◆−冬に咲く春花(前編)−あごん(7/26-01:13)No.11168 ┣はじめまして−一坪(7/26-11:21)No.11175 ┃┗Re:はじめまして−あごん(7/29-20:40)NEWNo.11238 ┗冬に咲く春花(中編)−あごん(7/26-23:03)No.11183 ┗冬に咲く春花(後編<上>)←おいっ!−あごん(7/28-00:55)NEWNo.11201 ┗冬に咲く春花(後編<中>)−あごん(7/29-00:52)NEWNo.11228 ┗はじめまして。−王静惟(7/30-00:27)NEWNo.11241
11168 | 冬に咲く春花(前編) | あごん E-mail | 7/26-01:13 |
初めての投稿です。いつも読む方専門でしたが。お付き合い頂けると幸いです。 一応、サスペンス・ホラーを目指しました。しかも1話で完結してないし。 「あれ、ゼリアだわ。」 あたしがそう呟いて、歩みを止めたのは、ゼフィーリア国境まであと半月という所の山林の中だった。 「ゼリア?」 あたしの旅の連れにして、金髪美形、ただし頭の中身は解凍済みのストロベリージェラートが脳みそのかわりを務めている超剣士のガウリイが不思議そうに、あたしに問いかける。 おそらく、あたしが何に対して発言したのかわからなかったのだろう。 それもそのはず。 周囲を見渡せど、視界に入るのは、冬の寒さに凍えた枯れた木ばかり。人はおろか動物の姿、いや、気配さえ無いのだ。 あたしは、くいっと顎を動かし、ガウリイの視線を誘導した。 「あれよ。あそこの、小さな薄紫の花。」 「ああ、あれか。」 ガウリイもあたしの見ていたものが何かわかり、小さくうなずいた。 「・・・で、あの花がどーかしたのか?」 ・・・・・・。やっぱりね。 あたしはひとつ小さくため息をついて、ガウリイに説明すべく、頭三つ分は高いであろう彼の顔を見上げた。 「まあ、あんたのことだから、知ってるわきゃないとは思っていたけどねー。教えといてあげるわ。」 ここまであたしが一気に言うと、ガウリイは、いや別に知りたいわけじゃあ・・・それに覚える気もないし、という顔をしたが、ンなこた知んない。 「別にムツカシイことなんて言いやしないわよ。単にあの花は春先に咲くってだけよ。こんな季節に咲くなんて、珍しいってはなし。」 「ふぅん、狂い咲きってやつか。」 おおっ!ガウリイが難しいコトバを使っているっ! 「すごいじゃないっ!ガウリイ!ンな言葉知ってたのねっ!」 「お前なー・・・。」 言って苦笑するガウリイ。一応ほめたつもりなんだが、よく考えたらあんま誉め言葉じゃあないかも。 それからはゼリアの花についての話もせずに、相も変わらずバカ話をしながら、あたし達は一路ゼフィーリアを目指し、旅を続けたのだった。 その町に着いたのは、夕暮れ刻だった。 セイルーン王国領・カルザ・タウン。これといった特色もない町で、あと3日も歩けば、ゼフィーリア国境にあるミスドア・シティになる為に、旅人達もここではあまり休息を取らないらしく、はっきり言ってさびれている、と言っても過言ではないだろう。 それでもあたし達は、ここ1週間ばかしなかなかの強行軍で来たので、この町で1宿することに決めた。 とりあえず、手頃な宿屋でも見つけて、うまいメシとあったかいふとんを確保するべく、1件の宿屋に入っていったのだった。 「ぬあんですってえぇぇぇぇ!!」 あたしの絶叫がこだましたのは、なかなか質の良さそーな宿屋の受け付けだった。 「すまないねぇ、お嬢ちゃん。今、この町じゃあちょいとゴタゴタがあってねぇ。」 宿屋のおかみさんであろう、年配の人の良さそうなおばちゃんは、申し訳なさそうな顔であたし達に謝っている。 「ちょっと待ってよ!いくらゴタゴタがあったって、町の宿屋が全部満室なんて事!」 「それがあるんだよねぇ・・・。」 あたしに最後まで言わせずにおばちゃんは、深い嘆息と共にそう言ったのだった。 たしかに、この町の雰囲気はおかしい。 それは、この町に一歩踏み入れた時から、感じていた。 どう見ても正規の兵士にしか思えない奴等がうろうろしてるし、どうやら傭兵もいるらしい。 よほど大きな事件が起こるか、起きたのだろう。 しかしっ!! ダンッ!! あたしは持っていたフォークを有頭海老フライに突き刺すと、やおら立ち上がり、ガウリイにひたと目をやり、 「直団判よっ!」 そう言いはなった。 「直団判っつーても、誰にだよ・・・。」 やや呆れ顔でガウリイが言う。 「当ったり前でしょーがっ!町長に決まってんでしょーがっ!!」 あたしの当然と云えば当然な意見に、ガウリイは眉を軽く寄せ、 「町長・・・ねぇ。でもこの事態って町長より上の機関だと思うぜ?」 珍しくうがった意見を口にした。 ふむ、ガウリイにしては珍しく、事態の深刻さがわかってはいるようである。 「たしかに、正規の兵士がいるってことは領主なりの手が下っているのは間違いないわ。」 「だろう?だったら、町長に言ってもしょーがないんじゃあないのか?」 「甘いわね、ガウリイ。」 「なんでだよ・・・ってまさか!」 