◆−天空歌集〜前奏〜−ゆえ(11/12-00:40)No.12313
 ┣天空歌集 1−ゆえ(11/12-01:10)No.12314
 ┣天空歌集 2−ゆえ(11/12-01:27)No.12315
 ┣天空歌集 3−ゆえ(11/12-01:39)No.12316
 ┣天空歌集 4−ゆえ(11/12-01:48)No.12317
 ┃┣またゆえさんのお話が読めるなんて♪ −桐生あきや(11/12-03:07)No.12318
 ┃┃┗また読んでいただけるなんて♪−ゆえ(11/12-23:35)No.12324
 ┃┣はじめまして!−あごん(11/14-23:43)No.12327
 ┃┃┗穴があったら掘りたい・・−ゆえ(11/15-23:48)No.12339
 ┃┗素敵です〜!−せりあ(11/15-20:38)No.12336
 ┃ ┗うれしいです〜−ゆえ(11/15-23:52)No.12340
 ┣まv(笑)−稀虹 戯空(11/12-18:52)No.12322
 ┃┗御礼−ゆえ(11/12-23:42)No.12325
 ┣天空歌集 5−ゆえ(11/16-03:16)No.12341
 ┣天空歌集 6−ゆえ(11/16-03:19)No.12342
 ┃┗目指せ、世界1の歳の差カップル!!!(笑)−桜華 葉月(11/19-01:20)No.12383
 ┃ ┗現実だったら凄い話(笑)−ゆえ(11/19-02:42)No.12391
 ┣天空歌集 7−ゆえ(11/16-03:30)No.12343
 ┃┗ふう、やっとレスが書けます−桐生あきや(11/17-00:12)No.12355
 ┣天空歌集  8−ゆえ(11/18-01:18)No.12364
 ┃┗ラブラブだ〜♪−桐生あきや(11/18-07:57)No.12366
 ┃ ┗わはははははは−ゆえ(11/18-23:53)No.12379
 ┣天空歌集 9−ゆえ(11/19-02:01)No.12385
 ┃┗すごいタイミングでレス返し−桐生あきや(11/19-02:09)No.12386
 ┃ ┗Re:すごいタイミングでレス返し2−ゆえ(11/19-02:23)No.12388
 ┣天空歌集 10−ゆえ(11/19-02:13)No.12387
 ┣天空歌集 11−ゆえ(11/20-02:02)NEWNo.12407
 ┗天空歌集 12−ゆえ(11/22-03:25)NEWNo.12427


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12313天空歌集〜前奏〜ゆえ E-mail 11/12-00:40


・・・・・すこしといいますか、かなり長い話になりそうな予感がひしひしとしております。
またオリキャラでまくりのお話ですが、よかったらおつきあい下さい。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



森の言葉 樹々の想い 胸に溢れてくる
水のように 息のように 空に溶けてく旋律

初めてのドア訪ねて ただいまを言おう

========================================
天空歌集  〜 前奏 〜


「まあまあ、可愛いお嬢ちゃんね。パパに似てるけど、目はママ似ね〜。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「いや〜そーですかーあはっはっはっ。」
「うんうん、よく似てるよ。よかったね〜すてきなパパとママで。」
「うん♪」
「・・・・・・・・・・・・・をい。」
「お返事も可愛いわね〜・・・・おや、あんたのママ、肩ふるわせてどうしたんだい?」

――――――ぷち。

「だぁれがママじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ちゅどごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!

『の゛びょょょょょょょょょょょょょょょょょょょんっ!!!』

ぜーはーぜーはー・・・・
あたしの呪文で偽親子は吹っ飛ばされ、話しかけていた屋台のおばちゃんは完全に固まっていた。
自業自得だっ!


「・・・・ってーなー、ちょっとした冗談だろーが、なあセフィル。」
偽パパ、ガウリイが着地の時についた埃をはたきながら隣に同意を求める。
「そーそー、たわいもない世間話でしょーが。ね、ママ♪」
「んっんっんっー、まぁた飛んでみるぅ?」
こめかみピクピクさせたあたしのセリフにフルフルと首をふり後ずさった。
・・・ったく何考えてんのよこいつらわっっ!!

「何も『炸弾陣』使わなくても・・・・・って、ああああごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」

半分涙目を浮かべてあやまり倒しているこの子・・・もとい彼女。
数日前からあたしとガウリイと一緒に旅をしているセフィルだ。
かなり可愛い、見た目5,6歳の女の子。
長いさらさらの金髪に白い肌、真紅の瞳。
どうして見た目というのか。
それは彼女が見たまんまの年齢ではないから。
実際年齢は12歳らしい(本人申告)。

「今度やったら『炸弾陣』ぐらいじゃすまないからね。よーく覚えときなさいよっ!」
「ふぁ〜い。」
ぎんっとあたしににらまれて、こそこそとガウリイの後ろへ隠れる。
こん子わぁぁぁぁぁぁ・・・・・・
ふわりと風がセフィルの髪を靡かせる。
「ほれ、耳で出るぞ。」
ガウリイが取ってきていた帽子をぽふっとかぶせる。
その特徴的なとがった耳を隠すために。

――― 彼女はエルフの血を継ぐ者。
――― そして人の血も継ぐ者。

セフィルはハーフエルフなのだ。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ああああ・・・・・
勝手に設定しまくりですぅ〜。

さて、この話、私の好きな曲の歌詞を載せたいという煩悩から始まりました。
でもいま稀虹さんが連載されているお話とは月とスッポンですが・・・・
話と歌詞なんかがまったくがちあって無い時が多いと思いますが・・愛嬌ということでご容赦くださいませ。(汗汗)

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12314天空歌集 1ゆえ E-mail 11/12-01:10
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天空歌集 1


     夜空を動かす ぜんまい仕掛けの
     かすかなつぷやき クルル・カリル
     誰も知らない 秘密の時刻に
     何かが起こるよ クルル・カリル

     たった一度だけの さあ今がチャンス
     きみの目の前で 扉が開いた
     ああだけどきみは 今夜も待ちきれず
     いつまにかもう 眠ってる



――― それはあたしが一冊の本を手にした時にさかのぼる。

「だけど読めないなら意味がないじゃないのか?」
横にいるガウリイはほっといて、手に入れたばかりの本を読みながらあたしは町中を歩いていた。
昨日の夜、毎度のごとく盗賊いぢめに出かけてその時見つけたのがこの本。
魔道書みたいなのだが、その丁寧な作りと不思議な文字に惹かれて他のお宝と一緒に持ち帰った。
中身はまだ読めないのだか、あたしの女のカンがこれは掘り出し物だと告げている!
なもんで、いろいろと解読を試みてはいるのだが・・・・
「なぁリナ、そのまま読みながら歩いたら・・・・・」

どんっ!べちゃ

「・・・・・ぶつかるぞって言おうとしたのに。」
「早く言えぇぇぇぇぇ!」
地面に尻餅ついたままガウリイに文句をつける。
前を見ればぶつかってきたのは小さな女の子。
と、向こうの方からちんぴら風の男が4.5人走ってくる。

「ああっ!!いたっ!おいっそこのチビ! そいつを捕まえてろ!」

「炸弾陣(ティル・ブランド)」

どしぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!

かくして、あたしの呪文一発で飛んでいった男ども数名。
多少違う人もいたみたいだけど・・・・・あたしに対して無礼な発言をしたあいつらが悪いっ!
「手加減って言葉しってるか・・・?」
あきれた様な顔をしてガウリイが呟く。
「悪党に対してはしんない。」
胸をはって答えるあたしにガウリイは、はあっとため息をついた。
やかましい。


「ええっと・・・わたし、セフィル=ティリス。さっきはどうもありがとう。」
ぶつかってきたセフィルがぺこりとお辞儀をする。
「いいわよ、成り行きだし。でも何でまた追いかけられてた訳?」
近くの店に入り昼食を取りながら話を聞いていた。
「うーんよくわかん無いけど・・帽子取って荷物を出したとたん、追いかけてきたの。」
どうやら、小さな子供から金品せしめようとしたらしい。
せこい奴らだ。
「でも、お前さんみたいな小さな子が一人でいたら危ないだろ。連れは居ないのか?」
食べる手は休めずにガウリイが聞く。
「ううん、一人だよ。」
どう見ても5,6歳くらいにしか見えないけど・・・
と、セフィルがあたしをじーっと見つめてる。
・・・・あ、なんか嫌な予感。

「あの・・・・おねぇさん魔道士?」
「そーだけど、それが何か?」
「あの・・・・・よかったらわたしに・・・・魔道を教えてほしいんだけども・・・」
はぃぃぃぃぃぃぃ?!
何を言い出すかと思ったら、魔道を教えてくれときたもんだ。
「んな、簡単に覚えられるもんじゃないわよ。それに、あたしボランティアはしない主義だから。」
「おいおい・・・・報酬とるのかよこんな子供から・・・」
「子供だからといって、甘えは許されない!いつもビジネスは冷静かつ非情なのよっ!。」
びしっと指さして胸をはるあたしに苦笑するガウリイ。
その様子を黙って見ていた彼女が、とんでも無い事を言い出した。

「・・・・・報酬・・・見返りがあればいいんだよね?」
「んあ?・・・・まあ、そーゆーことね。」
「その本、読んだの?」
あたしの横に置いていたあの本を指さす。
「藪から棒ね・・・それが何の関係があるのよ。」
セフィルはにまっと笑うと、
「わたし、その本読めるよ。」
との賜った。
「うそっ!読めるの?!」
自慢じゃないが、古い伝承や伝説にはあたしはかなり詳しいが、こんな文字は見たことなかった。
古代文字だと思うけど、無論、それなりに調べればわかることなのだが・・・

「古代エルヴァン文字。古いエルフの文字だもん、それ。」

・・・・・・・へ?・・・・・・・・まて、ということは
「あなたっ、エルフなの?!」
セフィルが帽子を取ると・・・あ、長くないけど・・耳・・・とんがってるわ。
「半分ね。あたし、ハーフエルフだもん。」
こりゃおどろいた。



かつて人間とエルフはとても近くで暮らしていた。
が、その容姿と高い魔力や特殊な力の為、人間に魔道の実験材料として虐待された時代があった。
その後、エルフ達は人間を嫌い、滅多に我々の目の前に現れることは無くなった。
しかし例外というものはどこにでもあるもので。
エルフの中にも人間と交流し、愛を交わす者もわずかだか存在した。
そうして人間とエルフの間に生まれたのがハーフエルフだ。
もともと少ないエルフの中でも極々少数の者だけだから、ハーフエルフはさらに少ない。
ある意味、エルフに出会うより珍しい存在なのだ。

「だから驚いたのよ。わかった?」
「ほーほー、そーかそーか。」
こいつ・・・・絶対わかってない。
「へえー、私って珍しいんだ。」
・・・・・・をい・・・・まったく自覚の無いセリフをはくセフィル。
追われていた原因の一つかもしれないのに・・・・
「でも、この子がそのハーフエルフだと追われるんだ?」
ガウリイ、やっばしわかってない。
「だから、言ったでしょっ!すんごい珍しいのよ彼女はっ!
それがふらふらと街を歩いていたら、見せ物小屋とか実験材料とか、愛玩商品として売り出したくなるのが人情ってもんよ。」
「人情なのか・・・・それ。」
「ま、まあ多少は違うけど・・・・・そんな考えを持つ奴もいるってことよ。」
「ふーん、そんなもんなんだ。」
まるっきり他人事のように聞いているけど・・・・・あんたのことだっあんたのっ!
あああ、あたし一人驚いてバカみたい・・・・


「じゃあ、わたしはリナさんに魔道を教えてもらう。でもって、わたしは本の解読を手伝う。これで決まり!」
ぽんっと手を打って、勝手に話をまとめ上げるセフィル。
でも、この本の中身は気になるし、なにより彼女自身に対して好奇心がむくむくと首を傾ける。
ハーフエルフの実体調査というか実験してみたいとか・・・・魔道士としての探求心からよっ!探求心。
それに彼女、どうも一癖も二癖もありそうだし・・・・
ふむ。

「OK、商談成立ね。よろしく、セフィル。」
「いいんですか?!」
「なんだかよくわからんが、ともかく一緒に旅するんだろ?よろしくな。」
「はい!こちらこそ。リナさん、ガウリイさん。」


こうして、あたし達とハーフエルフのセフィルとの旅が始まったのだ。


    扉をあけて 歩いていけば
    そこで会えるはず もうひとりのきみに
    扉をあけて 扉をあけて
    歩いていけば ねえ 会えるはず


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
というわけで、2回目です。
歌詞は谷山浩子さんの曲で「クルル・カリル(扉をあけて)」という曲です。
じつはこの曲が入っているアルバムタイトルがこの話の題名だったします。
ああ、他力本願・・・・・
さて、多少歌詞と話はリンクするようにとは思っています。
リナたちは扉をあけちゃうんですしょーか。(笑)

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12315天空歌集 2ゆえ E-mail 11/12-01:27
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天空歌集 2

    木漏れ日の中で 歌を思い出すよ
    風を解き放つ 小さな笛になる
    梢に残る時間が 目覚めていくよ




「行きますっ。フリーズ・アロー!」

ごきんっ!

「お゛うわぁっ!?」
放たれた氷の矢は目の前の盗賊じゃなくて後方にいたガウリイめがけて飛んでった。
「・・・・・・・はにゃ?」
「はにゃじゃなぁぁぁぁいっっ!!」

すぺぺーん!!

「どこをどうやったら自分の後ろに呪文ぶっ放せるのよっっ!」
あたしに思いっきりスリッパで叩かれたセフィルが涙目で見上げている。
「ふぇぇぇーん。わたしはふつーにやったつもりですよぉ〜。」
「これのどこがふつーだっっ!何したらあそこまで外せるのよっ。」
「まあまあ、オレは何ともなかったんだし、いいじゃないか。」
あたしが教育的指導をしている横で突然現れた実験台、もとい悪人たちを片づけたガウリイが剣を納めながら戻ってきた。
ちょいと外れた街道名物追いはぎさんが現れたので、セフィルの攻撃呪文の実践練習台になっていただいたのだか・・・・
・・・・・・これが、とんでもないノーコン娘だった。
「いくないっ!あそこまでノーコンだと、敵味方関係なくなっちゃうでしょーがっ。それとも突然あらぬ方向から味方の呪文で吹っ飛ばされたい?」
「・・・・・・・たしかに嫌かも・・・・」
ガウリイのクラゲ頭でも容易に想像がついたらしく、一筋の冷や汗が流れていた。
これでリナ=インバースから習ったと言われたら、こっちの評判まで怪しくなってしまう。
・・・・すでに一部では怪しいという話もあるけど・・・・・
とにかく、こいつをこのまま野放しにはできん。
「というわけで、そのノーコン直すまでは使用禁止。わかったわね。」
「ええっ!そんなぁ・・・・・・・・・・・はいです。」
あたしの表情で何かを悟ったのか、こくこくとセフィルは頷いた。



「まぁったく、危なっかしくて見てらんないわよ。」
宿の食堂でお魚さんを切り分けながらあたしは大きなため息をついた。
「でも、ノーコンさえなけりゃ、呪文は使えるんだろ。」
あたしのポテトを突き刺してガウリイは言うとひょいっと口にいれる。
「簡単にあれが直ると思う・・・っと。」
げしっとガウリイのとりさんを頂く。
「一筋縄ではいかんだろうな・・・・・っと、ていっ!」
ガウリイのフォークより一瞬早くあたしは素早く皿を引いた。
「ふっ、甘いっ。」
勝ち誇り胸をはり、悠々と守り抜いたとりさんを口に運ぶ。
「・・・・・・・・・しくしくしくしく・・・・そんなノーコンノーコン言わなくても・・・・」
二人の間で、ご飯を食べていたセフィルはがっくしと肩を落としていた。
「事実でしょーが。でもまあ、それ以外は使えるようにはなってるから。あとはコントロールだけよ。」
「・・・・わたし、やっぱりダメなのかなぁ・・・」
ぽそりっと呟く。
「コントロールだけだって言ってるでしょーが。ここであきらめるんなら、あたしはもう付き合わないわよ。」
努力とか根性とかはあたしも苦手だか、途中で逃げ出すのはもっと嫌いだ。
「だから、んな弱気なこといってんじゃないわよ。」
ぴこぴことナイフを振りながらセフィルに話すと、彼女は小さく笑った。

