からダークスターのことで相談を受け、ヴォルフィードの制作に携わる。親父の考えが間違えだったと証明するため&罪滅ぼしのため。 途中、ミアヴァルドの制作へと移り、以下本文参照。 白:てなところですか。 K:おおー!一応考えてあんのね。 白:嘘だと思ってたのか………? K:ちょっと(はあと) 白:あ、そお………まぁ、今回、語り尽くせない、いわゆる裏設定というのが多いから。 ちょっと気を抜けば、説明ばっかになっちゃうんで。 説明ばっかだよと思った方もいるかも知れないですが、一応気を付けたつもりです。 K:あくまで一応よねー。 白:ほっといてくれ。文章力と構成力の力が足りないんだろ。 今回説明ばっかで良いからノンストップでゴールへ走れ!ってな状態だったら、ソードブレイカー一行に拾われたセピアが一から十まで全て知っていて、べらべら喋り倒して、さあ、FFへ殴り込みましょう!―――になっちゃうし。 K:そ、それは確かに身も蓋もないかも……… 白:それじゃあただ自分の頭に浮かんだ設定を発表してるだけでしょ。 K:そーね………ただ単に嫌がらせにしかならないわ。 白:いや、嫌がらせとまで言われるとちょっと……… K:ま、それはおいといて。次は、レイル警視。 白:ちょっと時間の経過と彼の行動を表すために昇進していただきました。 ナイトメアの一戦後、星間警察(U・G)のことなんのフォローもなかったら変だし、だからといってただ単に説明文の羅列じゃあ面白くない。それでご登場願いました。あとのリヴァイア星でのごたごたは登場する予定はありませんでした。出てもキャナルにいじめられて終わり、ってはずだったんだけど。 K:をい………それは惨めだぞ……… でもまぁ、最初はリヴァイア星の警察内でのごたごたはプロット完成時点でもなかったしね。 白:まーね。今まで一度もプロット通り話が進んだことがないし。 K:それはそれで問題なんじゃあ………? 白:でも、プロットよく見てみると、さっきのゴールへ走れ!なストーリーになってたんで、まずいでしょ。 K:プロットってストーリーの大筋しか書かないから、裏設定山ほどあるのにそれを無視して書いてるからそーなるのよ。 白:そーだね………最初の宇宙船同士の戦闘なんて、『苦戦。何とかして離脱』しか書いてないし、その後は『事情説明』だけだし……… 最後の『ファイナル・フォートレス』の方にいる『ミアヴァルド』との戦闘も、ケインとミリィで闘う。決着。 しか書いてないし。どうやって決着つけるか全く書いていない。 特に戦闘シーンはそれが顕著だな。 K:それはもうプロットとも呼べないのでは………? 白:いやぁ、実は最近ひしひしとそう感じてきた。 K:も、もういいわ……… えーとそれじゃあ……ちょっと重要っぽいけどなんだかさらっと流した『サイ・コンデンサー』について。 白:ほーい。コンデンサーのサイエネルギー版です。 K:それで説明終了……? 白:うーん……ああ。高校の物理取っている以上の人しかコンデンサーはわからないか。 コンデンサーって言うのは、電気を貯めることが出来る装置の一つだと思ってくれれば結構です。 そんで充電が満タンになったら別の回路に流れ出す性質を持っています。 K:いまいちわかんない……… 白:じゃ、わかりやすく具体例で言うと、使い捨てカメラにその機能があります。 フラッシュの充電をオンにして充電が完了、つまり満タンになると、コンデンサーが他の回路に電流を流し、それでパイロットランプが点灯します。 そんで、溜め込んだ電気を一瞬でぱっと光らせる(フラッシュ)のもコンデンサーの力です。 いやぁ、偉大だなぁ。コンデンサーって。 K:なるほどなるほど。 それで、電気ではなく、サイ・エネルギーを溜め込むことが出来るのが、「サイ・コンデンサー」と。 白:その通りっ!――はい。もちろんでっちあげですけど。 そもそも、『ミアヴァルド』が強いのは、サイ・エネルギーが沢山溜め込んであるからだって解釈にしておいたんだけど……原作読むと、遺失宇宙船(ロスト・シップ)って、サイ・エネルギー関係ないんだよね。希望を糧に、とは書いてあるけど。 K:そう。意外にも。 TV版でばしばしサイ・エネルギーで船が動いていたから、勘違いしていたのよね。 白:うーん……ただ原作にはそう言う解釈が明示されていないってだけで、実際は関係あるかも知れないからあえてこちらも明示しなかった。 前作の『哀夢 踊る』ではばりばりサイ・エネルギーで船動いてたけど。 K:まぁ、あの頃はまだ原作が終了していなかったから。 さて、んじゃあ次は遺失言語(ロスト・ワーズ)。 白:ああ……アレねー…… 最初はファイナル・フォートレス内部のギャグだけに使用するつもりだったんだけど、ラスト上手く仕えてらっきぃでした。 K:いやぁ、ファイナル・フォートレスで敵吹っ飛ばす時、「ラ・ティルト!」と叫んでしまったわ。つい。 白:叫んだのか……?本当に……? K:心の中でね。 白:ああ。そう。もういいやなんでも。 K:じゃ、いいわね。 白:………………………………………… K:さて、気付いた人もいるかも知れませんが、このお話は終わっていません。 白:をい……なにを……? K:だってねぇ、ガルズがどうしてブラック・ボックスまで行けたのか、あの後指名手配されたまんまのはずのケイン達はどうしているのかさっぱり書いていないじゃない。 白:うあああああああっ!! あとがき収録前にそれは話すなって言ったでしょーがっ! K:そだっけ? 白:ほらっ!ここっ!(言って、企画書を見せる白ウサ) K:読んでないもん。そんなの。 白:読まんかいっ! K:えーと……なになに 『このお話は言ってしまえばロスユニ第二部の第一話。 だけど、そう明示してしまえば先書かなくちゃいけなくなるかも知れないんで言わないこと。 書けるとしてもいつ書けるかさっぱり検討つかないから。 おそらく受験後になるかも知れないし。そーなると後半年以上かかるから。 つーことで、あとがきでは絶対に言わないこと』 姑息ねー。 白:読むなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! K:何言ってんのよ。今読めっつったのはあんたでしょーが。 白:今読めって言ったけど読めって言ったのは今じゃないっ!! K:わかりやすい日本語喋ってくれる? 白:お前のせいだっ!お前のっ! K:はい、次いきましょう。次。 なんだかわかりにくい、アレス君シリーズ。 