◆−Nec spe nec metu(気まま2-12)−CANARU(8/28-21:41)No.11670
 ┗女はコワい・・・(汗)−P.I(8/29-01:31)No.11676
  ┗女帝と言うか・・(汗)−CANARU(8/29-09:38)No.11678


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11670Nec spe nec metu(気まま2-12)CANARU 8/28-21:41


「一枚・・・・二枚・・・・三枚・・四枚・・五枚・・・。」
窓際の出窓に腰掛けて・・・。
ワザトらしく義兄、ゼロスの机に足を投げでして何やら数えているリナ。
「・・・・番町皿屋敷か・・・・。コイツは・・・。」
「・・ニヤニヤしてる分・・。お菊さんよりタチが悪いですよ・・。ゼルガディスさん・・。」
「しっかし・・。コレで本当にルクセンブルクの公女様なのかねえ・・。」
そんなリナの様子を眺めながら遠巻きにアメリア、ゼル、ガウリイがブツブツ言う。
「いやあ〜〜・・。楽しそうですねえ・・リナさん・・・・。」
恐らく・・・。
彼専用の机に足を乗せられている・・・。一応物腰はニコニコしながらも眼が笑っていない理由はそれだけではないだろう・・・。
「よ。馬鹿兄!!」
ご機嫌に札束で扇子を作りながらリナはゼロスに簡単に挨拶する。
「そうですか・・・。僕は『馬鹿』ですか・・・・。
けどね・・リナさん・・・。ナポリ中の中小マフィアの皆さんから苦情が来てるんですよ・・・。『カタートの女マフィアが悪人に人権は無い、なんて訳の分からない事言いながらお金をカツアゲして行く』ってねえ・・・・。」
あ・・・・。
目が笑ってない理由はそんなことか・・・・・・。
「お前なあ・・。ま〜だ『悪人苛め』なんてやってたのか・・・?」
今度は呆れた様にガウリイがリナに言う。
「いいじゃないの!!ど〜せ、ウチだって合法的なナポリ、ヒチリアをとりしきるマフィア・・。『カタート』でしょ?文句言われる筋合い無いけど?」
「・・・ソレはあくまで仮の姿!!僕タチはこ〜みえても一応『ルクセンブルク公国ワルキューレの騎士団』と言う肩書きがあるんですよ!!」
なかばヤケクソになりながらゼロスが言う。
「・・・・・・忘れてた・・・・・。」
お札をしっかり握りながらリナはちゃっかりそう答える。
「・・・楽してお金を手に入れることよりも・・。ちっとは真面目に働いてくださいよ!!と、言うわけで・・・。ジョヴァンニさんからの電話です。」
「電話・・・?」
不意にリナは不審そうな顔をする。
「どうしたんですか・・・?」
そんなリナにアメリアが尋ねる。
「・・・さっき手紙が届いたのよ・・・。で・・。今回の依頼の内容こそ言ってもらえなかったモノの・・・・・・・。」
そう言いながらリナはなにやらポケットからガサゴソと一枚のブロマイドを取り出す。
「・・・・・これは・・・?」
「ルネサンス時代あたりの絵画だな・・・・。」
リナの取り出した・・恐らく美術館などで安値で売られている絵のポスト・カード。
金髪、やや小太りな感じと傲慢な雰囲気・・・。
更に言えば当時最新流行だったモノであろう、高価な毛皮のドレスを纏った一人の
女性の肖像が不遜な眼差しで此方を見つめている。
「ええ・・・。15〜6世紀の・・。北イタリアの中流貴族の侯爵夫人・・・。
イザベッラ=デステ(Isabella d’Este エステ家のイザベッラ)よ。まあ・・。
結婚してマントーヴァ侯爵夫人になってからはイザベッラ=ゴンザーガと呼んだほうが正しいけどね・・・。」
そんなガウリイの居眠りする説明をしながらリナはジョヴァンニからの電話を受け取る。
「よ〜、おに〜ちゃん。」
何と無くイヤな予感がしながらも実兄に対して来易くそ〜んな呼び方をしてみるリナ。
「よ。リナ。手紙は届いているかい?」
妙に優しい・・・・ますますいや〜〜〜〜〜な予感を煽る声・・・・・。
「まあね。けど、なんでこんなポストカードを贈ってくれちゃた訳?」
「う〜〜ん・・・。手紙だと『記録』が残るからな・・。お前が一々処分してくれるような性格には思えないし・・・・。」
意図的にゼロスが電話をスピーカーモードにしていたのだろう。
そんな兄と妹の会話を聞きながらアメリアが・・・。
「子供の頃ね、リナさん・・。さっさと捨てれば良いのに『不幸の手紙』を後生大事に持っていたんですよ・・・。」
「へえ・・。けど・・何でまた・・・?」
「・・・ココだけの話だが・・。リナの奴、10歳にして筆跡鑑定を依頼してだな・・・。犯人を割り出したんだよ・・・・。」
「・・・・・恐るべき執念ですよねえ・・・。復讐のためならなんでもやるというか・・。」リナの話をしている傍から好き勝手言うアメリア、ガウリイ、ゼル、ゼロス。
「聞こえてるんだけど・・。え、ナンでも無いわ。こっちの事。で・・・。
ナンでまた電話なんてしてきたの・・・?」
「今回のエルミタージュから盗難されたものは・・。リナ、今回は北イタリアのマントーヴァに行って欲しい。イザベッラ=デステの宝物だ。」
「地元・・ねえ・・・・・・・。」
エルミタージュから盗難される・・(といっても悪徳組織が売り払ったんだけど)・・・モノは常に故郷に戻る、という因縁があるらしい。
「そ。もともとイザベッラ=デステはフランスに近いフェラーラ公国の出身の王女だった。
その縁で彼女の宝物がフランスに渡って・・。」
「ルクセンブルクに収容されたって訳ね。けど・・電話する事じゃ無いんじゃない?」
「・・・・・・今回・・。お前とガウリイにはキプロスに飛んでもらうハズだったんだが・・。経費不足でこっちの北イタリアの地元を先に行ってもらう事とあいなった。」
あいなったって・・・アンタね・・・・・・・。しかも経費って・・・。
「どうしてだあ〜?」
あ、こら!!聞くなガウリイ!!
どうせろくな事じゃないに決まって・・・・・。
「ふ!!単純な事だ!!昨夜、友達と豪遊して酒のみまくって・・・・。
見事置き引きに遭って、ベロベロに泥酔してたから何時もなら捕まええる事も可能な
犯人も逃しちまったのさ!!!」
「・・・・・・いばるなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
「ぎゃあああああああああ〜〜〜〜〜!!リナ!!やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!ジョヴァンニが可愛そうじゃねえかあああああ!!!!二日酔いって絶叫にはつらいんだぜえええええええええええ!!!!」
「だああああああああ!!そ〜ゆ〜ガウリイ!!お前の声も響く!!ってええええ!!
俺の声が一番脳天に堪えるぜええええええええええええええええええ!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
かくして。訳の分からないうちの北イタリアのマントーヴァに立ち寄る事と
あいなったのである。