と、その横からとーとつにおっちゃんが割り込んできた。
「あんた魔道士だろ?」
「・・・・そーだけど。」
あたしは食後のお茶を飲みながら答えた。
「実は頼みがあるんだが、やってもらえたらここの宿代と飯代に金貨20枚つけるんだが。」
にゃにおぅっっ、ここの支払いチャラの上、金貨20枚とは見逃せないっ!
「ことと、次第によるわよ。」
しかしここは冷静に対処しなければ。
「で、頼みってのは?」
「雨を降らせて欲しいんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぃ?」
雨って、あのあめだよねぇ。
何言い出すかと思ったら・・・・それかい。
「ここの所、まったく雨が降らなくて困ってるんだ。あんたらも気が付いただろうやたらと乾燥しているの。」
そーいや、ずいぶんと埃っぽい街だとは思ったけど、そーゆー事か。
でもいくらあたしでもコレは専門外。
報酬はちとおしいけど、無理なものは無理だし断ろうと思ったとき、思わぬ所から話が進んだ。
「どのぐらい降ればいいの?」
切り出したのはカップを両手でもってホットミルクを飲んでいたセフィル。
「一晩だけでも・・・・・って、お嬢ちゃんが引き受けてくれるのかっ?!」
おっちゃんもまさか隣の女の子が受けるとは思ってなかったらしくむちゃくちゃ驚いてる・・・・・・無理ないけど
実際は見た目通りの年齢じゃないのは知らないんだし。
「だからさっきの約束、忘れないでね。」
セフィルはにっこりと答えた。



三日月があたりの闇を切り裂いて光を地面に落とす。
こんな時刻に出かけるのは普段は盗賊いぢめぐらいなのだか、今夜は違う。
町外れの小高い丘の上で何やらごそごそと服の中から取り出しているセフィル。
「なあ、本当に雨なんか降らせることできるのかよ。」
両手を頭で組んで、木にもたれかかったままガウリイが聞いてくる。
「不可能ではないのよ、天候の一時操作は。」
大がかりな儀式魔法とそのための道具があればの話だが。
でも攻撃呪文大好きのあたしは無論、んな呪文は知らないし、第一必要な魔法道具を持っていない。
「じゃあ、セフィルはどうするつもりなんだ。」
「そりゃ、あたしの方が聞きたいわよ。」
見通しのいい場所を聞いてわざわざこんな所まできたのだから、彼女には何か考えがあるのだろう。
もしかするとエルフの道具とか持ってたりするのかもしんない。
そのときは後でじっくり観察してから譲ってもらおうっと♪
「お、始まるみたいだぞ。」
一人妄想にふけっていたあたしをガウリイの言葉が引き戻す。
セフィルはこちらをちらりっと振り返り、「静かにね」というとまた正面に真剣な表情で向き直る。
その手の中で何かがぽぅとほのかな輝きを放った。

そしてセフィルは静かに何かを唱え始めた。

高く低く。
星月夜の空に響きわたるセフィルの声。

「・・・・・・・歌?」
ガウリイがぽつりと言葉を漏らす。
そうだ、これは呪文じゃない・・・・・・歌、だ。
あたしは記憶の糸をたぐり寄せ思い出した。
以前何かで読んだことがある・・・・これは――――――「呪歌」だ――――

聞き慣れない言葉と旋律。
とても不思議で・・・どこか懐かしい。
その澄んだ歌声はまるで風に溶けるように流れていく。

風が踊る。
空気が動く。
雲が流れる。
セフィルの歌声に応じるように。

そして、乾いた街に雨がしみこんでいった。



次の日、あたしの手にはもちろんあの礼金、金貨20枚があった。

セフィルが降らせた雨は一晩中降り続け、報酬を受け取るには十分なものだった。
あのおっちゃんも本当に降るとはとしきりに関心して方法を聞き出そうとしたが、セフィルは秘密だからといってごまかした。
「しっかし、あんな力があるなんて凄いじゃないのよ。」
あたしは宝珠を眺めながら歩いていた。
あの歌はわからないが、この宝珠は知っている。
呪法球―――ルーンオーブだ。
天候の一時操作などに使うやたらと高価なものだが、普段見かけるものよりは若干小降り。
そこはハーフエルフのセフィルが使うもの。きっとエルフ独自のものなのだろう。
「滅多に歌わないんだけどもね。―――精霊に直接呼びかけるもんだから。」
・・・・・・精霊によびかけるぅ?!
こともなげにさらっと言うが、もし本当ならとんでも無いぞ。
「あんなことできるなら、攻撃呪文なんか使えなくたっていいんじゃないのか?」
コトの凄さをまったくわかってないガウリイはのほほんと話す。
「それとこれとは別だから。」
そういって苦笑するセフィル。

あの本といい、「呪歌」といい、セフィルには驚かされっぱなしだ。


でも、この歌が全ての始まりだったとは―――誰も思いつきもしなかった。


――― 昨日は明日 闇は光 偶然は必然 ―――


======================================
はいっ、もう妄想ばく進してます・・・・
「呪歌」は呪文のようなもので、言葉はエルフ独特のカオスワーズだと納得していただけるとありがたいです・・・・
そのうち本編でも説明する予定にはなってますが。
セフィルの歌う「呪歌」はアマディマスの曲をイメージしてます。
ご存じの方も多いと思いますが、N○Kスペシャル「世紀を越えて」の曲が有名です。
その中の一つで今回は「聖なる海の歌声」だと勝手に決めております(おい)
本文中の歌詞は遊佐未森さんの曲です。
この歌詞は以降の話にも深く関わってきます。
いいのかなぁ、こんなんで・・・・

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12316天空歌集 3ゆえ E-mail 11/12-01:39
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天空歌集 3


     どんな悲しみも ここでいやされる


活気に満ちた市場にはあちこちから客を呼ぶ声が行き交う。

「名物の『やすらぎの泉』だよっ!」
「そこのお客さんっ、お子さんのおみやげに『リングキャンディ』はどうだい!」

「…………」
「…………」
「…………にぎやかだな。」
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……まぁたこのパターンかい。
頭を抱え込んだあたしとセフィルは呆然はこの光景を眺めていた。


「おもいっきし観光地化してるわね。」
あたしはこめかみをぴくぴくさせながら公園のベンチに座っていた。
ぐるりと街をみてわったが、どこも同じ。
もう少しそれらしい雰囲気というか、そんな物を想像していただけにこのギャップは・・・・
伝説とか、言い伝えとか使って町おこしやるパターンがあるけどここも典型的なものか。
未だに納得いかないセフィルは屋台のおばさんに話を聞いている。
「……大体の話はわかったよ。」
やっと解放されたらしく、おばちゃんの世間話攻撃に心なしか疲れているようだ。
ふっ、まだまだね。
「この先の森の中にある泉をあの歌になぞらえて観光の目玉にしてるんだって。
 その泉の水を飲めば悩み事やストレスが癒されますってのがウリみたい。」
はふぅっと一息つき、
「…・けど、その森の泉には選ばれた人間しか入ることが許されていない。んで、その人たちが汲んできた泉の水を
 『やすらぎの泉』とかいって名産品として大々的に売り出してるんだってさ…」
くる途中、ものは試しとかって飲んでみたがどこから飲んでもただの水。
商売としてはうまいと思うが、これってかなりやばくないか…・
「けど本当に効き目があるのか、その水。」
いつの間に買ってきたか、焼きイカ食べながらガウリイが珍しくもっともなことを言う。
もちろん、あたしもイカさんをもらって食べているが。
「そこなの。どうもこれが効いちゃってるらしくって…・・人間ってどんなもんなんだか…。」
再びはぅ〜とため息をつくセフィル。
おおかた、悩みに悩んだりストレスためまくった状態で、効くと思いこんでいるから、そう思いこんでいるのだろう。
気の病なんて、そんなもんだし。
「でも本にはちゃんと書いてあるんだけどな、『指輪』のこと…・」
セフィルは両足を投げ出して座り、本を両手でもって本を見下ろす。
あたしもセフィルが嘘をついているとは思ってない。
だってハーフエルフの彼女もこの歌は知っていたのだから。





それは今から3日前の夜に話はもどる。

「リナさん、大体読めましたよ。」

部屋でごろんっとベッドに横になったあたしにセフィルがあの本を持って話しかけてきた。
「ほんとっ?!で、どんなこと書いてあった?」
あたしは飛び起きてセフィルの側にいく。
セフィルが旅についてくる理由にあの魔道書の解読があった。

―――古代エルヴァン文字

どうやらエルフにだけ伝わる、それもかなり古い文字らしい。
ハーフエルフで、たまたまその文字を知っていた彼女が解読をしていたのだが、
やはりかなり難しいらしく、それでもなんとか毎晩少しずつ読んでいたのだ。
エルフにのみ伝わる古代文字で書かれた魔道書―――
これがお宝を予想せずにはいられるかっっ!
「ねねねねねね、なになになになになんなんだって?ね?ね?」
「そんな興奮しなくても…・まだ全部読んでないし、所々わかんないと所もあるけど、
 この中にすこし私も聞いたことがある文章が載ってたの。・・・ええっと…・ほら、ここ。」
テーブルに本を置きパラパラとページをめくり、ある一カ所の文を指さす。
あたしは『ライティング』を唱えて部屋を明るくしてから、本をのぞき込んだ。
「……わかんない。」
指さされた文字見てもあたしにはただのヘンテコな文字としかみえん。
「古い歌なんだけどね。小さいときに聞いたことがある詩なの。あとそのことの説明文みたいなものが書いてある。で歌は―――」
セフィルは静かに歌い始めた。

     どんな悲しみも ここでいやされる
     星のふる夜の 泉にひたされ
     つかれた旅人には やすらぎの指輪
     眠れない子供には 三日月のゆりかご

     たとえばあなたが かなわぬ恋をして
     生きていくことが とてもつらいなら
     私をたずねてきて 時のすむ森の
     遠い過去と未来が めぐりあう場所へ

「―――私はただの子守歌みたいなのと思っていたけど、この本によればかなり昔のエルフが作ったものだってあるから、
 この『やすらぎの指輪』ってのがなにかの魔法道具じゃないのかなーって。」
よっしゃぁぁぁぁぁぁ!ビンゴォォォォォォォォォォ!!
くうっ、あたしの予想どおりっ!何でも調べて見るもんだ。
しかもエルフの作った魔法道具なら、無銘でもきっとすごい物に違いないっ!
「そうと決まれば前は急げよっ!その指輪を頂き・・じゃない調査にいくわよっ!」
がしっと拳を握りしめあたしは堅く心に誓った。
指輪、ゲットだぜ!!



しかし、その決意はあっさりと現実の前に壊れ去り、あたしはただただムカついていた。
こんな時はひたすら美味しいものでも食べまくるぐらいしか、あたしの繊細な心は癒されないわっっ!
「と言うわけで次、これとこれとこれとこれを2人前ずつ持ってきて。」
「……まだ食うのかよ。」
追加注文するあたしに対して、さもあきれたように言うガウリイだが、自分もあたしと同じ量食べてるから言えた義理じゃない。
「んっんっんっ。ストレスのはけ口、別に探してもいいのぉ〜♪」
「…・・好きなだけ食べてください。」
―――さわらぬ神に祟りなし。
そうガウリイの背中は言いたげだが、黙々と自分の分を平らげていった。

「そーいやセフィルはどうしたんだ?さっきから姿が見えないが。」
今頃思い出したように言い出すガウリイ。
「相変わらず人の話まったく聞いてないわね。セフィルはもう少しあの歌のこと調べてくるってここの神殿にいったんでしょーが。」
「そーだったっけ。・・・けどよ、あの子ふらふら街を歩いてると危ないんじゃなかったのか?」
「おおおっっ!ガウリイがそんな前の話覚えてたなんてっ!!」
「いやぁ。」
照れるな、ほめてない。
「大丈夫でしょ。ノーコンとはいえ攻撃呪文も使えるし、あの耳を隠す帽子かぶってればその辺の可愛い女の子にしか見えないから。
 それに危なくなったら『レイ・ウィング』で飛んでこいって言ってるし。」
「ならいいんだが……」
「やけに心配するのね、ガウリイ。」
「ん?…・・まあな。」
ぽりっと頬をかくとそのまま黙ってしまった。
そんな様子のガウリイをあたしは別に気にとめず、食事の続きを頂いた。



セフィルが戻ってきたのはそれからしばらくして。
しかももう一人、どこで拾ってきたのか神官らしき男の人を連れてきた。
「貴方があのリナ=インバースさんだと、セフィルちゃんから話を聞きまして…・・」
セフィル…ちゃん?!
・・う・・・・うぷぷふぷ……あ、セフィルやっぱり赤くなってにらんでる。
そりゃそーだ、精神年齢はちゃん付けで呼ばれる年じゃないもんね。
しかし、あの、というのは毎度毎度引っかかるが。
「その、あたしになんのご用で?」
年はガウリイと同じぐらいだろうか、藍色の法衣を着て、銀色の短髪に眼鏡をかけたなかなかの好青年。
彼は人差し指で落ちてくる眼鏡を押し戻しながら、

「私はここで神官をやらせて頂いています、クラースと申します。実はどうしても手に入れたいものがありまして…・
 しかし私一人の力ではどうすることもできず悩んでおりましたところ、
 貴方がこの街に来られているとこちらのセフィルちゃ…いや、さんからお聞きしまして、
 ご高名なリナさんのお力をお借りできないかと思い、こうして伺った次第です。」

神官らしい、礼儀正しく説明をするクラースさん。
さりけげなくセフィルにも気を使ったあたりはさすがというか。
「わたしがあの歌のこと聞いたら、どうしてもって言うもんだから、つれてきたの。」
遅い夕食をパクつきながらセフィルが付け足す。
「でも、神官の貴方が手に入れたいものって何なんです?」
その言葉に反応するかの用に、ぴくんっと表情を堅くしてから低い声で話す。

「それはあなた方も探しているものと同じ物ですよ―――例の――『指輪』です。」

――――な、なにっぃ?!
「あれって、ただの観光用のよた話じゃなかったの?!」
「それが違うんだってさ。あの本に書かれていたことは真実だったのよ。」
セフィルはくいっと目で促すようにクラースさんを見上げる。
「詳しい話はここでは…・・よかったら私のいる神殿のほうへお出でくださいませんか。」
まるで周りの人間に話を聞かれたくないらしく、さらに声を細める。
「ここでは話ができないって訳ね。」
静かに頷いて返事をするクラースさん。

どうやらなにか裏がありそうだ。

=====================================
裏設定ならありまくりです(笑)
どうもあらすじ作る前にどんどん裏設定だけ独走していくタイプだと、やっと自覚しました。
今回の曲はまた谷山さんの「やすらぎの指輪」そのものです。
この曲で以前から話ができるなと思っていた曲です。
あと1回か2回でこの歌詞の話はまとめ上げたいなと。
で、神官のクラースさん(笑)
ネーミングがかなり手近になってます。次回でもしかすると出典わかるかも(笑)

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12317天空歌集 4ゆえ E-mail 11/12-01:48
記事番号12313へのコメント

