◆−王静惟さま−あごん(8/1-22:25)No.11256 ┗冬に咲く春花(後編<下>其の壱・鳴動編)−あごん(8/3-01:49)No.11274 ┗Re:冬に咲く春花(後編<下>其の弐・胎動編)−あごん(8/3-15:13)No.11282 ┣Re:冬に咲く春花(後編<下>其の弐・胎動編)−王静惟(8/3-17:02)No.11287 ┃┗Re:励みに致します(感涙)−あごん(8/4-20:53)No.11317 ┗冬に咲く春花(後編<下>其の参・流動編)−あごん(8/4-00:13)No.11296 ┗冬に咲く春花(後編<下>其の四・謀動編)−あごん(8/4-22:54)No.11320 ┗冬に咲く春花(後編<下>其の伍・険動編)−あごん(8/5-23:29)No.11326
11256 | 王静惟さま | あごん E-mail | 8/1-22:25 |
はじめまして。あごんという者です。 コメントありがとうございます。 恋愛小説も勿論、大好きなのですが、いかんせん先天性の人情欠乏症の為、自分では恋愛小説が書けない体なのです。 で、前から、猟奇物に興味があったので、書いてみた所存です。 まあ、エイプリルに負けない位には、探偵させたいと思っています(笑)。 あと、ご意見ありがたく頂戴いたします(笑)。 冬に咲く春花(後編<下>其の壱)です(泣笑)。 少しでも面白いと思われたら幸いです。 |
11274 | 冬に咲く春花(後編<下>其の壱・鳴動編) | あごん E-mail | 8/3-01:49 |
記事番号11256へのコメント 「のぞき!?」 「そう」 朝食の席で。 ルーティがいきなりその話題を持ち出してきたのは、8割方を平らげたあたりだった。彼女は憤満やるかたない、と言うように、鼻から大きく息を吐き出す。 「昨夜ね、あたしがお湯を使ってたらさ、誰かのぞいてたのよ」 「で、犯人は?」 「残念ながら」 小さく肩をすくめつつ、ルーティは首を横に振った。 「最近多いのよねぇ。町の女の子って大体やられてるわよ」 「へええ、でもその犯人もスゴイわね」 あたしは率直な意見を口にした。 「確かに。ふつーは5、6件覗いたら捕まるわよね」 「いやいや、そーゆうんじゃなくってさ」 手をぱたぱた振って応じるあたしの意図がわからないのだろう、ルーティは眉をひそめて怪訝そうに聞いてきた。 「じゃ、どーゆー事?」 「だから、今はこの町って厳戒体制じゃない?警備兵がうようよしてる最中にのぞきを敢行できるなんて、スゴイじゃないって意味で言ったんだけど」 「・・・そーいえばそうね」 あたしの言葉にルーティは、小さく何度か頷きながら答えた。 「それにしても、警備兵は何やってんだろーな」 もぎもぐと、18枚目のベーコンエッグトーストを食べながらガウリイが言う。 「そーよねぇ。あとでエルグラントさんとこ行って、警備配置の事聞いてみた方がいいかもね」 それからはしばらく、食事をする音だけが食堂を占めていた。 「さってと」 そう言ってあたしが席を立つと、続いてガウリイも立ち上がった。 「今から、どうするの?」 いつもなら、ガウリイの言うべき台詞を、ルーティがやはり立ち上がりながら聞いてきた。 「えっと、とりあえず部屋に戻って、事件の整理とか、疑問点、わかっている事いない事をまとめて、それからまた調査ね」 「じゃあ、あたしも加えてほしいの」 「え・・・?」 突然の参加申込みに、やや面食らいながらガウリイと視線を合わすあたしに、 「邪魔はしないわ、誓う。それに、事件をある程度リアルタイムで知っている人間がいた方がいいでしょ?」 理に叶った事を言うルーティ。 「確かにそうね。じゃあ、是非お願いするわ、ルーティ」 目元で笑って、彼女も椅子から立ち上がった。 「とりあえず、この事件を整理してみるわ。なにか見落としてる事がわかるかもしんないし」 あたしの部屋で、カルイお茶菓子を置いたテーブルを3人で囲み、資料を見ながらあたしが言うと。 「ん。じゃ、おれはそれを寝ないで聞けばいいんだな」 当たり前の事を、なんだかスゴイ任務のように言うガウリイ。 「当ったり前でしょーが。言っとくけど、もし寝たりしたら、問答無用であんたの頭こじ開けて、前頭葉取り出すからね」 「なんかよくわかんねーけど、とにかくヒドイ目に会うんだな?」 「ヒドイ目?それはちがうわ、ガウリイ」 ちちちち、と顔の前で指を振りつつ、言葉を続けるあたし。 「? ちがうのか?」 「そ。ヒドイとゆーよりも、ムゴイ目に会うわね」 きっぱしはっきし言い放つあたしを、まるでピーマンの怪物を見るかのよーな目で見ると、 「・・・・・・わかった」 長い沈黙の後で、なんだかヤな顔でそう呟いた。 プッ。 その時。 「あはははははははっ!」 ルーティがお腹を抱えて爆笑した。 