◆−本当の気持ち(ルクミリ)−時緒(7/17-21:06)No.11065
 ┣はじめまして−一坪(7/18-08:28)No.11068
 ┃┗Re:はじめまして−時緒(7/18-12:02)No.11069
 ┣ルクミリ良いねっ−扇(7/21-03:05)No.11089
 ┃┗Re:ルクミリ良いねっ−時緒(7/21-17:49)No.11096
 ┗眠れない夜−時緒(7/23-17:59)NEWNo.11119


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11065本当の気持ち(ルクミリ)時緒 7/17-21:06


 こんにちは。
 はじめまして、です。
 みなさんの小説を読んでいるうちに自分も書きたくなって、書いてみました。
 リナ達と出会う前の、ルークとミリーナのお話です。
 よろしかったらお付き合いください。

_____________________________________

 本当の気持ち

 夜。
 夕食を済ませ、なんとなく手持ち無沙汰になったルークは、いつものようにミリーナの部屋へ押しかけた。
 ミリーナはそんなルークを嬉しそうな顔をして迎えたりはしないが、特に嫌がるそぶりも見せない。
 二人はルークが持ち込んだ酒など飲みつつ、他愛もない会話をする。
「なあ、ミリーナ。俺たちが運命の出会いをしてからもう結構経つし、そろそろ宿の部屋とるのは一部屋でいいんじゃないかなー、なんて思うんだけど。あ、倹約にもなるし。」
 ルークが白々しい顔で冗談とも本気ともつかないことを言う。
「そんなことをしたら、誰が私の身の安全を保障してくれるんです?」
「みりーなぁぁぁっ。俺のことを信用してないのかっ?」
「普段の行いが悪いんです。」
 ミリーナにジト目で言われ、思わず言葉に詰まるルーク。心当たりはありすぎるほどあった。
「俺の愛はいつになったら報われるんだろう・・・?」
 遠い目をしてつぶやくルーク。ミリーナはそんなルークを無視してプイッとそっぽを向く。すると突然、ミリーナがむこうを向いたその隙に、ルークは彼女の腕をつかんで後ろから抱きしめた。
「ちょっ・・・ルーク・・・離して・・・」
「やだ・・・」
 ミリーナはルークの腕から抜け出そうとした。しかし、ルークは彼女の細い身体をしっかりと抱きすくめて離そうとしなかった。
 いつもならすぐに冗談めかして離してくれるのに・・・。
 ミリーナはいつもと様子の違うルークの態度に戸惑いを隠せなかった。
「ミリーナ・・・愛してるんだ、初めて会ったときから・・・離したくない・・・誰にも渡したくない・・・俺だけのミリーナに・・・」
 ルークは囁きながらミリーナの首筋にそっと唇を押し当てる。
 ミリーナは一瞬びくっと身体を震わせると、なんとかルークの腕から逃れようともがく。
「いやっ・・・ルークっ・・・やめて・・・」
 ミリーナの必死の声に、ルークは胸が痛み、寂しげな顔をして彼女を離した。
「ミリーナ・・・そんなに俺のこと嫌いか・・・?」
 ルークの腕から解放されて、彼から距離をとったミリーナは、ルークが傷ついたような顔をしていることに気づいた。
 何か答えてあげなければと思う。
「ルーク・・・」
 他人と関わることが苦手な自分が一緒に旅をしているのだ。嫌いなはずがない。
「・・・嫌いじゃないわ・・・けど・・・」
「けど?」
 ルークがその先を促す。

 嫌いじゃない。
 だけど。
 好き・・・?
 私はルークが好き?
 ・・・わからない。
 今まで誰かを好きになったことなんてなかった。
 自分のルークに対する感情が「好き」という感情にあたるのかどうか。
 嫌いじゃない、だけど。

 気が付けば、いつのまにかルークが目の前にいる。そしてミリーナの身体を今度はゆっくりと抱きしめる。
 ミリーナは動かなかった。
「ミリーナ・・・お前の本当の気持ちを聞かせて欲しいんだ。俺のこと・・・どう思ってるのか。」
 ルークの手がミリーナの銀の髪を優しく撫でる。ミリーナはルークのなすがままになっている。
「ミリーナ・・・教えてくれ・・・」
 ミリーナは困ったように顔を伏せる。
「そんなこと・・・わかりません・・・
 私は人を好きになったことがないんです・・・
 だから・・・今はまだ、あなたに応えることはできない・・・
 まだ、自分の気持ちがわからない今は・・・」
 そう言ってミリーナはルークから離れようとする。
 そんなミリーナをルークは抱きすくめた。
「・・・わかった・・・。今すぐ答えろとは言わないよ。でも、もう少しだけ・・・こうしていたい・・・」
 ルークの、せめてもの願いをミリーナは受け入れた。
 ただ、抱きしめるだけ。
 それ以上でもそれ以下でもなく、二人の身体が重なったまま夜はふけていく。
 いまはまだ、それだけで・・・。


