◆−うにゅー。−一姫都(7/30-11:44)No.11244 ┗再々掲示 フェアリーティルの子守唄−一姫都(7/30-11:50)No.11245 ┣ゼロリナ最高!!!感動しました!!!!−はどーう(7/30-19:51)No.11247 ┃┗Re:ゼロリナ最高!!!感動しました!!!!−一姫都(7/31-10:37)No.11250 ┣感動しましたっ!−岬梨雨(8/1-01:27)No.11253 ┃┗Re:感動しましたっ!−一姫都(8/2-18:11)NEWNo.11267 ┣本気の感動感想っ(ちょっと違うかも)−葵楓 扇(8/2-00:23)NEWNo.11257 ┃┗Re:本気の感動感想っ(ちょっと違うかも)−一姫都(8/2-18:50)NEWNo.11268 ┃ ┗レスのレス(何のためかは不明)−葵楓 扇(8/3-14:13)NEWNo.11280 ┃ ┗Re:レスのレス(何のためかは不明)−一姫都(8/3-17:18)NEWNo.11289 ┣素晴らしいです。−月の人(8/2-09:56)NEWNo.11261 ┃┗Re:素晴らしいです。−一姫都(8/2-19:06)NEWNo.11269 ┣初めまして−神無月 遊芽(8/2-19:17)NEWNo.11270 ┃┗Re:初めまして−一姫都(8/3-16:52)NEWNo.11286 ┗わーっ♪−石井奈々子(8/4-00:28)NEWNo.11297 ┗Re:わーっ♪−一姫都(8/4-14:22)NEWNo.11307
11244 | うにゅー。 | 一姫都 E-mail | 7/30-11:44 |
えーーーーと、めっちゃ再々掲示品。 フェアリーティルの子守唄でございますぅ。 一部の方のご要望により、ここに再々掲示させていただきますう。 前に読んでいただいた方も、初めて目を通すという方も、 「ゼロリナ命!」の魂でご覧くださると、楽しくなれるはず・・。 あと、ほんとーにちょっとですけど、すぷらったあな内容なのです。ご注意。 +ながいです。100ページぐらい。 +再々掲示って・・・。って感じなので(自分的に)ツリーが落ちないうちに 何らかを付属したいと思っております。えへへ(汗) それでは・・・ |
11245 | 再々掲示 フェアリーティルの子守唄 | 一姫都 E-mail | 7/30-11:50 |
記事番号11244へのコメント お伽話のように 残酷で お伽話のように 幸せな 永遠に 巡る * フェアリーテイルの子守歌 * ――ねえ、私ね… この世で一番怖いお話はお伽話だとおもうの―― いつだったか、そんな言葉を呟いた少女がいた…。 遙か…、昔の朧気な記憶の淵で、漂うようにして存在し続けている… あの娘は誰だっただろう……? あまりにも虚ろすぎる過去の出来事…、覚えていられているはずもなかった。 いや、そんなささいな事を覚えていられるはずはなかった。 あまりにも自分は永く生きすぎている……。この世界の移り変わりを…自分は何度見たことだろう。 それにしても…、何故…、こんなにも気に掛かるのか…、あの少女は誰だったのか………。 なにか自分にとって重要であることのような気がして、ゼロスは記憶の断片を思い描く。 「ゼーーーローーースッッ」 ふいに耳元に裏鳴る声を聞き、我に返るゼロス。 気がつけば、宿の下のレストランに何用となく降りてきた自分が居た事が解った。 そして、今傍らに立ち言葉を浴びせかけたのは、栗色の髪を持つ可愛らしい少女 ――リナ・インバース―― 人間で有りながら、魔族に屈しようとも、従おうともしない…。 「リナさん、どうしたんですか?」 「それはこっちの台詞よっっっ さっきから何回声掛けたと思ってるのよっっっ」 すこし苛立たしげに声を上げ椅子に腰掛けるリナ。 「おや、それは気が付きませんでした」 いつもと変わらぬ涼しげな笑みを浮かべ、答えるゼロス。 店の店員に注文をし、話しを繰り返すように問うリナ。 「考え事?」 「え…ええ、まあ………」 呟いたあと、ふと思い出した。 ――ねえ、私ね… この世で一番怖いお話はお伽話だとおもうの―― あの少女も…また、栗色の髪を持っていたのだと……。 そう思うと、問わずには居られなかった。 「……リナさん…… この世で、一番怖いお話ってなんだと思いますか?」 その問いに、一瞬首を傾げたものの、ゆっくりと答えを出すリナ。 「…………おしえない」 「え?」 目をそらし、黙り込むリナ。 何かを恐れているような、おびえた色をみせ彼女は眉を潜める。 ……めずらしいですね。 まあ、いいですけど………。 その仕草をあまり気にもとめずに、ゼロスはふいっと席を立つ。 「どうしたの?」 「まだ仕事が残っているもので…、 今の質問の答えは、また今度聞かせて貰いますよ」 机に置かれたリナの分の代金表を取り、レジにお金を置いていくゼロス。 そしてそのまま、ドアを丁寧に開け街へと消えて行く。 ――それが、彼女との最後の会話だった―― 第一章 不可解の始まり 大切なものがある 失いたくないものがある けれど 私はあなたを護れない ――アナタノ大切ナモノトハ何デスカ?―― 「あっついよーーーー、ゼロスー」 「はいはいはいはい」 上司のこの言葉を聞いたのは、きょうでもう3度目だった。 言われる度に冷房を効かせる、がまた一時間もたたないうちに今度は それとは反対の要求がだされる事になる。 「さむいよーーーー、ゼロスー」 今度は冷房を切る。そして再び…と、そんな状況がこのごろ毎日繰り返されている。 上司であり、自分の創造主でもあるゼラス・メタリオム。 優雅な外見を持ちつつも、それをひらけさせず、頭脳に至っては並の者を十つれてきたとてかなわぬ程に優れていた。 「ゼラス様、僕ちょっと行ってきていいですか?」 「あ? 別にいいけど……何処に?」 「それは秘密です」 相変わらずのにこ目で、ほのぼのとこれをやられた時には 精神攻撃の一つも喰らわせたくなるものだが…… 今日は違った。 彼の顔は酷く青ざめて見え、その眼の下に殺気すらも感じられた。 「…まあ、いいわ… いってらっしゃい」 軽く言い放たれたその言葉に、彼は令をしその場を去る。 まったく、なんなんだか………。 ソファーから立ち上がり、溜まりまくった仕事をかたずけるべく机に向かうゼラス。 机の上に、それこそ山のように積み上げられた書類をたおさぬように、慎重に歩く。 なんとか椅子に辿り着き、一つの書類を手にする。 「ふう……、この仕事だけはやっておかなくちゃ…」 ――最高機密―― そう書かれた書類に目を通している内に、ゼラスはある事に気が付いた。 「………なるほど。 お墓参り…って訳ね……」 彼女が視線を投げかけていたその書類には、こう書かれていた。 ――**・*月*日 リナ・インバース死亡 ―― 白い花が辺りを埋め尽くし、眼下に広がるは美しいまでの青い海。 小さな丘のその中心に、彼女の墓標は存在していた。 今日は命日だけあって、自分の前にも何人かの人間がここに来たということが、 備えられている食物を見て解った。 「……早いものです。 あなたが死んで…、もう一年ですか……」 言いながら、静かに花を墓標へと蔓延らせるゼロス。 そう、確かに早かった…、いや早すぎた。 はじめに知らせを受けたのは、あなたが死んだ3日後………。 なにげなく立ち寄った街で、その噂を耳にした。 それが本当だと解ったのは、それから5日後……。 真相を確かめに尋ねた、セイルーンの王宮……。 あなたの名前を叫び、号泣しているアメリアさんの姿を見た時……。 「…………………どうして」 理由は不詳だった。どんなに調べても、解らなかった。 そう、この一年暇を見てはこちらの世界へと来ていた。世界のはじからはじへ、一秒でもおしい程に隅々まで駆け、理由を追求した。 だが…、あまり大した事は聞き取ることが出来なかった。 ただあなたが、 何者かに心臓をくり抜かれ……惨殺された事以外は……。 ――口に羽を詰められ ――顔は爛れ ――腹を剔られ ――内蔵を、心臓を、 ――すべてもぎ取られた ――アナタノ残骸―― 「………………………早すぎますよ…リナさん」 予想していなかった事だった……。 彼女は、……強力な魔力を持ち、たぐいまれなる頭脳をもち、……その強力なまでの生命力は誰にも勝るものだった……。誰にも負け無いと思っていた。 誰よりも、何者よりも、強大な力を持った魔導師だった…。 ――そして、人間だった。 「…死んでしまうには……早すぎです………」 ――そう、人間だった。 だからこそ、死は必然的なものだった………。 ――人間とは、短い人生を駆けずり回るトリ…―― ――未来永劫・この世界に生き続けることは罪に値する―― 「…………まあ、しょうがないですね」 握りしめていた拳を静かに振り落とす。 死んでしまった者は生き返らない。 「そこで静かに夢でも見ていてください」 そう言った彼の顔は酷く寂しげで、 言い放たれた言葉にも酷く悲しみが込められていた………。 「おやおやおやおや、ゼロス。珍しいねぇ、君が負の感情を抱くなんて……」 ふいに墓標の影に幼い子供の声色と共に、感じ慣れた同族の者の気配がして、一歩後ずさるゼロス。 「おひさしぶりです、フィブリゾ様。 そのご様子じゃあ、まだ完全に復活なさっていないようですが……」 片足を着き、深々と敬礼するゼロス。それを冷酷な眼で見下しながら、視線をゼロスからその墓標へと移すフィブ。それを見、言いかけた言葉を戻し楽しげに嗤う。 「そうかそうか。 今日はリナ・インバースの命日だったね」 この方が彼女の命日を覚えていたという事は、彼にとっては驚きに値した。それも、かなり意外な………。 「ええ……」 けど…何故あなたがそれを……? いいかけた言葉を、フィブリゾが制す。 「……なんでそれを覚えているのか…って? ふふふふふ…なんでだろうねぇ………」 自分を弄ぶ時のこの人は、心底楽しげだと心の奥底で思いつつ、言葉を紡ぐゼロス。 「………興味があったのですか? 自分を、一度は滅ぼしかけた人間に」 その言葉に、少しばかり苛立ちを覚えたようで、フィブリゾは墓標の花を足で蹴り上げた。 「……まあ、そんな所だね」 先のサイラーグでの一件………。 確かに、この方はリナさん…いや、あのお方。我らが絶対主…によって滅ぼされた。 ――はず、だった。 それが、ちょうどリナさんが死亡したその日…… 何事も無かったかのように、この地に舞い戻ってきた。 本人は何も言わず、他の者も何も言わない。 ――この疑問は今尋ねてよいものだろうか……? 「答えてあげようか?」 こちらを見つめ、悪戯気に嘲笑うフィブリゾ様。 ………心を透見されている……。 まあ、いつもの事なので驚きもなにもないのだが……。 驚いたのは、他の事だった……。 「そうそう、そのとーーーり。 えーーーで? なんだっけ。あーーーーーそうそう。 なんで僕が蘇ったかだよねーーーーー」 ……力が弱くなって…いる? …滅びる以前より、確実に少しだけれども… ――弱くなっている。 やはり、まだ完全に復活していないという事なのだろうか…。 とりあえず、その擬事は伏せておくことにし、当初の疑問を繰り返すゼロス。 「はい……。 何故…蘇りを……?」 それは、不可能な事だった。 ――そうされてきていた。 生まれた時から頭に叩き込まれていた。 魔族の死と人間の死は多少異なる面も有る。 だが……、あの場合での蘇りなど為し得られるはずが無かった。 そんなゼロスを横目に、再び棘の様な笑みを漏らし呟くフィブリゾ。 「まあ………、 白雪姫のお陰かな?」 「……は、はあ」 出てきたその答えが、とても正常なものとは思えず、一つため息をつくゼロス。 「できれば、真面目に答えて欲しいのですが……」 「真面目だよ、僕は。 これはすんごいヒントだからねー。 ふふふふふふ、解らないだろう」 「わかりません」 まったく興味を持たないゼロスの行動に、口を尖らせ頬を膨らますフィブリゾ。 軽くあしらわれた事に、少しなりにも怒りを覚え反論する。 「あーーー、信じてないなっっっ 本当だってば。これは本当にすごいことなんだぞ いいか……」 ――ゼロス―― ふいに耳奥に、直接打ち込まれるような声がし、話を中断する。 「はい。 なんでしょうか、ゼラス様」 ――少し用があるの…、一度こちらへ戻ってちょうだい……―― 「かしこまりました」 やうやうしくお辞儀をし、フィブリゾに背を向けるゼロス。 そしてその身を、すばやく虚空へとかき消す。 ――フィブリゾ…―― 「やあ、なんだいおねぇさま?」 ――あなたもそこに居たのね…… お茶を入れるから、こちらへこない?―― 「そうだね」 その誘いを素直に受け、フィブリゾも歩き出す。 ふと立ち止まり、再び後ろを見やる。墓標には先ほどゼロスが蔓延らせた数々の花…。 真っ白で…まるで雪のような花……。 ――ユキノハナ―― 「…ゼロスもいい趣味してるじゃないか…。 お似合いだよ、リナ・インバース……」 皮肉たっぷりに言い放たれた言葉を残し、闇へと身を沈めるフィブ。 あとにはただ、墓標とそれを包み込む花が残るばかりだった…。 「この毒…をですか?」 呼び出され、帰ってきたゼロスの手元に差し出されたのは、小さな一つの瓶に入った液体だった。 それはまるで血のように紅く、吸い込まれそうな魔力を持った毒。 初めてみる液体だった。 「そうなの。あたしが新しく作った砒素。 人間であれば一差しするだけで死に追いやる位の効き目があるわ」 なるほど…ここの所、主が研究室に閉じこもりきりだったのは、これを作っていたせいか…。それにしても…、ゼラス様が毒を作るなんて珍しいですね…。 「ちゃんと名前も決まってるのよ。 ほら、そーゆーのあると愛情沸くって言うしっ ――apple――っていうの」 「は…はあ」 主人が物に名前を付けるのはよくある事だったが、そんな理由があるとは思っていなかった。 「これを使って人間を殺してきてほしいのよ。 んーーーーと…、場所はここよ、なんのへんてつもないちいさな村。 周りは森で囲まれてるし、村人の数もちょうどいいし……」 「はあ…、わかりました」 受け取った瓶を袋へ入れ、ゼラスに軽くお辞儀をするゼロス。 身を駆けようとしたその瞬間、掛けられた言葉によってそれを中断する。 「あ、…必ず死体は持ち帰ってね。 それも、3時間以内に…」 死体を持ち帰る……? そして…3時間以内…ときましたか。 今までに例の無い依頼だけあって、少しばかり驚くゼロス。 それでも返事の声はいつもとかわらずのものだった。 「わかりました」 ゼロスの姿が完全に無くなり、闇のあった部分も平常な空間へと戻る。 そして、振り返らずにゼラスは声を発した。 「フィブリゾ」 「やあ、ゼラス」 いつもながらの無邪気な笑顔を見せながら、ブィブリゾはゼラスに近づく。 いつここに辿り着いたのか、…それともゼロスと話し始めた時から居たのか、 察知はできなかったが、そんな事はどうでもいいことだった。 話しは別の所にあった。 「…今、お茶をいれるわ…。 少し話を聞かせてもらおうじゃない」 いいながらテーブルにカップとポットを用意するゼラス。 「わかってるよ、おねーさま…」 彼の表情はいつもより、ほんのり生気が漂っているように明るく 彼女とはいえば…、まるで月明かりに照らされた女神のように… 妖しく、そしていつにもまして美しくみえた……。 「ふーーーーーむ…、まあこんなものですかね」 辺りに散らばる死体の山を踏みつけ、満足気に手を打つゼロス。 数にして約100人の死骸…。それをこの魔族はたった一瞬でこの地に築き上げた。 ゼラス様に指定された、森の中にあるチイサナ・チイサナ村。 その人口のすべてを死に……追いやった。なんの躊躇も無く、殺した。 ゼラス様から預かったこの劇薬……。効果の程といえば、まさに絶大であった。 上からひとまきしただけで、あっというまにそこにいた人間が死んでいった。 ひとり…ふたりと、まるであやつり人形が糸を切られた時のように、 ぱたりぱたりと地に墜ちる。 まるで、眠っているかのように安らかな死に顔で……。 冷たくなり、朽ちていく人間の姿を見ながら、 ゼロスは自分の思考を再び確かなものにしていた。 「…人間というのは脆いものですね……」 一年前に、十分思い知らされましたが…。 そんな事を思いつつ、その死体を一瞬のうちに闇へと送り込むゼロス。 上司からの依頼は、この毒で人間を殺すことと、死体を持ち帰ること。 理由は解らない、問う必要もない。 自分は、あのお方に従うように創られているのだから……。 仕事を終え、再び屋敷へ戻るべく、ゼロスは空へと舞う。 そして森の外の街道へ降り立ち、一息つく。 「さて……と」 「おーーーーいっっ、ゼロスーーーーっっ」 上から自分を呼ぶ声がし、ゼロスは空を仰ぐ。 上空に見えるは一つの影。自分と同じ種族であるということは、問わなくてもすぐに その発せられた邪気で解った。 人に似せてかたづくられた外見。よく知った顔であった。 その魔族は自分の隣へ降り立ち、明るい笑顔を見せる。 「おや、シェーラさんこの地に何か用でも?」 「うん、お仕事しにきたんだっ」 元気にはきはきと物事を話すこの少女は、グラウ・シェラー様の将軍で 以前から頻繁にうちの屋敷へ出入りしている者の一人だった。 「そうですか」 「そうなのー、あのねー…そうそう ――キガ・スレイブ――の事について調べるように言われてるのー」 ――ギガ・スレイブ―― この世界の創造主である、あのお方の力を借りることの出来る攻撃系黒魔法最大のもの ――と、いままでされてきた しかし、本当は力を借りるのではなく、あのお方自身を召還し憑依させるという魔法で、防御は不可能とされている。――それほどまでに絶大な力を持つ魔法。 解明されている事もすくなく、おそらくあの ――クレア・バイブル――に問いたところで満足な答えは得られないであろう。 だからこそ、それを扱うことのできる人間も限られてくる。 僕が知っている限り…、いままで一人しか実現させた者はいないはず……。 「けどさーーー…、なんか変なんだよねー」 「何がです?」 「その仕事の中の項目に ――レイ・マグナス――についての記述も集めろ …って書いてあるんだけど……、なんか関係あるのかな――ギガ・スレイブ――と」 「レイ・マグナスについて…?」 それは…、何か無関係なようでとても関係のあるもののような気がして、 ゼロスはしばし黙り込む。 ――レイ・マグナス―― 世紀の魔導師と詠われ、数々の高等呪文を実詠させたもの。 その経緯こそ解らないが、今は闇の世界にて魔王の位をもつお方………。 そして、先の戦いによって北の山へ封じ込められた ――シャブラニグドゥウ様である。 ………もしや、あのお方であれば――ギガ・スレイブ――も発動できていたのかも…。 そう考えると、グラウ様の依頼もあながち不確かなものでもない。 「……おもしろそうですね……。 調べ終わったら、僕にも報告の内容、おしえてもらえますか?」 「いいわよっ じゃあ、調べに行って来るからっ、またねーーーーっっっ」 最後まて無邪気に振る舞ったその魔族は、大きく手を振りながら、森の奥へと駆けて行く。 その姿を見送り、その遠方を見やる。 本当はこのまま帰ろうかと思ったんですがね…… シャーラさんに会ってすっかり気分が変わってしまいましたよ。 「そうですね…、ゼルガディスさんの所にでも…足をのばしてみましょうか……」 そういうと魔族は錫杖を一振りし、身を飛ばしていった。 「ふう…………」 歩き回った足を休ませようと、小綺麗な店へ入り込むゼルガディス。 自分が場違いなのは解っていたが、ここ以外側に店は無かった。 ほとんど女性しか居ない店内の、一番奥のテーブルにつくゼルガディス。 理由は自分の目立つ出で立ちと、恥ずかしさのためであった。 紅茶を注文し、重くため息をつく……。 今日も結局、この体を直す手だては見つからなかった…か。 「…結構でかい街だったから…もしやと思ったんだけどな…」 「何がですか?」 ふいに向かいから聞こえたその声にゼルは、苦虫をかみ殺したような顔をし、 あからさまに嫌々強い声を出す。 「…………何の用だ、ゼロス」 殺気をも感じるその声と眼に、いつもの笑顔でさらりと受け流すゼロス。 「ははははははははは、特に用は無いんですけどね。 ちょっと近くへ寄ったもので…」 「じゃあ帰れ」 「まあまあまあまあ、久しぶりなんですから、お話でもしましょうよ」 手をぱたぱたと振るゼロス。 以前と何の変わりもない会話に、少しばかり懐かしさを覚えそのころを思い出す。 「けど…、本当にお久しぶりですね」 「…ああ」 彼らとは以前、とある事情ですこしばかり一緒に旅をしたことがあったのだが… ここ一年会うことも、話す機会も無かった。 「…一年ぶり位ですかね?」 「………そうだな、たぶんちょうど一年だ」 やけに確信をもって言うゼルガディス。 それもそのはずである。 「……そうですね……」 一年前…… リナさんが殺されて以来…… 「ずっとお会いしていませんでしたね」 「ああ……」 運ばれてきた紅茶を口に運び、空ろ気に視線を落とすゼルガディス。 あの日、確か第一発見者はガウリィさんだった。 異変に気づき駆け寄ったのはアメリアさん…… 悲鳴混じりの泣き声を聞き取り駆けつけたゼルガディスさん……。 みながみなあの惨劇の現場に直面したのである。 その事を思い出したのか、ふいに眼を伏せカップを持っている手に力を込める。 その事に気付き、素早く話題を変えるゼロス。 「アメリアさんや、ガウリィさんは今どうしてます?」 ゼロスの声に少し間を置き、いつもの調子で喋りだすゼル。 「……アメリアはセイルーンへ戻ったはずだ。 リナの葬儀が行われてすぐの事だったよ…。 なんでも、本当にやるべき事を見つけたらしい」 「なんだか、アメリアさんらしいですね」 どこまでもまっすぐで前向きな考えは今でも変わりないです…か。 「ガウリィ…………は」 眉を潜め歯を食いしばるゼルの様子からして、ガウリィに何かあった事を知るゼロス。 言葉につまり、黙り込むゼル。ゼロスも急かせる事なくゼルが口を開くのを待っていた。 少したち、胸底から吐き出すようにして息をつくゼル。 「すまん………」 落ち着いたのか、ゼルはそういいゆっくりと呟いた。 「…ガウリィの旦那は、あの日、そうリナの死骸を見つけた時に 体の機能がほとんど停止した……、つまり植物人間という訳だ」 意表を突かれ、少しなりとも驚きを隠せずにいるゼロス。 「……植物人間です……か」 「ああ……」 けれど…何故? 「理由は?」 「わからない」 表情も変えずに、静かに首を横に振るゼル。 「……どういう事です?」 「本当に、よく分からないんだ。 アメリアが駆けつけた時にはもうその状態だったらしい。 ……まあ、無理もないかも知れんが……」 「……そうですね」 そんな現場を見たとして、少なくとも正常な人間ならば気をおかしくするのは当然の事なのかもしれない。 それよりなにより、ガウリィさんはリナさんを愛していた。 そんなものが惨殺されたとなれば………、やはり正常ではいられなくなるのかもしれない。けれど……… 「植物人間というのは………どうでしょう」 「ああ……。リナの死がそれの直接の原因とは考えにくいな」 あまりにも不自然すぎるのだ…、体の機能がほぼ静止するなどというのは……。 「感情が無くなり、ふさぎ込んだりというのなら解らないでもないですが…」 「どうも話しが飛躍しすぎる…な」 ということはやはり、それが原因ではないという事である………。 「まあ…、とりあえずそういうことだ」 この話題にはもう触れたくないとでも言いたげに、カップを引き寄せ一気に飲み干すゼル。そして、ゼロスの顔を見やり、何かを思い出したかのようにうなずくゼル。 「そう言えば……、リナが死ぬ直前にこんな話をしてたよ」 「どんなですか?」 あの人の残した言葉というのは、とても興味があった。 「おまえさん、リナにこんな質問をしていただろう? ――この世で、一番怖いお話ってなんだと思いますか?―― ……その話だった」 思いがけず出された言葉に、ゼロスはなにかを思い出す。 「…そういえばそんな質問もしていましたね……」 あれは確か…そう、この言葉をつぶやいた一人の少女を思い出したからだった…。 リナさんの死ですっかり頭の奥にしまい込んでいたが。 「その時、リナさんはなんていいました?」 「あ、ああ…確か…… ――あたしが一番恐いのは白雪姫よ―― とか………」 「白雪姫……?」 詳しくは知らないが、確か姫と王子が幸せになる物語…だったはず。 それを恐い…とは、ね。 意外な答えに笑みをこぼしつつ、もう一つの考えも頭へ浮かんでいた。 白雪姫も……お伽話ですよ…ね。 そして、先の会話が頭をよぎる。 そういえば…フィブリゾ様もそんな事をおっしゃっていたような……。 白雪姫に…なにか特別に意味でもあるのだろうか…? 「アメリアならもう少し詳しく覚えているかもしれんがな。 さて…………」 言って、席を立つゼルガディス。 「おや、もう行かれるのですか?」 「ああ、こんなところであんたと話してる暇はないんでな」 小さく笑い、戸を開け店を出て行くゼル。 たぶん、また書籍や資料室をまわるんですかね。自分の体を戻すために……。 こんなことになっても、何かを見つけ生きて行ける人達。 人間の利点といえばそれでしょうか。 正直なりたいとは思いませんが…… 「すこし、うらやましいですよ」 そう呟き、魔族も店を後にした。 「ゼラス様―?」 屋敷へと戻り、我が主の所在を確かめようとするゼロス。 だが、どこからも返事はない。 しかし…、先ほど送ったはずの死体の山が見つからないところをみると…… 研究の成果を見るために、研究室へと篭っているのだろうか…? 確信は持てなかったが、今一番確立の高い居場所であると判断し、ゼロスは地下の研究室へと足を進めた。 そういえば…、ここへ来た事はなかったですね……。 いつからか、この屋敷に作られていた研究室。 この空間において地下もなにも関係が無いのだが、主曰く ――その方が気分でるじゃない―― と、いう一言でここに造られた部屋。 研究内容には興味はありましたけど…わざわざ見に行くほど暇でもなかったし…。 ……ん? 地層が深くなるに連れて、奥の方から音が聞こえてくる………。 なんでしょうか…話声? それは下へ降りるに連れて次第に明らかになっていく……。 ――………は言いました……―― ゼラス様では…ない……。 誰か他の……、だけれど聞いた事も無い声だった。 ――…今度生まれてくる子は……―― これ…は? やっとの事で研究室へたどり着き、扉を開けようとする。 え……? しかし、手を掛けた扉は微々にも動かず、代わりにどこからともなく機械音が繰り出される。 「パスワードヲニュウリョクシテクダサイ」 ………パスワード? そんなものなくても…、闇をわたれば部屋に入り込めるのでは…? 「……おやおや……」 実行しようと、駆けようとするゼロス。だが、部屋には魔法でなにかの壁のようなものが出来ていて通過することは出来ない。 壊せない事もないが、そんなことをしてまでの急用でもない……。 しばし考え込むゼロスの耳に、再び扉の向こうから音が聞こえる。 ――雪のように白く 血のように赤く 黒檀の窓枠のように黒い姫がほしい―― ……これは…… ――お妃様の願いのとおり、肌は雪のように白く、頬は赤く、髪は黒檀の窓枠のように黒いお姫様が生まれ…―― おとぎ…ばなし? ――名前を…白雪姫と名づけられました―― …………シラユキヒメ! 今日何度聞いたことだろう、この単語をっっ 行く先々、すべての場所でこの事が話題になった……。 …しかし、何故ここにこの話が流れているのだろうか? どう考えてもゼラス様の声では無い、どちらかといえば低音で落ち着きのある…そう どう考えても男の声なのである。 この部屋の中に、ゼラス様以外の者がいるという事なのか……? それとも、これは録音機か何かを使って流されている物なのか……? まさかフィブリゾ様…?? 「どっちだと思うの?」 