◆−星屑の王冠−CANARU(10/12-23:45)No.12135
 ┗お姫様だっこ・・・・−P.I(10/15-02:36)No.12159
  ┗みゃはは〜♪−CANARU(10/15-11:24)No.12163


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12135星屑の王冠CANARU 10/12-23:45


アタシと「彼」はまったくもって似ていない・・・・。
そりゃ〜〜〜まあ・・・・・。
『似ちゃあお終いでしょ?』と言う最も簡単なかわし方をして周囲を黙らせる
と言う方法を主に使っているけど・・・。
やっぱり・・あんまり好い気はしない・・・。
かくいう『彼』も・・・・・・。
そんな噂を気にしてだろうか?あたしのことを避けているフシも見当たる。
少々ソレが腹立たしくもあり・・逆にそんな『逃げ』の道を有難く思う
自分の矛盾精神にさしあたり苦笑する・・・。
まあ・・もっとも・・・・。
今回みたいな「使い走り」の避け方は少々疲れるし・・・なお更
ムカツクものがあるのだが・・・・・・・・。
「ったく・・・あのド阿呆が・・・。」
いつもどんな時もおっとり・・例え何があっても憎まれ口は言わない『彼』。
自分の独り言に・・しかもかなりの怒気を含んだ自分の憎まれ口に思わず
リナは苦笑する・・・。
だから・・似てないって言われるのよね・・・。
などとしみじみと下らない事を考えて見る・・・・。
ともあれ・・家までまだまだ距離はある・・・。コレ以上心臓破りの坂道を馬鹿兄のタメに走ってやる必用は一切合財ないだろう。
そう判断し・・息を整えながらリナはゆっくりと緑の生い茂る坂道を歩き出す。
「・・・馬鹿にも・・程があるわよ・・ったく・・・・。」
「何がですか〜〜♪」
ピョコン!!と後ろから見知った声と顔がリナを覗き込む!!
「わわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわぁぁぁぁぁぁ〜〜!!ア・・
アメリア!!あ〜〜・・。もう・・。行き成りビックリするじゃないのおお!」
「・・何も・・其処まで驚かなくても・・。ど〜したんです?全力疾走なんか
しちゃって・・。それに、馬上競技会そろそろ始まりますよ?お兄様達の活躍。
見なくて良いんですか?」
そ〜ゆ〜アンタこそ・・ゼルの活躍見なくて良いの・・?
と口に出かかったが・・今だ息切れしているので声は出せない・・・。
ともあれ・・・呼吸を整えて・・・・・。
「・・・・それ・・よ・・・。」
「は?」
辛うじて搾り出したリナの声と言葉にさしあたりアメリアは理解不能に陥る。
「・・だから・・。ソレ!!うちのね・・馬鹿の方の兄!!アイツ・・。馬鹿だから・・。
剣忘れて・・アタシ・・家にとりに行く所!!」
ナンとか呼吸を整え終わったリナは途切れ途切れに吐き出すようにアメリアに言う。
「・・・・・・馬鹿な方の・・お兄さんですか・・・。ホント・・。お兄さんとリナさんって・・・『似て』ませんね・・・・。」
「・・今回ばかりは・・アタシもそ〜思うわ・・。あの馬鹿の方の兄・・・。」
遠い目をしながら・・リナは馬鹿兄の自分には似ても似つかない金色の髪・・。
青い瞳に大柄な体格を思い出す・・。
ついでに言えば・・聡明で有名なリナに・・間抜けで有名なあの馬鹿兄。
何もかも正反対。本当に似ても似つかない・・・。
腹立たしくも在り・・嬉しくもあるのだけど・・・・・・・・・・・。
勿論・・この兄だけでなくてもう一人の一番上の兄・・ケイとも似ても似つかない
自分がいるのだけど・・・・・・。
「・・・とにかく・・普通、大事な競技会に剣を忘れるなんて・・。
次兄のガウリイ・・・・・。アイツくらいなモンよ・・・。」
家までまだまだ距離はある・・・。ガウリイの出番までまだ時間があるとはいえ。
急がねば成らない事は確か・・である・・・・・。
「そういえば・・。リナさん・・・。大通りの広場に石に突き刺さった・・。
立派な宝剣ありませんでしたか・・?」
不意にアメリアが思い出したかのように言う。
「・・・そういえば・・・。」
ここからもう少し行った所の大通りの広場・・・・。
意味深に石に突き刺さった剣が数年前・・・・確か・・前の国王・・。
ユーサー=ペンドラゴンが亡くなった頃から放置されている・・・。
「そうね・・。確か・・ユーサー先王の奥方、イグレイン様の所有地の広場だけど・・。」
「・・大丈夫ですよ。剣の所有権は誰にも決まってないそうですし・・。
多分、貰っても問題無いと思いますよ?」
助かったわ・・・・・・・・・・・・。
「アリガト、アメリア。ともあれ・・コレで間に合うわ!!」
言うが早いかリナは既にその場から駆け出して広場に向かって行った。