 おわり

_____________________________________

 ふう。疲れた。
 私はミリーナが一番好きなんですけど。
 ミリーナがルークに好きって言わないのは(ミリーナもルークのことが好きなんだと仮定してですけど)、照れてるとかクールだからとかじゃなくて、もしかしたら自分の気持ちに気づいてないからなのかなーと思って、このお話を書きました。

 と、いうことで。
 これからも暇を見つけて投稿していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 拙い文ですが、読んでくださってありがとうございました。

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11068はじめまして一坪 E-mail 7/18-08:28
記事番号11065へのコメント
投稿ありがとうございました!!

せつないお話ですね。
ルークにとっても、ミリーナにとっても。


> 私はミリーナが一番好きなんですけど。
> ミリーナがルークに好きって言わないのは(ミリーナもルークのことが好きなんだと仮定してですけど)、照れてるとかクールだからとかじゃなくて、もしかしたら自分の気持ちに気づいてないからなのかなーと思って、このお話を書きました。
私はミリーナは自分の気持ちに気づきかけてるけど、素直にそれを受け入れることができない
って感じかなーって思ってます。


> これからも暇を見つけて投稿していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
はい。よろしくお願いします。

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11069Re:はじめまして時緒 7/18-12:02
記事番号11068へのコメント


>投稿ありがとうございました!!
 こちらこそ、ありがとうございます。
>
>せつないお話ですね。
>ルークにとっても、ミリーナにとっても。
 そう言っていただけると、とってもうれしいです。
 ちょっと少女まんがちっくだったかもしれません。
 というか、文才なし。
>
>
>> 私はミリーナが一番好きなんですけど。
>> ミリーナがルークに好きって言わないのは(ミリーナもルークのことが好きなんだと仮定してですけど)、照れてるとかクールだからとかじゃなくて、もしかしたら自分の気持ちに気づいてないからなのかなーと思って、このお話を書きました。
>私はミリーナは自分の気持ちに気づきかけてるけど、素直にそれを受け入れることができない
>って感じかなーって思ってます。
 それもそうかもしれませんね。
 ミリーナってば照れ屋さんだから。
>
>
>> これからも暇を見つけて投稿していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
>はい。よろしくお願いします。
 重ね重ねよろしくお願いします。
 それでは、レス、ありがとうございました。



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11089ルクミリ良いねっ7/21-03:05
記事番号11065へのコメント

時緒さんは No.11065「本当の気持ち(ルクミリ)」で書きました。

 こんばんは、時緒さん。
 このサイトに来ている人間で唯一、この場で『初めまして』と言わない人間、扇です(笑)
 今更ですが、感想書かせて下さい!

> 二人はルークが持ち込んだ酒など飲みつつ、他愛もない会話をする。
>「なあ、ミリーナ。俺たちが運命の出会いをしてからもう結構経つし、そろそろ宿の部屋とるのは一部屋でいいんじゃないかなー、なんて思うんだけど。あ、倹約にもなるし。」
 運命の出会い・・・(笑ってる)

>「そんなことをしたら、誰が私の身の安全を保障してくれるんです?」
>「みりーなぁぁぁっ。俺のことを信用してないのかっ?」
>「普段の行いが悪いんです。」
> ミリーナにジト目で言われ、思わず言葉に詰まるルーク。心当たりはありすぎるほどあった。
 あったのルーク!?
 ダメじゃんルーク!!(でも笑い)

>「俺の愛はいつになったら報われるんだろう・・・?」
 不明(断言)

> 遠い目をしてつぶやくルーク。ミリーナはそんなルークを無視してプイッとそっぽを向く。すると突然、ミリーナがむこうを向いたその隙に、ルークは彼女の腕をつかんで後ろから抱きしめた。
>「ちょっ・・・ルーク・・・離して・・・」
>「やだ・・・」
> ミリーナはルークの腕から抜け出そうとした。しかし、ルークは彼女の細い身体をしっかりと抱きすくめて離そうとしなかった。
 ああ、らぶらぶ・・・いいですぅ、ここっ!