いささか後ろめたい事をしていたようで、自分を恥じるように感じたが、 実際自分はそんな事は何もしていないので、 ゼロスはその声に何の動揺もせずに答えた。 「さあ…、どちらでもあまり意味の無い事ですね」 曖昧な言葉で真実を隠し、返事をするゼロス。 「そう…」 そんなゼロスの心を見透かしたかのように、薄く笑みを浮かべるゼラス。 本当は、言い表せない程の興味をもった。 この部屋の内部はどうなっているのか? また、この白雪姫は何のために流されているのか? 「ところで、あなたはここで何をやっているのかしら、ゼロス?」 「あなたを呼びに来たのです、ゼラス様。 てっきりここだと思っていましたが…、後ろから参られたという事は違ったようですね」 言われ、優雅に笑いながらゼロスより前へ進み出るゼラス。 「ええ、少し…フィブリゾの所へ用事があってね……」 「そうですか…………」 ゼラスがこれから部屋へ入るのは解っていた事だった。 だから、なんとしてでもこの場所へいて部屋を覗いてみいたと思った。 それが出来なくとも、パスワードを聞くことが出来れば……… そう考え、ゼロスはしばしその場所へとどまった。 「ああ、そうそうゼロス」 思い出したように呟き、こちらを振り返るゼラス様。 「これを大至急シェーラの所へ届けてやって欲しいの」 取り出されたのは一冊の古ぼけた書籍。何やら見覚えのある表紙に思え、ゼロスは少し考えた。 「これね、降魔戦争の時の詳細表なんだけど………、 なんか今調べてるみたいだから、渡してあげて、ね」 それはどう考えても、今すぐ果たさなければいけない用事では無かった。 どう考えても主が人払いのタメに考えた口実であったが、僕はそれに従わざるおえなかった。 「わかりました」 「ありがとう。 ゼロスは本当にいい子ね」 ゼロスにとって皮肉にしか聞こえないその言葉を、あえて使うゼラス。 「…………では」 「うん、いってらっしゃい」 上司に見送られ、ゼロスは屋敷を後にする。 「………さて、と」 それを終えてまもなく、ゼラスは扉の前に立っていた。 「……お姫様は、今日も元気かしら………?」 そう言い、扉に手を掛ける。 「パスワードヲニュウリョクシテクダサイ」 カタコトな電子音が繰り返される。 「……パスワードは…」 ゼラスの声が、扉の向こうの声によって防がれる。 ――お后様はいいました…鏡よ鏡…世界で一番うつくしいのはだあれ……?―― ――それは……… 第二章・迷宮の始まり 愛すべきひとがいる 慈しむべきひとがいる けれど それはあなた一人ではない ――アナタノ大切ナヒトトハ誰デスカ?―― 「あーーーーーっっっっ、ありがとおゼロスーーーーっっっ」 その本を受け取り、飛び上がる程に喜んだのはシェーラだった。 相変わらず手入れの行き届いた、その屋敷のリビングで二人は言葉を交わしていた。 「いえいえ、お礼はゼラス様に言ってください」 「うんっっ、あーーーーーっっっ、よかったあっっっ」 受け取った本を大切そうに本棚へしまい込み、こちらへ戻ってくるシェーラ。 「ずんぶんと嬉しそうですね……、そんなにあの本が必要だったのですか?」 紅茶を口にしながら、ゼロスは不思議そうに尋ねる。 自分の分の紅茶をカップに注ぎながら、シェーラは大声で言う。 「そうなのよぅっっっっ、なんせグラウ様にあと3日で降魔戦争のレポートを提出しろって言われててさーーーっっっ」 言い、重くため息をつくシェーラ。 「ああ、そうでしたか。 ……そういえば、僕もそんなのやった気がしますよ」 そうか、だからあの表紙に見覚えがあったのだ。 「ふーん、じゃあゼロスもあの本使ったんだ」 「そうですね…、あんまり覚えてないですけど………」 と、言うより殆ど記憶に無い。 だいたい、主が部下に出す課題なんて物は、ほとんどが暇つぶしのためか趣味である事が多いのだ。 だから、僕はそんな課題を今までに1000を越える数提出させられていた。 それを一つ一つ覚えていようなど、無駄以外の何物でも無い。 「おお、ゼロス」 振り向き、軽く会釈するゼロス。そこにはシェーラの上司であるグラウが、何やら書類を抱え立っていた。 「どうも、お久しぶりですねグラウ様」 その言葉に軟らかに笑い、シェーラの隣へ腰掛けるグラウ。 重たそうにその書類の山をテーブルへ置き、シェーラに紅茶を入れさせるグラウ。 「そうだな、ゼラス主催のお茶会が開かれて以来だから……もうかれこれ20年位会ってなかったのか?」 「ああ、そうでしたね」 あの日は、我が主の突発的なお茶会が開催されたのだった……。 なんでも、 「いくらいつまでも生きていられるとはいえ、親族が何百年も顔を会わせないのは寂しいわねーっっ」 と、いう事だったらしいのだが……、僕から言わせれば、これはただ単にゼラス様が暇つぶしのために開いた催し物だった。 あの方は退屈な時を何よりも嫌うのだ。 「あの時は楽しかったねーーーっっっ ねえねえ、グラウ様っっ今度うち主催でやりません?」 屈託なくまるで子供のようにせがむシェーラを、やはりそれ相応のやり方でさらりとかわすグラウ。 「それは、シェーラが課題を終わらせてからだな。 ちゃんと進んでるのか?」 その言葉に一瞬たじろぎ、慌ててさっきゼロスから受け取った本を取り出すシェーラ。 「こ…この本を探してたんですっっ、だからちょーーーーっっっと遅くなってますけどっっ、大丈夫っっっ必ず仕上げて見せますっっ」 必死に弁解しながら、グラウ様に顔色を伺うシェーラ。 その言葉に無表情で答えるグラウ。 「ほーーーーお……まあいいけどなぁ……」 「……ちょっと質問なんですけど……」 そのやりとりに割り込むゼロス。手を挙げ、にこやかに質問する。 「どぉして、グラウ様は降魔戦争の事、レイ・マグナスの事をシェーラさんに調べさせているんですか?」 「あ…ああ。ちょっと今調べている事に必要でね」 「なぁんだ、そうでしたか。 僕はてっきりグラウ様の趣味でやらせているのかと思いましたよ」 その答えに、あきれたようにして問い返すグラウ。 「……あのなあ…、はっきり言って俺はそんなに暇人じゃないんだ」 確かに。 このところ一番仕事の量をこなしているのはこの方であろう。 何故かうちに回ってくる仕事は少ない………。 それはきっと、ゼラス様のあの性格が関係していると思うのだが……。 「ゼラスの分の仕事もこっちに回ってくるしな……」 「え、そうなんですか?」 そんな事は初耳だった。前々から疑問には思っていたが僕も、そんな事を質問している程暇ではなかった。 「そうなんだよ。 あいつはあの時から、進んで仕事をしなくなったんだ」 「あの時……」 その言葉に覚えが無かったので、首を傾げるゼロス。 それはシェーラも同じだったようだ。 「グラウ様、あの時って?」 ふいにレポートをまとめていた手をとめ、尋ねるシェーラ。 知らないのか? といいたげな顔でこちらを向き、口を開くグラウ様。 「降魔戦争だよ。 あの時からゼラスは、仕事を放棄…とまでは言わないが、進んではやらなくなっていった」 「そう…だったんですか……」 「ふーーーん………あ゛っっっ、そぉだっっっ 降魔戦争について、ゼロスが知ってる限りでいいから話してくれない?」 ペンと紙を持ち、もうすっかり準備に入っているシェーラ。 言われて、どうしたものかと視線をグラウに送るゼロス。 グラウは眉を潜めて笑い、話してやってくれと言わんばかりに頷く。 「はあ……、大した事はお話出来ませんが………」 言って、紅茶を一口口に運ぶゼロス。それをゆっくり飲み込み、そのころの情景を思い出す。 「………降魔戦争 復活した魔王と水竜王との決戦…、しかしそれは冥王フィブリゾ様によって企てられたものだった。 その戦いの中で復活した赤眼の魔王シャブラニググゥウ……。 しかしその力とはいえば7/1であるからして、赤の竜神(スィーフィード)の4/1にはどう逆立ちした所で勝算は――無い。 そこで当時赤の竜神がいた、霊山カタートへ腹心のうち魔竜王以外の4人を、結界として配置。赤の竜神の力を少しでも弱めようとした。 そして、魔竜王の犠牲により水竜王を倒した。 しかしその戦いのおかげで赤眼の魔王もカタートから動けなくなった……。 これが、一般的に知られている降魔戦争の内容…ですかね」 その長い話しを一生懸命に一字一句書き込んでゆくシェーラ。 「……そんな事は知ってるけど…さあ。うーーーん…そうだなあ…」 その説明に満足出来ないといった様子で、考え込むシェーラ。 「あっ、そうだゼロスは何やってたのよ」 「はい?」 「だから、降魔戦争の時ゼロスはどんな仕事した訳?」 言われて再び思想をめぐらせるゼロス。自分はあの時どんな事をしていただろう……。 「…そうですねぇ…、大した事はしてませんが…… 竜達の峰(ドラゴンズ・ピーク)の方々を壊滅させていただいた事位ですか……」 ゼロスの言葉を再び書き写しつつ、何か引っかかる事でもあったのか眉を潜め模索するシェーラ。 「……そんだけ?」 「……え?」 「そんだけしか働いてないの?」 シェーラのその言葉の意味は自分でも解った。 あの大戦でゼラスの部下ともあろうものが、たったそれだけを果たしただけなんて考えられない。そう、言いたかったのだろう。 「ええ、たぶん……」 「たぶん?」 「いえ…、なんせ昔の事なんで……。 そこら辺の事はあまりよく思い出せ無いんですよ」 実際魔族にとって千年という年月など、大して長いものではなかったのだが、 覚えていないのならそうなのかもしれない。 その会話を黙って聞いていたグラウが、足を組み直し呟く。 「まあ、それだけでも大したもんだけどな。 で、シェーラ他に聞くことはないのか?」 「あーっっ、あるあるっ シャブラニグドゥウ様はどうやって復活したのー??」 どう考えても僕よりグラウ様の方が知っていそうな内容だったのだが、グラウ様は何も言わずに黙っていた。 これは………黙っておけ、という事でしょうか? 「さあ……、それは解りません」 僕の言葉に頬を膨らませ、知っているはずだっとまくし立てるシェーラさん。 そんな彼女へ新たな仕事を言いつけるグラウ。 「シェーラ、この資料をここから紛失させてきてくれ」 「えーーっっっ………はい」 言われて納得はしていなかったが、仕方なく闇を駆け屋敷から出ていくシェーラ。 そんなシェーラを笑顔で見送るゼロス。 「さて……と」 椅子に深く腰掛け直し、こちらを見やるグラウ様。 「じゃあ、本題に入ろうか……」 本題? …グラウ様は僕に何か話しがあるのか………。 先ほどシェーラさんを使いにやらせた事を考えると…どうやら、ひとに聞かれてはまずい話しのようだ。 それでも、緊迫も緊張もなんの意志表示もしない瞳で、ゼロスは彼が切り出すのを待ち続けていた…。 広く王宮を思わせる造りのこの屋敷……。持ち主はゼラス・メタリオム。 彼女らしい質素で豪華な造り…、いや、この屋敷は彼女自身といってもいい程すべての 物が彼女を連想させた。 一湖程あるかと思われるその空間が彼女の、最もよく使用する場所であった。 人間の世界の言葉でいえば、寝室とでもいうべき所だろうか。 その中央に設置…いや、積まれた無数の羽…そこに倒れるようにして寝ころぶゼラス。 その反動によっていくらかの羽が空を舞い、静かに彼女の上へ降り注ぐ。 「……おねえさま?」 「……フィブリゾ………」 ふいに現れたその少年に、なんの感情も表さない声でそう呟くゼラス。 顔に掛かっていた羽を一枚取り除き、高々と上へ掲げる。 「ねえ……フィブリゾ………」 「なんだい?」 「私には………、愛する者がいるわ……」 「知ってるよ」 「…………… …ゼロスは…、幸せになれるかしら……?」 その言葉に優しく笑い、彼女の側に腰を落とすフィブリゾ。 羽を一枚取り、深々と眺める。 「……どうかな…」 「私ね……、あの子を愛しているのよ……」 「うん……」 子を可愛がらぬ親などいない。 彼女は彼女なりの愛情で…、それもかなり深い、ゼロスを慈しんでいる。 「だからね………、あの子にも幸せになって欲しいのよ……」 優しく、優しく呟くゼラスの顔には、ゼロスへの愛おしさが滲み出ていた。 そんなゼラスを、安心させるかのようにやや甲高い声で言うフィブリゾ。 「……まあ、大丈夫じゃないの……?」 「………そう…ね」 言って、立ち上がるフィブ。それを眼で追い、言葉を紡ぐゼラス。 「フィブ………」 「なんだい?」 「私の考えは……、間違ってるのかしら……?」 その瞳には微かに動揺の色が現れていると、フィブは思った。 「……どうかな」 そっけなくそう答えたのは、自分でも答えが解らないからであった。 その言葉にしばし考えてから再び、言葉を紡ぐゼラス。 「みんなで……、幸せになりましょうね………」 その言葉に、頷きも笑いもせず、フィブは静かに屋敷を後にした。 「さて……、まず何から話そうか?」 すっかり静寂を取り戻した屋敷の中で、ゼラスは重々しくそう言った。 「どうぞ…、グラウ様のお好きに……」 話しの内容が一つも解っていないゼロスには、それ以外の答えを出すことは出来なかった。 「そうだな………、まあ簡単なことなんだが……」 言って足を組み直し、顎を手に乗せるグラウ。 しばしの沈黙ののちに、グラウが発したのはこんな内容だった。 「リナ・インバースの死についてなんだ」 あまりにも意外な言葉グラウの口から吐かれた。 ゼロスはてっきり、フィブリゾ様の事か……、とにかくそういう魔族に関係のある事を質問すると思っていたのだ。 そんなゼロスの心境を悟り、再び口を開くグラウ。 「あの少女の死は……、お前が手を下したもの…か?」 いわれ、自分でも気が付かないうちに声を荒立てていたゼロス。 「そんなっ…!!」 けれど、そんなに驚く事でもなかったのだと、後になってゼロスは思った。 魔族が人間を殺すなんて、あたりまえ、そうほぼ日常生活の一部といっても過言ではない。 いささか短絡的だった自分を悔いるようにして、ゼロスは一瞬にしていつもの顔を作り上げる。穏やかに、静かに、さっきの言葉を打ち消すかのようにつぶやくゼロス。 「……どうして、そう思ったのですか?」 そんなゼロスを楽しげに見やり、グラウは言った。 「どうも……、あの少女の死は計画的に実行されたとしか考えられない。 それも…、魔族の手でな」 「……そこまでおっしゃるからには……、きちんとした証拠がおありなんでしょうね」 「まあな」 自信有りげに呟き、答えを焦らすようにして一間開けるグラウ。 「………あの少女が殺された時、何か不思議な感覚が頭を襲った。 調べてみれば、リナ・インバース……、そう我らの期待を満たすべく存在だった人間が殺されている。 けれどな……、俺はあの少女は生きている気がしてならない」 「!?」 話がよく飲み込めず、再び問い掛けるゼロス。 「…まあ、いまのは思った事を断続的に話しただけだからな、意味など考えなくてもいいさ。 少し話を展開させてみよう。 さっきも言ったとうり…、リナ・インバースは我らの期待を満たすべく存在だ…というのは、解っているとは思うが、あの呪文を使える人間…という意味だ」 あの呪文…すなわち、 ――ギガ・スレイブ……―― 呪文の制御に失敗すれば、この世界は無へと還る……。つまり、消滅する。 それがわれわれ魔族の永遠の願い。存在理由……。 「……それと今回の彼女の死と…何か関係があるのですか?」 いや…それよりもなにか矛盾しているような気がしてならない。 彼女がこの世界を混沌へと導く力があるというのならば、彼女を死へ追いやる事は得策ではないはずだ。 「だから、リナ・インバースは死んでなどいないのだよ」 「……それはどういう……」 「………彼女は惨殺されていたといったね、ゼロス」 ふいに話しが外れた気がしてならなかったが、とりあえず言葉を紡ぐゼロス。 「…はい」 ――口に羽を詰められ ――顔は爛れ ――腹を剔られ ――内蔵を、心臓を、 ――すべてもぎ取られた あなたらしくない…無様な死に方でしたね……。 そんなゼロスの考えを探るようにして、呟くグラウ。 「顔は爛れ…、腹を剔られ 内臓を心臓を…すべてもぎ取られた……。 つまり…その死体が、本物のリナ・インバースだと証明できるものは何一つ無いわけだ」 ――!! 考えもしていなかったその言葉に、ゼロスは声を詰まらせる。 死体は……、どうやって彼女と確認されたのだろう……? 第一発見者は? ガウリィさんのはずであるが…かれは今証言する事は出来ない。 第二発見者は…・・、アメリアさんでしたね…。 「そして、発見したものはみな、リナ・インバースの仲間…つまり彼女を少なからず愛していた者ばかりだ。 そんな人間達が、愛するものが惨殺などされたとして、その直後に正しい判断など出来るかな? リナ・インバースと同じ髪をし、服を着、背丈が同じだったとしたら…? 誰もがその人物をリナ・インバースだと思うだろうね」 その意見には非の打ち所が無いように思えた。 確かに……、別人の酷姿した遺体をリナさんだと、あの場にいた人間が誤認した。 その説は解らなくもない……。 だが……… 「魔族が彼女を殺したというのは…どうでしょう。 そして……、彼女が生きているという説も………」 どうも考えずらい。と、ゼロスは思った。 それよりなにより、異変を感じたというだけで、どうしてそんな考えに結びついたのだろうか……? 「…まあ、そこらへんはあくまでも仮説だしな。 俺の直感なので、あんまりあてには出来ないが………」 そんな不確かなものに頼るのはどうかと思ったが、死体の事だけは信憑性があると思った。これは…一度アメリアさんを尋ねるべきですね………。 そんなことを思いつつ、二人の魔族はそれからしばらくたわいもない会話で時を過ごした………。 白魔術都市・セイルーン…、近国の中でも最も発達した都市で、とくに白魔術に関する事柄については権威といっても過言ではない国。 その街に中央にそびえ立つ王城…、もちろん王族が使用する屋敷である。 いつも通り静かな城内。それでも、使用人達の顔はどことなく明るかった。 みながみな口走るのはこの言葉。 「本当によかったねぇ、アメリア様が元気になられてっ」 「本当ねぇ、一年前から比べてずいぶん明るくなられたねぇ……」 そんな話しを耳にしつつ、魔族は姫の部屋を目指す。 どうやら…、リナさんの死はアメリアさんにもショクな出来事だったようですね…。 たぶん彼女と一番仲の良かったアメリア姫……。 部屋へ着くと、なにやら大きな物音がする。 「……?」 身を闇に委ねたままで、ゼロスはその部屋へと入り込む。 見れば大きな熊のぬいぐるみと格闘する一人の少女。 「てぇやーーーーーーーっっっ」 腹部と思われるその場所へ、力一杯入れられた蹴り。 「はーーーーー…よしっっ」 「…なにがよしっ…なんですか?」 「にゅあぅぅぅぅぅぅぅっっ!!!!」 ふいに現れたゼロスに対して、まるで怪物と対面した時のような反応をするアメリア。 しかし次の瞬間にはその顔は笑顔へと変わっていた。 「ゼロスさんっっっ、お久しぶりですっっ あ、まだ魔族なんて職業やってるんですか? だめですよーっっ 今すぐその考えを改め、わたしと一緒に正義の道を歩みましょう!!」 昔と変わらぬその押しの強さに、ゼロスは静かに笑って言葉を紡ぐ。 「いえ、それは遠慮しておきます。 ……ところで、今何をしていたんですか……?」 「何って……、練習ですよ跳び蹴りのっ」 見て解ることである…が、ゼロスの言いたいのはそんなことではなかった。 「いえ…そおいう事ではなく………」 何故熊のぬいぐるみ相手に飛び蹴りの練習などする必要があるのだろう…。 と、いう事である。 「え、そりゃあ飛び蹴りが上達するようにですよ」 そういうことでも無かったのだが、これ以上この質問を繰り返すのも煩わしかったので、 ゼロスはすみやかに話題を変える事にした。 「あの…、一つお聞きしたい事があるんです……」 「はい、なんですか?」 「……リナさんの死に関してなんです……」 それまで太陽のように明るかった少女の顔が、まるで雲がかかったかのように陰りを見せる。 しかし、それもただ一瞬の事だった。 「何が聞きたいんですか?」 そう言った彼女はいつもとかわらぬ、愛らしい笑みを浮かべていた。 ああ……この娘は…、いつのまにやこんなに強くなっていたのだ……。 人の成長の速さ、変わり身の速さにはいつもながら驚かされる……。 「……たいしたことではないんです…。 ただ……、リナさんを最初に発見したのは誰でしたか…と」 その言葉に首をかしげるようにして、疑問に満ちた声で答えるアメリア。 「…ガウリィさんですけど…? それがどうしたんですか?」 「ああ、いえ別に…。 では、アメリアさんは第二発見者というわけですか」 「ええ。 ………あまり、思い出したくない情景だけれど……」 それでも忘れる事は出来ないのか、アメリアは少し顔を歪ませる。 「………顔は爛れていましたよね、死体の」 その質問にやや辛そうに、けれどはっきりと答えるアメリア。 「……ええ」 「では………、何故その遺体がリナさんだと判明出来たのですか?」 その言葉に、やや不信感を覚えつつもアメリアは言葉を紡いだ。 「…それはどういう…? まあ…いいですけど……、あの時、そう。 ガウリィさん…と、いってももうすでに心を無くしてしまって人形のようになってしまっていたけど…、ガウリィさんがしきりにリナ…と彼女の名前を呟いてましたし…。 あの背格好…、どう考えてもあれはリナさんでした……」 当時の状況…その現場は、どう考えても惨劇の場所だったのだ…。 少なくともこの少女にとっては…。 自分の仲間が、一人は死に、一人は植物人間へ……。 そんな悲劇を、彼女は死にもの狂いでここまで駆け上がってきたのだ……。 「………そうです…、か……」 これは…、ガウリィさんにもお会いしてみなければなりませんね……。 とは言っても、お会いしたところで僕が何者だという事さえも認識できないようですがね……。 「ああ……そういえば………」 アメリアさんがふと微笑を漏らし、なにかを思い出したような遠い目でこちらを向いた。 「リナのね……、最後の言葉を思い出したの…………」 それは…ゼルガディスさんの所で聞いたものと同じであろうか…? 「…リナね…。 白雪姫が…昔からずっと恐かったんですって…」 やはりそうか…と納得しつつも、言葉を紡ぐゼロス。 「…どうしてでしょうね? あんなに可愛らしいお話なのに………」 「あら、知らないのゼロスさん?」 目を少し開かせ驚きがちに言うアメリア。 「?」 「だからね、白雪姫は本当はとても怖い話なのよ」 今までの中で童話に関わる事なんて皆無だっただけに、それは新鮮な事柄だった。 「へえ……、そうなんですか?」 「そうなのよ。 白雪姫を森につれていって殺してこいっ…って、狩人が命令されるじゃない?」 内容をほとんど覚えていなかったゼロスだったが、そこは一応場の流れとして、軽く頷いてみせる。 そんなゼロスに、淡々と話すアメリア。 「結局その男は白雪姫を逃がしてしまうんだけど…、その時殺した証拠にとイノシシの心臓をお后様に持っていくの。 これが白雪姫の心臓です……って。 するとお后は歓喜を上げながら、その心臓を喰らってしまうのよ」 「…それはまた……」 人間の話しにしては残酷ですね……。 ――心臓を喰らう―― ――内蔵を、心臓を、 ――すべてもぎ取られた ――あなたの残骸 ………っっ! ふいに言葉が頭を巡り、何かを悟ったようにしてくるり、と姫に背を向ける魔族。 「ありがとうございます、アメリアさん。 あなたのおかげで助かりました」 「? そうなんですか?」 「ええ…それではまた………」 言って、よほど急の用事があるのか、瞬時に姿を闇へと飛ばすゼロス。 白雪姫…ですか。その言葉の意味はまだ分からなかったが、とりあえずグラウ様の案が確信めいてきたことだけは…確かです、ね。 ――リナさんは…生きている? それを再び確かにするために、魔族はある場所へと急いだのだった……。 「グラウ様―っ」 「なあに、ゼロス」 今度は直ぐに帰ってきた返事に、少し安心しゼロスは主へと言葉ほ紡ぐ。 「少し、お時間をいただきたいと思いまして……」 その言葉に、書類に目を通しながらたいして気にもとめない様子で言うゼラス。 「そう。 遅くならないうちに帰ってね」 まるで親が子に諭すかのように、いや…、実際親といっても間違いではないのだが、 そんな風に言付けるゼラス。 主に尋ねたいことは山程あった。その一番中心にくるのが…――あの地下室……。 その内容を尋ねた所でこの方が何かを教えてくれる訳がない…。 だから、あえて尋ねなかった。 「では…、いってきます………」 「ええ………」 いつも通りの、平和的な会話。 表面上、そう見えただろう先程の情景にゼロスは、嫌悪感を覚えてならなかった……。 闇の中で、魔族は一人思った。 自分は孤独を好んでいる…・・と。 そして…、自分は束縛を拒んでいる……と。 どうしてこんな事になったのかと…、問いたださずにはいられない今の状況。 けれど…、答えは解っていた。 「後始末は…、自分でするしか…ない」 ゼロスがあちこちかぎまわっている……。 ゼロスは、いつか真実に辿り着く……。 「みんなで…幸せに…」 その言葉に静かに笑みを漏らし、魔族はその場所を後にした。 「どう考えても…、ここに来るのがベストですよね………」 ゼロスが足を置いたのは、サイラーグに程近い村の入り口。人口的には街と言っても過言ではないのだが、ここ近年急激に増え始めた人口に建物の増築が追いつかず、未だ形態は村のままの、医学の発達した場所であった。 正して言うならば、医学が発達しているからこそ人々が集まるようになった訳である。 ――彼が養成しているのなら…、たぶんここでしょう………。 そう思ったのには理由があった……。 「ゼロス…さん?」 ふいに肩越しに声を掛けられるゼロス。その声の主に、振り向き、万人に好かれるような神父のような笑みを浮かべ、挨拶する。 「やあ、これはシルフィールさん… まったくいいところでお会いする事が出来ましたっ」 まったくもって言葉の通りなのである。この女性がこの村へいると知っていたからこそ、 魔族はこの場所へ駆けてきたのだ。 艶やかな黒髪を腰程まで伸ばし、その清楚な顔立ちは誰もかもが巫女を彷彿とする……。 以前サイラーグで巫女をやっていた女性である。 医学…とくに治癒の魔法に長けており、おそらく、アメリアさん達がガウリィさんの事を相談するとなればこの人しかいないであろう…と、ゼロスは踏んだのだ。 「お久しぶりです……、で何かご用でも…?」 村の外へ買い出しにでも行っていたのか、手に袋を幾つかもち、そう尋ねてくるシルフィール。 「ええ…あの、ガウリィさんの居場所を教えていただこうと思いまして……」 その言葉に、何か言いしれぬ危険を感じてか、重々しく呟く。 「…あの人に危害をくわえるおつもりは無いんですね」 「はい」 その言葉を信じて善いものか、数秒迷った後、言葉を紡ぐシルフィール。 「………解りました。 ご案内します…、とは言っても、いざとなればあなたは私の案内など無しに、ガウリィ様の居場所を見つけてしまうのでしょうけど………」 なかなか的を得た答えに、魔族は不敵に笑ってみせる。 ならば何故、この女性に案内を申し出たのか……。それは、一言で言えば手間を省きたかったのだ。彼に会うなどという事は簡単である。いや…、それこそ闇を駆けた時に彼のいるところへ出現する事だって出来た。 しかし……、今重要なのは彼に会うことよりも、彼女の証言を聞くことなのだ。 二人は静かに、狭い路地を歩き出した。 「ところで…、シルフィールさん」 「はい?」 その迷路のような路地を歩きつつ、魔族はふいに尋ねた。 「ガウリィさん……、植物人間といいましたが……」 「ええ………、けれど………」 その言葉に、過ちを正すように言うシルフィール。 「厳密に言えば…、植物人間という単語は間違っています。 どちらかと言えば………記憶喪失に近い状態ではないかと………」 「…それは」 どういう? 言いかけて、彼女の言葉がそれを防ぐ。 「…………彼は生きています」 ふいに食い違ったような答えが帰ってきたと…、魔族は思った。 しかし、そんな魔族を尻目に彼女は言葉を続ける。 