「・・・遅いな・・・・・・。リナ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・。」
「なら・・。お前が行けば良かっただろ?」
イライラとあちこちを歩き回るガウリイに彼によく似た金色の髪に青灰色の
瞳を持った兄、ケイは剣を既に鞘から抜き放ちながら言う。
「・・・そんな事言ったて・・・・・・・。」
自分でも決まり悪い、と思いながらガウリイは苛立ちとも苦笑とも・・・。
或いは自嘲とも取れる表情を浮かべる。
・・・・仕方なく最近、あの妹を避けている自分に気付いてはいるのだが・・・。
「俺達に似ていないと評判とはいえ・・・。あいつは『妹』だと言う事・・。
分かっているんだろうな・・・。」
ポン、と兄はガウリイの肩を叩き、何処へとも無く去って行く。
・・・・・・・・見透かされている・・・・・。
その一言に、動作にそう直感し少しガウリイは苛立ちを覚える。
まさか・・実の妹を・・と何度も否定してはいるのだが・・・・・・・。
「はあ・・・・・。馬鹿馬鹿しい・・。気のせいだろ・・気のせい・・・。
シスコンなんだよ。俺は。」
言い聞かせる様にガウリイはそう呟き、リナが何時戻って来ても良いように自分の
武具の手入れのタメにその場から離れるようとしたその時だった・・・。
「ガウリイ兄ぃ!!」
後ろから唐突に聞こえる・・・。リナの声。
「・・リナ!!」
自分の考えを彼女にまで見ぬかれた気分がし、一瞬ガウリイはビクリとなる。
が・・・・・・・・・・・・・。
彼女が差し出したその剣を見て、一瞬にしてそんな気分は吹っ飛ぶ。
「・・・リナ・・・。この剣は・・・・・・。」
見間違うわけが無い・・・・・・・・・。
「・・ええ・・・・。ケイ兄様の剣よ・・・・・。」
何しろ・・つい先刻まで兄がここで手入れしていた・・イスパニアの銀・・・。
ローマの細工・・そして遠いアジアの紅玉・・アラブの鋼・・・・。
前前からガウリイが羨ましいと思いながら・・触れることすら次男の身では叶わない
品だったからである・・・・・。
「・・・リナ・・。『俺の』剣は・・・?」
ジロリ・・・と睨みつけるような眼差し・・・・・・・・。
一瞬にしてリナは自分がとんでもないことをやらかした事に気付く。
「・・・あ・・あのね!!ガウ兄ィの剣見てね・・。ケイ兄様が『交換してくれ』
って・・いったの・・。ホント、ホント!!」
嘘は言ってはいない・・・・・・。
実際にガウリイの「タメに」持ってきた剣を見て・・・。
ケイは自分の立派な剣を取り出して「代えてくれ」っていったんだもんね・・・。
頬に僅かに汗を流しながらリナはアセアセとそう思う・・・。
「本当だろうなあ・・・。」
尚も追求の眼差しを緩めずガウリイはリナに言う・・。
「本当!!本当!!(だいたいは・・・ね・・・・。)」
この兄・・・。クラゲの癖にモラルに関してはとてつもなく口やかましい・・・。
先日もガウリイやケイに習った剣術を駆使して・・森の中に出没すると言うドラゴン
を一人で退治しに行った・・・・・。
途中・・・悪い魔法使いや悪魔を倒して時間がかかって・・・・・・・・。
追って来たこのガウリイ兄ィに見つかって・・ドラゴン退治は見事中止となった・・。
折角ドラゴンを倒して『サファイア』を手に入れようと思ったのに・・。
「馬鹿なことするんじゃない!!」
と思いっきり怒られた・・・。ついでにいえば・・三日間口きいてくれなかったし・・・。ともあれ・・あんな思いするのはもうご免である・・・。
(まあ・・嘘がばれたらもっと酷く怒るだろうけど・・・・。)
「ともかく・・兄貴に・・・。」
それでもまだ腑に落ちないのか・・。ガウリイが次ぎにエントリーを控えている
兄のもとに向かおうとしたその時だった・・・。
「競技会は中止だ!!」
不意に会場中に宮廷の偉い大臣の声が響き渡る。
「聞け!!!ユーサー様亡き後!!空位であったブリテン王国の国王が決定した!」
更に響き渡る声・・・・・・・・・・。
「なんだったって・・・・・・・・・?」
「・・・国王が・・決まったって・・・・・・・・・・・。???」
重臣会議の不一致・・更に言えばローマ皇帝、ルーシャスの介入によって空位だった
このブリテン王国の国王が決定した・・・?
思わずガウリイとリナは剣のことなど忘れて顔を見合わせある。
「・・・剣の審判は下された!!新たなる国王は・・・・。
エクトリウス卿の息子!!ケイだ!!!ただ今より、再度その実証を開始する!」
突然の告知・・・・・・・・・。剣の審判・・・・・・・???
「・・・・・。兄上が・・国王・・?その・・実証・・?」
事体が飲み込めず・・・困惑したようにガウリイ・・・。
「とにかく・・・。今からその実証現場に全員行かなくちゃいけないみたいね・・。」
先ほど・・リナが石から・・剣を引きぬいたあの場所・・・・。
真坂ね・・・・・・・・・。そう言った考えしか思えない・・。今の所は・・・。


