◆−A・ZI・SA・I −どんなことがあっても−−葉夢(7/27-03:14)No.11186 ┗ひっさしぶりぃっ!−れーな(7/29-14:52)No.11237
11186 | A・ZI・SA・I −どんなことがあっても− | 葉夢 | 7/27-03:14 |
はぁ。すっごい久しぶりだな〜。ここも。 どうも! 知っている方は知っている葉夢です!! 今回は初挑戦のゼロリナ!結構書きやすかった二人。(笑) このお話はあるHPに掲載させていただいたお話なんだけど、載っけちゃいました♪ 少し長いかもしれないけど……読んでくださるのならうれしいです! あ、もしかしたら、そのHPの人もいるかも! おお〜い! 見てる〜!?(爆) それではいきます!! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ここはとある街のとある宿屋。 そこにあたしたちは泊まっていた。もう夜もだいぶ更けてきた頃。 あたしは寝る支度を整える為、マントやショルダーガードなどは外した状態になっていた。 そして今は月や星だけがはっきりと見える夜の景色を見ながら髪をといているところだった。 ぼーっとしながら窓の外を見ていると…… 「リナさん」 …………………………………… しばしの間、くしを持った手がその動きを止める。 そいつは虚空に現れたのだった。 いや。あんたのことはわかってたつもりだけど……なんてゆうか、そんな風にいきなり出てこられると…… 「ちょっと……あんた、ここ二階よ? それをわかってんの?」 あたしは深いため息と共にそう言った。 「おや? 魔族の僕にそんなこと関係ないことくらい知っていらっしゃるでしょう?」 そうなのだ。こいつは人間ではない。魔族なのだ。 あ、いやいや。そーじゃなくって、それ以前の問題じゃないのだろーか? 「あたしたちならいいけど、もし一般市民の人に見つかったらどーすんのよ!」 「その時はその時です♪」 ニッコリ笑顔で人差し指を立てる魔族。 はぁぁ……どっかズレてる気がするのはあたしだけ? バックの黒い闇に溶け込むように現れたそいつの名はゼロス。 自分で謎の神官とか名乗ってる怪しい奴。 けど、その正体は赤眼の魔王シャブラニグドゥに忠誠を誓う五人の腹心の部下の一人、獣王ゼラス=メタリオムに創られた魔族なのである。 かなりの力を持っていて、たとえあたしでも一騎撃ちはしたくない相手。 わざわざ死ににいくようなもんよね。 っとまぁそんなことは置いといて…… 「で? ゼロス。あんたは何しに来たわけ?」 「何って……夜這いに♪」 しーん。 静かな辺りに更に静けさが降り立った。 「青魔裂弾波っ!!!」 どがぁっ! その静けさの中に騒音と共にあたしが放った青い閃光がほとばしる。 ゼロスに向かって放ったそれは、窓ガラスをぶち壊し窓枠を少し焦がしていたが……まぁ、気付かれないだろう。 そんな閃光をゼロスはひょいっとかわし、苦笑いの顔をこちらへ向けた。 「リナさん。危ないじゃないですか〜」 「変なこと言うからでしょーが!!」 「いやだなぁ〜。ちょっとした冗談ですよ、冗談」 「あんたが言うと冗談に聞こえないからやめた方がいいわよ。これ、あたしからの忠告ね」 実際そうなのである。 ゼロスはいつもにこにこしているおかげで、感情があまりわからない。 だから、今みたいに冗談を言われても気付かない場合がたくさんある。 ま、気付いてたとしても、あたしの呪文は飛んでたけどね。 「……そんな忠告いりません……」 ぼそりとつぶやくゼロスの声がしたような気がするけど……ほっとこう。 「ほんとは何しに来たの?」 腕組をし、やや睨みながら言う。 あたしのその剣幕にビビったのか、ゼロスはあたしと少し距離をとった。 そして頬をぽりぽりかきながら、 「あのですね、なんと言いますか……今日は天気がいいですよね〜」 「だから?」 きっぱりあっさり返すあたし。 「いや、だからって……」 まだもごもごするゼロスを見て、あたしは言い放った。 「用がないなら寝ていい? 明日早いから。んじゃね」 別に明日早く起きようなどとはこれっぽっちも思っちゃいない。 ただ、夜更かしは美容の大敵だから寝るだけ。 ゼロスに背を向けたその時だった。 「今から……出れますか?」 その声だけが異様にはっきり聞こえる。 なんだ。ちゃんと話せるじゃない。初めからそう言えばいいのに。 あたしは振り向き、 「……出れるけど……なんで?」 「それは秘密です」 人差し指を口にあて、彼はさも嬉しそうに言った。 あんた……その台詞が言えたのがそんなに嬉しいのか…… つくづく変な魔族である。 まぁ、寝るには少し早いし……少しくらいならつきあってやってもいーわよね。 それに……なんかさっきから下の方が騒がしい。 叫び声や足音が飛び交っている。 そんな音を聞いていると、なぜか嫌な予感になるのだ。 ここの部屋から出ろ。そうあたしの第六感が叫んでいる!! 「そーと決まれば善は急げ。早く行くわよ!」 「えっ、え? その格好で出られるんですか?」 「いーでしょ! 出られない格好じゃないんだから!」 「わ、わかりました」 そう言い残すとゼロスはそのまま上の方に浮き上がり、宿屋の屋根に立つ。 窓から顔を出して見ていたあたしも、ガラスは飛び散り少し焦げた窓枠に足をかけた。 騒がしかった足音が部屋にだんだんと近づいてくる。 その一方であたしは屋根に飛び乗った。と、その時。 ばたぁん!! 唐突に部屋の扉が乱暴に開いた。 んっふっふっふ……あたしの予感は的中したようね…… 屋根にゼロスと並んで立っているあたしは、にやりと微笑んだ。 