ポー河のゆったりと流れるエミーリア地方。
地平線までくっきりと見渡す事の出来るこの場所に2手の道の分岐点がある。
肩や「マントーヴァ」、かたや「フェラーラ」と書かれた表札がある。
「どうした・・。リナ・・。」
その分岐点のマントーヴァへの道に足を少しだけ踏み入れながらガウリイがリナに尋ねる。
「うん・・・・・・。」
リナの視線は逆方向、『フェラーラ』の方を向けられたままである。
「いやね。もともとイザベッラ=デステはフェラーラの公女だからね・・・。
一寸関連あるかなぁ・・なんて思ってね。」
苦笑しながらリナは続ける。
「ふ〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・。」
そんな事はどうでもいい・・と言わんばかりの様子でマントーヴァへの道に来る様に
リナを促すガウリイ。
ひとまず・・何時までもココに突っ立っていても仕方は無いのでそれに従う事にするリナ。
「そういえば・・・・・・。」
不意にマントーヴァと言えば・・一つの事実がリナの頭に過る・・・・。


「ふふふふ〜〜〜ん〜〜♪まあ、僕ほど芸術のパトロン、文芸、造詣に深い人間って言うのも少ないけどね〜〜〜〜♪♪♪今年の賞は、僕が頂いたよ〜〜〜♪♪♪♪」
「でもでも〜〜♪イザベッラ=デステ賞は女性が貰うものなんですよおお〜〜♪」
ぐわしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああ〜〜〜〜ん・・・・・。
超絶美形な銀髪の少年・・・。
強いて言えばイギリス貴族と日本人のハーフ、ナルシスト、危な系、ロクデナシの少年に灰皿でぶん殴られて・・・・・・・・・・・。
間抜け面した少年が鼻血を垂らしながらぶっ倒れる・・・・・。
「・・・・・氷・・・(ヒョウ・・・)・・・・。」
「ああ・・。リナの中学時代の同級生の・・って!!ああ!!廻!!!」
親友の少年がぶん殴られて鼻血を垂らした事実を今更気付いたらしい・・・。


「イザベッラ=デステ賞。文化、政治、科学、あらゆる分野で活躍した世界各国の優秀な人物に贈られる賞!!!」
ぎいいいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!
っと震える手でローズティーを飲みながら歯軋りする氷。
「ナンでンなもん欲しがってるんだかね・・・。」
そんな氷を呆れた様に眺めながら北イタリアのベッリーニを飲み干す。
「おいおい・・。飯の前に酒飲むなよ・・・。」
「・・・いいの。ベッリーニは食前酒だから。」
ガウリイの言葉にアッサリそう返すリナ。
「所で・・イザベッラ=デステ賞と言えば奇妙な脅迫状がありましてね・・。
だから・・別に僕としては氷様が受賞しても良いんですけど。まあ・・。見てください。」なんだか・・今一瞬・・暗殺計画地味た台詞が出たような気がしたが・・・・。
そんな事を考えながらリナは廻から新聞を受け取る。
ソレを一緒に覗き込みながらガウリイは・・・・・・・。
「いっや〜〜〜・・・。随分・・・・。」
「シンプルな文句ね・・・・。」
新聞に映し出されたカードの一文字。
『イザベッラ=デステ賞の受賞式を止めろ』の一言だった・・・・・・。
「ふざけるなああああ〜〜〜〜!!この僕をさしおいて!!他の連中が受賞だあああ!!!」
回りの目線がキツイので氷とは距離を置いたテーブルに座っているとはいえ・・・。
「恥ずかしい奴だなあ・・・・・。」
「ねえ・・廻、アイツが犯人じゃないの?」
「・・・それはありません。リナさんとガウリイさんに会うまで氷様は本気で受賞なさるおつもりでしたから。それに、この脅迫状が出されたのは一昨日の事です。」
・・・・・・これは・・確実にシロだろう・・・。
残念ながら・・・・・。


