◆−I long for your love(後編の11)−あごん(11/22-19:39)No.12431
12431 | I long for your love(後編の11) | あごん E-mail | 11/22-19:39 |
あたしはひとまず頭の中でうずまいていた思考を止めることにした。 ハワードさんを振り返り口を開く。 「ええっと。実は中庭でガウリイが妙なモノを見つけまして」 「妙なモノ、ですかな?」 ハワードさんが口の中で呟く。 「ガウリイ、話して」 あたしはガウリイの方を向きもせずそう言った。 「おう」 軽く頷いてハワードさんと向かい合う。 「さっきなんですが、二階の廊下・・ええっと、俺の部屋の前のですが」 南の廊下か、とハワードさんが小声で言う。 確認というよりも相づちに近い。 「階段に一番近い窓、そこから中庭を何気なく見たんです」 そこであたしは懐から手紙を出した。 「んで、中庭の植え込みの辺り・・・納屋の横くらいかな。コレを見つけたんです」 がさりと音を立てつつ手紙を開く。 全員・・・といってもディーンとジョイス。それにハワードさんの三人だけなのだが・・・の息を呑む気配が部屋に満ちた。 「これは・・・」 呻くようなハワードさんの声。 「なっ・・どうゆう・・っ!?」 低く響くディーンの声に、小さな戸惑いを感じたのは思い過ごしだろうか? 「・・・・・っ」 そして絶句するジョイス。 三者三様の反応にあたしは小さく頭を振る。 「ところで」 あたしの声に三人はびくりと顔を上げる。 「ディーン、それにジョイス。あなた達は先の手紙の事は知っていたの?」 「・・・昨日、親父に聞いたが?」 言ってジョイスに目を遣る。 「お前は・・・?」 「あ・・私は・・・、先の手紙なんて知らなかった・・・わ」 その形の良い唇が震えている。 「そう。じゃあ、ジョイスの為にも説明しとくわ」 あたしそう言って、彼女の真正面に立った。 「昨夕、テリーからの物とおぼしい手紙が発見されたわ」 「・・・夕方、ですか・・・」 ほう。 そういう反応を示すか。 「そうよ。内容はというと、犯行を認めた上での逃走を示唆するモノだったわ」 「・・・認めた・・・?」 ジョイスが眉をひそめながら繰り返す。 「これは、どういう意味なんでしょうかな、リナさん」 渋面を作ったハワードさんが、やや狼狽気味に煙草に火を点ける。 「そうですね。考えられるのは」 「犯人達の小細工でしょうか?」 何かに急かされるかのように、ハワードさんがあたしの発言を遮った。 「小細工?」 ガウリイがあたしに聞く。 なんであたしに聞くかな、この男は。 言ったのはハワードさんだっつーの。 「つまり、あたし達を混乱させようとしてるんじゃあないかって事」 「なるほど」 うんうんと大きく頷くガウリイ。 ホントにわかってんのかなー、このじゃがバター頭は。 「あたしは、違う可能性について考えてましたけど」 「違う?」 「ええ。ひょっとしたら犯人達の連携ミスではないかと」 「連携・・ミス・・・?」 どうやら考える事を半ば放棄したのか、ハワードさんはあたしの言葉をオウム返すだけだった。 「思い付くだけのあらゆる状況を考えましたが、どれも理に適いませんでした。どれをどう取っても矛盾します」 「ふむ・・・」 ここであたしはぴっと指を立てた。 「発想の転換。手紙が矛盾しているんじゃあない」 あたしはゆっくりとディーンとジョイスを見据える。 「犯人達が矛盾しているんじゃあないかってね」 「・・・!!」 「・・・!?」 大きく目を見開く恋人達。 ふっ。まだまだ甘い。 目の端でハワードさんの様子を伺う。 静かな表情だった。 いや、静か過ぎるほどだ。 「しかしなー、なんで複数犯なんてわかるんだ?」 場違いなほどのほほーんと聞いてくるガウリイ。 「あぁ、説明してなかったわね」 しかし、この漬け込み過ぎたフレンチトーストの脳味噌を持つガウリイに、二度目の事件を思い出せるのだろうか。 「二度目の事件、覚えてる?」 「いや、全然」 ・・・・キッパリと即答すんな、お前は。 「だからっ!ジョイスとディーンが交代で見張りをしてた時に、煙が見えたもんだからってノコノコ見に行ってる間に、ティーク鶏が盗まれてたってオチの事件よ!!」 「リナさん、本人達を目の前に、ノコノコとかオチとかはどーかと」 ハワードさんが困り顔でやんわりとツッコむ。 う。そーいやそーだった。 「まーまー。他意はないんですから」 「つまりアレか。陽動作戦ってことか?」 ををっ!? 「進歩したじゃない!ガウリイ!話の流れも読めるようになったのね!」 進歩どころか進化したと言っても過言ではない!! 「まーそゆこと。陽動だとしたら複数いるでしょーが」 「なるほど」 「さて、ここから導き出される推論はと・・・」 そこで一旦言葉を区切り、ちらりとディーン達を見る。 「残念ながら、ここからは二人には出てってもらうわ」 「なっ!」 抗議の声を上げようとしたディーンを、ハワードさんが諌める。 「ディーン!」 静かだが、力のある口調である。 どーやら不満たらたらのようではあるが、渋々と二人は部屋を後にした。 扉の外には何の気配も感じられない。 うむうむ、よろしい。 盗み聞きするという野蛮な行為はしないようだ。 「さてと。どこからでしたっけ?」 「犯人の連携ミス・・・矛盾した手紙から導き出される推論・・・という処ですよ」 おお。そうだった。 「てっとり早く言いましょう」 こくりとハワードさんの首が縦に一度動く。 「テリュース・ハワードの生存率はかなり高いはずです」 うはぁぁぁっ!! 終わりませんなぁ。 おかしいですよ、これは。 こんなに引っ張るつもりではなかったのですが。 まあ、後五回くらいで終われたらなぁ、とは思っていますが。 それもどーなるやら。 そもそもこれ自体が全三回予定でしたから(爆)。 |