「リ、リナさん? 何かやらかしたんですか? 部屋の中が随分と騒がしいようですけど……」 「甘いわね。ゼロス!」 そう言いつつゼロスをびしぃ!っと指差すあたし。 もちろん声は小声。部屋の中に聞こえたらとんでもないことになってしまう。 「……はい?」 間の抜けたゼロスの声。 まだわかっていないよーである。だから甘いって言ってんのよ。 それに対しあたしが口を開く直前で、どでかい叫び声が聞こえてきた! 「ああああっ!! あの客!! 窓枠とガラスをこんなにも壊しちまいやがったぁああぁあっっ!!!」 おそらくここの宿屋の主人だろう。 続いてあたしのよく知った声。 「やっぱな……夜にあんな騒音出すのはリナしかおらんだろう……」 ちょっとちょっと! 「あたししか」ってなんなのよ! その決まりきった言い方は!! あいつは後でぶっとばす!! 「あれ? でも、肝心のリナさんはどこ行っちゃったんでしょーね」 まさか危険を察知して屋根の上にいるとは思わんだろう! 「あいつのことだ。あの窓から逃げたんだろうな」 く! さすがに直感が鋭いわね! そんなことを心の中で思っていると、隣から申し訳なさそうに声をかけてくる人物がいた。 「あ、あのぉ……もしかすると……リナさんは……逃げたくて……?」 「し! 声が聞こえちゃうでしょ!」 部屋の声に耳をすましながらあたしはそう言い放った。 話し声はまだ続いている。 「戻ってくるでしょうか?」 「荷物は置きっぱなしだし、戻ってくるさ」 「そうですね」 ううむ……あたしの行動が読まれている!! まぁ、一緒に旅してるワケだし……わかるのが普通かもね。 「ああああああっ!! わしはもう破滅だぁあぁああああっっ!!」 ここの主人のおっさん……いちいち細かい事でうるさいわね…… あたしはもう一つくらい呪文を部屋にたたき込もうかとも思ったが、居場所がバレるのでやめることにした。 「ほら、おっちゃんも寝ようぜ。あいつなら戻ってくるから……」 「なんでそんなことがわかるんだ!! あんた……あの客のなんなんだ!?」 そこで部屋の中は沈黙した。 あたしとゼロスも次に返ってくる答えを待っていた。 ……聞かなくてもどーせわかってるけどね、あたしは。 「保護者」 彼はそれだけを返した。 はぁぁ。やっぱしね…… それに対し、また主人のおっさんは叫び声をあげ―― 「さ、もう行くわよ、ゼロス」 そう言いながらあたしは向き直った。 当の本人は少し驚いたようだ。 「え? もういいんですか?」 「いーのいーの! あたしに被害がないなら聞いててもしょうがないし」 あたしは明るく笑って言った。 あの窓が壊れたのはどっからどー見ても事故よ、事故! ならなぜあたしはこんな逃げるような事をするのか。 そぉゆうことは気にしてはいけないのである。 「そうですかぁ?」 まだ納得いかなそうな顔をするゼロス。 「いいって言ったらいいのよ! そんなことより、行く所があるんじゃないの?」 そんな言葉にまたまたゼロスは驚いた。 いちいちそんなに驚かなくてもいーじゃないのよ。 「ぼ、僕、どこかへ行くなんて言いました!?」 「しーっ! ……言ってないけど、あたしの推測よ。まぁ、その顔だと図星みたいだけど」 「やれやれ。リナさんにはかないませんね」 そしてひょいっと彼は肩をすくめた。 次に空中に浮き上がり、 「では、僕の後について来て下さい」 「オッケィ♪」 言ってあたしは浮遊の呪文を唱える。 体が浮き上がり、あたしはゼロスの後について飛んでいった。 こいつ……どこまで行くんだろうか? もう街は遠くの方に明かりのみが見えるという状態だった。 下を見てみればそこに続くのは森ばかりである。 それに……あたしは今術を制御して飛んでいる。 ゼロスは魔族だから制御なんてものはいらないのだろうが……人間はそうはいかない。 この制御って結構疲れるのよね…… 「ぜ、ぜろすぅ〜」 あたしは情けない声を出した。 それに気付き、前方の彼は立ち止まり、あたしの方に近よってくる。 「どうかなさったんですか?」 「どうかした、じゃないわよ。人間は飛んでるのに結構疲れるのよ? いったいどこまで行く気?」 するとゼロスは何かを思い出したかのようにぽんっと手を打つ。 しかもにこにこ顔で…… いや。こいつはいつもにこにこなのだが…… 「あぁ! そうでしたね。では目的地までもう少しですし、歩きますか?」 って、まだ着かんのかい。 そんなつっこみを入れたい気分だった。 歩きと空中浮遊。 どちらも疲れるが、あたしとしては歩きの方が良かった。 「ええ。そうしましょう」 あたしたちはそのまま森の中へ降り立ち、再びゼロスが歩き始め、あたしがその後をついて行く。 いくらも行かぬうちにゼロスは立ち止まった。 あ、ほんとに後少しだったわね。 それなら飛んででも大丈夫だったかも…… 「ここです」 ……をい。ここってあんた…… 「何言ってんのよ。行き止まりじゃない!」 そう。 ゼロスが示したそこは草やら木やらが行く手を塞いでいて、前に進める状態ではなかった。 まぁ、草とかだから、剣とかで切ればいいのだろーが……ここは山道からそれた所。 ちゃんとした道があるのに、わざわざこんなとこに来るのも珍しいだろう。 ここが目的地とはどーゆーことだ! 人がわざわざ出向いてやっているとゆーのに! だが、ゼロスは思いもよらない行動に出る。 「僕もそう思ったんですけどね……ほら」 行く手を塞ぐ茂みの中に手を入れ、そのまま体も中に入れ……消えた。 って、き、消えた〜っ!? 「ちょ、ちょっと!? ゼロス!?」 彼からの応答はなかった。 