「イザベッラ=デステ。マントーヴァ侯爵、フランチェスコ=ゴンザーガの妻たる侯爵夫人にして・・・。フェラーラ公爵エルコレ1世の娘にしてアルフォンソ=デステの姉。」マントーヴァ宮廷内にあるイザベッラの書斎の中を歩き回りながらリナが言う。
美しい絵の填め込まれた壁、豪華な装飾ながらシンプルな作りの一室である。
「う〜〜〜んん・・・・・。けどさ・・・。今回の脅迫事件。それにこのイザベッラ=デステとエルミタージュから売却されたモン・・。何の関連があるのか?」
「・・・まあ・・。簡単に考えれば。今回の受賞を妨害しようとしている連中がエルミタージュの宝物を持っていると考えても不思議は無いわね・・・。」
書斎のの机の上に置かれた一個のプレート。
プラチナの板には「Nes spe nec metu(夢も無く、恐れも無く)」
と彫り込まれている。
「イザベッラ=デステはね・・。一節によるとモナ・リナのモデルだと言われてるの。」
「・・けどよ・・。このイザベッラは金髪・・。でもモナ・リナは黒髪だぜ?」
あ、ガウリイでもその辺りはご存知のご様子。
下らない事に満悦しながらリナは更に話しを続ける。
「その頃ね。イザベッラは中小国家の奥方らしく大国に金を出す様に要求されてね。彼女は嫌味にこ〜言ったの。『マントーヴァには金は無い。あるのは私の宝石だけ。宝石が無ければ美しいドレスも無意味。私はすべてを黒で過ごさねば成らない・・』っとね・・。
それで髪を染めたって訳よ・・。第一モナ・リザのモデルといわれるフィレンツェのジョコンダなんて夫人はまったく知られてないし・・。「モナ」とは「私の」と言う意味。「リザ」は言わずと知れてイザベッラの愛称だしね。」
あくまでコレはマイノリティーな意見であり・・・。
リナ自身も勝手に信じているだけの説なのだが・・・・・・・。
パチパチパチパチパチパチパチ・・・・・・・。
そんな彼女の説明が終了した途端に小さな書斎中に響く拍手。
「いや〜。相変わらず脱帽、脱帽。マフィアなんてアコギで因果な商売やめて・・。
歴史の先生にでもなったらどうなんだい?リナ?」
不意に見知った声がリナの耳に聞こえる。
「・・・・ラウラ!!!!」
思いがけずにまたまた再会を果たした大学時代の先輩に思わずリナは声を上げる。
「・・・・・よ。リナ。ええっと・・それにそっちは・・・?」
「ガウリイ・・。ガウリイ=ガブリエフ。」
背の高い男装の麗人とはいえ・・・・・。
美形の人間にリナが頭を撫ぜられている構図はあんまり面白いモノではないので思わず
ムッツリとした声で返答するガウリイ。
「・・・・ラウラ・・・・・・・。」
相変わらずその片手には・・皮製の手袋がはめられている。
「ああ・・・。ちょっとね・・・。所で。ジョヴァンニのアホンダラは・・・・。」
「・・・・二日酔いで死んでる。」
「・・・あ、っそう・・・。まあ。あの馬鹿にはピッタリの末路だね。」
呆れたような安心したような声。
しかし後半は楽しそうな鈴の音のような笑い声になっている。
「所で・・。アンタはナンでまたマントーヴァに?」
今度は少々警戒を緩めたような口調でガウリイが尋ねる。
「・・・観光・・だと良いんだがね。そうそう・・リナ。気をつけるんだね・・・。
なんだか、ヤバイ事になるよ。絶対に。」
意味深にそう呟くラウラ。
「ヤバイって・・・・・・。」
「・・・さあ・・・ね・・・・・。」
どうとでも取れてしまう所が少々怖いものの言い方をするラウラ。
かくして・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「仮面の意味は・・・・何か知ってる?」
