◆−『DESERT』〜第八幕〜−葵楓 扇(8/30-18:12)No.11698 ┣クラちゃん・・・^^;−れーな(9/1-13:11)No.11712 ┃┗席替えかー−葵楓 扇(9/1-16:23)No.11726 ┗『DESERT』〜第九幕〜−葵楓 扇(9/1-20:42)No.11731 ┗『DESERT』〜第十幕〜−葵楓 扇(9/3-15:52)NEWNo.11749
11698 | 『DESERT』〜第八幕〜 | 葵楓 扇 | 8/30-18:12 |
まるがつ ばつにち すいようび くもり おうぎがこわれました(まる) ・・・・・・ケタケタケタケタケタケタケタケタケタケタ(おい) というわけで、こんにちは。扇です・・・・・・色々あってね、本当に壊れそうだよふふふふふ・・・・・・せんちゃんくぢけそーです。 スレイヤーズえぶりでぃは気長に書くことにします・・・ツリー沈んじゃったからレス書きにも挫折・・・すまんにゃ、4人さま。 とか何とか言っておきながら、『報い』第八幕。次回でやっとこさ『リナの挑戦』編が終わるわ。やっとゼルが出てくるわ(爆) ちなみに、『DESERT』という単語に、『〜を捨て去る』という意味があることが判明。というわけで、この話は『当然の報い』でありながら『何かを捨て去る』話ですね(爆)戦争だし、ナイスかも。 というわけで、お楽しみいただけたら幸いです。 __________________________________ 『DESERT』 〜貴方の大切なものは何?〜 第八幕 〜王子騎士〜 「な・・・・・・仲間に・・・・・・!?」 思わず、そう叫んでしまった。 「帝国リトリラトルの第3王子ハイソナが、家出して傭兵になって、今は敵であるエルテナハ解放軍に仲間入りしようとしてるって・・・・・・嘘でしょ!?」 ミレニムの言葉に、だがハイソナはにっこりとして頷いた。 「解放軍を内部から破壊する気ね、絶対そうね!?」 「全然違う」 ハイソナが、手を左右に振る。 「本当に、エルテナハ解放軍の崩壊なんて望んじゃいない。それどころか・・・・・・」 ハイソナは自分の大剣を鞘に収めながら、呟いた。 「帝国に滅んで欲しい、と思っている」 「・・・・・・なっ!?」 その言葉に、またもやミレニムは声をあげる。 「自分の・・・祖国を!?」 「そう・・・今の父上は、どこか変だから・・・・・・戦争、と言う野心にとりつかれている。このまま放っておいたら、もっともっと人々の命を奪い・・・・・・セイルーンやアールグレイにまで手を出すに違いない。父を止めるのが・・・息子の、役割だと思うから」 手をぎゅっと握りしめ、ハイソナは言った。 その言葉からは、強い決意の色が見られた。 見られたのだが・・・・・・ (本当に裏がないかどうか・・・証明するものがないわ) どんなもので証明できるかどうか、とも思いつつ、ミレニムは胸の内で呟いた。 とりあえず、軍の入隊を決めるのは、兄のクルーザの役割。 けれど、そう簡単に兄に会わせたり、アジトへは連れていけない。 クルーザが暗殺されたり、アジトの在処を敵に知らされない、という保証はないのだ。 「とりあえず・・・・・・そう簡単にはアジトへは連れていけない・・・・・・」 其処まで言ったときだった。 「・・・・・・ミレニム!?」 「アーシュイア!!」 ハイソナの背後に、アーシュイア、トルテ、ミュアが現れた。 「なーんだ、靴跡ってミレニムさんのだったんですね」 「ああああっ、そう私の名前を連呼しないで・・・・・・」 トルテの言葉にミレニムがそう言ったが、もう遅かった。 「ミレニム・・・アーシュイア? 聞いたことあるぞ。エルテナハ解放軍リーダー“聖騎士”クルーザの妹であり、エルテナハ最高の僧侶“聖母”ミレニム=ラーラヴェン。それに、突然エルテナハ解放軍に加わったとされる無敗の賞金稼ぎ、“黒騎士”アーシュイア!!」 ハイソナが声を上げ、ミレニムが完全にしゃがみ込んで膝に顔を埋めた。 「バレた・・・・・・ごめんなさい兄さん、ごめんなさいエルテナハ解放軍のみんな、ごめんなさいエルテナハ王家の生き残りさん・・・・・・悪いのは全てアーシュイアとトルテちゃんです」 「今さらりと何かひどいこと言わなかったか?」 アーシュイアの言葉にも、ミレニムは反応せず、ただぼそぼそと呟いている。 「どうするのよ、敵軍であるリトリラトル王子ハイソナに見つかっちゃったのよ!! これじゃあ、解放軍は・・・・・・」 「リトリラトルの・・・王子!?」 ミレニムの叫びに、トルテが答える。 一瞬後、隣にいたアーシュイアの姿が消え、さらに一瞬後、アーシュイアはハイソナに斬りかかっていた。 だが、“王子騎士”の二つ名は伊達ではない。 アーシュイアの一撃目を横に飛んでかわし、次の切り込みの時にはもう剣を抜いて、それで受けた。 「リトリラトル・・・・・・リトリラトル、リトリラトル!!」 アーシュイアは、ただその言葉を繰り返した。 「・・・・・・殺してやる!!」 「ま、待って下さい、アーシュイアさんっ!!」 「うるさい、止めるなトルテ!!」 トルテの遮りも聞かず、アーシュイアはもう一撃ハイソナに入れる。 ガウリイのアドバイス通りに型を組んだら、たしかに切り込みが素早くなり、ハイソナの頬に汗が浮かんできた。 「貴方・・・エルテナハを滅ぼされた、と言うだけでなく・・・・・・個人的に、リトリラトルに恨みがあるようだね」 「ああ、そうさ!! オレは、リトリラトルに父と母を殺され、兄さんは・・・・・・」 其処まで言って、アーシュイアは思わず言葉を止める。 