◆−夢と現(気まま・過去編)−CANARU(11/30-08:51)No.12497
 ┗初恋を引きずって(笑)−P.I(11/30-22:39)No.12502
  ┗みゃはは〜〜♪−CANARU(12/1-17:57)No.12511


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12497夢と現(気まま・過去編)CANARU 11/30-08:51




今回の話はちょと残酷かな?
と思ってしまいました。書いていて・・・(汗)
話の展開上かなり仕方なかったんですが(涙)
できればあ〜ゆ〜シーンはもう2度と書きたくないです!!(断言!)

**********************

「丈夫な・・・・・。」
「・・・『丈夫な』で済まされるもんだかよ・・ったく!!」
召使の一言に黒髪の男・・・『フレイの騎士団』の旅団長の息子として
ガウリイが使えるべきルクセンブルク公家・・分家「インバース家」の
主たる男が何かがなりたてている。
「しかし・・旦那様・・・・。」
困ったようにフレイの騎士団旅団長の妻にしてガウリイの母、オーリもそっと
ガウリイの肩に手を置きながら夫、フィリップの主たる男をなだめようとする。
「・・・まじぃな・・・・。このままでは・・我が家は破産だ・・・・・・・。」
困ったように黒髪の男は頭に手を当て、ブツブツと呟く。
「では・・。このような提案は如何でしょう?」
何処の子供だろう?年齢は5歳のガウリイよりも1つか2つ上と言ったところか。
黒い髪の利発そうな・・しかし見慣れない少女が黒髪の男に向かってかたりかける。
隠密の子供はある程度の年齢を行くと特殊な教育を受ける・・・。
実際にこの黒髪の男の長男は今、『修行』と称してガウリイの知らないところに
送り込まれているらしいのだが・・・・。
「ルナ・・・・・・・・。」
「私に一つ・・提案があります・・・。」
にっこりと微笑んでルナは何やら黒髪の男の耳元にコソコソと何やら
語りかけるのだった。
「成る程な・・・・・。」
ポンっと一回手を打ち、黒髪の男はオーリをこっそり呼び寄せる。
一瞬ながらオーリな顔が複雑な・・怒りとも驚きともとれない表情を見せる。
が・・・軽く黒髪に拝まれて・・・・・。
「はあ・・分かりました・・・。善処致しましょう・・・・。」
仕方ない・・と言った口調でそう断言する。
そして、彼女はガウリイの方を振り返りながら・・・・・。
「ガウリイ・・。奥方様は立派な『男の子』をお産みになりました。良いですか?
ちゃんと・・オマエの弟のように・・面倒を見るのですよ?」
「・・・・・ええ・・・・・・・・・・・・・????」
真坂・・とは思ってはいたが・・。
『女の子が生まれたらお前のお嫁さんになる』・・・・。
そう散々聞かされていた子供が・・・よりによって『弟』のような存在とは・・・。
幼いガウリイの頭の中はただちに『真っ白』・・いや・・『真っ青』になる・・・。
「・・・男の子・・・ですか・・・?」
「ああ〜〜・・・すまないな〜ガウリイ・・。じゃ。俺はちょっと・・アンヌの様子