「この石より・・。剣を引きぬきしモノは王となる・・・。」
ガウリイとケイの父親・・かつての国王、ユーサー=ペンドラゴンの家臣ながら
下級の騎士、エクトリウス=ガブリエフはそう息子・・ケイに呟く・・・。
「・・・本当に・・そなたはこの剣を引きぬいたのか?ケイよ・・・。」
あの後・・・・・・・・。
ケイの持っていた「あの剣」をもともと突き刺さっていた石に戻し・・・・。
それを再度ケイは引きぬくように命じられたのだ・・・。
だが・・・・・・・。
「動かなかった」のだ・・・・・・。
すなわち。ケイはこの剣に認められてはいなかった。
その事実がたったいま、明るみになった・・・のである・・・。
打ちひしがれるケイに更にエクトリウスは問い詰めるような眼差しを送る。
そんなプレッシャーに耐えきれなかったのだろう・・・・。
「・・・俺では・・ありません・・。剣を・・剣を引きぬいたのは・・・。
リナ・・・・リナ・・。俺達の妹の・・あの娘です!!」
半ば絶叫する様に叫ぶケイ・・・・・。
その言葉が終わるか終わらないかのうちだった。
「ちょ・・・父上・・・?兄上・・・・・・?」
やおら・・エクトリウスはケイ・・そしてガウリイを引き連れ・・・。
リナの足元に跪く?????
「・・・今までは・・。貴方は我が娘として育てられました・・・。
しかし・・。本当はそうではありません・・・。貴方は先王ユーサー様・・。
そして前王妃イグレイン様の娘・・・。そして・・正当なるブリテンの女王たる
お肩です・・・・。剣を引き抜いてください・・・・・・。」
・・・・・・・そんなこと・・・・・・・・・・。
ガウリイの・・先ほどまで兄として隣に居たガウリイが・・凝視できない・・。
そんな気分がとても我慢できず・・・。
引き返す事が出来ないと分かりながらもリナは前に進み出て・・・・。
石に突き刺さった剣を難なく・・・引き抜いた・・・・・・・・・。
動転しながらも・・ゆっくり・・ゆっくりと石から剣をリナは引き抜いていく。
そのたびに鈍く光る・・白金の刃・・・・。
それが・・白日のもとに晒され・・・・・・・・・。
鋭い光を辺り一帯に放ち・・思わずリナは眩しさに高々とその剣を天に翳した。
「・・・おめでとうございます・・・。女王陛下・・・・・・・。」
聞こえたのがガウリイの声か・・。はたまたエクトリウスの声かは・・・。
もはや定かではなかった・・・・・。