その一瞬の動揺の隙をついて、ハイソナは剣でアーシュイアの剣を払い、後方に飛ばす。 「しまっ・・・・・・」 「剣がなければ戦えまい」 ハイソナはアーシュイアの首筋に剣を近づけ、動きを封じた。 「確かに、ボクはリトリラトルの王子ハイソナ=カルン=ファスト=リトリラトル。エルテナハ人ならば、恨みと憎しみの対象だ・・・・・・ボクの命が欲しければ、あげよう」 ハイソナはあっさりと手から剣を離し、そこに座り込んだ。 「ならば・・・!!」 その剣を握り、アーシュイアは振り上げた。 だが・・・・・・ ――――無抵抗の人間を傷つけるのは、同じ人間として恥ずべきコトだ。例え相手が自分にとっていかなる対象であろうと、話し合いという手があるだろう・・・・・・―――― ――――忘れないでくれ。常に誇りを持ち、自分と戦うのだ。お前は、エルテナハの・・・・・・・・・・・・―――― 「・・・アーシュイアさん!?」 トルテの声に、アーシュイアは現実に引き戻される。 「どうしたんですか?」 「何が・・・・・・?」 「あの・・・頬触れば分かります」 そう言われて、手を頬に伸ばす。 生暖かい水の感触。 ・・・・・・・・・・・・涙。 カラン、とアーシュイアは剣を取り落とした。今度は、ハイソナが意外そうな顔を向ける。 「無抵抗の人間を傷つけるのは、同じ人間として恥ずべきコトだ。例え、相手が・・・・・・」 声が裏返って、喉がガラガラ鳴って、むせて少し苦しくなりつつも・・・・・・アーシュイアは言葉を続けた。 「例え相手が自分にとっていかなる対象であろうと、・・・・・・話し合いという手がある」 アーシュイアは、手の甲で目を拭った。 其処にあるのは、いつものアーシュイアの意志の強い顔だった。 「オレの名は・・・アーシュイア。“黒騎士”アーシュイアだ!!」 そして、そう叫んだ。 「あのー、クルーザさん」 アメリアがばつの悪そうに、おどおどして言った。 その行動に驚きを覚えつつ、クルーザは返した。 「何です? 姫」 「あの、私今の今まですっかり忘れてたんですけど・・・・・・」 それで、決まりの悪そうにしているのか。 クルーザは、大丈夫とばかりに微笑み、言葉を続けるように言った。 「で、何です?」 「リトリラトルの第3王子が・・・家出して、なんだかこっちに向かってるそうです・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁぁぁぁぁぁ!?」 その大声に、寝かけていたガウリイが目を覚ました。 そして、そのころ・・・・・・ 「ZZZ・・・・・・」 リナは、完全に眠っていた。 そよ風と、木々の匂いに包まれて・・・・・・ 「貴様、此処はエルテナハ領地だ。すぐさま立ち去らないと、今度は本気で殺すぞ」 「あ、いや、ちょっと待ってくれ」 アーシュイアの言葉に、慌てながらハイソナは言った。 「ボクは、エルテナハ解放軍に入れて貰おうと、此処に来たんだ・・・・・・」 「巫山戯るな! 何故、リトリラトル人が・・・・・・」 「私は、良いと思います」 「トルテ!?」 アーシュイアの言葉を遮り、トルテが言い放った。 アーシュイアが、猜疑の声を上げる。 「彼の目には、この間戦いで見た・・・リトリラトルの兵士とは違って、すごく綺麗です。悪いことを考えている人には見えません」 「お前・・・・・・!!」 「偶然・・・かな。私も、良いと思う」 「ミュア!!」 トルテに続き、ミュアまで言った。 「エルフは、昔人間に滅ぼされかけたことがあるの。だから、人を見る目は鋭いよ」 「・・・・・・だけど、判断するのは兄さんよ」 ミレニムが、先の戦いによるものか、アーシュイアと同じくリトリラトルに対する警戒心か、そう言った。 ハイソナが、頷いた。 「それでOKだよ。ボクを、聖騎士クルーザの元まで連れてってくれ」 「・・・・・・後でな」 「・・・え?」 YESでもNOない答えに、ハイソナが疑問符を浮かべる。 「今は、リナ=インバース探しの方が先だ」 「リナ=インバース!? あの、ドラまた魔道・・・・・・」 「誰がドラまたよぉぉぉ!!」 づげしっ!! 突然上空から跳び蹴りをかまされ、ハイソナは倒れ込む。 「リナさん!」 「やっほー、なんでミレニムまで居るわけ?」 現れた魔道士・・・リナを見て、ミレニムは嬉しそうな声を上げる。 「あ、そうでした。今、この森には・・・・・・」 「しかし、ミレニムを追いかけていたら偶然リナ=インバースの元にたどり着くとは・・・・・・」 「現実は小説よりも奇なり、って昔誰かが言っていた気がします」 「偶然?」 ミレニムの話を聞かずに会話をしているアーシュイアとトルテの間に、リナが割り込んできた。 「あたし、ちゃんと一枚目の立て札の周りに足跡付けてきたんだけど」 「・・・・・・・・・・・・え?」 「じゃあ、あれ本当にリナさんの足跡だったんだ」 トルテが疑問符を浮かべ、ミュアがその胸の内を代行するように言った。 リナが、呆れたように頭を掻く。 「人の話を聞いて下さいぃっ!!」 「わぁっ!?」 ミレニムの大声に、アーシュイア達が声を上げる。 「新参者のリナさんや、人付き合い悪いアーシュイア、噂っていう言葉の意味を分かってないトルテちゃんやミュアちゃんは知らないと思うけど・・・・・・今、この森には!!」 ぐるるるるるるるる・・・・・・ ミレニムは叫び、背後から聞こえたこの声に沈黙する。 ハイソナが剣を掴む。それを見て、アーシュイアも剣を取った。 