天空歌集 4


物を隠すには、似たような物と一緒にしてしまうのが一番だ。
森に木を隠すように、水に毒を混ぜるように。

「うまいこと考えたわね。確かにこれならあたしでも信じないわよ。」
神殿でクラースさんの話にあたしは関心すら覚えていた。

あの歌はこの街に言い伝えの様に歌い継がれていたものだった。
森の奥深く、たしかに泉は存在している。
最初に聞いた話だと選ばれた者だけがその泉へ行けると言っていたが、真相は誰もその泉には行っていないとか。

その昔、森にはエルフの村があったらしい。
そしてエルフは泉に何かを隠してこの地を去った。

エルフの住まう森の伝説として歌い継がれた『ルーンリング―――やすらぎの指輪』。

しかし、そんな伝説が本当だと知れ渡ったらせっかくのお宝がいつか奪われてしまう。
それを恐れた代々の町長は一計を案じた。
逆に名物として大々的に売り出して観光地化し、ただの言い伝えとしてうわさ話に伝説を覆い隠したのだ。

「それがこの神殿と代々の町長にだけ伝わった真実です。あの泉には今も誰一人として近づけないのです。」
「たしかに、これだけやられたら普通は本当だとは思わないよな。」
どうやらなんとか話にはついてきたガウリイもふむふむと頷いている。
ただの観光客はお金を街に落とし、宝探し屋(トレジャーハンター)にはいい目眩まし。
「一石二鳥ってわけよね。」
あたしは頭の後ろで手を組み、いすを傾けた。
こんな内容じゃ、たしかに人が多い食堂なんかでは話せないか。
じりっと獣脂の炎がゆらぐ。
「でも、それはいいのです。おかげでこの街の経済は潤い、人々の生活も豊かになりましたから。
話を信じて水を飲んでいる方々には申し訳ないとは思うのですが、その思い込みが返って心理効果として現れているようですし。」
テーブルの上で手のひらを組み、うつむき加減でクラースさんは語った。
「んで、どうして貴方はその『ルーンリング』を手に入れたいわけ?別に街の為って訳でもないみたいだし。」
あたしの言葉に苦笑すると真摯な面もちで、
「私にはどうしてもあの『指輪』が必要なのです……彼女の為に。」
「彼女?」
「詳しい理由は今はお話できませんが……ある女性を救う為、どうしても『指輪』の力が欲しいのです。」
「理由は話せない、でも『指輪』は手に入れて欲しい。…・・ずいぶん虫のいい話ね。」
「勝手ばかりいって申し訳ありません……」
彼の思い詰めたような瞳があたしを刺す。
ちらりっとガウリイをみるが、その顔はあたしに任せる…か。
セフィルの方は自分が持ってきた話だし、答えは決まっているだろう。
「まあ、元々はあたしらもその『指輪』を探しに来たんだし、その話お受けましょう。」
「本当ですか?!」
クラースさんの表情が一転して希望に輝く。
「ただし―――――報酬は別にちゃぁんと頂きますからね♪」
決める所はちゃんと決めないとね。



あたし達はクラースさんから詳しい場所を教えてもらい、森の中を歩いていた。
こちらも詳しい場所までは把握してないで来たから、まあ願ったりかなったりと言うところだ。
先頭をあたしが行き、その後ろからガウリイとセフィルが続く。
「さっきっから、なに考えこんでるんだ。」
少し遅れてあるくセフィルにガウリイが話しかける。
「あ・・・・うん・・・・ちょっと気になったから。」
さくさくと落ち葉を踏みしめながら答えた。
「気になるって、あのクラースって人の事か。」
「うん・・・それもあるんだけど・・・・歌の続きがね・・・」
あたしは立ち止まり振り向きざまに、
「あの歌、続きがあるの?」
「うん・・・あたしも本を読んで初めて知ったんだけど・・続きはね――

     最初のくちづけは 涙をかわかすため
     けれどもそのあとはもう 妖しい闇の誘い
     あなたを迷わせる 小鳥に気をつけてね
     きっとたどりつれるはず 星座の地図をたどり ―――それで、その後に――――」

セフィルが歌の続きを言おうとした時、ガウリイが叫んだ。
「―――よけろ!!」

しゅかかかかかっっっっん!!

セフィルを庇うようにガウリイが走り込み、その場からセフィルを連れ去る。
あたしも気配に反応して横っ飛びにその場を逃れた。
その後には氷の矢が数本突き刺さっている。

「誰!!そこにいるのはわかってんだから出てきなさいよ!!」
あたしは声を張り上げる。
ガウリイも気配のする方向に油断なく剣を構えている。
―――――が、
「どうやら、行ったみたいだな。」
ガウリイが剣を納めながら呟いた。
林の奥からしていた気配がすっかり消えたのだ。
「気配からして3人だな。―――大丈夫か?」
ガウリイの後ろでぺたんっと座り込んだままのセフィルに話しかける。
突然の襲撃にかなり驚いたらしく、その体はかすかに震えていた。
「・・・・・明らかにあたし達を狙っていたわね。」
あたしは呻くようにつぶやくと足で突き刺さったままの氷の矢を蹴飛ばす。
「・・・・・なんなの・・・・あれは・・・」
少し声も震わせながら、セフィルは呆然と先ほどまで立っていた場所を眺めている。
あらか様に攻撃を受けたのは初めてなのだろう、しかも殺気付きだし。
ハーフエルフとはいえ、驚くのも無理はないか。
「さあね、あたし達を泉に行かせたくない連中なんじゃない?」
軽く答えるとセフィルはガウリイの手を借りて立ち上がった。
「・・・・・そーなの・・・・・?」
「さてね、本当の所は連中に聞くしかないから。追いかけて聞いてみる?」
ふるふると首を横にふる。
「なら無事だったんだし、さくさくっと前に進みましょ。」


先頭を歩くあたしに並ぶようにガウリイが横にきて、
「なあ、リナ。お前さっきの連中、街の奴らだと思ってんのか?」
と、こそこそと囁くように聞いてくる。
「わけないでしょ。邪魔するならもっと早くに襲ってくるわよ。それにあの引き際のよさ・・・おそらくプロね。」
コクンと頷く。どうやらガウリイもあたしと同じ考えのようだ。
「ならなんでさっきあんな事言ったんだ?」
「連中が狙っていたのは間違いなくセフィルよ。そんなこと彼女に言える?」
あたしもぼそぼそとガウリイに囁く。
「・・・・・・なるほど。」
「そゆこと。もう少し状況がはっきりするまでは黙っとく方がいいでしょ。」
不意にわしゃっとガウリイが頭を撫でてきた。
「・・・ちょっと、なにすんのよ。」
「お前さんらしいなって思ってな。」
そう言ってにっこりと微笑みかける。
・・・・・・・・・あたしらしいって・・・・・まあ・・・いいか・・・・


「――― ナさん――」
誰かが後ろからあたしを呼び止めた。
「・・・・・ふぇ?」
「リナさん!前!!」

ごいんっ!

「・・・・・・・だから前に壁があるから危ないって言ったのに・・・」
おもいっきりぶつかったらしく、すんごい痛いんですけど・・・・
ガウリイは寸での所で止まって無事。
なんか悔しいぞ。

「・・・・壁?」
ガウリイが不思議そうにあたりをぺたぺたとさわりまくっている。
どうやらあたし達には見えないが、セフィルには壁の様に見えているらしい。
「結界ね。」
あたしもこんこんっと見えない壁を叩いてみる。
「どうやらこの先みたいね。」

森の中に張られた結界にあたしは確信していた。


====================================
どぉもっ、言い訳コーナーですっ(笑)
今回の歌詞も前回と同じ曲です。
あと1.2回は続きそうですねぇ、こりゃ。
どうも話を簡潔にまとめるという作業が苦手といいますか、欠落している見たいです。
御感想、ご意見おまちしてます。
あと誤字脱字も(笑)

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12318またゆえさんのお話が読めるなんて♪ 桐生あきや 11/12-03:07
記事番号12317へのコメント


 どうも桐生です〜。またお逢いできて嬉しいです。
 素敵なタイトルのお話ですね。アルバムの題名だと書かれていましたけれど、この話にすごくぴったりだと思いました。
 セフィルちゃんカワイイし(おい)。金髪で赤目だなんて、なんて私の好みのツボを………(すいません。桐生は目が赤いのに弱いんです。あ、でもルビーアイ・カニバージョンはダメです)
 なんかもう、すっかりゆえさんのファンです。

 ところで、私も思った事があるんです。アディエマスの、声をひとつの音の旋律として見なすあの音楽を、呪文のイメージと重ねたことが。
 聖なる海の歌声、私も持ってますし(苦笑)。大好きです。
 どうやら、ゆえさんと私、かなり趣味がかぶっているようです、たははは………(^^;

 私も、かなり重症の設定病で、さらに悪いことに長い話しか書けません………(−−;
 でも、設定を作るのってすごく楽しいんですよね。

 綺麗な話です。続きすごく楽しみに待ってます。
 それでは。

 桐生あきや 拝

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12324また読んでいただけるなんて♪ゆえ E-mail 11/12-23:35
記事番号12318へのコメント

> どうも桐生です〜。またお逢いできて嬉しいです。

こちらこそ、また読んでいただけて嬉しいです〜。


> 素敵なタイトルのお話ですね。アルバムの題名だと書かれていましたけれど、この話にすごくぴったりだと思いました。

谷山浩子さんのアルバムの中でも一番のお気に入りなんです。
この方の歌詞はなかなか深いものが・・・・・
ただ私はかなり浅く読みとってますが(笑)
もう使いたい歌詞がわんさかで。よかったら聞かれて見て下さい。



> 金髪で赤目だなんて、なんて私の好みのツボを………(すいません。桐生は目が赤いのに弱いんです。あ、でもルビーアイ・カニバージョンはダメです)

たしかにあのカニに見つめられたら嫌ですよね(私は甲殻類アレルギー・・・意味が違うって)
金髪に紅瞳はリナ+ガウリイの子供の姿をかなーり意識してます。
逆バージョンの栗色の髪に青瞳はどうもしっくりこなくって。
紅瞳って妙に力があるように思えるんです。



> なんかもう、すっかりゆえさんのファンです。

あああそんなもったいないお言葉を・・・・・ありがとうございます。


> アディエマスの、声をひとつの音の旋律として見なすあの音楽を、呪文のイメージと重ねたことが。

初めて聞いたとき歌詞が気になってアルバムを買ったら造語だと知り、それ以来呪文のように聞こえてしまいます。
神聖呪文ってこんな感じじゃないのかなーと。癒し系の音楽ですし。



> 私も、かなり重症の設定病で、さらに悪いことに長い話しか書けません………(−−;


短い話がかけるようになりたいです・・・・
この話と同時進行でもう一つ書いているのですが、やはり長くなる・・・・
1話完結の話を作るのが今の目標です。

> でも、設定を作るのってすごく楽しいんですよね

ほんと楽しいですよね〜。
そして私はその設定に押しつぶされるパターン多し。でも気が付くとまた考えて足りします。

> 綺麗な話です。続きすごく楽しみに待ってます。

実は最後だけは出来てるんです。ただそこまで持っていけるかどうか・・・・
でもこうして感想を頂くと、凄い励みになります。がんばりますね。

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12327はじめまして!あごん E-mail 11/14-23:43
記事番号12317へのコメント

はじめましてっ!あごんというモノです。

実はワタクシ、照れ屋で引っ込み思案で守銭奴の為(聞いてねーよ)、前回の小説の時もすっごい感動したのですが、私なんかが感想を書いても・・・と思い、ただ静観していたのですが。
続きがとっても気になるのと、その文章のうまさに感動を覚え、こうして筆(?)を取った次第です。

ゆえ様の書かれるキャラ全ては、素晴らしく生き生きとしておられてっ!
もう本当に筆舌に尽くし難いとはこのことですね!

なんだか全然感想になってない気もしますが。
私の少ない語彙ではこの感動を言い表せないです(泣)。
ではでは、続きを楽しみにしております。
頑張って下さいね!

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12339穴があったら掘りたい・・ゆえ E-mail 11/15-23:48
記事番号12327へのコメント

あごんさん、感想ありがとうございます。

>続きがとっても気になるのと、その文章のうまさに感動を覚え、こうして筆(?)を取った次第です。

前回の投稿も読んで頂いたみたいで、二重のうれしさです。
そんな風に言っていただけると、私もがんばっちゃいます。
まさに何とかもおだてりゃ木に上る状態♪


>ゆえ様の書かれるキャラ全ては、素晴らしく生き生きとしておられてっ!
>もう本当に筆舌に尽くし難いとはこのことですね!

そう言っていただけると、ちょっと安心しました。
といいますのも、どうも私はオリキャラをすぐに出したがるようでして・・・・
リナとガウリイのみで話を進められないというか、どうも第3者的な見方というか、関わりかたしか出来ないみたいで・・・・
他の皆さんには受け入れてもらえるのかなーと思っていた物ですから。
みなさんには好意的に受け取っていただいてると感じてほっとしてます。

>ではでは、続きを楽しみにしております。
>頑張って下さいね!

こうして感想を頂くと、本当に励みになります。
がんばります。

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12336素敵です〜!せりあ 11/15-20:38
記事番号12317へのコメント

こんばんは、せりあといいます。

ゆえさんのお話ってサクサク読めて内容もどんどん引き込まれていきます。
長めの文章もちゃんとまとまってますし。
文才をわけて頂きたいです・・・(T×T

続き楽しみにしています!!
短くてごめんなさい。
それでは〜。


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12340うれしいです〜ゆえ E-mail 11/15-23:52
記事番号12336へのコメント


せりあさん、感想ありがとうございますっ


>ゆえさんのお話ってサクサク読めて内容もどんどん引き込まれていきます。
>長めの文章もちゃんとまとまってますし。

長い文しかかけないと言いますか、まとめるコトが出来ないんですよ〜。
書いているとつい、あれもこれもとなってしまうので・・・とほほ。
まとまってます?
ちゃんと話になって、読む方に伝わってるか毎回どきどきものです。


>続き楽しみにしています!!
>短くてごめんなさい。

こうしてコメントいただけるだけで、本当に嬉しいです。
これで皆さん病みつきになっちゃうんですね(笑)
今週中には続きを投稿します。

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12322まv(笑)稀虹 戯空 11/12-18:52
記事番号12313へのコメント


 こんにちはーゆえさん♪
 偶然見たら私の名前があった稀虹です(笑)
 詩・・・見て下さったんですか? ありがとーございます♪
 ゆえさんの小説も読ませていただいてますわ♪
 今日はちょっと時間がないので2話目ほどまで・・・
 またカキコしますので、よろしく☆

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12325御礼ゆえ E-mail 11/12-23:42
記事番号12322へのコメント

> 偶然見たら私の名前があった稀虹です(笑)

こんにちはです。
稀虹さんの小説を読んで、私もかなり触発されましたので。
でも稀虹さんの様にうまく歌詞を本文に乗せられなくて頭抱えてます。
自分で自分の首しめたかなーと(笑)


> 詩・・・見て下さったんですか? ありがとーございます♪
> ゆえさんの小説も読ませていただいてますわ♪

ありがとうございます。
私も稀虹さんの小説読ませて頂いてます。
感想をカキコしてなくてごめんなさーいっっ。
でも更新を楽しみにしておりますので。
稀虹さんの様にかけるよう私もがんばります。

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12341天空歌集 5ゆえ E-mail 11/16-03:16
記事番号12313へのコメント