白:シリーズってお前…… まぁ、いいか。 『アレス=アソォート』 ヴォルフィードが作り出された頃の時代に済んでいた技術者。 ミアヴァルドは彼の設計による部分も多い。 『アレス=ミアヴァルド』 遺失宇宙船「ミアヴァルド」の主制御システム。 キャナルと似たようなものだと理解してくれれば結構です。 『ミアヴァルド』 一番ややこしい名前。 パターン 1 遺失宇宙船(ロスト・シップ)自体(機体を指す)の「ミアヴァルド」。 パターン 2 遺失宇宙船(ロスト・シップ)の意思である「ミアヴァルド」 パターン 3 ブラック・ボックスからのデータと混同し、自分自身を見失って暴走してケイン達とチャンバラやった、「ミアヴァルドと名乗る者」 白:ちなみに『ミアヴァルド』ですが、パターン1とパターン2の区別がわかんなくてもいーです。 ともあれ、パターン3とは違うと感じてくれれば。 さらにいうと、ヴォルフィードがソードブレイカーなら、ミアヴァルドは「輝ける希望(シャイニング・デザイア)」という名前でいるという案もあったんですが、ややこしい上に、必然性を感じなかったんで却下しました。 K:次は漢字の問題。情けないことにガルヴェイラの漢字表記が出来なかったのよね。 白:うっ……左に「風」右に「具」と書いて一文字のアレ。なんと読むんでしょう? K:おかげで文中でも誤魔化して書いてあります。 白:あうあう……段々あとがきが言い訳から恥の発表会みたいになってきたよう…… K:だって恥が沢山あるんだもの。 白:しくしくしく………… K:さてさて。あまり後書きだらだら書いてもしょうがないんでそろそろ最後のお話に行こうか。 白:最後つてもどーせ…… K:あんたの好きなこと言って良いわよ。 白:まじっすかっ!? K:何故口調が変わる……? 白:いや。意外だったから。 K:一応このお話書いたのあんたなんだから、こういうのがおかしいんじゃ……? 白:ま、気にせず。気にせず。 よぉしっ!ではっ! 皆様大変お疲れさまでした。 本当に読んでいただき感謝いたしております。 さて、このお話は去る5月20日。 某友人より執筆依頼を頂き、2ヶ月以内に仕上げるのが目標と自分で言って書き始めたお話です。 もちろんその頃最初に浮かんだという『ミアヴァルド』すら浮かんでいなかったんですけど。 2週間ぐらいは何も浮かばなくて、 「あー、まずいなぁ、どーしよっかなー。やっぱむぼうだったかなー」 などと、諦めきってギブアップ宣言をしようとした時期もあり、それでも何とかこのように仕上がりました。 このお話、シーンで最初に決まったのは、アレスの大昔verのシーンでした。 そっから、第二部だからそれぞれの変化(特にキャナル)も入れなくちゃなーってなっていき、 今のお話になりました。 前回は完璧にロスユニの雰囲気を描くのが目標でしたが、 今回は人間的な成長や感動できるシーンを書くのが目標でした。 そのため、ラスト苦しみまくりました。 実力ない人間がやるもんじゃないです。 それでも、正直楽しかったです。 キャナルがケインの言葉(でも盗聴)で立ち直るシーンや、 ミリィがセピアを奮い立たせるシーンなんか特にお気に入りです。 キャナルの部分は最初っからあの所のセリフは決まっていたのですが、ミリィは苦労しました。 なかなか上手いセリフが出てこず、急遽変更してケインと最初っから闘うって言うverもありました。 でも、そうなるとミリィの影が薄くなるし、キャナルの盗聴時のシーンの流れも悪くなってしまったため、 やはり元に戻し、なんとかセリフをひねり出しました。 それなのに事故って真っ白になって、やり直しという涙を誘うこともありましたが(実話)。 ともあれ原作、CD、アニメを見直して。とにかく、ミリィは頭に詰め込みました。 その分上手く言ったと思っているのですが、本当のところはあなたの感じるところ。 判断するのはこれを読んで下さったあなたです。 アレスがプレゼントとして漂着してくるというシーンも、人によって賛否両論あると思います。 でも私自身はハッピーエンドが好きなのでああさせていただきました。 最初っから決まっていたし。 K:はいっ!すとっぷっ! 白:何? K:そろそろあとがき終わらない? 白:人の好きにさせるといっといて…… K:でもね。お客さん帰りかけてるよ。ほら。 白:ああっ!?本当にっ!? ――って、なんでわかるんだよっ!あんたはっ! K:ノったくせに。 白:うっ。 K:まぁともあれ、とりあえずこの辺で終わっておきましょう。 どなたか奇特な方が感想一行でも書いて下さったら語る場を作ることを許す。 白:何故あんたに許されねばっ!? K:いーから黙るっ!はい、おつかれさーん。これで収録は終わりでーす。 あ。音響さんお疲れさまです。帰っていいですよー。 白:え?あ?ちょっとマジで帰っ―――ブツッ アナウンス : この番組はスターアダルトレーベルでお馴染みの クィーンレコードの提供でお送りしました。 EDが流れているバックで何やら文句を言っている音が混ざっている。 しかしそれも結局、ボリュームが下がり、CMで完全にかき消される。 |
11046 | はじめまして〜☆ | 羅紗 | 7/16-15:04 |
記事番号11043へのコメント こんにちは!羅紗と申します。 新参者ですがどうぞよろしく! 実はものすごく楽しみにしていたんです。 「哀夢 眠る」を過去の記事で読んだとき、「すごいぃぃぃっっ!」とパソの前で感心していました。キャラが生き生きとしていて、神坂口調そのまんまだったので。 今回もキャナルの言葉づかいに惚れてしまいました。 原作キャナルが好きなもんで。うまいです。 はあ、しかし先を越されてしまった。 実は「私もロスユニ書こうかなぁ」などと考えていたりしてたんですけど……出直すことにします。ちゃんとプロットたてよっと。今まで行き当たりばったりだし。 あと、私も去年一年余分に勉強したやつです。 大丈夫!そこそこまじめにやって、最後まで諦めなければ神様は救ってくれる(はず)! 諦めることだけはしちゃいけません。 それでは。 次回作、楽しみにしています♪ 羅紗でした☆ |
11051 | はじめましてっ!羅紗さん(^^) | 白いウサギ E-mail | 7/17-01:46 |