見てくるから!!」
慌てたように少年から目をそらし・・黒髪はそそくさとたったいま子供を生み終わっ

奥方様の所に去っていく・・・・・。
「・・・ただでさえ・・・・・・・。」
幼心心にあこがれていたこのアンヌ・・・黒髪の奥方が結婚してしまった時には
ショックだったのに・・・・。
「馬鹿〜〜〜!!もう!!僕!!世の中なんて!!信じないぞ〜〜〜!!」
行き場の無い怒りをあらわに思いっきり壁に蹴りを入れる!!が・・・・・。
悲しいかな、少年の足の長さでは数メートル先に聳え立つ壁にけりを入れることは
不可能であった・・・。
これが後18年後の彼であったら・・見事に壁に大穴開けるぐらい可能であっただろ
うが。
ずでえええええええええええええええええええええええんんん!!!
見事にひっくり返り・・側にあった灰皿にマトモに脛を打ちつけたのだった!!
「いった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「何をやってるんです!!このお馬鹿は!!奥方様はまだお休みになっているのよ!
!」
「ぎゃあ〜〜〜〜〜ママ〜〜〜!!ごめんなさいいいい!!お尻ペンペンいや〜〜!
!」
廊下でなにやら大騒ぎになってしまうガウリイとオーリママ・・・。
しかし、そんな二人に!!
「・・お二人とも!!お静かに!!」
シ〜〜っと口元に指を当てて、ルナが怒りの形相を露わにしながら文句を言う!!
「あ・・あら・・・私とした事が・・・。」
「・・ごめんなさい・・おね〜ちゃん・・・・・(汗)」
「分かればよろしいんです。では・・私は『ワルキューレ』の修行がありますので・
・。
ガウリイ君・・だったわね・・・。旦那様のお坊ちゃま・・の事。お願いします。」
ぺこり、と二人に頭を下げ、その場を立ち去っていくリナ・・・・。
かくして・・・・・・・・・・・。


「ほげ〜〜〜ええ・・やってられない・・・・。」
何処へとも無く、庭の中を歩き回っていたリナは無意識にそんなことを口にする。
「はあ〜〜・・馬鹿兄・・ゼロスが部屋で昼寝してたらいちいち『掃除しますから』
ですものね・・・。うかうかカギもしないで寝てたら・・どっかのアホクラゲは人の
寝顔盗み撮りするし・・・。庭の隅っこでなくっちゃ・・・。」
寝られやしない・・・・・・・・・・・・・・・・。
そう言おうとしたその矢先だった・・・・・・・・・・・・・。
淡い、金色の髪の・・・一瞬、ガウリイの弟、ガストンを縮小化したかのようにさえ
見える少年が・・小さな赤ん坊を抱えながら庭を意味も無く歩き回っている・・?
「やだ・・・・。」
何処から潜り込んできたのかしら・・・・?
一瞬そう思う・・が、何処かに潜り込んだ、のは自分のほうだとリナが認識するには
そう長い時間がかからなかった。
「何処よ・・ココ・・・」
確かに自分の家・・ナポリの『カタート』の・・馬鹿兄ゼロスが趣味で作らせた
中世風のイタリア庭園を散歩していたはずなのだが・・・。
ココは誰がなんと言おうと・・ドイツ風の庭園と・・ルイ王朝のヴェルサイユ宮殿
の庭園を真似して・・足して2で割ったような・・・・。
そんな雰囲気である・・・・・・。
ガストンに良く似た5歳くらいの少年は・・腕に抱いたストロベリーブロンドの赤ん
坊を
恨みがましそうな視線で眺めている。
が・・・やおら・・その赤ん坊を・・・・・・・・・。
「ちょっと!!なんてことすんのよ!!」
咄嗟に乱暴に扱われそうになった赤ん坊を少年から取り上げて、リナは大声をあげる
!!
その声に驚いたのだろう・・・。
ぎゃ〜〜ぎゃ〜〜〜と赤ん坊はリナの腕の中で眠りからさめ、けたたましい泣き声を
あげる!!
「・・・男だろ・・?泣くなよ・・ったく・・・。」
金髪の少年は耳をふさぎながら無関心な様子でリナ・・いや・・・。リナの抱き上げ

