◆−海王のアフタヌーンティー−召喚士(11/14-23:46)No.12328
 ┗はじめまして−一坪(11/19-06:43)No.12393
  ┗Re:はじめまして−召喚士(11/22-21:02)NEWNo.12435


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12328海王のアフタヌーンティー召喚士 E-mail 11/14-23:46


1、まいごなゼロス


コツコツコツコツ……

白い大理石をモザイク形に嵌め込んだ床を、樫の靴が澄んだ乾いた音をリズミカルに繰り返す。白く延びる廊下は、水晶の燭台から煌煌と発せられる魔力の灯りに照らされ、清流にも似た心地よい乱反射をする。

「一体海王様はどこに居られるのでしょう?」

いい加減歩くのにもウンザリしてきたしがないパシリ魔族、ゼロスがポツリと(あくまでも敬語で)呟いた。本人としては只のおつかいのつもりだったのだが、とんでもない事になってしまった。獣王様はこの初めて来たお屋敷の構造の一切はお触れに為られなかったし、お伺いする事も無いと自分で決め付けてしまった性だ。ゼロスは一人、悩んでいた。

この海王の住まう屋敷、「魔涼館」は魔海の真ん中に建てられている。獣王様からの言伝を命じられたゼロスは、この摩訶不思議な鏡面世界に脚を運んだのだった。

まず本邸に着く前に、海王が直々に手入れしているという庭が目に入る。果樹園、様々な魚が放ってある鑑賞池、地下から汲み上げられた噴水、とある街に立ち寄った時に見つけ、実際創ってみた温室。まるで海王の清らかな心を写し出したように、洗礼された空間が広がっている。

さらに本邸には巨大採光輪(ネオンの事)煌く広間に、大理石、アラバスターを基調とした白塗りの回廊があり、周りには珍品好きな海王の趣味の世界が広がっている。異世界の絵画から植物、珍魚が入った水晶ケース、絶滅危惧種指定の珍獣の剥製(魔族らしい)など、目を見張る物ばかりが羅列している。

こんな色々とステキなお屋敷なのに、中の構造は虚構の迷路と化していた。ゼロス級の魔族なら、たとえ精神世界的な道であっても、ものの20分でゴールインできるはずだが、今回の館は勝手が違った。なぜか精神世界面に身を置いた自分の「本体」の力を奮えないのだ。

「困りましたね……」
「何がお困りでしょう?」

唐突に
壁に手をついたゼロスの肩から、よく聞き覚えの有る声が降ってきた。子供のようなあどけなさと、膨大な知識を有り合わせる不思議な女性の声。振り返らず、ゼロスは背後の人物を呼び当てた。遠い昔の戦友である。

「……1000年ぶりですか?海神官レイルさん。」
「1012年ぶりですわ、獣神官ゼロスくん。」

振り返るとやはり1012年前と変わらぬ顔がそこにあった。ゼロスの事を『くん』付けで呼ぶ魔族は、彼女でしかいない。
海王と似た蒼い長髪を、ストレートに肩まで垂らしている。大きな瞳と小さな唇、整った眉の童顔で、白を基調と成った神官服が、神官としての清楚感 (ゼロスには皆無) を漂わせている。海王が最初に作った配下で、力の程は神官の中でも上位に当たる。降魔戦争の折、その力でエルフ族の攻撃を尽く無に帰した魔族のである。趣味は『海王様のドレス創作』らしい。ゼロスはとりあえず、笑顔を作り、

「いやぁ、お久しぶりですねぇ。」

魔族には不適切な肯定をする。しかしこれは人間界で培ってきたゼロスのマナーの一つであった。

「はい、あの時は忙しくてゆっくり自己紹介も出来なかったもの。」
「つかぬ事をお伺いしますが、海王様は何処に居られるのですか?」
「本宮に居られますけど……どうしてここに?海王様に御用事があるのでしょう?」