「あなた達っていつもこんな会話しているの?」 尚も、笑いながらルーティが聞いてくる。 「ま、まあ、大体こんな感じだけど?」 「ふふっ。素敵な夫婦漫才ねぇ」 「だれが夫婦漫才よっ!」 あたしの力一杯の抗議の声にも、ルーティは笑いをこらえるのが必死なのか、無言で肩を震わせるばかり。 「とにかくっ!ンな話はどーでもいーのよっ!」 「そ、そうね。話を逸らせちゃったみたいね、ごめんなさい」 顔は真剣ながらも、どこか声にまだ笑いの余韻を残しつつ、ルーティが謝る。 「じゃあ、さくさくっと進めるわよ!」 「まず、そうね。第一の被害者から検討してみましょ」 「サラディね?サラディ・レイル」 あたしの言葉にルーティが反応する。 「そ。年は15。この子だけは他の被害者に比べ、相違点がいくつかあるわ。この子だけが陵辱した跡が見られ、死因は絞殺。そして遺体発見場所も町の中だし」 「うん。覚えてるわ、3ヶ月前よ。広場の噴水の中で見つかったの」 「そうね」 資料を見ながら答えるあたし。 「そして、サラディの切り取られた箇所は左手の小指。この子だけが骨ごと切断されてるわね。凶器はおそらく、斧かなにかね」 「でも、サラディに限っては、容疑者がいたのよね、確か」 初耳である。 「えっ?そうなの!?」 あたしの驚きが意外だったのか、ルーティは黒い瞳を大きく開き、 「あら、聞いてなかったの?」 体を前に乗り出して聞いてきた。 「聞いてないわよ?エルグラントさんは容疑者なんていないって」 「エルグラント?」 「ええ。正規兵士の人なんだけど」 「ああ。じゃあ、関係ないと思ったんじゃない?」 「?今いち話が見えないわね?」 ルーティは長い指を顎のあてると、話し始めた。 こういう事だった。 サラディは、ちょっと見ないくらいの美少女だったらしい。 そんなサラディに恋慕した男がいた。 名前は、ジョーン・グリッド。20才。 そのジョーンのサラディへの執着ぶりは異様といっても差し支えがないほどで、サラディも友人達にかなり迷惑だということをしょっちゅう愚痴っていた。 何度告白しても、相手はそっけない態度を崩さない。 贈物ひとつ受け取らない。 そんなサラディの態度に業を煮やしたのか、ジョーンはいやがらせを開始した。 サラディもその家族も、迷惑をこうむり、しょうがなく役所に訴えた。 そんな時だったのだ。 美しいサラディが無惨な遺体で発見された。 町の誰もがジョーンを疑いの目で見た。 その2日後に、ジョーンは自宅で、自らの腹を切り裂き自殺した。 遺書には、こう書いてあった。 「僕の愛しい彼女が、誰かの手によって死んでしまった。もう生きる為の力なんて、僕には残されていない」 後追い自殺だろうと、誰もが思い、そう結論づけられた。 「なるほろ、ね」 「そうなの。あたしもジョーンが絶対に犯人だと思ったわよ」 「でも、死んでしまった、と」 う〜ん。どうやら、この話は頭に入れておいた方がよさそうである。 「んじゃ、とりあえず第二の被害者の、シルティ・コーナッツの話しましょ」 「シルティは、あたしはよく知らないわ」 ルーティが言う。 「オーケイ。シルティは、15才ね。サラディの死から、3週間ほど空いての被害ね」 「それくらい空いてたわね、最初は同じ事件とは誰の思わなかったわ」 「でしょうね。手口があまりにも違うもの」 ここで一旦、喉を潤すために紅茶を一口飲んだ。 「夜の散歩に行ったまま戻らずに、翌朝、外壁の外、北の方で遺体発見。足の付け根から膝上までを骨だけ残して、切り取られていた、と」 「死因は?」 ガウリイの問いに、答えたのはルーティだった。 「心臓を一突き。サラディ以外は全員この方法のはずよ」 「そう。そして陵辱されたのもサラディだけよ」 「ふぅん」 「そして、第三の事件はその10日後ね。アーディ・ゴルドマン、18才。学校の帰りに行方不明になり、やっぱし翌朝に遺体で発見されてるわね。町の南側でね。この子は、肩から手首にかけてを切り取られているわ」 ぽりぽりと、チョコチップクッキーをかじりつつ、もはや相づちも打たないガウリイ。 「この辺りからね、町で警備兵を雇ったのは」 ルーティが的確に、言葉を挟んでくる。 頭のいい人だな、と感じさせる話し方である。 「そして、5日後に第四の事件。キルティ・ウィルソン、16才。仕事に行ったきり行方知れず。外壁の外、北東の方角に遺体放棄されていて、腰の部分を切りとられていたみたいね」 「本当にバラバラなんだな、なにもかもが」 ガウリイが、空を見据えながら誰にともなく呟く。 「更に、1週間後」 「第五の被害者、ティルジィ・リネスターの遺体発見」 あたしの言葉を遮るように、ルーティが言った。 「ティルジィは、友人との買い物の帰りに行方不明。必死の捜索にも関わらず、朝に遺体で発見。