ストロベリーブロンドに近い栗色の髪の赤ん坊から目をそむける。
「君ね・・そ〜ゆ〜言い方は無いんじゃない!!?そりゃ〜まあ・・・。あたしは
末っ子だから良く分からないけど・・・。兄弟が生まれたからママの関心が向けても
らえないからって拗ねるのは・・。感心できる事じゃないわよ?」
「・・・おね〜ちゃん・・・。僕とその子・・良く見てからモノいってくんない?
第一・・僕はそんなどんぐり眼じゃないだろ・・・?」
う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
なかなか言ってくれるじゃないの・・このクソガキ・・・・・。
一瞬自分自身もよく言われる悪口なので・・リナの額の辺りが僅かに引き攣る。
「第一・・。僕、まだ一人っ子だよ・・。弟が生まれたら『ガストン』って名前に
するつもりだし・・・。ついでにいえば・・そのこは・・旦那様の息子で・・・。
女の子だったら僕のお嫁さんになったはずの子供だよ・・。」
年齢よりもだいぶ増せた口調で面白く無さそうに少年・・・。
って・・・・どこかで聞いた事のある・・話のような・・・・。
「・・アンタ・・名前は・・・?」
「え〜〜〜っと・・・『人に名前を尋ねられたら・・・。まずその人の名前を
聞きなさい』ってママが言ってた・・・。」
その一言に・・信じられない事だが・・リナの確信はますます強まっていく。
あの女性(ヒト)なら・・・確かにそう言いかねないからだ・・・。
「リナ・・・・・・・。よ・・・・・。」
苗字は?とっ突っ込まないあたり・・リナの確信はますます強まる・・・。
「僕はガウリイ。『ふれいのきしだん、りょだんちょう』フィリップと・・・。
この国で一番怖いオーリママの息子・・・。ガウリイ=ガブリエフだよ」
・・・・・・・・あははははははははははははははあはははははははは〜〜〜♪
何がど〜なったのかもう分かったものじゃないが・・・・・・。
どうやら・・今腕の中に居るこの赤ん坊・・・・。
「18年前のアタシ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!??」
声にこそ出さないが・・・もはやこれは間違いの無い事実のようである。
大慌てでリナは赤ん坊の首筋をコソコソと触ってみる。
「・・・・ガウリイくん・・・。この赤ちゃんに乱暴な事したの・・今回が初めて
じゃ
あ・・無いよね・・・????」
ぴくぴくぴくぴくぴく〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
声のトーンこそ優しげだが・・・。髪で死角となったリナの眉は引き攣りまくってい
る。「乱暴?ああ〜〜男の子らしい遊びしてあげただけださ!!」
む・・胸はって言うな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
しかし、こんな子供にやつあたりした所で・・それはそれで単なる自己満足でしかな
い。
おにょれ!!ガウリイ!!元の世界に戻ったら覚えてろ〜〜〜!!
既に彼によってこんな小さい頃から・・リナの首筋には小さな傷跡があったのであ
る。
無論、この赤ん坊とリナの首筋の小さな痣・・・・・。
なんら形に変形を来していない辺りが絶対的な証拠である・・・・。
「ともあれ・・・。アンタねえ・・・・・。」
とほほっとした表情のリナにガウリイの視線が注がれる。
「リナって・・・。アンヌさまに似てるなあ・・・・・。」
思わずボ〜〜〜っとしたような声・・・・。
「餓鬼が益せた事、言ってるんじゃないの!!ったく!!」
コツン!!とガウリイの金色の髪の毛を軽く叩きながらリナは再度はあ・・とため息

一つ。
と、それとちょうど同じ時だった。微かに小さな影が再度此方に近寄ってくる気配が
したのは・・・。
「・・・お坊ちゃま!!??」
年のころならガウリイとほぼ同じ年齢くらい、であろうか?
軽い、ウエーブのかかった茶色の髪・・。瞳の色はバイオレット・・・。
どこかで見た事のあるようで・・無いような・・美しい白いワンピースを纏った
小さな少女である。
「・・・ローラさん・・・・・。」
慌てたようにガウリイはこの一人の少女に声をかける。
「・・フィリップ殿の息子さんですね。」
ギロリっと少女の瞳がガウリイを睨みつける。
「あ・・は・・はあ・・・・」
さしものガウリイもこういったタイプには弱いらしい。少々まごまごした
態度で同意の意味の言葉を発するのがやっとだったらしい。
「『ワルキューレ騎士団』の命令です。坊ちゃまの引渡しを願います。」
キっとリナを睨みながら少女ローラは幼いリナ・・最もこの場では「坊ちゃま」
と呼ばれている小さな赤ん坊の引渡しを要求する。
まあ・・・これからの自分の人生を考えれば・・・・・。
「断る理由は無いわね・・・。」
正直言い、それが素直な心境だった。実際に・・自分が生まれた国でありながらリナ
はこの国の事を何も知らなかった・・のである。
「ご協力、感謝いたします。」
打って変わった穏やかな笑顔で少女、ローラはリナに答える。
・・・・やっぱり見た事があるな・・そんな思いが更にリナの脳裏によぎる。
「・・行こう、リナ・・・・・。」
そんなリナの様子を敏感に察してだろうか?小さなガウリイはリナの腕をぐいぐい
引っ張りながら何処へとも無く連れて行こうとする。
「ガウリイ????」
やっぱり・・この国も・・小さなガウリイのことも良く分からない。
それが正直に感じたリナの感想だった。