「……正常に呼吸もします。 必要とあれば手だって動かせるかもしれない………。 自らの力で立ち上がる事だって……………」 言っている事がいまいち飲み込めず、魔族は疑問の意を表した。 「………それは、どういう事です?」 「……解らないんです。 確かに…、あの人は植物人間と言えるかもしれない…。 誰かに手を貸してもらわないと、何も出来ないのですから…。 けれど……、絶対に自分で、自らの意志でそれらのすべての事が出来るはずなんです」 一息ついて、彼女は再び言葉を紡ぐ。 「彼の体は、どこをとっても正常に機能しています。 神経がおかしくなったなんて事もありません。 ………だだ…」 「ただ?」 「無理矢理…、記憶を、感情を閉じこめているような……、そんな状態なんです」 つまり………、原因不明って事です…か。 ますますこの事件の影に魔族の手が入っているような気がして、ゼロスは軽くため息をつく。 シルフィールは少し足を早めた。 「……彼女の死が、彼に人間として生きる事を止めさせてしまったのかもしれません…。 けれど…、 そんな事を彼女は決して喜ばない……」 悲しみに引きつった顔を手で覆いながら、巫女は苦々しげに言葉を吐き出した。 「……そうかもしれませんね」 曖昧に同意しつつ、彼女の後を付いて行くゼロス。 まるで蜂の巣のような村の地形に、少しあきれながらも、魔族は呟いた。 「ずいぶん変わった地形ですね」 「ええ…、人口が急激に増えてしまったので…、あちこちに家を急設したんです。 そのため整理も整頓もされていない、無秩序な村になってしまいましたが…・・。 あ、ここです」 彼女が足を止めたのは、周りの家々とは少しばかり違う、だが大して変わりはない一つの家。 屋敷と呼ぶほど大きくは無いが、それでも造り的には周りのものと比べ多少頑丈そうに出来ていた。 魔族に解ったのは、ここが病院では無いこと…、それだけだった。 戸を押し中へ入る。地味とも派手ともいえない微妙な内装。――平たく言えばごくごく普通だという事である。 彼女は階段を上がり、二階へと進んで行く。ゼロスもそれに従い、二階へと上がる。 そこには4つの部屋があり、各の扉にはその部屋の主であろう人物達に名前が刻まれている。その一つに彼女の名前もあった。 「ここは、叔父の家なんです。 ガウリィ様は、医学的には病人ではありません。 だからここに療養さてもらってます」 一番奥の客室と書かれた扉に手を掛け、彼女は言った。 開けると中から穏やかな風が吹き込んできた。 その心地よい風を受けながら、部屋に足を踏み入れる。 その部屋の窓に程近い場所に、多少大きめに造られたベットが一つ……。 彼はそこへ腰を浮かし、窓の外を虚ろげに眺めていた。 外の陽を浴び、金の髪が透けるように光る。 「ガウリィさん」 声を掛けるが返事は無かった。身一つ動かさず、彼はただ窓の外を見つめるばかりだった……。 「たぶん…、何も話さないと思います…」 「……そうでしょうね」 この状態では………。 感情の欠落した人間に共通して見える仕草。眼の光の無さ………。 彼女の死が…、この人をここまで変えさせましたか………。 意外といえば意外なその現状に、ゼロスは半ばあきらめるようにしてガウリィに近づく。 魔法で無理矢理記憶を思い出させましょうか…、いや、そのまえに自我が崩壊し廃人になる可能性の方が高いですね……。 シルフィールさんから、ガウリィさんの病状も聞いた事だし…。 この人物からききうける事は何もないと判断し、部屋を去ろうとするゼロス。 「…………リ…ナ……」 っ! ふいに掠れ、ききとれない程に小さく呟かれたその言葉に、身を固めるゼロス。 けれど、それよりなにより驚いていたのはシルフィールだった。 「……ガ…ウリィ…様……?」 そう、その言葉は彼が呟いたものだった……。 「……………リ…ナ…ヲ…」 眉を潜め、まるで縋るような顔つきで言葉を紡ぐガウリィ。 「………リ…ナ………ヲ…… ……助ケテ…ク…レ…………」 血を吐くようにして呟かれた言葉……。 顔いっぱいに苦痛の色を見せ、歯を食いしばり、力の限りで吐き出された…。 そして、力尽きたかのようにガウリィが前へ倒れ込む。 「ガウリィ様っっっ」 シルフィールが全力で駆け寄り、彼の脈を取る。続いて、上体を起こし寝かしつけ胸に耳を当てる。 3・4秒たち、胸を手を当て安堵の息をついてから、ゼロスに言った。 「…大丈夫…………。 気を失っただけです…」 しかし…、魔族にはその言葉は届いていなかった。 ゼロスが考えていたのは、彼が倒れる直後に言った言葉………。 ――リナを助けてくれ―― あの言葉が真のものかどうか疑わしかった…が、どうにも嫌な予感があたりはじめてしまったような気がする……。 ――リナさんは生きている…―― ほぼ、確実ともいえるその事実に…ゼロスは半ば呆然としたおももちで、その場に立ちつくした。 第三章・過去へのはじまり 守るべき想いがある 忘れられぬ者がある だからこそ 失われて行く大切な思い出 ――アナタニソレガアリマスカ?―― 「……くそっ」 忌々しげに顔を引きつらせ進みゆく魔族。 …この頃体の調子がおかしい……、そろそろ限界か………? そんな思索をしつつ、我ながら馬鹿な話に乗ったものだと苦笑する。 それでも…… 「このまま…消えてたまるか……っ」 魔族は、ありったけの力で静かに……、目的地へと遂行する…・・。 ゼロスはもうすっかり陽の墜ちた町中を、一人歩いていた。 何故かといえば、すっかり混乱した頭の中を少しでも整理するためであった。 ――リナさんが…生きている……―― この予測を確信めいたものにしてくれた、ガウリィさんの言葉………。 ――リナを…助けてくれ―― その言葉の意味や真実を彼に問いただしたかった…、とゼロスは今でも想う。 けれど、ガウリィさんはあの後また昏睡状態に入ってしまったので、二・三日後でないと話は無理だという……。 意識が回復しただけでも奇跡だといっていましたしね………。 ――「たぶん、もう大丈夫だと思います。 大した事は言えませんが…、これからの訓練次第では体の方も元通りになると思い ます」―― そんなシルフィールの言葉を思い出しながら、魔族は溶け込むように闇へ駆ける……。 「グラウ様――――っっっっ、お仕事してきましたよぅーーーーっっ」 軽い足取りで屋敷に戻ったシェーラ。 普段より少し大きな声で主に報告する。 「そうか…、じゃあ自由時間にしていいぞ」 「はーーーーーいっっっ」 言われて、猫のように自室へ駆け出すシェーラ。 元気よく…、それが彼女の取り柄ともいえるのだが、扉を開け放つシェーラ。 机へ積み上げられた書物の中から、一つを慎重に取り出す。 「ふーーー…、よしっ」 古ぼけた表紙のその本は、獣神官に借りたものであった。 「早く、レポート終わらしてグラウ様驚かそーーーーっっっっ」 その時の主の顔を思い描きつつ、シェーラは本を開き見る。 「えーーーと…」 「何をお探しですか?」 「うーーんとね、北の魔王様の事」 ふいに虚空から現れたゼロスに、何気なく順応するシェーラ。 もっとも魔族の間ではそれが当たり前なのですが………。 ――北の魔王様―― 言われて、その言葉になにか引っかかるものを感じるゼロス。 何が…と問われても困るが、心の内にとてつもない嫌悪感を覚えてならない…。 そんな邪念を取り払い、再び書籍に目を通すゼロス。 「ねーねーゼロス」 「なんですか、シェーラさん」 服の裾を引っ張り、まるで子供のようにせがむシェーラ。 「この本って、ゼロスの物じゃないの?」 「え…?」 ふと…、素朴な疑問が頭をかすめ、目を閉じ考え込む。 ――この本は僕の物でしたっけ… それとも…ゼラス様の……?―― 「なんかねー、後ろに名前が書いてあるからさーっ」 「…名前?」 「うん。リナって書いてあるよ」 その言葉に身を強張らせ、次の瞬間強い勢いでシェーラから本を奪うゼロス。 手に取り、裏へ返し、表紙を一つ捲った所へその名前はあった。 ――リナ………―― 擦れ、主名の所までは読めないが、それでも確かにそう刻まれている。 ありえない………。 そんな想いが頭をよぎる。 「ねー、それってさー、リナ・インバースのことー?」 横から口を挟むシェーラ。 その質問になんと答えてよいか、しばし迷ったが、それでもなんとか言葉を造ろう。 「………秘密です」 いまさらながらなんと都合のいい言葉であろう、と思いつつ、ゼロスは再びその名に目を落とす。 …何故? こんな古ぼけた本を彼女から受け取った覚え……は、無い。 そんな事を記憶していられる程、彼女との接点は多いものでは無かったのだ。 考えても考えても答えに辿り着かない。 「んじゃあ…、こっちのリナって人からかなー? 古さからいったら、こっちのが可能性高いよねーーーーーーっっ」 「…はい?」 リナなんて知り合いは、後にも先にもあの人だけだったような……。 まあ、記憶にないだけかもしれませんが……。 思い、シェーラが開く資料をのぞき見る。 そこはちょうど、レイ・マグナス様に関する調書だった。 「…レイ・マグナス様と、リナという名前の人と…、何か関係があるのですか?」 内容はごくごく平凡なもののように思えた。まず、彼の残した偉大なる研究の成果、容姿、それ以後の事……。 だが、注目すべき点は他にあったらしい…。 「あるのよっ、それが。 ほらほら、ここ読んでみなよぅっっっ」 意気揚々と、その頁の一文を指さしこちらへ向ける。 見るとそこには、彼の生年月日…、没日…、そして家族構成。 いくら偉大なる魔導師といえども一人で生まれるなんて事が出来るはずは無い。 彼にもきちんとした両親がいる。そして…… ――リナ・マグナス―― その名前は、意外にもそんな場所へ記されていた。 「ね、いたでしょー?」 「………………」 「あのねーーーー、彼女はレイ・マグナススの妹で、助手でもあったんだって。 年の頃は14歳。容姿はやや幼く、しかし可憐で、透き通るような赤眼と栗色の毛が印象的な美人だってさ」 どこで調べたのかそんな事をとめどなく語るシェーラ。 「魔力の方も並外れていて、その力はほぼレイ・マグナスに匹敵する素質をもっていた…だってさ」 「……………………」 「ゼロスーーーーーっっっ、ねーーーー、その人??」 「………………………」 「…・・ゼロス?」 ………長い沈黙が体を縛り付けた。 喉の奥で呻るような音がし、額から汗が滴り落ちる。 開かれた瞳は、まるで乾ききった時のように血柱を上げ、唇は湿り尽くしていた。 体中に渡りきった電雷のような衝撃、目も眩む程の焦燥感。 そのすべてがゼロスの思考を困惑させた。 「……………した…」 「え?」 なんとか喉奥から絞り出された声は、蚊の音程に小さく酷く掠れていた。 「…………思い…出した…」 「……?」 重々しく吐かれたその言葉に、眉を潜めつつ問いかけるような瞳でこちらを見やるシェーラ。 渾身の力を振り絞り、なんとか正常な思考に戻そうとする。 体中の細胞が、自分を型造る物のすべてが、希代な程の嫌悪感を表す。 ――記憶・記憶・記憶…忘れていた記憶―― 「………思い出した……すべてっ」 さも辛そうに呟かれたその言葉に、少し狼狽えつつも尋ねやるシェーラ。 「……すべて?」 ――そう、すべて………―― 思い、静かに眼を閉じる。 眼裏には、今まで思い出せもしなかった…、今思い出した、一人の少女が映し出される。 その少女のあまりにも印象的な言葉……。 ――ねえ、私ね… この世で一番怖いお話はお伽話だとおもうの―― 「ねえ、私ね…… この世で一番怖いお話はお伽話だと思うのっ」 自分が恐れているはずの内容の話を、意気揚々と語り出す少女。 ――名を、リナ・マグナスといった。 希代の魔導師レイ・マグナスの妹で、この頃ではその腕をかわれ助手もしている。 ほんの2・3ヶ月前に知り合ったのだが、この少女の人なつっこさが原因か、すぐに昔なじみのような関係になってしまった…、とゼロスは半ばあきれつつ思った。 だが、魔族はこの少女と関わる事を嫌ってはいなかった。 いや、むしろ好いていたといっても過言では無いだろう。 それ程までにこの少女の性格…、人格とも言うべきか、は興味深いものだった。 とにかく今までに出会った人間の誰よりも優れたものを…、とりあえず汚点などは目を瞑るとして、持っているとゼロスは確信していた。 そして、魔力の方でも、意外な程に才能を発揮し、今では兄に追いつきそうな気配すら感じられる。 「ねーー、ゼロス聞いてるの?」 「あ、なんでしたっけ?」 「もーーーーーっっっ」 可愛らしく頬を膨らませるリナさん。 「だから、一番怖いのはお伽話よねって」 「あーーー…」 微かに耳に入っていたと思われるその言葉を思い起こすゼロス。 「なるほど。 けど、そんな話が怖いだなんて意外ですね」 最も、この少女に怖い物の有ること自体、ゼロスの予想から反していたのだ。 リナさんは…、なんというか精神の強い人ですからねぇ……。 「そんな話って……。 ふーーーーーー、まったくゼロスは何にも解っちゃいないんだからっっ」 大きくため息をつき、再びゼロスを見やるリナ。 「いいっ? お伽話程に残酷なお話はないのよっっっ シンデレラなんて、ガラスの靴が入らなかったお姉さんが、足を包丁か鋸かなんかで切って、無理矢理足にはめ込もうとしたり、ラプンシェルでは王子が塔から突き落とされて失明しちゃうしっ…」 そんな残虐非道な話を、とめどなく語り出すリナ。 話は尽きることなく、その口からは次々に新たなお伽事が呟かれてゆく。 「……はあ。 で、結局その中でも一番怖いのはなんなんですか?」 やや興奮気味のリナを落ち着かせるべく、話しに横割りするゼロス。 その問いに、少し思索してからきっぱりと答えを出すリナ。 「…白雪姫」 「……白雪姫?」 ――…リナね…。 ――白雪姫が…昔からずっと恐かったんですって… 頭の中に林檎と小人とお姫様が浮かび出される。 その情景はとてもほのぼのとしていて、この少女が怖がるような事は何一つ見あたらないと、魔族は思った。 「……何が怖いんです?」 話の細かな筋書きまで覚えてはいないが、結論的には典型的なハッピーエンドだった気がする。 「……だってさあ」 顔を俯かせ、さっきまで陽のように明るかった表情に影が掛かる。 まるで、少し何かに怯えたように、瞳にその色を表す。 「………本当に怖い話なのよっ お兄ちゃんに小さい頃、一回きり読んでもらっただけなんだけど……」 案外…、いや、かなり妹思いのお兄さんなんですね、あのお方は……。 そんな事を考え、一人納得したように頷くゼロス。 「白雪姫って、継母の手下の狩人に森につれて行かれるじゃない? …っで、結局狩人は継母の暗殺命令に背いて、白雪姫を逃がしてしまうんだけど… 殺したって証拠にするために、イノシシの心臓と肝臓をもって帰る訳よ。 そして、それを見たお后様は、歓喜を上げながらその心臓を喰らってしまうのっっ」 ――内蔵を、心臓を、 ――すべてもぎ取られた ――あなたの残骸 幼い子に聞かせるのを躊躇う程に、その内容は残酷だった。 確かに、恐ろしいかもしれない…。 いかに本当の子では無いにしろ、義理の娘の臓器を喰らう継母…。 「けどね、まだあるのよっっ……… あ゛っっっっ」 何かを思い出したように、ふいに立ち上がり、屋敷の方へむき直すリナ。 「どうしたんですか?」 「そろそろ研究の時間なのっ、また今度ねっっっ」 大きく手を振り、駆け足で屋敷へと向かうリナ。 そんな少女の後ろ姿を見送りつつ、ゼロスはふと思った。 僕がここへ使わされた理由は…、なんだろうか…? もちろん、ただ暇でこの地にやってきている訳ではない。 ゼロスとて一応獣神官という高位に付ける魔族なので、成すべき仕事は山程にある。 そして…、今回新たにゼラス様から出された指令…。 ――レイ・マグナス、および、リナ・マグナスを警護、監視せよ―― ――「それしか仕事してないの?」―― ――あの大戦でゼラスの部下ともあろうものが、たったそれだけを果たしただけなんて考えられない―― それきり、何も聞かされていない今回の仕事。 たかが人間を監視…は、ともかくとして守るとは…、それ程重要な人物には見えませんがねぇ……。何か腑に落ちないですね。 そんな疑問を胸に抱きつつ、ゼロスはいくらか可能性を考えてみる事にした。 まず…、レイ・マグナスが、ギガ・スレイブの発動に成功する…といった場合。 今現在、それ程熱を上げて研究している訳ではないらしいが、それでも彼はあの術を成功させる最も可能性の高い人物といえる。 彼が術の発動に成功すれば、それを利用し、この世を混沌へと導くことができ、 我々の目的を果たせる…という訳だ。 そして、その時点で必要なのがリナ・マグナス。 彼女を人質にとり、その命と引き替えに、ギガ・スレイブを発動させる。 まあ…この考えが一番合っているような気はするが…。 そして、現在進行されている赤眼の魔王様の復活に、関係のある人間という事か…。 しかし、それならばレイ・マグナスのみの警護をすればいいのでは…? レイ・マグナスが魔王様の一部であるという事は、現時点でほぼ間違いがない。 だからして、この考えも間違っている…と決めつけるのは早そうだ。 けれど、この説が正しい場合、リナ・マグナスについての言訳は出来ない。 レイ・マグナスに宿る魔王様を復活させる事が目的であれば、リナ・マグナスまで警護する理由は無い。 「……ま、いいか」 そこまで考えて、ゼロスは何事も無かったかのように、歩き出す。 これは彼の癖だった。いや…、この長い闇の生活での一種の自己防衛だったのかもしれない。 ――考え、考え、考え。 答えを見つけだしてしまったのなら、…自分はどういう行動に出るだろう? もちろん、主の命令には絶対服従。これは破ることはできない。 しかし、自分にも自我というものがある。それが、どんなに踏みつけることの出来るものだとしても限界がある…と、魔族は思った。 こんな考えを持っているのは、魔族の中でも自分だけなのかもしれない。 いや、だからこそこの思想は危険なのだ。捨ててしまわなければならないのだ。 そうしなければ、いつか自分は、主に逆らう時がきてしまう。 それは死だ。 魔族にとって、そんな考えを持つ者は排除すべき人物以外の何者でも無い。 けれど…、あの少女……。 あの子を見ていると、そんな考えがどこかへ吹き飛ぶようで……。 最も人間らしい少女…。 もしかしたら、自分は憧れているのかもしれない…。 あの下等な者達に…。 自分を滅ぼしかねない考えを、無理に壊そうとするかのように、魔族は身を潰すように闇へと渡る……。 「ふーーーん。 じゃあ、ゼロスはそのリナ・マグナスに会ったことあるんだ」 勝手にゼロスの心の内を読み、問いかけるシェーラ。 その尋ね事にまったく気が付かない様子のゼロス。 瞳を虚空へと漂わせ、空気のようにそこへ存在している。 「っていうかさーー、結局その指令の本当の目的…ってなんだったの?」 またも問いかけてはみるが、返事は無い。 シェーラは軽くため息をつき、再びゼロスの思考を視る事にした。 まるで王族か貴族のような豪華にあつらわれている絨毯、重く華々しいシャンデリア。 普段はほとんどが空席な、十あまりあると思われるダイニングセット。 どこから収入を得ているのか…、とにかくレイ・マグナスの屋敷は豪華極まりないものだった。 そういえば…、前にリナさんが言ってましたっけ…。 ――お兄ちゃんは贅沢な物が好きで困るわっ もっと倹約しなくちゃっ、え? お金はどうしてるかって? まあ、うちにはお兄ちゃんが開発したもので稼いだお金があるし。 なら、どうしてそんな事をいうのかって? だぁぁっって、もったいないじゃないっ、お金っっ―― なんとも彼女らしい意見だろう…。聞いたときは本気で心底感心したものである。 えーーと…、確か研究室は地下でしたね。 あの後、闇を渡り一度ゼラス様の元へ帰ろうかとも思ったのだが、どうにも気がすすまず、結局リナさんの後を追いかけてしまった…という訳だ。 まあ、指令の内容があの二人の警護なので、問題は無いんですけどね。 そうこうしているうちに、目的の場所へ着いたようだ。 入り組んだ屋敷の地下の一室…。そこに二人はいた。 実験の内容は…、どうやら何かの薬物を造っているようですねぇ…。 白衣を着用した二人の姿が、蝋燭の光に照らされ静かに浮かび上がる。 「もーーーっっ、お兄ちゃん今度は成功させてよねっ その薬売って、今月の食費と洋服代稼がなくちゃいけないんだからっっっ」 リナさんのその言葉に、ため息と共に苦笑するレイ・マグナス。 「ふーーーーん。リナ・マグナスってまるで商人みたいな考えの持ち主ねぇ」 そんな事を尋ねても返事は返ってこない。 だが、シェーラはそんな事は気にもとめず語り続ける。 「だけどさーーー、レイ・マグナスって結構妹思いだったんでしょ? っていうか、話聞いてる限りでは、めちゃめちゃ仲の良さそうな兄弟よねぇ。 たぶん、アタシの予想ではレイ・マグナスってば一生独身な気がするわっ。 それか政略結婚っ、理由は…。 理由はもちろん妹を愛してたからっっ」 そんな妄想を勝手に膨らませながら、次々にそれを口に出すシェーラ。 ゼロスとはいえば、相変わらず人形のようにそこへ座り込んでいる。 「あっ、ゼロスの心を視なくちゃっ 先気になるしっっっ」 そうしてまた、シェーラはゼロスの心へ入り込んだ…。 そんな二人の作業風景を見ているうちに、ゼロスはふとある事に気が付いた。 自分の視線が、意識の無いうちにリナ・マグナスを追いかけている…という事。 「…やばいですね」 ゼラス様に抱く気持ちと同じようなものが、リナ・マグナスにも生まれてしまったと…、 魔族は虚ろ気に眉を潜める。 けれど、それはまだ全然深いものなどではなかった。 今なら消せる…。 この思いを捨てる事が出来る内に…、彼女を守る任務から外れれば…。 もしくは、彼女を殺せば……。 自分は魔族でいられるのだと、そう確信した。 なんとか言い訳を考えて、ゼラス様に頼むしかないですね。 もし承諾されなかった時の答えは一つ……。彼女を僕の前から消せばいい……。 任務の意図から背く事にはなるが、自分が謀反する事よりどれ程良いことか…。 そう考え、ゼロスは闇を駆けようと身を委ねる。 ――刹那、 ぞわっっっ………。 自分と同類の、それもかなり強い力を持つ者が、闇を切り裂く違和感がゼロスを襲う。 …誰だ? 「……ふう、やっと君を利用する事が出来るよ」 耳で聞き取るだけならば、誰もが幼子だと思うような甲高い声……。 この存在をゼロスは嫌という程知っていた。 「くっ……魔族っ!??」 この人の周りでも魔族というのは珍しいのか、一歩後ずさり防備の体勢を整えるレイ・マグナス。 そんな行動を気にもとめず、その魔族はその可愛らしい顔に似合わず、皮肉な笑みを浮かべた。 「大正解。 一応、名前位は教えておくよ、…長いつきあいになるだろうし。 冥王…冥王フィブリゾ。 まあ…、よろしく………」 言って、すぐさま攻撃が開始される。 フィブリゾ様の一撃がレイ・マグナス達に直撃した…かと思われた。 が、それは実際は、レイ・マグナスの造りだした結界に弾かれ、消滅する。 その際生じた風圧により、屋敷の外分がほぼ解体する。 その時を見計らい、レイ・マグナスらは、おそらく少し前から唱えていたであろう、飛 空魔法によって一気に地上へと上がる。 フィブリゾは、すぐに追いかけはせず、ふいに空間の一角へと視線を寄せる。 「…ゼロス、いるんだろう?」 「はい」 その言葉に、一歩進み出て、恭しく片膝を突き頭を下げるゼロス。 「いままでご苦労だったね。 けど、今から指令の内容を一部かえるよ」 今回、この命令を直接下されたのはゼラス様だったが、元々この計画はゼラス様とフィブリゾ様、二人の共同作業だという話を聞いていたので、ゼロスはこの命令にも従わなければならないと考えた。 「…命令の変更ですか……」 「ああ…。 一度しか言わないから、よく聞いてくれよ。 新しい命令だ。 ――レイ・マグナスの内に眠る、シャブラニググゥ様を解放、そのための手伝い。 そして、リナ・マグナスの捕獲」 ……なるほど。 思い、ゼロスは先ほどの自分の考えを改めて思い返す。 ――そして、現在進行されている赤眼の魔王様の復活に、関係のある人間という事か…。 しかし、それならばレイ・マグナスのみの警護をすればいいのでは…? レイ・マグナスが魔王様の一部であるという事は、現時点でほぼ間違いがない。 だからして、この考えも間違っている…と決めつけるのは早そうだ。 けれど、この説が正しい場合、リナ・マグナスについての言訳は出来ない。 レイ・マグナスに宿る魔王様を復活させる事が目的であれば、リナ・マグナスまで警護する理由は無い。―― この説の中でも、唯一引っかかった箇所…。 ――リナ・マグナスまで警護する理由は無い―― その考えは正しいと思う。 この説が正しかった今、これはほぼ確実なものであった。 けれど、新しく命じられた指令。 ――リナ・マグナスの捕獲―― この計画…いや、別の計画かもしれないが、少なくともリナ・マグナスは魔族にとって 利用価値のある人物だということか…。 兄弟共々魔族の手に掛けられるとは…とんだ災難ですね、リナさん…。 「…わかりました」 「ああ…それから、これ……」 何か小さな小瓶に詰められた、紅い液体を放るフィブリゾ。 「さっき、あの二人が造っていた薬…、なかなか興味深い物だよ。 効力は………」 説明を促し、闇へと駆け出す二人の魔族……。 「なるほどーーー。 じゃあ、結局計画の目的はレイ・マグナスの魔王様化だったのねぇー。 あ、けどまだわかんない所があるわねっ すばりっ、リナ・マグナスの利用方法。 アタシの記憶では、そんな人間が何かの計画に使用された…。 なんて、無い…とおもったんだけど…?」 返事が無いと解っていながら、ついつい尋ねてしまうシェーラ。 またやっちゃった、と手で口を押さえ苦笑する。 「それにしても…、この計画、魔王様の復活をしくんだのって本当にフィブリゾ様だったのねー。」 前々から、そうは聞いていたが今初めて確信を持ったとでもいうように、深く何度も頷くシェーラ。 「あっ、いけないぃっっっ こんなことしてるうちに、ゼロスの回想はどんどん進んでるんだわっっ」 慌てて、再びゼロスの思想を視やるシェーラ。 どうやら、フィブリゾとレイ・マグナスが対峙している最中らしい…。 そんな情景を半ば、映画でも見るように覗き見るシェーラ…。 舞台は屋敷から、広々とした岩場へと移動していた。 森の中にぽっかりと創り出された、まるで戦いのために用意されたかのような場所。 そこで、ひとりの魔族と二人の人間が、体を宙に浮かべたままで向き合っていた。 ゼロスとは言えば、闇へと溶け込んだままで、その周囲を漂っていた。 理由は一つ、リナ・マグナス捕獲のため。 いざ戦いが始まれば、いくら強大な魔力を持っているとて、そこは人間。 高位魔族に勝てる訳がない。 だからといって、リナさんを捕獲するという指令に背く事も出来ない。 だから、頃合いを見計らい、なるべく時間を掛けずリナさんを捕らえるために ゼロスは今こうしているのである。 ――戦いが始まったら…、すぐにでも行動して方がいいですね。 でないと、フィブリゾ様の仕事に邪魔になるかもしれませんし…。 そうこうしている内に、何やら雰囲気の変わるのを感じた。 戦いが…はじまる。 そんな中、レイ・マグナスが何やらリナ・マグナスへ耳打ちをする。 作戦の打ち合わせか何かであろうか…? 何かを呟き、片手で妹を抱き寄せるレイ・マグナス。 次の瞬間…。 「…なっ」 まるで消えるようにして、その腕からいなくなるリナ・マグナス。 何故か満足気に微笑み、再びフィブリゾの方へ振り向くレイ・マグナス。 「……ふーーん。 なかなか美しい兄弟愛だね、レイ・マグナス。 妹を逃がすなんてさっ」 楽しげに笑い、蔑むような目で見やるフィブリゾ。 その言葉に、だだ冷酷な瞳を輝かせ、静かに呟くレイ・マグナス。 「なんとでもいえ。 あいつを、あいつを死なせる訳にはいかないのでね」 そうして、二つの強大な力が交差し始めた……。 リナはただ、その場へ座り込んでいた。 