>「ミリーナ・・・愛してるんだ、初めて会ったときから・・・離したくない・・・誰にも渡したくない・・・俺だけのミリーナに・・・」
> ルークは囁きながらミリーナの首筋にそっと唇を押し当てる。
> ミリーナは一瞬びくっと身体を震わせると、なんとかルークの腕から逃れようともがく。
 そーとーミリーナ嫌がってますけどルーク?(汗)

>「いやっ・・・ルークっ・・・やめて・・・」
> ミリーナの必死の声に、ルークは胸が痛み、寂しげな顔をして彼女を離した。
 ルーク、強引なことやったら嫌われますよう。

> 嫌いじゃない。
> だけど。
> 好き・・・?
> 私はルークが好き?
> ・・・わからない。
> 今まで誰かを好きになったことなんてなかった。
> 自分のルークに対する感情が「好き」という感情にあたるのかどうか。
> 嫌いじゃない、だけど。
 うん、自分の気持ちが分からない。
 それーがミリーナ、って感じがします。

> ただ、抱きしめるだけ。
> それ以上でもそれ以下でもなく、二人の身体が重なったまま夜はふけていく。
> いまはまだ、それだけで・・・。
 今は・・・ですねぇ。
 今は、それが永遠に続いたら、時が止まったらいいのに、とまでは思わなかった、序盤の所なんですよねぇ・・・。
 うう、ちょっと二人とも、そう思うのが遅かったようですねぇ・・・(まぁ、未来は誰にも分かりませんし)

> ふう。疲れた。
> 私はミリーナが一番好きなんですけど。
 私は、ルークもミリーナもどちらも、同じくらい好きです。

> ミリーナがルークに好きって言わないのは(ミリーナもルークのことが好きなんだと仮定してですけど)、照れてるとかクールだからとかじゃなくて、もしかしたら自分の気持ちに気づいてないからなのかなーと思って、このお話を書きました。
 そうですね、だいたいそうでしょうね。
 私も、そんなとこだとおもいます。

> と、いうことで。
> これからも暇を見つけて投稿していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
> 拙い文ですが、読んでくださってありがとうございました。
 いえいえ、良い話をありがとうございましたっ!!
 今後も応援してます!!
 ではでは、扇でした〜☆

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11096Re:ルクミリ良いねっ時緒 7/21-17:49
記事番号11089へのコメント

>
> こんばんは、時緒さん。
> このサイトに来ている人間で唯一、この場で『初めまして』と言わない人間、扇です(笑)
> 今更ですが、感想書かせて下さい!
 ありがとうございます。
 扇さんのほかの作品も読ませていただいて、ファンになっていたのでレスがいただけるなんて感激です。

>> 二人はルークが持ち込んだ酒など飲みつつ、他愛もない会話をする。
>>「なあ、ミリーナ。俺たちが運命の出会いをしてからもう結構経つし、そろそろ宿の部屋とるのは一部屋でいいんじゃないかなー、なんて思うんだけど。あ、倹約にもなるし。」
> 運命の出会い・・・(笑ってる)
 ルークなら言いかねないかなー、と。

>>「そんなことをしたら、誰が私の身の安全を保障してくれるんです?」
>>「みりーなぁぁぁっ。俺のことを信用してないのかっ?」
>>「普段の行いが悪いんです。」
>> ミリーナにジト目で言われ、思わず言葉に詰まるルーク。心当たりはありすぎるほどあった。
> あったのルーク!?
> ダメじゃんルーク!!(でも笑い)
 いや、別にそんな深い意味の心当たりじゃないです・・・多分・・・。
 人目をはばからず抱きついたりしてそうなだけで(笑)。

>>「俺の愛はいつになったら報われるんだろう・・・?」
> 不明(断言)
 そのとーり。

>> 遠い目をしてつぶやくルーク。ミリーナはそんなルークを無視してプイッとそっぽを向く。すると突然、ミリーナがむこうを向いたその隙に、ルークは彼女の腕をつかんで後ろから抱きしめた。
>>「ちょっ・・・ルーク・・・離して・・・」
>>「やだ・・・」
>> ミリーナはルークの腕から抜け出そうとした。しかし、ルークは彼女の細い身体をしっかりと抱きすくめて離そうとしなかった。
> ああ、らぶらぶ・・・いいですぅ、ここっ!
 少女まんがちっくですいません。

>>「ミリーナ・・・愛してるんだ、初めて会ったときから・・・離したくない・・・誰にも渡したくない・・・俺だけのミリーナに・・・」
>> ルークは囁きながらミリーナの首筋にそっと唇を押し当てる。
>> ミリーナは一瞬びくっと身体を震わせると、なんとかルークの腕から逃れようともがく。
> そーとーミリーナ嫌がってますけどルーク?(汗)
 