いきなし顔面を蒼白にしてガウリイがあわてたように腰を浮かせ、 「お前っ領主に直団判する気じゃないだろーなっ!!」 「するかぁぁぁぁあっ!!」 スパァァァン!! あたしの投げた木製のカップがガウリイの頭に直撃した。 「ちがうわよっ!最初から町長って言ってんでしょーが!」 あたしは、ガウリイが座り直すのを待って、言葉を続けた。 「つまり、よ。あんたの町にわざわざ寄った旅人を拒否するとはどーゆー了見か、と。そう言って、国か領に苦情を出してやると脅す・・・もとい、話かけて、あんたん家の部屋を無料で明け渡しなさい、と直団判すんのよ。」 まあ、多分この件には領がからんでいるだろうが、それはこっちの話の持って行き次第である。 「お前って暴力以外の解決の仕方しらんのな・・・」 「爆煙舞」 ちゅどどどおぉんっ! 乙女心のわからん単細胞を黙らせると、あたしはメシ屋のおっちゃんに町長の家を聞き出したのだった。 「とにかく、困っておりまして・・・。」 そう切り出したのは、年の頃なら60才前後の、穏和そうな顔をしたカルザ・タウン町長のクロフォードさんだった。 話をまとめると、こーゆーことだった。 3ヶ月ほど前から、この町は殺人鬼に脅かされていた。 被害者は全員女性。いや、女性というよりも少女といった方がより正しいであろう。15才から、18才までと限定されているらしい。手口は残忍にして冷酷。被害者はみな一様に身体の一部が切り取られている。それは腕であったり、乳房であったりと、バラバラらしいのだが。そして、殺したあとは町を囲む外壁の外に無造作に捨てられいる。 被害は現在、すでに7人にのぼっていた。 これを重く見た領主は、1月前に兵士を送り込んだ。 が。それにも関わらず、被害は止まることなく、つい2日前に、7人目の犠牲者が出た。 なるほど。それで、3軒の宿屋が兵で埋まるわけである。 「お二方は、魔導士と傭兵と見ましたが・・・。」 ・・・・・・やっぱし、そう来るか。 あたしは内心、舌打ちした。 「ええ、そうですが・・・。」 「おお、やはり・・・!」 あたしの気持ちもしらず、町長は目を輝かせた。 「我が家を宿屋代わりに使って頂いて結構ですが、その」 「殺人鬼を捕まえるのに協力しろ、と」 あたしの言葉に町長は少し、目をそらしたが、再びこちらを向くと、 「はい、その通りで・・・・。」 と、今度は目を逸らさずに、きっぱりと言いはなった。 つまり、野宿したくなけりゃ協力しろ、とゆーことなのだが。 あたしの躊躇が不思議なのだろう。ガウリイが何か言いたげな視線をあたしに送ってくる。 たしかに、話を聞いた今、あたしはその犯人に怒りさえ覚えている。 のだが・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。しゃーないっ! 「お受けしましょう。その依頼。」 あたしはきっぱり言い放った。 「ありがとうございます!ええっと、では早速部屋に・・・・」 言いかけて、町長はあたし達の方を振り返ると、 「お名前をまだ伺っていませんでしたな。ええと・・・」 「ああ、そうね、言ってなかったわね。」 そう言ってあたしはガウリイの方を見て、 「あたしの旅の連れのガウリイ・ガブリエフ」 「よろしく」 とガウリイは軽く町長と握手を交わした。 「そして、あたしはリナ。リナ・インバースよ」 言った瞬間。 どよどよどよ!!! 応接室にいたメイドさんやら、警備の人やらがざわめいた。 毎度の事とはいえ、むかつくモンである。 「ではっ!あなたがあの!」 「まな板魔導士の・・・・っ!」 「かびパンのリナ!?」 ちょっと待てぃっ! 「何よ、そのまな板とか、かびパンとかって!!いや、まな板はわからんでもないんだがっ!勿論、説明しよーもんなら問答無用で張り倒すけど!かびパンってのは何よっ!!」 あたしの剣幕に押されたか、町長がおびえた目で、 「つ・・・つまり、これにあたると、ただじゃすまな」 「爆煙舞っ!!」 きゅどごごごごん!!! みなまで言わさず、あたしはその場にいた者ぜーいんを吹っ飛ばした。 はあ、ただでさえやる気ないってのに・・・。 あたしはそっとため息をついたのだった。 まさか、この事件が、最悪の3日間をあたしにもたらすとは考えもしなかった。 |
11175 | はじめまして | 一坪 E-mail | 7/26-11:21 |
記事番号11168へのコメント 投稿ありがとうございました! > あたしの旅の連れにして、金髪美形、ただし頭の中身は解凍済みのストロベリージェラートが脳みそのかわりを務めている超剣士のガウリイが不思議そうに、あたしに問いかける。 なんかめちゃおいしそうですね。(笑) 猟奇殺人っぽいお話ですね。 私は、そーゆーの大好きなので続きがスゴく楽しみです。 ガンバって続き書いてくださいね。 ではでは。 |
11238 | Re:はじめまして | あごん E-mail | 7/29-20:40 |