切り取られたのは、膝から足首まで。町の入り口近く、つまり南東の方にいたわ」 資料も見ていないのに、さらさらと話す彼女をあたしとガウリイは、怪訝そうに見た。 その視線に気づいたか、ルーティはどこか自嘲めいた表情で、肩をすくめる。 「ティルジィと買い物をした友人、それはあたしなのよ」 かけるべき言葉も見つからないあたし達は、ただ沈黙した。 「ティルジィはいい子だったわ。明るいし、頭はいいし、殺されるべき理由なんて無いのよ」 しばらく、重い空気がこの部屋を支配した。 それを破ったのは、ガウリイだった。 「そうだな。犯人にどんな思惑があっても、殺されるべき理由なんて誰にも無い。だから」 そこで、ちらりとこちらに視線を送るガウリイ。 「そう。だからあたし達が動くのよ、これ以上野放しにはさせないわ」 「・・・そう、ね。ええ。そうね」 キリっと顔を引き締めると、ルーティは大きく頷いた。 「じゃ、続けるわね。その1週間後に、ユーフィ・ハミルトン、17才。この子は自宅にいたはずなのに、朝、両親が部屋に行くと部屋はもぬけの殻だった。遺体発見場所は、同じく外壁の外、南西の位置。切り取られたのは、両乳房」 「この事件と共に、やっと領主も動いてね。正規兵が来たわ」 「そして、4日前。第六の事件から1ヶ月の時間を置いて、7人目の被害者、コーティ・エアウッドの遺体発見よ」 「ああ、昨日の葬儀の子か」 「そうよ」 ガウリイの問いに答えるあたし。 「んで、昨日の葬儀でわかったことは、切り取られた、というよりも確かに、剥ぎ取られたと言った方がいい状態だったわ。エルグラントさんの言う通りに」 「足首だったけな?その子は」 「よく覚えてたじゃない。そうよ」 「ん〜〜。なにもかもがバラバラすぎて、犯人の意図が読めないわね」 ルーティが頭をかかえながら唸った。 「意図なんてないんじゃないか?」 ガウリイが腕組みしながら、ルーティに応える。 「とりあえず、あたしが疑問に感じた事を言うわ」 2人がこちらを振り向く。 「犯人の手口なんだけど、一人目だけが絞殺ってのは納得いかないのよ」 「なんで?」 ガウリイが首を傾げる。 「こういった殺人快楽犯っていうのは、大概同じ殺し方をするのよ」 「殺人快楽犯?」 これはルーティだ。 「そう。殺人に快楽を感じる人間よ。くせになっちゃうのよ、殺人が。そして次々と被害が生まれる。特にこの犯人なんて、絞殺っていう、もっとも手で感じる殺し方をしているわ、一人目に」 「なるほど。つまり、手で人を殺したという事実に、快楽を感じているはずなのに」 「その通りよ、ルーティ。二人目以降は心臓を一突きなんていう、味もそっけもない方法をとっているわ」 「そんなにおかしいかぁ?」 ガウリイが何も考えていない口調で聞いてくる。 「だからねぇ、たとえば・・・・」 あたしは、言いかけた言葉を途中で飲み込んだ。 ドアを激しく叩く音がしたからだった。 厭な予感がする。 ドアを開けると、そこにはクロフォードさんが立っていた。 顔面蒼白だった。ただ事ではない。 そして、聞きたくなかった言葉が、その口から発せられた。 「8人目の被害者が、出た」 呆然と、ただあたしは立ち尽くしたのだった。 ふふふふ。8人目ってアンタ。 出すつもりじゃなかったのに(血涙)! ああ、また長くなるにょろよぅ。 |
11282 | Re:冬に咲く春花(後編<下>其の弐・胎動編) | あごん E-mail | 8/3-15:13 |
記事番号11274へのコメント 8人目の被害者。 正確には、まだ現時点では出てはいない。 「つまり、1人の少女が、行方不明となっております」 そう言ってエルグラントさんはため息をついた。 説明しておこう。 あれから。つまり、町長のクロフォードさんから8人目の被害者が出た、と聞いたあたし達は、すぐさまエルグラントさんのいる宿屋へと駆けつけた。しかしエルグラントさんは、当然だが宿屋にはおらず、8人目の被害者の自宅へと移動していたのだった。 そして、あたし達もその場で被害者の自宅の所在地を聞き、現在に至るというわけだ。 「行方不明?」 「そうです。ネイティ・グリーン、17才、が今朝から姿をみせていません」 「詳しく聞きたいわね」 あたしの言葉に、エルグラントさんはこっくりと頷く。 「今朝ですが、いつもの時間になっても食堂に来ないネイティを、心配した母親が部屋へ様子を見に行ったところ、ネイティの姿はすでに無く、その足で両親は役所へと向かいました」 「最後にネイティを見たのは?」 「母親ですな。昨夜部屋に戻って寝ようとしていたネイティを見ています」 「侵入の形跡は?」 「見つかりません」 「エルグラントさん、聞きたいことが・・・」 言いかけたあたしの言葉は、響く金切り声によって途中で遮られた。 「何やってたのよっ!?