一瞬の事で…瞬きする程の事で、今の状況を理解するのには少し時間が掛かった。 兄に呟かれた言葉…、一つ一つをゆっくり思い返すリナ。 ――良く聞け、リナ―― 言われた時、作戦の内容を伝えられるのだと思って、心して聞く準備をした。 ――たぶん、俺は死ぬだろう―― 今の今まで、一度も兄の口から出たことの無い言葉。 この兄に、たぶん一番似つかわしく無いであろう呟き。 ――だから、お前は逃げろ―― 反論の隙を与えぬ兄。 ――幸せになれ―― …次の瞬間、私の身はこの山中へ飛ばされていた。 そこまで振り返り、ふいに勢い良く立ち上がるリナ。 腰に付いた土を払うこともせず、夢中で駆け出した。 ――戻らなくちゃっ………だってっ……… 「どこへ行くというのです、リナさん」 「!?」 ふいに目の前へ見知った人物が立ちふさがり、足を止めるリナ。 「ゼロス…?」 ――なんであんたがここに……―― 「まさか…、再びあの場所へ戻ると…でも?」 その言葉に、目を見開き、怒りに顔を歪ませるリナ。 「……あんたも仲間なの…ゼロス!?」 明らかに自分に憎しみを抱くリナ。 こんな時でも、人並みに心の痛む自分を呪うようにして、ゼロスは言葉を紡ぐ。 「はい」 その呟きに押さえられぬ程の怒りがこみ上げ、一気に力を解放させるリナ。 その威力に周りの木の葉が、そのすべてが吹き飛ばされる。 その中で何事も無かったかのように、平然と立ちつくすゼロス。 「………今はやめておくわ」 重々しく呟き、力を消滅させるリナ。 そうして、ゼロスの側を通り抜け、目的の場所へと駆け出すリナ。 「…あの薬なら、屋敷にはありませんよ…」 ゼロスの呟きに、足を止めこちらを振り返るリナ。 腰に下げている鞄から、一つの小瓶を取り出すゼロス。 紅く、紅く、赤く…、まるで血のような液体の入った小瓶…。 ――それはまるで血のように紅く、吸い込まれそうな魔力を持った毒―― まさしくそれは、今リナの求めている薬だった…。 「……返して…」 先程、兄と造りだした薬…。見間違うはずがない。 「……やっぱりこれを取りに行くつもりだったんですね…」 そんなゼロスの呟きに、静かに言葉を紡ぐリナ。 「……そうよ、だから返して」 「何のために?」 「……あなたには関係ないわ」 冷たく、冷静に吐かれたその言葉に、ゼロスは苦笑しつつ呟く。 「…そうですね。 では、勝手に僕が考えた意見を述べるとしましょう。 ……この薬は一種の仮死状態を引き起こす薬ですね」 ゼロスの解説に表情を微々とも変えず、ただ耳を傾けるリナ。 「この薬を…フィブリゾ様に飲ませ、仮死状態にするおつもりですか?」 ゼロスの問いに答える気は無い様子で、リナは一歩足を進める。 「……返して」 「………死にますよ」 「……返して」 「…再びあの地へ戻ったのなら…、 あなたは確実に死にます」 その言葉に、口の端を少し歪ませ、呟くリナ。 「……わかんないじゃない? もしかしたら、死なないかもしれないわ。 やってみなくちゃ、わからないわよっ」 そう言った彼女は、すっかりいつもの輝きを取り戻し、生き生きと笑う。 「それに…ね」 「それに……?」 「……お兄ちゃん、いってきますっ…て言わなかったから」 ふいに言葉の意味が読めなくなり、ゼロスは訝しげに眉を潜める。 「うちの…、きまりみたいなもんなの。 どこかに行くときは、必ず、いってきます」 ――……ある日、買い物へ行ったまま、帰ってこなかった両親……。 もう、大好きな人が死ぬのは嫌……。 一人になりたくない……。 ふいにリナの心が流れ込んでくる。 「……いってきます…ですか?」 「そう……、いってきます。 だって、いってきますがあったら… おかえりなさい、があるでしょう?」 ――その人が…帰ってくるという約束……。 生きて、生きて、ここに戻ってくるという安心……。 「…あのお方は、強いです。 あなたより…遙かに……」 なのに、あなたは… ――大切なものを守るために… 自らの危険も気にせず、駆けて、駆けて・駆けて……。 そのゼロスの言葉に、また軽やかに笑い、手を差し出すリナ。 「けど、奇跡が起こるかもしれないし。 もしかしたら、相手があきらめるかもしれない。 やっぱり、未来なんて誰にもわからないのよ。 だから……、あたしはあきらめない」 ――強く、強く、強く 言い放たれた言葉に、笑みと共にため息をつくゼロス。 「あなたは…強いですね」 「…とりあえず、喜んでいいのかしら?」 「ええ……」 ――しなやかに、しなやかな、強さ 心の強さ、本当の強さ…―― 「…ああ、そうだ」 ふいに何かを思いついたように、声を上げるリナ。 「もしも…もしよ。 万が一…よっ…万が一、あたしが死ぬ…なんて事があったら、 この薬を世に広めて欲しいの……」 「魔族に頼み事ですか?」 「いいじゃない、特別に聞いてよ」 そう言って、遙か遠くを見やるような目つきでその薬に視線を向けるリナ。 「…さっき言ってた事、当たりよ。 これは、人間を仮死状態に出来る薬」 そんな薬に、まともな利用価値があるのか疑問だが、とりあえず高値で裁けそうな品物ではあるとゼロスは思った。 「…すごいですね。 まるで、白雪姫の食べた林檎ですよ……」 その言葉に、小さく微笑み言葉を紡ぐリナ。 「…それも当たり。 ……前、話したわよね。あたしが白雪姫の話し、嫌いだって」 「…そうでしたね」 「…だから、お兄ちゃんが少しでも白雪姫に良い印象を持つように…って、 その薬造ったの。 けど……、こんな事になった今、一人でも多くの人にお兄ちゃんの存在を刻みたい…。 だから、お願いね」 ――どこまでも、どこまでも、どこまでも 「…強いですね、あなたは…」 「…さっきも聞いたわよっ」 光を放ちつつ、満面の笑みを浮かべる少女。 「そうだ、名前も教えておくわね。 その薬の名前っ。その名もすばりっっっ、Appieよっ」 ――「ちゃんと名前も決まってるのよ。 ――apple――っていうの」―― 本当にそのままのネーミーングだな…と思いつつ、魔族はその薬を見やる。 人を仮死状態にする薬…、魔族にとっては…? ――死…? ――それとも無効…? 「…ふう…。 しょうがないですね」 ゼロスは、その薬をリナの前へ差し出す。 「…ありがとっ、ゼロス」 その薬を受け取り、大切そうにしまい込むリナ。 それから、顔を上げ、ゼロスの方を見やる。 「止めないのね」 「ええ、どうせ聞かないでしょ、リナさんは」 肩を竦め、微かに微笑むゼロス。 ――命令に背くことに…なるんでしょうねぇ…―― そんな事を思いつつ、ゼロスは大きくため息をついた。 リナは呪文を唱え、空を掛ける準備をする。 「レビテーションっっっ」 空へと舞、下を見下ろすリナ。 「ゼロスーーーーーっっっ」 そのかけ声に、太陽の陽を除けるように手を翳し上を見やるゼロス。 その光を受け金色に流れる髪を携え、少女は叫んだ。 「あたしね、あんたの事すきよ。 たぶんっ、お兄ちゃんよりねっっっっ」 そう、ほんのりと頬を赤らめながら、どこまでも明るく微笑む少女。 その言葉に、優しく笑い、風に声を促すように言うゼロス。 「…もっと、違う形で会いたかったですね…」 あらためて、種族の違いの重さを痛感しつつ、魔族は少女の駆けた先をいつまでも、 いつまでも、眺め、続けた……。 第四章・真実の始まり 美しい過去がある 血塗られた出会いがある そして 待ち受ける真実の扉 ――アナタニ真実ト向キ合ウ勇気ガアリマスカ?―― 「ゼラス様、これでよろしいのですか?」 下級とも高位とも言えない、人型を保てる程度の力を持った魔族が、ゼラスに声を掛ける。片膝を突き、どこまでも腰を低くしゼラスを見やる。 その魔族の後ろに、積み重ねられている無数の死体、人の死骸。 それでも、その死体のみな一様に、まるで深い眠りについているかのような、やすらかな表情なのは、それなりの理由があった。 「……少し…時間が掛かったわね」 「…すみません。 けれど…三時間以内という事だったので…」 「…まあ、いいわ。 ……で、あれは?」 冷ややかに視線を向けるゼラス。 魔族は慌ててふくころから小瓶を取り出し、足下へ置く。 「お約束どおり、3/1も使ってはおりません」 「…そう、もう戻っていいわ」 その言葉に、軽く会釈をし闇へと身を溶かす魔族。 そうして、ゆっくりと足を進め、死骸を、そのすべてを魔力によって、とある場所へと運び出すゼラス。 「…この分だと、食事中に人間達が起きてしまうわねぇ…… まあ、負の感情が貰えるからいい…か」 すべてを飛ばし、ふとため息をつくゼラス。そうして、足下へ残された小瓶を拾い上げる。 ――毒・秘薬・毒・毒・毒………―― 人間を仮死状態にする薬。そう、仮死状態………に。 ――「人間であれば一差しするだけで死に追いやる位の効き目があるわ」―― 「…別に嘘ではないわよね。 確かに…一度は死ぬのだから……」 ――「あたしが新しく作った砒素」―― 「…こっちは…嘘………か」 赤く、赤く、赤く、何処までも深く、美しい、毒………。 握りしめていたその手に、無意識の内に力を込めるゼラス。 「……今すぐにでも……、消してしまいたい位だわ………」 そして、静かに、静かに身を…飛ばす。 ――次に具現した場所は地下室だった。 何処か薄暗く、何故か現な感じさえする場所。 そしてその陰湿さをさらに強調するかのように、流れ続ける物語…。 ――…鏡よ…鏡…世界で一番…美しいのは誰?―― ただ、淡々と永遠に巡る…… ――……それは…白雪姫でございます……―― そんなものを気にも留めない様子で、進みゆくゼラス。 ゼラスは部屋の中央に視線を向け、そののち、それを囲むものへと移した。 先程飛ばした死体の山が、部屋の周りを取り囲んでいる、溶媒の水路へと浸かっている。 死臭も血も、何一つないその死骸たちが、ただ虚ろげに漂っている。 再び、部屋の中央にある、水晶の棺をみやる。 その棺からは何百ともいえる回線が、いや、正確にいえば棺からではなくその中の物から、水路へ向かって繋ぎ出ていた。 水晶の棺は、中に詰められた無数の白雪色の花と、周りに備えられた数個の明かりによって、その暗がりの中唯一光を放っていた。 その妖しげな光に吸い込まれるように、ゼラスはその前へと足を進める。 棺の前へと立ち、艶やかに微笑む。 「………もう少しよ……もう…少しで………」 誰にとでもなく呟き、軽く指を鳴らすゼラス。 ――ぱちんっ…… それが何かの合図でもあったかのように、その部屋がゆっくりと始動しはじめる。 周りの水路が、一気に中心の棺へと水を流し始める。 それと共に人間も、部屋中央へと、左右の水路によって動きはじめる。 ちゃぷちゃぷと、心地よい水の響きとともに、百余りの死骸が浮かび出る。 「…………うぅん……」 その中で、何処からかゼラスのものでない声が、静かに響く。 ――……三時間たった…か。 もう目覚め始める頃…ね……―― 一人、一人と、眼を覚まし始める人間。 ただ、ぼんやりと、その場所を確認するかのように、眼を数回瞬かせる人間達。 のち、異変に気が付き、数人がこの現状から逃れようと、はい上がろうとする。 ――が、 思うように力が入らず、水へと流されていく。 大勢の人間の一人一人の小さな叫び。 「…ちょっ…なんなのここはぁつっ」 「ここから出してくれっっっ」 「俺は…街にいたはずなのにっっ、どうしてこんな所にっ」 その間も、静かに平然と奏でられる物語…。 ――…白雪姫を…殺してきなさい…―― 「…………ちょっっ!!」 その内の何人かが、その前にそびえ立つ機械に気が付き、たまらず声を上げる。 「…なっっ!! ………いやぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!」 大きな粉砕機のようなものに巻き込まれ、骨まで粉々に砕かれる。 次々に機械に流れ込む人間達。 逃れようとしても、その溶媒特有の資質によって、体が動かなくなっていた。 「やめろぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっっっっっっっ!!」 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」 心の底から、外へと出された甲高い、恐怖への叫び……。 ――悲鳴・苦痛・悲鳴・悲鳴―― その体の潰れる瞬間に弾ける、大量の血、血・血……。 ――ごりっ…ごり……ごり……―― 石を二つ擦りあうかのような、鈍い衝撃音。 「いやぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!」 ――ぐちゃ…ぐちゃ……ぐちゃ…………―― 細胞が潰れる、お世辞にも心地よいとはいえない奇怪な濁音。 まるで…地獄絵……。 人間が、塵のように無惨に引きちぎられていく。 ――…そして、その証拠に…あの姫の心臓を持ち帰るのです……―― そんな情景の中で、ただ棺を見つめ、しずかに言葉を紡ぐゼラス…。 「……もうすぐです…… 魔王様…………」 そんな惨劇の中、それでも棺は眩く…輝き続けていた……。 どこまでも、……妖しく・妖しく・妖しく……… 「……………あ……」 「…ゼロス?」 ふいに我を取り返し、ぼんやりとまるで夢から目覚めた時のように呟くゼロス。 その心へと入っていたシェーラが、明るく声を掛ける。 「あーーーーっっ、ゼロス。 気が付いたんだーーーーっっっ」 その声に、先程まで見ていた自分の過去を思い返す。 ――失われていた・大切な思い出……無くしていた過去………―― けれど、そこから先は視る事が出来なかった…。 振り返る事が出来たのは、その場所だけ。 その先の…、彼女の事は解らない……。 けれど…… 「たぶん………死んでしまったのでしょうね………」 やはり彼女も人間で……、魔族なんかと対峙すれば死は確実なのだ…。 「そうねぇ…… あれだけの魔力を持っていても…、フィブリゾ様が相手じゃねぇ……」 続けてゼロスの心を読んでいたシェーラが、たまらず口を挟む。 いつもの事なので、何も言わず、ゼロスは自分に言い聞かせるようにしてそう、呟いた。 「………そうですね……」 ――彼女は死んだのだ。 彼女と同じく、リナという名の少女。 容姿も似ていれば、性格も似ていた 昔に愛した人間……。 けれど……、もう一方の少女も死んでしまった今…。 あまりこだわる事ではないのかもしれない…。 これ以上検索するのはよそう……。美しいままの…、過去の出来事のままでしまっておこう……そう、心に留める。 けれど…気に掛かる事はあった。 「けどさーーー、なんでそんな重大な事、忘れてたの?」 ――違う。 忘れていたのではない。 これは………誰かによって故意に削られた記憶………。 封じられたのだ、何者かの手によって………。 「………そっちの方が気になりますね……」 誰に、何のために、この記憶が封じられていたのか……。 ゼラス様は…知っているでしょうね、けれど…… はっきりいって、あのお方が正直に答えてくれるとは思えない。 それに……主を困らせたくはないですしね………。 あとは……フィブリゾ様です…か。 あの場にいたあの人なら何かを知っている気がしてならなかった。 もしかしたら…フィブリゾ様が術を掛けたのかもしれませんし…。 真実を確かめるため…、立ち上がり、闇を駆けようとするゼロス。 「あっ…ゼロス」 肩越しに掛けられた声に、ゆっくりと振り向き、シェーラと向かうゼロス。 「いってらっしゃーいっ」 その言葉に、少女の痛切な思いが胸を過ぎり、苦笑するゼロス。 ――その人が…帰ってくるという約束……。 生きて、生きて、ここに戻ってくるという安心……―― 「…いってきます………」 寂しさを携えた瞳で、魔族は静かに、そう呟いた………。 相変わらず、聖都市と呼ぶにふさわしい場所だと、彼は思った。 ここに来るのは、今の自分にとってあまりいい事ではなかった。 ここは……聖の力が強すぎる……。 力を微弱させている自分にとっては、少なからずとも苦痛を受ける場所であった。 けれど…、あの少女を抜かす事は出来ない。 思い、街の中心へ建つ、その王城を見上げる。 月明かりで、金に照らされたその建物はとても美しかった。 少し息を整え、闇を渡る魔族。 着いた先は王城の、その中。 いつもながら閑静で、それでいて活気のある、その城の中を姿を消したままで、 少女の波長のする方向へと渡る。 中庭の、貴族の家によくみられる噴水に腰掛けている少女を発見する。 その噴水もまた、月に照らされ、鮮やかに輝いていた。 人気のなく、ひっそりたしたその場所で、何やら考えをしている様子の少女…。 「リナさん………」 その少女…アメリアが静かに、そう呟いた。 こんな月の夜は、どうしても、彼女が死んだ日の事を思い出してしまう…。 その思い出が大切すぎるため…、今でも鮮明に頭を過ぎる…、その時の情景…。 あのあと、自分は一年程塞ぎがちになっていたと…おもう。 毎晩枕を涙で濡らしていた。 悲しかった・悲しかった・悲しかった……けれど ――悔しい その思いの方が強かった。悔しかった。 だから、泣いた。 自分の無力さに、あなたの死に………。 「こんな事したら…、あなたに怒られるかもしれないね…」 月を見上げたままで、柔らかに、少女が呟く。 「…けど、あたし決めたんです……。 明日、城を出ます。 そして…、あなたを殺した人を必ず見つけだすんです……」 ――なにいってんの、アメリアっ 馬鹿なこといってんじゃないわよっっっ―― 「……って、いうでしょうね、リナさん……」 「……本当に馬鹿…だねぇ」 ふいに呟かれたその言葉に、少女は慌てて立ち上がった。 ――しかし、 正確には、立ち上がる事は出来なかった。 体がまるで固定されたかのように、そこから動かす事が出来ない。 …魔法をかけられたっっ そう思った時はもう手遅れだった。 「決意は素晴らしいけど…、無駄だと思うよ、そんなこと…」 その少女の真後ろに立ち、頭へ手を翳す。 ……殺されるっっ 思い、抵抗しようとするが、やはり体は動かない。 ……誰…? ……こいつが…リナさんを殺した犯人……!?? 声に出したい事がいくつもあったが、それも叶わない。 「ああ…、それは違うよ」 …? ……心を読まれている? 「自分は、リナ・インバースを殺してはいない……」 そうして、その手をゆっくりと頭へと乗せられる。 ――瞬間、 少女の意識は遠ざかり、眠るようにして、芝生へ倒れ込む。 ばさっ…… 草の上へ空気と共に沈みゆくアメリア。 そんな少女を上から見下し、静かに楽しげに呟く。 「………おやすみ、セイルーンのお姫様」 そうして、月明かりに照らされたままで、少女は穏やかに眠り…続けた。 「…あれ?」 先日駆けてきた場所へと、再び姿を現すゼロス。 フィブリゾ様の波長を辿ったら…セイルーンに来てしまったようですね…。 けれど…、どうやら一足違いのようですね。 再び波長を巡ってみれば、もうすでに、ここにはあの方はいない。 仕方がない…、また辿ってみますか……。 そう思い、闇へ駆けようとするゼロス。 しかし、暗がりの中に人間の気配を感じ、足を留める。 不思議に思い、身を隠したままで、その付近へと近寄るゼロス。 次第にその人物達の会話の聞こえる程に、近くへ来ていた。 見れば、みな一様に医者と解る格好をしており、手には医療器具を携えていた。 ――こんな時間に…、だれかの病気が急変でもしたんでしょうかね……―― 「ああっ…早くいかなければっっっっ」 「ええ、そうですな。 うちら街の医師にまでお呼びが掛かるなんて…よっぽどの事ですよっ」 「それにしても…、最近元気になられたと聞いていたから、安心していたのに…」 そう口々に言い合い、手早く色々な支度を済ませて行く医師達。 「本当ですなぁ…。 まさか、アメリア様が…また倒れられるなど……」 ――…っ……―― 何か嫌な予感がし、ゼロスはその場から離れた。 アメリアさんが倒れた……… それは…、普通の事なのかもしれない、何か過労か、その辺の事情で体を壊しただけなのかもしれない…けれど…… ――…フィブリゾ様が……、先程までここにいたというのは…まぎれもない事実……―― あの、魔族とは正反対の位置にいる姫が、魔族の手に掛かったような気がしてならなくて、ゼロスは思い当たるふしへと、駆けて、いった……。 魔族は、闇の中で、静かに心の内を巡っていた。 いつでも、自分の中に真実をみつける事は難しいのだと……。 自分の真実は、決して万人の真事ではないのだと……。 そう、思いつつも、魔族は今の過ち…嫌、自分にとってそれは真なのだ。真実なのだ。 他人からみれば過ちかもしれないが、自分にとっては紛れもない真実。 本当の事。 自分の望……。 だから、これでいいのだ。 自分は決して間違ってはいないのだ……。 そう、いいきかせるようにして、魔族はゆっくりと瞳を閉じた……。 ゼルガディスの頭を、何故かあの頃の情景が思い浮かぶ。 あの、仲間と共に生死を賭けて戦ったあの頃……。 今思えば、あの時が自分の中での最良の時だったのかもしれないと、彼はふと思った。 こんな時、巡る思いとは…たいていがそういう物であろう……。 あるいは、思い続けていたのかもしれない…。 あの頃へ帰りたいと…。 心の満ちていた、あの日へ戻りたいと。 だが、そんなことは叶うはずもなく…、今、自分は、そんな事を考える余裕もないのである。 何故こんな事になったのだろうか…? 任務を終え、宿に戻る途中の出来事だった。 いささか虚ろ気な気分のまま、一人街道を歩いていた。 そして、いきなり何者かに術を掛けられた…。 たぶんシャドウスナップと、同じ様な効力のもので…、今自分の体は完全に動かなかった。 後ろを振り返れば、自分を殺そうとしている人物を拝む事が出来るだろう…。 そう、今彼は術に縛られ、その場に立ちつくしていた。 背後には、その術を掛けたであろう、気配の読みとる事の出来ないものがいる。 ――…死ぬのか…俺は……―― うしろの人物が、ゆっくり動作するのが空気の振動で解る。 …すこし荒い息づかいと共に、息を飲み込む音が聞こえる。 ふいに、軽く頭に手を当てられる。 …何だっ!? ――とんっ……… こずくようにして、叩かれたその瞬間、まるで糸の切れた人形のように、その場に倒れ込むゼルガディス。 静かに、静かに、静かに……。 苦痛も、悲しみも無いままに訪れた暗闇……。 ――どさっ… 敷き詰められた石のタイルの上へ、倒れるゼルガディス。 「……これで、二人目……か」 街路路の、その殺到とした情景の中、朽ちたゼルを遠く眺め、呟く……。 「…よい夢を……、合成獣君……」 皮肉たっぷりに、そう言い放ち、その場所を後にする……。 「……………おかしいですね」 ゼロスは、瞳を鋭く光らせたままで、闇に視線を落とす。 さすがに夜も遅いだけあって、街はすっかり静寂を取り戻していた。 人のざわめきも、足音も、何もないその空間で、ゼロスはある人物を待ち受けていた。 ここは、サイラーグに程近い医療都市。 ガウリィ・ガブリエフが療養を取っている場所である。 入り組んだその地形の中で、昼間の記憶を辿り、その屋敷まで巡り着いた。 つい半刻程前に訪れた、シルフィールの叔父の屋敷。 その前の街灯の下、ゼロスは屋敷を見つめながら、思考を巡る…。 ――もし、アメリアさんが倒れた事と、魔族が関係しているのならば…… 「…次は、ガウリィさんだと思ったんですけど……」 感が外れていたのかもしれない…。 それとも、魔族は一切関与していないのかもしれない……。 何はともあれ、ここにあの方の気配の訪れていない事は確かである。 ……もしや…、ゼルガディスさんの所へ……? その考えを確かなものにすべく、魔族は闇を駆ける。 ――……! 急いで、その闇から抜けだし、再び屋敷の前へと出現する。 そして、また、闇を具現させそこへ入り込む。 目的地は、屋敷の中…、ガウリィ・ガブリエフの主寝室っっ 駆け、殆ど一瞬のうちに、その部屋へと現れるゼロス。 部屋りほぼ隅へ出現するゼロス。 その事を予期していたかのような、部屋の人物の対応。 見れば、扉のすぐ近くで、シルフィールが眠るようにして倒れ込んでいる。 特に外傷はなく、その顔にも悲観の色は浮かんでいない。 けれど……、ゼロスの視線の先にあるのは、それではなく…。 ベットの上へ胸ぐらを掴まれ、力無く、その人物…いや、魔族と対峙するガウリィの姿。 そう、魔族と。 「………フィブリゾ様………」 「…やあ、ゼロス。 …随分早かったじゃない?」 そう、余裕満面に言って見せるフィブリゾ。 ゼロスが探していた、その人物である。 「………何をしておいでですか?」 「……何って、まあ色々」 そう言い、楽しげに笑みを浮かべる。 ふいに、手を離され、ガウリィの体はベットへ叩き付けられる。 「……くっ………」 別に強くもない衝撃だったが、それでも力の弱っている彼には、十分こたえたらしい。 うめき声を上げ、苦しげに、息を切らしながらそこへ倒れ込む。 ――……意識が回復したようですね……―― その事実にいささか安心しながら、ゼロスは先程の疑惑をといてみる事にした。 「……アメリアさんにも、何か危害をくわえましたか…?」 「…なぁんだ、もう知ってるの?」 それに、まるで子供のように、無邪気に答えるフィブリゾ。 「そうだよ。 僕がやったんだ。 ついでに…あの合成獣君にもね…」 「………なんのために…、それらの人間を………」 その言葉にますます声を上げ嘲け笑うフィブリゾ。 「…なんのため? …いいよっ、おしえてあげるよっっ」 笑いと、叫びと、悲観の色…そのすべてが混ざり合った…、不思議な言だった。 それを、分け入るようにして呟かれた言葉。 「………ゼロス……、リナを……」 額に汗をかき、今にも消えそうなその声で、小さく小さく呟くガウリィ。 「…リナは……死んでない………。 ……連れて…いかれたんだ…………」 それこそが、自分の聞きたかった答えだと、ゼロスは思った。 やはり、リナさんは死んでいない。 「……その現場を…目撃した俺は…… 魔法によって…心を封じられていたん……だ……」 なるほど…、口封じというやつですか……。 けれど…まだ疑問は残っていた。 ――リナさんは…連れて行かれた? 一体……… 「誰に…っ」 その言葉と同じ時に、フィブリゾが駆ける。 そうして、一瞬の内にガウリィの背後へと回り、頭へと手を乗せる。 触れた瞬間に、ガウリィは事切れたように、再びベットへと落ちてゆく…。 …どさっ………… 倒れ、動かなくなるガウリィ。 部屋全体が静寂に満ち、生気の欠片もが失われて行く。 軽い足取りでベットから飛び降り、こちらへ向き直るフィブリゾ。 その情景に虚ろ気に、言葉を紡ぐゼロス。 「……殺したのですか……?」 「………いいや。 ただね。 彼から、あの娘の記憶を消し去ったんだ」 そんな不確定な単語を使ったとしても、一瞬で頭に浮かび来る一人の少女。 「……リナ・インバース……の記憶をですか?」 そう…、リナさんの記憶だ。確実に……。 「…おや、鋭いね。 そうだよ。 他のやつらも同じさ…… 彼女の元仲間から、リナ・インバースに関する記憶だけを消したんだ」 ……? 記憶を消す…? 何故この方は、そんな回りくどい事をしたのだろう……? 殺してしまう方が簡単ではないのか……? そんなゼロスを尻目に、苦しげに息をつき、言葉を紡ぐフィブリゾ。 「……ああ……、そろそろ限界かな……」 自分の手を見やり、不可解な事を呟くフィブリゾ。 目を細め、息を荒立てながらも、言葉は尽きない。 「…本当は、殺してしまいたかったんだけどね。 あいにく…、そんな力は残っていないんだ。 ゼロス、僕はもうすぐ滅ぶよ」 「……?」 言葉のあまりの突然さに、首を傾げる他なくて、ゼロスはただ、フィブリゾの話すのを待った。 「ああ……あと、君の一部の記憶を消したのも僕だよ。 それから…、リナ・インバースを連れ去ったのも僕。 理由……は、自分で思い出すんだね」 まるで、その術を説く気は無いとでも言うように、楽しげに言い放つフィブ。 「ああ……もう、だめみたいだ」 見ると、手の先から、次第に薄れてゆく、フィブリゾの姿。 「…なっ……!?」 