「・・・・・・・・・・・・人喰い狼の魔物が居るんです」 がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 甲高い咆哮を上げ、狼姿の、だが数段巨大な大きさの魔物が、牙をギラつかせ現れた。 ▽To Be Continued! __________________________________ ぐはぁぁぁぁぁっ、クラヴィス出てないぃぃぃぃぃぃ!!(笑) ガウリイも台詞無し!! 久しぶりの登場のリナ、暴走気味!! さぁてと、早くR灰色(←アールグレイ(爆))の人出てこないかしら・・・といっても、こやつらが出て来るには、先ず次回を投稿しなければ(爆) 頭から『おはロック』と『ZOO』が離れない中・・・・・・ ではでは、扇でした〜☆ (アーシュイアが性格歪んでいても常識あるのは、兄のおかげなのね〜) |
11712 | クラちゃん・・・^^; | れーな E-mail | 9/1-13:11 |
記事番号11698へのコメント こんにちはっ?れーなですっ! 今日は始業式でしたの〜・・・ 校長の話は長いし・・・生活指導の話はなにやらむかつくし・・・ 担任もなんか話しだすし・・・広報の仕事は押し付けられる・・・ あはっいい事無いねぇ〜♪ あ、でも席替えはなかなか良かったvv とゆーわけでちゃっちゃと感想いきましょーか。 ハイソナって王子さんが出てきてたっけ・・・ はっはっは。彼も暴走仲間に加わっちゃうのかしら♪ ・・・どんな話になるんだ一体(笑) とりあえず味方ならなんでもよしっ!(まて) クラちゃん・・・せっかく探しに出ましたのに・・・どこで何をしているのやら(笑) 出番無かったもんねぇ・・・可愛そうに(笑) で、今回リナちゃんが出てきて・・・ 次回で挑戦編が終わりってことは次回はリナVSアーちゃん&トルちゃん&ミュアってことかしら・・・ でもミレニムはどーすんだ? 狼が出てきたみたいだけど・・・ それって強いの?(爆) リナには敵わないような気がしてならないんだけど・・・^^; 次の次にはゼル君が出てくるのかなぁ? R灰色(笑)の人ってどんな人だろ・・・ どんどん登場人物増えてくしねぇ・・・ せんちゃんガンバ!だわ。 続き待ってますよぅ♪ れーなでした☆ |
11726 | 席替えかー | 葵楓 扇 | 9/1-16:23 |
記事番号11712へのコメント れーなさんは No.11712「クラちゃん・・・^^;」で書きました。 >こんにちはっ?れーなですっ! 疑問文だっ(笑) >今日は始業式でしたの〜・・・ >校長の話は長いし・・・生活指導の話はなにやらむかつくし・・・ >担任もなんか話しだすし・・・広報の仕事は押し付けられる・・・ >あはっいい事無いねぇ〜♪ 頑張るんだ! 私なんか二年連続で生命保険の作文書いたし!! >あ、でも席替えはなかなか良かったvv 私は〜・・・寒いときストーブの近くの窓際で、暑い今時に涼しい廊下側に来たし(笑) >とゆーわけでちゃっちゃと感想いきましょーか。 >ハイソナって王子さんが出てきてたっけ・・・ >はっはっは。彼も暴走仲間に加わっちゃうのかしら♪ >・・・どんな話になるんだ一体(笑) >とりあえず味方ならなんでもよしっ!(まて) もう、キャラクターみんな個性強すぎ!! >クラちゃん・・・せっかく探しに出ましたのに・・・どこで何をしているのやら(笑) >出番無かったもんねぇ・・・可愛そうに(笑) 頑張れ! 次回登場だ!! 変形、そしてロケット発進!!(何があった、クラヴィス!?) >で、今回リナちゃんが出てきて・・・ >次回で挑戦編が終わりってことは次回はリナVSアーちゃん&トルちゃん&ミュアってことかしら・・・ >でもミレニムはどーすんだ? ふふっ、実はリナはアーちゃん達と戦わなかったり・・・・・・ 次回を待て!! >狼が出てきたみたいだけど・・・ >それって強いの?(爆) >リナには敵わないような気がしてならないんだけど・・・^^; でも、それ以前にリナちゃんサボって戦わないv(おい) >次の次にはゼル君が出てくるのかなぁ? >R灰色(笑)の人ってどんな人だろ・・・ >どんどん登場人物増えてくしねぇ・・・ >せんちゃんガンバ!だわ。 頑張る! うん!! >続き待ってますよぅ♪ >れーなでした☆ どうもですぅ☆ ではでは、扇でした〜☆ |
11731 | 『DESERT』〜第九幕〜 | 葵楓 扇 | 9/1-20:42 |
記事番号11698へのコメント やっとこさ、『リナの挑戦』編終わりです・・・ということで、今晩は。扇です。 コメントがあまりありません(笑)なので、とーとつですが本編へ。 お楽しみいただけたら幸いです。 __________________________________ 『DESERT』 〜それを求めるから、貴方は戦う〜 第九幕 〜軍師〜 「やだもぉ、いきなりで出来ないでよ霊王封爆発旋(ガルク・ルハード)!」 ぐわしゃぁぁぁああああ!! リナの力ある言葉に応え、呪文による大騒音が響く。 同時に、人喰い狼の魔物が、声にならない声を上げて吹き飛ばされていく。 「すごい・・・あんな高等の魔法を、あっさり使うなんて・・・・・・」 トルテが、呆れたような声を出す。 「ふん、この大魔道士リナ=インバースさまを舐めないで頂戴!!」 リナが、腰に手を当ていばり叫ぶ。 「威張ってる場合かッ!!」 ざしゅぅっ!! 直後アーシュイアが声を上げ、剣を振るう。 すぐ背後に、一匹の魔物が待っていた。 