◆−金と銀の女神6−神無月遊芽(11/25-18:05)No.12470
 ┣Re:はじめまして−星月夜 葛葉(11/25-20:15)No.12473
 ┃┗Re:はじめまして−神無月遊芽(11/28-18:47)No.12487
 ┗金と銀の女神7−神無月遊芽(12/2-16:24)NEWNo.12517


トップに戻る
12470金と銀の女神6神無月遊芽 E-mail URL11/25-18:05


 …ちょっとショック(理由はうちのHPの日記にて)。
 もうこれ投稿して晩御飯食べて寝ようかな。ふう。

****************************************
            金と銀の女神
          〜世界が始まるとき〜


   6章 生じる疑惑

 silver 失なわれたモノ
    それは誰かの意思によってなのか
    それとも自分から捨てたのモノなのか

 そこは、幻想的なところだった。
 どこかの森なのだろうか、一面に緑が広がっていて、空気は異常なほどに澄んでいる。
そして湧き上がるような魔力の流れと、圧倒的な精霊の力を感じた。
「ここは…精霊界……なのか……?」
「ええ……きっとそうだわ……」
ここにいると、自分の力が澄んでいくのを感じる。
 精霊の力で満ち溢れているのを肌で感じる。
「精霊界…って…確か異空間も同然なんだろ?どうしてそんなところに来れたんだ……?」
クロスが疑問を口にする。
 確かにそうだ。普段精霊は精霊界と呼ばれる、人の世とは異なる空間に存在している。
精霊はあまり人の世には来ず、精霊から姿を現したり、精霊使いが精霊を呼んだ時にやっとその存在が確認できるのだ。
だが人のほうから精霊界に行くなんて聞いたことがない。
「きっと…ルシェルが道を作ったんだ。精霊界への道を…」
おそらくだが、ルシェルはもう天界にも魔界にも、そして人の世界にもいられない。
全てから忌み嫌われ、全てから追われる運命にある。
 だが精霊界は別だ。
精霊は天使側にも魔族側にもつかない中立の立場にある。
ここなら…嫌われることこそあれ、生きていけるだろう。
「……それよりアリアはどこに……?」
その時、どこからか話し声が聞こえてきた。
『あな………たし…おな……のをかんじ……』
聞き覚えのある声だ。
 まるで天使の詠唱(アリア)のような、美しい声。
「アリ…ア……?」
だがその声は必死の様子で、感情がかなり高ぶっている様子だ。
 そしてゆっくりと、その声に向かって近づいていく。
『おしえ…わ………だ…なの?……たなら……かるはず…わ』
すると今度はルシェルの声。
『あな…がなにで………とわたし…はかんけ…ない……』
  かさっ…
「!?セリオス…!」
あと数歩というところで、ようやくアリアがセリオスの存在に気付いた。
 そのつもりは無かったのだが、知らないうちに足音を忍ばせていたらしい。かなり驚いている様子だ。
そしてルシェルもそれに気付き、溜息混じりに言った。
「やっぱり来てしまったのね…解ってはいたけど……」
ルシェルが振り向き、ちょうど向かい合うかたちになる。
 セリオスが驚いたように口を噤んだ。
 改めて見ると、ルシェルはまだ15、6歳くらいにしか見えない少女だった。
 肩までもない黄金の髪が風になびく。
瞳はまるでアメジストのような紫色の瞳をしていて、額にある目は白銀の輝きを放っていた。
 翼は、右側がはえきれていない黒い翼と、左がはえきった天使と堕天使の色の翼で、見ていて痛々しいくらいだ。
 そして目立つのが、手と足を拘束している銀色に輝く鎖。
 こうしてみているとふと思う。
これが、本当に堕天使なのかと。
こんなに美しくて、悲しい存在が、本当に忌むべき存在なのかと。
 だが今は、そんなことを考えている時ではない。
「いきなり行ってしまわないで下さい」
その言葉を聞いて、呆れたように言い放つルシェル。
「言ったでしょう?助けてくれたことには感謝するわ。
 でも、これ以上私といる理由はないはずよ」
「そんな問題じゃないわ!」
サリラが叫んだ。
 これは皆予想外だったようで、瞳を大きく開き、サリラを見つめる。
「一緒にいる理由がないから”さよなら”なんて、そんなこと出来るわけない。
 貴方を守ってあげたい、そんな気持ちじゃ貴方とは一緒にいられないの?
 そんなの理由にもならないかもしれないけど、私達はエルスさんからも貴方のことを頼まれたわ。
 それだけでも充分、貴方と一緒にいる資格はあると思う!」