あいつはすぐ消えるからいつもは心配しないのだが、今回は茂みの中に消えたのだ。 ……ん? ちょっと待てよ…… 『茂みの中に消えた』? っとゆーことは、この向こうにいるんだろうか…… あたしはしばらくの間突っ立っていたが、意を決し、先ほどのゼロスと同じようにして―― 「――お? うきゃああぁぁあああっっ!!」 茂みの中に体を入れたその瞬間、あたしは落ちていた。 どしんっ! 「いたたたた……」 あまり高くはなく、すぐに地面に着けたのはいいけど……お尻いたい…… 「ったく……なんなのよ、もう――!」 顔をあげたあたしが見たものは……一面の青…… よく見てみると、紫の色のようなものも混じっている。 なに? なんなの? ここ…… あたしが呆然とそんなことを考えていると、手がすっと差し伸べられた。 それに気付き、あたしは手の主の顔を見上げる。 「大丈夫ですか? リナさん」 そいつは月を背にして、にっこり笑っていた。 「ゼロス……ここはなんなの?」 あたしはそう問いかけつつ差し伸べられた手をつかんで立ちあがる。 すると彼はその一面の青の方を見ながらつぶやくように言った。 「花が咲いているんですよ。あじさいの」 「あじさい?」 あたしはなんとなく足元に視線を落とす。 ほんとだ。四角い花びらがたくさん集まり、できているあじさい。 それが一面に咲いている。 ……でも…… 「よく、こんなに咲いてるわね……」 「ここは気候が安定しているみたいです。ですから、咲いていられんでしょう。まぁ、僕も花については良く知りませんが」 誰にともなくつぶやいたのに、ゼロスは答えを返した。 言われてみれば、さっきあたしは落ちてきた。 視線を花から外して上のほうを見やる。 あたしたちがいるこのあじさい畑。 ここだけがくりぬいたようになっていて……ようするに、でっかい落とし穴のようになっていた。 そのあるところから、あたしとゼロスは落ちてきた、とこーゆーわけか。 「ふぅん……あんた、あたしにこれを見せようと?」 「ええ。まぁ……」 「なんであたしだけに見せたの?」 「さぁ……なぜでしょうね……」 そんな会話をしながらあじさいを眺めていた。 一面に咲き誇っている青や紫。 月明かりに照らされて、もっと鮮やかに見えてくる。 「……きれいね……」 そんなあたしらしくない言葉が自然にこぼれてくるほど、その情景はきれいだった。 あたしは再びしゃがみ込み、あじさいに触れた。 「ほんとにきれい……」 「……僕からしてみれば……」 唐突にゼロスの声が響く。 そうだ。こいついたんだっけ? あたしはその声に導かれるように隣のゼロスを見上げた。 そして驚いた。滅多に開かない目を開いていたのだ! って、そんなに驚くことでもないわよね…… 「なに? ゼロス」 「僕からしてみれば……」 そこで彼は微笑み、 「あじさいに囲まれた栗色の髪の子の方がきれいに見えます」 ……え? あたしは見上げたまま硬直した。 あ、あの……今……なんて? そう問いかけられないでいると、ゼロスは再びいつもの彼に戻った顔で言った。 「つまり――リナさんのことですね」 「んなことわかってるわぁぁぁあああっ!!」 すぱぁぁぁんっ! 懐に入れておいたスリッパがゼロスの頭に炸裂した。 こんなところでも大活躍よね、スリッパって。 「リナさん! なんでスリッパをいつも携帯しているんですか!!」 叩かれた頭をさすりつつゼロスは声を上げた。 「そんなのあたしの勝手でしょ!?」 「そりゃあまぁそーですけど……」 なおもゼロスは何やらぶつくさぼやいているが……よく聞こえないので無視することにした。 再びあたしは一人でシリアスモードに突入。 あじさいか……あじさい? 「ねぇ。ゼロス」 「なんですか〜?」 まだ頭が痛いのか、返ってきたのはそんな情けない声だった。 しかしそんなことは気にせず、続いて言う。 「あじさいの花言葉って知ってる?」 「そんなもの僕が知ってるわけないでしょう?」 次に返ってきたのは冷たい一言。 ……こいつわ……まだ叩かれたこと根にもっているのだろーか? そこまで怒ることないのに。 「あたし、昔誰かに聞いたことがあるのよ……」 「そうなんですか? じゃあ、あじさいの花言葉ってなんなんです?」 すっかり元通りの声。 なんか……人間でもないのに、こいつの感情の起伏は激しいな…… ま、どーでもいーけど。 あたしはまた花びらに触れて小さく言う。 「あじさいはね……『耐える愛』なんだって」 「耐える……愛?」 「ええ。『どんなに辛いことがあっても、それを耐えていこう』そう言う強い意味の花らしいの」 「……『耐える愛』……」 ゼロスはまた花言葉を繰り返していた。 そんなに珍しいか? 花言葉が。 そりゃ、あたしがこんなこと覚えてるなんてのもおかしいけどね。 今さっき不意に思い出しただけだし。 あたしは立ちあがり、ゼロスと向き合う。 「だからね、好きな人と何かあってくじけそうになったらあじさいを思い出すのよ。そしたら耐えられる」 なんか……ほんとにらしくないわね。 どうなってんのかしら? そんな自分に赤面し、ゼロスに背を向けた。 「さぁ! もう戻りましょうか! いつまでもここにいるわけにはいかないしね!」 「リナさんは……」 「え?」 振り向くと、彼の顔からいつもの笑みは消えていた。 なんか深刻そうな感じがする。 あたし……へんなこと言ったか? 良く考えてみると……言いまくりだったよーな気がしないでもない。 「ちょ、ちょっと! あたしは正気だからね! へんなこといっぱい言ったけど――」 「違います!」 一際大きなゼロスの声。 