「ワーウルフってとこか!!」 「ちょっと、何匹居るのよ!? それに、気配も感じなかった・・・・・・」 「最近の魔物は、少しおかしいんだ」 アーシュイアとリナが声を上げ、それにハイソナが答えた。 「帝国がエルテナハを滅ぼし、更にはセイルーンやアールグレイに手を伸ばし始めた頃・・・魔物達が凶暴になり、無差別に人を襲うようになったんだ」 「その話、聞いたことあります」 トルテが、ハイソナの説明に口を挟んだ。 「ミュウさんが言ってたんです・・・何だか最近、世界を邪悪な気が包んでるって。それで魔物達が活性化してるんだって」 「・・・ま・・・まさか・・・・・・」 「・・・・・・どうした?」 リナが俯き、ぼそりと呟いた言葉に、訝しがりながらアーシュイアが聞いた。 「魔王の・・・・・・シャブラニグドゥの復活・・・・・・」 「氷の矢(フリーズ・アロー)!」 「炎の矢(フレア・アロー)!!」 ミュアとトルテ・・・“氷”と“炎”の二人の魔女が、声をそろえて力ある言葉を放つ。 躰を中心で分かち、左右に別属性の術を喰らい、一匹のワーウルフは倒れゆく。 「本当に・・・一体、何匹居るんですか!?」 「もう・・・かれこれ十匹くらい倒した気がする〜」 さすがの『いつも元気』のトルテやミュアも、疲れ果てた声を上げる。 「本当に・・・嫌な気配」 トルテはそう呟き、先ほどリナに言った言葉を思い出す。 「それは・・・違うと思います」 「何で?」 リナの言葉にまず答えたのは、トルテだった。 「ミュウさんが、言っていたんです。これは、魔王の気配じゃない、って。ただ、それに連なる邪悪な気配だって・・・・・・ただ、魔族と言うより・・・あの魔獣ザナッファーみたいな存在に近いと」 トルテがそこでため息を付いて、言葉を進めた。 「ただ・・・・・・日に日に、その邪悪な力が大きくなっていくんです」 「日に日に・・・徐々に、ってことか?」 アーシュイアに言われて、トルテが頷いた。 「ミュウさんから最後に聞いたのは・・・村を出る二、三日前・・・その時すでに、ザナッファーなんて足元に及ばないくらいの力がもうある、って言ってましたから」 「今は・・・それより更に強くなっている、ってことか・・・・・・?」 「けれど・・・・・・一体、何者?」 ハイソナの言葉に答えられる者は、居なかった。 「くそっ!!」 「ちょ、ちょっとあんた・・・前に出過ぎよ!」 また一歩大地を踏みしめ進んだアーシュイアを見て、リナがとがめた。 だがアーシュイアは答えず、ワーウルフの一匹を圧しつつもまた一歩進む。 「大丈夫です、リナさん。死なない限り私が魔法で何とかしますから」 「ミレニム・・・それ、かなり危険な発言」 ミレニムが冗談混じりに言った言葉に、リナがジト目で答える。 「・・・って、ああっ!!?」 前を振り返ったとき、もう其処にはアーシュイアの姿は見えなかった。 慌ててリナは呪文を唱え始める。 (あの馬鹿・・・・・・死ぬわよ、本当に・・・!!) 胸の内で毒づいた。 「たぁぁぁぁあっ!!」 ざばしゅぅっ! アーシュイアが、ワーウルフを頭の真上から一気に真っ二つに切り裂く。 まるで、何か嫌な考えを振り払うかのように。 (兄さん・・・・・・) 心の中で呟き、兄のことを思い出す。 優しくたくましく、そして賢明な兄・・・・・・ その一瞬の隙をつき、目の前に魔物が現れた。 「・・・っしま・・・・・・っ」 がきぃぃぃぃぃぃぃん!! 慌てて剣で防いだが、相手の攻撃を受けない代わりに剣が吹き飛んでいく。 其処にもう一度、ワーウルフが爪をきらめかせ手を振り上げる。 呪文は間に合わない。 思わず、目をふさいで頭を抱え、しゃがみ込む。 そして、敵の攻撃を待つ。 待つ。 ・・・・・・・・・・・・待つ。 だが、いつまで経っても攻撃が来ない。 少し、目を開けてみる。 「なんだなんだ、“黒騎士”アーシュイアがこんなトコで縮こまってるなんて・・・なぁ」 “軍師”クラヴィスが、手にしたバトル・アックスでワーウルフを叩き伏せ、そしてそうアーシュイアに語りかけた。 「く・・・・・・クラヴィス・・・・・・お前・・・・・・」 慌てて立ち上がり、剣を手に取る。 少し照れ隠しも交えながら、ぶっきらぼうにそう言った。 「なんだぁ、礼の一つも言えないのか?」 意地悪く、クラヴィスはそう言った。 「・・・・・・・・・・・・りがと・・・」 「・・・・・・ん?」 「・・・ありがとー・・・・・・」 顔を紅くして横を向き、だがそう呟いたアーシュイアを見て、思わずクラヴィスも目を逸らす。 何か、見てはいけないものを見てしまったようで。 「なんだよ・・・・・・今日はヤケに素直じゃねーか・・・」 「・・・・・・・・・・・・オレは・・・助けて貰っておいて礼も言えないほどの無礼者じゃない」 (んなこと言ったって・・・・・・「助かった」とか「礼を言う」ならまだ分かるけど・・・「ありがとう」ってガラじゃないだろ・・・・・・) アーシュイアの言葉に、思わずクラヴィスはそう考える。 けれど、これで何となくほっとした自分もあることに気づく。 今まで必死に走ってきた甲斐があった・・・そんな気がする。 そんな自分を思って、思わずクラヴィスは口元だけで微笑んだ。 「ああああああ、なぁぁぁんか良い雰囲気・・・・・・」 「ムード満点!」 その二人を見て、トルテとミュアが呟く。 「この前の、アーシュイアさん大怪我事件の時も何だか良い感じだったし・・・・・・」 「なになに、トルちゃんぢぇらしー?」 「何で!?」 