ふと、昔を思い出した。
 父さんと母さんが死んだ時に、ずっと傍にいてくれたサリラ。
そして僕やレイラが泣きそうになってしまったら、優しく笑ってくれた。
 サリラはいつもそうだ。
 自分がお姉さんのような立場にあることを自分でも解っているからか、それとも両親と死に別れてしまったからか、自分の好きな人を必死で守ろうとする。
僕やレイラにもそうだった。
 泣きそうなくらい悲しい時、いつもサリラが傍にいてくれていた。
 だから、もう泣かないって、頑張るんだって気持ちになれた。
 サリラは、僕にとって本当のお姉さんのような人なのだ。

 ルシェルもこの言葉には少し…というかかなり動揺したようで、かたまったように動かない。
 そして諦めと、嬉しさの混じる言葉。
「……勝手になさい…」
途端、皆の表情が明るくなる。
 サリラがすっと、ルシェルに手を差し伸べた。
「私はサリラよ。よろしくね、ルシェル」
ルシェルは、戸惑っているのか、困ったような顔でサリラの手を見つめている。
「………これは、何?」
「握手よ。仲良しになりましょうっていう意味」
にっこりと笑うサリラの笑みを見て、また、戸惑う。
 これほど優しい人に会えたのは本当に久しぶりだった。だから、まだ信じられないでいる。
「………」
そしてためらいがちに、自分の手を伸ばした。
 その手を、サリラがしっかりと握り締める。
「貴方は一人じゃないわ」
微笑みながらそう言うサリラの表情は、とても眩しく見えた。
「………あり…と…」
ルシェルはただ、すがるようにサリラの手を握り締めていた。
 セリオス達も、サリラをからかうように、だが嬉しそうに話し掛けている。
 ただ、アリアだけが、厳しい瞳でルシェルを見つめていた。
 その時、クロスが思い出したようにルシェルに話し掛けた。
「……そうだ。ルシェル…だっけ?あの、エルスって奴はお前の何なんだ?」
「エルスは、私の教育係よ。私はエルスについて育ったし、堕天使になったのもほとんど同時期だったから、いつも一緒だったわ。
 あなた達の言う、親のようなものよ」
「へえ……」
クロスが感心したように相槌をうった。
「……本当に、エルスにはよくしてもらったわ。もう二度と、会えないけれど」
セリオス達が黙り込んだ。
 自分の親のような人が、自分を守って死にに行った。
そして、それを充分に理解している。
 それが、一番悲しかった。せめて知らないままでいられれば、少しは幸福だっただろうに。
「……まあ、もう関係ないわね……。貴方達、もう帰りなさい。
 ここは時間の流れが違うから、速く帰らないと何十年と経ってしまうわよ」
ルシェルの言葉に、皆が悲鳴にも似た叫びをあげた。
「「ええ!?」」
「知らなかったの?ここの時間の流れは変則的なのよ。
 運が悪いと、貴方達の世界ではもう半月くらいは経ってるかもしれない」
「それを早く言え!!」
クロスが泣きながら怒鳴るという器用な芸当をはじめた。
アリアは振り返りながらも、もとの世界への道まで走っていく。
「ねえ、また来てもいいかしら?」
「……」
慌てるわけでもなくルシェルに話し掛けるサリラ。
「……ええ。近くまで来てくれれば、私が道を作るわ」
「ありがとう。またね」
そして踵をかえし、走っていった。
 その姿が見えなくなった後に、ぽつりと呟くルシェル。
「あんな人間に出会えたのは、何年ぶりかしら……」
それは、昔の愛しい思い出を見るような、遠い目だった。