あんた達はあっ!」 泣き叫びながら、兵士達にすがりつくような形で一人の婦人が取り乱す姿が目に飛び込んできた。 「ネイティの母親の、アシェイス・グリーンです」 沈痛な面持ちで、エルグラントさんが低い声で言った。 「正直、手抜かりがあったとは言いたくないんですよ」 ぎゅっと握った拳を見つめながら、エルグラントさんが言葉を紡ぐ。 「警備は万全を期していたし、後で警備配置について話しますがね、一部の隙もないと言っても過言ではない状態を常に保ってましたよ、我々は」 「しかし、事件は起こった・・・」 「・・・そうです」 独り言のように呟いたガウリイの声に、エルグラントさんが応えた。 そのままなんとなく沈黙したあたし達の後ろで、アシェイスさんの悲鳴が響いていた。 あの場にこれ以上いるのはいたたまれなくなったのか、エルグラントさんはあたし達を、再び宿屋にある自分の部屋に招き入れてくれた。 「さて、まずこの図を見てもらいましょう」 エルグラントさんはそう言ってがさがさと、この町の地図であろう紙を机の上に広げた。 「ふむ・・・」 なかなか細かな所まで記してある地図である。 「この赤くチェックしてある家が、13才から20才までの女性がいる家です」 なるほど、その周囲は厳重な警備がほどこされてある。 「当然ですが、ネイティ・グリーンの家もちゃんと警備がついていました」 「たしかにそうね」 「一体、犯人がどうやってこの警備をかい潜ったたのか・・・」 「それが一番の疑問ね」 うう、途中ですが、とりあえず。 中途半端ま終わりかたですいません。 |
11287 | Re:冬に咲く春花(後編<下>其の弐・胎動編) | 王静惟 E-mail | 8/3-17:02 |
記事番号11282へのコメント 今日は、あごんさん。 続きを読ませていただきました! また被害者(になるかもしれない人)が出てきましたね。 一体本当に変態殺人快楽犯がやったのか、それとも何か特定な目標を狙ってる知恵犯がやったのか? どっちにしても早くそいつを引っ張り出さないとまた女の子が殺されます! 頑張ってリナ、ガウリイ!名コンビの威力を見せてやって下さい! というわけでますます期待してきた王静惟でした。 あごんさん、次回も頑張って下さいね! 楽しみにしております! ではではっ! |
11317 | Re:励みに致します(感涙) | あごん E-mail | 8/4-20:53 |
記事番号11287へのコメント > 今日は、あごんさん。 > 続きを読ませていただきました! >ありがとうございます。本当に長くてすみません。 > また被害者(になるかもしれない人)が出てきましたね。 > 一体本当に変態殺人快楽犯がやったのか、それとも何か特定な目標を狙ってる知恵犯がやったのか? >う。鋭い方ですね(滝汗)。心の臓が痛いです(笑)。 > どっちにしても早くそいつを引っ張り出さないとまた女の子が殺されます! > 頑張ってリナ、ガウリイ!名コンビの威力を見せてやって下さい! > そろそろ活躍、というか流血させます(笑)。 > というわけでますます期待してきた王静惟でした。 > あごんさん、次回も頑張って下さいね! > 楽しみにしております! > ではではっ! >うひ〜っ!頑張ります!期待を裏切らないようにしたいです。 一応、ガウリナなシーンも予定しています。ラヴラヴじゃないですが。 |
11296 | 冬に咲く春花(後編<下>其の参・流動編) | あごん E-mail | 8/4-00:13 |
記事番号11282へのコメント ざっと地図を見渡したところ、確かに不備はなさそうに思える。 「ん〜〜、でも事件は起こっているんだから、どこかに落とし穴があるはずなのよ」 実際に頭を抱えながら、あたしは机に突っぷした。 「そーいえば、リナ。お前さっきこの人に何か言いかけてなかったか?」 ガウリイがこの場にそぐわない、のほほんとした口調で語りかけてきた。 一瞬なんの事かわからずに、ちょい考え込んでから。 「ああ、警備配置のことよ、ガウリイ。第七の被害者、コーティ・エアウッドの時の事もしりたいんですけど」 言葉の前半はガウリイに向け、後半はエルグラントさんに向け言った。 「コーティ・エアウッドの時ですか。今よりは少々人数が減っているだけで、基本配置は変わっていませんが?」 「でもたしか、6人目と7人目の間って1ヶ月位空いてたわよね?」 「ええ、そうですな。それで我々も犯人は諦めたのでは、と話していたのを覚えていますよ」 「悪気があって言うわけじゃあないんだけど」 ここで言葉を区切り、エルグラントさんの目を真っ直ぐ見て続ける。 「そういった時の人間の心理状態として、油断しがちよね?」 「・・・・・」 あたしの言いたい事を察したのだろう、エルグラントさんは何も喋らない。 