天空歌集 5


「さて、どうたもんかな。」

こんこんと壁を叩くように確かめる。
森の中に突如現れた結界。
この中に大事なものがありますって言いふらしている様な物である。・・・が、
「向こう側は見えててもその先に行けないんじゃどうしようもないぞ、こりゃ。」
不思議そうに結界の壁に両手をついて、何を考えているのかぐいぐい押してみたりしてる。
引いてもダメなら押してみなってか・・・・ガウリイ・・・・
「ぐるっと泉の周りを囲むように壁があるけと゜、入り口らしきものは見あたらないし・・・・」
あたし達には見えない壁が彼女にははっきりとわかるらしい。
セフィルは辺りをぐるりと見渡すとブツブツと何かを壁に向かって言い始めた。
しかし、この結界の先にお目当ての物はあるのだ。
中にあるのはかつてここに住んでいたというエルフの指輪。
ということは、この結界を張ったのはそのエルフ達・・・・・・
「セフィル、あなた結界を解く呪文とか歌とか知らないの?」
「結界を解くもの・・・ね・・・・」
そう言うとそのまま押し黙ってしまった。



これは全くの余談なのだか、セフィルはまったく魔法が使えない訳ではない。
治療や解呪といったいわゆる白魔法的な呪文はちゃんと使えるのだ。
白魔法的と言ったのは、あたし達人が使うものとは異なるエルフの呪文だから。
今のところ彼女が使えないのは攻撃呪文と黒魔法と言うことだが、これはただいま修行中。

―――閑話休題。

しかし、エルフの結界を解けないとなると、こりゃどうしたもんだか・・・
ガウリイの『光の剣』でもあれば話は簡単なのだが、ここに無い物をいっても仕方がない。
「お前さんのあの呪文はだめなのか?」
ガウリイが言う。
「―――――だめよ、あれはもう使えないから。」
ちょんちょんと指で左手の手首をさし苦笑する。
ガウリイの言った《あの呪文》と言うのは、空間さえ切り裂く闇の刃『神滅斬−ラグナブレード』
この呪文なら確かに、結界ぐらいはあっさりと切ってしまえるだろうが、今のあたしには物理的に無理だ。
なぜならあたしにはあの呪符――『魔血玉』――を失ってしまったから―――魔力の増幅が出来ない。
ガウリイも察したのかそれ以上は何も言わなかった。



時間だけが無駄に流れていき、森の枝の隙間からはすでに星空が覗いていた。
ここでぼーっとあほ面並べて突っ立っても意味ないから、あたし達は近くで野宿の準備をしていた。
結界からすこし放れた場所で火をおこす。
揺らぐたき火の火をみていてあたしはふと、思い出した。
「そーだ、あの歌の続きってどんなんだったっけ?」
両手で膝を抱えるようにしてぼっとしていたセフィルは言われた歌の続きを歌う。
そして、あたしはその一言が気になった。

―― きっとたどりつけるはず 星座の地図をたどり ―――

「・・・・それだ。」
あたしの一言につられて歌を途中で止める。
「なにがです?」
「あの歌はただの言い伝えだけじゃない、何かしらの意味があるはず。としたら結界のことも何かしら関係があるはずよ。」
「それがこの部分ってこと?。」
「そう、この『星座の地図』が一番怪しいわね。この辺に結界を解く鍵があるとにらんだけど・・・」
「星座ねぇ・・・・・」
うーん・・・・・と二人して頭を抱える。
一人自分は無関係とのほほんとガウリイは空を見上げる。
「星座って、あの星をつなげて形にした奴だろ?ほれ。」
促されるようにあたし達も星空を見上げる。
「あー・・そーだね。星を紡ぐっても言うけど・・・・・・ほら、あの星とあの星を紡いだら柄杓の形になるでしょ。あれが北斗七星。」
セフィルが空を指さして星座の形を教える。

星をつなげる星座・・・・星を紡ぐ・・・紡ぐ・・・言葉・・・音階・・・呪文・・・・・・・もしかして――あたしは思いついた。

「・・・そうよ・・・紡いで形にするのは星座じゃない・・・言葉よ。そして、地図をたどるのは音階だと考えたら、答えは一つ。
『呪歌』が鍵なのよ。―――セフィル、知ってる歌の中とかあの本の中とかに、解くとか開くとかいうもの無かった?」
セフィルは考え込み、そして呟いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一つあった。」


月は天頂高く登り、森の中へ淡い光を放つ。
セフィルは結界の前で深呼吸すると歌いだした。
その歌はこの前と同様、意味はわからない。
ただある一言だけはあたしにもはっきりと聞こえた。
「――――クルル・カリル」
セフィルがその言葉を放つと、ばあっと結界が解かれた。
「おっしゃっ!ビンゴっ!」
「・・・・・・・・・・・・・本当に開いた・・・・・・・。」
目をまん丸にして立ったまま、やった本人が一番驚いてどーするよ。
「そのクルルなんとかってどんな意味なんだ?」
ガウリイも聞こえたらしく、セフィルに尋ねる。
「エルフの言葉で『扉を開けて』っていう意味のカオスワーズなんだけど・・・・その言葉が出てくる歌を歌っただけだよ。」
正面を向いたまま、まだ信じられないといった感じだ。
まあ、彼女にしてみりゃただ「開けて♪」って歌っただけこれだから無理もないか。
あたしはさくさくと結界内に踏みはいる。
「さあっ!あたしのお宝さんがお待ちかねよっっ!!とっとともらいに行くわよっ!」
結界さえなくなりゃ後はこっちの物よっ。
ずんずんと先へと進むあたしの背後でため息が二つ漏れた。
「・・・・・・・・・いつリナさんのお宝になったのよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・腹減った。」
ガウリイの緊迫感のないセリフに思わずつっこんだ。



泉は歌の通り、こんこんと水をたたえ、三日月の形をしていた。
「三日月のゆりかご、ね。」
上弦の月が水面に写る。
あたしはその泉の前で呪文を唱える。
「翔封界(レイ・ウィング)!」
ふわり空に舞い泉の中へと潜る。
その時セフィルがまたもや何か歌っていたような気がしたけど・・・はて?
風の結界をまとい泉の底へと降りていく。
透明度は高いがやはり夜だから辺りも見えにくいので「ライティング」も唱えている。

セフィルが言った通り、いやあの本の記述通り箱に入った『やすらぎの指輪』は眠るように水底にあった。

その箱を持ち帰り、水上へとあがる。
「やっほー、あったよー♪」
術をコントロールして水面近くまで来たとき、
「うわわわわわっっ!!???」
ずきゅーんと自分の想像以上に飛び上がったのだ。
「ああっごめんっ!」
セフィルがそう叫ぶと今まで聞こえていた歌がふっと消え、あたしの術も安定した。
なんなんだこりゃ???
とりあえずそれは後で考えるとして、今はこの『指輪』だ。
「これが『ルーンリング − やすらぎの指輪−』ね。」
箱の中から出てきた小さな指輪は白銀のリングに紫がかった深い青色の石がつけてあるなかなかの一品。
しかし、この指輪についている石、どこかでみたこあるような気が・・・・
覗き込むように指輪を眺めていた時、不意にめまいが襲ってきた。

「―――リナ?!」

あたしの意識は光に飲み込まれていった。


====================================
なんとか続きです・・ああ説明っぽい・・
この話だけでえらくひっぱってます・・・先は長いのに。
歌詞の解釈もかなり強引でした。


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12342天空歌集 6ゆえ E-mail 11/16-03:19
記事番号12313へのコメント

天空歌集 6


      どこまでも限りなく 降りつもる雪と あなたへの想い


「・・・・・・・・・え?」
あたしが目開いたとき、そこに見えたのは暗い色をした海と月。
そして海一面に雪のように舞い散るフェアリーソウル。
「なによ・・・・・これ・・・」
目の前の光景がにわかには受け入れがたく―――あたしはただ黙って眺めていた。
ふわりと白く淡い光を放つフェアリーソウルがひとつこちらに近づいてくる。
その白き光を胸の前に両手で包み込こむ。
声が聞こえてきた―――心に、魂に直接響く声が。


――― 永劫と刹那と ――

――― 真昼と暗闇を ――

――― 宿しものよ ――

――― 彼のものへ 天空の唄を ―――

――― 彼のものに 海の唄を ―――

――― 彼方より此方へ 届かんことを ――

――― 我は汝に願い乞う  ――

――― 有と無と 昼と夜を 抱きし汝と共に 在らんことを ――

最後の言葉を聞いた後あたしは光に包まれ、辺りの輪郭を消した。




「・・・・リナっ!」
――ゆっくりと目を開ける。
「リナっ大丈夫かっ!!」
心配そうな顔をしたガウリイが見えた。
「・・・・・・・・・・・そらいろだ・・・・・」
蒼い蒼い空色の瞳。
この瞳に見つめられると安心できる。
「・・・何いってんだ・・・・?本当に大丈夫か?」
まだ頭の芯がぼうっとしているが、気分は悪くない。
「・・・ん・・・へーき・・・ありがと・・」
ガウリイに抱きかかえられた体をゆっくりと起こす。
どうやらめまいがした後、そのまま倒れたみたいだ。
しかし、あれは一体なんだったんだろう・・・
ふるふると頭を振り、意識を冴えさせる。
「もう大丈夫よ。なんだかよく解らないけど、あたしの意識に入り込んできたみたい・・・・まあ、悪いものではないみたいだけど。」
苦笑しつつあたしは、しっかりとした足取りで立ち上がる。
「二人ともいきなり倒れたから驚いたぞ・・・・まったくどうなってるんだ?」
ガウリイが振り替えった先には、セフィルが木に寄りかかるようにして眠っている様だ。
「二人ともって、セフィルもなの?」
「ああ、お前さん達が指輪を見ていたと思ったら、白い光が近づいてきて光った瞬間倒れたんだ。
しばらくしてリナより先にセフィルが目を覚ましたんだが、また眠っている。」
「眠ってるなら大丈夫ね。で、その白い光って・・・・フェアリーソウルのこと?」
「そーいや、そんな名前みたいなやつだったな。」
そう言うとガウリイはセフィルの側に行き眠っているのを確認するとそっと抱きかかえて戻ってきた。
「ともかく、ここから放れた方がいいだろう。」
「そうね。目的のものは手に入れたんだし。」
あたしは掌の中にある指輪を握りしめた。




夜遅くにあたしたちは宿へと帰り着いた。
セフィルはあれから眠ったままだったので、ガウリイが背負って戻ってきた。
ベッドに寝かせると、ガウリイはあたしの前に座る。
「リナは大丈夫なんだな。」
これで何度目のセリフだろ・・・・・いいかげん心配しすぎだぞ。
「くどい。大丈夫だっていってるでしょーが。・・・・それよりさっき聞いたおばさんの話よ。」
「宿屋のお節介なあのおばさんのか。」
「もしその話が本当で、指輪の力がセフィルの言うとおりだとすると・・・・・彼に渡すべきなのかどーか・・・・。」
テーブルの上に置いた『ルーンリング』を指でなぞる。
よもやこんなややこしい話だとは・・・・あたしはこの手の話はどうも苦手だし。
ふうっと思わずため息をついてしまう。
「このまま指輪だけいただいて、とんずらするっていうのはダメかな。」
あたしのナイスな提案に、
「おいおい、いくら何でもそれはまずいって。それに話が本当かどうかも解らないだろ?本人に確かめてからでも遅くは無いんじゃないのか。」
ガウリイが腕を頭に組んで言う。
「だって・・・・こーゆーの苦手なんだもん・・・・」
ぽそっとあたしが呟くと、ガウリイはわしわしと髪を撫でてくる。
「得意な奴なんていないって。さてと、話は明日だ。お前さんももう寝ろ。」
と言いつつも髪から手を放さない。
「・・・・・・・・・・・・ぱか。」
その心地よさにあたしは暫く身を任せた。





祭壇がある部屋の奥で、あたし達とクラースさんは指輪を置いたテーブルを挟むように座っていた。
「説明願いましょうか。クラースさん。」
出されたカップをソーサーに置きながらあたしはクラースさんを真っ直ぐ見る。
「・・・・・どこかで私達の話を聞かれた見たいですね。」
ふぅと息を吐くと、彼は立ち上がり、
「会っていただけますか・・・・彼女に。」
あたしはコクンと頷いた。

さほど大きくない神殿の一番奥の部屋に彼女は窓辺の椅子に腰掛けていた。
柔らかな陽の光が差し込む窓とは相反する様に彼女の瞳は暗く、何も映ってはいなかった。
ただ虚空だけを見つめるように。
「・・・・・彼女・・・ミラルドは私の幼なじみで大切な友人です。今から1年前の事です・・・彼女は全ての家族を失いました・・。」
クラースさんは静かに語り始めた。
ミラルドさんには夫と生まれたばかりの子供がいたが、突然レッサーデーモンが現れ二人を襲った・・・彼女の目の前で。
「駆けつけた時には既に二人とも息絶えていました・・・その時からミラルドは一先の感情を亡くし誰とも心を通わさなくなり、こうしてただ窓の外を眺めているだけなのです・・・・しかし、何時までもこのままでいいはずは在りません。
私なりに色々とはやってみたのですが・・・・・・彼女を救うことは出来ませんでした・・・・・」
自分の不甲斐なさを攻めるように言うと、悲しげにミラルドさんを見るクラースさんは本当に辛そうな表情だった。
そして手にしていた指輪を見下ろす。
「だから、言い伝えの『やすらぎの指輪』を使って彼女の心を助けたかったと。」
あたしは答えを促す。
「彼女がこうなってしまった原因は一つ。あの日の出来事です。だから―――」

「だから記憶を消すの?辛い過去を――」

ミラルドさんの手を握っていたセフィルがクラースさんの答えを遮った。


=================================

ああああああああああああ、やっぱり終われなかったです〜
しかも彼女の名前・・・わかった方、ごめんなさい。
本来の彼らはこんな女々しい性格じゃないのにぃ〜。とほほ。
さて、この話も次で終わりです。
ああ長い。

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12383目指せ、世界1の歳の差カップル!!!(笑)桜華 葉月 11/19-01:20
記事番号12342へのコメント

はじめまして!!!
全部読んだのになぜか中途半端なところにレス書いてます。ご了承くださ〜い♪♪♪
ところで、名前!!!
うちが持ってる某ゲームにでてたんですけど、もしや・・・?
ちょこっと気になってます。
まあ、そんなことはさておいて、楽しくよまさせていただきました。
いつの間にかあま〜くなっててびっくり!!!やっぱりリナちゃんは素直になれないタイプだな〜としみじみ思いました。
しかし、素直なリナちゃんはちょっと不気味かも・・・。
そして気になるぞ、セフィルの過去と恋愛模様!!!ガウリィとの年齢差はいったい何歳なんだ!!!
あ、一人で勝手に盛り上がってすいません。
とにかく、おもしろかってです。曲もぴったりだな〜って思うのがぽこぽこ出てきてすごいと感心しました。
忘れるよりも乗り越える方が難しいけど、その分真っ直ぐに生きていけるんですよね♪
では、これにて!!!