「もう…朝になってたんだね……」
驚いたように言うセリオス。
 だがサリラはセリオスの驚きすら楽しんでいるようで、柔らかい風が運んでくる清々しい空気を、胸いっぱいに吸い込んだ。
「セリオス、早く行きましょうよ」
「え?あ、うん」
サリラに促されて、思わず頷くセリオス。
「今から行けば、お昼前には街に着くぜ」
「……そこに、私を知ってる人がいるかもしれないのね……」
緊張の面持ちで言うアリア。
そして皆が歩を進めようとしたその時。
「そうだ、アリア」
セリオスが思い出したかのように声を出し、アリアに手を差し伸べた。
「おかえり」
アリアはその言葉の意味がなんなのかすら解らず、立ち尽くし、おろおろとセリオスを見上げる。
それに気付いたのか、セリオスが慌てて意味の説明をし出した。
「ええと…遠く離れてた人が帰ってきた時には「おかえりなさい」って言ってあげるんだ。
 そして、帰ってきたほうは「ただいま」って言うんだよ」
セリオスはもう一度「おかえり」と言うと、アリアの言葉を待った。
 そのアリアは、セリオスの説明の仕方が悪かったのか、まだ不思議そうな顔をしたまま悩んでいる。
だが、どこか心に響くものがあったのだろうか。差し出されたままのセリオスの手にそっと自分の手を乗せ、たどたどしく言った。
「ただいま」
セリオスはくすっと微笑むと、街道の方へ歩いていった。
皆もそれについていく。
 ルシェルに会う前よりも不安そうにしている、アリアを連れて……。
 そして、ルシェルに会ったことにより産まれた、天使と魔族への疑惑の感情と共に…。

 裏話みたいなの。
 *セ=セリオス。サ=サリラ。ク=クロス。ア=アリア。
セ「今回はサリラに主役をとられた気がするなー」
サ「当たり前よ。だってセリオス影が薄いもの」
セ「(がーん!)」
ア「それは私も思ったわ。作者からも『世界一影の薄い主人公』って呼ばれてるらしいわよ」
セ「(がーん!×2)」
サ「でもアリア。作者の話じゃ貴方がヒロインらしいけど、作者の母親はルシェルがヒロインだと思ってるらしいわよ」
ア「!?」
ク「つまりルシェルは重要キャラってことか?」
サ「どうやらそうみたいね。いいわよ、私は作者から気に入られて無い見たいだし、好きなだけ悪態が吐けるわ」
セ「(サリラ…とうとうそこまで性格が歪んだか)」
サ「何か言った?!」
セ「…なんでもないです」

トップに戻る
12473Re:はじめまして星月夜 葛葉 E-mail URL11/25-20:15
記事番号12470へのコメント

 はじめまして、星月夜 葛葉と言います。今までずっと、神無月遊芽様の小説は読んでいました。ですが、コメントを書いてなかったです。すみません。金と銀の女神も、ずっと楽しみに待っていました。

 これからどうなるのかが、すっごく気になります。特に、アリアさんが一体何者なのか気になります。ルシェルさんはまた登場するのでしょうか?

 私は今までずっと、サリラさんがヒロインだと思っていましたけど、違ったんですね。実を言うと、アリアさんがヒロインだと思っていませんでした。すみません。いろいろと謎が多くて、続きが気になります。

 それにしても、すごいですね。オリジナルの小説が書けるなんて。私なんかでは、神無月様のように上手く書けないです。

 短い感想ですが、続きを楽しみに待っています。がんばって下さい。
 それでは、星月夜 葛葉でした。

トップに戻る
12487Re:はじめまして神無月遊芽 E-mail URL11/28-18:47
記事番号12473へのコメント

> はじめまして、星月夜 葛葉と言います。今までずっと、神無月遊芽様の小説は読んでいました。ですが、コメントを書いてなかったです。すみません。金と銀の女神も、ずっと楽しみに待っていました。
 初めまして。神無月と申します。
 楽しみにしてくださっていた上に、感想書いていただいてありがとうございます。