>>「いやっ・・・ルークっ・・・やめて・・・」
>> ミリーナの必死の声に、ルークは胸が痛み、寂しげな顔をして彼女を離した。
> ルーク、強引なことやったら嫌われますよう。
 でも、ルークって直情的だから、突っ走り始めたら止まらなそうな気がします。

>> 嫌いじゃない。
>> だけど。
>> 好き・・・?
>> 私はルークが好き?
>> ・・・わからない。
>> 今まで誰かを好きになったことなんてなかった。
>> 自分のルークに対する感情が「好き」という感情にあたるのかどうか。
>> 嫌いじゃない、だけど。
> うん、自分の気持ちが分からない。
> それーがミリーナ、って感じがします。
 私の中の個人的なミリーナ像ですが。

>> ただ、抱きしめるだけ。
>> それ以上でもそれ以下でもなく、二人の身体が重なったまま夜はふけていく。
>> いまはまだ、それだけで・・・。
> 今は・・・ですねぇ。
> 今は、それが永遠に続いたら、時が止まったらいいのに、とまでは思わなかった、序盤の所なんですよねぇ・・・。
> うう、ちょっと二人とも、そう思うのが遅かったようですねぇ・・・(まぁ、未来は誰にも分かりませんし)
 そうですね。
 このお話はリナたちと出会う前の二人をイメージしています。
 まだまだ、これから二人でいろんなことができたはずなのに・・・。

>> ふう。疲れた。
>> 私はミリーナが一番好きなんですけど。
> 私は、ルークもミリーナもどちらも、同じくらい好きです。
 ルークも好きですよ、もちろん。
>
>> ミリーナがルークに好きって言わないのは(ミリーナもルークのことが好きなんだと仮定してですけど)、照れてるとかクールだからとかじゃなくて、もしかしたら自分の気持ちに気づいてないからなのかなーと思って、このお話を書きました。
> そうですね、だいたいそうでしょうね。
> 私も、そんなとこだとおもいます。
 おんなじ意見の人がいて下さってうれしいです。

>> と、いうことで。
>> これからも暇を見つけて投稿していきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
>> 拙い文ですが、読んでくださってありがとうございました。
> いえいえ、良い話をありがとうございましたっ!!
> 今後も応援してます!!
> ではでは、扇でした〜☆
 ご丁寧なレスありがとうございました。
 とってもうれしかったです。
 では。

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11119眠れない夜時緒 7/23-17:59
記事番号11065へのコメント

 こんにちは。
 またルクミリのお話を投稿させていただきます。
 今回のお話は前回の続編というわけではないのですが、前回がミリーナの気持ちに焦点を当てたのに対し、今度はルークのほうに焦点をあてたつもりで、ルークの一人称です。シリアスです。
 関連のあるお話の場合、日にちをあけずに投稿しなきゃいけなかったと思うんですけど、暇が無くって遅くなってしまいました。
 ということで、遅ればせながらですが、お付き合い願います。

_____________________________________

 眠れない夜

 ミリーナが寝返りをうつ。
 眠れないのか、寝苦しいのか、隣のベッドでさっきから何度も身体の向きを変えていた。
「ミリーナ・・・眠れないのか?」
 寝苦しいだけで眠っているというのなら、起こさないようにと思って、俺は小さな声で囁く。
 ミリーナの動きがぴたりと止まって、彼女の顔が静かにこちらを振り向く。
「・・・起こしちゃった?」
 ミリーナの掠れたような声が耳に届いた。
「いや・・・」
 本当は眠っていたけど、まるで自分も眠れなかったかのように俺は身を起こす。
「眠れないなら、少し飲むか?」
 そう言って俺は酒の瓶を手にとった。
「ありがとう。でも、わたしのこと気にしなくていいのよ。あなたは眠って。疲れているでしょう?」
「別に、疲れてなんかないさ。」
 そう、いつものように町から町へ歩いただけだ。旅なんか昔からしているから慣れているし、今はミリーナが隣にいてくれるから、疲れなんか感じない。
 俺は部屋に備え付けてあったグラスを手に、ミリーナのベッドに近づく。
 ミリーナも上半身を起こした。
「ごめんなさい。やっぱり起こしちゃったみたいね。」
「そんなことない。俺がミリーナと飲みたいと思っただけだ。」
 それは本当だ。ちょっと寝たから眠気はなくなっていたし、眠れないミリーナを放っておくなんて、俺が嫌だ。
「・・・ありがとう。いつも、気を使ってくれて。」
 俺が無言で差し出したグラスを受け取ると、ミリーナは珍しく素直な言葉を口にして微笑んだ。
 たまに見せるこういう優しい素顔が、俺は大好きだった。
 思わす抱きしめたくなる衝動にかられる。
 でも、だめだ。急にそんなことをしたら、ミリーナは逃げてしまう。