「そして今回。例え何割りかの人間だけとしても、昼間から飲酒するような兵士たち」 「不注意は否めないんじゃないのか、と?」 うあ。こころなしか怒っているよーな・・・。 「まあ、はっきし言っちゃえばそーゆー事になるわね」 ふぅーっ、とひとつ大きく息を吐き出し、エルグラントさんは眉間を軽く指で抑えた。 「今、ネイティ・グリーンの家周辺を警備していた物達を尋問しているところですよ」 「なるほど。でも意味は無いでしょーね」 「ええ、それはそうでしょう。しかし組織には型の上だけでもやらなくてはならない、という事がままあるものですよ」 考えなくてはならないのは、犯人はいかにして、家屋の中の少女を連れ去ったのか。 この厳重な包囲網をいかにして、破りえたのか。 あたし達はしばらく思考の海へと潜りこんだ。 「なあ、犯人ってのは単独犯だと思うか?」 重苦しい空気を破ったのは、ガウリイだった。 「さあ?それすらも特定できないわよ、今のところ」 「ですね。しかし私は単独犯、もしくは二人犯だと思っていますがね」 「なんでだ?」 理解不可能といった顔で、ガウリイが聞いてくる。 だぁ〜〜っ!なんにも考えてないんでからっ! 「証拠、というか痕跡が無さすぎるからよ」 「そうですね、大勢の人間が行動するとどうしても痕跡が残り易くなりますからね」 「それに事件の内容から考えて、多数犯でと仮定しても無理があるわ」 「と、いうよりも必要性を感じられないんですよ」 変わる変わるの説明にガウリイは、口をぽかんと開けて、はあ、とわかってるんだかわかってないんだか判断できない口調で生返事をした。 「う〜ん、それにしても警備配置は再検討の必要ありって事ね」 「そうだな、のぞき犯もいるしなぁ」 「あ、そーいえばいたわね、のぞき犯が。よく覚えていたわね、ガウリイ」 「のぞき?なんです、それは」 あたしとガウリイの会話に、エルグラントさんが眉をひそめつつ尋ねてきた。 「聞いてないんですか?昨夜、に限らずらしいんですけど、のぞきが出没してるって」 同じく眉をひそめて問い返すあたし。 「聞いてないですな、それは。昨夜は誰が覗かれたんです?」 「ルーティ、さんよ。町長の孫娘さん」 「町長の家、ですか?」 「ええ。そーですけど?」 唐突に。 エルグラントさんが立ち上がった。 「ネイティ・グリーン宅の、近所じゃなかったですか?」 言いながら、がさりっと地図に見入るエルグラントさん。 ! にゃるほろっ! 「たしかにルーティは言っていたわ!取り逃がしたってね!」 そう。 取り逃がした。つまり、追いかけた人間がいるということ! では誰が追いかけたのか? エルグラントさんは言った。赤い印のついた家は13才から20才までの女性宅に、警備をつけたと。 ルーティの年齢は聞いていないが、20才そこそこ。 もし彼女の家にも警備がついていたとしたら、誰がのぞき犯を追いかけたのか。 自明の理である。考えるまでもない。 町長宅についていた警備兵達であろう。 「陽動作戦の可能性が高いわね!」 地図上では、たしかに同じブロック内に町長宅と、グリーン家は存在していた。 「よし!このブロックの責任者を呼ぼう!詳しく状況を聞く!」 はたして一筋の光明となるのか、しかし、なにかしらのヒントは与えてくれるかもしれないであろうこの情報に、すがりつくより方法はないだろう。 「ええ、確かに幾人かで追いかけました。あれは夜半過ぎでした」 呼ばれたのは、30代半ばといった男の人だった。 「あのブロックには、6名が配置されてまして、追いかけたのは4名です」 「君は?」 「私は、責任者でありますので、その場にて警備を続行しました、エルグラント様」 「その捕り物は時間にしてどれくらいだった?」 「30分程でしょう」 「ふむ」 それきりエルグラントさんは黙ってしまったので、兵士1は不安になったのだろう。 「あの、エルグラント様、その、ひょっとしてその間に・・・?」 「・・・・・・・・」 尚も無言のエルグラントさんにたまりかねたのか、兵士1は更に不安気な声で言葉を続ける。 「しかし、たかが30分程度で、人一人拐す事ができるとは思えませんが・・・」 うーみゅ。たしかにそうである。 家の中にいる、しかも寝ていたであろう人間なんて、30分位じゃあとてもさらえないだろう。 「ふむ。君にひとつ頼みたいことがある」 やっと口を開いたエルグラントさんは、兵士1に役所へ行くように言ったのだった。 兵士1に頼んだことは、誘拐と、のぞきが連動された動きがあるか調べてくることだった。 報告を待つ間に、あたし達は別の話題へと移った。 「で、第一の被害者、えぇーと・・・」 「サラディ・レイル、ですか?」 「そうそう、そのサラディのこと、調べた結果はどーだったんです?」 「結果?なんの事です?」 