不意に昼食のときにリナがガウリイの眼を覗きこみながら何やら告げてくる。
「・・・・・ナンなんだ・・・・・・・。」
思わずそんな視線に柄にも無く緊張してしまうガウリイ。
が・・・そんな彼の気持ちを裏切るかのようにリナは・・・・・。
「おばちゃ〜〜〜〜んん!!!ミラノ風スパゲッティー10人前ね!!あ、ガウリイ。
アタシが6人前、アンタは4人前だからね!!」
・・・・・・・・・・・・やっぱり・・・そ〜んな所か・・・。
「で・・その仮面の意味ってなんなんだ・・・。」
期待外れの傷心を隠しつつリナに聞くガウリイ・・・。
無論ちゃっかり注文してもらったスパゲティーはちゃんと食べているのだが。
「・・・『虚栄、虚構』って意味・・・・。」
「・・・虚栄・・・虚構・・・・???」
「そ。在る時ね・・。ロンバルディア地方のウルビーノが時のヴァレンティーノ公爵(チェーザレ・ボルジア)に侵略されたの。その時、イザベッラの義妹にあたるウルビーノ公夫人とその夫がマントーヴァまで避難してきたんだけどね。」
ココまで言ってスパゲティーをかきこむリナ。
「ふ〜〜ん・・。つまりは・・親戚って事だな?」
物語でも聞くようにリナの話しに珍しく耳を傾けるガウリイ。
「彼女はね、ウルビーノにあったヴィーナスとキューピッドのミケランジェロ作の彫刻を前前から欲していたのよ。で・・・。当の親戚を追放の身分に追いやったヴァレンティーノ公爵に『是非私に下さい』っていう手紙に書いたわけ。しかもヴァレンティーノ自身も1個年上のだけのイザベッラに『貴方の年若い弟より』な〜んてお茶目な署名いりの手紙共々そのミケランジェロの彫刻を贈ったのよ・・。まあ・・。ヴァレンティーノ公爵はそ〜ゆ〜人だからともかくとして・・・。亡命中のウルビーノ公の気持ちなんてお構いなしの所がイザベッラらしいわ・・・。」
「・・・・・・。そ〜ゆ〜人って・・。女性に年齢の事言うのは失礼だと思うのだが・・。で、それと仮面の関連は?」
あくまでアンタはフェミニストか、ガウリイ。
「その時よ、イザベッラがヴァレンティーノに100の仮面を贈ったのは・・・。
『虚栄、虚構』と言う意味・・。しかし・・ヴァレンティーノはソレを知っていてあえて大喜びで受け取った・・。ニヒリストの怖い所ね。」
もっとも・・見かけによらずどっかのお暇な学生もそ〜ゆ〜演出は大好きらしいのだが・・・。こういった人種には関わらないに限るかもしれない・・・。
みんな変・・・・・・・・・・・・・。
「う〜〜ん・・・・・。あんまり良い話じゃないな・・・。」
いつのまにかスパゲッティー四つ平らげリナの皿にも目をつけるガウリイ。
それを上手にディフェンスしながらリナは・・・。
「良い?イザベッラ=デステ・・。芸術のパトロン、ルネッサンスの典型的な女性。
彼女はそんな綺麗事で飾られた人生を送れる女じゃなかったのよ。」
さらに続けながらガウリイとフォークでチャンバラ合戦を開始する。
「・・と、言うと?」
今度は剣術と言う得意分野に発展したので見事に嬉々としたガウリイ。
「つ・ま・り!!芸術も政治も・・・更には己の地位も教養も!!イザベッラにとっては『己の名声を高めるために使用すべきもの』にしか過ぎなかったの!!」
難しい単語を並べて見事にガウリイを混乱させて・・・。
隙を突いてパスタの残りを殆どフォークに捲きつけ口に放り込むリナ。
「あああ〜〜〜せめて・・せめて・・そのトリュフだけでも食べたかったのにいい!」
顔に似合わず情けない声を出すガウリイ。
ふ・・・・知能プレーの勝利・・といったところである。


ぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいんんんんんん・・・。
不意にリナの頬すれすれに何かが過る・・・。
つ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
微かに・・・ほんの僅かに生暖かい感触が顔を走る・・・。
あんまり・・鏡で見ても気分の良いものではない事は確かである。
「・・・ダーツね・・・・。」
僅かに先っぽの方を銀色の刃をつけるという工夫だけは施されているようである。
「おい。女の子の顔を傷つけるなんて!!最低だぞ!!」
・・・・やっぱりこの『脅迫』以前に人の顔の事気にしてるなんて・・。
コイツは完璧にフェミニストだわ・・などと思いつつリナはダーツが投げつけられた方向に投げ返す。
「しったことじゃねえ!!」
柄の悪い言葉・・・。
ついでに言えば・・・・・・。
彼らの言葉遣いは口調の柔らかなローマ以北の北イタリアのモノではない。
強いて言えば・・リナ自身も使っている刺すような発音の南イタリアの方言である。
「・・・・今回は・・宣戦布告のみ・・と言った所かしらね?」
去っていく連中の背中を眺めながらリナは呟く。
「・・・リナ・・怪我・・・・・・。」
言いながらハンカチで傷を拭うガウリイ。
「・・・・掠り傷よ。」
あまりにも凄まじい過保護振りにさしものリナも苦笑して答えるのだった。
しかし・・・攻撃しようと思えば簡単に攻撃できたこの状況・・。
(もっとも・・この程度の敵ならリナとガウリイで簡単に退治する事は可能だろうけど)
「・・・どうしたんだ・・・。リナ・・・。」
不意に不審そうな表情をしたリナにガウリイが尋ねる。
「・・・・・・・ねえ・・・。イザベッラ=デステ賞の授賞式って・・・。」
「・・・明日だが・・・?」
ビンゴ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・か?
「どうした?リナ!!?」
不意にその場を走り出して去っていくリナの後を大慌てでガウリイも追って行く!!


ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンン!!!
会場は軽い爆発音の後・・・。
その後、やはり少々軽い爆発に包まれていた。
炎上しているものといえば・・せいぜいゴミくらいなものである。
「まるで・・子供の悪戯だな・・・・。」
少々呆れたようにガウリイがそんな様子を眺める。
ちなみに・・・・子供がぶっかけた水鉄砲で炎はアッサリと消火されてしまった。
「まあ・・。中途半端ながら・・ビンゴっていったところかしらね・・。」
ボリボリと頭を掻きながらリナ。
「もっと大規模なもの想像してたんだな・・。お前・・。」
「まね・・・・・。」
問題は・・これで明日がどうなるか、と言う所なのだが。
「ソレ以前に・・。決着をつけなくちゃ行けないようだぜ?」
不意にガウリイが周囲の気配を察知したのだろう。リナに警告地味た事を言う。
「そうね・・。でも・・ココじゃまずいわ。気付かないフリして・・。」
「このままワザトらしく腕を組んで人気の無い所までトンズラする。
それが一番の得策だろ?」
「・・・『腕を組んで』は腑に落ちないけど・・。まあ、そ〜ゆ〜事ね。」
枕詞にだけは賛同しない所がまったくもってリナらしいのだが・・・。
そんな事を考えてガウリイは苦笑する。


がしゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああんんん!!!
どげらっさああああああああああああああああああああああああああああんんん!!
「おいおい・・。リナ・・。こいつ等思ったより呆気ないぞ?」
手には先ほど不燃物のゴミステーションから拾ったビール瓶を持ちながらガウリイがリナ
に言う。
「おっかしいわねえ〜〜〜???」
コレがもしも『ルクセンブルクのエルミタージュ宝物』・・・。
そして今回のイザベッラ=デステ賞受賞に対する反対する悪徳組織なら・・。
まずもって『こんなに弱い』などと言う事は考えられないはずである。
「まるで・・これじゃあナポリの小悪党と同じじゃないの!!」
かく言うリナも手に持った殺戮の道具を振り上げたまま考える。
LILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILILI〜〜〜〜〜♪
「携帯、なってるぞ?」
「おっと!!」
手に持っていた殺戮の道具を咄嗟の事で落としてしまうリナ。
それが見事にぶっ倒れている悪人の一人の背中に直撃する!!
「・・・成仏してくれ・・・・・・。」
思わずあんまりにも痛そうな音がしたので合掌してしまうガウリイ・・・。
「あ、アメリア?あの脅迫状の筆跡の持ち主がわかったですって?」
その一言にリナの幼いころの逸話が蘇り・・思わず顔色を変えてしまうガウリイ。
やっぱり・・執念深いと言うのは事実らしい(涙)
「で・・・。その筆跡は誰なんだ?」
「・・・・・・・・・。」
先ほどまで快活だったリナが急に黙り込む・・・。
「・・・ガウリイ・・。コイツ達は・・。カタートの北イタリア支部の連中に任せるわ・・。いい・・・・。あの脅迫状の出した犯人は・・。ラウラよ!!」
「・・・・・ラウラが・・・・???」
確かに彼女は以前、恐るべき組織に脅迫されていたとはいえ身を置いていた・・。
更に・・リナに再会した時の警告地味た「何かが起きる」の言葉・・・。
その彼女がこの子悪党を使って何かを企んだとしたら・・・・?
「とにかく。リナ。行くぞ!!」
彼女に促されるより先にそう言ってリナの手を持ちながら走り出すガウリイ。


