◆−Positive Girl 第十楽章−浅島 美悠(7/26-21:31)No.11182
11182 | Positive Girl 第十楽章 | 浅島 美悠 | 7/26-21:31 |
変だ。 異界の魔王、白霧(デス・フォッグ)は、直感的にそう感じた。 リヴアが来ない。 いや…あいつは気紛れだ、いずれひょっこりと来るだろう。 『よぉっ! 片づいたからやるかっ!』とかなんとか言って。 でも。 「………重症だな…」 重い腰を上げ、『レイ』は空間を渡った。 離れている時間が、待ち遠しい。 今すぐにでも殺し合い、焦りを、恐怖を食らいたい。 相手が同じ種族だったら、どんな味がするだろう。 それはわからない。 何せ、一度も出したことも出せたこともないのだから。 「あはははははっっ!!!」 彼女はいた。 「あーははっ! はははっ!」 腹を押さえて、大声で。 「ははははははっ!!」 笑って、いた。 「くっ……ふっ……ははっ……。あ? レイじゃねーか……くくくっ!」 「おい……一界の魔王とも在る者が、なにやってるんだ?」 ひーひーと肩で息をして、目尻に溜まった涙を払う。 ………随分と凝った演出であるが。 「あいつらはどうした?」 「ふぅ〜。帰したよ。あー、いてーでやんの…」 ため息一つ、こきこきと首を鳴らす。 「あのアマによ、『帰りたきゃ、追いかけてきた野郎の名前を言ってみな』っつったら……。 …………くくっ……あはははっ!! あいつなんて言ったと思う!?」 「ヤだ」 あたしはきっぱしはっきし即答する。 「……………ヲイ」 「やだって言ったらやだ!! ぜーーーーーーーっっったい言わない!!」 「ちょっと待て! 貴様、我の話を……」 「聞いてた。解った。考えた。答えはやだ!」 あーーーーいらいらしてきた! あたしは呆然としているあいつをほっといて、青髪の女に詰め寄る。 「大体ねぇ! 勝手にあたしをこんなとこにつれてきて何様のつもり!? あたしはあんたのオモチャじゃないのよ!? ………ううん。魔族……っていうのから見れば、あたしたちはオモチャにすぎないのかもしんない。 それは何となく解るわ。けどねっ!! ンな理由で記憶いじったり、わざわざ『世界』を創ったりされちゃこっちが迷惑なのよ! しかも、何? 思い出したら帰してやるだぁ? えっらそーに……その態度むかつくのよ!」 それから方向転換。 あいつの白い服の端を掴んで、ずんずんとその場から立ち去ろうとする。 「どっ……どこへ行く!」 「出口を探す。あたしを必要としている世界へ帰る」 焦った声に、あたしは心の中で『ざまーみろ』と呟いた。 …………って……あたしっていぢめっ子? 「あんたの力なんか頼んない。記憶も、出口も、自分で見つける! まおーはまおーで、おとなしく世界征服でもしてたら? ゲームの中で!」 「…………」 すたすたすた。 ひゅんっ! 「うやっ!」 突如現れた女にぶつかり、尻餅をつく。 「っつ〜〜〜〜。ちょっと! いきなり何すん……」 顔を上げると、女の顔が間近にあった。 草色の双眼が、あたしを見つめる。 「……我が瞬き一つで国を滅ぼし、海をも割れる力を持っているのを、知っての上で…まだ言えるか?」 「そんなん、さっきから瞬きしてんのに何にも起きないじゃない」 と。 「……くっ……くくっ……あははははっっ!! 何だよそれーっ!」 口調をがらりと変えて、けらけらと笑う。 ……………はい? 「おめぇ! 人間にしちゃできた奴だな! アタイの脅しにも乗んねーしさ!」 「魔王のかけらを滅ぼした人間だぞ…? それぐらいのことで怯まないさ、このじゃじゃ馬姫さんは」 ため息混じりの一言を言った口に、 ばきっ! あたしは裏拳をたたき込んでやった。 ………って…いった〜〜〜。石でできてるから当たり前だけど…。 「わーったわーった…。な〜んであの方とあいつらが……闇を巻くもの(ダークスター)や 赤眼の魔王(ルビーアイ)が興味を持ったのか、よーやっとわかったぜぃ……」 くっくっくっ……と喉を震わせ、しぴっ! とあたしを指さす。 「面白いんだな。すっげー」 …………それだけのためにあたしはここに閉じ込められたのか? ってゆーか魔王って……もしや暇人だったりして。 