あたしは驚き、口を噤む。 「そうじゃあ……ないんです……別におかしくありません。リナさんも女性ですから……」 ? こいつは何が言いたいんだろうか? 「じゃあ、なんなのよ?」 風が吹く。 花がさわさわと音を鳴らし、風がやむと同時にゼロスは口を開いた。 「リナさんは……僕が怖くないんですか?」 「……は……?」 すっとんきょうな声を思わず出してしまった。 いきなり何言い出すのかと思えば…… そりゃ、ゼロスは魔族だし、怖くないと言えばウソになるけど。 「……それほど怖くないわよ?」 少しの間をあけて言った。 「なぜですか! 僕は……いつかあなたを手にかけることになるかもしれないんですよ……?」 ゼロスには珍しい苦しそうな表情。 なんで……そんな顔してんのよ…… 疑問に思ったが、今はゼロスの質問に答えることにした。 今は何を言っても聞いてくれそうにないしね。 「それはその時でしょ? 未来なんてどんなに考えてもわかんないじゃない」 「ですが!」 「だぁぁぁぁっ!! まだ言うか!!」 あたしはゼロスの言葉をさえぎり、きっぱりと言い放った。 「いい!? あたしは現在(いま)にしか興味ないの!」 「――リナさん……」 「だからあんたもくよくよ悩むんじゃないの。どんなことがあっても、自分の意志で行動する。それだけよ」 言ってあたしは微笑んだ。 ゼロスは少し驚いていたようだったが、苦しそうだった表情がだんだんと和らいでくるのがあたしにもわかる。 どうやらちょっとは心が軽くなったみたいね。 魔族と言えども悩みはあるものなんだな〜とあたしは思っていた。 しかもそれが『あたしを殺すことになるかもしれない』ってことで悩んでるなんて…… ……ちょっと嬉しいかも…… 今まで一緒にいたのに、ためらいもなく殺されるのはいくらなんでもヤだしね。 「リナさん」 「なに? まだなんなかあんの?」 そう問うと、ゼロスは顔を大きく左右に振り、信じられない言葉を吐いた! 「……抱きしめてもいいですか……?」 「………………………………へ?」 さすがのあたしも言葉をなくす。 だ、だって、んなこと聞かれてなんて答えりゃあいいって言うのよっ!! 第一、なんだってそんなこと…… あたしが顔を赤くして黙っていると、ゼロスはそれを肯定ととったのだろう。 腕をつかまれ、あたしはすんなり彼の腕の中におさまる。 「ゼ、ゼロス! なにしてんのよ!!」 だがしかし彼は答えない。 あたしも抵抗はしたけど……放してくれない事が分かり、静かになった。 そんな中、小さくつぶやく声が耳元で聞こえる。 「……僕も……あじさいを目指して頑張ってみましょうかね……」 「え? それってどーゆー……」 「いいえ。なんでも。それより、行くのでしょう?」 「!! ちょ、ちょっと!! なにやってんのよ!!」 驚く出来事が連発で今起こっている。 それというのも、ゼロスがいきなりあたしを横抱きにしてたのだ。 ……俗に言う「お姫様抱っこ」である。 「なにって……宿屋に戻るのではないんですか?」 ゼロスはきょとんとした表情を向ける。 「あたしが言ってるのは、なんで抱きかかえられて戻らなきゃいけないの! ってことよ!!」 「人間は飛んでいるのがつらいのでしょう?」 う……たしかにそうなんだけどぉ・…… そこまで言われては返す言葉も見つからず、黙ってしまった。 「では、行きますよ。しっかりつかまっててくださいね」 くこり。 恥ずかしさのあまり、小さくうなずいて彼の服をぎゅっと握った。 それを見てゼロスは空中に舞う。 あじさいの花が遠くなっていく。 上空から見ると、ほんとに青いじゅうたんみたい…… この夜の出来事は……多分忘れない。 ううん。忘れる事ができない。 月の光、あじさい。そして――ゼロス。 あ、そーいえば…… 「……あんなにきれいなものを見せてくれて……ありがとね」 小さくあたしは言った。 そのあと、彼の顔は見なかったが、気配で笑ってるって感じがした。 そうね。なにがあっても笑っていきましょう。 たとえ……どんなことがあっても……ね♪ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ってゆーわけで終わっちゃいました☆ 私、花言葉にハマってるもんで、使ってしまったのです!! 使えて良かった♪ でわでわ! またどこかで会えるといいですね! 2000・7・27 |
11237 | ひっさしぶりぃっ! | れーな | 7/29-14:52 |
記事番号11186へのコメント 葉夢さんは No.11186「A・ZI・SA・I −どんなことがあっても−」で書きました。 > はぁ。すっごい久しぶりだな〜。ここも。 > どうも! 知っている方は知っている葉夢です!! こんにちはっ!れーなです! ほ〜んと久しぶり。 覚えてる〜?あたしの事。ま、忘れたなら忘れたでいいけど。 へっへっへ・・・ゼロリナっすね〜♪(怪ッ) アジサイって・・・そーんな意味があったのか・・・ 花言葉って面白いよね〜。でも詳しくは知らん。 も〜、リナちゃんがらぶらぶっ! かわいいしっ!ゼロス君はかっこいいしっ!なんかキザだぞぜろすぅっ! ふう。落ち着けあたし。 そうそうはむっちゃ。 知ってるかもしれないけど・・・・・・ しーちゃん(シオンさん)はインターネットができなくなっちゃったって・・・ 6月の最初くらいでしょーか? それから話してません・・・(泣) 過去の記事のあたしのツリーのトコ見たら分かるかと・・・別に、見んでもいいけど。 いつ戻って来れるか分かんないんだって・・・ とりあえずそーゆーわけでし。 