「このお城が立てられた時の逸話・・。話してくれたのさ・・・。ガウ兄ィだったよね・・。」
変な感じがする・・・・・・・。
何時もは一緒に椅子に・・ひどいときなんて服が汚れるのも構わず二人して床に座り込んでいて・・最近でこそ無いけれど・・・。子供のときなんて一緒に転がったり大暴れして・・・ケイに仲良く一緒に殴られたりしたガウリイが・・・・・・。
今・・自分・・リナは豪華な宝石をちりばめた・・大理石とビロードでできた玉座に座り・・・。やはり豪華さと言えば比するものは無いとは言え・・・・。
そのガウリイは何段も何段も低い位置にある・・蒼いカーペットの道に跪いて
リナを見上げている。
「・・・ガウリイで構いませんよ。陛下・・。」
笑い顔こそ何時もと変わらないが・・口調は完全によそよそしい・・・。
なんだか・・・やっぱりムカツク・・・・・・。
「その陛下ってのやめてくんない!!?馬鹿ガウ兄ィ!!」
むっとして思わず教育係が顔を顰めるのにも構わずリナは身にまとったテン皮の
マントを床にかなぐり捨て、思わず玉座から立ちあがる。
「貴方こそ・・。その『兄ィ』と言うのはお止め下さい!!」
・・・・・・・・・・・やっぱり・・・ムカツク・・・・・・・・・・・。
そんな顔をした・・今や女王となり・・・。
以前以上に近付いてはならない存在になったリナ・・・。
妹の次ぎは・・女王か・・・。まったくもってめまぐるしい・・・。
どちらにしても・・『報われない』事は確か・・・なのだが・・・。
ガウリイの気持ちを知ってか知らずか・・・・・・・・・・・。
ふう・・・・っとリナは重々しいマントはかなぐり捨てたまま再度玉座に・・。
いささか脱力した様に座り込む。
「ともかく・・・。傍に居てくれない・・・・?」
不安・・なにだろうか・・・?
その瞳は精一杯虚勢を張っているが不安げに泳いでいて・・焦点が定まっていない。
昔からの・・彼女の癖である・・・。
無論・・リナはガウリイがそんな事を見抜いている・・とは夢にも思ってはいないだろうけれども・・・・。
「・・・構わないが・・・?」
「・・やっと・・。昔みたいに話してくれたわね・・・・・・。」
嬉しそうにリナはそんなガウリイに・・位置こそ離れたままだが・・・。
以前とまったく変わらない笑顔を送る・・・。
距離を作っているのは・・相変わらず自分のほうなのかもしれない・・・。
そう直感して更にガウリイは苦笑をリナに送り返す。
が、リナの顔から緊張した表情はまだ微かにながら消え去った気配は無い。
一体何が・・・・・・・・?
そう疑問を口に出しかけた・・その時だった・・・・。
カツカツカツカツカツカツカツカツ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
規則正しい足音が廊下中に響き渡り・・鼓膜の奥深くにまで振動する錯覚を覚える。
「・・・まるで・・ローマの兵団のような・・。」
思わずガウリイが口にしたその言葉に・・・。
「まったくもって・・その通りよ・・。ガウリイ・・・。」
聞き逃さなかったリナが言葉を被せる・・・・。
その通りって・・・・・・・・・・・・・・??
今度の疑問は扉が開け放たれる音にかき消され・・喉の中で抹消される結末となった。
が・・・そんな疑問は・・その『明確な答え』を目の前にして既に不用の長物
となっていた・・・・・・。
「・・・・ローマの・・・。ルーシャス皇帝のお使いの方・・ですね・・・。」
半ば・・周囲には冷静に聞こえただろうが・・・。
ガウリイの良く知っているリナの焦りと恐怖を僅かに含んだ声が広間中に響く。
が、ルーシャス皇帝の使者達はそんな事には関心すら示した様子無く・・・。
「ブリテン『僭主』リナ。」
女王に対して『僭主』という不遜な言葉・・。更に言えば呼び捨てと言う非礼。
思わずガウリイは腰にさしていた剣を抜きかける・・・が・・。
今までに見たことも無いリナの鋭い眼差しに凍りついた様になり行動がとれなくなる。
・・・・・・リナのあんな顔・・あんな目は・・知らなかった・・・。
こんな時にそんな事を考える自分・・自嘲するしかもはや無い・・・・・・・・・・。
「貴方のこのブリテン統治権に関して・・。ルーシャス皇帝は5万枚の金貨。
5000の弓矢・・。更には10万の兵馬からなる朝貢を求められている。」
「・・・・・そうね・・・。では・・。5000の弓矢を貴方の心臓にお送りする・・。
そうお伝えしていただけないかしらね・・・?」
不敵・・とも言える微笑を湛えながらリナは二人の使者にそう答える。
「・・・万が一・・。それらの朝貢を断る場合・・・。皇帝はしかるべき措置を
取られるとの託である・・・。」
「・・・・。前言撤回・・・。ルーシャス皇帝には・・・。1万の矢が貴方の心臓と名誉を貫くでしょう・・そして・・それがブリテン女王リナの何よりもの贈り物・・・。
そうお伝えくださらないかしらね・・・?」
「・・・・・決裂・・か・・・・・・。」
「さあ・・・。皇帝の態度次第・・そう言う事ですわ・・・・。」
再度、きた時とは逆の方向にやはり規則正しい足音で立ち去って行くローマの使節・・。
「戦・・か・・・・・・・。」
キン・・・・・・・・・・・・・・・・・。
低く、鋭い音を立ててガウリイは今になって刃を鞘から半分程引きぬく。
「ええ・・・。ねえ・・・。ガウリイ・・・・・・・・・。」
面白そうに・・先ほどの冷たい態度とは打って変わって楽しそうにガウリイに近付いてくるリナ・・・・・・。
「ああ〜!!」
例え・・どんな形でも・・リナを守るか・・・。それしか・・今の自分に選択の余地は残されていない・・ハッキリ言ってそれがなによりもの本音なのだが。