顔を紅くして答えるならまだしも、真っ正直に真っ直ぐ答えられ、思わずミュアは冷や汗を流す。 ・・・・・・だめだこりゃ・・・・・・ 胸の内で呟く。 だが、自分でも「トルテとクラヴィスが・・・」と言うことは、何がどうあっても・・・天変地異が起こったとしても、それだけはあり得ないと思った。 「まったく、もう・・・・・・」 それを見下ろし・・・リナはため息を付いた。 その数、単純計算においても50。 それほどの数のワーウルフが、其処を一面埋め尽くしていた。 「なんだって、こんなにたくさん・・・・・・」 ハイソナが、呆れたように言った。 「けど、これだけ居るってコトは・・・・・・」 リナは良いながら、大きく後ろに飛んだ。 「馬鹿でかい親玉が居る、ってことね」 「リナ=インバース!?」 現れたその巨大な狼の魔物を見てから、大きく逃げたリナを見、アーシュイアは叫んだ。 「貴様、逃げるつもりか!?」 「あーら、あんた達の小手調べよ」 リナが傍観を決め込みながら、アーシュイアに言った。 「これが、最後の罠。あんたたちがこれを倒せばあたしはちょっとはあんた達を見直すし、あたしは賞金が入って一石二鳥〜」 「なんです、リナさん知ってたんですか」 リナの言葉に、やっぱりとばかりにミレニムが言った。 「じゃ、後は任せたわ」 「あの女、やっぱり殺すぅぅぅぅぅぅっ!!」 そのまま座り込んだリナを見て、アーシュイアが再び叫んだ。 「おい、前見ろアーシュ!!」 クラヴィスに言われて、反射的にアーシュイアは剣を前に突き出す。 そのまま飛び退き、巨大ワーウルフから距離を置く。 「トルテ、ミュア、それにミレニム! 後方支援、頼んだぞ!!」 「はいっ!!」 アーシュイアの言葉に、トルテが呪文を唱え始める。 「トルテちゃんは下がってて、炎の魔法はアーシュイアさん達にも当たっちゃうかも知れないよ!!」 「わ、分かった・・・」 ミュアに言われ、トルテは呪文を治癒(リカバリィ)に変える。 ハイソナの切り返しで後ろに飛び退いたワーウルフを、クラヴィスが斧で待ちかまえる。 それを下手に避けようとすると、今度はアーシュイアの剣が待っている。 ワーウルフは爪でクラヴィスの斧を防ぎ、そのまま躰を反転させる。 「あの狼、でかいクセして素早いぞ!」 「でかいと言っても身長だろう。躰自体はなかなかしなやかだ」 クラヴィスの声に、アーシュイアがいつもの冷静な言葉で答える。 「よし、じゃあこんな作戦・・・・・・どう?」 ハイソナに言われて、アーシュイアとクラヴィスが目を向けた。 (リトリラトルの王子が、エルテナハの軍師と・・・共同戦線なんて) その様子を見て、リナは心の内で呟いた。 三人が、てんでバラバラに散っていく。 ワーウルフは誰を追うか一瞬悩んだ後、比較的位置が近いアーシュイアの方へと向かう。 (・・・・・・レスカ・・・・・・) リナが、まるで古い友達を呼ぶように、胸の中でその名を呼んだ。 (いつまで・・・・・・自分を殺し続けるの?) 戦い慣れていく自分の躰に脅えるその戦士を思い浮かべて・・・・・・ リナは今、自分がこの地にいる実感を、そして自らの無力さを噛み締める。 「ぐるぅおおおおおぉぉおおおおお!!」 がばっ、とワーウルフは長く伸びた、変色した爪を構えて、そのままアーシュイア斬りかかり行く。 「かかったな、馬鹿めっ!!」 だがアーシュイアは余裕の表情で、剣で受け止めるでもなく、ただ横へ飛び避ける。 ワーウルフは、その挑発に答えるように、アーシュイアを追って飛び・・・・・・ 突如、背後から血を吹き倒れていった。 其処には、ハイソナとクラヴィスが、それぞれの武器である剣と斧を、ワーウルフの背に突き刺していた。 「ダメだぜ、怒りに身を任せちゃ・・・・・・」 にやりとして、クラヴィスは一言そう言った。 ぱちぱちぱち・・・・・・ 背後から拍手の音が聞こえて、三人は振り返った。 見ると、リナが面白そうな表情をしていた。 「なかなかやるじゃないの・・・・・・」 そして、一度大きくパシンと手を打った。 「ご・う・か・くv」 「・・・・・・・・・・・・え?」 リナがにっこりと笑って、あっさりと一言言った。 思わず、アーシュイアがとぼけた声を出してしまう。 「いやーねー、実はあたし、今アールグレイ国王に雇われてるのよ」 「・・・・・・アールグレイ?」 「“四強”の国の一つ、“魔道国アールグレイ”だよ」 トルテの言葉に、ハイソナが答えてやった。 アーシュイアは、ますます面白く無さそうに、むっつりとした顔で言った。 「で、あんたはどういう依頼を受けたんだ?」 「アールグレイ国王は、エルテナハ復興に協力的よ。だけど、本当に“エルテナハ解放軍”が頼りになるかどうか調べてこい、ってあたしを遣わしたワケよ。あたしはクルーザの実力は十二分に分かってるから、他のレジスタンスの中心人物達・・・つまり、あんたたちの小手調べをさせて貰ったわけ」 ぺらぺらと、重要すぎることをあっさりと喋るリナに、思わずアーシュイアも冷や汗を流した。 ・・・・・・このアマ・・・いつか本気で殺したい・・・・・・ 心でそう思いつつ、言ったら言ったでまたうるさくなるから、アーシュイアは必死に言葉を飲み込んだ。 「でも、とりあえずあんた達も、まぁなかなかやるってコトが分かったから・・・あたしはアールグレイに使いを送る。するとあら不思議、ちょっとすればアールグレイから援軍がやってくるから。楽しみにしてて頂戴」 あはははは、とまるで悪の魔女ギリギリの笑い声を上げ、リナは後ろを向き、アジトの方へと歩み去っていった。 