「アノ子は・・さっきリナの抱っこしていた男の子のおに〜さんの・・。
婚約者だよ・・・。ちなみに僕も昨日が初対面・・・。明日にはもうドイツに帰るっ

言ってた。」
やりにくいな・・と言いたげな口調でガウリイはリナの手を引っ張りながら答える。
「そう・・あの赤ちゃんの・・・・。」
昔の自分の兄の婚約者・・この時ジョヴァンニは何処かに修行に出されていたと言
う。
間違いない・・。あの小さなローラという少女は・・昔のラウラである。
あの男装の麗人が昔はあんなかわいらしい少女だったとはなあ・・・。
そう思いながらリナは小さなガウリイの手を握る。
「あ!!」
そんなリナの思いを知ってか知らずか。小さなガウリイはリナの握っていない
もう片方のあいている方の手をやおら振り出し・・・・。
「ママ〜〜〜〜!!」
と一人の金色の髪の毛の美しい20代ぐらいの女性に向かって声をかけようとするが
・・。
「待って!!」
大声を出そうとしたガウリイの口を咄嗟に塞ぎにかかるリナ!!
「・・・むぎゅ〜〜〜!!何するの!!」
母親を呼ぼうとし、それを阻止されてしまった事はガウリイにとってかなりの心外で
あったのだろう。リナの手を口から外しながら抗議の声と視線を向ける。
「様子がおかしいわ・・・・・・・・・・。」
茂みになってここからは死角になっていたが・・・。
よくよく地面に伏して観察してみれば良く分かる・・・・。
無数の男と一人の女に囲まれて・・・銃口を向けられているオーリの姿!!?
「ママ!!!!」
ガウリイも様子を理解したのだろう。母親の危機を察し今居る場所から飛び出してい
こうとするガウリイを大慌てでリナは取り押さえる!!
「リナ!!ママは・・・・・・・・・・・。」
「・・・あの女・・・・・・・・。」
忘れもしない・・ガウリイの父・・フィリップの妹にして・・・。
自分の育てられたナポリで「義母」として君臨していた女・・。
ガードルードである。
「・・・・如何いう事なのです・・・???」
「・・兄上は・・監禁させていただきました。本日より私が『フレイの騎士団』
の旅団長とさせていただきます・・・。従ってはいただけぬ場合・・・。」
ガチャ・・・・・・・・・・・・・・・。
ガードルードの構えた銃口がオーリのかめかみの辺りに更に深く押し当てられる。
息を殺しながら今にも飛び出して行きかねない勢いのガウリイをリナは辛うじて押さ
え込む事に成功する。
「・・・そうね・・・。あんなロクデナシ亭主には・・。いいかげん飽き飽きしてい

