◆−月光の祝福無き巡合わせ(前編)←ガウゼロか(笑)?−あごん(8/26-00:14)No.11642 ┗月光の祝福無き巡合わせ(中編)−あごん(8/26-22:46)No.11659 ┗月光の祝福無き巡合わせ(後編)−あごん(8/29-23:16)NEWNo.11688
11642 | 月光の祝福無き巡合わせ(前編)←ガウゼロか(笑)? | あごん E-mail | 8/26-00:14 |
「そうですねぇ。あなたが死んだら、その時は」 言ってゼロスは口を笑みの形に歪ませた。 月の夜。 月光の宵。 それは、ヒトの世界なのか。 それとも、魔の潜む時間なのか。 ガウリイは、ふ、と。 何気ない仕草で天上を降り仰ぐ。 気配が、する。 知っている、だが決して懐かしいものではない。 「・・・ゼロス。いるんだろ?」 誰もいない虚空に向かい、そう声を掛ける。 その問い掛けに答える者は、ただ、野原を抜ける小さな風の音だけだった。 再度、ガウリイは呼びかけた。 「ゼロス。見てるんだろ?」 大きな声を出す必要はない。 呼びかけた相手は姿こそ見えはしないが、すぐ隣にいる可能性が高のだから。 ガウリイはしばらく待ったが、返事がないので、小さく吐息を漏らした。 「・・・ゼロス。返事しないなら、お前のこと」 ガウリイは、そこで一旦言葉を切ると、虚空を見据えてボソリと続けた。 「・・・ロン毛って呼ぶぞ」 「ロン毛はガウリイさんじゃあないですかぁぁぁ!!」 瞬間、闇の空間に、闇を纏ったゼロスがツッコミながら現れた。 「呼んでも出てこねぇからだよ、お前さんが」 さらりと受け流すガウリイに、ゼロスはやや不満気に言った。 「まったく。呼んでも出ないのにはそれなりの理由というものがあるからですよ」 「大した理由じゃあないんだろ?どーせ」 「まぁ、人間からすればそうかも知れませんねぇ」 いつもと同じ笑顔で、ゼロスはそう呟く。 しばしの間、沈黙が場を支配した。 冬先の風は冷たく、夜空に浮かぶ月は冴え冴えとして、夜気をも凍らせてしまいそうだ。 両者は気付いているのだろうか。 一度たりともお互いが目を合わせていない、という事を。 長いとも短いともとれる沈黙を破ったのはガウリイだった。 「・・・で、何しに来たんだ?」 やはり、ゼロスの方を見ようともせず言った。 ゼロスは何も言わず、相変わらずの捉え処のない笑顔で応えるだけであった。 「リナにはちょっかい出すなよ」 ガウリイのこの言葉に、ゼロスはどこか満足そうにひとつ頷くと、 「この度の闘いで、傷ついているからでしょうか?」 初めてガウリイと向き合った。 「赤眼の魔王様との、闘いで」 囁くように付け足す。 ガウリイの右手が一瞬、剣の柄に伸びかけたが、実際には剣に触れなかった。 それを面白そうにゼロスが見ていた。 「戦友との闘い、だ」 今度はガウリイもゼロスの方に目を遣った。 「いえいえ、誤解なきように。僕は今回はですね」 夜目にもそれとわかるゼロスの白い指が、ガウリイをゆっくりと指す。 「ガウリイさん。あなたにちょっかいを掛けに来たんですよ」 ゼロスの顔に、笑みが拡がった。 「へぇ。おれに、か?」 「ええ、そうです。だから心配は無用です」 ゼロスはにっこりと微笑む。 ガウリイはそれを見て、やはり微笑むと、 「どんなちょっかいだ?」 無邪気といってもいい程の口調で問うた。 「ガウリイさんも承知かと思いますが、今回の僕は中立でしてね」 ふわりと宙に浮きながら、ゼロスは続ける。 「まぁ、納得ずくめ、とはいきませんでしたが、予想がやや外れた処もありましてね」 ガウリイは空を漂うゼロスを目で追う。 苦笑がゼロスの顔に刻まれた。 「それで、少しガウリイさんにちょっかいを掛けたくなりました」 悪戯がばれた子供のように、笑う。 「お前のちょっかいってさ、闘う、とかじゃあ、ないよな」 「当然です。血生臭いのは苦手でしてね」 ゼロスの言葉にガウリイは腕を組むと、 「じゃあ、なにをする気なんだ?」 不思議そうに小首を傾げた。 そうですねぇ。 一瞬、夜そのものが発したのかと思える程の低い声が空気を震わせた。 「さっきから、僕が何をしているのか、見当がつきますか?」 いまだ、宙をふわりふわりと漂いながらゼロスが問うた。 「さぁ?宙を浮いてるとしか思えないけどな」 肩をすくめながら、ガウリイが応える。 