をいをい・・・。 「いやですねーっ!言ってたじゃないですかぁ」 「? なんの事ですか?」 ・・・くっ!イキナシ忘れるか、しかし。 「ですから、第一被害者の身辺を洗い直そうって・・・」 あたしの、ちと怒気交じりの言葉にエルグラントさんはしばし考え、 「ああ、そういえば・・・」 「忘れてたんですかぁぁっ!?」 やっぱし、あんま期待しない方がいいかも。 所詮はお役所シゴトの人なんだな、この人も。 「なんで、忘れていたんだ?大事な事なのに・・・・」 不思議そうに首を傾げるエルグラントさん。 その時。 ドアが激しく叩かれた。 「ご報告申し上げます!ネイティ・グリーンの遺体が発見されました!」 ここにきて、一番聞きたくない言葉が、耳に届いたのだった。 まだまだ続くのかっ! いーかげんにしろ!事件を増やすなっあたし! |
11320 | 冬に咲く春花(後編<下>其の四・謀動編) | あごん E-mail | 8/4-22:54 |
記事番号11296へのコメント とうとう、8人目の被害者が、出てしまった。 どうやら犯人は、女性を拐わした後、長く生かす事はないらしい。 女性を連れ去ったその手で、そのまま殺人に至るのだろう。 そして、始まる解体作業。 頭が痛い。 非道い頭痛が、する。 その時、がっ、と強く肩を抱かれた。 「リナ、しっかりしろ。大丈夫か?」 ガウリイだった。 あたしのすぐ横に、端正な顔があった。 「ん、大丈夫よ、心配しないで」 気遣わし気な瞳であたしを見てるガウリイに、強がりでなくそう返事をした。 あたし達はいま、遺体発見現場へと来ている。 場所は、町の外れの方にある荒れ果てた空き地である。 どういったつもりなのか、犯人はこれまでとは違う行動を見せている。 これまでだと、犯人は外壁の外に遺体を放棄していたのだが、ネイティ・グリーンは違った。第一被害者のサラディと同じく、町中に放置しているのだ。まあ、これだけ警備兵がうようよしてれば、犯人もわざわざ外まで遺体をかついだりはしないだろうが。 それに、ネイティは両手首を剥ぎとられているのだが、何故か犯人は左手の薬指だけは、骨ごと奪っているのだ。 そう、サラディのように。 といってもサラディは、剥ぎ取られてはいなかったが。 何故犯人は、サラディとネイティだけの骨を奪ったのか。この二人だけが共通する何かを持っているという事なのか。 答えは犯人しか知り得ないのか、それとも推理、調査を進めるに従って誰にでも知り得るのか。 ・・・・前者だろーな、きっと。 などと、あたしが考え込んでいると、 「なあ、リナ。2つ気がついた事があるんだ」 ガウリイが、視線をネイティから外さないままで話しかけてきた。 「2つ?」 「そう、1つ目はネイティの事だ」 「・・・・・・・・」 無言で先を促した。 「ネイティは、生きたままバラされてるみたいだぜ」 「!?」 あたしは、衝撃的な事を口にしたガウリイを振り仰ぐ。 「どーゆー事よ!?なんであんたにそんな事がわかるの?」 なるべく抑えた口調で、ガウリイに問いかける。 現場には、ネイティの両親もいるのだ。滅多な事は耳に入れたくはなかった。 「筋肉の硬直具合だ、リナ。あれは最期まで苦しんだ人間だけが見せる特徴なんだ、リナ」 あたしと会うまでは、傭兵として常に死線の上を歩いていたガウリイだからこそ、わかるという理由か。 「おれは、被害者は全員、ショック死だと思っている」 「つまり、心臓を刺したのは即死に見せかける為ってこと?」 「ああ。何の為かはわからねえけどな」 ふむ。とりあえず置いておいた方がいいだろう、この疑問については。おそらく犯人にしか知り得ない事だろう。 エルグラントさんには報告しておくべきだろう。 「で、あと1つは何?」 「ん、ああ。俺達ずっと誰かに見られてるんだ、さっきから」 気付かなかった。 戦士にして、魔導士たるあたしに気配を感じさせないとは・・・。 それに、ガウリイも相手がどこにいるのかわからないらしい。獣なみの勘を持つガウリイさえも気付かない相手となると。 「かなり、腕の立つ奴ってことね?」 しかし、ガウリイの答えは意表を突くものだった。 「いや、そうとは思えない」 「でも、あんたでさえも誰か特定できないよーな奴なんでしょ?」 「違うんだ、リナ。相手は気配なんて隠してる様子はないんだ」 「? どーゆう・・・」 ガウリイの言いたい事が全くわからない。 「言っただろ、この前に。この町はおかしいって。有るべきものが無いような、そんな厭な雰囲気がするって」 「そういえば、そんな奇妙な事を言っていたわね」 ガウリイがどこか苦しそうに、言葉をつなぐ。 「俺は、俺達は、見落としてなんかいない。見落としを誰かにさせられてる、そんな気がするんだ」 「そんな、まるで結界でも・・・」 言いかけて、あたしは言葉を失った。 