記事番号11046へのコメント >こんにちは!羅紗と申します。 >新参者ですがどうぞよろしく! こちらこそよろしくお願いします! 白いウサギというふざけた名前ですが、石は投げないで下さい(笑) >実はものすごく楽しみにしていたんです。 >「哀夢 眠る」を過去の記事で読んだとき、「すごいぃぃぃっっ!」とパソの前で感心していました。キャラが生き生きとしていて、神坂口調そのまんまだったので。 ぬをををっ!! 過去の記事までチェックして頂けたとはっ! くくうっ!豪儀だねぇ……って、意味違うか……? すんません。白ウサ、テンションで文面(口調)全く変わっちゃいます。 ほっといてあげてください。 過去の記事を読んで下さったのならすでにおわかりとは思いますが、 白いウサギが書く長編は本気で長いです。 つー事で、読んでいただけるだけでも感謝感激。 更に感想まで頂けるなんて感謝感激雨霰(訳わからん) 神坂さんの雰囲気というか空気は出来るだけ近づけるように努力してます。 今回オリジナル色が強いですけど(特に後半)キャラのセリフ、 行動だけは不自然ではないように注意したつもりです。 >今回もキャナルの言葉づかいに惚れてしまいました。 >原作キャナルが好きなもんで。うまいです。 私も原作キャナルファンです。 だから、キャナル書くときは楽しいですねー。 今回、キャナルしか居ない状態での宇宙船の戦闘シーンは めちゃ苦労しましたが。 >はあ、しかし先を越されてしまった。 >実は「私もロスユニ書こうかなぁ」などと考えていたりしてたんですけど……出直すことにします。ちゃんとプロットたてよっと。今まで行き当たりばったりだし。 早い者勝ち♪ ――嘘です……気にせず執筆頑張って下さい。 私も行き当たりばったりです。 ええ。本当に。 プロット、原型とどめてないです。 伏線とかも、あとで「あ、そーか。アレが伏線だったんだ」などと、 自分で勝手に読者になっている始末です(をーい) あとがきで書いてあるように、進歩してないっす。 今回の話を作るのに、 プロット(殆どメモ書き)に3週間(この間2週間は何もしなかった)。 本番に3週間程度。 さらにとある方に原稿チェックをしていただいたのが2週間、 そのアドバイスを得て、加筆修正に1日。 ちなみに加筆部分は、 ミアヴァルドVSキャナルの宇宙船のゴミ箱での戦闘シーン。 エピローグのケイン&ミリィの磯釣りシーンです。 最初はなかったんですねー。 ここに投稿する前日に一気に書き上げました。 ゴミ捨て場のシーンが加えられたのは、アドバイスの中に、 宇宙船での戦闘シーンの迫力が足りないと言われて、です。 ……宇宙での戦闘シーンだから、手っ取り早く、派手な擬音で誤魔化すというわけにもいきませんし。だから周りの被害で表現するったって、真空だし。 土煙とか使えないし。 ロスユニ書く時きっと苦労しますよー……ふっふっふ(脅してどーする) >あと、私も去年一年余分に勉強したやつです。 >大丈夫!そこそこまじめにやって、最後まで諦めなければ神様は救ってくれる(はず)! >諦めることだけはしちゃいけません。 ありがとうございます。 そーですよねー。 諦めなければ神様は救ってくれるし、 諦める人間には神様見向きもしないですよね。 ……切りつめて考えると神様信仰しちゃあいませんが、理解はしてます。 神様、諦めないから助けてプリーズ。(前向きなようで後ろ向き) >それでは。 >次回作、楽しみにしています♪ > >羅紗でした☆ う゛………… あ、あああああありがとうございます。 き、きききあい……じゃなくて期待に応えられるよーに……頑張ります…… ……いつか……(ぽつり) ごめんなさい。マジで検討ついてないです。 スレイヤーズの短編なら書き上がっているんですけどね。 DMで掲載され、今度発売される文庫にも載っている、 「プライド・オブ・ダークネス」の続編というか、EXというか(^^;) ともあれっ! 長い小説を読んでいただき、さらには感想まで頂き、 本当にありがとうございましたっ! |
11082 | Re:『朋友 まみえる』 | ブラントン | 7/20-01:06 |
記事番号11043へのコメント おひさしぶりです、白いウサギ様。 ロスト、スレと長編が続いていたので、次は久々に「交錯」が来るのかな? と思っていたのですが、予想外の再びロストということで喜びとともに驚いています。(ホントに某掲示板で知ったときは驚きました) やっぱりスレよりロストの方が圧倒的に数が少ないので嬉しいものでして。 今回もリアルタイムで読み進めつつ感想を書こうと思っていたのですが、どうもたびたび読むのを止めるのがめんどくなってきてしまいまして。うう・・・・・・だって早く先が読みたくして仕方ないんですもの・・・・・・そんなわけで途中で止めて一気に読んでしまいました。2時間かかりました・・・・・・ だってB5で印刷したら70枚余裕で超えるんですよ! しかも1ページに60行ぐらいあって! 要するに文庫で300ページぐらいあるってことじゃないですか! うーん、相も変わらずすごい長さです・・・・・・ただただ敬服。 ではさっそく感想を・・・・・・の前に、一つ謝らなければならないことがあります。 前作『哀夢踊る』の時のことなんですけど。覚えていらっしゃるだろうと思うのですが・・・・・・私こんなこと書いていまして。 > どうしてスターゲイザーが出てこなかったんですかっ!? ・・・・・・う、しっかり神坂先生にしてやられていた証拠です、はい。 ごめんなさい。ばっちり出てました。ええ。もうばっちりと。 本当にすみませんでした。 それでは、話題ごとに。 タイトル・目次 タイトルの『朋友まみえる』は「棋士まみえる」と「朋友散る」から取ったと思われますが。 朋友となるとケインのかミリィのだろう、まさかレイルじゃあるまいし・・・・・・と思っていた私は早くもやられたクチです(TT) えー、でもあれは朋友っていうのでしょうか?<負け惜しみかい 目次はロスト原作のパターンを踏襲しているはずなので「セピア=スカイ」は人の名前(女性?)。「ミアヴィルド」は敵の船(遺失宇宙船?)の名前のはずという予測はあたっていたのでちょっと一安心です(^^;) それにしてもchargeで「突入」とかfortressで「砦」とか、よくかっこいい言葉を持ってきましたね・・・・・・ ケイン ケインはある意味いちばん苦労させられることがない気がするのですがどうでしょう? アニメ版は違いますが、原作の方はリナよりもためらうとか悩むことのない人ですし。 