「そんなに驚く事はないだろう?」 確かに……。 出会った時から、この方は何処か様子が変だった。 以前よりも数段に弱い魔力…、何処か疑似出的な言。 そんな中を、ただ楽しげに、まるで、自分の滅びに喜びを感じるかのような表情をするフィブリゾ。 ゼロスには、まだ尋ねたい事があった。 「っ… リナ・インバースは今何処にっ」 記憶を消した理由も知りたかったが、それは答えてくれそうにも無かった。 だから、次に浮かんだ質問をした。 …リナさんが生きている……、ならば今何処に………。 「……ヒントは…白雪姫。 そう言ってるだろう?」 ――地下室へ流れていた… 止めどないあの物語………―― そう、呟いている最中も、フィブリゾの体は指先から、足の先から、細胞の一つ一つが 白い羽へと変わり、無くなって行く。 風がまきおこり、その羽が踊るようにして空を舞う。 ――刹那… 微量に流れ込んだ魔力……。 「…っ」 「ゼロス………」 ほぼ体の半分を変化させながらも、フィブリゾは言葉を紡いだ。 「……それは僕からのプレゼントだよ……」 ――バサバサバサ…… 胸・首……まるで蝶の舞うときのように、優雅に駆ける羽達……。 「……お姫様を目覚めさせるのは…… 王子の役目だから…ねぇ…………」 ――バサバサバサバサッ………… …髪の、口の、瞳の……すべてが羽へと変わる……。 その一つ一つが命を持っているかのように、辺りを駆ける巡る翼………。 その中心で、今までその魔族の存在していた場所を見つめ、立ちすくむゼロス。 肩に、腕に、足下に… その翼たちが落ちて・落ちて…落ちて……… ――それが、冥王フィブリゾの気配を感じることの出来た…最後であった。 …フィブリゾが消えた……。 その事実を確かめながら、魔族は深くため息をつく。 たぶん…ゼロスは真実を知るのだろう…。 廻り始める運命に…、いや、これでも遅いのだろう…、そう遅すぎた。 この戯けた計画に…終止符をうつときがきたのだ…… けれど…… それでも、自分のした事は正しいのだと、魔族は、信じて疑わないのだった…。 ゼロスは、すべてを確かめるために、その場所へと向かっていた。 駆けて・駆けて・駆けて……。 辿り着く先には真実があるのだ……。 そうして…、視界が開け、目的の場所へ足を踏み入れる。 屋敷へと入り込み、ある人物を探す。 扉を開き、その人物のいるであろう部屋へと入り込む。 ――そう……… 「…グラウ様…………」 後ろから声を掛けられ、いつもと変わらぬ冷静な声で、呟くグラウ。 「……よう、ゼロス……」 その返事に曖昧に笑みを返し、言葉を紡ぐゼロス。 そう……グラウ・シェラーの元へ…。 すべての真実が収束される時だと…、グラウは目を細め儚げに笑う。 「何故……?」 ゼロスの声が部屋の中で、鈴のように響きわたる。 その部屋の空気までもが、長年の答えを待ちわびるかのように穏やかに漂っていた。 「……何故…フィブリゾ様…いや…」 言いかけて、それを正しい答えに呟き直すゼロス。 それに真っ直ぐに向き合い、沈黙し続けるグラウ。 「何故…… フィブリゾ様のコピーをお造りになったのですか……?」 ――あの時。 フィブリゾ様の滅ぶ、最後の瞬間……。 フィブリゾ様は僕に術を掛けた。 その時感じた、魔力の源。 それは何故か…、グラウ様の力であった……。 本物のフィブリゾ様であれば、魔力を行使する時、冥王の力が流れ込んでくるはずである。 ……嫌、もっと前に気付くべきだったのだ……。 リナさんの死んだあの日に。 フィブリゾ様の現れたあの日に。 それがコピーであるという事を……。 何故、そんな簡単な事が察知できなかったのか…? とにかく、いえる事はそのコピーを造ったのが、グラウ様だという事だけであった。 「…やれやれ。 けど、気付くのが少し遅かったじゃないか、ゼロス? まあ…、そうなるように、まやかしの術を掛けておいたのも事実だがな……」 そう言い放ち、ふいに足を組直すグラウ。 ゼロスと向かい会ったままで、軽く髪をかき上げる。 「それにしても……。 フィブリゾの性格に酷使させて造ったのは…、間違いだったな……」 苦笑し、軽くため息をつきながら、言葉を紡ぐグラウ。 「指令した事は、仲間の記憶を消せ…って事だけだったのに… ゼロスに、色々ヒントまで出したみたいだしな…」 言って、ゼロスに視線を向けるグラウ。 その表情はなんだかとても微妙なものだった。 「…まあ、それもいいか……。 もしかしたら…俺の心があいつに流れ込んだのかもしれんしな…。 この計画に反対な……俺の心に…」 ――そう、この計画に同意は出来ない。 こんな事のために使用するのなら…、フィブリゾも進呈しなかったであろう…。 しかし、ゼラスは何も言わなかった。 だから………。 「で…なんだったか……… ああ、フィブリゾを造った意味…ね」 ゼロスは、その言葉に静かに答えの出るのを待っていた。 ――そう、何故フィブリゾ様を造ったのか……。 「……造らされた…といった方が正しいかな? …この事件の首謀者に、ね……」 その言葉に、少しの間、瞳をかわしあい、対峙するゼロスとグラウ。 鋭い視線がお互いへと突き刺さり、沈黙が流れる。 「解っているんだろう?」 「……ええ」 言って、静かに、冷淡に答えるゼロス。 「……なら、話しは早い。 そいつに、自分の手足となれるコピーをつくれ…と頼まれた。 ただ、それだけだよ」 手足となる者が欲しい…、それは、自分の部下にも頼むことの出来ない事を やらせるものを必要としたから……。 「フィブリゾの形にしたのは、あいつの要望だったからだ……。 別になんでも良かったんだがな…。 気まぐれなのは、いつもの事だろう?」 「……そうですね」 あのお方の気まぐれは、いつでも僕を困らせる……。 そして…今回も……。 「…どうして、その方は、自分で造らなかったのですか? コピーを…… 自分で造った方がはるかに早いのに……」 その言葉に、小さく笑い、何故か優しげに語るグラウ。 「…さあな。 力を使いすぎているからかもしれない……。 コピーを造るのは多大な魔力を用する…だから…」 …そんな大きな仕事を…、魔力を、他のもののために使用したグラウ様…。 ――この方は…あのひとを愛している……。 いつでも、いつの時も……。 慈しむ心、愛する心は…、歪み…曲がって…… そして…自分を、自らの身を滅ぼしてゆく……。 けれど…、それは真実。 自らの願い、真の願い。 「…だから、俺に頼んだのかもな……」 「…そうですか………」 「……他に質問は? ………とは言っても、消された記憶も取り戻したみたいだしな」 ――そう フィブリゾ様が、滅ぶ直前、僕に使った術……。 記憶を解放する魔法……。 僕は、すべてを、すべてを、すべてを…。 過去の思い出、あの日の出来事……少女の行方……。 そのすべてを、思い返した……。 「…いえ、もう………」 「そうか……」 呟き、深く一礼し、ゆっくりと扉へ足を向けるゼロス。 「…ゼロス」 呼び止められ、振り向かずに、そこへ立ち止まるゼロス。 一間置き、酷く表情の無い顔で、それでも廻りを囲む空気だけは優しく…、グラウは呟いた。 「…俺は、自分が間違いを侵したとは思わない…。 これが…、俺の望んだ道だからな……。 だから、 お前もお前の望む道を行け……」 その言葉に、頷きも声も出さずに…、ただ、扉から出てゆくゼロス…。 そんなゼロスを見やりながら、グラウは苦々しげに呟く。 「…そうだ これは…俺の望んだ道だ……」 そう、静かに言い聞かせ……、瞳を瞑る魔族……。 後にはただ……いいようの無い晴れ晴れしさだけが…辺りを包み込んでいた……。 第五章・終結の始まり 終わらせたくない時がある 隠しておきたい心がある けれど 始まりゆく破滅への道 アナタニソレヲ歩ム勇気ガアリマスカ? フィブリゾ様の最後に使った術…。 あれは、記憶を解放させるものだった……。 ――「ああ……あと、君の一部の記憶を消したのも僕だよ。 理由……は、自分で思い出すんだね」―― そんな事を言っておきながら、記憶を開花させる辺り… あの方の人格が滲みでていると、ゼロスは思わずにいられなかった。 思い起こしたのは、この前視ることの出来なかった、その先の記憶…。 ――あの後 そう。 彼女が戦地へ向かうのを見届けた後……。 僕はしばらくそのまま、漂うようにそこへ佇んでいた。 たぶん、その場所へ掛けて行きたくなかったからだと思う。 彼女の死を見たくなかった。 リナ・マグナスの死を直視したくなかった…。 彼女の死を手助けしたくなかった。 だから、無意識のうちにそうしていたのだと思う…。 それから幾時たったのか、あたりはすっかり暗くなり…。 森は昼間の数倍も静けさを漂わせていた。 「…そろそろ…戻りますか………」 呟き、重い足取りで闇を駈けた。 戻り、そこへ足をおろすゼロス。 「……ただいまもどりました」 しかし、その場所に主の姿は見えなかった。 普段であれば、ここに主の姿が見えるはずなのであるが……。 空席である机に目を通しながら、ゼロスは主を探す。 中央の部屋を離れ、庭へ足を踏み入れる。 整備された花々に囲まれた、質素な造りの噴水の方を見やる。 「ここにもいませんか……」 ゼラス様のお気に入りの場所の一つである、そこにも、姿は無い。 まったく…何処にいらっしゃるんだか……。 「もしかして…フィブリゾ様の所でしょうか…?」 計画は実行された訳ですし……。 思い、フィブリゾの屋敷へと飛ぼうとしたその瞬間…。 ――ゼロス…? 「ゼラス様……?」 ふいに頭へと主の声が流れ込み、ゼロスはその声の発信源を探る。 ――今、地下室にいるの…… ちょっときてくれないかしら……―― 「わかりました」 そんな部屋…ありましたっけ…? そんな疑問を抱えつつも、ゼロスはとりあえず下へ翔てみる事にした。 その間も考えてはみたが、そんな部屋…昨日まで見たことも聞いたこともない。 「…ゼラス様が…今日造ったのでしょうかね……」 あの気まぐれな主なら、それも十分ありえる事だと、ゼロスは納得し下へ降りる。 事実、地下室は確かにそこにあった。 ゼロスは開け放たれた扉から中へと入る。 そこはとても暗く、蝋燭の光でかろうじて人影だけは確認できた。 慎重に足を進め、主の元へ向かう。 暗闇でよく見えないが、どうやら部屋の中に川のような、水路のようなものがあるらしい…。 ぴちゃ…ぴちゃ…ぴちゃ…… 水が鬩ぎ合う音が微かに耳につく。 ゼラス様は部屋のほぼ真ん中の、何か柱の様なものの側へ佇んでいた。 その柱のようなものは、微かな明かりで、それが透明なのがわかる位で他にはそれが 何であるか証明するものなど、何も無かった。 「ゼロス…」 ふと、ゼラスがゼロスへと声を掛ける…。 その声はなんだか虚ろ下で…それでいて満たされているような、不思議な感じだった。 「…ゼラス様…?」 「ゼロス…… 見て、これ……、かわいいでしょう?」 呟き、軽く指を鳴らすゼラス。 ――ぱちんっ 次の瞬間、辺りへ淡い光が次々と灯って行く。 部屋り壁から、地面から、その中央の柱のようなものから…。 次々に照らされて明るみになる、部屋の内部…。 その部屋はとても広く、ほぼ宮殿の玄関に相当するものであった。 水の音は、部屋の回りに張りめぐらされた水路から聞こえたものだった。 そして…… 柱と思っていたものは、硝子で出来た大きな棺だった……。 「リナ……さん………」 その中へ眠るように横たわる…沢山の花々に囲まれた、一人の少女……。 ――硝子の棺に詰められた ――無数にも渡る花の数々… ――そしてその上へ ――眠るように安置されている ――一人の人間。 ――リナ・インバース 「……驚いた……? ふふふふふふ………… フィブリゾが、連れて帰ってきたのよ……」 楽しげに、そう言い、微笑みながら棺を見つめる主……。 「……何故……」 …先程…つい半刻前に別れた少女が…目の前へいる。 もう殺されたであろうと思っていた少女が…こんな場所へ……。 疑問・疑惑・喜び・喜び・喜び……。 そう、僕は確かに喜んでいた。安心した。 彼女が、死んでいなかった事に…何処かで安堵した……。 だが…… 「何故……そんな事を……?」 「………この子が シャブラニグドゥウ様の7/1だからよ……」 そう、言い、黙り込むゼラス。 入り口に人影を発見し、静かに頭を下げる主。 後ろを振り返り、その方向を確認するゼロス。 「………レイ・マグナス……?」 いやっ…違うっ ――シャブラニググゥウ様…… 内面から滲み出るような、その威圧感と…、強大なまでの魔力…。 それはまぎれもなく、赤眼の魔王のものだった……。 黙り、部屋の中央へと足を踏み入れて行く魔王様。 ――…フィブリゾ様が……、解放したのか………。 「そうよ、ゼロス……。 フィブリゾがこのお方を真の姿に戻してくれたの……」 心底楽しそうに、遠くを見やり呟くゼラス。 その瞳には、何か言いしれぬ喜びのようなものが溢れ出ていた。 棺の前へ立ち、その中の人物を見つめる魔王。 自分の妹であった…少女の成れの果てを、ただ無表情に見つめる。 …あたりまえ……か。 魔王になってしまった今、過去の記憶などを覚えているはずが無いのだから…。 「魔王様… この娘の処置はいかが致しましょう……」 ゼロスは…、そんな主の姿を初めて見たと思った。 その言葉からは敬愛の情が感じられ、その表情さえも微妙に上気しているのが解る。 …愛している……… 主は…魔王様を愛している……。 そんなゼラスの問いに、少しの沈黙を要して、魔王は静かに呟いた。 「………このままで…いい」 「……え?」 その答えが予想外のものだったのか、聞き返すゼラス様。 「…このまま…ですか?」 「そうだ…」 …何故? それは、ゼラスだけではなくゼロスの問いでもあった。 「…この娘を……、 リナ・マグナスを解放すれば、…世界を混沌へと陥れる事が出来るのですよ?」 魔王が同時に二つも復活を遂げる。 そんな事があれば、この世界を容易く闇へ沈ませる事が出来るであろう。 なのに……何故…… その問いにただ沈黙を守ったままで、静かに部屋を出ていく魔王。 その残映をいつまでも見やり、立ちつくすゼラス。 「……魔王……さ…ま?」 そんな中、ゼロスは硝子の棺を見つめ、ある事に気が付いたのだった……。 「…まるで…… まるで…白雪姫ですね……リナさん………」 苦々しげに呟かれたその言葉は…、誰の耳に入る事もなく、 その空間を漂い続けていた………。 ソシテ・・降魔戦争・・最後ノ時 「魔王様からの指令で、僕達四人は守りを… 魔竜王は魔王様と共に行動しろってさ」 大きな大きな、ゼラスの屋敷に備えられているドームで、その指令は下された。 五人の腹心と、その腹心の部下数人だけが、その報告を聞いていた。 「……そんな……」 「…っ!?」 口に手を当て、眉を潜め、いきなり屋敷の何処かへ向かって走り出すゼラス。 「ゼラス様!?」 急いでその後を追うゼロス。 しかし、扉を出た時点でゼラスの姿は見あたらず、辺りを見回すゼロス。 ふいに地下室へと階段が目に映り、直感のままに駆け下りてゆく。 降りきり、部屋の中へ視線を落とす。 「……何故ですっ」 聞き慣れた主の声を耳にし、いささか安心するゼロス。 部屋へ踏み入れようとしたその瞬間、もう一人の声がし、足を留める。 「……何がだ……ゼラス?」 …魔王様………。 何故か魔王様は、この部屋へ出入りする事が多かった。 特に用が無くとも、ここへ来て、部屋を数分見つめ、帰る。 そんな日が多かったように、ゼロスはいまさらながら思った。 ――もしかしたら…… 「…何故私を連れていってはくださらないのです……? どうして…魔竜王を………」 掠れるようなその声で、涙を携えながら呟くゼラス。 「…この… この計画に…魔竜王が必要だからだ……」 それだけ言って、再び黙り込む魔王。 そんな魔王に、悲観も喜びもなにもない表情のまま、寄り添うゼラス…。 そうして、魔王は硝子の棺を見やり…口を開こうとする。 「………ぃ…」 けれど、それを無理矢理押し込めて歩き出す。 たぶん…こう言いたかったのだろう。 ――私ヲ・連レテイッテクダサイ……… と…。 しかし、何かで堰き止められたかのように、それは外に出ることは無かった。 ゼラスも、置いて行かれないようにと、静かにそれに従ってゆく…。 そうして、扉を出る時も、思い出したように棺を見やり、すぐ部屋を出て行く。 そんな情景を見ながら、ゼロスは何か蟠りのようなものを感じた。 …今…何かに気付いたような…… けれど…自分は何に気付いたのだろう……? 普通の会話、普通の仕草……、けれど何かがおかしいと思った。 ――もしかしたら… 魔王様の目的は…リナ・マグナス……だったのだろうか……? この少女を見やるために、この場所へ通っていたのだろうか……? そんな思いを抱えたままで、魔族は最後の戦いへと足を進めた……。 降魔戦争・終結ノトキ・ 「おう、ゼロス」 「どうも、グラウ様」 ゼラスの屋敷の入り口に近い、その廊下で二人は久々に顔を会わせた。 「久しぶりですね、グラウ様」 「そうだな… 降魔戦争以来…か?」 それに…お前、この所忙しいみたいだしな」 現に書類を山ほど抱えて、ゼロスは資料室へ向かう途中だった。 「そうですね…忙しいです」 曖昧に笑い、ゼロスはこの所の自分の状況を思い浮かべた。 確かに…ほぼ休みという休みは無いという程、僕は働きづめだった。 「なんていったって、ゼラスの分の仕事もお前一人でやってるんだからな」 「…まあ、仕方ないですね」 部下として、それは当然の事だと思う。 「で、ゼラスは? まだ……か?」 「…はい……、まだ部屋に… …籠もってます」 あの戦争で封じこめられた赤眼の魔王様……。 魔竜王もその命を落とし、一応は終結した降魔戦争……。 「魔竜王のその後も、解ってないしな……」 「……ええ」 それよりなにより…… 「………魔王様…ねぇ」 「………………………」 魔王様のいなくなった事によって、あのお方は行動しなくなってしまった。 部屋へ籠もったままでもう一年。 毎日、ただ虚ろ気にそこへ漂っている。 改めて自分の無力さを感じる…とゼロスは、晴れ晴れとした空を仰ぎながら ふと、思った……。 悪夢ノ始マリ・・ 「ゼラス様…?」 つい最近、元気を取り戻した主を探し、ゼロスは屋敷を巡っていた。 まったく…回復した途端にそれですか… そんな主の行動が迷惑でもあり、回復した証であるとし嬉しくもあった。 ……? ふいに、その気配が地下室…そう、あの少女のいる場所にあると解り、ゼロスは闇を翔る。 「ゼラス…様?」 以前と変わらず薄暗いその部屋の中に、主は佇んでいた。 その、硝子の棺を目の前にし、ただ佇んでいた。 だんっっ!! ふいに、その棺を強く・強く・強く叩きやるゼラス。 その硝子が砕けそうな程に、何度もそれを繰り返す。 「っ……ゼラス様っっ」 だんっっっ、だんっっ!! 気でも触れたのかと思い、慌ててそれを止めに入るゼロス。 腕を掴まれ、それを払いのけるようにして、暴れ出すゼラス。 「離しなさいゼロスっっっ」 「っ…お止めくださいゼラス様っっ そんな事をしたらっっ…棺が割れてしまいますっっ……!」 「いいのよっっ!!」 声を荒立て、いまにも倒れそうな勢いで叫ぶゼラス。 「……ゼラス…様?」 「……いいのよぅ…こんな……こんな……」 憎悪・憎悪・憎悪・憎悪…… 主の瞳から感じられるのは、だだそれだけだった………。 まるで……そう、なにかに憑かれたかのように、その棺…いや、その中の少女へ 射るような視線を送る主……。 「……お前さえ………お前さえいなければ…………」 そう呟き、力無くそこへ倒れ込むゼラス。 それを訝しげに見つめ、困惑した様子で呟くゼロス。 「……ゼラス…様……!?」 ・ ・悪夢の始まり・・ 「ゼロス…、あの薬を貸して………」 「え?」 ゼラス様の命令で、地下室へと足を踏み入れるゼロス。 相変わらず、あの時のままで…、まるでここの空間だけ時間が停止してしかのように…、 地下室は変化のない日々を送っていた。 ゼラス様がここへ来るのも、ずいぶんと久しぶりな事である。 …あの日…、狂ったように、棺を叩き続けた主……。 憎たらし気に少女を見つめ、殺気を振りまいて喘ぎ続けた…。 あの日から、…主はこの部屋へと触れることは無かった。 それが…どうして今さら…? と、思いつつ、ゼロスは重たい足を引きずりここまでやってきたのだった。 「…あの薬…といいますと?」 言葉がかみ合わず、問い返すゼロス。 そのゼロスに普段の優雅な仕草で答えるゼラス。 「あら、きまっているでしょう? あの薬よ。 …確か、人間を仮死状態にする…とか」 ………!? 「……………………」 「どうしたの、ゼロス? さあ……… …早く渡してちょうだい……」 まるで何かに陶酔しているような…ゼラスの妖しい響き。 「僕は持っておりません…。 あれは、前の戦いで、リナ・インバースへと返却しました」 それは真実だった。 僕は彼女へあの薬を返した。そして、そのまま戦地へ向かう彼女を見送った…。 だから…、たぶんあの薬はもうこの世には、存在しないのである……。 ――万が一…よっ…万が一、あたしが死ぬ…なんて事があったら、 この薬を世に広めて欲しいの……」―― この場合…どうなんでしょうね…。 あなたに死は訪れてはいない…、けれど……もう同じですかね? 今…もし僕がその薬を持っていたなら…、あなたの願いを叶える事が出来るのに…。 どうしようもない歯痒さを覚えつつ、ゼロスは視線を棺へ向ける。 棺の中の少女へと……。 「…あら…、どうして………?」 それは誰にとでもなく呟かれた言葉だった。 瞳には、ただ闇が写るばかりで、光すらも見受けられない……。 虚ろに、虚ろに、虚ろに…。 まるで魂離してしまっているかのように、呟くゼラス。 「じゃあ…… どうして、ここにこの薬があるの…………?」 服の下から取り出されたそれは、紛れもなく、あの少女に託したはずの薬だった。 赤く…赤く…赤く……。 林檎の名前がついているにもかかわらず…、その色はどうしても血痕を思い出させる…。 「……どうして…その薬を…………?」 「………どうしてかしら…… ああ…… この間、フィブリゾに貰ったのよ……。 なんだったかしら……確か……この少女の……… そうそう…この少女のために………魔王様がお造りになられた薬を………」 そう空気のように呟き、虚空を見やるゼラス。 …リナさんの所有しているはずのその薬………。 戦いの最中、それを冥王様に奪い取られた…あなたの姿が、まるでそこにいたかのように思い浮かべられますよ…………。 「……この薬……、名前はついているのかしら……?」 どんな物にも名前を付けたがる主の癖…。 「はい…。 たしか…-―― apple ――…とか」 「…―― apple ――…? 赤いから…って事かしら………?」 「ええ…それもありますが…、なんでも白雪姫に出てくる林檎に例えてだそうです。 あの林檎で白雪姫は仮死状態になってしまいますから……」 「ああ………それで…………」 「あと………」 「……あと?」 まるで初めて外の世界を知った、無垢な子供のように、ゼラスは問い返す。 その様子に、少し戸惑いつつゼロスは、平穏をとりつくろい答えた。 「…あと……、リナ・マグナスは白雪姫、というお伽話が苦手だったようです。 その心を少しでも取り除こうと、レイ・マグナスが、その薬を造ったようです…」 「…………あら、 このお姫様は、白雪姫が嫌いなの………?」 そう言って、視線を棺に移すゼラス。 その棺から発せられる淡い光が、ゼラスのその顔を、より一層妖しく漂わせた。 「………それは意外ねぇ……。 だって…この娘、とっても似ているもの、白雪姫に……」 「……そうですか?」 外見はどう考えても似ていない…なら、主はリナさんと白雪姫の何処を比べてそう言っているのだろうか……。 「ええ………とっても……。 特に…性格かしら…………? ねぇ…、似てる思とわない? 無垢で…純真で…… …それでいて残酷なお姫様!」 ふいに口調が強くなるゼラス。しかし、それでも何処か虚ろで、何かに操られているように、再び言葉を紡ぐゼラス。 「……だって… この子ったら……、魔王様に愛されているのよ……? 魔王様を愛しているのは私なのに………?」 …………やはり…、そうでしたか………。 頻繁にこの地下室へやって来ていた魔王様…。 目的は、リナ・マグナスを見やるため…。 記憶をすべて失ったはずなのに……、それでも何処かで彼女を愛していたのだろうか…? 本能的にそれを行ったのだろうか……。 「………ねぇ、似てるでしょう? なんの苦労もせず…、王子に愛された白雪姫……。 それでいて…、残酷な…黒檀の枠のように黒いお姫様……! …だからね、 私この子に、ふさわしい方法で…ここに保存しておこうと思って……」 薄く冷笑を浮かべながらゼラスは呟いた。 「…ふさわしい方法………?」 「そうよ………、この娘にぴったりの……残酷な生き方……」 言い、手を高々と上げ呪文を唱えるゼラス。 「…何を…?」 「………大した事は無いのよ…。 ただ、この子の保存方法を…少し変えただけ……」 「保存方法……を、変える……?」 「そう……。 こういう風に……ね」 ぱちんっ 空気がその振動を感じ取り、小さく指の擦れあう音がした。 次の瞬間… 一斉に、部屋の中のものが始動し始め、辺りが騒がしくなる。 先程まで何も無かったその水路の中に、沢山の何かか現れる。 それは水の中で詰め込まれるように横たわり、ゆっくりと部屋の中心部へと流れて行く。 ぴちゃん…ぴちゃん… と、涼しげな水の音を携えながら、何処までも進みゆくのは… ――人間。 正確に言えば、人間の死骸…。 「………ゼラス…さま?」 「…ふふふふふふふ…楽しいわねぇ………」 「……何を…」 「…何って…? だから、……保存方法の変更。 彼女をこのままの姿で保存するには…、時折、大量の人間を喰らわなければならない… ってね………」 ………大量ノ人間ヲ・喰ラウ? あの…リナさんが? ――……狂っている………。 利害も利益も何もない…その行動に、僕は半ば呆れたようにその場に立ちつくしていた。 ただ…私怨のためだけに… 私怨のためだけに……… ふと耳に寒さを感じるような、鈍い音が拾われる。 …ごり…ごりっ…ごりっっっ まるで動物のように、粉々にされ、吸い尽くされる人間達。 悲鳴も、出血も、何も無いその情景に、僕は何故だか身震いがした。 ぐちゃ…ぐちゃ…ぐちゃ…… そして、無数の細胞が、神経が、混ざり合い……潰れ合い…。 それが、棺へとつながるチューブへと、吸収されてゆく…。 「………これから…どうするおつもりですか……?」 「あら……どうするって……?」 「…この少女を…ここに保存したまま…… いつ魔王様の復活を……?」 そのために、この少女はここへ保管されているのだ。 魔王様の1/7……。 この少女へ眠る、我らが魔王様…その復活のタメに。 「…何を言っているの…ゼロス?」 その言葉にあらかさまに怪訝な表情を見せ、グラウは呟く。 「ずっと…… ずっと、このままに決まっているでしょう………?」 「………え?」 棺に顔を寄せ、その少女を哀れむような目つきで見つめるゼラス。 「だからね…、このままよ……。 永遠に…、永久に………、この棺の中で…… 大量の人間を食いつぶし……、転生する事もなく………」 その時の主の顔が…どれだけ楽しげであったか…。 背筋に何か冷たいものが走るような、心の中の何かが凍るような…。 そんな表情のまま、呟かれた残酷な未来……。 ――…永久に? …この…ままで…? 人間を食い潰し……… 転生する事も…許されず………! 「……でも…、そぉねえ……。 他の魔王様復活のために…私の役に立ってもらおうかしら…。 今までの記憶を…全部拭い去って…。 私の駒として、地上に降り立ってもらう事にしましょう」 そんな言葉も、僕にはもう欠片程にしか耳を掠めなかった。 「それなら…、永久って事はないわね…。 けど…、その任務が終わったら、またここに戻しましょうね……。 お姫様には…、死は似合わないでしょう…?」 「結局……、転生される事は無いのですね……」 転生する事が無ければ、この少女は魔族から狙われ続ける。 