記事番号11175へのコメント 一坪さんは No.11175「はじめまして」で書きました。 > >投稿ありがとうございました! 初めまして。お返事がすかっり遅くなってしまい、申し訳ありません。 実は3話完結の予定だったので、全話終了後にお返事しようと思っていたのです。 「いかがでしたか?」 なんて格好良くキめたいな、と画策しておりました(苦笑)。 >> あたしの旅の連れにして、金髪美形、ただし頭の中身は解凍済みのストロベリージェラートが脳みそのかわりを務めている超剣士のガウリイが不思議そうに、あたしに問いかける。 >なんかめちゃおいしそうですね。(笑) 有り難うございます。ここが一番苦心しましたので、そう言っていただけると光栄です。 なんとか原作らしく、食べ物で、例えたかったのです。 >猟奇殺人っぽいお話ですね。 >私は、そーゆーの大好きなので続きがスゴく楽しみです。 はい。一応、猟奇系を目指しています。ある程度は理詰めでいきたいな、と思っています。 >ガンバって続き書いてくださいね。 有り難うございます。 まだもう少し続きますが、がんばります。 初投稿のくせに、こんな長編を送ってしまい申し訳ないです。 では、失礼いたします。 |
11183 | 冬に咲く春花(中編) | あごん E-mail | 7/26-23:03 |
記事番号11168へのコメント コン コンコン このノックの仕方はガウリイだ。 最初に1度、ややためらいがちに打ったあと、続けて2回打つのは彼のくせみたいなものだ。 ふむ、丁度いい。あたしもガウリイに言っておくべき事があるのだ。。 「ガウリイでしょ?開いてるわ、入っていーわよ」 「ああ、じゃあ、遠慮なく・・・」 言いながらガウリイはドアをゆっくりと開け、部屋に足を踏み入れた。 ちなみにあたし達は、あれから夕食をご馳走になり、それぞれになかなか立派な部屋をあてがわれた。2階の奥にある隣合った2部屋である。夕食の席では事件についての話は無いに等しかった。まあ、おいしいゴハンを食べながら和気合い合いと話せるような話題でないのは言うべくもないだろうけど。 一応、依頼という形を取っているわけだが、依頼料に関しては部屋と食事の提供、というところで落ち着いた。まあ、あたし達が事件を解決した暁には、領主からいくばくかの恩賞がもらえるらしい。 とにかく、そんなわけで、あたしは部屋に案内され、ショルダーガードとマントを脱ぎ、今、ようやく息をひとつついたところだった。 部屋に入ってきたガウリイは、備え付け(というべきか)の椅子に目をとめると、座っていいかとあたしに了解を求めた。 勿論、座っていいに決まっているのだが。この男、時々みょ〜に紳士くさい態度をとる事がある。親しき仲にも・・・とやらを意識しているのか、していないのか。 椅子に座り、ベッドに腰掛けているあたしと向き合うと、ガウリイは少々ためらいがちに、 「リナ、お前なにか悩んでないか?」 と優しい口調で切り出した。 うぅむ。やっぱし勘付いてたか。 「うん、実はそーなの。ガウリイ聞いてくれる?」 と、言える性格なら、妙な二つ名なんかで呼ばれやしないわよね、あたしも。 「なんで?別にいつもと変わりはないと思うけど?」 しれっと言ってみた。 すると、ガウリイは、ガウリイにしか出来ない優しい苦笑を顔に浮かべた。 「言い方が悪かったか」 そう言うと、しばし何か考えてから、再びあたしと視線を合わせて、 「お前、この件に随分乗り気じゃあないみたいだけど、何か引っかかる事でもあるのか?」 ふむ、まあ良ろしい。 「乗り気じゃないわけじゃないわ。はっきし言ってこーゆー類の犯人ってかなり許せないしね」 「じゃあ、何をあんなにためらっていたんだ?」 事も無げに聞いてくるガウリイ。 ん〜〜〜〜。言わなきゃ、だよねぇ、やっぱ。 あたしの沈黙をどう受け取ったのか、ガウリイはポンと手を打つと、 「そうかっ!依頼料だな!少ないから気に入らないんだな!」 1人やたら納得顔で頷いて、あたしの肩に手を置き、 「でもな〜、しょーがないだろ?泊めてもらってメシまで出してもらってるだけでもさ、ありがたいと思えって」 言い聞かせるようにぽんぽんと肩をたたいた。 「ちがうわあぁぁぁぁぁあ!!」 ずきゅるるるぅん! あたしの放ったコークスクリューパンチがまともにガウリイのこめかみにヒットした。 「あたしは守銭奴かいっっ!!」 「えっ!自覚ねーのかリナ・・・っぱぐあ!!」 椅子から転げ落ち、こめかみを押さえつつ寝言を吐くガウリイに、必殺のかかと落としを食らわせて沈黙させ、 「あたしは守銭奴じゃなくって!お金の大事さをよ〜〜く知ってるだけよ!」 さすがに今のかかと落としは効いたのか、脳天を押さえながら悶絶するガウリイ。 「ちがうわよっ!依頼料とかじゃなくって!その・・・」 ううっ!さすがに言いにくいよぅ! 「来ちゃったのよっ!・・・・アレが・・・」 うひーーーーっ!恥ずかしいっっ! 18才にもなって何が恥ずかしいだ、と思われてもしょーがないが、どーにもこれだけは未だに恥ずかしいのだ。 すると、ガウリイはさっきまでの悶絶はどこ吹く風といった感じで、 「・・・そうか・・・。そーいやそろそろだもんな」 天井の方を見ながら呟いた・・・ってオイ! 「ななななな!なぁんであんたがあたしの周期まで覚えてんのよっ!」 