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12391現実だったら凄い話(笑)ゆえ 11/19-02:42
記事番号12383へのコメント

桜華さん、読んで頂いてありがとうございます。


>うちが持ってる某ゲームにでてたんですけど、もしや・・・?
はっ・・・・・・・それって彼らですよねぇ・・・・・・・
たぶんご想像通りだとおもいます(笑)名前が思いつかなかったというのと、一番好きなキャラだったということで・・・性格はまったく違いますが。
そのうち○レスとか○ーチェとかも顔だしたりして・・・・(自滅)


>しかし、素直なリナちゃんはちょっと不気味かも・・・。
不気味ですか(笑)不気味ですね(笑)
まあね素直っていうか、多少は大人になったのか・・・・とも思いたいです(滝汗)


>そして気になるぞ、セフィルの過去と恋愛模様!!!ガウリィとの年齢差はいったい何歳なんだ!!!
>あ、一人で勝手に盛り上がってすいません。

盛り上がりますか。そりゃもっと盛り上げないといけませんねぇ♪
年齢差はガウリイを26としたらセフィルの見た目は6歳ですから・・・20歳かい。現実だったら犯罪というか、ロリコンだぞガウリイ(笑)


>忘れるよりも乗り越える方が難しいけど、その分真っ直ぐに生きていけるんですよね♪

そう感じていたたげたら、書いた甲斐がありました。

こうしてコメント頂くたびに話のアイディアもむくむくと出てきます。
うーん、やっぱりもう少し暴走させようセフィルの恋♪

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12343天空歌集 7ゆえ E-mail 11/16-03:30
記事番号12313へのコメント

天空歌集 7



セフィルはあの歌の続きを歌う。

     どんな悲しみも ここでいやされる
     星のふる夜の 泉にひたされ
     傷ついた心を 抱きしめてあげる
     生まれたままの 無垢な心に返すため

     わたしをさがしにきて あなたを待ってる
     遠い過去と未来が めぐりあう森で

「この指輪は遠い昔、人に恋したエルフがその思い出を忘れるために使われたものだったの。
 長い時を生きるエルフに対して人はあまりにも短い時しか生きられない・・・だからどうしてもその間には死という別れはさけられない。
 愛する者を失ってもなお生き続けなれば行けないエルフは、過去を忘れることで悲しみから逃れ、やすらぎを得ようとした・・・・。」
過去を忘れ無垢な心に返す―――つまりこの指輪は人の記憶を消すことが出来るのだ。
忘れてしまいたい辛い過去や思い出は誰にでもある。
彼女も夫と子供を目の前で失ったあの瞬間の記憶から逃れたいのだろうが・・・・・
それは彼女自身が決めること。
「あの記憶さえなくなってしまえば、彼女にはまた生きる力が出でくるはず・・・・だから私は指輪を使って彼女を救い出したいのです。」
叫びにも似たクラースさんの言葉にあたしとセフィルは沈黙した。
部屋にふわりと風がそよぎ重い空気が漂う。
その空気を割ったのは今まで黙っていたガウリイだった。

「違うだろ。救いたいのは彼女の為じゃない------あんたの為じゃないのか。」
壁によりかかり腕を組んだまま話すガウリイは真剣そのものだった。
「そんな彼女を見ていなければならなかった自分が辛いんだ。彼女の記憶消すことで救うと同時に自分も救われたいんだよ。違うか?」
ガウリイの言葉にクラースさんは振り返り、叫ぶ。
「違う!!私はただ昔の様にミラルドに笑ってほしいだけなんだ!!」
「どうしてそう思う。それはあんたが彼女を愛しているからだろう。彼女が結婚するずっと昔から。」
「――――!」
ガウリイの指摘にクラースさんは驚き、うなだれた。
お節介なおばさんが教えてくれたのは、クラースさんとミラルドさんはどちらかともなく思いを寄せていたらしいと。
しかしお互いに思いを伝えることはなく、そして彼女は親同士が決めた相手と結婚してしまう。
彼女は夫と子供を心から愛し、幸せに暮らしていた・・・・
クラースさんに対する想いはそのままに。
だが運命は彼女から家族を奪い、再び彼との時間を与えたが・・・彼女は全て受け止めなかった。


「辛い過去を受け止められる人と出来ない人がいるのはオレにもわかる。けどな、だから記憶を消してしまうのは単に逃げてるだけだ。
 彼女もそんなことは望んではいないんじゃないのか?だったらクラースさん、あんたがする事は決まってくるだろう。」
「どうして彼女が望んでないとわかるんですか?!彼女の事はだけよりも私が一番解ってんですよ?!」
「――――じゃあどうして彼女はさっきから泣いているんだ?」
言われ彼は振り向くと、そこには静かに涙をこぼすミラルドさんがいた。
あたしは何も言えずただ彼女の後ろに立っていて、正面のセフィルはこぼれる涙を指ですくい取るとそっと目を閉じた。

「忘れることは簡単だ。一番楽な方法だからな。――でもオレはその痛みも悲しみもすべてひっくるめて抱きしめてやる。
壊れてしまうくらい辛く重い過去を持った相手だから、なおさら側にいてやりたいし受け止めてやりたい。
その辛さを越えなければきっと先に進めないっていうからな・・・・あいつは。」
やさしい瞳で微笑みながらガウリイはあたしの方を見つめる
「だから・・・・どんな事からも守りたいし、一緒に生きていきたいと思うんだ。」
こいつは、何を言い出すかと思ったら・・・・・・まったく・・・・
どうしようもなく顔が赤らむのを押さえきれない・・・・うれしさと共に。

ミラルドさんの涙で濡れた手を前に目を閉じたままセフィルが歌い出した。


      愛が夢を邪魔する 夢が愛をみつける
       やさしさが 愛を探して
        あなたが わたしを選んでくれたから

     どこまでも限りなく 降りつもる雪と あなたへの想い
      少しでも伝えたくて 届けたくて そばにいてほしくて
       凍える夜 待ち合わせも 出来ないまま 明日を探してる
        いつだって想い出をつくる時にはあなたと二人がいい


「・・・・・わたしは・・・・そばにいたいだけ・・・・」
セフィルの歌に反応したのか、囁くようにミラルドさんが口を開いた。
「―――――ミラルド!」
「・・・・みんな失って・・・・なのに・・・・あなたといられるとこが・・・・・うれしかった・・・・・でもそれはゆるされないこと・・・・だからわたしは・・・・」
意志の光をもたない瞳からは止めどなく涙がこぼれる。
「・・・・私はとんでも無い過ちを犯そうとしていたのか・・・・それなら私は一体どうすれば・・・・」
後悔と困惑の表情をしたクラースさんがよろよろとミラルドさんの正面に立った。
「抱きしめてあげなよ・・・・今の歌は彼女から聞いた歌だから・・・だから、抱きしめて側にいてあげてよ。」
セフィルの言葉に張りつめたものが切れるように、クラースさんは優しく、そして力一杯彼女を抱きしめた。
その瞳からは彼女とおなじ色の涙が溢れていた。
「・・・・・・・すまなかった・・・・・」
そう呟くクラースさんにミラルドさんは瞳を閉じ黙って顔を埋めていた。
あたし達はその場をそっと放れた。





「でもさ・・・なんで彼女は心を閉じちゃったの?だってクラースさんの事好きだったんでしょ?」
神殿からの帰り道、セフィルがぽつりと呟いた。
「自分の気持ちが許せなかったんでしょ。大切な人を失ったのに、残された自分が愛していた人と幸せになることが。でも放れることも出来なくて・・・・」
彼女は心を閉じたのだ・・・・好きという気持ちと共に。
切なすぎる思いはここまで人の心を締め付けるものなのか。
「そっか・・・・でもわたしにはやっぱりよく・・・わかんないよ。」
そう言ったセフィルの頭をわしわしと撫でてやると、
「そのうちお前さんにもわかる時がくるさ。」
「・・・・そーかな。」
「そんなもんさ。」
見上げるセフィルにガウリイは微笑む。
「そーいやあの指輪はどうなったんだ?」
思い出した様にガウリイがあたしに聞く。
「だから、指輪は彼らには用のないものだから、あたしが預かることになったんでしょーが。下手すりゃとんでも無い事にも使えるから、他の人の手に渡らないようにって。都合の悪いとこなんか勝手にほこほこと記憶消されたら大変でしょ?」
「オレはリナが持っていることが一番危ないような気が・・・・」
「・・・・・・クラゲ頭に使ったらマイナスとマイナスでプラスになるかしら・・・・・」
ゆらりとガウリイの前に指輪を出す。
「わわわわっっ!冗談だろうがっっ!んな危ないものだすなって、リナ?!」
「ふ・・・ふふふふふふ・・・あんなこっ恥ずかしいセリフともども・・・・消えてしまえぇぇぇぇぇぇいっ!!」
「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
逃げるガウリイを追いかけて走るあたし。
ひとり置いて行かれたセフィルはこめかみを押さえつつ、
「・・・・・・・・・・・仲いいんだか、悪いだか・・・」
と呟いたかどうかは知らないこと。


そして、あたしは心の中であの歌を思い出していた。

        少しでも伝えたくて 届けたくて そばにいてほしくて
        いつだって想い出をつくる時にはあなたと二人がいい


本当は素直にそう思えるけど・・・今はまだ・・・ね。
それに、あたしはやらなきゃ行けないことがある。
今回の事である程度の確証はとれた。
ガウリイと二人でいるためにも・・・・あの本を手掛かりに探さなければ。

次の日あたしたちは指輪を手にこの街を後にした。


===================================
やっと本格的に話が始まります・・・ああながい前振り。
歌はあの有名な「DEPARTURES」です。
もう一つの「Can't stop Fallin' Love」も捨てがたかったのですが。
最後のフレーズでこちらに決めました。
けど、ガウリイの語り、なんか支離滅裂かも(笑)
ともかく、これから物語は本格的に動き出します。
語りもリナの1人称から3人称になることも(おいっ)
今後もよかったらおつきあい下さいませ。

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12355ふう、やっとレスが書けます桐生あきや 11/17-00:12
記事番号12343へのコメント


 どうも、桐生です。一度にこんなにたくさんアップされてて嬉しいですっ。ああ、いっぱい読める……(感涙)。
 天空歌集7のガウリイのセリフにジーンときました。あんなことを言うガウリイを書けるゆえさんって、すごいです。私、ガウリイ苦手なんですよ。どう行動させて、何を言わせたらいいのかが全然わからなくて(−−;)。でも、ゆえさんのガウリイ、すごく格好いいです。

>やっと本格的に話が始まります・・・ああながい前振り。
>歌はあの有名な「DEPARTURES」です。
 この歌、好きです♪

>けど、ガウリイの語り、なんか支離滅裂かも(笑)
 そんなことないです。めちゃ感動しました。

>ともかく、これから物語は本格的に動き出します。
>語りもリナの1人称から3人称になることも(おいっ)
>今後もよかったらおつきあい下さいませ。
 楽しみにしてます〜〜。

 桐生あきや 拝

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12364天空歌集  8ゆえ 11/18-01:18
記事番号12313へのコメント

ああああ、暴走してる・・・

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

天空歌集 8

    Give me a Chance! Give me a Jump!
    これからの未来へ向かう戦い!
   


ほうっと吐く息が白い。
肌寒い感覚が今の時を惑わせる。
「まだあの影響のこってんね・・・」
つぶやき暗い空を仰ぎ見る。

あの指輪の騒ぎから3日、あたし達はラルティーグ王国の北の端にある街に来ていた。
いくらここが北にあるとはいえ、この寒さは普通ではない。
そう、あの時の異常気象の影響が多少残っている所もまだあるのだ。
どうやらこの街もそうらしくまだ初秋だというのにこの寒さだ。
あれから結構な時間は立っているが、時々こんな風に見せつけられると・・・ちょっときついかも。



「さっぷぅぅぅぅぅぅぅぅぃっ!毛布あと2.3枚ないと凍えちゃう〜。」
宿から快くプレゼントされた毛布を羽織ってもまだ寒いぞ。
「・・・・・・・・・あれだけ毛布を奪ってきて、まだ言うか。」
ベッドの上でだるまさん状態のあたしにあきれたようにいうガウリイ。
「あんたみたいな筋肉バカじゃなくて、あたし見たいな可憐な乙女はでりけーとに出来てんのよっ!」
「可憐な乙女ねぇ・・・・・・・」
ああっっ!その目はこいつなに言ってるんだって言ってる!!
おにょれガウリイ、寒さに打ち震えるあたしに対してそう思うか。
「うふふふふ・・・じゃあ、別の方法であったまろうかなぁ・・・」
掌に力を集中させてガウリイに不敵な笑いを浮かべる。
そーすりゃこいつもびびって黙るだろう・・・とおもったあたしが甘かった。

「じゃ、こうするか。」
ぱさぱさっと毛布を全部はぎ取るとガウリイは、事も在ろうかあたしを抱きしめて上から一緒に毛布をかぶせた。
「うっ・・・・・・なっ・・なにすんのよっっ・・・!!」
「おーおー、真っ赤だな。こーすりゃ暖かいだろ?」
「・・・・・・・こーすりゃって・・・・ちょっとっ・・!」
じたばたじたばた。
「こら暴れるなよ。・・・まだ慣れないのか、リナ?」
「・・・・・・・・・・・・・慣れない。」
後ろから抱きしめられた状態であたしは真っ赤になったままおとなしくなる。
いくらそう・・・・こーゆー関係になっていても・・・・・・恥ずかしいものはしょーがない。
「まあ、お前さんがこーゆーの苦手なのはわかってるけどな。・・・時々は確認させてくれよ。」
そういってガウリイは抱きしめる腕にぎゅっと力をいれて、あたし髪に顔を埋める。
・・・・・・・うー・・・・・
「・・・・いや・・か?嫌だったらやめるけど。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっとだけよ。」
くすくすと笑う声が頭の後ろから聞こえる。
背中から、腕からガウリイの暖かさが伝わってくる。
彼があたしの保護者を降りたのは数ヶ月前のことで・・・・その・・・なんというか・・・
・・・・・お互いに自分の気持ちを素直に伝え会った。
かけがえのない大切な人だと。
それからも普段はさして二人のやりとりは変わらなかったけど・・・・・・大きな変化はガウリイがやたらあたしを抱きしめたがる事。
ただ、それだけなのだけど・・・・あたしはまだどうにも慣れないっていうか・・・戸惑ってしまう。
だけど、このぬくもりを手放すなんて事は・・・もう考えられないこと。
「リナ?」
「あ・・・ん・・・ちょっと考えごとしてただけよ・・・・・」
「大丈夫だって。信じれば1%の可能性でもどこかに必ずあるっていったのはリナだろう。」
「・・・・よく覚えてたわね。−−−−−−−そだね、これからの未来へ向かうために。」
ガウリイと同じ暖かさになった両手をそっと重ね合わせた。



     輝く白い 恋の始まりは
     とてもはるか 遠い未来のこと
     Anytime I belive your smile 
      どんな時でも あなたの笑顔さがしてた
     Anytime I belive your love
      ずっと前から あなたをきっと見ていた




深々と雪が降っている。
わたしはひとりで外に出て、月を眺めていた。
あんな三日月のこと月の船っていうんだっけ・・・・
そーいやそんな名前の歌もあったなぁ・・・・

「雪が好きなのか?」

後ろからガウリイさんに声をかけられた。

「もういいの?」

わたしの言葉に少し照れたようにぽりぽりと頭をかく。
「いやー・・・その悪かったな。なんか追い出すみたいになっちまって。」
「いいよ、わたしもちょっと一人になりたかったし。それに・・・わたしは居候なんだし。」
リナさんとガウリイさんが恋人同士だと聞いたときはちょっと驚いた。
ちょっと前までは保護者だったらしいけど・・・・・そっちの方がよくわかんない。
当たり前みたいに話すガウリイさんに対して、リナさんの照れようといったら顔から火が出るんじゃないかっておもったし。
そんな二人の間にわたしがいたら、出来る話もできないみたいで。
それで今晩はおじゃま虫は退散していたというわけ。
ううん、今晩だけじゃない・・・・・そろそろ二人と放れないと・・・・・

「止まないな―――。セフィルは雪、好きか?」

あまりわたしがじっと雪空を眺めているからだろう、ガウリイさんが聞いてくる。

「ううん・・・たぶん―――憎んでる。」

         冬の街凍えていた 寒い夜を憎んでいた

「きっと好きにはなれないよ・・・今もこれからも。」

         愛を語るより 温もりだけ ほんの少し欲しい夜もある

空から舞い降りる白い雪の中にひとつ、不釣り合いに輝きながら舞い上がるあの光景が忘れられない。
    
         どれほどの夢 どれだけの愛 抑えきれず空に叫んだ!
         星空を突き抜け雪道を走るあなたのこと信じたい

あの雪の日からわたしの時間は止まったまま。
止まった時間を再び動かすためにわたしは旅にでたのに・・・・ひとりじゃなんにも出来なかった。
それでもわたしの知らないところで何かは動き、わたしひとり置き去りにして進んでいく。
けどコレだけは解ってる。
この二人をわたしの事に巻き込んじゃだめなんだ。
居心地がよすぎるけど・・・・明日の朝、ちゃんと話そう。

やっと決心が固まったとき、ぶわっと後ろから何かが覆い被さってきた。
「うひゃっ?!・・・・・・・・・・あ、暖かい・・・・・・これ毛布?」
「ほら、こんなに冷たくなって、風邪引いてもしらないぞ。」

「―――――――――――!!」

次の瞬間、毛布ごとわたしはガウリイさんに抱きかかえられていた。

「何があったかは知らないが―――」

ガウリイさんがわたしをだっこしたままさくさくと歩き出す。

「一人で行こうなんてこと考えるのはやめろよ。」

なにをっ―――

「どうもお前さんはリナみたいで、危なっかしいな。考えることまで似てるし。」

とくん
わたしの胸がなった。

「・・・どうした?」
ぽふぽふと背中をやさしく撫でてくれる。
とくん とくん
胸の奥深く 何かが目を覚ます。

「・・・・・・・・あのね・・・ひとつだけ・・・いいかな・・」
「ん?なんだ?」
「がうりいって・・・呼んでいいかな・・」
宿の入り口にひょいっとわたしをおろす。
わたしは毛布をあたまっからくるまって、その間から顔を覗かせ、上目づかいであの蒼い瞳をみる。
やっぱり・・・・だめだよね。

「かまわないよ。」
にっこりと微笑むガウリイの顔はとても優しかった。

とくん とくん

・・・・・・・・・・・・・・あれ?
ど、どしよう・・・ガウリイみてたらどきどきするぞ・・・・

     輝く白い 恋の始まりは
     とてもはるか 遠い未来のこと


「・・・・・・・・・うそ・・・」
わたし・・・ガウリイのこと好きになっちゃったの?!