死ななければ、魔王様の魂は他の人間へと移らない…。 永遠に…永久に…… 自我を持たず…、この主に操られながら…利用されながら… ――大量の人間を食い潰し それでも…、解放される事はなく。 彼女に死は訪れない。 彼女に幸せは訪れない。 「……それには、同意しかねます」 「…………そう……」 ゼロスのその言葉に大した驚きも見せず、ゼラスはこちらへ視線を向ける。 「…僕は…… 彼女を解放します」 「……それは…… ………だめね」 言って、指を鳴らすゼラス。 ぱちんっ……… いつのまにか現れたのか、フィブリゾ様が姿を見せる。 「……いいの?」 「ええ……」 二人の間で何かのやりとりが交わされ、一人が何かを呟き始める。 「私には…、もう力が残っていないから…」 「そう………」 ――けど、それだけかな? 言いかけて、止めるフィブリゾ。 それを今呟くのは、得策ではないと思ったのだ。 フィブリゾはゆっくりと、静かに指を動かした。 ――ぱちんっっ 再び、部屋の中へ響いたその音。 その瞬間、同じ音がゼロスの頭の中で、弾け、壊れる。 ――壊れる・壊れる・壊れる・壊れるっ!! 「……ぐぅっっっ!!」 神経のすべてが一斉に切断されたような痛みと、その痺れとが同時に襲いかかる。 両手で頭を抱え込み、床へと倒れ込むゼロス。 「…くっああぁぁぁぁっっ!!!」 胸を突くような叫びが部屋中へと木霊する。 汗を滴らせ、その苦痛に必死で耐えようと、歯を食いしばるゼロス。 そんな様子を、眉を潜め、辛そうに見やるゼラス。 「痛い……? でも…、少し我慢してちょうだいね……。 今あなたの記憶を…消してもらったの…………」 苦しみ、藻掻くその姿を、さも痛々しげに見つめる。 「…ゼロスがいけないのよ……。 この娘を愛してしまうから…………」 「…ぐぁあああああっっっっ!!!!!!」 「だから…、この娘の事は忘れて……。 この子を解放しようなんて……馬鹿な考えは捨ててちょうだい…。 この娘は、永遠にここに保存するんだから…」 「ぐああああああああああああっっっっっ!!!」 「それが……この娘への報復…。 あの人から愛された…この娘への…」 「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」 最終章・お伽話の終わり 「おかえりなさい」 「オカエリナサイ」 「おっかえりー」 「オカエリッ」 ――「ただいま」―― 地下室の扉は、相変わらず機械音に囲まれていた。 「パスワードヲ…」 「………死んでしまった…白雪姫……」 「パスワードヲ…入力シテクダサイ…」 昔は、こんなものは無かったのだ。 僕が記憶を封じられる前は、こんなものは付いていなかった。 おそらく、ゼラス様が僕をこの部屋から遠ざけようと造ったものだろう…。 はっきり言って、パスワードなど知らなかった。 けれど…、 何か確信があるわけでもないのに、僕はこの言葉がそうだと思ったのだ…。 そう思い、静かに呟き始めるゼロス。 「…パスワードは……… 白雪姫……」 ピピッ それが承諾されたかのような、短い機械音。 そして。 「パスワード・白雪姫・了解」 ガシャンっっ 鍵の開いたような音がし、ゆっくりとゆっくりと部屋の中が明るみになる。 そして…… その扉が…静かに……開かれたのだった………。 もうすぐ…ゼロスがここへ駆けつけてくるのだろうか…? 暗がりの中、以前あの方がそうしていたように、じっと棺を見つめやるゼラス。 部屋の中には、その振動で脳が震えたつ程の音量で、白雪姫が流れ続けていた。 ――美味しい・美味しい・林檎だよ……―― あの子は…すべてを思い出したのだろうか…? ならば…あのこはどうするのだろうか……? 以前…あの子の記憶を消した後…。 数百年…、魔王様の魂は現れる事は無かった。 だから、リナ・マグナスは、そのまま、大量の人間を喰らわせたままで ここへ保存していた。 ゼロスは、何事も無かったかのように働いていた。 リナ・マグナスの事など欠片にも覚えてはいなかった。 フィブリゾの術が完璧な事を改めて知った。 そして……、レゾ・シャブラニグドウの瞳に、魔王様が宿っている事が判明した。 だから、リナ・マグナスを地上へと送った。 インバースという家系、その回りの住民に、作り替えた記憶を埋め込ませた。 ――インバース家には、リナという女の子がいる。 偽善の家族を造り、そこへリナ・インバースという人間を存在させた。 そして、あのこは魔王様を復活させるにあたって、重要な役割を果たした。 しかし… あの少女は魔王様を滅ぼしてしまった…。 計画は失敗した。 私は、直ぐにあの少女をこちらへ戻そうと思った。 しかし。 フィブリゾがあの少女を使った計画を実行してしまったのだ。 あの少女を使い…世界を混沌へと導くという計画…。 そこに、ゼロスを貸し出さなければならなかった。 ――嫌な予感がした。 記憶を消して以来、ゼロスにはあの少女を彷彿とさせるものは、なにも触れさせては いなかった。 リナという言葉も。地下室も。 一度だけ、その術の信頼性を確かめるため、レイ・マグナスについて調べさせた事があった。が、それでも少女の事は思い出さなかった。 けれど……、今度は実物である。 以前、魔族であるゼロスが愛した少女……。 ――そんな予感は見事に的中してしまった。 結局、フィブリゾの計画も失敗に終わった。 そして、フィブリゾもこの世から姿を消した。 だけど……… ――ゼロスは、再びあの少女を愛してしまった…………。 このままでは、ゼロスが何かを思い出すかもしれない…。 そう思い、急いで少女をあの世界から消し去る事にした。 ――口に羽を詰められ ――顔は爛れ ――腹を剔られ ――内蔵を、心臓を、 ――すべてもぎ取られた リナ・インバースによく似た少女を殺し、あたかもリナ・インバースが死亡したかのように見せかけた。 そしてリナ・インバースを持ち帰らせ、再びここへ保管した。 つまり…この少女は、 ――リナ・インバースであり、リナ・マグナスなのである。 目撃者であったガウリィ・ガブリエフには、術を掛けた。 殺しても良かったのだが、どうせならこの人間も利用しようと思った。 だから、リナ…と呟かせるように、彼の心に細工をした。 そして、他の感情・思考をすべて停止させた。 ――何もかもうまくいったと思った。 けれど… ゼロスはそれを不信に思った。 リナ・インバースの死について調べるようになった。 グラウが、何故か私の邪魔をする。 ――「リナ・インバース」は死んでいないのでは?―― その言葉を聞き、ゼロスは益々この事件について深入りしていった。 何故? 何故…グラウはそんな事をしたのだろう…? …そして。 フィブリゾが…いえ、あの子のコピーが謀反を起こした。 もしかしたら…グラウがそう指示したのかもしれないが…。 ゼロスの記憶を開花させた。 ならば…あの子はどうするだろう…? ならば…あの子はどうするだろう…? ――小人は・死んでしまった・白雪姫を見つけます・―― そんな事を思いつつ、ゼラスは、今まで頑なに閉ざされていた…その扉が開くのを ただ、静かに感じ取っていた。 ……――「パスワード・白雪姫……」 ……――「パスワード・白雪姫・了解……」 ガシャンっっっ!! 「アメリア姫―――――っっっ!!」 広い屋敷のその中を、懸命に走りやる娘。 「はーーーーいっっ、はいはーーーーーい」 その、少し先のダイニングで、一人紅茶をすするアメリア。 手を振り、その娘に自分の居場所を伝える。 「なんですかー?」 カップを机に置き直し、娘を見やるアメリア。 「あっ…これ、数日前アメリア様が見たがっていたものですっ ちょうど、知り合いが持っていましたもので……」 言って、少し頬を染めながら、一つの肖像画を差し出す娘。 そこには栗色の髪を持った、可愛らしい少女が描かれていた。 「……なんですか…これ?」 「……え? えーーー・・と、だから、 あのリナ・インバースの…肖像画です」 「……………? 誰…ですか、それ?」 その言葉に娘は困ったように眉を潜め、その場に佇んだ。 「…いや…えーーーと……」 「あ、いえいえ、責めてる訳ではありませんよっっ あーーー…と、そうですか…」 自分ではそんな物頼んだ覚えは無かったのだが、この娘に悪い気がして、 その肖像画を受け取るアメリア。 そうして、それを再び見やり、その少女を確認する。 「………やっぱり、知らないわ…。 だれなんだろう……」 そうして、机にそれを置いたままで…、業務をこなすべく部屋へと戻り行くアメリア。 あとにはただ、その絵の少女が、柔らかな風の中、存在しつづけていた……。 ピチャン…… ピチャン…… ――ミズ・ノ・音・ハ・ハハ・ノ・音 ピチャン…… ピチャン…… その母親の体内のような、心地よいその場所……。 けれど…… ピチャン…… ピチャン…… ――何・カ・ガ・オカシイ ピチャン……… ピチャン……… ピチャン……… ――私・ハ・ ・ココニ・イル・ベキ・存在・ナドデワ・ナイ…… ピチャン……ピチャン……ピチャン……ピチャン……………・ピチャン 「……………ゼロス…、懐かしいでしょう……? ここに足を踏み入れるのは……」 暗く・暗く・暗く……。 耳が痛い程の音量で、流れているその物語……。 ――小人は・白雪姫を・硝子で出来た・棺へと・飾り付けました・・ それでいて…中心の硝子の棺だけが、淡く・淡く・光を放っている…。 そんな、部屋の中主は……、昔そうしていたように…その棺を見つめ…、ただ空気のように佇んでいた……。 「…………………ええ、そうですね……」 血塗られた過去・忘れていた思いで……そして、……… 僕の愛した・二人の………リナという少女…………。 その棺の中の少女を見やり、それでも…懐かしげに微笑むゼロス。 そんなゼロスを見つつ、ゼラスは掠れるようなその声で、静かに呟いた。 「……………あなたは…どうしたいのかしら………?」 「…………ゼラス様は……この少女をどうするおつもりで………?」 昔、よく似た質問を、それもこの場所でした事を、少しだけ思い出す…。 答えは…たぶん、その時と同じ……。 「…………決まっているわ…。 永久に…このまま…………・ここへ保管するの……」 思い返した、そのままの言葉が耳にはいり、ゼロスは苦笑する。 「…それが…………この娘への…些細な報復…… 私から…あの方を奪った…………」 「………リナ・インバースの仲間から、記憶を消したのは…何故ですか?」 ふいに話題を切り替え、静かに呟くゼロス。 「あの方々だけの記憶を消したところで、リナ・インバースという人間は あの世から消える事はないのでは…? …それ程までに、あの少女の知名度は広まりすぎている………」 たぶん、あの大陸のほとんどの人物が耳にしたことがあるであろう、その名前。 「…あなた事だから…、いつかまた、再び…。 魔王様の魂が現れた所で、この少女を地上へと使わすのでしょう…? だから…そのためは、リナ・インバースという少女の歴史は邪魔だった…」 「………そうよ」 その言葉をすべて受け取り、静かに言葉を紡ぎ始めるゼラス。 棺を見つめ、その少女を見つめ……、微々とも動きもせずに………。 「…また…数百年後…、この子をあの地へと使わすわ…。 その時に…この娘と同じ姿・能力・性格をもった過去の人物がいた…。 そんな事は邪魔なものでしかないもの………」 けれど………。 それでは…やはり、あの三人の人物の記憶を消し去った所で、何にもならないのでは…? 「……だから…、記憶の根の深い…あの三人だけ、フィブに術を掛けてもらったのよ…。 他の人物であれば、下級の魔族の術でも、簡単に忘れてくれるもの…。 他の人物は、追々記憶を消していくわ…。 リナ・インバースという少女の記憶をね………」 「……それから…この…物語………」 ――小人は・棺の側で・泣き続けました・・―― 白雪姫……。 …この事件は、最初から何かとこの物語を彷彿とさせていた……。 ――リナさんの殺され方…。 ――Appleという名の毒 ――そして ――硝子の棺 ――眠りゆく姫 「……ああ……白雪姫の事……?」 薄く笑みを浮かべ、ゼラスが虚ろ気に口を開く。 「だって……この娘……嫌いなんでしょう…? 白雪姫が………」 言って、そのまま、白雪姫のように飾り立てられている少女を見やるゼラス。 「だから…この娘の嫌がる事をしたくて……。 ただ、それだけよ…。 死に方を白雪姫に似せたり…。 この硝子の棺に安置したり…。 あの薬で人を殺したり… あの子に大量の人間を喰らわせたり… ただ、それだけのために、そうしているのよ…………」 ただ……それだけのために…。 この少女の負の部分を剔るように…、ただそれだけのために……。 この方の私怨のために・永久に生かされる少女…。 残酷に・残酷に…残酷に…。 「ねぇ……ゼロス…。 私ね…、みんなで幸せになりたいの…………」 「この少女を…ここに、永遠に…残酷に……、生かし続けるのが…… あなたの幸せなのですか…………?」 「…そうよ?」 無邪気に首を傾げ、虚ろ気にゼロスを見つめるゼラス。 ただ、淡々とした瞳でそれを返すゼロス。 「…だからね…、ゼロスも幸せになりましょう…。 私はあなたを愛しているのよ…………」 今、一番聞きたくなかった言葉を耳にし、ゼロスは笑みを漏らす。 愛している…ですか。 今更ながら、その言葉の薄さに嫌悪し、ゼロスは言葉を紡ぐ。 「……僕もですよ……」 それは、真の事だった。 自分を造りしハハ…、それを愛さぬ子など何処にもいない…。 「…………だからね…、私、ゼロスに幸せになって欲しいの……」 まるで小さな子供のように、何処か幸せな空気を纏いつつ、ゼラスは呟いた。 その言葉に、苦笑しつつ、ゼロスはこう答えた。 「……僕の幸せですか………?」 静かに、足を進めるゼロス。 入り口から、その部屋の中央に携えてある…、その棺へと…。 そうして、その棺を見つめ、懐かしさ、愛おしさを含んだ笑みで、こう呟く。 「…僕の幸せは……、リナさんと共に……」 そう言い、額を棺へと付け、ゆっくりとゆっくりと言葉を紡ぐ。 「リナさんは………、どうしたいですか………?」 その情景に、ただただ呆けた様子で、独り言のように呟くゼラス。 「……馬鹿ねぇ…ゼロス…。 その娘の思考はすべて停止させてあるのよ………? …何も考えられないし。 …何も喋れないわ………」 その言葉がまるで耳に入ってないかのように、再び言葉を繰り返すゼロス。 ――そこへ・一人の王子が・やって・きました…―― 「…リナさん……… あなたは……どうしたいのですか………?」 ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!! 突然、甲高い機械音が部屋中に滞る。 そして、頭に、脳に、壁に、部屋中に……、映し出される文字・文字・文字……っ 「……な…に……?」 瞳に映し出されている、何処からか流れ出した文字に、眉を潜めるゼラス。 殺シテ 殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・ 殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・殺シテ・ それは…紛れもなく、あの少女の音声だった。 その言葉から、少女の顔・瞳・彼女を取り巻く空気の、そのすべてが感じられるようだった。 ――…まさか…、精神面から訴え掛けてくるとは…… 相変わらずの、その無茶な性格に、ゼロスは酷く懐かしさを覚えた。 その情景を夢見心地で見やり、ゼラスは静かに呟く。 「…………どうして……? 意識は……すべて封じてあるはずなのに………」 その言葉に苦笑し、ゆっくりと言葉を紡ぐゼロス。 「……それはきっと…、 リナさんだからですよ………」 無限の可能性を秘めている、唯一の人間。 だから…あなたは魔物になってはいけないんです……。 「……本当に…怖いお姫様ね………」 呆け、その棺をまるで空を仰ぐようにして見つめる主。 「……私を……、 私を……殺すの………?」 悲しみも、恐怖も、憎しみも…、何一つ込められていないその声で、ゼラスは言った。 ――殺シテ それが……、 ――彼女の願い ――彼女の真実 ――彼女の幸せ ――ならば… ――王子は・白雪姫に・口づけをしました・ 「僕の幸せも彼女と共に……」 呟き、虚空から真空の剣を取り出したるゼロス。 部屋の微かな光を反射し、鮮やかに映し出されるその姿。 しかし…、所詮は剣。 「…そんな物では……、 私は殺せないわ………………」 まるで他人事のように呟き、虚ろ気に瞳を開くゼラス。 その姿はまるで、死を待つ者のように思えた。 「そうですね……… これであなたは殺せません…………」 それに答え、静かに前へ進みゆくゼロス。 近づいてくる刃の先を気にも留めず、除けようともせず、立ちつくしているゼラス。 辺りに言いしれぬ死の匂いが漂う。 対峙する二人…。 しばらくそのまま…、微々とも動かず、視線を交えたまま向かい合う…。 ――先に動いたのはゼロスだった。 カンッっっ!!! 次の瞬間には、辺りに鮮やかな赤が降り注いでいた。 血・血・血・血………。 忌みの匂い・死の匂い。 血・血・血・血・血・血……!! 床へ、水路へ、剣へ、……滴り流れていく鮮やかな雨……。 鼻につく心根から拒絶するような、その死臭……。 お互い、そのままで動こうとはしなかった。 その慣れているはずの作業に、いささか躊躇いがちに剣を抜き去るゼロス。 ブシュッッ…… ――刹那… 剣の刺さっていた場所から、飛び出すように血が飛び散る。 それをまともに浴び、顔に、体に、髪に…そのすべてに朱色を促すゼロス。 そして…貫かれ、貫通したその胸からは、雨のように血が流れ続け………、 水路を赤へと染めてゆく……。 そして……… ――ガラガラガラガラッッッ…… 切られ、下へ落ちて行く、硝子の破片………。 血で赤に染まった雪の花………。 「………どうして……?」 ゼロスのその行為に、今更ながら問うゼラス…。 頬を押さえ、その手を見やり、血の存在を確認する。 「………どうして……? どうして……、リナ・インバースを殺したの………?」 ――王子の口づけで・生き返る・白雪姫・ 薄明かりの中、その中心にある棺……。 剣で真っ二つに割れた硝子の蓋……。 その剣で胸を貫かれている、一人の少女…。 そして……… 返り血を浴び、力無く剣を握りやる…一人の魔族……。 「………どうして……? ゼロス………? その少女を……、愛しているのでしょう………?」 暗がりの中、ゼロスの表情は少しも読みとる事は出来なかった。 ただ…… ゼロスが少女を殺した……。 これだけか今解る確かな事だった……。 「………これが、リナさんの望む幸せだからですよ………」 静かに呟かれたその声は、この死の忌み屋の中で十分すぎる程聞き取る事が出来た。 「………幸せ……? これが………?」 ゼロスの手に抱かれ、完全に事切れている少女……。 「そうですよ………」 ――殺シテ ――殺シテ ――私ヲ・殺シテ 彼女の願い…………彼女の幸せ。 「………これで、リナさんはやっと解放される……」 この永遠に終わりの見えない…、暗闇から……。 死んでしまえば、魔王様の魂は他の人間へと移ってゆき…。 転生し、自分の意志で、誰に操られる事もなく……、あなたは生きていく。 そんな幸せが…あなたにはよく似合っている……。 「……そんな……ゼロス……… 私は………、その娘を永久に生かして……… それが……私の幸せ……………」 それでもまだ…夢をみているかのように、あやふやに言葉を紡ぐゼラス。 その言葉に、眉を潜め、悲しげに呟くゼロス。 「…………僕は…部下失格ですね……。 だから………、 こんな不出来な部下は…、滅ぼしてやってください………」 その言葉がまるで聞こえていない様子で、ゼラスはただ虚空を見つめ続けていた。 「…けれど…、 少し…時間を下さい………。 この少女を……、地上へと還す時間を……………」 出来るならば……彼女を……、墓標へと埋葬してやりたい……。 それが…彼女に出来る自分の最後の役割………。 「……あ…、あともう一つ……」 少女の死体を抱きかかえ、その冷たさに眉を潜めながら、ゼロスは呟いた。 「……出来るならば…、彼女の仲間に… 彼女の記憶を返してください……」 リナ・インバースがあの世から存在しなくなる……。 初めからないモノとされる……。 そんな事は…あってはならない……。 この主に操られながらも、懸命に自分らしく、彼女が生きた時を亡くすなど…出来る訳がない。 しかし…、主はそれすらも耳に入っていない様子で、佇んでいる。 「…………ゼラス様………」 酷く優しい声でゼロスが呟く。 「…………あなたの幸せを……、願っています………」 美しく、儚い声で、そう言い残し、ゼロスは静かに……闇を掛けた…。 あとにはただ…、鮮明なまでの赤の滴が…、部屋中を照らし続けていた。 それから…どれ程たったのだろうか…。 ゼラスには検討もつかなかった。 余りの事で、頭の感覚が麻痺してしまっているのだろうか…? 物事をまともに考えられなくなっている…、とゼラスは思った。 ――けれど…… もしかしたら…、あの時からずっとそうなのかもしれない……。 あの方が封印された、あの日から……。 間違っている? 自分が……? ――そんな事はない。 自分が望めば、それが真実であり、己の幸せ……。 ならば…、これは正しかったのだ。 ただ……、二つの真実が衝突すれば…、どちらかは嘘になる。 ただ……それだけの事なのだ…………。 「…………ゼラス…」 ふいに、その惨劇の場所へ、自分を裏切ったとも言える人物が姿を現す。 「…………グラウ……」 しかし…、今となっては、それもどうでもいいような気がする……。 それでも…何かを言わずにはいられなかった…。 「……あなたは…私の味方? ……それとも敵………?」 ――ゼロスに…、色々と援助をしたグラウ……。 ――この計画の破滅を遂行させるように…………。 その言葉に、苦笑し、なんの迷いもなく言い放つグラウ。 「味方だよ」 …この計画は、いち早く終わらせるべきだった。 それでなければ…、ゼラスはいつまでも今に生きる事が出来ない。 あの方を追い求め…、そこに留まり…過去にしか目を向けない…。 そんなのは、許せない。 「……そう…」 少しだけ込められた感情の色に、グラウはふとため息をつく。 そして、自分がここへ翔てきた本当の目的を、切り出す事にした……。 「…どうする…、追うか?」 言って、血が滴り、空になった棺に目配せするグラウ。 「……ゼロス…の事……?」 「そうだ………一応は反逆者だからな…。 処罰は受けてもらう…… ………捕らえるのか… ………滅ぼすのか……」 続きは無くても、その言葉の意味は十分に理解できる。 「……そうね…………」 静かに瞳を閉じ、眼裏に過ぎゆく情景を思い浮かべる。 そして、再びゆっくりと瞳を開け、真っ直ぐグラウと向き合うゼラス。 「…………では……」 闇に染まった部屋の中で……、その血だけが鮮明に…色を刻んでいた…。 ――みんなで…幸せに…なりましょうね……―― 「……リナさん………」 追っ手のいないのを確かめ、ゼロスは目的の場所へ辿り着いた。 そこは、丘の上に…美しく聳える、リナ・インバースという少女の墓…。 風が心地よく、頬を撫でる。 少女の髪がそれに乗って柔らかく舞う……。 すっかり血色の失せた顔が…、白雪姫を思い起こさせる。 「………リナさん…… 愛していますよ……」 僕の愛した、二人のリナという少女………。 リナ・インバース…、リナ・マグナス…………。 「だから………、今度生まれ変わっても…… そのまま………、あなたらしく……」 指先で軽く頬をなぞり、包み込む。 そうして………ゆっくりとその手を離し…、空を見やる…。 そこには…、数人の高位魔族達……。 「…意外と…遅かったですね………」 僕を滅ぼすために使わされた……数名の魔族………。 それでも……、抵抗もせずに…滅ぼされたりはしない……。 「……リナさん…… いってきます……………」 ――その人が自分の元へ還ってくるという約束……―― 静かに空へと駆け上がりゆくゼロス……。 そうして……誰もいなくなったその場所で……、リナという少女はやっと…本当の眠りに…つく事が出来たのであった………。 「グラウ様――――――っっっっっ」 「なんだ、シェーラ」 いつもと変わらず明るい声で叫びやるシェーラ。 違うのはここがグラウの屋敷ではなく、ゼラスの屋敷だという事位だった。 その、歩き慣れない屋敷を走ってここまで来たのか、息を切らしながら呟くシェーラ。 「お仕事っっっ、終わりましたっっ」 その情景を、机の反対側に腰掛け、物憂げに見ているゼラス。 「シェーラ こっちのも頼むわね」 その言葉に深くため息をつき、その書類を受け取るシェーラ。 「まったくーーーーっっっ ゼラス様っっっ そろそろ、新しい部下をお造りになったらどうですっっ そのせいでっ いっつもあたしに仕事が回ってくるんだもんっっっ」 心底疲れ果てながら、シャーラはしぶしぶその足を進めた。 そうして扉が閉まるのと同時に、ゼラスが小さく言吐く。 「………新しい部下ね………」 その呟きに、静かに問うグラウ。 「……あれから…もう、何百年だったろうな……」 「………800年…かしらね」 正確には845年だとグラウは記憶していたが、そんな事はどうでもよかった。 「………… あれで…、よかったのか…………?」 グラウのその言葉に、苦笑し、言葉を紡ぐゼラス。 「……さあね…」 紅茶を口に運び、小さく息を吐く。 そして、窓の外に視線を落とし、ゼラスは静かに呟く。 「………けど…、 あれがあの子の望む幸せなら…、それでいいわ………」 「……そうか………」 その憂鬱気な闇の中で…、静かに時が流れて行く…。 そんな暗がりの中……見つけられるものもある…と、魔族は静かに思った。 「あーーーーーーーーーっっっっ、もうっっ、信じられないっっっ」 苛立たしげに上げられたその声に、額を押さえつつ呟く少年。 「…さっきから…、その言葉5回目です…先生……」 いい加減うんざりだ…とでもいう顔で、肩を落とし進みゆく少年。 今日は休日だからなのか、その日の街の出は凄いものであった。 もともと、この都市は医療が発達しているお陰で、人の出入りは多かった。 それを目的とした患者や医者が、日々入れ替わり、立ち替わりしていた。 しかし、今日とはいえば、それはもう人混みで足場が見えない程の人の出だった。 その中を、機嫌の悪い先生と並んで歩くなんて……、悪夢だ…。 と、少年は改めて自分の運の悪さを知った。 大体、この人に助手にしてもらったのが、そもそもの間違いだった。 腕もよく、可愛らしい、完全無欠の医師…なーーーんてのは表の姿。 ひとたび仕事が終われば、趣味の「精神医学」の論文作りへと、おたくよろしく 熱中してしまう。 時間外なのに…、それにかり出されてる僕って……。 一応医者の見習いとして雇われたはずが、今や立派な雑用係である。 でもまあ…、そっちの研究のほうも手伝っているお陰で、「精神医学」の方の知識も豊富になったし…いいんですけど。 もとより…なかなか興味のある分野でしたしね…。 「だああああああぁぁぁぁぁぁぁっっってっっ あの魔導師教会の頑固ジジィっっ達ったたたたたあぁぁああっっらっっ!!」 この人の口の悪さも相当なものだよな…と、少年は思った。 実は今、その一ヶ月かけて製作した論文を、魔導師教会へと提出しにいったのだが…。 「えーーーーと……なんでしたっけ? 今回の研究内容」 「すばりっっっ、 人間は前世の記憶を覚えているかっ ………って、覚えてなさいよっっっ、その位っっ きーてるのっっ、ノゼっっ」 自分の、つい三ヶ月程前助手になった少年を、なんの躊躇もなく叩きやる少女。 それを心底痛そうにさすりながら、呟くノゼ。 「聞いてますよ…。 あれですよね…。 人間はすべて転生という手段をつかい、巡っている。 だからして、前世の記憶は忘れているだけで、無くなってはいない。 