「僕たち魔族は、人間が思う以上に、精神世界の住人なんですよ」 ガウリイの上をゆっくりと回転しながら言う。 「精神それが僕たちそのものなんです」 まるで、空を泳いでいるかのようだ。 「人間は肉体に頼り過ぎですよ」 ガウリイは見るともなくそれを見ている。 「その分、余りにも、精神をおざなりにし過ぎていますよ」 何が言いたいのか、わからない。 ガウリイがそう言おうとした時。 月光が、光を弾いた。 月光が、音を導いた。 ガウリイの周りに、闇が静かに、降り積もった。 すいません、またやっちゃいました。の、あごんです。 短編のはずなのにな〜〜。 今回はちゃんと終わるかと思います。 なぜか、絡みの少ないガウ・ゼロです。 絡みといっても、変な意味じゃあありません(笑)。 この2人が大好きなので、競演させてみたかったんです! あ、ちがう。共演だった(笑)。 一応、後編で終わるかな、といった感じですね。 ではでは、失礼いたします! |
11659 | 月光の祝福無き巡合わせ(中編) | あごん E-mail | 8/26-22:46 |
記事番号11642へのコメント 気付けば、そこは古い墓石が数多くある、墓地であった。 何故、自分がここにいるのかを考えようとした時。 気配が生まれた。 ガウリイが気配のした方を振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。 年の頃なら、15・16といったところか。 肩で切りそろえた黒髪が、闇の中でさえ、その存在を主張していた。 髪の色と同じ、昏い瞳が印象的である。 『あなたみたいに』 『生きれたらいいわね』 ガウリイの中で、波紋のように言葉が拡がる。 ・・・おれは、この少女にそう言われたことがある。 名前も顔も覚えていない。だが、この言葉だけは忘れてはならないと、己に誓った。 「あんたは・・・」 そうガウリイが言いかけた時、少女の口も動いた。 まるで、ガウリイの言葉を遮るかのように。 「ガウリイ、またここへ来たのね」 「また?」 ガウリイが眉をひそめる。 少女は眉ひとつ動かさないままだ。 「そう。また。またここへ来たのね」 「おれはここに来たのは初めてだが・・・」 ぽうっと闇の中に光が生まれた。 少女がその手に持つランプに灯をともしたのだ。 「そう、たしか・・・」 ガウリイはゆっくりと思い出そうとした。 リナが、ミルガズィアとメンフィスに事の顛末を語り終え、二人が部屋に帰った後で、リナが言ったのだ。 大きな瞳を伏せがちにしながら。 『ごめん、ガウリイ。一人にしといて』 ガウリイもまた、少し一人になりたかったので何も言わず立ち去り、宿の近くの野原へと出た。 それから・・・。 「・・・ゼロス、だ」 それだけ言うと、ガウリイは辺りをきょろきょろと見回した。 確かにゼロスの気配はする。 だが、近いのか遠いのかはわからなかった。 傍らの少女に向き直り、問いかける。 「なぁ、あんた、ゼロスとなにか関係あるんだろ?」 「いいえ。私はそんな名前知らないわ」 「いや、だって・・・」 「大事なモノを失くしたのね、また」 少女はガウリイの話に耳を貸す気はないらしく、にべもなく話題を変える。 「そんな話じゃあなくてさぁ」 尚もガウリイは少女へと話しかける。 ぴたり、とその場で足を止めると、少女はガウリイの目を見つめた。 「大事なモノを失った。だからここへ来たんでしょう?」 昏い瞳がガウリイを映した。 「・・・大事なモノ・・・?」 「ええ、そうよ」 再び歩み始めた少女の後を追うようにして、ガウリイが続いた。 「・・・別に、なにも・・・」 「またはぐらかす?」 「いや、そんなつもりは・・・」 「嘘ばかり」 「・・・・・・・」 しばらく無言で二つの影は歩いた。 やや気まずそうにガウリイは少女を見る。 「えぇーと、ここはどこなんだ?」 「墓場よ」 「誰の?」 「あなたの」 少女はここで、初めて感情のある声で喋った。 闇が一層深くなった気が、ガウリイにはした。 「失くしたモノばかりが眠る場所」 小さな余韻を残しながら、その声は闇に融け込んでいった。 そして。 目の前の少女が一瞬にしてその姿を変えた。 次に現れたのは、鮮やかな赤い髪を持つ少女だった。 『そういうこと、言わないで』 『正しい事の全てが間違っていないわけじゃないんだから』 やはり、名前も年も覚えていない。 だが、忘れてはならないと心に刻んだ言葉が。 