=====================================

・・・・・・・・・っておい、話全然進んでないぞ(笑)
なんかラブラブモード全開にしちゃうわ、セフィルは暴走しかかってるわ。
おかしい・・・こんなはずでは・・・(滝汗)
今回の歌詞はまたまた有名どころで、ともちゃんの「I BELEVE」です。
最初は「冬の街〜」っていう部分だけを使う予定が、曲を聴きながら書いてたら、こーなっちゃいました。
うーん、どうなるセフィルの恋。
それは先のお楽しみということで。

・・・・・次回こそは話を進めようっと・・・

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12366ラブラブだ〜♪桐生あきや 11/18-07:57
記事番号12364へのコメント


 もう8までアップされてて、うれしいです。
 しかもラブラブ全開だよう(笑)。照れるリナが可愛くて大好きです。
 やっぱりこの娘はゆでダコになるのが基本ですね(^^)。
 何気にちらりと7辺りから伏線が張ってあって、続きがすごく気になります。ゆえさんのお話はとてもしっかり作られてて、すごいなって思うんですよね。
 しかしセフィルはリナの恋敵になるんだろうか……(笑)。冒頭で子供扱いされていたせいで、どうしても二人の被保護者って感覚が抜けないのですが。
 あううう、でもラブラブだよぅ。
 私は最近実はラブラブ書けないことに気がつきました。書いている本人がこともあろうに照れるのです(爆)。読むのは大好きなくせに………。

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12379わははははははゆえ 11/18-23:53
記事番号12366へのコメント


> しかもラブラブ全開だよう(笑)。照れるリナが可愛くて大好きです。
> やっぱりこの娘はゆでダコになるのが基本ですね(^^)。

全開しすぎて、オーバースピードで突っ込みそうです・・・・
リナが照れるのが直ることはないというのが、私の考えでして。
夫婦になって、孫ができてもなんか照れ隠しで吹っ飛ばしそうな気がするんですよ。
そーなるとガウリイにはいつ平穏無事な日々がくるのかな(笑)


> 何気にちらりと7辺りから伏線が張ってあって、続きがすごく気になります。
張りすぎという話も・・・・・・張りすぎて、引っかかってこける可能性大。
なんとか次回からは話を本格的に進めないと・・・とかなり焦ってます。



> しかしセフィルはリナの恋敵になるんだろうか……(笑)。冒頭で子供扱いされていたせいで、どうしても二人の被保護者って感覚が抜けないのですが。

ふふふふ。どうなるんでしょう。
実はちゃーんと裏があまして。そのへんは後のお楽しみというほどでは在りませんが、たぶん予測は近い線いってますよ(笑)


> 私は最近実はラブラブ書けないことに気がつきました。書いている本人がこともあろうに照れるのです(爆)。読むのは大好きなくせに………。

実はここまでのラブラブ書いたの今回が初めてです。
前回のガウリイのセリフ同様、後で読み返すと自分でも赤面しちゃいました。


あきやさんが2で連載されてる小説たのしみにしてます。
私にはあんな風に神話を料理できませーんっっ。
文章もとてもとてもきれいですし。
あきやさんのをお手本に続き、がんばります。

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12385天空歌集 9ゆえ 11/19-02:01
記事番号12313へのコメント

天空歌集 9


あたしはある物を探していた。
ゼフィーリアに帰ったとき、姉ちゃんに言われた。

「リナ、『魔血玉』かそれに変わる増幅器を探しなさい。」

それからガウリイと二人、あちこちを探した。
だけど、それは魔力剣を探すよりももっと大変だった。
なにせ手がかりとなるものがないのだ。
しかし、可能性はどこにでもあるはず―――そう信じて旅をしてきた。


「それでたまたま見つけたのが、この本なんだ。」
セフィルはまじまじと手にした本を眺める。
「見たこともない文字になかなかの作りだったからね。で、蓋を開けてみたら想像以上のものだったって訳よ。」
街道沿いの木陰であぐらをかいて座っているあたしはピコピコと棒を振りながら話す。
ガウリイはというと、すっかり昼寝を決め込んでいる。
「でもさ、どうして『増幅器』の呪符なんているの?リナさんの魔力容量はかなり大きい方だと思うんだけど。」
しごくもっともな意見だ。
「んー・・…今までいろいろと魔族と関わってきたからね。あちらさんとしてもこのままやられっ放しで終わるとも思えないし。
 そうなるとどうしても対抗できる呪文が必要なんだけど・…これにはどうしても『増幅』がないと使えないのよ。」

今、手持ちの呪文で対抗できるものといったら『神滅斬(ラグナ・ブレード)』だろう。
もう一つの方はとても使える代物じゃないし・・・…
あとはガウリイのもつ『妖斬刀(ブラスト・ソード)』と言ったことか。
むろんそれ以外の対抗策も練らなければならないのだろうが、今はこれしか思いつかない。
姉ちゃんもその辺のことを考えてのことだったのだろう。

「ふーん、そんな大層な本なんだ、これ。でもまだ全部は読めてないよ。かなりややこしい文章だし、知らない言葉とか文字もあるんだもん。・・・…けどさ…。」
後半のから声のトーンを下げたセフィルが言いにくそうにあたしをみると、
「・・・…だったらわたしと一緒にいない方がいいんじゃないの?」
ぽそりっと呟くと俯いてしまった。
「なんで?」
「いや、ほら・・・…わたし変な連中に追われてるみたいだし、この前みたいに襲われるかもしれないし・・…」
「なんだ、気がついてたの。あんなのどーってことないわよ。」
ばたばたと手を振って答えるあたし。
「でも、大切な捜し物してる途中なんでしょ?それならわたしなんかに構ってる場合じゃない。文字は調べれば解るし。」

すぱぁぁぁぁぁぁぁん!

あたしは懐から取り出したスリッパでセフィルの頭をどついた。
「な、なにするんですかぁぁぁぁっ!?」
「くだらないこといってっからよ。」
涙目で頭抱えて抗議するセフィルを一別するとあっさりとあたしは言い放った。
「あんたは自分から手伝うっていってきたんでしょーが。だったらあんたのお客さんは、まあオプションみたいなものよ。」
「オプションって・・・…」
「第一それを言うなら、あたしらといる方がよっぽどやぱいわよ。なにせこっちのお客さんはもっとやっかいな魔族なんだし。
 それが嫌だっていうのなら止めないけど。」
あたしのセリフを黙って聞いているセフィル。
「・・・・…魔術を教えてもらう代わりに本の解読を手伝うってのがも最初の約束だったんだし・・…最後まで解読しないと私もすっきりしないし、興味もある。それに・・…逃げるみたいでやだし。オプション付きだけど、つきあいますよ。」
くすっとセフィルが笑った。
この子のこういう割り切りの良さというか、裏表のないところがあたしは気に入っている。
「こっちもあなたを利用するみたいになるけど、いいのね?」
「嫌だっていっても、聞かないでしょ?リナさんなら。」
言うに事欠いてそれかい。
たが、今回はどうしてもセフィルのエルフとしての知識と力の助けが必要なのだ。
それにどうもこの子を一人にしちゃいけない気がする。―――実際ほっとけないし。
「んじゃ話はおしまい。さぁてと行きましょっか。」
うーんとあたしは背伸びをした。
「話はまとまったみたいだな?それで次はどこに行くんだ?」
いつの間に起き出したのか、ガウリイはすでに立ち上がってこちらを見下ろしていた。
「その本の事をもう少し詳しく調べたいし、ちょっと確かめたいこともあるから目的地はセイルーンよ。」
道の先をまっすぐに見つめてあたしも立ち上がった。





道をセイルーンに向けて歩く。
ここからなら明日には到着できるだろう―――――何事もなければ。
さっきから後ろからついてくる気配がある。
「・…リナ、後ろ。」
「ん、気がついてる。何人いるか分かる?」
小声で顔をみないでやりとりする。
「今回は大勢だな、15ってとこだ。」
「そりゃまた大層なお出迎えで。」
すっとガウリイは後ろにいるセフィルの背後にまわる。
彼女もなんとなくこの雰囲気におかしいと思ったらしく、表情が固い。
こっちからから切り出そうかと声をあげようとした時、先に向こうが動いた。

ずざざざざさざっっ!

茂みの奥から黒づくめの奴が数人飛び出してくる。
が、ガウリイはとっくに読んでいて、走り込むと同時にあっと言う間に3人を剣で薙いでいた。
ひゅんっひゅんっ!
銀光の剣先があたしをめがけて閃く。
それをかわしながらあたしは唱えていた呪文を放つ。

「フレア・アロー!!」

虚空に出現した数十本の炎の矢が敵の前に現れ直撃する。
まともに食らった2人が炎に巻かれて倒れた。
あたし達に向かってきた連中の残りは?!
呪文を唱えつつ振り向くと、やはりセフィルの方へ向かって行っている。
ガウリイが素早くフォローに入ってるが、その隙をついて一人が彼女に肉薄した!
まずいっ!あわてて呪文を放つより早く、別の呪文が放たれた。

「轟風弾(ウィンド・ブリット)!!!」
びゅしゅしゅしゅっっっ!!

吹き荒れた風の衝撃波でその男はずたずたに切り裂かれた。
〈炎の矢〉の風バージョンがこの術なのだが、軌跡が見えないので回避はしにくいが殺傷能力はさほどでもないのだが…
それはあっさりと敵を切り裂いた。
威力は〈爆風弾 ブラム・ガッシュ〉なみだぞ。
そしてこの術を放ったのは、言うまでもなくセフィル本人。
この前とは違い、今度はしっかりと敵を見て対処できたが…
あたしは残りの敵を呪文で倒してから、セフィルの横に並ぶとおもいっきし頭を殴った。
「なんで?!」
「ノーコンなのに、んなもんぶっ放したらこっちが危ないっていっとるでしょーがっ!」
「でもちゃんと当たったよ。」
どつかれた頭を抱え、さっきぶち倒した男を指さす。
・・・・…そーいやそーだわ。
「ちゃんと自主トレしてだいぶ直したんだもんっ。」
うるうると潤んだ瞳で抗議する。
うーん、なかなかえらいもんである。
「さぁて、他の奴はいなくなったぜ。そろそろ出てきたらどうだ?」
こっちのやりとりなどお構いなく、ガウリイは剣を構えたまま茂みの方を見据えている。
「まだいるの?」
あたしの問いに頷いて答えるガウリイ。
気配を感じた奴らは全員倒したと思ったが、どうやらまだいるみたいだ。
あたしには分からないが、ガウリイが言うのだから間違いはない。

「ほう・・…私の存在に気がついたか。」

ゆらりっとそいつは前に歩み出た。
剣士風の出で立ちだが、漂う雰囲気はただ者ではないことをかもし出している。
「お前達には用はない。そこのエルフの娘に用がある。」
うつろな眼差しをセフィルに向ける。
「あたしたちが聞くと思って?」
そういって呪文を唱える。
ガウリイもセフィルを隠すように剣を構える。

「・・・…まあいいだろう。小娘、お前が持っている『鍵』を渡せ。さもなくば殺す。」

ざわりっとあたりに殺気がみなぎった。


====================================

おーい歌詞がないぞ。
どうしようかと思ったのですが、なんかいい物がなくって・・・
しかも一番苦手な戦闘シーンで引っ張ってどうする私。
でもやっとキーワードを出すことが出来ました。
『鍵』の存在です。
さてさてどうなることやら。

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12386すごいタイミングでレス返し桐生あきや 11/19-02:09
記事番号12385へのコメント


 こういうアップしてそう時間が経っていないときに巡り会うと、何やら嬉しくなります。ああいま、ゆえさんがネット覗いてるんだ〜と思うと、何だか嬉しいです。
 リナが何を探していたのかわかりました。あ、そうか壊れたタリスマンの代わりを探していたんですね。たしかに最終巻はあそこで終わっていましたけれど、リナたちの旅が終わったわけではないですしね。
 セイルーンってことは………出て来るんですか?(笑)。期待しててもいいですか?(笑)。

 桐生あきや 拝

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12388Re:すごいタイミングでレス返し2ゆえ 11/19-02:23
記事番号12386へのコメント

うわっ、もうレスいただいておどろきました(笑)
しかももう次をだしていたりする・・・ほんとすごいタイミングですね。
運命感じちゃう♪(座布団3枚もってってくれい)


> リナが何を探していたのかわかりました。あ、そうか壊れたタリスマンの代わりを探していたんですね。たしかに最終巻はあそこで終わっていましたけれど、リナたちの旅が終わったわけではないですしね。

話の設定は15巻から半年すぎと踏んでいます。
でも本編だけではちょっと設定が辛いので、TRYの方も混ぜ食ってます。
順番的にはTRY→15巻といったかんじです。
個人的にあれからも旅は続いていてほしいなーと思いまして。
ただ私のだとえらく重いものになっちゃいましたが。

> セイルーンってことは………出て来るんですか?(笑)。期待しててもいいですか?(笑)。

ふふふふふ。期待は裏切らないと思います。
ある歌詞をよんでいたらどうしても彼らを出すことにしまして。
でも、これが初挑戦になるんですよ。うまく書き切れればいいのですが。

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12387天空歌集 10ゆえ 11/19-02:13
記事番号12313へのコメント

連続更新。でも進まない・・・・・あう。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

天空歌集 10


「小娘、『鍵』を渡せ。――――さもなくば殺す。」

その男は不気味な殺気を漂わせながらするりと腰の剣を抜く。
ガウリイは一歩前にでて、あたしはセフィルを背後につかせる。
どうやらセフィルのお客さんらしいが、この前の奴らとは違いすぎる。
じりっとガウリイは間合いを取る。
少しでも動いたらいつでも斬るつもりだ。
「『鍵』っていったわね?それがどうしたのよ。」
あたしは探りを入れるつもりで問いかける。
しかしこの気配、どこかで――――――
「何のことよ『鍵』って。」
あたしが考えていたとき、セフィルは前にでてそいつと真っ向から対峙した。
「わたしは『鍵』なんて知らない。」
ざわりっと気配が動く。
来る―――そう思った瞬間、そいつは無表情のまま後ろに下がった。