「おいおい〜〜!!そんなはしゃぐな!!」
嬉しそうにマストによじ登ったり・・・・。地下の船室に潜り込んで船鼠を捕まえて・・。しまいにはガウリイの羽織ったマントにソイツを入れて大笑い・・・。
まったく・・変わってないと言うかタチが悪い。
そんな女王の髪を撫ぜながら楽しげなリナに・・もはや妹ではない彼女に
ガウリイは面白そうに説教する。
「だって!!アタシ、ローマは初めて!!」
楽しそうに真っ青な海面をリナは覗き込む。
「魚!!」
「・・・ホントだ!!」
「・・・美味しそう・・・。揚げ物にして食ったら・・食いでありそう・・・。」
「・・・そ〜ゆ〜事しか思えないのか・・?お前は・・・・・。」
まったく。これがこれから戦争に行く君主の台詞だろうか・・・・・。
その腰に括りつけられた・・あの宝剣がその真実をガウリイに思い起こさせる。
「なああ〜〜・・。リナ・・・・・。」
「何・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・なんでも無い・・。もう寝ろよ・・。月も登ってきたし・・。明日は
ローマだ・・。」
避けている訳ではない・・・。けれども・・・・・・・・・・・・。
今はなんとも言えない。結論が自分の中で出るまでは・・・・。