今回もいろいろと突っ走ってくれて、さすが主人公だなという感じを受けました。結局リナ同様行動を決めるのは彼ですものね。ラスト付近、キャナルを立ち直らせたあのセリフは状況の持っていき方自体にもうまさを感じました。あとがきでもお気に入りとおっしゃっていますが。 それよりも時折見せる「なんかとってもやばそうな言動の数々」の方が難しいそうな印象を受けているのですが、しっかり面白くてホントに凄いなと思わされました。 ミリィ 今回のミリィの特徴としてはずっとケインといっしょにいる点かと思います。そんなわけで最初から最後まで二人の掛け合いが見られるわけですが。 しかも今回はキャナルにスポットが当てられているので、その影響もあって見せ場の少なさではちょっとミリィファンとしては悲しいかも<こら やっぱり彼女の見せ場はケイン同様ラストバトルでしょう。これもお気に入りみたいですね。 こういういちばんいいシーンをしっかり最後に持って来れるのもまた技術かと思います。 ミリィの過去についてはいろいろ謎は多いですが、このセリフに彼女の過去の重さを凝縮している感じを受けて素晴らしいと思いました。 キャナル (容貌についての描写がない気がするのですが、やはりお団子頭のあのバージョンではないのでしょうか?) 続編、という位置付けの影響を最も受けているのは彼女かと。 というより彼女を主役に引っ張り上げるには原作の4巻までだと無理な気がしています。そもそも出番も少なめで情報も少ないですし。 うまく表現できないですが、キャナルがケインに依存している部分が描かれているように思えます。これがあるとキャナルの魅力がまた膨れ上がるのです♪ >わがままだと――思ってくれていいんですよ」 このセリフがいちばん好きです。 レイル 続編となると彼も扱いが難しいように思えました。あとがきでも触れられていますが、三人以外の外部の人間として「その後」の象徴になるのではないかと。 まあ、彼はあくまで脇役なので出番も少ないですし5巻のようなシリアスさはほとんど影をひそめていますし。根本的には味方、という部分では実は目新しいのかもしれませんが不思議と自然に受け入れられるものです。 でもやっぱり少ない出番でもしっかりレイルらしさを振りまいているのは、さすがキャラを把握しているな、と思いました。 セピア=スカイ 初登場時はメリーナを髣髴させるキャラだったように思いますが、本性をあらわしてからはむしろ『レアードの狂乱』のレミナに近くなった気がします。こういったキャラは白いウサギ様の得意な分野なのでしょうか? ある意味性格が超越しちゃってるケイン(&ミリィ)と違って等身大のキャラという印象を受けました。誕生日の伏線もポイント高し。 個人的に名前が気に入ってます。 白いウサギ様らしさ 根本的に原作そのまま、というのがスタイルだと思うのですが、その中でも前作の『哀夢踊る』や他のスレのと通じる白いウサギ様特有の部分がいろいろと感じられますね。 まずは上に書いた、セピア=スカイのキャラ。 あと、説明的な部分(過去とか)以外だとシーンの切り替わりの最初がセリフで始まることがとても多い点。その方が作りやすいので、勢いに乗って書くときはそうなりやすいのでは。2ヶ月で書き上げた、ということなのできっとそういうことなのだろうなと思うのですが・・・・・・ あとは『哀夢踊る』同様ゲストキャラを覆う雰囲気が「やるせなさ」に感じられる点でしょうか。原作のロストにもかわいそうなキャラはいますが、そこが強調されているわけではないですから。 他にはキャナルのこのセリフ。 >「訳ありの人間放り出すことが出来る人間はこの船にいないですから。 このセリフ、結構らしさが出てると思うのですがどうでしょう? ストーリー 正直本編の続編だということには驚きました。でも考えてみれば確かにアニメ版よりは作りやすいのですよね、続編って。特にキャナルとか、アニメ版だと解釈に幅がありますし。 でも続編となるとやはり難しいのは敵。ナイトメアの残党とかだと単純でも絶対スケールが小さくなってしまいますし、となると話を書く意義を持たせるためにはあの遺失宇宙船の設定を持ってくるのは自然の流れだったように思えます。 話の持っていき方としては、最初にいっぱい情報を出しておいて、後から徐々に紐解いていくような感じを受けました。前哨戦を用意したのもまた難しそうに思えました。ミアヴァルド誕生のエピソードは5巻の方法を踏襲しているのですよね。 今回の最大のポイントはアレスの正体でしょうか? 作者の用意する「そうか、そうだったのか」と思わせる仕掛け。今まで読んできた部分が180度ひっくり返るようなどんでん返し。 えと、またしても自分気づけなかったのですが(TT) 後で見るとかなりその部分は狙っているように思えて悔しかったです、うう。 それとまたすごいと思うのは、これだけ長い話にも関わらず主要キャラが少ないという点です。『哀夢踊る』もそうでしたが、本当に増えないんですよね。主要キャラではいちばん薄めなガルズの次が、副署長みたいなチョイ役で、その間の中途半端なキャラが全然いないということ。キャラが少ないとストーリーを膨らませられない自分としてはまったくうらやましい限りです。 テーマ はっきりいいまして、今回の話めちゃめちゃ深いのでは。 キャラのらしさとか戦闘の描写とか技術的な部分の素晴らしさではなくこのテーマがもういうことなしに素晴らしいと思います。 「劇場版」と銘打っても十分通用するのではなかろうかと思うほどです。 ソードブレイカーに対抗しうる遺失宇宙船として補完船を考え出すこと自体は結構自然なように思いますが、その設定をこういう形で話のテーマにまで昇華させたことが本当に凄い。 いや、もう誉めに褒めちぎってたりないほどです。ただただ感嘆と賞賛の言葉しかないです。 「この世界にあってはならないもの」「記憶のリセット」。原作、アニメ、コミックすべてを含めたロストの根本的なテーマを、アレスとセピアというもう一組を出すことで描いたということ。特にアレスのキャラが難易度ウルトラCだったように思えます。 「何でその船が今まで出てこなかったのか」というこの設定で必ず突き当たる壁をもそこに利用してきたところなど、正直衝撃を受けました。 気になったところ 箇条書きでいきたいと思います。 ・セピアをソードブレイカーに入れた理由。 ・ブラック・ボックス前で敵がいなくなった理由。 ・アレスがすぐ消えなかった理由。 