アーシュイアは、静かに剣の柄に手を伸ばした! 「やややややや、止めろアーシュっ!! それはいくら何でも危険すぎるっ!!」 クラヴィスが、すかさず止めにはいる。 「そういえば、どうしてクラヴィスさんは、アーシュイアさんを『アーシュ』と呼んでいるんですか?」 「・・・・・・・・・・・・え?」 「・・・そうだな・・・勝手に愛称を付けられて・・・しかも、呼んで良いなどとオレは言ってない」 「あ・・・えーと・・・・・・その・・・・・・」 トルテとアーシュイアにいたばさみにされ、クラヴィスは思わずうなり声を上げる。 すると、ぽんっと手を打ち、すかさずその間から抜け出す。 「そーだ、オレは団長命令で、お前らの無事を確認しなきゃいけなかったんだよな。で、お前らこんだけぴんぴんなワケだから、オレはすぐ報告に帰らなきゃな。んじゃな〜っ!」 ずだだだだ、と砂埃まで上げて、クラヴィスはその地を駆け去っていった。 「・・・・・・変なヤツー」 「あ、そうだ、アーシュイアさんっ!」 アーシュイアが呟いた後、何かを思いだしたように、トルテが声を掛けてきた。 見ると、珍しく真剣な表情だった。 「あの・・・アジトに帰ったら・・・今の世界の状態と、エルテナハ王家の人たちについて・・・・・・教えて下さい」 そうトルテが言った。 アーシュイアは、うんともすんとも言わず、ぼーっとしてそれを聞いた。 「・・・・・・どうしたんですか? 嫌ですか?」 「・・・え? あ、いや、別にそうじゃない・・・・・・ただ、そう言うことはクルーザに聞いた方が良い」 「・・・そうですか・・・・・・」 「そうだ!」 今度は、ハイソナが声を上げた。 「ボクをクルーザさんに会わせてくれよ!」 「・・・・・・はぁ・・・・・・」 またやっかいなヤツが増えた・・・・・・ 心の中で、アーシュイアは呟いた。 ▽To Be Continued! __________________________________ えーと・・・『報い』の本タイトルの隣の、サブサブタイトル(サブのサブ)は、前回の続き・・・のつもり。何となく。 これでやっと、次回から『帝国との戦い』編になります。 ストーリーの謎とか、序章の人物の正体とか、結構分かっていくつもりです。まぁ、幾つか疑問は残ると思うけど。 『帝国との戦い』編の次は、『闇を救う者』編と行って、物語は終わるつもりです。なんだかんだ言っても、えぶりの次回作が終わる頃には多分終わると思います。・・・・・・多分(笑) ではでは、登場人物紹介を。 名前 二つ名・次の行プロフィール ☆アーシュイア 黒騎士 元無敗の賞金稼ぎ。魔法剣士で、その過去は一切不明。兄が居るらしい・・・。 ☆トルテ=レーヴェル 炎の魔女 記憶喪失の少女。左手に謎の痣がある。その魔力は絶大。 ☆クルーザ=ラーラヴェン 聖騎士 元エルテナハ騎士団団長。現在は反乱軍のリーダー。 ☆ミレニム=ラーラヴェン 聖母 クルーザの妹、僧侶。行動派で、高位神官。暴走気味。 ☆クラヴィス=サリサラス 軍師 元エルテナハ王国騎士団員、軍師。酒と女好き。アーシュイアと・・・・・・ ☆ミュア=ミューアル 氷の魔女 エルフの少女、トルテにとっては妹同然。ちょっと暴走気味。 ☆ハイソナ=カルン=ファスト=リトリラトル 王子騎士 帝国リトリラトルの第3王子、だが戦争を嫌う者。 この登場人物紹介は、アーシュイアを除いて全員、私が常に携帯しているネタノートに書いてあるものです。だからちょっと短い。 今後も、この内容で書いていくつもりです。 え、なんでアーシュイアはノートに書いてあるとおりにしないって? アーシュイアの登場人物欄を見て下さい。『過去は一切不明』ってあるでしょ? ネタノートの内容は、過去が明かされてからのものなんです。 まぁ、次回の次にアーシュイアの正体が分かるので、その時に・・・・・・ では・・・・・・次回、ゼルガディス登場&アーシュイアと謎の男との関係発覚!? お楽しみに! です。 (アーシュイアの愛称、『アーちゃん』と呼ぶクラヴィスは見たくないから(笑)アーシュなのです) |
11749 | 『DESERT』〜第十幕〜 | 葵楓 扇 | 9/3-15:52 |
記事番号11731へのコメント とうとう、帝国との本格的な戦いが始まりました。 そして今回は、謎だけ残してぐっばい、って感じ(笑) 何かコメントすると次回のネタバレになるので、今回はあろう事か後書き自体存在しません。 ということで、ゼル登場編。お楽しみいただけたらそれなりに幸い。 __________________________________ 『DESERT』 〜全てを喰らう邪なる魔神〜 第十幕 〜王国王女〜 「クルーザさんっ!!」 「な・・・なんだい?」 面と向かって、びしっと言い放ったトルテに対して、少し気後れしながら、尻すごみにクルーザは言った。 これは、明らかに嫁に尻に敷かれるタイプである。 「とぉぉぉっても大事な、教えて欲しいことがあるんですっ!!」 「そ、それは分かった・・・分かったから、少し落ち着いて・・・・・・」 テーブルに身を乗り出して、反対側に座っていたクルーザが後ろ向きに倒れそうなほど、トルテが迫っていた。 思わず、あの“聖騎士”クルーザも、焦りを見せるほど。 「で、大事なコトって?」 やっとトルテが退いて、クルーザは椅子の位置をなおして、再び座った。 「この世界の、現在の情勢です」 「この世界の、って・・・・・・それほど広範囲、と言うわけではないですけれど」 隣に座っていたアメリアが、思わず口出しする。 