白馬に跨り・・深紅のマント・・・そして・・・。
白金の剣に・・・・・・・・・・・・・・。
それ以上思い出したくも無いし。それに・・この光景を見るのもうんざりだった。
「・・コレで良いのか・・?ガウリイ・・・・・。」
兄のケイが微かに後ろから彼にだけ聞き取れる声で語り掛ける。
「・・・・・・」
リナ次第・・・アイツが望んでるんだら・・そんな逃げの言葉が喉もとまで出かかったが。アッサリとかき消される。
その表情がまったくもって読めなかったから・・・・だ・・・・。
「信じられないな・・。あのリナが・・・・・・。」
隣のゼルがやはり小声で呟いた・・・。
「ええ〜!!でも・・素敵です!!女王の身で全ブリテンの騎士を・・・。鎧姿で全軍指揮し・・あの悪のルーシャス皇帝を打ち破って!!リナさんがローマ皇帝に即位するなんて!!」
ウットリとした口調でまるで自分の事のように陶酔するアメリア。
皇帝を表す純白の衣装・・・・・・・・。
紫色のマントに・・依然剣こそは身に着けたままだが・・その手には宝石をちりばめた杓が握り締められている。
ガウリイを一瞥するリナ・・・・・・・・・。
無論・・・・その表情は伺いする事が出来ない。このままでは・・彼女が通りすぎる
だけだ・・・・・。ようやくの事でそう悟り・・ガウリイが一歩足を踏み出したその時だった・・・・・・。
ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンン!!
不意に聞こえる何か物の倒されるような鋭い音。
「リナ!!!」
咄嗟に紅い絨毯を進み、ローマ皇帝、更にはブリテン女王の冠を頭に擁いたリナの腕を掴み、その場にガウリイは伏せさせる。
彼とリナの頭上を過ぎて行く・・一条の矢・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・グィディオン卿・・・・・・・・・。」
そう。其処に立っていたのは・・リナの・・強いて言えばブリテンの騎士の一人。
グィディオン・・・。その人だった・・・・。
「・・・貴様・・一体何を企んでいる・・・?」
怒りの篭った口調でガウリイは剣を抜く。
「分かりきった事を・・。俺とて・・ユーサーの末裔・・。ルーシャスとは密約で
俺が本来は王位につくはずだった・・。それだけだ!!」
言うが早いか・・グィディオンは剣を構え・・リナの頭上目掛けてそれを
振り下ろす!!!???
「辞めろ!!!!!」
ガウリイの絶叫が室内に響き渡る。
咄嗟にグィディオンに飛びかかろうとするが人ごみに押され近付けない騎士達。
更には逃げ惑う貴婦人たちでもはや混乱は坩堝とかしている。
「く・・・・・・・・・・・・・。」
間に合わなかった・・・・・・???
ここからでは確認できないが・・リナが祭壇で額を押さえ・・蹲っているのだけは
辛うじて認識できる・・・。
「貴様!!!」
もはや・・・自分でも何がナンだか訳がわからなかった・・・・。
気付いた時には・・兄のケイとゼルの二人がかりで自分の腕を取り押さえていて・・。
致命傷こそ負ってはいないものの・・かなりの重傷を負ったグィディオンが
その場に倒れ伏していた・・・・・・・・????
「・・・離してくれ・・・・・・・・・・・・。」
乱暴に兄と友人の腕をガウリイは払いのける・・・・。
「・・・・・・・リナ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
その顔に・・流れれている血液・・・・・・・・・・。
黄金と白銀・・・。二つの王冠の残骸が星のようにその栗色の髪に
散らばっている・・・・・。
「頼む・・・・・。」
捜さないでくれ・・・。そうとだけ一同に告げ・・ガウリイはリナを連れ出した。
行く宛ては・・まったく見当すら・・無い。


「・・・・ガウリイ・・・・?」
気を失っていたのだろうか?不意にリナがパッチリと目を開けて・・・。
しかし、ハッキリとした声でガウリイの名前を呼ぶ。
「リナ・・・・??????」
「いたあ〜〜〜たたた!!傷になってるわ・・。あんにゃろおお・・・。」
額に手を当て・・流れた微量の血液を恨めしそうに眺めながらリナ言う。
って・・・『微量』・・・・・・・・・・・・????
「・・あ〜もう!!最悪!!切り傷がちょっとできてるわ!!」
ガウリイの腕から抜け出して・・その場にあった泉に・・・。
星の様に髪に、額に、頭に散らばっていた黄金と銀を払い落としながらリナ
は文句を更に言う。
「・・・なあ・・・。リナ・・・。無事・・なにか・・?」
「無事なわけ無いでしょ!!ちょっと剣で切り傷できてるし・・。『一寸』
血も出てるわよ!!」
不満そうにリナはガウリイにそう怒鳴りつける。
「・・・・・・・・・・・。アンタねえ・・。アイツ・・。逆上してたでしょ?
王冠の上からアタシの脳天狙って・・。結局失敗したのよ・・・。ま・・・。
ちょっと掠り傷できたことは否めないけど・・・・。」
未だに泉を眺めながらリナは不満そうにガウリイに言う。
「・・・・リナ・・・・・・・・・。」
「・・・何よ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
文句が出る前に・・ガウリイはリナの腰に括りつけてあった宝剣をやおら毟り取り・・。
思いっきり・・・思いきっり・・・・・・・・・・・・。
今までの鬱屈した思いを吹っ切るかのように・・・。
泉の遠くの方へ放り投げた!!
「あああ〜〜〜!!馬鹿!!売れば!!結構なお金になったのにいいいい!!」
「・・・このごに及んで・・。『売れば』か・・・・??売れば・・・。売れ・・ば?」
呆れながらガウリイはそう言うが・・一つに事実に気付いて反復する。
「・・・そうよ・・・。もう・・。要らないもんね・・・。ガウリイも・・・。
もう・・・『馬鹿兄』じゃないって分かったしね。」
何処か照れたような・・出来るだけ投げやりなリナの言い方に思わずガウリイは・・
「よっし〜〜♪こ〜なりゃ!!逃避行だ!!」
「だああ〜〜〜!!離せ〜〜!!だっこやだああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜!!
自分で歩けるわいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
リナの・・いいや・・・・・・・。
強いて言えば自分の「お妃」の抗議の声は無視!!
これからは・・自分たちの意思で運命を決める。それだけだった・・。
ローマの空はブリテンとは違い。何処までも青かった・・・・。