 初めて会ったときから、ミリーナにはどこか人を寄せ付けない雰囲気があった。
 それは暗殺稼業をしていた俺もおんなじだったと思うけど、ミリーナは闇の仕事に手を染めているわけでもないのに、なぜだろうと疑問に思ったことを覚えている。
 そして彼女につきまとううちに、俺はいつの間にか本気で彼女に惚れ込んでしまって。
 初めてミリーナに気持ちを告げたとき、彼女は俺を拒んだ。
 それはそれでショックではあったけど、どこか予想はついていた。
 ミリーナはそう簡単には人に心を開かない。
 彼女が生い立ちを聞かせてくれたことはないけれど、女の身で傭兵なんてやってたところをみれば、それほど恵まれた環境だったとは思えない。
 ミリーナは人から愛されたり、抱きしめられたりしたことがあまりないのではないかと思う。
 俺が抱きしめようとすると、ミリーナはまるで何か怖いことをされるかのようにおびえた瞳をする。
 俺はミリーナを怖がらせないように、ゆっくりと、優しく彼女の身体を包み込まなければならない。
 雨に打たれた子猫のように震えるミリーナは、決して抱き返してはこない。
 俺がどんなに愛の言葉を囁いても、困ったような顔をするだけで、いつも逃げ出そうとする。
 それは、少女が初めて異性に告白された戸惑いなんてものじゃなくて、もっと根の深い、どうすればいいのかまったくわからないという、ある種の恐怖にも似た困惑のようなものじゃないかと思う。
 俺たちが出会ってから、そして一緒に旅をするようになってから、もうかなりの時が経つ。
 それなのに、宿の部屋まで一緒だというのに、こんなに惚れ込んでいる女を前に、俺はまだ手を出していない。
 いや、出せないのだ。
 そんなことをしたら、ミリーナは俺のことを恐怖の眼差しで見るのではないだろうか。
 二度と一緒に旅をしてくれなくなるのではないか。
 俺の前から逃げ出してしまうのではないか。
 ミリーナを失いたくない。
 だから。
 だめだ。
 どんなにミリーナを欲しいと願っても。
 どんなに身体が熱くなっても。
 ミリーナが心を開いてくれるまでは。

「どうかした?」
 グラスを握ったまま黙り込んだ俺を見て、ミリーナが不思議そうな顔をする。
「ミリーナ・・・抱きしめてもいいか?」
 俺の言葉にミリーナの肩がびくんと揺れる。
 その瞳に不安の色が広がる。
「どうして・・・抱きしめられることをそんなに怖がるんだ?」
 俺はミリーナの細い腕をとる。ミリーナの手は一瞬弱々しく抗おうとするが、そのままおとなしく俺の手の中に収まった。
 これでも随分な進歩だ。始めのころはそれこそ全身で拒んだのだから。
「怖がらなくていいんだよ。俺はお前だけは絶対に傷つけたりしないから。」
「・・・ルーク・・・」
 ミリーナはまだ完全には心を開かない。
 でも、少しだけ。
 少しだけ。
 俺はミリーナをそっと抱きしめる。
 柔らかな身体を包み込んで、優しく背中を撫でて。
「ミリーナ、俺を信じてくれ。」
 震える肩は何も答えない。
 それでもいい。
 もっと時間をかけて、ゆっくりとでいい。
 これからずっと一緒にいられるのなら。
「ミリーナ・・・愛してるよ・・・」
 何度だって囁こう。
 それでお前が心を開いてくれるのなら。
 いくらでも待とう。
 お前が怖がらずに抱きしめられる日が来るまで。
 眠れない夜には、いつも一緒にいてあげるから。

 おわり

_____________________________________

 ああ、また少女まんがちっくになってしまった。メロメロですね。
 前回とはうって変わって、やけに紳士的なルークと、過去に何があった!?なミリーナです。
 同じ人を書いているのに、あまりにも統一性がなくってすいません。
 次はもうちょっと精進してから、投稿したいと思います。
 それでは読んでくださった方、ありがとうございました。