「世界の情勢、と言っても、さすがにトルテさん、多少は知っているでしょう? 知りたいのはどの辺のことですか?」 「なんで帝国がエルテナハを滅ぼしたのか、って言うことと、エルテナハ王家の生き残りさん達についてです」 その言葉に、思わずクルーザとアメリアは黙り込む。 「何故、帝国リトリラトルが王国エルテナハを滅ぼし、さらにセイルーンやアールグレイにまで手を伸ばそうとしているのか・・・その理由は、分かりません。ただの世界征服とは思えませんし、それに・・・・・・」 アメリアはちらり、と横に視線を向ける。 敵であるはずの、帝国リトリラトルの王子・・・ハイソナ。 リトリラトルの王子でありながら、帝国の滅びと王の暴虐を阻止しようとして、果てはエルテナハ解放軍にまで半ば強引に加わった、まだ年若い騎士・・・・・・。 「ハイソナさんの言いっぷりからすると、ある日突然リトリラトル王が乱暴になり、このような戦争を引き起こした・・・としか思えません」 「何がリトリラトル王を変えたかは分からない」 アメリアとクルーザが代わる代わるにそれだけ言うと、黙り込んだ。 「さて、次はエルテナハ王家について・・・だな」 この質問に対しては、落ち着いた様子でクルーザが口を開いた。 「エルテナハ国王と王妃は、リトリラトルの侵略の際に処刑されている。そして・・・・・・」 立ち上がり、どんっ、とクルーザはテーブルを叩いた。 「国王と王妃の三人の子供・・・この戦乱において、終戦・・・そして、エルテナハ王国復興の鍵を握った、我々が捜している王子と王女!」 すぐに落ち着きを取り戻し、クルーザは椅子に座った。 その行動に、思わずトルテはびっくりした。 「長男であられる第一王位継承者・・・魔道に長けていると言われている、アリューゼ王子。長女の第二王位継承者・・・魔法と剣技、両方を駆使する、レスカ王女。そして・・・・・・」 「・・・そして?」 其処まで言って、黙りきってしまったクルーザに、トルテが後押しした。 「アリューゼ王子とレスカ王女は、先の戦乱に置いて行方不明となった・・・・・・そして、次女であるレイティエ王女は・・・・・・生まれてすぐ、馬車の事故で行方不明となってしまった。こちらの方は・・・望みが薄いな・・・・・・」 「そ・・・そうだったんですか・・・・・・」 騎士団長として、この三人の王子と王女の失踪には、胸を痛めているところであろう。 思わず、肩を振るわせるクルーザを見つめられなくなる。 「敵だぁぁぁぁあ!!」 其処に、どこからともなく、見張りの一人が叫び声を上げて駆け行ってきた。 「り、リトリラトルの敵軍です!! す、すぐ其処に!!」 「えええっ!?」 「ま、まさか、ハイソナ王子が・・・!?」 「ほら、言っただろう!!」 見張りに続いて、アーシュイアがその場に現れた。 「リトリラトルの人間など、所詮卑怯者の集まり・・・・・・」 「言い過ぎです、アーシュイアさんっ!!」 トルテに叫ばれ、思わずアーシュイアは黙る。 「ハイソナは、このアジトに来てから、一度も姿を消したりしていません! 伝書鳩を送ったりした姿も見られません。別の理由で、発見されたんです!!」 「・・・・・・何で呼び捨てなんだ?」 アーシュイアに言われて、思わずトルテは顔を紅くする。 「は、ハイソナが・・・呼び捨てで良いって言ったからっ!!」 「・・・・・・なーに一丁前に顔を紅くしてる・・・?」 逆にアーシュイアに疑問を寄せられ、更にトルテは顔を紅くする。 だが、クルーザが間にはまって、その口論を止めた。 「今は、口喧嘩をしている場合ではない。敵軍のリーダーらしき人物は、一体?」 今度は見張りに向き直り、そう尋ねた。 ぴしっ、と見張りが敬礼する。 「はっ、白いローブを纏った、身長はそれほど高くない男のようです! ただ、肌は操られていた頃のミュアさんのような色で、ただの人間ではありません!!」 「・・・! まさか、またあの男の・・・・・・」 「いえ、後ろの兵士達は人間でしたし、そもそもリトリラトルの旗をあげていました!」 クルーザが思わず呟くが、見張りが否定する。 ふと後ろを振り返ると、アメリアが肩を振るわせていた。 「・・・姫? どうなされました?」 「・・・・・・嫌な予感がするんです・・・・・・」 思わず俯く。 だが顔を上げ、しっかりと前を見た。 「私や、リナさん達が集まるとき・・・共に運命か何かのように引き寄せられる、さっきの特徴にズバリ当てはまる人に・・・心当たりがあるんです」 ざっ・・キィン! がづっ!! 鋭い音と、重い音。 素早い音と、力強い音。 大きく二種類に分けられる、音が森に響く。 アジトを囲むようにそびえる森の中で、ハイソナとクラヴィスは、各々の武器で練習試合をしていた。 「なっかなか・・・やるじゃないかっ!」 「そちらもね・・・!」 ガキぃン!! 再び、金属がぶつかり合う音が響く。 「あはは・・・」 ミュアの笑い声。 「うっ、ちょ、おわっと」 ガウリイの焦り声。 「なにやってんのよ、あんた」 リナの呆れ声。 全てが入り交じる。 「うぎゃぁぁぁぁっ、髪の毛を登るなぁぁ!!」 「あははははっ!」 ガウリイの長い髪に爪を立てて登っていくリスを見て、笑い声を立てるミュアとリナ。 「まったく、戦争の真っ最中にこんなにのんきで良いの? ホントに・・・・・・」 リナが、トホホとばかりに呟く。 だが、今進軍し、アジトを留守にするわけにはいかない。 何時、アールグレイの使者がたどり着くのか分からないのだ・・・・・・ 「敵襲ぅぅぅぅぅ!! 