「おいおい、3年以上一緒にいりゃわかるだろーが、ふつーは」 ああ、顔が赤いのが自分でもわかる・・・・。 「・・・・・・・・・」 なんだか何も言えなくなってしまったあたしは、下を向いて出来るだけガウリイの身体が視界に入らないように努めた。 「そうすると、魔法はあてにしない方がいいって事か」 う。なんかすんごい普通に話がすすんでるんですけど・・・。1人で赤面してるあたしがアホみたいじゃない。いや、だからってガウリイにも赤面とかされたらイヤだけど・・・。 「あ、でもね、昔よりちょっと魔容量が増えたみたいなのよ」 たしかに、実際増えているのだ。 魔血玉を口に入れた影響なのか、それともずっと魔力増幅をしていたからかはわからないのだが、あの事件依頼、あたしの魔容量は増えたのだった。 まあ、神威刃は使えないが。獣王牙操弾は発動するのだから。 「だから、まあ、魔族相手じゃないし、こんな状態でもなんとかなるかなーと思うんだけど」 あたしの前向きな意見に、ガウリイは心配そうな顔で、 「ん〜〜でも無理すんなよ。本当は俺一人でやるって言いたいんだが、多分この件って調査とかが主だろうからな。俺だけじゃ、何一つ進展しないだろうしなぁ」 ぼやきにも似た真実を言ったのだった。 「だいじょーぶよ。いざ犯人と格闘ってことになったら、あたしはとんずらこくから」 そう言ってあたしは、ガウリイの背中をぽんっと叩いた。 ガウリイは、満足気な顔でいつものように、あたしの頭に手を置いて、くしゃりとひと撫でしたのだった。 翌日。 あたしとガウリイは朝食を食べ終わると町に出て、とりあえず聞き込みをすることにした。 「で、聞き込みって、まずどこからなんだ?」 町長の家を出てから、少し歩いた所でガウリイが問いかけてきた。 「ううーーん、そぉねぇ」 被害者の家には、ある程度の情報が集まってからにしたい。まさか娘さんが無惨な殺され方をした人に、根堀り葉堀り聞くわけにもいかないだろう。 となると。 「そうね、町長さんの話だと、領主から派遣された兵士と、この町で雇った警備兵がいるらしいし。とにかく、この二つから当たってみましょ」 「ほほぉーう。つまり、カルザ・タウンの町長様は、俺達をあてにせずに、流れの傭兵共にこの事件をまかせる、と。そーゆうことかい?お嬢さん?」 領主から派遣された兵士、おそらく、年や着ている服からいって兵士長かなにかだろう、イヤミな口調と共にあたし達をじろじろと、まるで値踏みでもするかのように見回した。 むかむかっ 「いいえぇ、警備が不十分だとか、100人もいて、昼間っから酒かっくらっているよーな奴等にどんな立派な調査が出来るのかわっかんなーい、って意味じゃなくってですねぇ、人手は多い方がいいんじゃないかって話なだけですよぅ」 にこにこ顔と無礼にならない程度の敬語を使って言ってやると。 「貴様っ!私が誰かわかって言っているのか!」 兵士長は、四角い顔を紅潮させ、食ってかかってきた。 「あんたがどこの誰かなんてこと、どーでもいいわよ。大事なのは、これから一人たりとも犠牲者を出さないって事でしょーが」 兵士長は、ぐっとつまり、ぎりぎりと歯噛みした。 「まあまあ。隊長。実際、協力はあって困るものじゃあありませんよ」 そう言いながら歩いてきたのは、40才過ぎのなかなか美形のおじ様だった。 「エルグランドか。そうは言うがな、邪魔でもされたら叶わんぞ」 「邪魔って、酒飲む邪魔するなってこと?」 とでも言おうかと思ったが、話が進まないし、やめておこう。 大人になったなぁ、あたし。1年前だったら言ってたわね、絶対。 「まあまあ、とにかく、彼らの話を聞きましょう。全てはそれからで」 穏やかに、やんわりと美形中年のエルグランドさんは、隊長をそれと気付かせずにたしなめている。 うまいな、この人。おそらく隊長のお気に入りなのだろう。 「ふむ。ならば、お前が話せ。私は色々と忙しいからな」 「了解しました。サー」 それだけ言うと、隊長は奥へと足早に去っていった。 落ち着いて話の出来る所、ということで、あたし達は宿屋にあるエルグランドさんの部屋に招き入れてもらった。 エルグランドさんは、あたし達にグリーン・ティを出し終えると、テーブルのをはさんであたし達の向かいに座った。 最初に口をきいたのはあたしだった。 「しかし、なんでまたこんな昼間っから酒飲んでんです?ここの連中」 あたしのちょっとだけ礼を欠いた質問にも、エルグランドさんは気を悪くした風でもなく、 「ははは。耳の痛い言葉ですねぇ」 と、照れたように頭をかいた。 「いや、実は。犯人の手がかりは限りなくゼロに近いんですな」 ここで一服、お茶を飲み、話を続けた。 「で、3日前に新たな犠牲者が出てしまいましてね。警備に手抜かりはなかったはずなんですが。しかし、事件が起こってしまったからには、どこかしら不手際があったんでしょうな」 ちらりと横のガウリイを盗み見ると、どーやら起きてはいるようである。なんにも喋んないから、また寝てんのかと思ったが、心配いらないようだった。なんだか、こころもち真剣な顔で聞いていた。 「しかし、相変わらずの進展なしでしてね、どこから調査していいのかもわからん状態でしてね。