> これからどうなるのかが、すっごく気になります。特に、アリアさんが一体何者なのか気になります。ルシェルさんはまた登場するのでしょうか?
 はい、ルシェルは主メンバーではありませんが、大事なキャラクターなのでまた登場します。

> 私は今までずっと、サリラさんがヒロインだと思っていましたけど、違ったんですね。実を言うと、アリアさんがヒロインだと思っていませんでした。すみません。いろいろと謎が多くて、続きが気になります。
 サリラさんがヒロインぽかったですか?
 最初から登場しているからでしょうか。確かに当初はサリラがヒロインだったような気が…。でも、私的にヒロイン向きな性格じゃなかったのでシナリオを一新してアリアにしたんです。

 謎は、そのうち解けると思いますので、気長につきあってくださいませ。

> それにしても、すごいですね。オリジナルの小説が書けるなんて。私なんかでは、神無月様のように上手く書けないです。
 そんな(///)ありがとうございます。もっともっと上手になって、星月夜様や皆様に楽しんでいただけるよう頑張りたいと思います。

> 短い感想ですが、続きを楽しみに待っています。がんばって下さい。
> それでは、星月夜 葛葉でした。
 感想本当にありがとうございます。
 よろしければ、また感想下さいね。

 それでは。
    神無月遊芽

トップに戻る
12517金と銀の女神7神無月遊芽 E-mail URL12/2-16:24
記事番号12470へのコメント

 どうやら一週間に1回のペースにかたまりそうです。
来週はちょっと投稿できませんけど。
***********************************

             金と銀の女神
           〜世界が始まるとき〜


   7章 僕の使命

 gold 大きな力が動く
   魔性の力は、夢の中に 悲しき思いは、闇の中に

 クレスト城。豊かな自然と幾つもの鉱山に囲まれた、のどかな国である。
この城の王は、頭も良く至極善良な王であることが知られており、他の国よりも住みやすいと言う人も多い。
 そして城下町も、なかなか活気に満ちている。
 ターツ村とは全然違う雰囲気に、一同は圧倒されっぱなしだった。
「うっひゃ〜!!見渡すばかりの人、人、人だぜ」
クロスが思わず田舎もの丸出しで叫ぶ。
「本当ね〜。ここならアリアの家も見つかるんじゃないかしら」
「ここに…私の家が……?」
だが、アリアの顔は暗い。
 手も微かに震えているようだ。
「大丈夫だよ。きっと見つかるから」
優しく微笑むセリオスの顔にも、陰りが出ている。
 サリラはその表情に疑問を感じながらも、すたすたと歩き始めた。
「そうだ、セリオス達はお城に行って来たらどうかしら。
 確か前の街で、おばさんがお城の図書室に記憶を戻すような呪文があるかもしれないって言ってたじゃない。
 聞き込みは私とクロスがしてるから、ね?」
「あ〜!?俺もかよ!?」
クロスの叫びを無視して、サリラが話しつづける。
「それに、この世界を救わなきゃいけないんでしょう?
 他の大きい大陸に渡ったほうがいいんじゃいかしら」
一瞬、セリオスの顔が驚きと戸惑いに包まれた。
 だが、次の瞬間にはそれも消えており、いつものように微笑んでみせる。
「そうだね。じゃあ、お城の書庫とあと王様に謁見をお願いしてみるよ」
「…ちっ…。じゃあ、サリラ、行くぞ」
クロスがしょうがないような様子でサリラの手をひく。
 サリラは振り向きながら、セリオスに手を振った。
「用事が終わったら、夕刻に外門で会いましょう」
「………行こうか、アリア」
アリアは何か考え込んでいたのか、突然自分に話し掛けられ、びくりと身体がすくんだ。
「え、ええ……」
顔が歪んでいる。よほど深刻なことでも考えていたのだろうか。
 セリオスがそれを見て、手を差し伸べた。
「大丈夫だよ、アリア」
アリアはただ、その手に頼るしかなかった。