(お終い)

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12159お姫様だっこ・・・・P.I E-mail 10/15-02:36
記事番号12135へのコメント

CANARUさん、お久しぶりです〜!
ああっ!またしばらく来ないうちに2つもぉ〜〜♪♪

やっぱしガウリイは王様より騎士が似合いますね〜(はぁと!)
あ、でも馬鹿兄ガウも捨てがたい(^^;)
そしてこれからはリナの尻に敷かれまくる馬鹿亭主・・・(あわわ!)
大混乱のままほったらかしにされたブリテン軍。
父とケイ兄が失意のうちに帰国してみたら、案外リナ達、しれっと家に
いたりしてね♪
「あ〜オレ、ローマで嫁さん貰ったから」
「ふつつか者ですけど〜♪」
・・・なんて(笑)
しっかしアーサー・リナがローマ皇帝に(倒)シュミですけど(^0^)

話は変わりますが「週間ユネスコ世界遺産」って雑誌が創刊されましたね〜。
創刊号はローマ!・・・買っちゃいました(^^;)
最近シュミの雑誌が増えて困っとります〜。「朝日百科世界の文学」とかさ(汗)

ではでは、次作品のコメント欄で〜♪

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12163みゃはは〜♪CANARU 10/15-11:24
記事番号12159へのコメント

>CANARUさん、お久しぶりです〜!
>ああっ!またしばらく来ないうちに2つもぉ〜〜♪♪
はうううう!!
ちょっといっっぺんに書いてしまいました〜〜♪

>やっぱしガウリイは王様より騎士が似合いますね〜(はぁと!)
>あ、でも馬鹿兄ガウも捨てがたい(^^;)
みゃはは・・・(汗)
原作のアーサー王伝説でも「剣を忘れる」な〜んてシーンがあって・・。
そのマヌケがガウリイと重なっててたりしてますうう(汗)
>そしてこれからはリナの尻に敷かれまくる馬鹿亭主・・・(あわわ!)
やっぱり尻にひかれるんですねえ・・・(はうううう!!)
世の定め・・ですね(汗)
>大混乱のままほったらかしにされたブリテン軍。
>父とケイ兄が失意のうちに帰国してみたら、案外リナ達、しれっと家に
>いたりしてね♪
>「あ〜オレ、ローマで嫁さん貰ったから」
>「ふつつか者ですけど〜♪」
>・・・なんて(笑)
あ!!ありえますううう!!
う〜〜ん・・・。ガウリイ!!
かなりちゃっかりしてますねえ〜〜♪
>しっかしアーサー・リナがローマ皇帝に(倒)シュミですけど(^0^)
ふふふ・・・。
アタシもその辺りは完全に趣味と化してます〜〜!!
ローマ皇帝って悪役多いですねえ・・・(遠い目。・・)
>話は変わりますが「週間ユネスコ世界遺産」って雑誌が創刊されましたね〜。
>創刊号はローマ!・・・買っちゃいました(^^;)
>最近シュミの雑誌が増えて困っとります〜。「朝日百科世界の文学」とかさ(汗)
う〜〜ん・・・。
アタシも「ルネサンスの歴史」の上、下巻注文してしまいました!!
下巻にはボルジアの事が結構かいてあるそうですうう!!
あと「イザベラ=デステ」なんて本もあるそうです!!
>ではでは、次作品のコメント欄で〜♪
ではでは!!