「なんだ〜〜。バレちゃったのかい。あははは〜♪」
ラウラが滞在している、という宿に踏み込んで・・。
もっと緊迫したシーンを想像していたと言うのに軽くそう言ってのけるラウラ・・。
「・・バレちゃったって・・。アンタねえ・・。あの子悪党の刺客も・・。」
アンタが仕向けたのでは・・・・???
疑うのは悪い、と思いつつも思わずリナはそう口走る。
「ああ・・。確かに・・。あの脅迫状はアタシが書いたよ。けど・・。アクマでそれは単なる嫌がらせ。何もするつもりは無いよ。」
少し遠い目をしながらラウラが続ける。
「・・・でも・・何故・・・・。」
「簡単な事。アタシの手を傷つけた男の妻が今回のイザベッラ=デステ賞を受賞するって聞いてね。ささやかな嫌がらせさ。」
リナの質問にアッサリそう答えるラウラ・・。
しかも動機と言い・・・在る意味短絡的と言うか・・:それも良い正確と言うべきか。
「でも・・。リナに刺客を・・。」
まだ文句があるような様子でガウリイがラウラに詰め寄る。
「ああ・・。あいつ等ね。なんか小悪党風な連中が『いつかリナ=インバースを酷い眼に合わせてやる』とか言い合ってるのを偶然聞いてね。で・・そいつらがついに襲ってきたのかい?」
「・・・・ええ・・まあって・・一寸待って。携帯入った!!」
着信音が再度鳴り響き・・・。そして・・受話器越しまで聞こえるアメリアの大声。
『リナさん!!貴方って人は!!あの小悪党は今回のエルミタージュ事件や脅迫事件とは一切合財関係ありません!!良いですか?あの人達は、今まで貴方にカツアゲされて私怨一杯の三流マフィアです!!下らない事に時間費やさないでください!!」
がちゃん!!
つ〜つ〜つ〜つ〜つ〜・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ぎゃははははは!!こりゃ〜〜傑作だね!!」
大笑いするラウラに引き換え・・・。
「ついに・・恨まれたな・・お前・・・・・・。」
「その・・ようね・・・・・・・・。」
みいいいいいいい〜〜〜ん・・と静まり返るリナとガウリイだった・・・。


「結局、ルクセンブルクのエルミタージュの品物はナンだったんだ?」
イザベッラ=デステ賞の受賞式。
正装して客席についたリナにやはり正装のガウリイが思わず目を逸らしながら聞く。
「うん。机の上にあった銀のプレート。Nes spe nec metu(夢も無く、恐れも無く)の文字よ・・・。多分、悪人達は買ったは良いけど。あ〜ゆ〜座右の銘では売り捌けなかったのね。で・・苦肉の策で・・あの書斎に放置した。割と違和感無いでしょ?」
「・・・ある・・・・。」
「・・・なんでよ・・・?」
「別、に・・・・。」
こんな格好して(食事でもないのに)こんなに近くに居ることに・・。
「けど。あの爆発事件には謎が残るわね・・・。」
不意にリナが思い出した様にいううちにイザベッラ=デステ賞の政治部門の女性が受賞のタメに階段を上がって行く。
黄金の髪に、背の高い・・知的な蒼い瞳の美人・・・・・・。
「って・・・・・・!!!!母上!!!!!!!!!!!」
思わず席を立って叫びそうになるガウリイ!!
「オーリさん!!!??」
つられるようにリナも立ちあがる!!
ふっと席と席の間に蠢く淡い、金色の塊・・・・。
それはやがて顔を上げ、訴えかけるような眼差しをガウリイとリナに送る・・。
「・・・ガストン・・。お前だろ・・。か〜ちゃんの賞、受賞を阻止し様として・・。
あんなチャチな妨害公作に出たのは・・・・。」
ジト眼でガストン・・弟を見遣りながらガウリイ・・・。
「だってええ〜〜〜!!!あんなの受賞したら・・。か〜ちゃんが増長してもっと怖くなる事目に見えてるだろおおお〜〜〜(涙)」
「・・どっちにしても・・この様子からすると・・。オーリさんは昨日の爆発事件の犯人判ってるみたいね・・・・・。」
そう・・・。
ガストンには真後ろで死角になっているが・・・。
顔は笑いながらもオーリママの瞳は此方に居るガストンを蛇のような眼差しでにらみつけている・・・。
「ぎゃああああああああああああ〜〜〜〜〜!!!か〜ちゃん怖い!!!!!」
絶叫でこそ無いものの・・かなり悲痛な叫びを場所柄小声であげるガストン・・。
「まあ・・。か〜ちゃんのことだし・・・。」
「地の果てまででも追っておしおきするでようね・・・・・。」
かくして・・・。
一人の少年の自業自得・・と言う形で事件は幕を閉じたのだった・・・。