あたしは今、何を言おうとした? まるで。 結界でも。 張ってあるみたいじゃないの。 何故、今まで気づかなかったのか。 いや、これこそが結界なのだ。 これは魔導ではない。いや、厳密に言えば魔導に分類されるものなのだが。 「何故忘れてしまっていたのだろう?大事な事なのに」 これはエルグラントさんの言葉だ。 第一の遺体。サラディ・レイル。剥ぎ取られた部分はなく、ただ左手の薬指だけが、骨ごと切り取られていた。 第二の遺体。シルティ・コーナッツ。膝下から足首までを骨だけのこして剥ぎ取られていた。 第三の遺体。アーディ・ゴルドマン。腕の付け根から手首までを、やはり骨だけを残して剥ぎとられていた。 第四の遺体。キルティ・ウィルソン。腰の部分を、骨だけ残して。 第五の遺体。ティルジィ・リネスター。足の付け根から膝までを。 第六の遺体。ユーフィ・ハミルトン。両乳房を。 第七の遺体。コーティ・エアウッド。足首。 そして。 第八の遺体。ネイティ・グリーン。 彼女は、両手首を剥ぎ取られていた。 ただし、左手の薬指だけは骨ごと切り取られている。 なんて事だ、あたしは。 あらゆる事に目をつむらされていた! 遺体はどこに捨てられていた? 発見順から。 北。 南。 北東。 南東。 南西。 そして北西。 全てが、わかった。 これは、儀式なんだ。 魔術であり、呪いであり。 もう、ここにいるべき理由はない。 「行くわよ、ガウリイ」 「えっ?行くってどこへ?」 あたしは、声を落とした。 ガウリイにだけ聞こえるように。 「犯人がわかったわ。目的も何もかも」 やっとここまできました。 ・・・・長かった、です。 いよいよ、犯人との対決でしゅっ! 次回、流血編です(うそです)。 |
11326 | 冬に咲く春花(後編<下>其の伍・険動編) | あごん E-mail | 8/5-23:29 |
記事番号11320へのコメント 「は、犯人がわかったって・・・。お前」 「大きな声出さないでっ!」 あたしは小さく、だが鋭い声でガウリイをたしなめた。 幸い辺りは、ネイティの両親の嘆き声や、町の人々の警備兵を罵る声が響き、あたし達の会話など気に止めている人間などはいないようだが。 「大きな声だすなって・・・。お前、あのエル何とかさんに言わないのか?」 「言わないわ」 さらりと言ったあたしの言葉に、ガウリイは顔をしかめた。 「なんでだよ、犯人がわかったんだろ?じゃあ教えてやれよ」 不満たらたらの声ではあるが、ちゃんと小声で話すガウリイ。 うむうむ、よろしい。 「言わないってゆーよりも、言えないわ、まだ現段階では」 「? もしかして証拠やら何やらでか?」 「そーよ。ガウリイにしちゃ察しがいいじゃない」 「そういう喋り方する時は、大体そうだからな、お前は」 短い苦笑のその後で、いきなり、ガウリイはあたしの両腕を掴み身を屈める。 「そして、その後で必ずムチャを言い出すんだ」 真剣な眼差しで、正面からあたしを見据えるガウリイ。 ふと、今ガウリイの中にある感情はどういった種類のものなのかが気になった。 怒りだろうか、憂いだろうか。それとももっと別の感情だろうか。 「無茶を言う気はないわ、心配しないで」 勿論、その言葉を頭から信じるガウリイではないだろうが、嘆息交じりに天を仰ぐと、 「・・・わかった。信じよう」 ただ一言そう言うと、くるりときびすを返した。 だから、あたしにはその瞬間のガウリイの表情が見えなかった。 何故かちくりと胸が痛かったが、気にしないことにした。 気にしたくなかっただけかも知れないが。 「尋かないの?」 「なにを?」 町の中央通りを歩きながら、あたしはガウリイに聞いた。 あれから、あたし達はエルグラントさんにここを離れる事だけを告げ、現場を後にした。エルグラントさんには、どうしたのかと聞かれたが、少し気になる事ができたので調べてくるとだけ言っておいた。 エルグラントさんは何か言いたそうだったが、結局何も言わなかった。 「どこに向かっているのか、とか」 「じゃあ、どこに向かっているんだ?」 ひょっとして、ガウリイ怒っているのか? いや、表情を見る限りでは、怒ってはいないようである。 この顔は、どちらかといえば・・・。 「すねてんの?」 「そうだよ、すねてる」 前を見たまま、やや不機嫌な表情で応える。 「なによー、じゃあ連いて来なくってもいいのに」 こんな顔のまま隣にいられたんじゃたまらない。ただでさえ、人に気を遣うのは苦手なのに。 「連いて行くに決まってんだろ、おれは心配症なんだよ」 いつもの微苦笑ひとつ。くしゃりっとあたしの頭を撫でると、 「おれが不機嫌だったのに、なんでリナも連られて不機嫌になってんだよ」 にこり、と笑う。 あ、やっと笑った。 「そんなの知ンないわよ」 でも、ガウリイが笑ってくれたので、あたしも笑って返事をした。 