所・・・だし・・・ね!!」
「グワ!!!!!!」
オーリが言い放つと同時に炸裂する鋭い蹴りの一撃がガードルードの鳩尾の辺りに
直撃する!!
「この!!」
一斉にガードルードに従っていた男たちがオーリに向かって発砲しようとするが、そ
の時だった。
ずだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ〜〜〜んんんん!!
不意に放たれる・・麻酔銃の発砲音!!
「フィリップ!!」
「父様!!」
何時の間にか押さえ込んでいたリナの腕を振り解き、母親、そして拳銃を構えていた
ガードルードに従っていた男たちをアッサリと倒したフィリップにガウリイは駆け
寄っていく。こうなっては・・リナとて隠れている理由は何処にも無い。
駆け出すときに足を挫いたのであろう、オーリに向かってそっと手を出しだす。
「・・大丈夫ですか・・?」
リナの手を素直に受け入れながらオーリは頷く。
「・・息子を・・ガウリイを止めてくださって・・有難うございます。」
にっこりと若く、今とは違った美しさを纏ったオーリは深く詮索もせずリナに
向かって微笑みかける。
「・・・無事か・・・オーリ、ガウリイ?」
・・・今とは似ても似つかない・・。若々しい・・強いて言えば・・・。
現在のガウリイに髪の色こそ違えども・・そっくりの一人の男・・・。
全ての諸悪の根源であるはずの・・「フレイの騎士団」元・・(しかしこの場では正
式に)旅団長たるフィリップは息子のガウリイと妻のオーリに向かって語りかける。
「ええ・・・。でも・・何故ガードルード殿は・・。このような暴挙に・・・。」
そっと抱きついてきたガウリイの肩に手を置き、答えるオーリ・・。
が、フィリップは分かりきった事を・・とでも言うように・・・。
「・・『アノ男』の存在だ・・・。」
そう苦々しげに呟く。
「・・・そうですか・・・・・・・・・・・・。」
更にオーリも瞳に暗い影を落としながらそうとだけ答える。
「・・・オーリ・・。もしも・・俺のみに何かあったら・・・。構わない・・・。
俺を見捨ててくれ・・・。」
不意に放たれる意外なフィリップの言葉にリナはわが耳を疑った。
が・・・しかし・・・オーリは『分かっています』と言わんばかりに頷く・・。
「・・・・リナ・・・・・・。」
オーリの注意が完全に自分から離れてしまった事を悟り、リナの側に擦り寄って
くるガウリイ。
「何か・・裏があるようね・・・・・・。」
そんなガウリイの頭に手を回し・・周囲の気配に耳をそばだてる。
ふっと周囲の風が静まり返る感覚がする・・・。
そして・・微かに聞こえてくる・・けたたましい赤ん坊の泣き声と・・・。
少女の怒鳴り声!!
「あなた!!お坊ちゃまと・・・ローラのお嬢ちゃまが!!」
異変を真っ先に悟ったとはガウリイの母、オーリだった。
「ああ・・・間違いない。『奴』自身が動くはずは無かろう・・・。しかし・・。
『奴』の一味が動き出した事は・・まず疑いが無い事であろう・・・。」
焦りを含んだ声でフィリップはオーリ、そしてガウリイに言う。
「・・アタシも行きます。こうみえてもアタシ・・・。」
言うべきか言わざるおくべきか・・・。しかし、このフィリップにも・・・。
認識としては未だに諸悪の根源たる悪人・・としか思えないのだが。
今の彼なら確かに信頼が置ける。そんな気がしてならなかった。
意を決してリナは・・・・・・・・・。
「こう見えてもアタシ・・・。『カタート』の隠密でもあります・・・。」
ある意味・・イチかバチかの賭けであったとしか言いようが無い。
実際に・・このフィリップが指揮する「フレイの騎士団」は実際の所犯罪組織「ミッ
ドガルズ」の隠れ蓑だった・・という数十年後の現実を考えると・・・。
だが・・返答は・・・・。
「『ワルキューレ』殿の・・か・・・。わかった。一緒についてきてくれ。公の・・
・。第二王子が危ない!!」
・・・・・・・・・いや・・第二王子ではなくて・・・・。
ついでに言えば・・十数年前の自分・・・なのだが・・・・。
この際細かいことに構っている場合ではない・・それだけである・・・。