この3つに関しては物語の都合上かな? とちょっと引っかかりました。 ガルズ関連は後々語られることを期待。 >大きな闇が消え去った後には、小さな――それでも確かな闇が残っていた。 こんなところとかいかにもシリーズって感じありますね。 ベストシーン&セリフ 最後に恒例の。 前者は・・・・・・というかもうどっちも同じですね。 >「もう一度お聞きします。 から > ――ケインの元へと。 までの二つのシーン。その中のミリィとキャナルのセリフ。ものすっごく妥当かもしれませんが嘘ついても仕方ないので。 原作の範囲を出ないエピローグのミリィの言葉も個人的にヒットでした。 では、ギャグ含めツボにはまった他のところを。 > ――多額の借金を残して。 >「わたし、耐えられません…… ……外に吐き出したくなっちゃいますねー……」 >「修理にいくらかかったと思ってるんですか? 残ってませんよ」 ――前ほどには。 >「……あたし、この頃仕事って言うかボランティアなんだけど……」 >「では巻き戻し―――再生スタート」 優雅な仕草で右手の人差し指をくるくると回し、横へ一閃。 >「あ。わりー。俺が斬った」 >「……ね、ケイン」 「磯釣りはまた今度な」 >「…………………………笑っていいか?」 「どーぞ。ご自由に。 あたしが笑われてるわけじゃないから」 >「とりあえず命令無視して宇宙に出て、生命維持装置(ライフ・システム)を切ったフリして、怯えて叫び始めたところでわざと姿消して意味ありげな笑い声を艦内中にエンドレスで流して、泣いて謝り始めたところで――」 >「なんだ。走りたいのか? 構わないぞ。俺はそれでも」 >「悪いけど、そういう質問は死ぬ直前にまとめて答えることにしているの」 今回も非常に堪能させていただきました。 『「劇場版」と銘打っても十分通用するのではなかろうかと思うほどの作品』。 私にはこれ以上の誉め言葉は作れません。 では、またレスできる余裕がありましたら・・・・・・ |
11090 | 感想&批評&考察感謝!(笑) | 白いウサギ E-mail | 7/21-03:15 |
記事番号11082へのコメント どもども。 いつもほんとーにありがとうございます。 ちょっとキティからスヌーピーに鞍替えしたところのバイト帰りです。 > おひさしぶりです、白いウサギ様。 > ロスト、スレと長編が続いていたので、次は久々に「交錯」が来るのかな? と思っていたのですが、予想外の再びロストということで喜びとともに驚いています。(ホントに某掲示板で知ったときは驚きました) やっぱりスレよりロストの方が圧倒的に数が少ないので嬉しいものでして。 う゛……「交錯」…… あ、あああああああれはテーマが重すぎて 今の実力じゃあ書けんっつーことでしばらく保留しとります。 実力が付くか、勝手に話し変えるかわかりません(をい) 確かに、ロスユニ少ないですよね。 特に長編となると数えるほどにしか(私が見た範囲ですけど) > 今回もリアルタイムで読み進めつつ感想を書こうと思っていたのですが、どうもたびたび読むのを止めるのがめんどくなってきてしまいまして。うう・・・・・・だって早く先が読みたくして仕方ないんですもの・・・・・・そんなわけで途中で止めて一気に読んでしまいました。2時間かかりました・・・・・・ ぶっ! ……に、二時間っ!? なんか、「2時間かかりました」の後の 「・・・・・・」が哀愁誘いますねー(誰のせいだ) > だってB5で印刷したら70枚余裕で超えるんですよ! しかも1ページに60行ぐらいあって! 要するに文庫で300ページぐらいあるってことじゃないですか! うーん、相も変わらずすごい長さです・・・・・・ただただ敬服。 ……あれ……? そんなにありましたっけ……? ゴミ箱での戦闘とエピローグ1の追記する前は200前後だったよーな気がしたんですけど…… どっかで計算間違ったかな……? > ではさっそく感想を・・・・・・の前に、一つ謝らなければならないことがあります。 > 前作『哀夢踊る』の時のことなんですけど。覚えていらっしゃるだろうと思うのですが・・・・・・私こんなこと書いていまして。 >> どうしてスターゲイザーが出てこなかったんですかっ!? > ・・・・・・う、しっかり神坂先生にしてやられていた証拠です、はい。 > ごめんなさい。ばっちり出てました。ええ。もうばっちりと。 > 本当にすみませんでした。 あー。アレですね。覚えてます。気にしないで下さい。 私もあの解釈には全く気付かなかったクチですから。 >タイトル・目次 > > タイトルの『朋友まみえる』は「棋士まみえる」と「朋友散る」から取ったと思われますが。 ……あったっけ……?そんなの…… ……………………………ご、ごめんなさいっ! TV版のタイトル忘れてます!(><) 朋友はキャナル&ミアヴァルド、セピア&アレスなどなどで、 まみえるは「出逢う」っつー意味と「あいまみえる」の「闘う」と言う意味をかけて使ってます。 まみえるをはずせば、「朋友」との掛け合いはいくらでもバリエーションが増えますね。ケイン&レイルでもオーケーですし。 つーことで「棋士まみえる」も、「朋友散る」も覚えてませんでした。 >えー、でもあれは朋友っていうのでしょうか?<負け惜しみかい ヴォルフィーフォ&ミアヴァルドですかね(^^;) そー言えないと思ったら別の組み合わせにしといてください(をいこら) > 目次はロスト原作のパターンを踏襲しているはずなので「セピア=スカイ」は人の名前(女性?)。「ミアヴィルド」は敵の船(遺失宇宙船?)の名前のはずという予測はあたっていたのでちょっと一安心です(^^;) はい。正解です。 タイトル、「ミアヴァルド」のお話の部分は、 「ルック・アット・マイセルフ」〜自分自身を見つめて〜 とゆー案もあるにはあったんですが、原作寄りにするためにこーなりました。 > それにしてもchargeで「突入」とかfortressで「砦」とか、よくかっこいい言葉を持ってきましたね・・・・・・ 電子辞書で調べただけです。 フォートレスは前から知っていましたが、チャージで突入? なんぞと不安になったりしたもんです。 >ケイン > > ケインはある意味いちばん苦労させられることがない気がするのですがどうでしょう? アニメ版は違いますが、原作の方はリナよりもためらうとか悩むことのない人ですし。 > 今回もいろいろと突っ走ってくれて、さすが主人公だなという感じを受けました。