まあ、要するにくさった連中が何人か、やってられるかってなもんで、あーゆー事態なんですな」 「ほんっとーに腐ってるわねぇ」 しみじみ言ったあたしの言葉に、エルグランドさんは、 「いえいえ、ほんの何割りかの連中ですよ」 と、ぱたぱた手を振って答えた。 「で、手がかりは本当に無い、と?」 「えっ・・・ええ、まあ、そうです」 今まで一言も発言しなかったガウリイが、突然喋ったのでややビックリしたのか、エルグランドさんは慌てたように頷いた。 「とりあえず、わかっているのは、凶器はおそらくどこにでもある家庭用の包丁らしきもの。刀などとは切り口がちがいますな。被害者同士の接点はみつかっていないし、家族もそうですな。遺体の放置場所は外壁の外。とにかく無秩序的な捨て方です。遺体を一部切り取ってあることは聞いてますか?そうですか。それすらもてんでバラバラで。容疑者を一人も見つけられてないんですね」 「なるほど、ね。くさりたくもなるわね」 あたしは小さな同情をエルグランドさんに示した。 エルグランドさんは、なんともいえない表情でこっくりと頷く。 「ちょっと、待ってくれよ。包丁で骨まで断ったっていうのか?」 いきなりのガウリイの質問に、今度はあたしがびっくりする番だった。 「ああ、そこを説明しませんでしたねぇ」 彼はゆっくりと顔をあげると、 「骨は残されてありました。つまり、どういった方法なのか、犯人は血と肉だけを、被害者から奪っています」 ああっ!終わらん!後編だけでおわるのか! |
11201 | 冬に咲く春花(後編<上>)←おいっ! | あごん E-mail | 7/28-00:55 |
記事番号11183へのコメント 犯人は、血と、肉と、皮を、少女から奪い去る。 その、若い、生命と共に。 「つまり、被害者の身体は切り取られた、というよりも、剥ぎ取られたという方が、正確かもしれませんな」 沈痛な顔で、エルグラントさんは深いため息をついた。 「先の被害者の場合は、足首から先でしてね。あ、左右共々ですが。他の被害者にもいえる事なんですが、きれい、と表現するのもおかしいんですがね、まあ、とにかく肉なんて、断片も残っていませんでしたな。足先の部分の白骨だけが身体につながってましたよ。下世話な言い方かもしれませんが、削り落としたという感じは無かったな、あれは。その場合だとどうしても、骨に何かしらの形跡が残るでしょう?包丁だとしたら、刃の跡とかね」 ここまで一気に喋ってから、エルグラントさんは、グリーン・ティを一口飲み、 「まあ、たとえば料理の達人が犯人で、薄く肉を骨の周りに残してから、後を洗い流したとしても、その場合でも痕跡は残るでしょう。骨と肉はある意味一体化しているものです。スポンジたわしくらいじゃあ洗い流せない」 そう続けた。 「・・・・・・・・」 どう言えばいいのかわからず、あたしは沈黙する事によって、ここまでで質問が無いのを表した。 「正直、人間技とは思えない。何人かはこれは、魔導士かなにかの仕業ではないか、とそう思っています」 つ、とあたしの顔に目を走らせると、エルグラントさんは尚も言葉をつないだ。 「あなた、魔導士ですね?」 ええ、とあたしが返事をするよりも早く、 「そういった術とかは、ないものなんですか?」 そう質問してきた。 なるほど、それであたし達なんかと話をする気になったわけだ。 たしかに、いくら性格が良かろうとも、職業軍人たる者が一介の魔導士なんかを相手にするわけがないのだ。つまり、この人はあたしの魔導士としての知識をこそ、もとめているのだ。 「無い、とは言い切れないわ。ただあたしが知らないだけかもしれないし。ただ、有るという可能性は低いでしょう」 あたしの言葉にエルグラントさんは、右眉をわずかにあげてみせた。 さっきのあたしよろしく、無言で先を促しているのだ。 「魔導というものには、できることとそうでないことがあります」 一体この人が、どこまで魔導の知識があるのかわからないが。 「魔導には、大きく分けて三種類に限定されます」 「知っている。精霊魔術と、黒魔術、それから白魔術でしたな」 あたしはこっくりと頷いた。 「その通りです。この場合、おそらくは、白魔術に属するでしょう」 うぅん、今気付いたんだけど、あたしの口調はまるっきり先生口調だわ。一種の職業病かなぁ。 「白魔術の法則から見て、かなり難しい話ですね。まぁ、誰かが新しい法則を見つけた可能性も、無いわけではないけれど」 「じゃあ、黒魔術とか、精霊魔術は?」 横手からいきなしガウリイが質問してきた。 おおっ!どーしたんだガウリイ!今日はやけに人の話を聞いてるじゃない!熱でもあんのか!? 「ああ、その可能性は無いと思ってくれていいわ。理論構成からいって無理だと思う。精霊魔術なら、うぅん、いけるかもしんないけど、でもやっぱし可能性はかなり低いわ」 「うーむ、そうか。なにか手掛かりでも見つかれば、と思っていたんですがねぇ」 「ま。落ち込んでてもしょーがないわ。別の方向から検討してみましょ」 言ってあたしは、グリーン・ティを飲みほしたのだった。 