あ〜・・・イマイチ何が言いたいのか分かんないわ〜・・・ ごめんねぇ。 では、れーなでしたっ! > 今回は初挑戦のゼロリナ!結構書きやすかった二人。(笑) > このお話はあるHPに掲載させていただいたお話なんだけど、載っけちゃいました♪ > 少し長いかもしれないけど……読んでくださるのならうれしいです! > あ、もしかしたら、そのHPの人もいるかも! おお〜い! 見てる〜!?(爆) > それではいきます!! >〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 > > ここはとある街のとある宿屋。 > そこにあたしたちは泊まっていた。もう夜もだいぶ更けてきた頃。 > あたしは寝る支度を整える為、マントやショルダーガードなどは外した状態になっていた。 > そして今は月や星だけがはっきりと見える夜の景色を見ながら髪をといているところだった。 > ぼーっとしながら窓の外を見ていると…… >「リナさん」 > …………………………………… > しばしの間、くしを持った手がその動きを止める。 > そいつは虚空に現れたのだった。 > いや。あんたのことはわかってたつもりだけど……なんてゆうか、そんな風にいきなり出てこられると…… >「ちょっと……あんた、ここ二階よ? それをわかってんの?」 > あたしは深いため息と共にそう言った。 >「おや? 魔族の僕にそんなこと関係ないことくらい知っていらっしゃるでしょう?」 > そうなのだ。こいつは人間ではない。魔族なのだ。 > あ、いやいや。そーじゃなくって、それ以前の問題じゃないのだろーか? >「あたしたちならいいけど、もし一般市民の人に見つかったらどーすんのよ!」 >「その時はその時です♪」 > ニッコリ笑顔で人差し指を立てる魔族。 > はぁぁ……どっかズレてる気がするのはあたしだけ? > バックの黒い闇に溶け込むように現れたそいつの名はゼロス。 > 自分で謎の神官とか名乗ってる怪しい奴。 > けど、その正体は赤眼の魔王シャブラニグドゥに忠誠を誓う五人の腹心の部下の一人、獣王ゼラス=メタリオムに創られた魔族なのである。 > かなりの力を持っていて、たとえあたしでも一騎撃ちはしたくない相手。 > わざわざ死ににいくようなもんよね。 > っとまぁそんなことは置いといて…… >「で? ゼロス。あんたは何しに来たわけ?」 >「何って……夜這いに♪」 > しーん。 > 静かな辺りに更に静けさが降り立った。 >「青魔裂弾波っ!!!」 > どがぁっ! > その静けさの中に騒音と共にあたしが放った青い閃光がほとばしる。 > ゼロスに向かって放ったそれは、窓ガラスをぶち壊し窓枠を少し焦がしていたが……まぁ、気付かれないだろう。 > そんな閃光をゼロスはひょいっとかわし、苦笑いの顔をこちらへ向けた。 >「リナさん。危ないじゃないですか〜」 >「変なこと言うからでしょーが!!」 >「いやだなぁ〜。ちょっとした冗談ですよ、冗談」 >「あんたが言うと冗談に聞こえないからやめた方がいいわよ。これ、あたしからの忠告ね」 > 実際そうなのである。 > ゼロスはいつもにこにこしているおかげで、感情があまりわからない。 > だから、今みたいに冗談を言われても気付かない場合がたくさんある。 > ま、気付いてたとしても、あたしの呪文は飛んでたけどね。 >「……そんな忠告いりません……」 > ぼそりとつぶやくゼロスの声がしたような気がするけど……ほっとこう。 >「ほんとは何しに来たの?」 > 腕組をし、やや睨みながら言う。 > あたしのその剣幕にビビったのか、ゼロスはあたしと少し距離をとった。 > そして頬をぽりぽりかきながら、 >「あのですね、なんと言いますか……今日は天気がいいですよね〜」 >「だから?」 > きっぱりあっさり返すあたし。 >「いや、だからって……」 > まだもごもごするゼロスを見て、あたしは言い放った。 >「用がないなら寝ていい? 明日早いから。んじゃね」 > 別に明日早く起きようなどとはこれっぽっちも思っちゃいない。 > ただ、夜更かしは美容の大敵だから寝るだけ。 > ゼロスに背を向けたその時だった。 >「今から……出れますか?」 > その声だけが異様にはっきり聞こえる。 > なんだ。ちゃんと話せるじゃない。初めからそう言えばいいのに。 > あたしは振り向き、 >「……出れるけど……なんで?」 >「それは秘密です」 > 人差し指を口にあて、彼はさも嬉しそうに言った。 > あんた……その台詞が言えたのがそんなに嬉しいのか…… > つくづく変な魔族である。 > まぁ、寝るには少し早いし……少しくらいならつきあってやってもいーわよね。 > それに……なんかさっきから下の方が騒がしい。 > 叫び声や足音が飛び交っている。 > そんな音を聞いていると、なぜか嫌な予感になるのだ。 > ここの部屋から出ろ。そうあたしの第六感が叫んでいる!! >「そーと決まれば善は急げ。早く行くわよ!」 >「えっ、え? その格好で出られるんですか?」 >「いーでしょ! 出られない格好じゃないんだから!」 >「わ、わかりました」 > そう言い残すとゼロスはそのまま上の方に浮き上がり、宿屋の屋根に立つ。 > 窓から顔を出して見ていたあたしも、ガラスは飛び散り少し焦げた窓枠に足をかけた。 > 騒がしかった足音が部屋にだんだんと近づいてくる。 > その一方であたしは屋根に飛び乗った。と、その時。 > ばたぁん!! > 唐突に部屋の扉が乱暴に開いた。 > んっふっふっふ……あたしの予感は的中したようね…… > 屋根にゼロスと並んで立っているあたしは、にやりと微笑んだ。 >「リ、リナさん? 何かやらかしたんですか? 部屋の中が随分と騒がしいようですけど……」 >「甘いわね。ゼロス!」 > そう言いつつゼロスをびしぃ!っと指差すあたし。 > もちろん声は小声。部屋の中に聞こえたらとんでもないことになってしまう。 >「……はい?」 > 間の抜けたゼロスの声。 > まだわかっていないよーである。だから甘いって言ってんのよ。 > それに対しあたしが口を開く直前で、どでかい叫び声が聞こえてきた! >「ああああっ!! あの客!! 窓枠とガラスをこんなにも壊しちまいやがったぁああぁあっっ!!!」 > おそらくここの宿屋の主人だろう。 > 続いてあたしのよく知った声。 >「やっぱな……夜にあんな騒音出すのはリナしかおらんだろう……」 > ちょっとちょっと! 「あたししか」ってなんなのよ! その決まりきった言い方は!! > あいつは後でぶっとばす!! >「あれ? でも、肝心のリナさんはどこ行っちゃったんでしょーね」 > まさか危険を察知して屋根の上にいるとは思わんだろう! >「あいつのことだ。あの窓から逃げたんだろうな」 > く! さすがに直感が鋭いわね! > そんなことを心の中で思っていると、隣から申し訳なさそうに声をかけてくる人物がいた。 >「あ、あのぉ……もしかすると……リナさんは……逃げたくて……?」 >「し! 声が聞こえちゃうでしょ!」 > 部屋の声に耳をすましながらあたしはそう言い放った。 > 話し声はまだ続いている。 >「戻ってくるでしょうか?」 >「荷物は置きっぱなしだし、戻ってくるさ」 >「そうですね」 > ううむ……あたしの行動が読まれている!! > まぁ、一緒に旅してるワケだし……わかるのが普通かもね。 >「ああああああっ!! わしはもう破滅だぁあぁああああっっ!!」 > ここの主人のおっさん……いちいち細かい事でうるさいわね…… > あたしはもう一つくらい呪文を部屋にたたき込もうかとも思ったが、居場所がバレるのでやめることにした。 >「ほら、おっちゃんも寝ようぜ。あいつなら戻ってくるから……」 >「なんでそんなことがわかるんだ!! あんた……あの客のなんなんだ!?」 > そこで部屋の中は沈黙した。 > あたしとゼロスも次に返ってくる答えを待っていた。 > ……聞かなくてもどーせわかってるけどね、あたしは。 >「保護者」 > 彼はそれだけを返した。 > はぁぁ。やっぱしね…… > それに対し、また主人のおっさんは叫び声をあげ―― >「さ、もう行くわよ、ゼロス」 > そう言いながらあたしは向き直った。 > 当の本人は少し驚いたようだ。 >「え? もういいんですか?」 >「いーのいーの! あたしに被害がないなら聞いててもしょうがないし」 > あたしは明るく笑って言った。 > あの窓が壊れたのはどっからどー見ても事故よ、事故! > ならなぜあたしはこんな逃げるような事をするのか。 > そぉゆうことは気にしてはいけないのである。 >「そうですかぁ?」 > まだ納得いかなそうな顔をするゼロス。 >「いいって言ったらいいのよ! そんなことより、行く所があるんじゃないの?」 > そんな言葉にまたまたゼロスは驚いた。 > いちいちそんなに驚かなくてもいーじゃないのよ。 >「ぼ、僕、どこかへ行くなんて言いました!?」 >「しーっ! ……言ってないけど、あたしの推測よ。まぁ、その顔だと図星みたいだけど」 >「やれやれ。リナさんにはかないませんね」 > そしてひょいっと彼は肩をすくめた。 > 次に空中に浮き上がり、 >「では、僕の後について来て下さい」 >「オッケィ♪」 > 言ってあたしは浮遊の呪文を唱える。 > 体が浮き上がり、あたしはゼロスの後について飛んでいった。 > > こいつ……どこまで行くんだろうか? > もう街は遠くの方に明かりのみが見えるという状態だった。 > 下を見てみればそこに続くのは森ばかりである。 > それに……あたしは今術を制御して飛んでいる。 > ゼロスは魔族だから制御なんてものはいらないのだろうが……人間はそうはいかない。 > この制御って結構疲れるのよね…… >「ぜ、ぜろすぅ〜」 > あたしは情けない声を出した。 > それに気付き、前方の彼は立ち止まり、あたしの方に近よってくる。 >「どうかなさったんですか?」 >「どうかした、じゃないわよ。人間は飛んでるのに結構疲れるのよ? いったいどこまで行く気?」 > するとゼロスは何かを思い出したかのようにぽんっと手を打つ。 > しかもにこにこ顔で…… > いや。こいつはいつもにこにこなのだが…… >「あぁ! そうでしたね。では目的地までもう少しですし、歩きますか?」 > って、まだ着かんのかい。 > そんなつっこみを入れたい気分だった。 > 歩きと空中浮遊。 > どちらも疲れるが、あたしとしては歩きの方が良かった。 >「ええ。そうしましょう」 > あたしたちはそのまま森の中へ降り立ち、再びゼロスが歩き始め、あたしがその後をついて行く。 > いくらも行かぬうちにゼロスは立ち止まった。 > あ、ほんとに後少しだったわね。 > それなら飛んででも大丈夫だったかも…… >「ここです」 > ……をい。ここってあんた…… >「何言ってんのよ。行き止まりじゃない!」 > そう。 > ゼロスが示したそこは草やら木やらが行く手を塞いでいて、前に進める状態ではなかった。 > まぁ、草とかだから、剣とかで切ればいいのだろーが……ここは山道からそれた所。 > ちゃんとした道があるのに、わざわざこんなとこに来るのも珍しいだろう。 > ここが目的地とはどーゆーことだ! > 人がわざわざ出向いてやっているとゆーのに! > だが、ゼロスは思いもよらない行動に出る。 >「僕もそう思ったんですけどね……ほら」 > 行く手を塞ぐ茂みの中に手を入れ、そのまま体も中に入れ……消えた。 > って、き、消えた〜っ!? >「ちょ、ちょっと!? ゼロス!?」 > 彼からの応答はなかった。 > あいつはすぐ消えるからいつもは心配しないのだが、今回は茂みの中に消えたのだ。 > ……ん? ちょっと待てよ…… > 『茂みの中に消えた』? > っとゆーことは、この向こうにいるんだろうか…… > あたしはしばらくの間突っ立っていたが、意を決し、先ほどのゼロスと同じようにして―― >「――お? うきゃああぁぁあああっっ!!」 > 茂みの中に体を入れたその瞬間、あたしは落ちていた。 > どしんっ! >「いたたたた……」 > あまり高くはなく、すぐに地面に着けたのはいいけど……お尻いたい…… >「ったく……なんなのよ、もう――!」 > 顔をあげたあたしが見たものは……一面の青…… > よく見てみると、紫の色のようなものも混じっている。 > なに? なんなの? ここ…… > あたしが呆然とそんなことを考えていると、手がすっと差し伸べられた。 > それに気付き、あたしは手の主の顔を見上げる。 >「大丈夫ですか? リナさん」 > そいつは月を背にして、にっこり笑っていた。 >「ゼロス……ここはなんなの?」 > あたしはそう問いかけつつ差し伸べられた手をつかんで立ちあがる。 > すると彼はその一面の青の方を見ながらつぶやくように言った。 >「花が咲いているんですよ。あじさいの」 >「あじさい?」 > あたしはなんとなく足元に視線を落とす。 > ほんとだ。四角い花びらがたくさん集まり、できているあじさい。 > それが一面に咲いている。 > ……でも…… >「よく、こんなに咲いてるわね……」 >「ここは気候が安定しているみたいです。ですから、咲いていられんでしょう。まぁ、僕も花については良く知りませんが」 > 誰にともなくつぶやいたのに、ゼロスは答えを返した。 > 言われてみれば、さっきあたしは落ちてきた。 > 視線を花から外して上のほうを見やる。 > あたしたちがいるこのあじさい畑。 > ここだけがくりぬいたようになっていて……ようするに、でっかい落とし穴のようになっていた。 > そのあるところから、あたしとゼロスは落ちてきた、とこーゆーわけか。 >「ふぅん……あんた、あたしにこれを見せようと?」 >「ええ。まぁ……」 >「なんであたしだけに見せたの?」 >「さぁ……なぜでしょうね……」 > そんな会話をしながらあじさいを眺めていた。 > 一面に咲き誇っている青や紫。 > 月明かりに照らされて、もっと鮮やかに見えてくる。 >「……きれいね……」 > そんなあたしらしくない言葉が自然にこぼれてくるほど、その情景はきれいだった。 > あたしは再びしゃがみ込み、あじさいに触れた。 >「ほんとにきれい……」 >「……僕からしてみれば……」 > 唐突にゼロスの声が響く。 > そうだ。こいついたんだっけ? > あたしはその声に導かれるように隣のゼロスを見上げた。 > そして驚いた。滅多に開かない目を開いていたのだ! > って、そんなに驚くことでもないわよね…… >「なに? ゼロス」 >「僕からしてみれば……」 > そこで彼は微笑み、 >「あじさいに囲まれた栗色の髪の子の方がきれいに見えます」 > ……え? > あたしは見上げたまま硬直した。 > あ、あの……今……なんて? > そう問いかけられないでいると、ゼロスは再びいつもの彼に戻った顔で言った。 >「つまり――リナさんのことですね」 >「んなことわかってるわぁぁぁあああっ!!」 > すぱぁぁぁんっ! > 懐に入れておいたスリッパがゼロスの頭に炸裂した。 > こんなところでも大活躍よね、スリッパって。 >「リナさん! なんでスリッパをいつも携帯しているんですか!!」 > 叩かれた頭をさすりつつゼロスは声を上げた。 >「そんなのあたしの勝手でしょ!?」 >「そりゃあまぁそーですけど……」 > なおもゼロスは何やらぶつくさぼやいているが……よく聞こえないので無視することにした。 > 再びあたしは一人でシリアスモードに突入。 > あじさいか……あじさい? >「ねぇ。ゼロス」 >「なんですか〜?」 > まだ頭が痛いのか、返ってきたのはそんな情けない声だった。 > しかしそんなことは気にせず、続いて言う。 >「あじさいの花言葉って知ってる?」 >「そんなもの僕が知ってるわけないでしょう?」 > 次に返ってきたのは冷たい一言。 > ……こいつわ……まだ叩かれたこと根にもっているのだろーか? > そこまで怒ることないのに。 >「あたし、昔誰かに聞いたことがあるのよ……」 >「そうなんですか? じゃあ、あじさいの花言葉ってなんなんです?」 > すっかり元通りの声。 > なんか……人間でもないのに、こいつの感情の起伏は激しいな…… > ま、どーでもいーけど。 > あたしはまた花びらに触れて小さく言う。 >「あじさいはね……『耐える愛』なんだって」 >「耐える……愛?」 >「ええ。『どんなに辛いことがあっても、それを耐えていこう』そう言う強い意味の花らしいの」 >「……『耐える愛』……」 > ゼロスはまた花言葉を繰り返していた。 > そんなに珍しいか? 花言葉が。 > そりゃ、あたしがこんなこと覚えてるなんてのもおかしいけどね。 > 今さっき不意に思い出しただけだし。 > あたしは立ちあがり、ゼロスと向き合う。 >「だからね、好きな人と何かあってくじけそうになったらあじさいを思い出すのよ。そしたら耐えられる」 > なんか……ほんとにらしくないわね。 > どうなってんのかしら? > そんな自分に赤面し、ゼロスに背を向けた。 >「さぁ! もう戻りましょうか! いつまでもここにいるわけにはいかないしね!」 >「リナさんは……」 >「え?」 > 振り向くと、彼の顔からいつもの笑みは消えていた。 > なんか深刻そうな感じがする。 > あたし……へんなこと言ったか? > 良く考えてみると……言いまくりだったよーな気がしないでもない。 >「ちょ、ちょっと! あたしは正気だからね! へんなこといっぱい言ったけど――」 >「違います!」 > 一際大きなゼロスの声。 > あたしは驚き、口を噤む。 >「そうじゃあ……ないんです……別におかしくありません。リナさんも女性ですから……」 > ? こいつは何が言いたいんだろうか? >「じゃあ、なんなのよ?」 > 風が吹く。 > 花がさわさわと音を鳴らし、風がやむと同時にゼロスは口を開いた。 >「リナさんは……僕が怖くないんですか?」 >「……は……?」 > すっとんきょうな声を思わず出してしまった。 > いきなり何言い出すのかと思えば…… > そりゃ、ゼロスは魔族だし、怖くないと言えばウソになるけど。 >「……それほど怖くないわよ?」 > 少しの間をあけて言った。 >「なぜですか! 僕は……いつかあなたを手にかけることになるかもしれないんですよ……?」 > ゼロスには珍しい苦しそうな表情。 > なんで……そんな顔してんのよ…… > 疑問に思ったが、今はゼロスの質問に答えることにした。 > 今は何を言っても聞いてくれそうにないしね。 >「それはその時でしょ? 未来なんてどんなに考えてもわかんないじゃない」 >「ですが!」 >「だぁぁぁぁっ!! まだ言うか!!」 > あたしはゼロスの言葉をさえぎり、きっぱりと言い放った。 >「いい!? あたしは現在(いま)にしか興味ないの!」 >「――リナさん……」 >「だからあんたもくよくよ悩むんじゃないの。どんなことがあっても、自分の意志で行動する。それだけよ」 > 言ってあたしは微笑んだ。 > ゼロスは少し驚いていたようだったが、苦しそうだった表情がだんだんと和らいでくるのがあたしにもわかる。 > どうやらちょっとは心が軽くなったみたいね。 > 魔族と言えども悩みはあるものなんだな〜とあたしは思っていた。 > しかもそれが『あたしを殺すことになるかもしれない』ってことで悩んでるなんて…… > ……ちょっと嬉しいかも…… > 今まで一緒にいたのに、ためらいもなく殺されるのはいくらなんでもヤだしね。 >「リナさん」 >「なに? まだなんなかあんの?」 > そう問うと、ゼロスは顔を大きく左右に振り、信じられない言葉を吐いた! >「……抱きしめてもいいですか……?」 >「………………………………へ?」 > さすがのあたしも言葉をなくす。 > だ、だって、んなこと聞かれてなんて答えりゃあいいって言うのよっ!! > 第一、なんだってそんなこと…… > あたしが顔を赤くして黙っていると、ゼロスはそれを肯定ととったのだろう。 > 腕をつかまれ、あたしはすんなり彼の腕の中におさまる。 >「ゼ、ゼロス! なにしてんのよ!!」 > だがしかし彼は答えない。 > あたしも抵抗はしたけど……放してくれない事が分かり、静かになった。 > そんな中、小さくつぶやく声が耳元で聞こえる。 >「……僕も……あじさいを目指して頑張ってみましょうかね……」 >「え? それってどーゆー……」 >「いいえ。なんでも。それより、行くのでしょう?」 >「!! ちょ、ちょっと!! なにやってんのよ!!」 > 驚く出来事が連発で今起こっている。 > それというのも、ゼロスがいきなりあたしを横抱きにしてたのだ。 > ……俗に言う「お姫様抱っこ」である。 >「なにって……宿屋に戻るのではないんですか?」 > ゼロスはきょとんとした表情を向ける。 >「あたしが言ってるのは、なんで抱きかかえられて戻らなきゃいけないの! ってことよ!!」 >「人間は飛んでいるのがつらいのでしょう?」 > う……たしかにそうなんだけどぉ・…… > そこまで言われては返す言葉も見つからず、黙ってしまった。 >「では、行きますよ。しっかりつかまっててくださいね」 > くこり。 > 恥ずかしさのあまり、小さくうなずいて彼の服をぎゅっと握った。 > それを見てゼロスは空中に舞う。 > あじさいの花が遠くなっていく。 > 上空から見ると、ほんとに青いじゅうたんみたい…… > この夜の出来事は……多分忘れない。 > ううん。忘れる事ができない。 > 月の光、あじさい。そして――ゼロス。 > あ、そーいえば…… >「……あんなにきれいなものを見せてくれて……ありがとね」 > 小さくあたしは言った。 > そのあと、彼の顔は見なかったが、気配で笑ってるって感じがした。 > そうね。なにがあっても笑っていきましょう。 > たとえ……どんなことがあっても……ね♪ > >〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 > ってゆーわけで終わっちゃいました☆ > 私、花言葉にハマってるもんで、使ってしまったのです!! > 使えて良かった♪ > でわでわ! またどこかで会えるといいですね! > > 2000・7・27 |