レイルが首をかしげる。確かに、変である。こう言った言伝や出張、または上司への調書を届ける時など、ちょっとした用事でもすぐ空間を移動するのが、魔族の基本、というより常識である。それなのに何故かゼロスは歩いてここにいる。こんな面倒な事をするのは中間管理職魔族の四人だけである(L様の処罰により)。しかも、ゼロス自身この不可解な現象が理解できないでいたりする。

「いやそれがですね………」

ゼロスが事の事態と言伝の内容を簡易に話した。このわけの分からない空間が持続している以上、この空間に慣れている(と思われる)レイルにつなぎを訪ってもらった方がよいだろう。しかしゼロス、頼まれた言伝をそうポンポン言っていいのか?と思うが、そこら辺はサラリー魔族の拙さと言う所か。

「わかりました。海王様に『道』を開けてもらいましょう。この空間の中では、いくら貴方ほどの者でも辿り着く事は出来ないでしょう。」
「けれどもこの空間は一体?」

レイルが承諾すると同時に、即座にゼロスは尋ねた。

「これも海王様のコレクションの一つ、異世界の魔導機『ディレル』を使用しているの。海王様と同等の力、またはそれをも凌ぐ御方。あとわたし達のような海王様の身の回りをお手伝いする者のみ、この空間の干渉を受けません」
「いやはや、海王様も乙な趣味をお持ちになられますねぇはっはっはっは」

レイルは海王の趣味も理解があるのでこの空間は好ましかった。理解したゼロスはとりあえず笑っておく。実際、どうリアクションすればいいのかも分からなかった。

「ちょっとお待ちになっててくださいね」

ヴン……

レイルの辺りが一瞬ブレると、もうそこには影も形もなかった。

(しかし、海王様は一体何をお考えになっているのやら。)

レイルが去ったあと、ゼロスは一人、考え込んだ。ゼロスの疑問は他でもない、今回の言伝の内容と海王様の態度である。
実は今回は獣王様が「あたしの屋敷で飲み会だ。ダルフィンも誘ってきなさい」との事だった。獣王様の事なので、絶対『OK』を貰わなくてはならないのだろう(ゼロスにとっては命に係わる問題らしい)。
それに対してこの海王様のロコツな態度は一体?これでは獣王様の誘いから逃げているとしか思えない。
しかし実際、Sがカニ鍋にされ(史実)、追悼会で自棄酒を起こしたのは海王だったが、一向に酔わなくて倒れるまで飲んだらしい。ということは、お酒には強いはずだが……。

ゼロスが一人の世界に入っていると、突如、大気が奮える。ゼロスはふと我に帰り様子を探る。

「ゼロス君、もう大丈夫、海王様がお呼びだわ。」
「どうもすいません」

レイルの音声だけが届く。何も無い空間へ会釈し、ゼロスは笑顔を張りつかせて、空間を渡る。

ヴン……
 
「!」
これは……空間が曲げられ……!?

どさっ!

「ここは!?」

いきなり空間から突き落とされたゼロスはあわてて辺りを見廻す。ゼロスが空間を渡ったその先は海王様の部屋ではなく、じめついた檻の中であった。

カツカツカツカツカツ・・……

檻のむこうからヒールの音が近づいたきた。実にこの場には不似合いな音であった。

カツカツカツカツカツ……カッ

足音はゼロスの目の前で止まり、こちらを向く。

「……海王様?」
「おーっほっほっほっほっほ」

謎の女性の高らかな笑い声が、地下室に響き渡っていた……。
つづく

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12393はじめまして一坪 E-mail 11/19-06:43
記事番号12328へのコメント

はじめまして……ですよね?
もし違ったらすみません。


海神官のレイルさん、いいキャラですねー。
気に入っちゃいました。


>「おーっほっほっほっほっほ」
>謎の女性の高らかな笑い声が、地下室に響き渡っていた……。
ひょっとして!? Σ(っ゜ )


では、続き楽しみにしています。(⌒▽⌒)/

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12435Re:はじめまして召喚士 E-mail 11/22-21:02
記事番号12393へのコメント

すいませんおはつです、召喚士です(冷汗)
初めてなんでべったべたな設定で描いてみました(泣)
第2部は一体いつ始まるのやら・・・・・・

これからも末永く見守っててください…