結局リナ同様行動を決めるのは彼ですものね。 そうですね。アニメ版ならともかく、原作版は目の前に壁が立っていようが構わず突き進む(斬り飛ばして)タイプですから。 特に苦労はしていないです。 >ラスト付近、キャナルを立ち直らせたあのセリフは状況の持っていき方自体にもうまさを感じました。あとがきでもお気に入りとおっしゃっていますが。 展開の持っていき方はぶっつけ本番で(プロットにも書いて無し) とりあえずキャナルは5巻のラストのセリフから考えて、ああいわれたら悩むだろう、と。 ならばそっから解放させるのはケインかミリィの役目だろうなって。 ただ展開に沿ったタイミングの合わせ方は気を付けたかも知れないですね。 > それよりも時折見せる「なんかとってもやばそうな言動の数々」の方が難しいそうな印象を受けているのですが、しっかり面白くてホントに凄いなと思わされました。 ……そーですか……? うーん。なんかとってもやばそうな言動の数々もさして苦労はしてないんですが……ただ、面白くするのに苦労……つーか悩みはしましたね。 逆境時のセリフよりはと言う意味では苦労したかも知れないです。 >ミリィ > > 今回のミリィの特徴としてはずっとケインといっしょにいる点かと思います。そんなわけで最初から最後まで二人の掛け合いが見られるわけですが。 おお。なるほど。 そういう特徴がありますね(をいってば) > しかも今回はキャナルにスポットが当てられているので、その影響もあって見せ場の少なさではちょっとミリィファンとしては悲しいかも<こら 戦闘シーンの追加部分を無くせばバランス的にはほぼ均等なはずでした(出番) > やっぱり彼女の見せ場はケイン同様ラストバトルでしょう。これもお気に入りみたいですね。 そうですね。下手すればケインを食う勢いがありますから。 ラストの戦闘シーンでは。 本来、何かへこんでいるキャラを奮い立たせるのには主役キャラが演じるべき部分ですからね。 > こういういちばんいいシーンをしっかり最後に持って来れるのもまた技術かと思います。 いや、いきあたりばったり。 ただぼんやりと、セピアへこむだろーな、レギュラー人の誰かに助けといてもらわないとってな感じには思ってましたが。 > ミリィの過去についてはいろいろ謎は多いですが、このセリフに彼女の過去の重さを凝縮している感じを受けて素晴らしいと思いました。 ……うーん…… あとがきで触れたかも知れないですが、あそこのやりとりの部分、一回消えたんですよ。完成稿が。 それでうろ覚えながらもなんとか書き直して――ショックを受けたせいか、過去を美化したせいか、第一稿よりは感動が減ったような気がします。 ――って、言われてもどーしよーもないですよね。 ただあのセリフは私もお気に入りです。 >キャナル > >(容貌についての描写がない気がするのですが、やはりお団子頭のあのバージョンではないのでしょうか?) あ。たしかに。<描写がない 下手すればレギュラー人全て無いのでは。 でも、私は間が空いてからの(笑)ロスユニを読んだ&見たクチなので、イメージ的にはお団子じゃない方です。 > 続編、という位置付けの影響を最も受けているのは彼女かと。 うい。 続編にする以上、キャナルにも何か変化がないといけないよな、とは思っていました。 > というより彼女を主役に引っ張り上げるには原作の4巻までだと無理な気がしています。そもそも出番も少なめで情報も少ないですし。 > うまく表現できないですが、キャナルがケインに依存している部分が描かれているように思えます。これがあるとキャナルの魅力がまた膨れ上がるのです♪ 私も上手く表現できませんが、きっとそんな部分もあったはずだと思います。 (……話書いた本人が上手く表現できないがって言って良いのか……?) >>わがままだと――思ってくれていいですよ」 > このセリフがいちばん好きです。 あ。私もここ好きです! ここの部分のミアヴァルドとの会話、 実は会話シーンの中では一番始めに決まっていました。 その頃にはケインの言葉(盗聴)はなかったですが、ラストだけは最初っから決まってました。 >レイル > > 続編となると彼も扱いが難しいように思えました。あとがきでも触れられていますが、三人以外の外部の人間として「その後」の象徴になるのではないかと。 ですね。 最初、警部から昇進って次は何?と思ったんですが、父上に教わりました。 いやぁ、助かるなぁ。警察関係者が居ると。 > まあ、彼はあくまで脇役なので出番も少ないですし5巻のようなシリアスさはほとんど影をひそめていますし。根本的には味方、という部分では実は目新しいのかもしれませんが不思議と自然に受け入れられるものです。 味方……どーでしょうかねぇ…… いや、「朋友 まみえる」の続編が書けたとしたら、恐らく…… ……いや、違うかな……?(謎) > でもやっぱり少ない出番でもしっかりレイルらしさを振りまいているのは、さすがキャラを把握しているな、と思いました。 どーもです(^^) >セピア=スカイ > > 初登場時はメリーナを髣髴させるキャラだったように思いますが、本性をあらわしてからはむしろ『レアードの狂乱』のレミナに近くなった気がします。こういったキャラは白いウサギ様の得意な分野なのでしょうか? 得意っつーか、好きなだけです。 趣味入ってます。性格などについてはもし続編が出て、更に出番があったらまた少し輪郭が見えて来るんじゃないかと。 予定時では戦闘時の冷静なリナ風味にしよーかと思ったんですけど、予定は未定。 あ、あと。メリーナではなく、ミリーナですね。 勘違いではなく打ち間違えだと思いますが。 > ある意味性格が超越しちゃってるケイン(&ミリィ)と違って等身大のキャラという印象を受けました。誕生日の伏線もポイント高し。 誕生日…… さらっと流しましたが、子供の頃、誕生日のせいで家族を失っていますね。 等身大というのも、あくまでゲストキャラという事で抑えました。 あまり目立ちすぎると、ロスユニの雰囲気が変わっちゃう様な気もしましたし。 > 個人的に名前が気に入ってます。 最初は……突入(チャージ)の頭の頃を書いてる頃までは、「パール=スカイ」と言う名前でした。 スカイというのはもちろん、「空」です。 