敵襲ぅぅぅぅぅ!!」 レジスタンスの伝達係のその叫びに、リトリラトル兵の一人が、ぴくりと反応する。 「どうやら・・・バレたようだな」 そのリトリラトル兵・・・白いローブを身に纏った、それほど背が高いわけでもない、服の所々から見える肌は人間の色じゃない男・・・その兵隊のリーダーらしき人物は、空を仰ぐ。 「まぁ、此処まで近づけただけ良いか」 そう言って、一つの水晶を取り出す。 探索の呪文などに使う・・・魔道水晶。 「こんなへんぴなところに隠れていたとはな・・・・・・」 その水晶を中に放る。 すると、それはアジトの方角を示す。 「しかし・・・リトリラトル王もやる者だな。俺みたいな雇われ傭兵に、これだけの一隊を任せるとは」 辺りを見回し、男はにやりと口元を笑みの形にする。 「ご期待に添ってやらなければな」 「うっそぉぉぉぉぉ!!」 「じょ・・・・・・冗談キツイなぁ、ははははは」 「・・・・・・・・・・・・これが冗談だと思うか?」 でんっ、と構えたリトリラトル兵を見て、リナが叫びガウリイが手を振る。冷や汗を流しながら。 そして、それに答えるのは・・・・・・ 「ゼルガディスさんっ!! まさか、とうとう悪に魂を売り渡したのですね!?」 「何だその言い方はっ! まるで俺がこうするのを分かり切っていたみたいな・・・・・・」 アメリアの悲鳴(絶叫?)に答えるのは・・・あの、リトリラトル兵団一隊リーダーの男・・・・・・ 「ひ、姫・・・知り合いなのですか?」 「あの人はゼルガディス=グレイワーズさん・・・ちょっと性根の曲がった自称哀しき改造人間です!!」 「何だその自称ってのは!!」 クルーザの問いに答えたアメリアに、男・・・ゼルガディスが叫ぶ。 「だけどー、何でまたゼルガディスはリトリラトル側に付いてるわけ?」 「お前達エルテナハ解放軍を滅ぼしたら、俺の躰を元に戻すのに協力する、と約束したからな・・・・・・」 「また変な魔道書で騙されてるんじゃないの?」 リナに言われて、ゼルガディスはちっちっと指を振る。 「今度は本物だ・・・お前も聞いたことがあるだろう、魔神ディアブロの名前を!!」 「ま・・・・・・魔神ディアブロですって!?」 ゼルガディスの言葉に驚愕したのはリナだけではなく、魔道に精通したミレニムも悲鳴を上げる。 「負の力において自らの能力を高める、けれどその荒々しき気性に魔族から違反した、魔王腹心に匹敵するとも言われている魔神・・・・・・!!」 「なんだなんだ、強いのか?」 「そんなもんじゃないわよ!!」 ガウリイのドジな質問に、リナが叫ぶ。 その声は、珍しく焦っていた。 「もしかしたら、フィブリゾだって敵わないかも知れないほどの、超強力な魔神よ!!」 「じ、じゃあ、ゼルガディスはそいつに魂売り渡したってコトか!?」 「人聞きの悪い・・・・・・」 ガウリイの言葉に、ゼルガディスはぱさりと髪を掻き上げる。 いたって、落ち着いた様子で。 「リトリラトル王が魔神ディアブロを召喚するのだ。俺にはなんの後腐れもない。ただ俺は、躰を元の人間に戻して貰うだけさ」 「・・・あっさり言うわねー・・・・・・」 冷や汗を流して、リナが言う。 「トルテ・・・あんたの知り合いが感じた邪悪な気配って・・・もしかしたら、魔神ディアブロかも知れないわよ」 後ろに控えるトルテに、リナは静かに言った。 「はぁっはっはっはっはっは!!」 甲高い、男の笑い声がその場に突然響いた。 「何者だ!?」 「この声は・・・!!」 リトリラトル軍の誰何の声と、クルーザ達の驚愕の声。 その前に、黒服の男が宙に浮いて現れた。 「・・・!! あいつは・・・・・・」 「ミュアを捕まえていた・・・!!」 クラヴィスと、トルテの声。 「一体何をしに来た!?」 「ちょっと・・・良いことを教えてやろうと思ってな」 クルーザの言葉に、男はあっさりと言った。 「そこの合成獣の男!!」 「・・・なんだ?」 男に呼ばれ、ゼルガディスが不機嫌そうに答える。 「お前の戦いは無駄だ・・・もう、リトリラトル王は魔神ディアブロを支配できない!!」 「・・・!? 何故だ!!」 「それは・・・・・・」 ゼルガディスの言葉に、男はばさりとフードを外した。 晒された素顔。 整った、端整な顔立ち。エルテナハ人である証の、紫がかった黒髪。そして・・・・・・ アーシュイアの顔がこわばり、それを目ざとくクラヴィスが見つける。 「今の魔神ディアブロの主は、この俺だからだ!!」 ばさり、と両腕を広げる。 「今のリトリラトル王はただの居きるし屍にすぎん。魔神ディアブロに生気を吸われ尽くしてな!!」 「そ・・・そんな・・・・・・」 ハイソナが、僅かに悲鳴に近い声を上げる。 トルテが一歩、ハイソナに近づく。 「俺は魔神ディアブロの力を使い、リトリラトルを滅ぼし、そして世界を滅ぼす!! その為に、貴様達は邪魔なのだ・・・消えろ!!」 男が広げた両手の先から、光が伸びる。 それが、リトリラトルとエルテナハの兵士達に当たっていく。 上がる悲鳴。血飛沫。止まらない死へのタイムリミット・・・・・・ それを自らの過去に重ね合わせ・・・・・・ アーシュイアは叫んだ。 「もう止めてくれ・・・アリューゼ兄さんっ!!」 「・・・・・・え?」 アーシュイアが駆け出す。クラヴィスが、思わず惚けた声を出す。 「やはりお前か・・・レスカ!!」 「ええええええええええ!?」 その場の人物は皆、あらん限りの声で叫び声を上げた・・・・・・いや。 リナだけは、悲痛な面もちでそれを見ていた。 ▽To Be Continued! |