エルグラントさんは、腕組みをして低く唸ると、 「別の、ねぇ。例えばどういった?」 と、八方塞がりが服着ている、といった表情で聞いてきた。 「そうねぇ。被害者はみんな違う箇所を持ち去られたっていうけど、具体的にどことどこなの?」 「ええっと、ちょっと待って下さいよ」 資料かなにかなのだろう、パラパラと忙しく紙をめくる。 「あった、あった。えーと。1人目が・・、おや」 「どうしたんです?」 1人目の名前さえまだ言ってないのに、エルグラントさんは不審な事でもみつけたか、資料を目で追う作業を続けたまま止まってしまった。 「いや、ちょっと気になることが。1人目ですが、名前はサラディ・レイル。15才。この子だけはいくつか例外がありますな。まず、切り取られたのは、左手の薬指のみ。骨ごと切り取られてます。そして・・・言いにくいんですが、陵辱された跡があります。死因は絞殺」 ここで言葉を区切ると、 「他の被害者は一様に、心臓を一突きですがね。辱めを受けたのもこの少女だけです」 そう言葉を結んだ。 「なるほど。1人目だけが、少し異なるわけね」 「ええ。ちなみにこの少女だけが、町の中に放置されていたようです」 あたしは、エルグラントさんの言葉に少し考え込み。 「ふむ。つまり犯人にとってこの子だけは、なにか特別だったってことはありえるわね」 あたしの言葉を継いだようにエルグラントさんは、 「ええ。それでなくてもこういった殺人快楽犯は、1人目になにかしらの関係を秘めていることが多いのです」 資料をテーブルの上に置きながら言う。 そう。こういった犯人は、1人目を殺したあとに、その快楽を得て次々と犯行を繰り返すケースが多いのだ。 となると。 あたし達三人は顔を合わすと、大きく頷いた。 ひとまず、調査の方向性は決まった。 「1人目の被害者を徹底的に調べましょう」 とりあえず、あたしとガウリイは町長の家に一旦戻る事にした。 1人目の事のついては、エルグラントさんにまかせた方がいいだろう、と判断してのことだ。あたし達なんかよりも、正規の兵士の方が人の口も動き易いであろう。 それに、町長に訪ねたい事もいくつかあるし。 「あ、そーだ。ガウリイ」 「ん?」 ガウリイが、こちらを見て、どうしたんだ?と目で語りかけてくる。 「どーしたのよ、今日」 「どうしたって、何が?」 あたしの質問の意図が理解できなかったのか、不思議そうな顔で問い返してくる。 「いや、だから。随分マジメだったじゃない?いつもなら、全く聞いてないか、聞いてても話についていけないかじゃないのよ」「ああ、その事か・・・」 小さく呟くと、視線を町並みに戻して、 「お前が今回、なにかとつらいだろ?だからさ」 そこでこちらを振り向いて、 「負担を少なくしときたかったんだ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 どひぃぃぃぃぃぃぃっ!!! そんな事をさらりと言うなぁぁぁあぁっ! 「どした?顔が赤いぞ?」 「うっ!うるさい!なんでもないわよっ!」 まともにガウリイと顔を合わせらんなくなったあたしは、ガウリイを置いて、やや足早にその場をあとにした。 やっぱし、な(泣笑)。 終わらなかったか。すみません。 |
11228 | 冬に咲く春花(後編<中>) | あごん E-mail | 7/29-00:52 |
記事番号11201へのコメント やっぱし、とゆーか、町の通りに人影はあまり無い。 今、あたし達が歩いてるのは、町のほぼ中央にある大通りである。こんな事件が起こっているのだから無理はない。 そういえば、昨日あたし達が入った時も、人通りはあまりなかったな、と今更ながら思い至る。 それにしても、よくすんなり入れたなぁ、あたし達。 などと、あたしがぼんやり考えてると、 「なぁ、リナ。おれさ、昨日から気になってたんだけど」 ガウリイが、やはりどこかぼんやりしたように、声を掛けてきた。 「なに?なにが気になってるの?」 足を止めることなく、聞きかえす。 「うん、なんて言うか・・・。この町の雰囲気っておかしくないか?」 「何いまさら言ってんのよ、あんた。そりゃおかしーでしょうよ。妙な事件で、みんな脅えてるんだから」 肩を軽くすくめつつ、やや大袈裟にため息などついてみる。 すると、ガウリイはちょっと困ったように、 「いや、そーゆうんじゃなくってだな、どう言やいいかな。奇妙なんでだよ、全体的に」 「・・・わかりにくいわね」 「うーん」 低く唸ると、やおらポンっと手を打ち、 「ああ、そーだ、あれだ。ほら、ちょっと前に花を見ただろ、なんて花だっけか?」 足を止めて、あたしと向き合う。 「花?」 花なんて見た覚えは無いが。大体、冬も終わりが近いとはいえ、花なんてこんな時期に・・・。いや、あった。山林の中に一輪だけ、春花が咲いていたのを思い出した。 「・・・ああ。見たわね、確かに。ゼリアでしょ?」 「そうそう、そんな感じの名前だったよな、確か」 「ンで?ゼリアがどーかしたの?」 「ああ、その花っぽい雰囲気がするんだ、この町」 「抽象的すぎるわね、もーちっとわかりやすく言えない?」 