これがギヴアンドテイクの精神ってやつかな(違うかもしんない)。 「で、どこに行くんだ?」 「あ、うん。サラディ・レイルの家よ」 「サラディ?」 うーみゅ。こいつの場合この質問は、サラディの家に何故?と聞いているのか。それとも、サラディって誰?と聞いているのか微妙なトコである。 「・・・って誰だっけか?」 後者だったか、やっぱし。 「第一被害者のコトでしょーがっ!」 「おーおー、そんな名前だったけかな、そういえば」 間延びした声で、ぽんっと手を打つガウリイに、 「・・・そぉよ」 疲れた声で返答する。 「んで、なんでサラディの家なんだ?」 「犯人がいるからよ」 あたしの言葉に、ガウリイはぴたりとその場に足を止め、眉をひそめる。 「・・・サラディが?」 「あほかぁぁぁぁあっ!!」 あたしの必殺のアッパーカット、ウィニング・ザ・レインボーがまともにガウリイの顎をえぐった。 ざしゃああっとガウリイが吹っ飛んだ。 ふっ。この技を受けた者は、建物5階分から落ちた程の衝撃を受けるという。 じゃなくって! 「言ったでしょーがぁっ!第一の被害者だって!何を聞いてんのよあんたは!」 「ぐっ・・!だって、サラディの家に行くんだろ?」 「だから!サラディの家に住んでる人物に会いに行くのよ!」 ぱんぱんと身体についた土を払いながらガウリイが立ち上がる。 「ま、でも一応町長の家に寄って、確認してからだけどね」 「確認?」 「そ。最終確認みたいなモンね」 「ふぅん。ところでなんでわかったんだ?お前さんには」 「それも確認が済んでからよ」 実際、あたしにもわからないのだが、遺体の謎と、放置場所の謎が解けた時、とっさにそう浮かんだのだ。犯人は身内だと。 それからはお互い口を利かずに、道を進んだ。 町長の家には、ルーティだけしかいなかった。 「あれ?町長さんは?」 「ネイティの遺体が見つかったんでしょ?現場へ行ったわ」 「そっか。行き違ったのかな?」 独り言のつもりで言ったのだが、ルーティが応えた。 「そうじゃない?お祖父さまになにか用だったの?」 うーん。ま、ルーティに聞けばいっか。 「サラディ・レイルの家族についてなんだけど、ルーティ、何か知ってる?」 「えっ?」 瞬間、ルーティの表情が強ばったのがわかった。 「いやいや、知らないならいーのよ」 ルーティに聞かなかった方がよかったかもしれない。 どう考えても、なにかサラディの家族と関係あるのだろう。友人がいるとか。 「あ、うん、知ってるわよ。でもそれがどうしたの?」 「あー、うん。家族構成とかだけでいいんだけど」 ルーティはしばらく眉を寄せ、戸惑うように話した。 「え、ええ。サラディには、お兄さん一人だけしかいないの」 「お兄さん?」 「うん。リオンっていうんだけど、その・・・」 「わかったわ。ありがと」 やや強引な気もしたが、ルーティの言葉を最後まで聞かずに席を立った。 「え?リオンの所へ行くの?」 リオン。 ルーティはそう呼んだ。 ルーティの友人、もしかしたら恋人って可能性もある。 「うん、まあ、ちょっと聞きたいことがあってね」 「なにを?」 「サラディの遺体の状況とか、まあ、基本的なことよ」 「じゃあ、あたしもっ!」 言いかけたルーティの言葉を大きな手が制した。 ガウリイが、ルーティの顔の前でその手を広げたのだ。 「あんたには、おれから頼みたい事があるんだ」 「頼み・・・?」 いきなり発っせられたガウリイの言葉にルーティだけでなく、あたしも眉をひそめる。 「そう。医者のところに行ってきてほしいんだ。実は、こいつ今朝から調子が芳しくなくてさ」 目であたしを指し示す。 「気付け薬でいいんだけど、買ってきてほしいんだよ」 何か言おうとして、口を開きかけたルーティをまたしても手で制して。 「おれが行けばいいんだけど、何分物覚えが悪くてね。道を覚えられない」 「でも・・・」 「そーなの。実はちょい気分が悪くって。頼めないかしら?」 嘘も方便。こうでもしないとルーティはあたし達に連いてくるだろう。 本人と連れがそう言っているのだ。ルーティも無下には断れない。 勿論、ルーティにはわかっているはずだ。 これは、あたし達の嘘だということを。 これは、駆け引きだということを。 しばらく悩んだ末、ルーティは大きく息をついた。 「わかったわ。薬を買ってくるわ」 そう言って、部屋を出ていった。 少し時間を置いてから、あたし達も町長宅を出た。 向かうは、リオン・レイルの家。 ・・・・・・・・・・。 ・・・っと待てよ。 よく考えなくっても、あたしはリオンの家を知らないのだった。 結局、あたし達は道ゆく人をつかまえて、尋ねたのだった。 なにが流血やねんっ! 全然すすんでないです、この話。 次こそはドバドバ血を流します! |