(気が向いたらまた書きます)

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11676女はコワい・・・(汗)P.I E-mail 8/29-01:31
記事番号11670へのコメント

CANARUさん、こんばんは〜♪
夏休みもいよいよ終盤。宿題はもう片づきましたか〜?(あるのか大学に?)
さて、今回の感想を一言で言うなら・・・タイトルに尽きます。
不幸の手紙の筆跡鑑定して犯人を追いつめるリナ。
自分にケガさせた女性に嫌がらせするため脅迫状を出すラウラさん。
地の果てまでも追いかけてお仕置きするオーリママ!
みんなみんな、イザベッラ・デステと血つながっていそう(^^;)
ラウラさんとオーリママ、昔なにかあったんですかね?
敵対する組織で戦ってたとか・・・想像するだに怖ろしい(汗)
女性陣に比べて男衆がなんかかわいく見えちゃって・・・
ガウリイの保護者&純情ぶりとか、なさけねーガストンくんとか、
ジョヴァンニにーちゃんの馬鹿っぷりとか(爆!)
ジョジョにーちゃん・・・きっと第1部のあの悲劇の人とは別人に違いない。
うん。きっとそーだ!(←現実逃避!)

話は変わりますが、いつかお話した青池保子さんの「エル・アルコン」の
続編「七つの海七つの空」が来月初旬いよいよ文庫化されます〜♪
秋田文庫です。良かったら探してみてください!
それでは次回作も楽しみしてます!


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11678女帝と言うか・・(汗)CANARU 8/29-09:38
記事番号11676へのコメント

>CANARUさん、こんばんは〜♪
>夏休みもいよいよ終盤。宿題はもう片づきましたか〜?(あるのか大学に?)
はううう!!
よりによって一番面倒なレポートを伸ばし伸ばしにしてますうう!!
しかし・・直前までやらないのが高校時代との違いです(汗)

>さて、今回の感想を一言で言うなら・・・タイトルに尽きます。
ですねえ・・・。
今回は女性陣営がだんだん性格破綻してきてますしね・・(汗)
>不幸の手紙の筆跡鑑定して犯人を追いつめるリナ。
>自分にケガさせた女性に嫌がらせするため脅迫状を出すラウラさん。
>地の果てまでも追いかけてお仕置きするオーリママ!
ううう〜〜〜!!
みんなこの執念と残虐さ!!
カテリーナ=スフォツァもビックリでしよねえ・・。
>みんなみんな、イザベッラ・デステと血つながっていそう(^^;)
う〜〜ん・・・。以外と世界各国にちったマントーヴァ侯爵家の末裔
だったりして!!
>ラウラさんとオーリママ、昔なにかあったんですかね?
>敵対する組織で戦ってたとか・・・想像するだに怖ろしい(汗)
ですねえ・・。
その辺りはあまり明らかにする予定は(別の話しになっちゃうので・・)
ないんですけど・・・。
やっぱりコワイですうう!!
>女性陣に比べて男衆がなんかかわいく見えちゃって・・・
>ガウリイの保護者&純情ぶりとか、なさけねーガストンくんとか、
>ジョヴァンニにーちゃんの馬鹿っぷりとか(爆!)
ですねえ・・。
書いているうちの毎度おなじみの結論に至りました!!
>ジョジョにーちゃん・・・きっと第1部のあの悲劇の人とは別人に違いない。
>うん。きっとそーだ!(←現実逃避!)
はううう!!
きっと人格変換させられたんだああああ!!

>話は変わりますが、いつかお話した青池保子さんの「エル・アルコン」の
>続編「七つの海七つの空」が来月初旬いよいよ文庫化されます〜♪
>秋田文庫です。良かったら探してみてください!
はい〜〜♪
ちなみに藤本ひとみさんの「マダムの幻影」という新しい
ハードカバーも欲しいこのごろ・・(汗)
>それでは次回作も楽しみしてます!
ではでは!!
多分次回はカテリーナ=コルネールかエカテリーナだと思います!!