ガウリイの内部で、乱反射する。 そう、彼女は、自殺したのだ。 目の前の少女は、死んだ人間だった。 ガウリイにほのかな想いを寄せていた、売春婦だった。 いや、ほのかな、というのはガウリイの思い込みに過ぎない。 彼女は、売春宿でガウリイが抱かずに、金銭だけ置いていった翌日。 自ら、その命を断ったのだ。 一体、彼女の中にどんな葛藤があったのかガウリイにはわからない。 だが、自分が彼女を追い詰めたことだけはわかった。 少女へと、手を伸ばしかけた時。 またしても、少女は闇にかき消えた。 そして。 銀の髪の女性が、優しく微笑みながら。 彼女独特の、はかな気な雰囲気をまとわりつかせて。 ちらり、と何もないはずの傍らの闇に目を向けた。 そこには。 先程まで感じられなかった気配が生まれた。 黒髪の、戦士風の気の強そうな。 その表情。 ルーク、ミリーナ。 そう思った瞬間。 ガウリイは二人に向かい、剣を疾らせた。 手応えは、あった。 ザゥンンッ!! その音と共に、ふたつの影は消え去り。 入れ替わるように、その空間には、服の一部を裂かれたゼロスがいた。 終わりませんでした(泣)。 でも、次でちゃんと終わります。 とゆーか、終わらせます(笑)。 短編の書けないあごんでした。 |
11688 | 月光の祝福無き巡合わせ(後編) | あごん E-mail | 8/29-23:16 |
記事番号11659へのコメント 「なにが・・・したいんだっ!お前は!!」 穏やかとさえいえる表情でたたずむゼロスに、ガウリイは押し殺した声音で問い掛ける。 いつの間にか、辺りは先程の野原へとその景色を変えていた。 ゼロスが低い声でゆっくりと口を開く。 「言ったでしょう?あなたにちょっかいをかけると」 その笑みを深くしながら、ゼロスは言う。 「どういう意味があったんだ!今のには!!」 ガウリイには珍しく、その語気は激しいものであった。 ふふふ、とゼロスが含み笑いを漏らす。 「ガウリイさんの、精神世界を知りたかったんですよ。僕は」 ふ、とガウリイから殺気が薄れた。 「おれの・・・精神・・・世界?」 「そうです。わかりやすく言えば」 獣神官の姿が闇と同化しつつある。 ガウリイはそれをただ見ていた。 「あなたに興味がある、ということです」 夜の闇が、そんな言葉を型どった。 「赤眼の魔王様との戦いで、僕なりに予想を立てたんですよ」 どこからともなく、ゼロスの声が響いてくる。 「予想?」 「ええ。そうです。はっきり言ってほぼ予想の範疇でした」 「全ての結果が、か?」 ガウリイはゼロスの居場所が掴めないので、仕方なく、空に向かって話しかけている。 「そうですね、そうです」 一瞬だが、躊躇の色がその声に見て取れた。 「赤眼の魔王様が敗れるということも、予想はしてましたね」 「へえ。シャブ・・何とかってのはお前等の、王様なんだろ?」 ガウリイは意外といった顔で、尋ねた。 「なのに、その・・・どう言やいいかな・・・」 「・・・信じてなかったのか、ということが言いたいのですか?」 言葉につまったガウリイに、ゼロスが助け舟を出した。 「そうそう。それだ」 妙に納得しながらガウリイは言う。 「信じてなかったのか?」 「そうですねぇ。あの方は、人間の部分が強すぎましたから」 「だから?」 「言ってしまえば、あの戦いは、人間同士のモノでしたからねぇ」 それを聞いて、ガウリイは妙な気分に襲われた。 確かに、ガウリイは魔王と戦ったつもりはない。 過去から抜け出せないルークという人間との、命のやりとりだった。 だが、魔族もそう思っていたのが意外だった。 そう、表情に出ていたのだろう。 「おや、意外ですか?魔族がそう思っていたことが」 今度はやや近い所から、ゼロスの声が届いた。 「うん、少しな。あの案内係って偉いさんなんだろ?」 「偉いさんって・・・」 呆れたような声。 「まぁ、そうですけど・・・」 「なのに、案内をしたってのが・・」 不思議だな、と思ってさ。 後半は呟きに近く、風がその声を消した。 「上司の命令は絶対ですからね、我々は」 「で?」 「『で?』とは?」 ガウリイの意図が読めなかったのだろう、ゼロスの声に怪訝の色があった。 「で、なんでお前さんは姿を見せないんだ?」 「いやあ、だって見せればガウリイさん、斬りかかってくるでしょ?」 あはははは、と呑気な笑いが後に続いた。 