あたしは、こめかみを押さえながらガウリイを、仰ぎ見た。 「うぅーん。だからぁ、そこに無いはずのものがある、と言うか、有るべきものがないと言うか。とにかくうまく言えねえけど、なんとなくわかるか?おれの言いたい事」 ガウリイなりに、その少ない語彙の中から必死で言葉を選んだのだろう、なんとなくあたしに伝わった。 「それとなく、ね。そうね、野生の勘を持つあんたが言うんだから、気にしとくわ」 再び歩を進めながら、あたしはそう言ったのだった。 「魔導士、ですか?」 「ええ、そうです。この町にはいないんですか?」 ここは町長の家の応接室である。 あたし達と町長とは大きな樫の木のテーブルをはさみ、向かい合っている。 町長の労いの言葉もそこそこに、開口一番、あたしは魔導士の存在の有無を聞いた。 「さぁて?いないと思いますが?それがなにか?」 「いえ、少し気になったもんですから」 あたしは曖昧に言葉を濁した。 ふぅむ。この町に魔導士はいない、と考えてもいいだろう。 魔導士、というものはなかなかその存在を隠し通す事はできないもんだからだ。 まず、住居ひとつとってもそうなのだ。 ひとつの町に根を下ろすということは、その町で、研究を続けるということになる。どんな種類の研究であれ、必要不可欠なものは、広大な敷地である。ちょっとした家程度の敷地では、どんな研究もできない、とは言い切れないが、難しくなる。 そして、あまり(どころか人によっては全く)外出しない者が多いのだ。ましてや、近くに魔導士協会もないような田舎町に住居をかまえる奴なんて、研究一辺倒だという者が多い。 そして。 ふつー、でっかい家に住んでて、人の出入りもなく、本人も滅多に外出しないとなると、まちがいなく周りの人達は怪しむ! そーなると前に先手を打って、自分の身の証をたてるのが人情とゆーもんである。まぁ、例外なんていくらもあるかもしれないが、それでもやっぱし、人にバレずに魔導士するのは困難である。 エルグラントさんには、あー言っといたが、魔導士、という可能性はゼロではない。 そう思っての町長への確認だったのだが。 どうやら空振りらしい。 「ええと、では、3日前に被害にあった女性の家ってどこかわかります? あたしは新たに質問をした。 「ええ、わかりますよ。今日が葬儀でしてね。今から行きますか?でしたら、案内の者を付けさせましょう」 「ああ、いえ。場所だけ教えてもらったら・・・・」 言い掛けて。 「そうですね、よろしくお願いします」 あたしは、ぺこりっと頭を軽く下げた。 「犠牲者の名前は、コーティ・エアウッド。16、いや17才だったかな?」 あたし達を案内してくれているのは、年の頃なら20才過ぎ、といった黒髪のなかなかの美人だった。名はルーティ・クロフォード。町長さんのお孫さんである。 「なかなかの美人でね、ホント犯人が許せないわ」 ルーティさんは、気の強そうな目をギラリと光らせた。 「ルーティさんは、彼女とお知り合いだったんですか?」 「そんな他人行儀な言葉使わなくっていーわよ。ルーティでいいわ。あなたのことはリナ、でいい?」 こっくりと頷くあたし。 「じゃあ、早速だけど、ルーティはその子と知り合いだったの?」 「知り合い、かな?といっても町であったら、少し話をする程度の、だけど」 「オーケイ。彼女、誰かからモーションかけられてたとかは」 「そこまで深い仲じゃあなかったわ」 首をふるふると数回、横に振るルーティ。 「でも、想像するのはたやすいわね。おそらくいたと思うわ。それくらい彼女は美人だったわ」 「悪く言うつもりなんてないんだけど、袖にされた男がいるって可能性についてはどう思う?」 ルーティは一つ苦笑すると、 「17の女の子よ?袖のするしない以前だと思うけど?」 それに、とルーティは言葉を続け、 「彼女は人に恨まれるような子ではないわ。本当の親孝行で、学校に行きながらも働いて親を助けていた子なの」 ルーティは、ちらりとあたしに目をくれると。 「通り魔の仕業じゃないの?この事件って。コーティの個人的な事情が関係してくるとは思えないわ」 そう尋ねてきた。 「一応、よ。一通りのことは聞いとかなくっちゃね。どこにヒントがあるかわからないもの」 「そう、そうね。リナは色んな事件に遭遇してるはずだもんね。あたしよりはずっと、物事が見えるわよね」 「いや、そこまで期待されてもちょっと・・・」 いきなし、パァンと背中をはたかれた。ルーティにだった。 「なに言ってんのよ、世界規模の事件簿魔導士、の名がすたるわよ!」 ・・・世界規模の事件簿魔導士って。 「なによ、それ」 「え?そう自分で名乗ってるって有名じゃない」 さも当たり前といった顔で、あたしの肩に手を置くルーティ。 「名乗った覚えなんかないわよっ!」 「あら、そーなの?ま、どっちだっていーじゃないの、今は」 あたしの抗議の声をさらりと流して、彼女は、つ、と指さした。 「あそこ。あの家がコーティの家よ」 当たり前だが、そこは悲しみの念でいっぱいだった。 コーティの友人だろうか、何人かの少女たちが部屋の端で、固まって号泣しているのが見える。 ここは、むりやり命を奪われた人間の葬儀なのだ、と改めて認識した。 