「離せ〜〜〜馬鹿!!離せ〜〜〜!!赤ちゃん返せ〜〜〜〜!!」
燃え盛る炎・・そして・・・その炎の向こうにひたすら罵声をあびせかける幼い少女
・・・。
敵によって拉致されるときに傷ついたのだろうか?
口の端から流れ出している血潮が痛々しい・・・。更に言えば・・・・。
「惨い事を!!!」
リナの隣にいたオーリの形の良い口元が怒りの為に僅かに歪んだのが見て取れる。
無論、リナとて・・・将来見知る事になる女性になるとしても・・・。
こんな小さな子供の手に重々しい鎖が縛りつけられ・・・・。
ましてや『焼け死ね』と言わんばかりに燃え盛る火薬庫の柱に結び付けられている
光景など・・腐っても直視したいものではない!!
彼女の足元には一丁の拳銃が転がっている。引き金に血が付着しているところからす
ると・・・。恐らくローラが捨て身の攻撃で噛み付き、逆上した敵がこんな暴挙に
至った・・と言うところであろうか?
「ローラ嬢ちゃま!!」
今助けるわ・・と言わんばかりに駆け寄るオーリママ。
この様子からすると・・二人がもともとの顔見知りであったことは疑いが無さそうな
事なのだが・・・・・・・・・・。
「・・・誰・・・来ないで・・赤ちゃんを・・アノ子・・かえして!!」
オーリを見てもローラの瞳は恐怖し・・・・更にはうわごとのようにただただ・・
・。
男の赤ん坊だと思い込んでいるリナを返還することを要求するのみである。
「・・・・・記憶を混乱で失っているんだ・・・・。」
リナにともオーリにとも説明するわけでもなくフィリップはそう呟く。
「・・この枷・・外れない!!」
こうしてはいられない、と思い早速行動に出たリナがまず第一に感じたのはこの戒め
の頑丈さ・・である・・・。
「・・・手伝います・・・。」
怯えるガウリイを物陰に隠し、オーリも早速リナと同じ戒めを解き放つ作業にかか
る。
が、二人の手がただ火傷するだけで・・戒めはびくともしない。
がらああああああああああああああああああ!!!!
凄まじい音が周囲を揺るがす。
「まずいわね・・・・・・・。」
ローラの戒められている建物の柱がいよいよ炎の力によって・・崩れ始めたのであ
る。
このままでは・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・致し方ない・・・・・・・・・・。」
「あなた・・・何を!!」
リナとオーリが抗議の声をあげる暇も無い程の出来事であった・・・・。
「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ごと・・・ごと・・・ぎっし・・・・・・・・・・。
幼い悲鳴・・そして・・何か硬いものが無理やり切り落とされるような・・・。
不快感を催す・・・鈍いようで・・鋭い音・・・・・。
血潮に染まりながら・・・じゃらじゃらと崩れ落ちる鎖・・・。
そして・・大量の血を流して気を失う幼い少女・・・・・・・。
「・・・・あなた・・・ナンという事を・・・・・・・。」
「父上!!ひどすぎます!!!」
半ば泣き声のガウリイに・・あからさまに青ざめながらオーリがようやく言葉を紡
ぐ。
「ならば!!ローラ嬢は完全に焼け死んでいた!!それでいいのか!??」
「・・・・・・・・・・・・。知らなかった・・・・・・・・。」
ローラ・・いいや・・ラウラが・・・・・。
腕の醜い傷を常に隠すように生きてきた事実はリナも痛いほど痛感してた・・。
けれども・・・彼女自身・・こんな過去があったとは・・・・。
「この令嬢のことは・・。俺に一任して貰いたい・・・。皮肉な事だが・・・。
『技術』さえあればこの令嬢の手は・・完全にとは不可能でも・・・。生活に支障は
無い程度には回復するだろう・・・。そして・・。彼女の親御殿にかけあってみる。
『このかわいそうな令嬢を。二度とルクセンブルクの陰謀に関わらせるな』と・
・。」
どことなく思いつめた表情でそう告げるフィリップ。
だが、ガウリイは全然そんなことは・・・幼すぎて理解できないのかもしれないが・
・・。決してフィリップを許さなかった・・・。
「ひどい!!ひどい!!父上!!何を考えてるんだ!!ひどい!!ひどすぎる!!」
・・・・確かに・・子供の前で見せる光景ではない事は確かである。
泣きじゃくり、怒り、怒鳴り、必死でローラ・・いいや・・・。
いまはラウラと言うべきだろう・・。小さな彼女の血にまみれた父親の足を
ドンドンと・・激情に任せながらめちゃくちゃに打ちかかる。
が。
パシン!!!っと乾いた音があたり一面に響き渡る。
「・・・赤ん坊一人守れん男が・・。何を言う。悔しかったら・・・・・。」
ひっぱたかれた頬を抑えながら睨むガウリイにフィリップは冷たく言い放つ。
「・・・行こう・ガウリイ・・。君のしなくちゃいけないことは・・・。」
「・・分かってる!!」
この時からだったのだろう・・。ガウリイが・・自分の父親を・・・。
最大のライバル、と認識をし始めたのは。
地面に転がっていた拳銃をガウリイは拾い上げ・・・・・・。
ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!!
「・・・犯人は・・犯行現場に戻ってくる・・か・・・・・。」
感慨深そうにリナは銃声の響き渡った方角を見遣りながら言う。
恐らく・・この騒ぎを聞きつけたか・・それともラウラの生死を確認にきたか。
幼いリナを抱えた一人の男がこの場にご丁寧に舞い戻ってきたのである。
そして・・見事にガウリイ・・それも5歳の子供に足を撃ちぬかれ行動不能になった
のである。
「リナ!!!」
微笑みながらガウリイはこちらにやってくる!!
「ああ〜〜あ・・・。」
我ながら・・・この騒ぎでも・・子供の自分はぐっすりと眠りこけている・・・。
苦笑、それともやっぱりアタシだわ・・と言うべきだろうか?