だから、必ず前世の記憶を覚えている…」 「そうそう…あっっっ」 自分の家の、その前に出来ている人集りに、慌てて走り出す。 「先生??」 話していて気付かなかったが、もうすでに診察所に戻っている事に、ノゼはいささか面食らいつつ叫んだ。 「ほらほらっっ ノゼも早く来なさいっっっっっ 患者さんが待ってるわよっっっ」 そう言い、楽しげに診察所へ掛けいる先生。 「……まったく……」 「………似ているねぇ………」 「え……?」 ふいに自分の足下から声がし、ノゼは慌ててそこを見やる。 するとそこには、近所の巫女のお婆さんが、神妙に先生を見ている所だった。 「なにがです?」 「…ああ、いや………。 あの先生だよ……」 言われて、再び先生に視線を向けるノゼ。 栗色の髪をもち、瞳は真紅に瞬き、顔立ちは綺麗というよりも可愛らしいという形容詞がよくあてはまる……。 「……誰に似ているんです、あの先生が?」 「……似ているよ…、そっくりだ……。 あの……驚異の魔導師に……ね」 そう言い、向き直り、教会へと歩き出してしまうお婆さん。 「驚異の魔導師……って?」 その言葉に足をとめ、ゆっくりとこちらに向き直る。 「…セイルーンに肖像画のある…あの魔導師さ……。 聞く所によれば…何かの事故で変死したとか……。 その原因を、故のアメリア姫が熱心に捜索した……… 強大な魔力をもった少女………」 それだけを言い、すぐさま歩き出してしまう老女。 ………なんだろう…一体…? 「こらーーーーーーーーっっっ、ノゼっっ」 診察所から、先生の声がし、急いで走りやるノゼ。 「なっなんですか??」 部屋に入り込み、患者を除けつつ、先生の元へと向かうノゼ。 「二階に、新しい患者さん入ったっていうから、見に行くわよっっ」 聴診器を首に掛け、髪を一つに束ね、階段を昇る先生。 それにおいていかれまいと、後についてゆくノゼ。 「あ…そういえば……」 思いだし、先程あの老女に言われたことを話しやるノゼ。 「先生は、その魔導師知ってますか…?」 「あったりまえじゃないーーーーっっ あの人の考えには、共感する所が幾つもあるわよーーっっ」 「例えば?」 「すばりっっっ 悪人に人権はないっ!! …とかね」 ………確かに、性格から言えばそっくりかもしれない……。 「うーーーーん…そうかーーーー。 似てるかしら…… 確かに…、セイルーンの肖像画を見たときには… ――あたしの顔がどうして王宮にっっ!?? とか思ったけど………」 「…そんなに似てたんですか?」 「もーーーーーそりゃあ、あれは、すばりあたしねっ!!」 そんなに似ているならば…一度見てみたい気もするなあ……。 「けど……、なんでその肖像画が、セイルーンに?」 「あーーー… なんでも、アメリア姫が親愛していたらしくってね… 詳しい事は…よくわからないけど……」 そう呟き、肩を竦める少女。 二階に辿り着き、手前から二番目の扉を叩く。 「あ、そういえば……… 今回の患者って…どんな病気なんですか?」 「…確か、片腕を切り落とされている上に…… 頭がすこしおかしいしか………」 この場合の「おかしい」というのは、やはり痴呆か障害もちの方なのだろうなあ… と考えつつ、ノゼは頷いた。 扉を開くと、待ちわびたように立ちあがる、助手のカイン。 「先生―――――っっっ、待ってましたよーーー」 言って、手を前で組み叫ぶカイン。 「何よーーーーーっっ、あたしがいない間 ちゃんと治療してたの?」 「…だ……たって…。 こーゆー障害持ちの方を看るなんて初めてで………」 「……まったくっっっ」 苛立たしげに声を上げ、ベットに歩みよる少女。 まあ…カインも1ヶ月前にここに来たんだから…、しょうがないか……。 患者と思われる男は、ベットの上へ虚ろ気に腰掛けていた。 聞いていた通り、片腕はなく、そこに何十にも巻かれた包帯が組み込まれている。 窓が開け放たれ、風の入り込むそのせいで、髪が揺れる。 「あ…そうそう… 先生、その人とお知り合いですか?」 カインが呟いたその言葉に、その男を改めてみやる少女。 こちらに背を向けているので、顔までは解らないが…、紫の髪をもつ、なかなか背の高い青年。 「………知り合いじゃ…、ないと思うけど?」 「えっ? あっれーーーーー、おかしいなーー。 だって…、さっきから先生の名前呼んでるんですよ、その人」 「…え……?」 その言葉に首を傾げる少女。 そして…、その男がゆっくりと…こちらへ向きやる。 吸い込まれそうな、その瞳を携え、妖しい美しさを持つ……。 首の辺りで切りそろえた髪が、まるで生糸のように靡き…、その妖しさを強調しているようだった。 そうして、その唇を…風の促すようにして微かに開く…。 「………リナさん……」 ――ドクンッッッ 解らない何かが、こみ上げてくる。 ――ドクンッッッ 辺りの景色が反転し、闇へと飲み込まれる。 ――ドクンッッッ ――……リナさん…… いってきます…………… そんな言葉に…、我知らず…呟く。 「……おかえりなさい…… ゼロス……………」 瞳から涙がこぼれ、それを風が運んで行く。 開け放たれていた窓から、暖かい風が吹き込み、春の訪れを感じさせる。 そして 柔らかな空気は…、二人を…包み込むように流れていった……。 ――こうして お伽話のように 残酷で ――王子様と お伽話のように ――お姫様は 幸せな 永遠に 巡る ――いつまでも ――いつまでも……… ――お伽話の子守歌―― ――幸せに暮らしましたとさ……… めでたし…めでたし…… *END* ご意見ご感想お待ちしてます。質問も。 |
11247 | ゼロリナ最高!!!感動しました!!!! | はどーう | 7/30-19:51 |
記事番号11245へのコメント 久々に超大作を読んだ!!! って感覚デス!!!! もーーーーーーーーーーーーーーリナとゼロスが最高!!!!! 今はとりあえずこれだけで・・・。 はーーーーー・・・映画みたいでしたっっ |
11250 | Re:ゼロリナ最高!!!感動しました!!!! | 一姫都 E-mail | 7/31-10:37 |
記事番号11247へのコメント どうも一姫です。レスありがとうございますっっ >久々に超大作を読んだ!!! >って感覚デス!!!! >もーーーーーーーーーーーーーーリナとゼロスが最高!!!!! ゼロリナは最高ですねー・・・。ふうう。 けど新作がかけない・・・ヴヴヴ・・・。 >今はとりあえずこれだけで・・・。 >はーーーーー・・・映画みたいでしたっっ 感想ありがとうございましたっっ |
11253 | 感動しましたっ! | 岬梨雨 E-mail | 8/1-01:27 |
記事番号11245へのコメント はじめまして、岬梨雨と申します。 久々にこの話をよんで、また感動してしまいました。 やっぱり、素敵なお話は何回読んでも感動するモノなんですね。 一言で言うなら、”すごい”の一言しか出てきません。 …なんだかうまく言えないんですけど。 魔族には感情がないっていうけれど、誰でも何か考えて、幸せになりたくて生きてる(?!)んだなぁと感じました。 特にゼラス様。 やっぱりゼロスのことを大事に思ってたんでしょうか? そうそう。私が一番好きなのは、リナが「殺シテ」と言うシーンです。 なんかもう感動して泣きそうでした。 体も支配されて、それでも、意志をもてるのはリナが強い精神の持ち主だからなんでしょうね。 ゼロスはゼロスで、リナの意志を尊重して殺してあげましたし。 ゼロスも辛かったんじゃないの……?とか一人で悶々と考えてしまいました。 でもこれは二人にとって1番良い結果ではなかったのか、と今では思ってます。 最後ではゼロスもリナも転生(っていうんでしょうか?)してますしね。 3世(?)越しの恋は結局叶うんでしょうかね? リナもゼロスのこと思い出してますし、叶って欲しいです。私的に。 この話を読んで、やっぱゼロリナっていい!!と己で再確認してしまいました。 ゼロリナの良いところが全部詰め込まれた話、といってもおかしくないくらい素敵な話でした。 …ああ。うまく書けない自分が憎い(涙) とにかく。 ものすごくこの話が好きだということを伝えたかったんです。それだけなんです。 訳の分からない感想ですみません。 これからもがんばってくださいね。では。 |
11267 | Re:感動しましたっ! | 一姫都 E-mail | 8/2-18:11 |
記事番号11253へのコメント どうもー、一姫都デスっっ!! >はじめまして、岬梨雨と申します。 >久々にこの話をよんで、また感動してしまいました。 >やっぱり、素敵なお話は何回読んでも感動するモノなんですね。 はじめましてデス☆ ををうっ! 以前一度読んでくださっているのですね。ありがとうございますっっ うう・・・そういっていただけるとめっちゃ嬉しいです。 >一言で言うなら、”すごい”の一言しか出てきません。 >…なんだかうまく言えないんですけど。 >魔族には感情がないっていうけれど、誰でも何か考えて、幸せになりたくて生きてる(?!)んだなぁと感じました。 >特にゼラス様。 >やっぱりゼロスのことを大事に思ってたんでしょうか? うちのゼラスさまはそうあって欲しいですねぇ・・・。 一番は自分だけど、おまけでゼロスも幸せになったらいいかしらー? みたいな(笑) >そうそう。私が一番好きなのは、リナが「殺シテ」と言うシーンです。 >なんかもう感動して泣きそうでした。 あのシーンを思いついたのは、実はこの作品をかくまえだったり。 白雪姫の資料探しをしていた時点で、特に書きたかったシーンでした。 >体も支配されて、それでも、意志をもてるのはリナが強い精神の持ち主だからなんでしょうね。 そうですね・・・。リナってばすごい。(しみじみ・・・) >ゼロスはゼロスで、リナの意志を尊重して殺してあげましたし。 >ゼロスも辛かったんじゃないの……?とか一人で悶々と考えてしまいました。 あーーー・・・そうかも。テヘ(殴) いやいやいや、そういえばかなり残酷なシーンですねー・・・。 精神的に・・・(汗) でもまあ、あの時点ではまだ魔族だったし、大丈夫気味!!?? >でもこれは二人にとって1番良い結果ではなかったのか、と今では思ってます。 そうですね。それでなければ、リナはあのまま腐ってゆく人生だった でしょうから・・・。 >最後ではゼロスもリナも転生(っていうんでしょうか?)してますしね。 >3世(?)越しの恋は結局叶うんでしょうかね? >リナもゼロスのこと思い出してますし、叶って欲しいです。私的に。 ふふふふふ。どうでしょう・・・ っていや、あははははは☆(汗) いやー・・・都的にもそう思うのです。だから、「2」を書くのを ためらっているのです・・・ふうむ・・・。 >この話を読んで、やっぱゼロリナっていい!!と己で再確認してしまいました。 >ゼロリナの良いところが全部詰め込まれた話、といってもおかしくないくらい素敵な話でした。 >…ああ。うまく書けない自分が憎い(涙) >とにかく。 >ものすごくこの話が好きだということを伝えたかったんです。それだけなんです。 >訳の分からない感想ですみません。 ううっっ、めっちゃめちゃ嬉しいです!!!! そこまでいっていただけるとは・・・。 出来れば何処か安定したページに載せて・・・と、思っているの ですけど、中々難しいですかね・・・。 >これからもがんばってくださいね。では。 ご感想、ほんとーにほんとーにありがとうございました!! よければまた読んでやってくださいね☆ では。 |
11257 | 本気の感動感想っ(ちょっと違うかも) | 葵楓 扇 | 8/2-00:23 |
記事番号11245へのコメント はじめまして、一姫都様。葵楓扇と申しますっ! 一姫都様の小説は、過去ログあさったりしてほとんど読んでました!(その後に著者別リストに気づいたという悲劇もあったけど^^;) 一度お話をしたい&一姫都様の小説に感想を付けたい、と思っていたところなので、ぐっとたいみーんぐでした。 なんだか、本当に頭がぽーっとして・・・というか・・・ ともかく、歯に衣被せた(でしたっけ?)感想はなんだか嫌だっという物語だったので、すいませんがホントに率直に、思ったことを感想として付けさせて貰います。 まず、「うわ長い読み込み時間かかるっ」という悲鳴(笑) 次に、「うわ長いともかく頑張るぞっ」という意気込み。 読むのに一時間かかっちゃいましたよ・・・。 といっても、長い&壮大な話に飢えていたので、嬉しいですけど。 そして、呼んでまず思ったのは「・・・・・・えーと・・・・・・」という呟き。 心の中で頑張って理解・・・と。 「リナちゃん、三代越しの恋愛だっ、今度は頑張れっ!」とか、「もーゼロス様上司に逆らって、勇気あるぅv」とか、「それでも私は貴方について行くわっゼラス様っ!」とか・・・・・・。 本当に、色々思いました。うん。 なんだかふざけ口調な感想は此処まで。 此処から、頑張ってシリアス路線な感想行きまーす。 リナについて どっちのリナにしようかなー・・・どちらにしましょーか、魔王様の言うとおりー・・・っと。 よし、両方に決定(おい) リナ=マグナス。オリジナルキャラにしては、良くできた設定だな、と思いました。 なんだかオリキャラって言うと、自分だけで「実はこの子は三歳の時転んで付いた傷が残ってるのよ」とか、様々な設定を作ってしまって説明不足になり、台詞に矛盾が出来たりしてしまう場合があるのに、リナ=インバースと重ねたり(てか同一人物だったけど)、語るべき場所は全部語ってくれてわかりやすいキャラになったので、本当に良くできたと思います。 原作の重要キャラに勝手に兄弟を作っちゃうのは意外と勇気のいること(と思っている)ので、このリナ=マグナスという人物については、「すごいなうん」としか言えない気がします。 ゼロスについて 魔族だって愛に生きる!(笑) 『魔族だって感情あるぞそれに従って生きてるぞ』と信じている私に取っちゃ、ゼロスは理想のキャラです。 うん、ゼロスは思い切ったコトしなきゃ。 最後、愛した人が望んだから、その人を殺す。 それって、その人のためだからって言っちゃえばそれで終わりになってしまいますけど、これって勇気のいることだと思います。 だって、それにより自分が愛した人の魂の存在が消えるんだよ? と。 ゼロスは、けれど『あの人が望んだから』とリナを殺した。 ここが、私のベストシーンの一つだと思います。 ゼラスについて ちょっとやなヤツだったかな・・・? ゼラス様好きの私にとっては納得のいかない行動をとってる、と思っていましたけど、『そーだ魔族だって愛に生きるんだ』と思い直しました。 結局ゼラス様も、みんなの幸せを願ってくれてましたね。 グラウシェラー&シェーラについて 意外に重要人物だったな、この二人・・・という感じ。 最後までゼラスを想ってくれたグラウシェラー、なんだかんだで励ましてくれたシェーラ。好きですわ、この二人。 やっぱり、シェーラとゼロスの「行ってらっしゃい」「行ってきます」が好きですね。 絶対帰ってこい、と。 魔族だって想いはあるぞー。 ガウリイ&ゼル&アメリア&シルフィールについて リナを愛していてくれてありがとう、とばかりなキャラ。 魔法のせいとはいえ、本当にリナの死体を見たらああなりそうなガウリイ。本当にリナのことを想ってくれてたな。 いつまでも過去にしがみつかれないでいるゼル。けれど、きっと心の中は複雑だろうな。 アメリア。強くなったな、私は嬉しいぞ(ちょっと違う)。そう、アメリアは絶対、人の死を乗り越えて強くなるんだと想います。今のアメリアの強さの源は、きっと母ですけど。 シルフィール。出てきたことがちょっと意外だったキャラ。いや、アメリアがリナを呼び捨てにしてるから「小説風だな」と思ってたら、サイラーグに住んでいたし(小説だとシルはセイルーンに住んでるから)でも、出てこなかったらガウリイはどうなったやら。 他の人について フィブリゾ・コピー・・・何言えば良いんだろうなぁ。 レイ=マグナス・・・いい人で嬉しい。ところで、appleって世界に広めちゃまずい薬だと思うんですけど(犯罪に使われそう) 最後の人たち・・・幸せになってくれればそれで良い。そんな人たちでした。 ともかく全部ひっくるめて 映画を見ているみたいでした。 壮大な世界を見た気がします。 影の影、細部中の細部までちゃんと書かれていて、素晴らしい小説だと思いました。 ただちょっと贅沢言っちゃうと・・・名前間違えには注意して欲しかったな、と。『グラウシェラー』とか『ガウリイ』とか。 いえいえ、こんなのはほんのちょぴっと。 人のHN間違えるよりはマシ!(間違えたことあったり^^;) 本当に、こんな小説と会わせて下さってありがとうございました。 それだけ言わせて下さい。 世界が、広くて大きくて深くて・・・ともかく、『そんなスレイヤーズ』が読めて嬉しいです。 次回作、期待してます・・・・・・ では、長くなってしまいましたが、これで。 |
11268 | Re:本気の感動感想っ(ちょっと違うかも) | 一姫都 E-mail | 8/2-18:50 |
記事番号11257へのコメント どうも!一姫こと都です!!(=!?) > はじめまして、一姫都様。葵楓扇と申しますっ! どうもどうもっ(汗)一姫です。こちらこそはじめまして☆ > 一姫都様の小説は、過去ログあさったりしてほとんど読んでました!(その後に著者別リストに気づいたという悲劇もあったけど^^;) > 一度お話をしたい&一姫都様の小説に感想を付けたい、と思っていたところなので、ぐっとたいみーんぐでした。 うにぃ!!??(汗汗)あ、ありがとうございますっっっ なんだかすんごい嬉しいデス!!!!!!あんなに休止していたのに、 作品を読んでくださっていた方がいらっしゃるなんて・・・! > まず、「うわ長い読み込み時間かかるっ」という悲鳴(笑) > 次に、「うわ長いともかく頑張るぞっ」という意気込み。 > 読むのに一時間かかっちゃいましたよ・・・。 ううっ。このお話の最大の弱点!!!(汗) あたしでも30ぷんかかります。はい。(泣) > といっても、長い&壮大な話に飢えていたので、嬉しいですけど。 そうですねぇ・・・。長編は書くの大変ですもんねえ・・・。(しみじみ) > そして、呼んでまず思ったのは「・・・・・・えーと・・・・・・」という呟き。 > 心の中で頑張って理解・・・と。 > 「リナちゃん、三代越しの恋愛だっ、今度は頑張れっ!」とか、「もーゼロス様上司に逆らって、勇気あるぅv」とか、「それでも私は貴方について行くわっゼラス様っ!」とか・・・・・・。 > 本当に、色々思いました。うん。 あははははははははははは!! うーーーみゅ、そうですかあ。色々考えちゃったですかー・・・。 > なんだかふざけ口調な感想は此処まで。 > 此処から、頑張ってシリアス路線な感想行きまーす。 ををうっ。こ、こころの準備がっ・・・(汗) > リナ=マグナス。オリジナルキャラにしては、良くできた設定だな、と思いました。 > なんだかオリキャラって言うと、自分だけで「実はこの子は三歳の時転んで付いた傷が残ってるのよ」とか、様々な設定を作ってしまって説明不足になり、台詞に矛盾が出来たりしてしまう場合があるのに、リナ=インバースと重ねたり(てか同一人物だったけど)、語るべき場所は全部語ってくれてわかりやすいキャラになったので、本当に良くできたと思います。 > 原作の重要キャラに勝手に兄弟を作っちゃうのは意外と勇気のいること(と思っている)ので、このリナ=マグナスという人物については、「すごいなうん」としか言えない気がします。 勇気・・・。あはは、何も考えてませんでした!(笑) じゃすまないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ(汗汗) いやー・・・そうですよねえ。結構大変なことをしたですねえ・・・。 ーーリナをゼロスがどうしてスキなのか? ーーフィブの一件で一目ぼれ!いやーんゼロスも中々若いわね!!☆ ・・・じゃ、説得力がナイ気がして・・・。 以前にもっと強いつながりがなきゃ、上司に逆らってまで恋愛に走らないわ!! そうよ!!運命って素晴らしい☆☆!!!! ・・・って勢いで、リナ(一号)の誕生だったです。 あと只でさえ、長くて複雑な内容だったので、読みやすく!! わかりやすく!!を心がけました。(そしたら予想以上に長くなった・笑) > ゼロスについて > > 魔族だって愛に生きる!(笑) > 『魔族だって感情あるぞそれに従って生きてるぞ』と信じている私に取っちゃ、ゼロスは理想のキャラです。 > うん、ゼロスは思い切ったコトしなきゃ。 > 最後、愛した人が望んだから、その人を殺す。 > それって、その人のためだからって言っちゃえばそれで終わりになってしまいますけど、これって勇気のいることだと思います。 > だって、それにより自分が愛した人の魂の存在が消えるんだよ? と。 > ゼロスは、けれど『あの人が望んだから』とリナを殺した。 > ここが、私のベストシーンの一つだと思います。 そうですね。ゼロスくん、このお話ではまるっきり人間っぽい言動。 あたしのタイプでした。ふふふ☆ リナのために自分の手を汚す・・・。 リナのことを一番に考えているからこそできることですよね。 殺した後辛いのは自分なのにね。 > ゼラスについて > > ちょっとやなヤツだったかな・・・? > ゼラス様好きの私にとっては納得のいかない行動をとってる、と思っていましたけど、『そーだ魔族だって愛に生きるんだ』と思い直しました。 > 結局ゼラス様も、みんなの幸せを願ってくれてましたね。 いやー、この話のゼラス様。自分のことが一番でしたねー・・・ふふう。 雰囲気的には、妻子持ちの上司と不倫をしている執念深いお局OL? 「ふふふ・・・あなた(S)の奥さん(リナ)にいやがらせしてやる!! あの人には、あなたもお子さんもいるのに、どうしてあたしだけ・・・!!」 みたいな。(これじゃ昼ドラ・・・) > グラウシェラー&シェーラについて > > 意外に重要人物だったな、この二人・・・という感じ。 > 最後までゼラスを想ってくれたグラウシェラー、なんだかんだで励ましてくれたシェーラ。好きですわ、この二人。 > やっぱり、シェーラとゼロスの「行ってらっしゃい」「行ってきます」が好きですね。 > 絶対帰ってこい、と。 > 魔族だって想いはあるぞー。 グラウさま。男らしい(はぁと) けどやっぱり愛は盲目だった瞬間!! シェーラちゃんは、とってもとっても活躍してくれました。 おつかれさまっ☆って感じ。あの二人が兄弟みたいに仲いいと いいなあ・・・ってずっとおもっているので、あたしの小説であの二人の 関係は不滅ですっっ > ガウリイ&ゼル&アメリア&シルフィールについて > > リナを愛していてくれてありがとう、とばかりなキャラ。 りなちん幸せもの。くくぅっっ!!!ってかんじですねぇ・・・。 > 魔法のせいとはいえ、本当にリナの死体を見たらああなりそうなガウリイ。本当にリナのことを想ってくれてたな。 ガウリイを出す・・・これは賭けでした。 ガウリィって、なんだかこういうことが通用しなそうな人物だから(汗) 恐るべしクラゲぱわー・・・。 でも出して良かったです。 > いつまでも過去にしがみつかれないでいるゼル。けれど、きっと心の中は複雑だろうな。 > アメリア。強くなったな、私は嬉しいぞ(ちょっと違う)。そう、アメリアは絶対、人の死を乗り越えて強くなるんだと想います。今のアメリアの強さの源は、きっと母ですけど。 ゼルとアメは予想通りに頑張ってくれましたーっっ アメちゃんがリナに似てきたなあ・・・と、書いてて思いました。 > シルフィール。出てきたことがちょっと意外だったキャラ。いや、アメリアがリナを呼び捨てにしてるから「小説風だな」と思ってたら、サイラーグに住んでいたし(小説だとシルはセイルーンに住んでるから)でも、出てこなかったらガウリイはどうなったやら。 むっちゃ設定ミスですねえ・・・。(汗汗) でもまあ、いいかっアハ!(殴) シルフィール・・・とガウリィはこの後、くっつかない気がしますねぇ。 ガウリィはそのまま独身っぽい。シルはガウリィとは正反対のタイプの ひとと温かな家庭を築く・・・。というのがわたくし予想。 > 他の人について > > フィブリゾ・コピー・・・何言えば良いんだろうなぁ。 > レイ=マグナス・・・いい人で嬉しい。ところで、appleって世界に広めちゃまずい薬だと思うんですけど(犯罪に使われそう) ほんとです(笑) なに考えてる!!レイ・マグナス!!(ぷんぷん) > ともかく全部ひっくるめて > > 映画を見ているみたいでした。 > 壮大な世界を見た気がします。 > 影の影、細部中の細部までちゃんと書かれていて、素晴らしい小説だと思いました。 コンテを頭の中で描きつつ書いたので、そういってもらえると嬉しいです。 流れがしっかり掴めたお話だったので、とってもかきやすかったです。 あと、書き始めてから終わりまでが、とっても短く、自分中でも ジェットコースターのように駆け抜けたので、スピィディーさがあるかもっっ > ただちょっと贅沢言っちゃうと・・・名前間違えには注意して欲しかったな、と。『グラウシェラー』とか『ガウリイ』とか。 > いえいえ、こんなのはほんのちょぴっと。 > 人のHN間違えるよりはマシ!(間違えたことあったり^^;) すいま゛せんっっ(汗)以後気をつけますぅ・・・。 間違いの達人だったりしたりしなかったり・・・(汗) > 本当に、こんな小説と会わせて下さってありがとうございました。 > それだけ言わせて下さい。 > 世界が、広くて大きくて深くて・・・ともかく、『そんなスレイヤーズ』が読めて嬉しいです。 > 次回作、期待してます・・・・・・ > では、長くなってしまいましたが、これで。 こちらこそ、ありがとうございました。 ご感想のおかげで、色々反省点やら、嬉しい笑いやら・・・ 感じさせていただくことが出来ました。 次回作は・・・どうしよう(苦悩)ってカンジなのですが、 この作品を書いていたときのあの感覚を思い出したくて、 いま試行錯誤してます。もし出来た暁には、読んでやってくださいね☆ それでは! |
11280 | レスのレス(何のためかは不明) | 葵楓 扇 | 8/3-14:13 |