「ならば用はない。もとより殺せとの命令だからな。」

ぶっそうな事を言うと、そいつは手を大きく上げて何かを地面に投げつけた。
「おまえ達にはこいつらで十分だろう。」
そう言い残して気配と共に姿もかき消えた。
一体何を投げたんだ?
その地面を見ようとしたとき、そこにいた虫達がぎしぎしと音たて変貌していく。
『―――――――っな!!』
あたしとガウリイは思わず驚愕の声をあげた。
理由はただ一つ、目の前に数十匹のレッサーデーモンが現れたからだ。

ぎゅろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

雄叫びと共に一斉にこちらに向かって炎の矢が飛んできて―――――――それだけだった。

「なんだ?!熱くないぞ!?」
ガウリイが思わず声をあげる。
けどあたしは解っていた。これは後ろで唄っているセフィルが作り出した防御結界なのだ。
ガウリイは駆け出し、勢いざまにレッサーデーモンを切り倒していく。
あたしも加勢するため呪文を唱えるとくいくいっとセフィルがマントを引っ張ってきた。
「リナさんっ!ガウリイをここに戻してからなるだけ大きめの精霊魔法だして!!」
なにをいいだすんだと思ったが、セフィルが言うのだから何か考えがあるのだろう。

「ガウリイ!急いでこっちに戻ってきて!!」
そう叫ぶとあたしは『烈閃牙条(ディスラッシュ)』の呪文を唱える。
同時にセフィルも呪歌を唄い始める。
ガウリイがあたしの横に戻ったのを確認してセフィルに目で合図するとあたしは術を解き放った。


「烈閃牙条(ディスラッシュ)!!」


現れた光の槍は雨の様に降り注ぎ、その場にいた全てのレッサーデーモンを消滅させていった。

あたしとガウリイはただ呆然とその中心に立っていた。

「・・・・・・・・・すげーな。」

ぽつりっと言葉を漏らすとガウリイは剣を鞘にしまった。
まったくとんでも無い話である。
呪文も唱えずにコレだけのレッサーデーモンを召還したあいつもだが、結界を張りつつどうやらセフィルはあたしの呪文を増幅させていたのだ。
あの泉に入ったときも風の結界を強化させていたのか・・・・・・・
でなけりゃ、いくら〈エルメキア・ランス〉の拡大版とはいえ、ここまで広範囲にはならない。
さっきの〈ウィンド・ブリット〉も同様といったところか・・・・・・・
ぺたんっと地面に座り込んだセフィルも少し息が荒いが黙ってこの光景を見ていた。

「大丈夫?」
「・・・・・・うん。でも自分でもここまでとは思わなかった・・・・・・」
どうやら本人も予想以上の威力に驚いているようだ。
「ともかくここを放れましょ。話はその後よ。」
こんな所には長居は無用。セイルーンも目の前だし、このまま一気に入ってしまった方が良さそうだ。
けど、体力を消耗したのかセフィルはよろりっと立ち上がるが元気がない。
見かねたガウリイがひょいっとセフィルを抱えた。
「・・・・・・・・・ありがと。」
「いえいえ。」
そういうセフィルの顔がみょうに赤いのはなんでだ?
そーいや、いつの間にかガウリイのこと呼び捨てになってるし・・・・・・・・おや?・・・・・・・・ま、ぺつにいっか。
「一気にセイルーンまで行くわよ!」
あたしは〈レイ・ウィング〉の呪文を唱えるとガウリイの腕を掴んで飛び上がった。
無論、セフィルは小さく唄っていたので増幅版になっていたが。



そしてあたし達はセイルーンに夜遅くに到着した。


======================================
歌がないよぉぉぉっ(号泣)
ここで言い訳といいますか、フォローです。
セフィルが唄う「呪歌」はリナ達が使う呪文と同じですが、言葉とともに旋律にも魔力があります。
この旋律のことを理解していれば、別に歌詞は何でもよかったりします。リナのブレイクと同じ理屈です。
ただ言葉にも意味がありますから、その辺は考慮しなくちゃいけませんが。(言霊っていいますし)
普通の歌詞の歌もセフィルが「呪歌」として意識して唄えばそれは呪歌として成立すると言うわけです。
ああ、身勝手な設定・・・
本文でフォローするつもりですが、書ききれなかいかもしれないのでここでとりあえず抑えておきます。

次はちゃーんと唄わせようっと。

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12407天空歌集 11ゆえ 11/20-02:02
記事番号12313へのコメント

今回はちょっと長い文です・・・・

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
天空歌集 11


   ―――今 わたしは小さな魚だけれど あなたへと泳いでいく―――



「・・・・・・・・・・・…もしかして当てがあるってここのこと・…?」
城門の前でセフィルは目を丸くしてあたしに確認した。
セイルーン・シティの中心にあるセイルーン王宮前にあたし達は立っていた。
「そーよ。ほら行くわよ。」
なれたもののあたしとガウリイはすたすたと奥へと進む。
セフィルはあわててその後ろを心配そうに追いかけてくる。

「リナさーん!」
通された部屋の奥の廊下からぱたぱたと走って駆け寄ってきた。
「やっほ。お久しぶりアメリア。」
「いよ、元気だったか。」
軽く手をあげて挨拶するあたし達にアメリアは相変わらず人なっこい笑顔で
「お久しぶりです!リナさん!ガウリイさんっ!」
ぺこりっと頭を下げるとがしぃっと両手で握手した。
「もう、なかなか来てくれないから寂しかったんですよ〜・・・…ところでこの女の子は・・…?」
ガウリイの後ろからひょいっとセフィルが顔をのぞかせて当たりをきょろきょろと見渡している。
「・・…まさかっ!?・・・・…ガウリイさんの隠し子とか・・・・…」
セフィルとガウリイを交互に見比べてアメリアはなにか巨大な勘違いをしていた。
「違う違う。この子はハーフエルフのセフィル。いま一緒に旅してんのよ。」
ぱたぱたと手を振って答えるあたし。
けど、アメリアはさらに二人を見比べると、
「冗談ですよ。でも本当によく似てますね雰囲気とか。・・・・・・…って、はあふえるふぅ?!」
部屋中に響きわたるような声を上げ驚くアメリアはまじまじとセフィルを見ていた。
セフィルも困ったような顔をして「どうも・…」とぺこんっとお辞儀をした。
しかし、そんなに似てるかこの二人・・…どっちも金髪だし確かに言われてみれば顔の雰囲気似てるかなぁ・・……そーいやこの前も親子と間違われたっけ。
「リナさん?」
「はいはい、ちゃんと説明するから、お茶とケーキお願いね♪」
指を一本ぴっとたてて軽くウィンクした。



「・・・…はぁ・…なるほどですねぇ・・…」
一通りあたしから説明を聞いたアメリアが腕を組んだまま頷いていた。
「各地の異常気象やレッサーデーモンの異常発生は知ってましたが・・・…そんな理由があったんですね・・…。」
セイルーンでは異常発生したレッサーデーモンを討伐するため、アメリアが陣頭指揮をとっていたらしい。
正義に燃えまくったアメリアが指揮をとるのだから結果は押してしるべし。
おかげでセイルーンの街には大きな被害はなかったそうだ。
「あの・・・…リナさん・・…その・…」
何か言いたげな目をしてアメリアが言いよどむ。
元々やさしい子だから大体言いたいことは想像できた。
「大丈夫よ。気にしてないって言ったら嘘だけど、だからって何時までもそーは言ってらんないでしょ?」
「・・・・…やっぱりリナさんはリナさんですね。」
にこっと笑うアメリアにあたしも返した。
「それと先ほどの話ですけど本当なんですか?セフィルさんの唄に魔力を増幅させる力があるって。」
あたしの話に退屈したガウリイとセフィルは庭にでて鳥をからかって遊んでいる。
数羽の白いハトと戯れているセフィルをみながらアメリアは、
「ハーフエルフにそんな力があるなんて聞いたことないですよ。」
「どうもあの子はちょっと違うみたいね。なんでもあるでしょ、例外や規格外とか常識外のこととか。」
黙ったままなぜかあたしを指さすアメリア・・・…って、をい。
「ア〜メ〜リ〜ア〜」
「りっリナさんぐるじいですぅ〜〜。」
思いっきりあたしに首を締め上げられてくだくだと涙を流すアメリアだった。ったく。




豪華な夕食も終わり、あたし達は今の状況を整理することにした。
「あたし達が探しているのは『呪符』なんだけど、コレはまだ見つからない。んで、今持っているのは古代エルヴァン文字で書かれた本と『ルーンリング』、そしてセフィルが持っている『ルーンオープ』。この中にあいつがいった『鍵』があるのかどうかだけど・・…」
精巧な作りのテーブルの上にずらりと、今言ったものを並べていた。
アメリアはその中からあの本を取り出して、物珍しそうにページをめくっている。
「私も初めて見ました。セフィルさんはこの本、読めるんですよね?」
暖かいココアをもらって両手で抱えるようにして飲んでいたセフィルはこくんと頷いた。
「一応エルフですから。でも完全に読めるって訳でもなくて・・…読めない文字や意味の解らないものもあるから、その前後の言葉から読みとっていくなんて作業してるから、結構時間がかかっちゃって。」
「でもエルフが伝えている魔法道具の事とか書いてあったんですよね?」
「結果的にはそうでしたね。実際に書いてあったのは唄だったけど。他にもいくつか唄もあるし、あと何かの道具の事とか、術の事とかを説明しているような文もありるけど・・…これはまだ読んでないし。」
びくっとアメリアが反応するとページをめくっていた手が止まった。そしてじいっと本を睨むと、
「この本に合成獣の体を元に戻す方法・・…なんて載ってないですよね・・…」
視線を落として呟いた。
「アメリア・・・・…」
「あっ、いえ・・…その・…ゼルガディスさん今もその方法を探して旅してるから、もしかしたらって・・・…」
「ゼルには会っていないのか?」
コーヒーを飲むガウリイが言う。
「あの後セイルーンで別れてからは会っていません・・・・…時々手紙はくれますけど。」
少し寂しげな顔をしてアメリアはほほえんだ。
「じゃあ、ゼルとは連絡はとれるのね?」
「はい・・…とれると思いますけど?」
「んじゃ呼び出して。たぶんゼルもこの話聞きたいでしょーし。」
「はいっ!すぐに手配しますねっ!!」
ばあっと輝くような笑顔をしてアメリアは席を飛び出していった。
なんだかんだいっても・・・・…か。
くすっと笑うとあたしも残りのコーヒーをくいっと飲み干した。


「リナさん、そのゼルガディスさんって?」
話の意味が解らないセフィルはきょとんとして聞いてくる。
「合成獣がどーのこーのって言ってたけど・・…?」
「本人にあえばすぐに解るから。それより、本当に『鍵』の事は知らないのね。」
「うん、知らない。」
きっぱりと言い切る。
「でも『鍵』なんてどこにもないのにな。」
ガウリイがテーブルの上をみてのんきに言う。
一度説明したことがあったはずだが……ガウリイにそれを覚えろと言うのは逆立ちして走りながら寝るより難しいか。
「『鍵』といってもその物じゃないのよ。魔道の応用である一定の物に対してのみ反応して扉なんかを開けるようにできるのよ。
 たとえば、女の人とか宝珠なんかで扉が開く、みたいな感じで『鍵』には何でもできるのよ。」
「なんかどっかで聞いたことがあるよーな・・・…」
「はいはい。それだけ覚えてりゃガウリイにしちゃ上等よ。」
「だとすると別に魔力のあるなしが関係してるわけじゃないんだ。」
と、セフィルがいう。
「そゆこと。あいつらもたぶん『鍵』がどんな物かは知らないんじゃないかと思うのよ。だって具体的にどれっては言わなくてただ『鍵』をよこせとしか言わなかったし。」
「だったらどうしてあいつらはセフィルを襲うんだ?持ってるかもしれないのに。」
おや、ガウリイも気が付いたか。
あいつはセフィルに『鍵』を渡せといって襲ってきた。
ならば彼女がなにかしらの『鍵』の手がかりなのは間違いないのだろう。
だだ、その後問答無用で殺しにかかったのはどうもつじつまが会わないけど。
問題はそれがいったい何の『鍵』なのかだが……セフィルが嘘を付くとは思えない。こちらも知らないだろう。
うーん、解らないことだらけだわ。
「なあ、それって今考えたら解ることなのか?」
「・・・…わかんないわね。」
ガウリイに言われてひょいっと肩をすくめる。
「なら今日はもう休もうぜ。あんな事あった後でセフィルも疲れてるみたいだぞ。」
言われてガウリイの横にいるセフィルを見れば、ふわぁっとあくびをしてかなり眠そうだ。
こーすると見た目通りの6歳の女の子に見えるわ。中身は違うけど。
こしこしと目をこすりこすりしてがんばってはいるけど、そろそろ限界近いみたい。
「そーしますか。」
その場から立ち上がり、あたし達はそれぞれあてがわれた部屋で休むことにした。


******************************


「・・・・・・・・・・・・…んにゃぁ・・・…」
わたしは目をこしこしと擦ると夜中に起き出した。
そっか、ここは王宮の中だっけ・・・・・・・
セイルーンに来るとき空から見たら大きく描かれた六芒星の形なのには驚いた。
だからなのか、妙に魔力が強く感じるというか精霊の力も感じ取りやすい。
おかげですっかり疲れはすっとんでいった。
妙に目が冴えたわたしは興味半分で王宮内を探検してみようと思ってごそごそと起き出した。
だってそーそー王宮なんてもんには入れないし。
しんっと静まり帰った王宮内には、見張りの人と何人かの役人らしき人影しかなかった。
リナさんとガウリイも寝ているのだろう。
ぺたぺたと長い廊下を歩いて、庭の方にでる。
ふと、奥の方から何かを感じてわたしはそちらの方へ行ってみた。
大きな扉から光が漏れているあそこからだ。
わたしはそっと扉を開けて中を覗いてみると・・・・・…

「誰です?!」

広いその空間に女の人の声が響きわたった。
「・・・・・・・…セフィルさん?」
中にいた人はアメリアさんだった。
「・・・…その・…なんとなく目が覚めちゃって・・…」
ぽりぽりと頬をきながら言い訳する。
「そうなんですか。そこは寒いし、中に入りません?」
言われておずおずと中に入る。
そこは高い天井ときれいな装飾された壁、床には六芒星が描かれ、正面には荘厳な造りの祭壇らしき物がある。
「ここは神殿なんですよ。本当は巫女以外は入っちゃ行けないんですけど今夜は特別ですよ。」
そう言っていたずらっぼく笑うアメリアさん。
そーいえばアメリアさんは巫女だっていってたっけ。
「ごっごめんなさいっっ!」
「だから気にしなくていいですよ。神殿といっても形だけですし。」
たしか神聖魔法は千年前に途絶えたとリナさんから聞いた。
「こんな夜更けに何していたんです?」
いくら巫女とはいえ夜中には普通お祈りとかしないだろうけど・・・・
「祈祷というか、お祈りですね・・・・・届くかどうかわからないけど。」
少し頬を赤くしたアメリアさんは遠い目をして祭壇の方を仰ぎ見た。
「ゼルガディスさんの為に?」
ぽんっとアメリアさんが真っ赤になった。
「なんでっ?!・・・・・・・・・・・・・・・・・リナさんですね。」
その通り、あの後リナさんから説明を受けた。詳細過ぎる気もしたけど・・・・
「その人旅してるのですよね?そんなに気になるならどうして一緒に旅しないんです?」
素直に疑問をぶつけた。
困ったような表情をするとアメリアさんは祭壇の前に進み出た。