「リナ」と名乗った女性が消えたのは・・それから直ぐだった・・・。
そして・・あのローラ・・(リナは・・ラウ・・なんだっけ?ともかく別名で呼んで
たけど)・・・そしてあのストロベリーブロンドの男の子もさして時間を置かずガウ
リイのそばから消えていった・・・・・。
「リナ・・・・・・・。」
また、きっと会えるだろうか・・・?そして・・その時は・・・。
自分は父親を超えられるのか・・・・???今は、そのことしか考えられない・・。

「お〜〜い!!リナ!!」
「・・・(でっかい)ガウリイ・・・・・・・・・。」
何時の間にか元の世界に戻ってきたらしい。
「ど〜〜だ〜♪オマエの寝顔、盗撮バージョンだぞ〜〜〜♪」
ピキ・・・(激怒)そういえば・・首筋の痣も・・コイツのせ〜〜で・・・(激怒)
ガウリイ(大人)が・・・。
その後、どのような運命を辿ったか・・誰も知らない。

********************
ちなみに裏設定ですが・・・。
リナ父が新生児リナ(爆)を「男」だと言い張ったのは・・・。
酒の勢いで友人と「賭け」をして・・・。
「馬鹿ヤロ〜〜!!今度生まれてくるのは男だ!!
女だったら全財産おめ〜にくれたやる!!」とか
馬鹿なことのたまい、証文取られたから・・という情けない
設定ゆえ・・でっす・・・・。
追求しないでくらはい〜〜(汗)でっは・・(がふうう!!)




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12502初恋を引きずって(笑)P.I E-mail 11/30-22:39
記事番号12497へのコメント

CANARUさん、こんばんは!早速読ませていただきました〜♪
冒頭からいきなし話題のアノお方がっ!!(まだ読んでない増刊号!)
とーちゃんっ!そんな理由でリナを男扱いしとったんかいぃぃっっ!!!
さすがはリナの父・・・・とは言え、ガウリイの気持ちとか先のこととかは
考えてなかったのかぁぁぁっっ!!!
ガウリイ(子供)が理由を知ったら・・・
「もぉ大人なんか信じられないっっ!!(泣)」
とか言って、壁を蹴るどころの騒ぎじゃなかったでしょーね(笑)
ラウラは元ワルキューレで、ジョヴァンニにーちゃんの婚約者・・・(笑)
きっと親同士が勝手に決めた婚約で、にーちゃんの方は昔からベタ惚れだったん
でしょーね♪彼女がワルキューレを離れた後も未練断ちがたくずーっと思い続け、
リナの大学の先輩になったと知ったときにゃ〜完璧に運命と信じてしまったので
は?(笑)・・・ラウラに言わせればストーカーかもしれないけど(爆)
それにしてもフィリップ父さん、この当時はシリアスでカッコ良かったんです
ね〜(@0@)なにが彼を変えたのか・・・?ガートルードを変えた“あの男”
という言葉も気になります。真相は「気まま」本編第2部で、とゆーところ
かな?わくわく(^^)
また続きを楽しみにしています〜♪
ではでは!