「あ〜あバッカくそでぃ。めんどくせー『設定』や『人形』も用意したってーに…」 あたしにとって、理解不能なセリフを言って、指をパチンと鳴らす。 途端、あたしとあいつが、薄い膜のようなものに閉じ込められる。 なっ!? 「こぉ〜〜〜〜〜〜〜んなチンケで簡単な答えだったなんてよぉ…。 とんでもねぇ無駄骨じゃねーか……」 『こら〜〜〜〜〜〜っっ!! わけわかんないこと言っていないで、こっから出せ〜〜〜〜!!』 ほぅっ…とため息をつくと、あたしの後ろ、あいつを見やって。 「てめーも苦労してんだな〜」 「どーゆー意味でかは知らんが……確かにそうかもな…」 「まいーや。めんどくせーから返すぜ。姉キ」 ぱちんっ。 指を鳴らした。 「………で? ちゃんと帰ったんだろうな」 「おう。姉キが持って行ってくれたしな」 暗闇の中、やっと笑いが止まったリヴアは、ん〜と大きく伸びをする。 「今頃は腹空かせて、飯でも食ってんじゃねーんか? 『人形』も一応は返しといたしな。 ………ってゆーか…姉キ、なんで氷漬けにされといて動けるんだろうな」 「魔王だからだろ」 安直だってば。 「ふ〜ん……」 感心のなさそうに呻いて。 ぎぉっっ!!! 二人の間の空間が歪む。 「………っち……やっぱだめか…」 「俺に不意打ちなぞ八千五百と三十四万年早い」 精神世界(アストラル・サイド)からの一撃を涼しい顔で『防ぐ』レイ。 「……ま、ここじゃなんだな…場所を変えるか?」 不敵に笑う青年に、少女も笑い返し。 刹那の後。 二人は消えた。 「おっちゃぁ〜ん! ナポリタンとピラフ大盛りでお願いね〜!!」 「まだ食うきか? お前さんは」 「いいじゃないですか。目が覚めたっていうだけでも喜ばしいことですし……」 アメリアとガウリイが、朝御飯を頼むあたしをげんなりと見つめる。 ゼルは……寝てる。 なんだかしんないけど、あたしが起きたら、隣で寝てた。 そういえば、なんだかみんなもあたしの傍にいたし……。 なんか長い夢を見ていたようで……頭がぼ〜っとした。 「おっまたせしましたぁ〜! ナポリタンあ→んどピラフの大盛りでぇ〜すっ!!」 ウェイトレスのねーちゃんが持ってきた料理に目を輝かせるあたし。 ま、いっか♪ ゼルが起きたら聞けばいいもんねっ♪ あたしはフォークをとって── お盆を持ったねーちゃんと目が合った。 「……………」 「………? お客様?」 「え、あ、ごめん……。どこかで……会わなかった?」 「…いえ……。初対面だと……」 ねーちゃんは不思議そうな顔であたしを見つめる。 「アイラ! こっちも手伝っておくれ!!」 「あっ…はい! ただいまー!!」 そう言って、ねーちゃんはててて…とカウンターへ駆けて行った。 アイラ……って…いうんだ…あの子……。 なんだろ……。 会ったことないのに……。 懐かしい………。 ナンデダロ……。 第十楽章・了 Positive Girl・了 ちょっとだけいいわけ。ですわ。 あああああああああああああああああああっっっっっ。 なんっっか違う! 下書きと違う!! なしてやっ!? 矛盾しまくりだし〜最終回だけ長いし〜ですわ〜。 え〜〜〜……わけわかんなくてごめんなさいですわ。 まともに小説書きたいぞ…あたしは……ですわ…。 ちなみに、アイラちゃんが誰だかはご想像に任せますのでですわ…。 でゅわ! 長くなりましたがこれにてっ! またどこかで、でーすわっ♪ Miyu Asazima 追伸。 ちなちゃんへ→『目が覚めたら』の連載終了ご苦労さまですわ。(見てましたですわ〜) 個人としては、素直なリナちゃん(リリイちゃん?)が好きですわ。 書こうと思っていた感想が書けなくてすみません、ですわ。 これからもがんばってくださいね〜。 葵楓 扇様→『霊界ハンターSU・TE・RA』の連載ご苦労さまですです。(同じだよオイ) そしてもう新連載ですわっ!? すごいですわ〜。 ……まあ。私も人のことは言えなかったりして…ですわ…。 がんばって、ですわ〜。 でゅわ。今度こそ。 ここまでお付き合いくださいまして、まことにありがとうございまーすわ。 |