「そりゃ私もゼルガディスさんと一緒に旅したいですよ・・・・でも私にはセイルーン第2皇女という役目があるから・・・・・
その役目を捨てて一緒に旅するのは、ゼルガディスさんが許してくれないですよ。自分に厳しい人ですから。それに・・・・・」

荒い波を越えてきた 凍えそうな寒い冬も
ひとつひとつこえてゆけば
いつか会えると信じていた

「必ず会いに来るって約束してくれましたから。」

      明日はもっときれいになる
      もっと強くやさしくなる
      音をたてて割れていく 氷が自由な水にかわる

天窓から差し込む月明かりに照らされて微笑むアメリアさんはとてもきれいだと思った。
わたしは一つの歌が浮かんでいた。

      きれいになった わたしをつれて
      会いに行きたい人がいる
      はるかな水の流れをたどり
      いつかあなたに 笑いかける

「・・・・・・強いんですね。」
わたしは思った通りの言葉を呟いた。
「そんなことないですよ。やっぱり会いたいですから。」

      あなたがただそこにいて 生きている そのことで
      わたしは今日も生きていける
      日射しに顔を あげていける

「――――こんな歌があるんですけど・・・・」
わたしはさっき思い出した歌をアメリアさんに歌ってあげた。

      雨降る朝に 風の夜更けに
      わたしはいつも祈っている
      あなたの額に輝く星が
      どんな闇にも かげらぬよう

「いい歌ですね・・・・・・私好きですその歌。」
本当は聞いちゃいけないことだったと反省してお詫びのつもりだったのだけども・・・・・

「セフィルさんの唄に不思議な力があるっていう話、本当ですね・・・・・よかったらもう一曲唄ってもらえませんか?」
わたしは六芒星の中心に立って心込めて唄った。
アメリアさんの心がゼルガディスさんの心に届くようにと祈りを込めて。



今わたしはちいさな魚だけれど
あなたへとおよいでいく


=======================================

あー長かった。やっとアメリア登場です。
というか、この曲のイメージがアメリアだったからという理由も(笑)
谷山浩子さんの「小さな魚」という曲です。
前々から聞いていてどうしてもアメリアが浮かんで来ちゃうんです。
実はアメリアを想像させる曲はもう一つあって、それも谷山さんのなのですが・・・・・
以前書いた「いろいろないろ」に絡むような曲で・・・・
こちらで出せなかったら別にかこうかなぁ・・・・
さて次回にはゼルの登場で、私にゼルアメがかけるかかなーり不安ですが・・・・
暖かい目でみてやってください。



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12427天空歌集 12ゆえ 11/22-03:25
記事番号12313へのコメント

天空歌集  12


     ――――― 自由がまだつかめない 夢と罪を抱いて ――――


違う、何かがいつもと違う。

これはわたしが最近『呪歌』を紡ぐ度に漠然と感じること。
だからといって何がどう違うのかなんてのはまったくわからない。
でも、違う――――何かが。

ダメダメ、今はこっちに意識を集中させないと、集まった魔力に引きずらちゃう。

後ろの方にはリナさんとガウリイ、アメリアさん、ここの王子様(冗談だとおもった)のフィルさんが固唾をのんでこっちを見てた。
うーん・・・・あんまり人前ではやらないから、ちょっと緊張するなぁ・・・・しかも場所が場所だし。
ここはセイルーンの中心にある神殿、床の六芒星に流れ込む力に圧倒されそうになる。
リナさんの言うとおり、ここなら出来るかもしれない。
ルーンオーブを取り出し、深呼吸するとわたしは唄を紡ぎ始めた。

   Ma ha shutai e Tuby e Tuby e Tu shutei A no en Tuby
    A sai do mi no steikun Halish di zi e
     A di shuta dia La dia Zhan who

    “地には緑 空に花の香 海を魚で満たす者。 
         誰よりも、尊いと想う、あなたを。 
            私を、柔らかな光で満たして下さい”


「・・・・・・たしかそう言う意味だったと思います・・・・・・・」
後ろでアメリアさんの囁く声。
「この地に宿る数多の精霊に捧げる唄、か・・・・・・・・・」
リナさんの声もする。
「わかるのは最初だけです。後の方は私もわかりません。」
「なんとも不思議よのう。」
そう呟いたのはフィルさんなのかどうか、わたしにはよくわからない。

天窓から真っ直ぐに差し込む日射しを、六芒星とルーンオーブに集まる魔力の輝きが押し戻す。

―――――― トキハナテ
 えっ・・・・・・・・・・?
―――――― トキハナテ フエヲフクモノ ジユウヲウタウオトメタチヲ

突然頭に響いてきたその声といいようもない違和感に、気が付くとわたしは途中で唄を止めていた。


「それでいきなり唄が止まったのね。」
リナさんの言葉にわたしは頷いた。
「天候の方もだめでしたね・・・・」
アメリアさんが残念そうに呟いた。
「セイルーンの巨大な六芒星の力と、セフィルの『呪歌』、ルーンオーブの魔力を会わせれば、今の異常気象を多少なりでも戻せるって思ったんだけど・・・・そんなに簡単には行かないか。」
ぽりぽりと頭をかきながらリナさんはうーんと呻っている。
さっきわたしが唄を紡いでいたのはそう言う理由から。
「でもね・・・・・・・あの時の違和感は西の方に強く感じたの。聞こえた声も関係してるんじゃないのかなぁ・・・・・・って。」
わたしがいうとアメリアさんは腕を組んでなにやら考えながら呟いていた。
「西の方角・・・・・・・西といったらたしか・・・・・・・グリムスラーデという街がありますね。」
「なんかあるのその街?」
「――――唐突な干ばつに襲われてる街だ。」
アメリアさんの言葉にリナさんが尋ねると、答えは後ろのドアの方から聞こえた。

『『『ゼルガディス(さん)!!!』』』

アイスブルーの瞳をしたこの人が、あのゼルガディスさんだと一目でわかった。

「んで、どういうことなのゼル?」
ゼルガディスさんが席に付くなりリナさんが先を促す。
横にいるアメリアさんは黙ったままだけど、表情はすごくうれしそう・・・・・・・ずーっと彼を見てる。
ちらっとアメリアさんを横目でみるとゼルガディスさんはここに来るまでに見たきた状況を説明した。
「通り道沿いだったんだが、ここ数日雨が降らないと言っていたが、にしては乾燥が進むのが速すぎる。俺がいた時には井戸という井戸が枯れ果てていたからな。」
「その報告は私も聞いています。今では飲み水にも困るそうです。」
アメリアさんが一転して真剣な表情で話した。―――やっばり王女さまなんだな。
「妙な話ね・・・・・・・・セフィルはどう思う?」
リナさんが聞く理由はわかるけど、こればっかしはどうしようもない。
「わかんない。」
きっぱりと正直に答えた。
その場の全員がうーんと考え込んでいると今まで黙っていたガウリイが、
「なあ、ここで考えるより、その場所に言ってみた方がはやくないか?」
というセルフに一同、ぽんっと手を置くと口々に「珍しいこともあるもんだ」と言われていた。
・・・・・・・・・・ガウリイって・・・・・・・(汗)






それからわたしたち5人はセイルーンの西にあるグリムスラーデに向かっていた。
先頭はアメリアさんとゼル。
「ゼルガディスさん」って言いにくいから、ゼルさんって呼ばせてって言ったら、
「・・・・・・・・・・・ゼルでいい。」とご本人から許可が出たからそう呼ばせてもらってる。
横のアメリアさんはあの歌の魚の様に、輝くような笑顔とうれしさでぴょんぴょん跳ねてるみたい。

「アメリア。」
「はい、何ですかゼルガディスさん。」
顔を横に向けてゼルがアメリアさんに何か言ってる。
「・・・・・・・・・お前、何か歌っていたか・・・・・・?」
と、アメリアさんが驚いたような顔をしてその場に立ち止まると、今度はまるで花が咲くような笑顔と涙。
「・・・・・・・・・ちゃんと届いていたんですね・・・」
泣き笑いのアメリアさんにゼルは少し驚いた様子で、ガウリイがリナさんにするみたいに頭をくしゃっと撫でて、
「泣くな。」
と一言いうと、アメリアさんの耳元になにか囁いていた。
  (−−−−きれいになったな)
ぼんっと真っ赤になるアメリアさんを置いてゼルはすたすたと先に歩き出す。
わたしが気になって顔をのぞき込むと、にっこり笑ってVサインを出してくれた。
・・・・・・・そっか、届いてたんだ。よかったね、アメリアさん。



グリムスラーデの街は本当に乾ききっていた。
そしてやはり感じる――――違和感。
ふと、わたしの横にいたガウリイが空を見上げるとぽつりっと、
「・・・・・・・・・・変だな、ここ。」
「変だからきたんでしょーがっ!」
「いや、そんなんじゃないんだ。ただ何となくなんだか・・・・・・こう・・・・・足りないっていうか、違和感っていうか・・・とにかく変なんだ。」
「訳わかんないけど、セフィルも似たようなこと言ってたわね・・・・・・相変わらず妙なカンは鋭いわね、ガウリイ。」
「そりゃどうも。」
ガウリイはリナさんの頭をぐしゃぐしゃっとかき回す。
そんなガウリイにリナさんは文句いってるけど・・・・・・・顔はそういってない。
でも、なんだか見たくなくて、ガウリイの腕をくいっと引っ張って、
「ねぇ、あっちみにいこーよ。」
と街の中心の方へ駆け出した。
・・・・・・・・・・こってやっぱ「ヤキモチ」だよね・・・・・・・・・はぁ


「あんまり人いないのね・・・・」
人影もまばらで静まり返った街には乾いた土と枯れ果てた井戸が転がっていた。
「こっちにも水はないな。」
かつては水が溢れていただろう噴水の前で、分かれて街の様子を確認してきたみんなが戻ってきた。
「こっちもよ。小川まで干上がってる。ここまで徹底して水がないとかえってさっぱりするわね。」
かるく言うリナさんにアメリアさんがぎろりっとにらみつけると、
「そんな事ありませんっ!人々が日々暮らすこの地に生命の根元たる水が忽然と消えるなんて、これは絶対悪の仕業です!!!」
だむっと噴水の縁に足を乗せて、燃え上がる炎をバックに拳をあげるアメリアさん・・・・・・・・・こ、これが例の「正義の心」ってやつか・・・・・・・・
ちなみに街の住人の大半は水をもとめて近くの街や村に非難しているそうだ。
「ということは、この干ばつはこの街周辺だけなのか。」
「そうです!こんな小さな街を覆う闇の力!!悪の存在なくして起こり得ないこと!!!私、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンと
 仲良し4人組+1の力でこの危機を救って見せましょう!!!」
いつのまに登ったのか、噴水の一番てっぺんで浪々と口上を言うアメリアさん。
「おーいアメリア戻ってこーい。」
「だめよ、あの子久々なんで完全に暴走してるわ・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・仲良し4人組はやめろ、仲良しは。」
のほほーんと呼びかけるガウリイに説得は無理と傍観を決め込んだリナさんと、妙なところに突っ込み入れながらこめかみを抑えてるゼル。
・・・・・・・・・・・・・何なんだかこの人たちは・・・・・・・+1って私のことかなぁ・・・・・・・・
そんな周りにはお構いなしでアメリアさんの暴走・・・正義の口上は続く。

「さあっ!!姿を現しなさい!この地から水を奪いし悪党どもよっっ!!!」

その言葉に触発されたのか、突然どぉんと炎の固まりがこちらに飛んできた。

「う゛わあ゛い゛お゛う゛わあ゛っっ?!」
あわててバランスを崩したアメリアさんをゼルが飛び上がりざまに抱えて、後ろに大きく下がる。
リナさんとわたしを抱えたガウリイも横っ飛びでその場を離れて事なきをえる。
「レッサーデーモン?!」
リナさんが炎が飛んできた方向に視線を送れば、建物の影からのそりとその姿を現した。
突然の展開に始めはとまどったが、ガウリイ達は既にあちこちから出でくるレッサーデーモン達を凪払っている。

「プラム・ブレイザー!!」
「アストラル・ヴァイン!!」
「エルメキア・ランス!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

リナさん達の呪文や、ガウリイの剣で数は減っているが簡単に一掃することができない。
わたしも攻撃呪文を唱えて応戦するけど、この前みたいにリナさんと広範囲に及ぼす術は使えない。
なぜなら、この襲撃に驚き、逃げまどう残った街の人々がいるからだ。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「たっ助けてくれっっ!!」
「う゛わぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

あちこちで悲鳴があがる。
他のみんなも街の人のフォローをしたり、逃げまどう人垣をさけながらの攻撃だからなかなか波に乗らない。
なによりも一番やっかいなのは・・・・・・・・乾燥しきった街に火の手があがったことだった。
この火事が逃げる人達にさらにパニックを引き起こす。

「だぁぁぁぁぁぁぁっっ!!もうキリがないっっ!!」

一向に進展しない戦況にリナさんがじれて言葉を吐く。
それでも徐々にだが、敵の数は減っていっていた。

「フェルザレードっっ!!」

なんとかこの状況から抜け出さないと・・・・
呪文を解き放ちながら、わたしはあせっていた。
ごうぅんっとわたしに向かって一匹が炎の矢を放った瞬間、

「はあっ!」

銀光を閃かせガウリイが炎を一刀で切り捨てた。
「セフィル!!お前さんの唄でどうにかならんかっっ!」
わたしをフォローする様に前にでたガウリイが叫ぶ。

「簡単なのはやってる!!でも答えないのよっっ!!」

口ずさむ程度の簡単な唄はさっきから紡いでいた。普段ならこれで狭い範囲に小雨程度の雨が降るはずなのに・・・・・・・・
何かが違っていた。そう・・・・・・・この違和感だ。・・・・・・・・・なんだかこれは−−−−

「バランスが悪い・・・・・・・・?」

そんな考えが浮かんだが、今の状況が許してくれない。

「あっちの方ならだいぶ落ち着いてる!!お前さんだけでも行ってこの火事なんとかしてくれ!!」
言われてガウリイの視線の方へとわたしは駆け出した。



中心からすこし放れた広場には敵はいないらしく、逃げてきた人たちが身を寄せ合って震えていた。
怪我をしている人も何人も見えたが、今は火事を消す方が最優先。
わたしは広場の隅に行くとルーンオーブを取り出し、『呪歌』を紡いだ。

なるだけ強く、激しい力で。

無限の形を持ち、空から来たりてまた空へと還るもの、育むものよ―――お願い答えて!

高く、低く、声の限りわたしは唄を紡いでいった。そして、

「――――――来る。」

確証に近い呟きと共に、わたしは炎の煙に覆い尽くされそうな空を仰ぎみる。
これで、少しは状況もよくなるかな。
顔を空に向けたまま、ただひたすらにその瞬間を待っていると、怯えて恐怖でかすれた声は正面から投げかけられた。


「・・・・・・・お前は・・・・・・・・・・あの時のハーフエルフの娘!!!」


―――その言葉に、わたしの中で闇が広がっていった。



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はいっ、やっとゼルガディスの登場です。
うーん、ゼルアメ、こんな風でいいでしょーかあきやさん(笑)
まだまだ修行がたりません・・・・・
今回はセフィルの1人称です。書いてわかった、これが一番楽じゃないか(笑)。
まあ、一応この話の主人公的な彼女ですからねぇ・・・・・
「呪歌」も歌うから(紡ぐ)に変わっていて、ああ一貫性がない。でもこっちの方がしっくりきたものですから。あと「歌」と「呪歌」の「唄」をわける意味もあります。

さて、今回「呪歌」として出しましたのは、マクロスプラスの中の曲です。
ドイツ語みたいなのですが、これも前々から呪文みたいだなーと思っていたので是非つかいたかってんですよ。
あともう一曲ありますが、これは次回に引き続きます。ので、紹介は「13」にて。

しかし、どこまで長くなるか本人にも読めなくなりつつあります・・・って、をい。