記事番号11268へのコメント 一姫都さんは No.11268「Re:本気の感動感想っ(ちょっと違うかも)」で書きました。 >どうも!一姫こと都です!!(=!?) どうも、ぐっとあふたぬーん。 扇です。 色々と思いだして・・・もとい(私はそんなに記憶力良くない)著者別リスト(一番最初に何故か私のツリーがあるあれ(笑))を見て思い出したので、酷いことに『これ以外の小説に感想付けて良いですか?』的にやってきました(おいおいおい) というより私、一姫様ってヴァルフィリ作家だと思っていたんです実は(笑)ゼロリナ書くのも知ってましたけど。 一姫様の小説で一番最初に読んだのが、『洗濯日和』だったから・・・・・・ははは。(乾いた笑い) 良いじゃないのさっ、私はヴァルフィリが好きなのよっ!(ヤケ) 『洗濯日和』と『緑の〜』は、すっごく好きです。ヴァルフィリだから(それだけ?) そして! 『封神演義』だぁぁぁぁっ(これを言うために来た気がする) そーさ! 飛虎好きさ! 黄家全員好きさ!(ヤケ) これを過去ログで見つけたときは感動していたわ・・・ふふふ・・・ ・・・ちょっと壊れましたね。粗大ゴミにでも出して置いて下さい(ぽいっ) >> 一姫都様の小説は、過去ログあさったりしてほとんど読んでました!(その後に著者別リストに気づいたという悲劇もあったけど^^;) >> 一度お話をしたい&一姫都様の小説に感想を付けたい、と思っていたところなので、ぐっとたいみーんぐでした。 > >うにぃ!!??(汗汗)あ、ありがとうございますっっっ >なんだかすんごい嬉しいデス!!!!!!あんなに休止していたのに、 >作品を読んでくださっていた方がいらっしゃるなんて・・・! でも過去ログで見ただけなので、全部全部見たワケじゃないです(汗) これから見に行きます〜v >> まず、「うわ長い読み込み時間かかるっ」という悲鳴(笑) >> 次に、「うわ長いともかく頑張るぞっ」という意気込み。 >> 読むのに一時間かかっちゃいましたよ・・・。 > >ううっ。このお話の最大の弱点!!!(汗) >あたしでも30ぷんかかります。はい。(泣) 分けて投稿すれば・・・・・・ >> といっても、長い&壮大な話に飢えていたので、嬉しいですけど。 > >そうですねぇ・・・。長編は書くの大変ですもんねえ・・・。(しみじみ) 私の小説は、長編と短編の差が激しいですけど(笑) >> そして、呼んでまず思ったのは「・・・・・・えーと・・・・・・」という呟き。 >> 心の中で頑張って理解・・・と。 >> 「リナちゃん、三代越しの恋愛だっ、今度は頑張れっ!」とか、「もーゼロス様上司に逆らって、勇気あるぅv」とか、「それでも私は貴方について行くわっゼラス様っ!」とか・・・・・・。 >> 本当に、色々思いました。うん。 > >あははははははははははは!! >うーーーみゅ、そうですかあ。色々考えちゃったですかー・・・。 考えても何もでなかったですけど(おい) 愛と嫉妬ってものが分かってきた気がします・・・ >> なんだかふざけ口調な感想は此処まで。 >> 此処から、頑張ってシリアス路線な感想行きまーす。 > >ををうっ。こ、こころの準備がっ・・・(汗) だいじょぶ、すぐ壊れるから(おい) >> リナ=マグナス。オリジナルキャラにしては、良くできた設定だな、と思いました。 >> なんだかオリキャラって言うと、自分だけで「実はこの子は三歳の時転んで付いた傷が残ってるのよ」とか、様々な設定を作ってしまって説明不足になり、台詞に矛盾が出来たりしてしまう場合があるのに、リナ=インバースと重ねたり(てか同一人物だったけど)、語るべき場所は全部語ってくれてわかりやすいキャラになったので、本当に良くできたと思います。 >> 原作の重要キャラに勝手に兄弟を作っちゃうのは意外と勇気のいること(と思っている)ので、このリナ=マグナスという人物については、「すごいなうん」としか言えない気がします。 > >勇気・・・。あはは、何も考えてませんでした!(笑) >じゃすまないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ(汗汗) >いやー・・・そうですよねえ。結構大変なことをしたですねえ・・・。 >ーーリナをゼロスがどうしてスキなのか? >ーーフィブの一件で一目ぼれ!いやーんゼロスも中々若いわね!!☆ >・・・じゃ、説得力がナイ気がして・・・。 >以前にもっと強いつながりがなきゃ、上司に逆らってまで恋愛に走らないわ!! >そうよ!!運命って素晴らしい☆☆!!!! >・・・って勢いで、リナ(一号)の誕生だったです。 >あと只でさえ、長くて複雑な内容だったので、読みやすく!! >わかりやすく!!を心がけました。(そしたら予想以上に長くなった・笑) 本当、リナ=マグナスが居なかったら、この話は今とは全然違う結末になったでしょうね。 『なぜゼラス様があーいうことしたのん?』とか、謎が山ほどになってしまいますし。 ところで、ゼラス様は今リナを殺しましたけど、何故『今』だったんですか? もっと未来でも、いやシャブラニグドゥ様が死んじゃった直後でも良い気がするんですけど・・・ >> ゼロスについて >> >> 魔族だって愛に生きる!(笑) >> 『魔族だって感情あるぞそれに従って生きてるぞ』と信じている私に取っちゃ、ゼロスは理想のキャラです。 >> うん、ゼロスは思い切ったコトしなきゃ。 >> 最後、愛した人が望んだから、その人を殺す。 >> それって、その人のためだからって言っちゃえばそれで終わりになってしまいますけど、これって勇気のいることだと思います。 >> だって、それにより自分が愛した人の魂の存在が消えるんだよ? と。 >> ゼロスは、けれど『あの人が望んだから』とリナを殺した。 >> ここが、私のベストシーンの一つだと思います。 > >そうですね。ゼロスくん、このお話ではまるっきり人間っぽい言動。 >あたしのタイプでした。ふふふ☆ >リナのために自分の手を汚す・・・。 >リナのことを一番に考えているからこそできることですよね。 >殺した後辛いのは自分なのにね。 ゼロスはゼロス。リナはリナ。 リナのためなら何でもする、それがゼロス。 このゼロス君はそんなひ弱・・・・・・違う違う、男らしい人でしたね。 >> ゼラスについて >> >> ちょっとやなヤツだったかな・・・? >> ゼラス様好きの私にとっては納得のいかない行動をとってる、と思っていましたけど、『そーだ魔族だって愛に生きるんだ』と思い直しました。 >> 結局ゼラス様も、みんなの幸せを願ってくれてましたね。 > >いやー、この話のゼラス様。自分のことが一番でしたねー・・・ふふう。 >雰囲気的には、妻子持ちの上司と不倫をしている執念深いお局OL? >「ふふふ・・・あなた(S)の奥さん(リナ)にいやがらせしてやる!! >あの人には、あなたもお子さんもいるのに、どうしてあたしだけ・・・!!」 >みたいな。(これじゃ昼ドラ・・・) 昼ドラっすよ、それ(笑) とりあえず、次回作のゼラス様のあつかいに期待(笑) >> グラウシェラー&シェーラについて >> >> 意外に重要人物だったな、この二人・・・という感じ。 >> 最後までゼラスを想ってくれたグラウシェラー、なんだかんだで励ましてくれたシェーラ。好きですわ、この二人。 >> やっぱり、シェーラとゼロスの「行ってらっしゃい」「行ってきます」が好きですね。 >> 絶対帰ってこい、と。 >> 魔族だって想いはあるぞー。 > >グラウさま。男らしい(はぁと) >けどやっぱり愛は盲目だった瞬間!! >シェーラちゃんは、とってもとっても活躍してくれました。 >おつかれさまっ☆って感じ。あの二人が兄弟みたいに仲いいと >いいなあ・・・ってずっとおもっているので、あたしの小説であの二人の >関係は不滅ですっっ そうさゼロス、「おかえり」って言って帰ってこ〜いっ!(ムチャ) >> ガウリイ&ゼル&アメリア&シルフィールについて >> >> リナを愛していてくれてありがとう、とばかりなキャラ。 > >りなちん幸せもの。くくぅっっ!!!ってかんじですねぇ・・・。 でなければ、スレイヤーズの主役なんかやってられないっ! >> 魔法のせいとはいえ、本当にリナの死体を見たらああなりそうなガウリイ。本当にリナのことを想ってくれてたな。 > >ガウリイを出す・・・これは賭けでした。 >ガウリィって、なんだかこういうことが通用しなそうな人物だから(汗) >恐るべしクラゲぱわー・・・。 >でも出して良かったです。 クラゲぱわー・・・・・・(笑) >> いつまでも過去にしがみつかれないでいるゼル。けれど、きっと心の中は複雑だろうな。 >> アメリア。強くなったな、私は嬉しいぞ(ちょっと違う)。そう、アメリアは絶対、人の死を乗り越えて強くなるんだと想います。今のアメリアの強さの源は、きっと母ですけど。 > >ゼルとアメは予想通りに頑張ってくれましたーっっ >アメちゃんがリナに似てきたなあ・・・と、書いてて思いました。 まぁ、アメリアはリナの生き写し(嘘)ですから。 >> シルフィール。出てきたことがちょっと意外だったキャラ。いや、アメリアがリナを呼び捨てにしてるから「小説風だな」と思ってたら、サイラーグに住んでいたし(小説だとシルはセイルーンに住んでるから)でも、出てこなかったらガウリイはどうなったやら。 > >むっちゃ設定ミスですねえ・・・。(汗汗) >でもまあ、いいかっアハ!(殴) >シルフィール・・・とガウリィはこの後、くっつかない気がしますねぇ。 >ガウリィはそのまま独身っぽい。シルはガウリィとは正反対のタイプの >ひとと温かな家庭を築く・・・。というのがわたくし予想。 ガウシル(もしくはシルガウ)は認められないっ!! >> 他の人について >> >> フィブリゾ・コピー・・・何言えば良いんだろうなぁ。 >> レイ=マグナス・・・いい人で嬉しい。ところで、appleって世界に広めちゃまずい薬だと思うんですけど(犯罪に使われそう) > >ほんとです(笑) >なに考えてる!!レイ・マグナス!!(ぷんぷん) リナ=マグナスもリナ=マグナスだっ!(フルネーム長) こんなの世界に広めるなよだからっ!! >> ともかく全部ひっくるめて >> >> 映画を見ているみたいでした。 >> 壮大な世界を見た気がします。 >> 影の影、細部中の細部までちゃんと書かれていて、素晴らしい小説だと思いました。 > >コンテを頭の中で描きつつ書いたので、そういってもらえると嬉しいです。 >流れがしっかり掴めたお話だったので、とってもかきやすかったです。 >あと、書き始めてから終わりまでが、とっても短く、自分中でも >ジェットコースターのように駆け抜けたので、スピィディーさがあるかもっっ そういう作品は、出来た後に達成感と違和感を感じるんですよねぇ(私だけ?) でも、やってよかった、って思えるようになるよう、頑張れるんですよね。 >> ただちょっと贅沢言っちゃうと・・・名前間違えには注意して欲しかったな、と。『グラウシェラー』とか『ガウリイ』とか。 >> いえいえ、こんなのはほんのちょぴっと。 >> 人のHN間違えるよりはマシ!(間違えたことあったり^^;) > >すいま゛せんっっ(汗)以後気をつけますぅ・・・。 >間違いの達人だったりしたりしなかったり・・・(汗) はっはっは(とか笑っときながら、遠くを見る) >> 本当に、こんな小説と会わせて下さってありがとうございました。 >> それだけ言わせて下さい。 >> 世界が、広くて大きくて深くて・・・ともかく、『そんなスレイヤーズ』が読めて嬉しいです。 >> 次回作、期待してます・・・・・・ >> では、長くなってしまいましたが、これで。 > >こちらこそ、ありがとうございました。 >ご感想のおかげで、色々反省点やら、嬉しい笑いやら・・・ >感じさせていただくことが出来ました。 >次回作は・・・どうしよう(苦悩)ってカンジなのですが、 >この作品を書いていたときのあの感覚を思い出したくて、 >いま試行錯誤してます。もし出来た暁には、読んでやってくださいね☆ はい、絶対読みます! ヴァルフィリが良いかも・・・(殴っ) >それでは! ではでは、扇でした〜☆ 次回も、頑張って下さいっ!! (しかし、何のためにレスのレスしたんだろ本当に・・・) |
11289 | Re:レスのレス(何のためかは不明) | 一姫都 E-mail | 8/3-17:18 |
記事番号11280へのコメント 葵楓 扇さんは No.11280「レスのレス(何のためかは不明)」で書きました。 レスのレスってなつかしやーーー(ほわほわーん) 一姫どーす。 『これ以外の小説に感想付けて良いですか?』的にやってきました(おいおいおい) わーいレスレスー(はぁと)感想に飢えてるあたしにはうれちぃーデス☆ > というより私、一姫様ってヴァルフィリ作家だと思っていたんです実は(笑) ごふっっ(吐血) ゼロリナ書くのも知ってましたけど。 > 一姫様の小説で一番最初に読んだのが、『洗濯日和』だったから・・・・・・ははは。(乾いた笑い) ・・・な、なりゅほど。(汗だくだく) > 良いじゃないのさっ、私はヴァルフィリが好きなのよっ!(ヤケ) > 『洗濯日和』と『緑の〜』は、すっごく好きです。ヴァルフィリだから(それだけ?) 緑のー・・・は、短編の中でもかなりスキ作品☆ 最初の詩とかもお気に入りー。洗濯日和は、実は完結編があったりするの ですよ・・・ふふふふふ。(かなりダークですけど・・・) > そして! > 『封神演義』だぁぁぁぁっ(これを言うために来た気がする) ほよよ? (いきなりのじゃんる変換に頭がついていかない様子。五歳児かあたしゃ・・・) > そーさ! 飛虎好きさ! 黄家全員好きさ!(ヤケ) > これを過去ログで見つけたときは感動していたわ・・・ふふふ・・・ > ・・・ちょっと壊れましたね。粗大ゴミにでも出して置いて下さい(ぽいっ) あーなるほど。アレですねっ、かし様のっ(はぁと) もーーーーーーーーーーーかしラブ!!!! あとー、某カップリングがスキすぎて、本とか出してた勢いですねー。 ははははははは(若気の至り。) >>なんだかすんごい嬉しいデス!!!!!!あんなに休止していたのに、 >>作品を読んでくださっていた方がいらっしゃるなんて・・・! > でも過去ログで見ただけなので、全部全部見たワケじゃないです(汗) > これから見に行きます〜v わをうっ、フライング!!(汗) > 分けて投稿すれば・・・・・・ それは、ダ・メ(はぁと・色々と。) > 考えても何もでなかったですけど(おい) > 愛と嫉妬ってものが分かってきた気がします・・・ 深いテーマですよねぇ。(書いてるのがこんなんなのに・・・) > ところで、ゼラス様は今リナを殺しましたけど、何故『今』だったんですか? > もっと未来でも、いやシャブラニグドゥ様が死んじゃった直後でも良い気がするんですけど・・・ それは、やっぱり・・・。 使用価値が無くなったというか・・・。まあ、もう使用しなくていいかなみたいな。そろそろ苦痛の日々を味あわせたいとか・・・。 気まぐれやゼラス様の気まぐれ率、が高いと思うんですけどね・・・。 > とりあえず、次回作のゼラス様のあつかいに期待(笑) そうですね。次回は、まるで若作り!女優ゼラス華麗なる日々!! みたいの書きたい・・・よーなかきたくないよーな・・・。 > そういう作品は、出来た後に達成感と違和感を感じるんですよねぇ(私だけ?) > でも、やってよかった、って思えるようになるよう、頑張れるんですよね。 一番嬉しいのはやっぱり、皆さんの感想カナ。 長いと長い分だけ、熱の篭った感想をいただける・・・。はあ幸せ・・・。 (負の感情を喰らう魔族の感覚ってこんなん?) > ヴァルフィリが良いかも・・・(殴っ) ここでなくて、他の方のページにいくつか寄贈させていただいた ものがいくつか存在してるはず・・・。ウフ。 でも、洗濯日和の完結編も書きたいですね。 ではでは。 |
11261 | 素晴らしいです。 | 月の人 E-mail | 8/2-09:56 |
記事番号11245へのコメント はじめまして、一姫 都様、月の人といいます。 お名前は以前から知っています。過去記事でこの作品を読んだ時、ものすごく感動したのを覚えてますし、内容も覚えていました。こちらで、また読むことができて感激しています。 独特な世界観、その人それぞれの人物のらしさ、表現する言葉、心理描写、その他いろいろとすごく上手く書かれています。 リナちゃんが死んじゃったなんて・・・ 口に羽を詰められ 顔は爛れ 腹を剔られ 内臓を心臓を すべてもぎ取られた 実は私、この表現がなぜか凄く印象に残ってます。 スプラッタ描写がありましたが、全然気にすることなくすっと読めました。 リナ・マグナス・・・レイ・マグナスの妹、レイ様はリナ・マグナスのことを愛していたんでしょうね。だから、遠くに逃がした。 でも、戻っていくところが潔くて素敵です。 ゼロス様が愛した一人目の人間の女性。ゼラス様の嫉妬心の為にその記憶は消され そして、リナ・インバースはこの世からいなくなった。ゼロス様が愛した二人目の女性。いえ、リナ・マグナスとリナ・インバースは同じなんですね。 過去と現在、愛と嫉妬、テーマが決められていて、深く読めました。 人間は嫉妬をすると時に激しく壊れ、傷つけてしまいます。 魔族・・・ゼラス様もそうなんですね。自分を愛してくれない・・・そして、魔王様が愛してる女性を永遠に閉じ込めて、人間の血を浴びせて・・・ 魔王様が復活すれば、またその場所に出現させて・・・終わると閉じ込める。 何もかも思い出したゼロス様がとった行動。彼女を剣で・・・でも、それは彼女が望んだ事だから、永遠に閉じ込められてる今の状況から救ったんですね。 繰り返し、使われる言葉が心の奥に深く刻み込まれます。 そして、転生して巡り会える二人。 前世の記憶は残ってたんですね。 「いってきます」 「おかえりなさい」 何気ない言葉なのに、この作品を読んでいたら本当に大切な言葉なんですね。 幸せに暮してる二人に「よかったね、本当によかったね」って声をかけたいです。 時間も忘れ、夢中になって読んでました。痛くて、切なくて、暖かくて、しんみりとして、いろんな気持ちを私に伝えて、感動しています。 まだ、言葉が足りないですが、私の文章では表現できるのはこれが精一杯です。 本当に、素敵でした。この作品の世界に引き込まれ、のめり込みました。 このような形で感想が書けてとても嬉しいです。 再々掲示ありがとうございました。 体には気をつけてくださいね。 素晴らしいお話をありがとうございました。 |
11269 | Re:素晴らしいです。 | 一姫都 E-mail | 8/2-19:06 |
記事番号11261へのコメント >はじめまして、一姫 都様、月の人といいます。 はじめましてーーーーっっっ☆一姫都デス。 >お名前は以前から知っています。過去記事でこの作品を読んだ時、ものすごく感動したのを覚えてますし、内容も覚えていました。こちらで、また読むことができて感激しています。 過去記事で読んでいただいたのですかっっ ありがとうございますっっ!! 過去記事ってどんどん埋もれていくだけなのかな・・・ふふふ っといじけ気味だったので・・・・。 >独特な世界観、その人それぞれの人物のらしさ、表現する言葉、心理描写、その他いろいろとすごく上手く書かれています。 >リナちゃんが死んじゃったなんて・・・ このお話の核となるもの。「白雪姫」。 これを決めたとき、同時にリナを殺すというのは決定していました。 どうやっても死にそうにない、強靭なリナちゃんが死んでしまうと いうのは、中々印象的なことだったです・・・(自分的にも・汗) >口に羽を詰められ >顔は爛れ >腹を剔られ >内臓を心臓を >すべてもぎ取られた > >実は私、この表現がなぜか凄く印象に残ってます。 >スプラッタ描写がありましたが、全然気にすることなくすっと読めました。 短い言葉で核心を! じゃないですが、そういう風に言葉を使えたらいいなあ・・・と 思っているので、そういっていただけるととっても嬉しいですっっ!! スプラッタ・・・でしたよね。結構(汗)都は結構大丈夫なほうなので、 ぽこぽこ書いてしまいましたが・・・。 ゼロス様が愛した二人目の女性。いえ、リナ・マグナスとリナ・インバースは同じなんですね。 だからこそ、現在に生きたリナ(インバース)のことが気にかかったのでしょうね。 ゼロスは・・・・。 >過去と現在、愛と嫉妬、テーマが決められていて、深く読めました。 これいいですねっっ!!! 過去と現在 愛と嫉妬 きゃーーーーっっっ!☆ >人間は嫉妬をすると時に激しく壊れ、傷つけてしまいます。 >魔族・・・ゼラス様もそうなんですね。自分を愛してくれない・・・そして、魔王様が愛してる女性を永遠に閉じ込めて、人間の血を浴びせて・・・ >魔王様が復活すれば、またその場所に出現させて・・・終わると閉じ込める。 ゼラスさま、とっても女でしたね。 一番顕著に出した感情がこれとは・・・。 >何もかも思い出したゼロス様がとった行動。彼女を剣で・・・でも、それは彼女が望んだ事だから、永遠に閉じ込められてる今の状況から救ったんですね。 >繰り返し、使われる言葉が心の奥に深く刻み込まれます。 そうですね。 普通自分が可愛かったら、自分が悲しくなることはしないはず。 だけど、ゼロスはリナを殺した。 自分が痛いのに。自分のことを考えないで、ただリナのために。 >そして、転生して巡り会える二人。 >前世の記憶は残ってたんですね。 >「いってきます」 >「おかえりなさい」 >何気ない言葉なのに、この作品を読んでいたら本当に大切な言葉なんですね。 >幸せに暮してる二人に「よかったね、本当によかったね」って声をかけたいです。 そうですね。幸せって何気ないものですから・・・。 これからは毎日言い合って、喧嘩もしながら、幸せに暮らしてくれてると いいですねっ >時間も忘れ、夢中になって読んでました。痛くて、切なくて、暖かくて、しんみりとして、いろんな気持ちを私に伝えて、感動しています。 >まだ、言葉が足りないですが、私の文章では表現できるのはこれが精一杯です。 >本当に、素敵でした。この作品の世界に引き込まれ、のめり込みました。 >このような形で感想が書けてとても嬉しいです。 >再々掲示ありがとうございました。 >体には気をつけてくださいね。 >素晴らしいお話をありがとうございました。 こちらこそ、とってもありがとうございました。 再々掲示は、最初のつけたしの通り、数人の方に言われてしたものなので、 こうしてご感想をいただけるなんておもってもいませんでした。 なんでほんとうに幸せです☆ このお話を読んでくださってる方がこんなにいらっしゃる・・・ ううっっっ(涙) テスト期間中(しかも受験・笑)に費やした時間とか、そんなのぜんぜん 惜しくないぐらい、とっても意味のあるお話を書けた・・・ と、すっごく誇りに思いマス!! それでは・・・。 |
11270 | 初めまして | 神無月 遊芽 E-mail | 8/2-19:17 |
記事番号11245へのコメント 初めまして。一姫都様。神無月と申します。 この話、以前過去ログをあさっている時にも見かけたのですが、大変素晴らしかったです。もうそれしか言い様がないくらいに。 その時はゼロリナが好き〜くらいだったのに、一姫様の小説を読んで、どっぷりつかってしまいました。 お伽噺の残酷さ、狂気すら浮かぶ深い愛。それがとてもよく表現出来ていて、文章の一つ一つがとても素敵で、感動的で、以前読んだ時、読み終えても涙が止まらなかったのを憶えています。 今まで読んだ小説の中でも、何年経っても忘れられないくらい印象的なお話でした。 あまりに心がいっぱいで、どう表現したらいいのかわからないのですが、本当に感動しました。少し長いので読むのに根気がいりましたが、それを差し引きしても、本当に読んでよかったと思えました。 あまり細かい感想を書くと変なことを書いてしまいそうなのでやめておきますが、本当に素晴らしかったです。 よろしければ、また、こういう話を書いてください。 それでは。 神無月 遊芽 |
11286 | Re:初めまして | 一姫都 E-mail | 8/3-16:52 |
記事番号11270へのコメント > 初めまして。一姫都様。神無月と申します。 どうも、初めまして☆一姫都デスっっ > この話、以前過去ログをあさっている時にも見かけたのですが、大変素晴らしかったです。もうそれしか言い様がないくらいに。 > その時はゼロリナが好き〜くらいだったのに、一姫様の小説を読んで、どっぷりつかってしまいました。 ええっっホントですか!?(ドキドキ) ゼロリナ布教委員のワタクシとしては、とっても幸せなご意見っっ +今回の再々掲示で、過去ログのありがたさをしみじみ実感・・・。 こんなに読んでくださってる方がいらっしゃるなんて・・・(涙) > お伽噺の残酷さ、狂気すら浮かぶ深い愛。それがとてもよく表現出来ていて、文章の一つ一つがとても素敵で、感動的で、以前読んだ時、読み終えても涙が止まらなかったのを憶えています。 >今まで読んだ小説の中でも、何年経っても忘れられないくらい印象的なお話でした。 > あまりに心がいっぱいで、どう表現したらいいのかわからないのですが、本当に感動しました。少し長いので読むのに根気がいりましたが、それを差し引きしても、本当に読んでよかったと思えました。 それまで、だらだらと小説を書いていた私が、一度きちんと自分の文章、お話と 向き合いたくて書いた作品でした。 やっぱり内面って感化するのかなあ・・・と思いました。 涙してくださったなんて・・・ううっっ(泣)そのお言葉の方に泣いちゃいますっっ!!! 長いのに再度読んでくださったなんて・・・。 っていうか、本当に長いですよね。コレ・・・。(汗) 私も再掲示の時に目を通したのですけど、しんどかったデス・・・。正直。 > あまり細かい感想を書くと変なことを書いてしまいそうなのでやめておきますが、本当に素晴らしかったです。 > よろしければ、また、こういう話を書いてください。 今、とりあえず新作を書いている段階です。 まだ一章ですが・・・。 それもこういう感じ・・・、運命的小説で重い作品デス。 くじけなかったら(笑)、近日公開予定なので、もしよかったら 読んでやってくださいね☆ それでは、感想ありがとうございましたーーーーーっっっ(はぁと) 一姫都 |
11297 | わーっ♪ | 石井奈々子 E-mail URL | 8/4-00:28 |
記事番号11245へのコメント こん??わー♪・・・覚えていらっしゃるでしょうか? 昔、自分の書いたゼロリナの詩だか小説だか(覚えてない(おい))に感想をいただいたことのある 石井です。 昔読んだときに、「レスしたいっ!」って思ったことがあったんですが、 そのときはすでにツリーが落ちたあと、だったので、くぅっ!!っておもってました。 いま、再々掲示というのを見て、レスしてます。 ものすごっく感動して感動して、涙が止まりませんでした。 しかも、感動だけじゃなくって、「えっ!」っていう、話の驚きもあって、 ほんとにすごいと思いました。 結構長いし、ほんとに、一本の小説として出してもいいんじゃないかなってくらいですー。(パロディだけど(^^ゞ) 久しぶりに読んで、また感動が湧き上がってきて、 言葉じゃ表しきれません。 ・・・・ ああ、ゼロリナ好きでよかった(笑) わけのわからない感想ですみません(汗) これからもがんばってくださいっ ではでは♪ |
11307 | Re:わーっ♪ | 一姫都 E-mail | 8/4-14:22 |
記事番号11297へのコメント >こん??わー♪・・・覚えていらっしゃるでしょうか? >昔、自分の書いたゼロリナの詩だか小説だか(覚えてない(おい))に感想をいただいたことのある >石井です。 どうもーお久しぶりですぅぅー。一姫デス☆ 久方ぶりの出没なので、ホント、なつかしやーってかんじ・・・(しみじみ) >昔読んだときに、「レスしたいっ!」って思ったことがあったんですが、 >そのときはすでにツリーが落ちたあと、だったので、くぅっ!!っておもってました。 >いま、再々掲示というのを見て、レスしてます。 そう言ってくださる方が多くて、とっても嬉しいです。 再々掲示したかいがありました・・・くくうっっ!!(泣) >ものすごっく感動して感動して、涙が止まりませんでした。 >しかも、感動だけじゃなくって、「えっ!」っていう、話の驚きもあって、 >ほんとにすごいと思いました。 >結構長いし、ほんとに、一本の小説として出してもいいんじゃないかなってくらいですー。(パロディだけど(^^ゞ) そうですね・・・。結構どころかオリジナル色の強い物語ですよね・・・。 書いていた時はもう、無我夢中でわからなかったんですが。 こうしてご感想を読んでると、ああ、そうかあ・・・と思います。いろいろと。 >久しぶりに読んで、また感動が湧き上がってきて、 >言葉じゃ表しきれません。 >・・・・ >ああ、ゼロリナ好きでよかった(笑) ホント。ゼロリナ万歳です☆ 布教委員としては、滅ぶまでにあと100作は書きたい勢い☆ >わけのわからない感想ですみません(汗) >これからもがんばってくださいっ >ではでは♪ レスありがとうございましたーーーーーっっっ!!!!! めっちゃうれしかったですーっっっっ ではでは |