◆−ぬいぐるみーゼロリナ小説ーー−いちき(7/23-20:37)No.11121
 ┗Re:ぬいぐるみーゼロリナ小説ーー−一坪(7/24-04:47)No.11127
  ┗Re:ぬいぐるみーゼロリナ小説ーー−いちき(7/24-19:01)No.11134


トップに戻る
11121ぬいぐるみーゼロリナ小説ーーいちき E-mail 7/23-20:37


何かに囚われたかのように、目が離せなかった。
 ごくごく平凡かつ日常的な情景。
 休日の午後。一組の親子が街中にいる。
 瞳いっぱいに涙を溜め、騒ぎ散らしている少女。困ったようにして少女をなだめる両親。
 少女が手にしているのは、ヌイグルミ。
「かぁっってぇぇっっっ、買ってよぉぉぉっっっっ!!!!!!!!」
 足をじたばたさせ、ぬいぐるみをきつく抱きしめる。
 周りの人々がくすくすと微笑を漏らす。
 恥ずかしそうにしながら、母親が仕方なさそうに、それを買い与えた。
 満足そうにそれを抱え、満面の笑みで歩き出す少女。
 なんてことはない。ただ、それだけ。
「なんですけど…ねぇ」
「何がよ」
「は?」
 目の前にいるのは、少し怒った顔のリナさん。
 薄暗いのはここが屋根の上だからである。上を向けば満点の星空。
 なんだか和やかな空気の中、呆っとした声を出すゼロス。
「なんで、こんなところにいるんですか?」
「このスポンジ魔族!!」
 げしぃぃぃ!!!
 投げつけられた茶碗を避けず、まともに食らうゼロス。
 あはは、思い出しました。と、わざとらしく呟くゼロス。
「話があるって無理矢理つれてこられたのよ、あたしはっっ」
「ははは、そうでしたねぇ」
 その言葉にぷんすかと頬を膨らませるリナさん。
「………」
「な、なによ」
「いや、怒った顔のリナさんも可愛いなあ…と思って」
「馬鹿にしてんの?」
 益々ご機嫌斜めな少女を見つめ、ふっと真顔になるゼロス。
 ぎくり、とした。
 リナはどうしてかゼロスから目がそらせなかった。
 それも数秒のこと、すぐにへらりと顔を崩し、手をリナの頬に当てる。
「……何よ」
「いや、触りたいなあと思って」
「うわっっ」
 慌てて身を引くリナ。
「なんでそんなに嫌がるんですかあ…」
 ひくひくと今にも泣き出しそうな顔で、こちらを覗き込む。
「だっ…だっていやらしいこと言うんだものっっ」
「?
何処がです?」
「だ、だから……」
 少し顔が赤らむのが解る。
――触りたい
 ぽんっと手を打ち、口の端を少し上げるゼロス。
「普通のことだと思いますけど?
好きなヒトには触れたい、近くに感じたい」
「好きなって………」
「あんた魔族じゃないって、顔してますね」
 そうよっ、威嚇するようにこちらを見るリナ。まるで子犬のようである。
「ひどいっっっ!
人種差別だなんてっっ!!」
「おまえはヒトじゃないだろーーーーがっっ!!!!」
 右手を上げて振りかかるリナ。手首をつかまれ、そのまま引き寄せられる。
「へっ!?」
 抱きしめられるリナ。一瞬の戸惑いののち、我に返り声をあげる。
「ちょっ、ちょっとゼロスっっ」
 身動きがとれない。息が出来ない。
 こっっこの男は何を考えてるんだぁぁっっっ
 思考回路が混乱する。ぐるぐるとどーでもいいことが思い浮かんでくる。
 熱い。……顔が熱い。
 何か鳥の鳴き声がする。ふくろうだろうか?
 元々人気の無い村の夜はとても静かで、夜中ともなれば話し声ひとつ聞こえない。
 明かりも少ない。真っ暗だ。
 だからこそこんなにも星が見えるんだろうけど…。
 あ、でも夜食べた山菜御飯美味しかったなー……。あれはウチのねーちゃんが作ってくれるのと大差ないぐらい………
 って、オイ。
 こいつはいつまでこーしてるつもりなんだ?
 ついつい考えが脱線しちゃったけど、もう5分はこうして抱きしめられてるんだよなあ……。
「ちょっとゼロス、いいかげんに……!」
「どうしてでしょうか」
「ん?」
 僕がリナさんを手に入れたいと思うのは、どうしてだろう。
 面白い。可愛らしい。傍にいたい。
 それは、なんだ?
 服従させたいとか、したいとか、上下関係ではなく
 レンアイカンジョウ
 有りえない。
 それは僕らには無いはずのもの。では何故。
 ただ
 欲しいと思う。
 ああ。
「同じか」
――買ってよぉぉぉっっっっ、買ってぇぇぇぇぇぇっっっ!!!
 理由なんかいらない。ただ欲しいからねだる。
 我が儘に。――われがままに。
 だからあんなにも目が離せなかった。
「リナさんがぬいぐるみなら良かったのに」
「はあ!?」
 腕のなかでリナさんが呟く。
 くっと上を向き瞳が合う。大きな赤い瞳。
「そんなのつまんないじゃないのよっ
飾られてるだけのヌイグルミなんていやよっ!!!!」
 じたばたと身を動かすリナ。どうにかして腕の中から脱したいようである。
「そうですねぇ…」
 さらに腕に力を加え、ぐっと顔を引きよせるゼロス。
 唇と唇が触れ合うほどの至近距離。
「ぬいぐるみ相手にこんなことしても、つまらないですし、ね」
 そうしてリナの耳に、ついばむようにキスするゼロス。
「ひゃあぅっ!!」
 びくりと体をこわばらせるリナ。
 くすくすと笑みを漏らし、その唇を頬へと移動させるゼロス。
「おやおや…感じやすいですねぇ、リナさんは」
「こんのぉっっっ!!!!」
 ごん!!!!
「おわっ!?」
「ったぁっっ!」
 突き飛ばされ後ろに倒れるゼロス。
 はあはあと息を荒げて屋根の上へ立つリナ。
 あたた…と言いながら身を起こすゼロス。本当は痛いはずないんだが。
「頭突きは卑怯ですよぉ」
「じゃっかましいっっ!!!このヘンタイ!!淫乱魔族!!!」
「淫乱…いい響きですねぇ…」
「だあぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!
 うっとりするなこのおかっぱぷりぃすとぉぉぉっっっ!!!!」
 はあはあ苦しそうに息をし、真っ赤になった顔を冷ますように手で仰ぐリナ。
「もうあたしは寝る!!ついてくんな!!」
「そんなっっ!!
 新婚初夜から妻と別室なんて!!!」
「誰が妻だ!!だれと初夜だぁぁぁっっっ」
 悲鳴にも近い叫びと共に、宿へと戻ってゆくリナ。
 いつもながら可愛らしいですねぇ…と、独り言をいうゼロス。
「………確かに、あなたはぬいぐるみではないけれど」
 一人になりゆっくりと星空を仰ぐ。
 