P.S.「王妃アリエノール・ダキテーヌ」(桐生操・著 新書館)とゆー本を
買いました!図書館にもこれとマダム・イザボーの本を入れました(笑)
同じシリーズにカトリーヌ・ド・メディシスとかマルグリット・ヴァロア
とかもあるんですが、ちょっと古いので殆どが品切れ状態(泣)文庫化して
欲しいよう!

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12511みゃはは〜〜♪CANARU 12/1-17:57
記事番号12502へのコメント

>CANARUさん、こんばんは!早速読ませていただきました〜♪
>冒頭からいきなし話題のアノお方がっ!!(まだ読んでない増刊号!)
はい〜〜〜!!
アタシも「あのお方!!」の事を書く日が来るとは思っても
みませんでした!!
ふう・・リナ父の設定を曖昧にしておいて良かったな〜〜〜と今更
ながらでっす!!
>とーちゃんっ!そんな理由でリナを男扱いしとったんかいぃぃっっ!!!
はい〜〜〜!!
不意に脳裏にこ〜んなちゃらんぽらんな設定が浮かんだのです〜〜!!
あはは・・その証文・・今ど〜なってるんだろう・・・(汗)
>さすがはリナの父・・・・とは言え、ガウリイの気持ちとか先のこととかは
>考えてなかったのかぁぁぁっっ!!!
まったくですううう!!
ああ・・・子供心を踏みにじる・・・てか???
>ガウリイ(子供)が理由を知ったら・・・
>「もぉ大人なんか信じられないっっ!!(泣)」
>とか言って、壁を蹴るどころの騒ぎじゃなかったでしょーね(笑)
ですねえ〜〜〜〜!!
きっとフィリップと〜ちゃんに噛みついてオーリママの髪の毛
ひっぱて大騒ぎ!!?
>ラウラは元ワルキューレで、ジョヴァンニにーちゃんの婚約者・・・(笑)
はい〜〜♪
もともと彼女の設定は謎にしておこうかな・・?
と思ったんですが・・・。それを明かしたいが故に今回の話を
書きました〜〜♪
>きっと親同士が勝手に決めた婚約で、にーちゃんの方は昔からベタ惚れだったん
>でしょーね♪彼女がワルキューレを離れた後も未練断ちがたくずーっと思い続け、
>リナの大学の先輩になったと知ったときにゃ〜完璧に運命と信じてしまったので
>は?(笑)・・・ラウラに言わせればストーカーかもしれないけど(爆)
ですねえ・・・。
ああ・・ラウラさん・・・きっと今日も今日とて・・・。
「ちょっと!!警察!!ストーカーが追って来るんだよ!!
ナンとかしてくんない!!?」
と何処かの街角で通報しているんですね!!きっと!!
>それにしてもフィリップ父さん、この当時はシリアスでカッコ良かったんです
>ね〜(@0@)なにが彼を変えたのか・・・?ガートルードを変えた“あの男”
>という言葉も気になります。真相は「気まま」本編第2部で、とゆーところ
>かな?わくわく(^^)
はい〜〜♪
その辺りはだんだん明確にしていきますね〜〜〜〜!!
>また続きを楽しみにしています〜♪
>ではでは!
はい〜〜!!
早速今日も書いてみました!!
ガスちゃん・・や〜〜〜っと少しは報われましたわ!!
>P.S.「王妃アリエノール・ダキテーヌ」(桐生操・著 新書館)とゆー本を
>買いました!図書館にもこれとマダム・イザボーの本を入れました(笑)
あ!!ウチの図書館にも桐生操さんのアリエノールの本
あります〜〜〜!!
ちょっと読んでいて挫折しちゃったんですけどね(汗)
>同じシリーズにカトリーヌ・ド・メディシスとかマルグリット・ヴァロア
>とかもあるんですが、ちょっと古いので殆どが品切れ状態(泣)文庫化して
>欲しいよう!
う〜〜ん・・・・。
アタシも図書館で同じシリーズ(?)かどうかわからないんですが・・・。
メアリー・スチュアートとエリザベート伯爵夫人の本見かけました!!
後者の方は既に借りて読んでます〜〜!!
ううう・・もっといろいろあさってみたいでっす!!