棺にすがりつき、狂ったように泣き叫ぶ婦人の姿がある。 おそらく、コーティの母親だろう。その横には杖をついた紳士の姿。 「あそこの2人がコーティのご両親よ。父親の方は事故でうまく歩けないの」 ルーティがあたしにそっと耳打ちする。 ああ、それで。学校に行きながら働いていたのか、コーティは。 しかし。 あたしは、顎に指をあてて考え込んだ。 「まさか、遺体を見たい、なんて言っても、見せてくんないわよねぇ」 「遺体を?」 ルーティが驚いた様子であたしの方に振り向いた。 「ええ。そうよ。ここに来たのは遺体の状況を確認したかったからよ」 あたしの言葉に、ガウリイは、 「無理だろうな、あの様子じゃあ・・・」 そうポツリと呟いた。 「そうよねぇ、やっぱし」 「棺の中に花を添える時に見たらどうだ?」 「・・・そうね。そうするわ、ガウリイ」 そこで話を打ち切ってから、あたし達3人は棺へと向かった。 「で、なにかわかったのか?」 ガウリイがそう聞いてきたのは、町長の家に戻り、夕食を呼ばれ、部屋に引き返してからの事だった。 おっと、説明しておこう。 あれからあたし達は、町で雇われた警備兵のところへ行き、情報収拾もしてきたのだ。 あんま、たいした情報はなかったけど。 「ん〜、いくつかわかった事があるわね。妙な事なんだけど、被害者の名前に妙な共通点があったわ。 全員、名前の最後のつづりが同じなのよ」 「?つづりが?」 「そうよ。最初から言うわよ。サラディ、、シルティ、アーディ、キルティ、ティルジィ、ユーフィ、そして、コーティよ」 あたしの言葉にガウリイは一瞬絶句した。 「まさか、犯人が名前で選んでいるって言うんじゃあ・・・」 「それこそ、まさかでしょ。でもあまりにも不自然だわ」 「・・・たしかに」 「役人なんかは単なるぐーぜん、で終わらせるつもりみたいだけどね」 「お前としてはそこに着眼点を置くわけか」 「そこまでは重要視してないつもりよ。ただ常に頭の中に入れておきたいってだけよ。それにこの辺って、女の子にそういった名前を付ける特徴があるらしいし」 そう言ってから、あたしはエルグラントさんから貰った事件の資料の写しに、目を通した。 どれほど時間が経過したのか。 ふと気づくと、ガウリイが机につっぷして寝ていた。 こいつは〜〜〜〜!放っておくとすぐこれだ。 「ガウリイ、起きなさいよ。寝るんなら自分の部屋で寝てよねぇ!」 ゆさゆさと、ガウリイの肩を揺さぶる。 「ん、んん〜〜・・・」 軽く身じろぐと、ガウリイはゆっくりと目を開けた。 「リナ・・・、夢見たよ・・・」 と、もごもご呟く。 「そりゃ、夢くらい見るでしょーよ。ほれ、起きた、起きた」 「あの花の夢だったんだ・・・」 一瞬、何のことかわからなかったが、すぐに思い至った。 「ゼリアの花のこと?」 「そう・・・。ゼリアだ。枯れていたよ、あの花。寒さに負けたんだろうな、萎れてた」 ふう、と息を吐いてあたしは言った。 「夢占いでもしろっていうの?」 「ちがう・・・」 まだ半分は夢の中なのか、ガウリイは尚も、もごもごと続ける。 「リナはさ、あの花、どうなったと思う?」 唐突といえば唐突な質問に、ガウリイの意図を謀りかねる。 「そりゃあ、やっぱ、枯れたんじゃないの?」 春先に咲く花だ。 冬の寒さには耐えられないだろう。 「そっか。やっぱり、枯れたか・・・」 「随分、気にしてんじゃないの。どうかした?」 「いや、なんでもない。ただ、気になっただけだ」 そう言ってガウリイは、椅子から立ち上がる。 「じゃあ、部屋に帰って寝るわ、おれ」 「うん、おやすみ、ガウリイ」 「おやすみ、リナ」 ドアは閉まり、彼の姿をあたしの前から消した。 その夜、あたしは夢を見た。 ゼリアの花だ。 雪原の上で、ゼリアの花が一輪だけ、狂ったように。 狂ったように、咲いていた。 冬に咲く春花。 その光景はなにか異様なものをあたしに感じさせた。 あってはならないもの。 周囲と全く相入れないもの。 ガウリイが気にしていたわけがなんとなく。 なんとなくだが、わかった気がする。 あの花は、この事件と似ている。 そう、とりとめのない事を夢の中で、ぼんやりと思った。 やっぱし、次でも終わらない気がしてきました。 どーしようかなぁ。 最初から素直に番号うっとけば良かったですね、 初投稿でこんなに長いなんて。 どーもすいません。 |
11241 | はじめまして。 | 王静惟 E-mail | 7/30-00:27 |
記事番号11228へのコメント はじめまして、王静惟と申します。 小説を読ませていただきました。 スレの同人小説としてこういうネタなのはめったにありませんね。 金O一でも登場するような雰囲気(笑) で、被害者の名前からすると、まさか次はガウリイ!?(女じゃねえよ) 続きをとっても楽しみです!! あごんさん、頑張って下さい!! >やっぱし、次でも終わらない気がしてきました。 >どーしようかなぁ。 >最初から素直に番号うっとけば良かったですね、 あ、(後編<下>1)、(後編<下>2)という風にするのはどうですか(笑) ではでは、私はこの辺で。 |