 セリオスは、その不安げな瞳を知っているような気がした。
 昔、サリラが森で獣に襲われていたときだ。
無我夢中でサリラを助けようと必死になっていたら、突然、身体から蒼い光が飛び出した。
その後意識を失ってしまったのだが、目を覚ましたら家のベッドで、サリラが心配げに僕の顔を覗き込んでいた。
話を聞くと、あの光で獣は死んでしまったらしい。
 …そうだ。僕だ。
 自分が何者なのか解らず、不思議な力を秘めていると知ったときの僕だ。
皆気のいい人達だったから何も言わなかったが、あの時はひどく不安だった。
何故こんな力があるのか。何故捨てられていたのか―。全てが不安だった。
 だから、勇者に憧れたんだ。完璧に力をコントロール出来、その力で誰かを護れる勇者に。
でも、勇者に憧れていたけれど、自分が世界を救うなんて旅をするとは思わなかった。
 …だが、ディクスさんが言っていた信託の”蒼い光”は、確かに僕だ。
だけど、自分が勇者だなんて思えない。
…きっと、紅き炎を宿す人がいて、それを呼び覚ますのが僕なんだろう。
 そう、だから旅をする。
 そして、世界を救う。
 アリアも、助けてあげるんだ―。




 城の中は想像と違い、見かけよりも実用性で建てられたもののようだった。
それでも、大理石の柱や女神の形を彫られた紋章などが、ここは城の中なのだということを思い出させる。
 だが心配された王との謁見は問題なく受け入れてもらえ、セリオスは緊張の面持ちで王の間への道を辿った。
『何?西へ渡りたいと?』
白髪混じりの金髪と蒼い目の、まだ初老にも満たない年齢。それがこの国の長、クレスト国王だった。
そのクレスト国王が、セリオスの言葉を聞いた途端凄い剣幕で…というより、信じられないように聞いてきた。
「はい。私は、この世界に少しでも早く平和をもたらそうと旅を始めました。
 西の大陸は最も大きい国のある大陸。また魔物達の被害も大きいと聞きました」
『ふうむ…確かに西の大陸、エルア国はこの世界で最も大きい国。
 だがその分、魔物達もそこへ集まっている。そこへ君のような若者を送り込むのは……』
エルア国。世界で最も大きい大陸にある、最も大きい国である。
 前は平和な国だったと聞くが、最近は魔物の登場と、それから新しき王のせいで不穏な空気を漂わせているという。
ここ一ヶ月は、連絡すらも途絶えているらしい。
 セリオスが片膝をついたままで、顔をあげた。
「確かに私はまだ若輩者で、経験もございません。
 ですが、平和なこの国でさえ最近は街の外を歩くだけで、いつ魔物に襲われてもおかしくない状況になっています。
 西の大陸の被害が大きく、また魔物にも力があることは知っています。
 それでも、何かをしなくてはと、私のようなものでも何かのお役に立てるのではと思うのです」
『こらっ。王の前で!!』
王の傍にいた少し太りぎみの大臣がセリオスに向かって怒鳴る。
だがセリオスはそれを真っ直ぐに見つめるだけで、どちらかといえばセリオスの後ろにいるアリアのほうが身体が竦んだようだった。
 そして王がそれを見て立ち上がり、その男の前に手を横に伸ばす。
男は一礼して、そのまま後ろに一歩下がった。
『よい、なかなか有望そうな少年じゃ。それにちゃんと己を貫くことを知っている。気に入ったぞ』
「ありがとうございます」
『だが、エルアへの船は止められていてな。お主がいくら望んでも出港してくれる船はあるまいて』
「そんな!!」
セリオスが思わず立ち上がる。
 だが王に静かに見つめられ、また片膝をついた。
『なんとかならないのでしょうか?』
王は自分のひげを指で弄びながら、なんとか口を開いた。
『うむ…だが、東の大陸からなら西の大陸へ行けるかもしれん』
セリオスがオウム返しに聞き返す。
「東…?」
『ナーサ国だ』
ナーサ国。ここより東に位置する小さな国だ。
ここよりは広いものの、その国土は、ひどく言うと雀の涙ほどのものだ。
 あまり噂など聞かない所だが…。
『そこは最近奇怪な魔物達で埋め尽くされているようでな。
 ナーサ国にしか存在しない魔物もいるらしい』
「!?」
そういえばナーサ国は、神を信仰するものが多い。
また、何故か黒い髪と瞳が多いらしく、金髪などほとんど見かけないとか。
 そして神を信仰する分、大地は神聖さを吸い込んでいる。
そのため、魔物がそれに耐えうる力をつけてしまったのだろうか。
『だがその分兵士達も魔物達に対抗できる力を充分に身に付けている。
 それならエルア国への船を出すことも出来るだろう』
「……ナーサ国へ行くにはどこの港から行けばいいのでしょうか?」
だが王様はその問いに答えず、代わりにこう言った。
『……その前に、やってもらいたいことがある』
「………なんでしょう?」
セリオスに緊張が走った。
『このごろは鉱山に魔物達が住み着いて困っている。
 それを退治してはくれないだろうか?』
予想もせぬ言葉に、セリオスが驚愕する。
「魔物退治を…!?」
『うむ。そのせいで鉱山はつかえず、鉱物は取れない。
 もちろん礼はするぞ。ナーサ国への船も、もちろん用意する。王への紹介状も書いてやろう。
 まあ、そなたの力量を測るテスト…という役割もあるのだが』
魔物退治。これを見事果たせば、大陸への船も出る。
試されるなんて好きではなかったが、セリオスは深く息を吸い込み、頷いた。
「解りました」
「期待しているぞ」
アリアはその白い顔を更に白くして、セリオスの服を掴んでいた。