 理由なんかいらない。ただ欲しいからねだる。
 我が儘に。――われがままに。
 
 あの少女のように振舞うことであなたが手に入るのなら
 今すぐそうしてみせるのに……。



 END


 
 どうもー。お久しぶりですー。
 某ゼロリナ作家(自称)ですー。
 この名前でわたしの正体がわかった方、お返事くださーい★
 あ、アドレスが・・・(汗)
 久々に小説書きました。めちゃ楽しかったです。
 次は長編書きたいです。
 ずーーーーーーーーーーっっっっと言ってる某子守唄の続きとか。
 では。

トップに戻る
11127Re:ぬいぐるみーゼロリナ小説ーー一坪 E-mail 7/24-04:47
記事番号11121へのコメント

おおうっ!?
めっちゃ、あまあまですねー。


> 理由なんかいらない。ただ欲しいからねだる。
> 我が儘に。――われがままに。
> あの少女のように振舞うことであなたが手に入るのなら
> 今すぐそうしてみせるのに……。
この辺読んで「ああ、いちきさんの小説だなー」と思いました。(笑)
(もちろん、いい意味で)


> 次は長編書きたいです。
> ずーーーーーーーーーーっっっっと言ってる某子守唄の続きとか。
ぜひ読みたいです!!!

トップに戻る
11134Re:ぬいぐるみーゼロリナ小説ーーいちき E-mail 7/24-19:01
記事番号11127へのコメント

うにゃーっっっっ
一坪しゃんだーーーーーーーっっ
めっちゃうれしいぞーーーーーっっっ☆

>> 理由なんかいらない。ただ欲しいからねだる。
>> 我が儘に。――われがままに。
>> あの少女のように振舞うことであなたが手に入るのなら
>> 今すぐそうしてみせるのに……。
>この辺読んで「ああ、いちきさんの小説だなー」と思いました。(笑)
>(もちろん、いい意味で)

ををう。そうですかー。
自分ではわからないものですけど、あたしらしさがあるっていうのは
なんだか嬉しいですねぇ・・・(しみじみ)

>> 次は長編書きたいです。
>> ずーーーーーーーーーーっっっっと言ってる某子守唄の続きとか。
>ぜひ読みたいです!!!

予告まで出しといてこの始末・・・ってカンジです。トホホ。
でも雰囲気がヘンになるのもどーかと思いまして・・・はは。

ではではーーーっっっご感想ありがとうでしたーーーーっっっっ!!!