「もうやらないさ」 そうガウリイが言った途端。 ガウリイの後ろに気配が生まれた。 ゆっくりと振り返ると、そこに立っていたのは栗色の髪の少女であった。 ざんっ!! 大きく一歩踏み込み、ガウリイは剣を横に一閃させた。 瞬間。 リナの姿がゼロスのそれへと変わった。 「やっぱり、斬りかかってきたじゃあないですかぁ」 ゼロスが不服そうに声を上げた。 「言い忘れたな。お前がフザケタ真似をしなけりゃ、ってことを」 キンと音を立て剣が鞘に収まった。 「で?」 「『で?』?」 眉をひそめるゼロスにガウリイは、肩をすくめた。 「なんで、おれにちょっかいを出したんだ?」 くすくすとゼロスは笑う。 「言ったはずですよ、興味を持ったとね」 ため息を一つつくと、ガウリイは髪をかきあげた。 「じゃあ、なんでおれに興味を持ったんだ?」 ゼロスはひっそりと笑った。 「あなたがリナさんを唆したからですよ」 「おれが?リナを?」 眼を丸くさせ、ガウリイがゼロスの顔をまじまじと見る。 「はい。唆したからです」 「そんな記憶ないけどな?」 ガウリイは頭をぽりぽりと掻きながら呟く。 「僕の予想で大外れしたことはひとつだけなんです」 「・・・ひとつ?」 ガウリイが聞く。 ゼロスはガウリイの目をひたと見つめながら言った。 「はい。あなた達が赤眼の魔王様との戦いを決心するのも予想できました」 「ふんふん」 「真実を知ったあなた達の態度もね」 「ふんふん」 「ただ、僕の予想ではリナさんが先に決心するはずだったのです」 「・・・・・・」 「しかも、『あなたを倒して世界を救う』なーんて言ってしまうかな、と思っていたんですがねぇ」 ガウリイの顔は険しいものになっていた。 ゼロスはそれに気付かぬふりで言葉を続ける。 「しかし、実際はガウリイさんでしたし、ルークの我侭に付き合う、なんて理由でした」 ゼロスはいつもの如く人指し指をすっと立て、ガウリイの鼻先につきつけた。 「僕は人間というものを知っていたつもりでしたが、ここへきてわからなくなったんですよ」 そして、にっこりと微笑みを浮かべた。 「あなたのお蔭ですよ、ガウリイさん」 「なるほど。それで、おれの精神世界ってわけか・・・」 疲れた顔でガウリイが言う。 「はい、そうです」 くっとガウリイから苦笑が洩れた。 くっくっくっく。 肩を震わせ笑うガウリイに、ゼロスは眉をひそめる。 「ガウリイさん?」 いった途端。 「あーはっはっはっは!!」 口を大きく開けて、ガウリイが笑った。 愉快でたまらない、といった風情だ。 「・・・ガウリイさん?」 「ははっ・・!はっ!・・・は、はは」 最後の方は消え入りそうな笑いだった。 「・・・はは、そっか。そうか」 「一人でなに納得してるんです?」 ゼロスが不思議そうに尋ねる。 刹那。 ざうん!! 今夜、三度の剣閃がゼロスを襲った。 完全に油断していたゼロスは、これを完璧には避けられなかった。 「!!!」 腹部に一薙ぎ。 一瞬だが、その顔に苦痛の表情が生まれた。 ザッとゼロスが音を立てて、ガウリイから距離を置く。 ガウリイが尚も剣を構えたままでゼロスを一瞥した。 「金輪際、おれの前に現れるな」 ゼロスから目を逸らさぬままで吐き捨てる。 「・・・ガウリイさん」 「・・・・・・・」 心無しかゼロスの声は掠れていた。 「僕達魔族には、性別がないんです」 「・・・・・・・」 ガウリイは目を細めた。 「なのに、なぜ、男女にその姿が分かれているか、わかりますか?」 やはりガウリイは応えない。 気にした風もなくゼロスは言葉を紡ぐ。 「魔族のこういった姿はね、初めて見た人間。もしくは、気に入った人間の姿なんですよ」 「・・・・・・」 ゼロスの顔に、邪悪といってもいい笑みが浮かんだ。 「何を言っているのかわかりませんか?」 月光が二つの影に降り注ぐ。 彼らを見たいが為だろうか。 静かに彼らを照らしている。 「そうですねぇ。あなたが死んだら、その時は」 ゼロスの口に深い笑みが刻まれた。 「僕はガウリイさんの姿を」 「この身に映しましょう」 終わりです。 ゼロスはひょっとしてガウリイのこと気に入ってるのかな、と思いまして。 たとえば、7巻で、ゼロスの正体がバレたときも、 「ガウリイさんはどうなさるおつもりです?」 ってわざわざ聞いてるしなーって。 それだけなんですがね(笑)。 ではでは、失礼致しました! |