 夕刻。外門のところに、セリオス達4人は集まっていた。
お互い、自分が得た情報を交換するが、アリアに関しての情報は、皆無だった。
「ここでもダメなのか…?」
セリオスが歯がゆそうに爪を噛む。
「書庫も、記憶を戻す呪文なんて無かった。これじゃ、アリアを家に帰してやれない……」
「セリオス…」
ストレスが溜まっていたのだろうか。こんな、いらいらした様子のセリオスは初めて見る。
思わずサリラが手を伸ばそうとした瞬間。
  ばたっ…
 何かの倒れる音。しかも、かなり大きな。
セリオスの中に嫌な予感が走り、後ろを振り返った。
 地を這う、蒼い髪。
「アリア!!」
そこにはアリアが蒼白の顔で倒れていた。
意識も途絶えているようだ。
「アリア!アリア!」
セリオスが慌てて抱え、アリアを揺さぶる。
「落ち着いて!セリオス。宿までアリアを運びましょう」
「すぐ近くだからよ」
2人の言葉で少しは冷静になったのか、セリオスが黙ってアリアを抱きかかえ、立ち上がる。
「……解った」
確かに、それが一番賢明な選択だから。
アリアを護るのが、僕の使命とも言うべきことだから…。

蒼い髪が、地へ向かって流れるように揺れた。
 アリアの胸元では、魔封じの石が、静かな光を放っていた…。


 裏話に似たただの会話。
 *セ=セリオス。サ=サリラ。ク=クロス。ア=アリア。(多分)
ク「お前アリコンひどくなったなー」
セ「アリコン?」
ク「アリアコンプレックスの略。ロリコンとか言うだろうが」
セ「ああ…ってロリコンと一緒にしないでくれ!」
ア「そうよ!私ロリなんかじゃないわ!出るとこは出てひっこむとこはひっこんでるもの!」
サ「そう言う問題なわけ?バカみたい…」
ア「ふんだ!全部引っ込んでる人に言われたくないわね!」
サ「な、なんですって〜!?私のほうが身長が高いのに体重は変わらないなんていう人にはそれこそ言われたくないわ!」
ア「私は胸が重いからいいのよ!貴方は胸が無いからその分体重が軽いんでしょ!年齢も私より上だし、それじゃ枯れ木と一緒ね!」
セ「…白熱してきたから僕はもう逃げるよ…」
ク「俺も…」

サ「デブ!」
ア「えぐれ胸!」