ソードブレイカーをミアヴァルドと例えるなら、ケインの位置にいるのが彼女なので、「ブルーリバー」と言う澄んだ青というイメージから「スカイ」(安易) で、パールが没になった理由は、ワンピースの「パール」というキャラが頭に浮かんで邪魔をしてきたからです(爆) >白いウサギ様らしさ > > 根本的に原作そのまま、というのがスタイルだと思うのですが、その中でも前作の『哀夢踊る』や他のスレのと通じる白いウサギ様特有の部分がいろいろと感じられますね。 > まずは上に書いた、セピア=スカイのキャラ。 > あと、説明的な部分(過去とか)以外だとシーンの切り替わりの最初がセリフで始まることがとても多い点。その方が作りやすいので、勢いに乗って書くときはそうなりやすいのでは。2ヶ月で書き上げた、ということなのできっとそういうことなのだろうなと思うのですが・・・・・・ 確かに多いですね。セリフでの始まり。 ――書き安いんですよ。そうやると。 なおかつ、その台詞を言うまでの経緯をあやふやに出来るというすばらしさ(死)!! > あとは『哀夢踊る』同様ゲストキャラを覆う雰囲気が「やるせなさ」に感じられる点でしょうか。原作のロストにもかわいそうなキャラはいますが、そこが強調されているわけではないですから。 いや、これは二作だけでしょう。おそらく(あまり自信ないらしい) ……どうなんでしょうねぇ……(結局わかってないらしい) ……今回記憶の消去等という展開、本当はソードブレイカーチーム内でやりたかったんですよ。 でも、さすがにそれは問題ありまくるし、自分の強引な解釈での展開になることは見え見え。 つーことでゲストキャラに不幸にあってもらいました(外道) > 他にはキャナルのこのセリフ。 >>「訳ありの人間放り出すことが出来る人間はこの船にいないですから。 > このセリフ、結構らしさが出てると思うのですがどうでしょう? そ、そーですか? 少なくとも私、そんなに良い人間じゃあないんですが。 ……ふーん……そーなんだー……(すでに流されつつある) >ストーリー > > 正直本編の続編だということには驚きました。でも考えてみれば確かにアニメ版よりは作りやすいのですよね、続編って。特にキャナルとか、アニメ版だと解釈に幅がありますし。 ふっふっふ。 白いウサギ。 今気付きましたが、小説出版などのほぼリアルタイムでのお話ばかり書いてますね。 つまり! 世界に入り込むことが多く、切り替えが出来ない人間だという事ですね。はい(;;) > でも続編となるとやはり難しいのは敵。ナイトメアの残党とかだと単純でも絶対スケールが小さくなってしまいますし、となると話を書く意義を持たせるためにはあの遺失宇宙船の設定を持ってくるのは自然の流れだったように思えます。 そーですねー。 ナイトメアの残党じゃあよわっちぃでしょーね。 > 話の持っていき方としては、最初にいっぱい情報を出しておいて、後から徐々に紐解いていくような感じを受けました。前哨戦を用意したのもまた難しそうに思えました。 ……狙っている訳じゃあないんですけどね(だからをいってば) ほんと行き当たりばったりですから、あまりにも説明多すぎてつまんないなぁと思ったら次のお話で間を置くとか。 前哨戦もねぇ……なんでやったんでしょーねぇ……私……(すでに自分すら見失いつつあるらしい) >ミアヴァルド誕生のエピソードは5巻の方法を踏襲しているのですよね。 そーですね。5巻読んだときはマジで感動しました。 そういうのも影響入っているのでしょう。きっと。 > 今回の最大のポイントはアレスの正体でしょうか? > 作者の用意する「そうか、そうだったのか」と思わせる仕掛け。今まで読んできた部分が180度ひっくり返るようなどんでん返し。 > えと、またしても自分気づけなかったのですが(TT) 後で見るとかなりその部分は狙っているように思えて悔しかったです、うう。 アレス=ミアヴァルド。 原稿完成1週間ほど前にアルスから名前が変わった方です。 アルスって、スレ2部にいるんですよね…… シェーラにたぶらかされた将軍で。 気付いて慌ててなおしましたよ。 覇王将軍もビックリなほど安直な変形ですけど。 まず、アレスは最初のガルズと一緒にいるときの口調でなんとなく「コンピュータ」とばれるかなーと思って、(いやばれても別に良いやという気もしましたが) 「ミアヴァルド」を見上げるシーンを入れています。 > それとまたすごいと思うのは、これだけ長い話にも関わらず主要キャラが少ないという点です。『哀夢踊る』もそうでしたが、本当に増えないんですよね。主要キャラではいちばん薄めなガルズの次が、副署長みたいなチョイ役で、その間の中途半端なキャラが全然いないということ。キャラが少ないとストーリーを膨らませられない自分としてはまったくうらやましい限りです。 いや。キャラが多くなると召集がつかなくなるだけのよーな気も…… 今回は、キャラより先にストーリー&テーマが出来てたような気がします。 >テーマ > > はっきりいいまして、今回の話めちゃめちゃ深いのでは。 うっ。多分きっとそーかと自分でも思ってますです。はい。 > キャラのらしさとか戦闘の描写とか技術的な部分の素晴らしさではなくこのテーマがもういうことなしに素晴らしいと思います。 そうですね。技術より先にテーマに重点を置いてます。 出来れば感動させたい。 そー思って書きましたし。そーなるとそれなりの技術も必要ですが。 結構振り返るとでかいんですよね。テーマ。 ミアヴァルドの「思い出を大切にすると言うことは忘れないと言う事じゃない」 と言うセリフなんて、本人ですらおぼろけにしか理解できてませんし(突っ込む言葉がもう消え果てた) >「劇場版」と銘打っても十分通用するのではなかろうかと思うほどです。 ……いや、そこまではちょっと……(^^;) > ソードブレイカーに対抗しうる遺失宇宙船として補完船を考え出すこと自体は結構自然なように思いますが、その設定をこういう形で話のテーマにまで昇華させたことが本当に凄い。 > いや、もう誉めに褒めちぎってたりないほどです。ただただ感嘆と賞賛の言葉しかないです。 おそれ多くて返す言葉が見あたりませんが……恐縮です。 > 「この世界にあってはならないもの」「記憶のリセット」。原作、アニメ、コミックすべてを含めたロストの根本的なテーマを、アレスとセピアというもう一組を出すことで描いたということ。特にアレスのキャラが難易度ウルトラCだったように思えます。 根本的なテーマを描いた。 ――つまりただ奥底にあったものを引っぱり出して自分の店に並べているだけのような気もしないでもないですが(^^;) な、難易度ウルトラCって…… いや、彼の生い立ちというか背負うものは確かにでかいんですが、キャラ立て自体はセピアよりは楽でした。 ……って、そう言う意味じゃないですか……? > 「何でその船が今まで出てこなかったのか」というこの設定で必ず突き当たる壁をもそこに利用してきたところなど、正直衝撃を受けました。 ……ねぇ。私もビックリしましたよ(かなり無責任) > ・セピアをソードブレイカーに入れた理由。 とりあえず、訳ありっぽかったので、警察などにまかすのはまずいかも。 でも、衛生港の停泊料金が気になるので仕方ないから、乗り込ませた。 > ・ブラック・ボックス前で敵がいなくなった理由。 あの時ブラック・ボックスでアレスがハッキングしてましたよね? そのちょっと前に、やはりリヴァイア星の警察署内のコンピュータもハッキングし、ガルズの手下連中に、ガルズの声を複製して(キャナルもケインの声を真似するシーンがあるので無理はないはず)撤退して戻ってこいと言う偽の命令を流しました。 それで部下がファイナル・フォートレスに戻り、ガルズが怒鳴り散らすというシーンも実はあるのです。 流れのリズムの問題で全く書いてないですが。 > ・アレスがすぐ消えなかった理由。 コンピュータがブロックによってそれぞれ独立しています。 だから、どれか一つがやられても、他のアレスがそれに対抗したり、ガードしたりとしていたため、すぐには消えなかったのです。 それでも、やはり少しずつアレスは消されていっていて、「ミアヴァルド」でガルズが砲撃しようとするのを阻止できなかったのです。 それで自己嫌悪、無力感、果てや自分自身の存在の否定……などとつながり、「へんてこなプログラム」に意識を奪われやすくなってしまうわけですね。 > この3つに関しては物語の都合上かな? とちょっと引っかかりました。 今の解釈で納得できなかったり、こじつけだなと思ったら作品の都合上ですね。 とりあえず自分的にはちゃんと理由はあるつもりですが(^^;) > ガルズ関連は後々語られることを期待。 が……がんばりまぁぁす…… >>大きな闇が消え去った後には、小さな――それでも確かな闇が残っていた。 > こんなところとかいかにもシリーズって感じありますね。 そですね。 そーいった部分は結構雰囲気に酔って書いてたりするんですが。 >ベストシーン&セリフ > > 最後に恒例の。 > 前者は・・・・・・というかもうどっちも同じですね。 はは。シーンもセリフも切り離しきれない部分もありますから。 >>「もう一度お聞きします。 > から >> ――ケインの元へと。 > までの二つのシーン。その中のミリィとキャナルのセリフ。ものすっごく妥当かもしれませんが嘘ついても仕方ないので。 妥当でもなんでも、ありがたいですよ。 と、言うより、妥当と言うことは私がそう思って貰えるよう狙ったとおりに感じてくれたのでむしろ大喜びです(なんか変かな?) > 原作の範囲を出ないエピローグのミリィの言葉も個人的にヒットでした。 最初っから決まっていたセリフパート2。 ただ、書くのはラストになっただけで、どっかに入れられるシーン無いかなーと探ってました。 > では、ギャグ含めツボにはまった他のところを。 >> ――多額の借金を残して。 でだしもこれまたやっぱり決まってました。 「そう――全ては終わったのである―― ―――多額の借金を残して(ぽつり)」(プロット引用) でだしシリアスっぽいくせに、落とすつもりで書いてましたから。 >>「わたし、耐えられません…… > ……外に吐き出したくなっちゃいますねー……」 言うでしょう。キャナルなら(笑) >>「修理にいくらかかったと思ってるんですか? > 残ってませんよ」 > ――前ほどには。 「 アリシアが残しておいてくれたんですよ―― ――半分ぐらいは」 と似せてあります。 ……言い様によっては、そのままパクリです。 >>「……あたし、この頃仕事って言うかボランティアなんだけど……」 私がそう思ったのでそう言ってもらいました。 生活できるミリィが――と、言うより、ソードブレイカーチームが不思議だ…… >>「では巻き戻し―――再生スタート」 > 優雅な仕草で右手の人差し指をくるくると回し、横へ一閃。 キャナル好きなので、こーゆーの好きです。 >>「あ。わりー。俺が斬った」 ……まづいよねぇ……これは…… ここら辺の会話、白ウサ自身先考えていた訳じゃないので、頭の中で勝手に起こった会話をそのまま文章にしているので白ウサ自身にもリアルタイム。 思わず自分自身こけました。 >>「……ね、ケイン」 > 「磯釣りはまた今度な」 間があったので、何か会話を……と思っていたら、勝手に喋ってくれました。 いやぁ、助かるなぁ。 >>「…………………………笑っていいか?」 > 「どーぞ。ご自由に。 > あたしが笑われてるわけじゃないから」 ケインと同じ気持ちですね(自分で言うな) 神坂キャラらしくて好きです。 >>「とりあえず命令無視して宇宙に出て、生命維持装置(ライフ・システム)を切ったフリして、怯えて叫び始めたところでわざと姿消して意味ありげな笑い声を艦内中にエンドレスで流して、泣いて謝り始めたところで――」 やりそうでしょう?(笑) キャナルのセリフは頭の中で勝手にぺらぺら喋ってくれるんで楽です。 >>「なんだ。走りたいのか? > 構わないぞ。俺はそれでも」 レイルらしいかもしれないですね。 ケインだけに冷たいので(それでいーのか) >>「悪いけど、そういう質問は死ぬ直前にまとめて答えることにしているの」 自分、白ウサ自身の考えです。 つっても、聞かれたら適当な返事しちゃいそーですが、根っこの部分ではこういう考えで生きて行くつもりです。私は。 > 今回も非常に堪能させていただきました。 >『「劇場版」と銘打っても十分通用するのではなかろうかと思うほどの作品』。 > 私にはこれ以上の誉め言葉は作れません。 恐縮です。 という言葉以外にその誉め言葉を受けとめる術を知りません。 ありがたいです。本当に。 ……なんか、レスが長くなりましたね。 ブラントンさんの言葉を省略してないからこーなるんでしょーけど…… いい加減寝ないと明日……つーか、今日辛いんでこの辺で失礼します。 では、どーもありがとうございましたっ! ……レスに2時間近くかかってら……(ーー;) |