◆−天空歌集 16−ゆえ(12/2-02:47)No.12513 ┣わーい、16!−桐生あきや(12/2-03:25)No.12514 ┃┗やーっと16−ゆえ(12/5-03:03)No.12537 ┣天空歌集 17−ゆえ(12/5-02:55)No.12536 ┃┗あううううう・・・−あごん(12/6-01:03)No.12549 ┃ ┗ひやほぅ(意味不明)−ゆえ(12/6-01:25)No.12550 ┗天空歌集 18−ゆえ(12/6-15:05)No.12552 ┗セフィルは強い子(笑)−桐生あきや(12/7-17:23)NEWNo.12570 ┗私は風邪の子(自滅)−ゆえ(12/7-18:27)NEWNo.12573
12513 | 天空歌集 16 | ゆえ | 12/2-02:47 |
おーちた落ちた♪なーにが落ちた♪ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 天空歌集 16 果てしない時の中で 自分に何が出来る 今はまだ 小さくても 輝き消せやしないよ こぼれそな 涙の粒 流さず胸に溜めて 一瞬を 強く生きよ 一途な雫になって その家はひっそりとその朽ちた姿を横たえていた。 「・・・・・・ひどいですね。」 元は台所なのだろう、アメリアの足下には無数に転がった鍋や皿のかけらが散乱していた。 ゼルとリナは瓦礫の下を見るため無造作にあちこちをひっくり返している。 「何人だったか覚えてるか?」 オレは辺りを見渡しながらセフィルに訊ねた。 「・・・・・見たのは4人。盗賊風が2人と剣士と魔道士が一人づつ。」 まだ原型を保っている数少ない柱にもたれかかってセフィルはどこか遠くを見て居るようだった。 「・・・・・宝珠を持ち出して暫くして、家の方が騒がしいから様子を伺うためにその木の上に登って眺めていたのよ。・・・・・雪の振る寒い日だった。 見えたのは燃えている家と何かを探している数人の男達・・・・・・・そして・・・母さんに剣を突き刺した剣士の姿。」 視線の先、崩れて今は無い壁の奥には一本の大きな木が見える。 「・・・・・・わたしには力が無かった・・・・唄ではどうすることも出来ないし。・・・・何も出来ず、ただ見ているだけ。息を殺し、全てが夢であることを願うだけで・・・・そいつらが居なくなった後、母さんの体からフェアリーソウルが一つ、空へと昇っていったわ。――――舞い降りる雪に逆らうようにね。」 (セフィルは雪、好きか?) (ううん・・・たぶん―――憎んでる。) いつか聞いた言葉を思い出していた。 彼女にとって雪は哀しく冷たい想い出と、何も出来なかった後悔の形なのだろう。 だから・・・・・・か。 (きっと好きにはなれないよ・・・今もこれからも。) 「結構・・・・平気なもんだね、時間が立つと。」 ぽつりと呻くように呟くと、セフィルは体を預けていた柱から気怠そうに離れた。 「セフィル―――。」 呼び止めた声にセフィルが振り向く。その瞳は潤んで赤いルビーのように見える。 自分に誇れる たったひとつを見つけだそう 言葉に出来ない 夢が両手に溢れても 誰にも染まらないよ 果てしない時の中で 自分に何が出来る 今はまだ 小さくても 輝き消せやしないよ 小さく微笑み、そしてくるりと踵を返しリナ達の方へ歩いていった。 そんな事はないと言おうとした――――辛く哀しい事が平気な奴なんていない。 だけど、その辛さや哀しさを明日への勇気に変えて前に進もうとしているから、今という現実を受け入れられる強さを持てるんだと。 リナと同じ様に。けど、 「・・・・・・・・・オレが言えたセリフじゃないよな。」 自嘲気味に呟いた。 「手掛かり無し、か。」 あらかた探してみたけど、『鍵』の手掛かりになるような物は見つからなかった。 「そんな物だろう。残っていたとして連中が見逃すとは思えん。」 ゼルも半ばあきらめ気味で手の埃を叩いていた。 「無駄足か。」 「そうでもないぜ、手掛かりが向こうからやってくることもあるだろう。」 ゼルのセリフを遮るようにガウリイが言うと、あの木の上一点を見据えて剣を抜いた。 「―――気づいていたか。」 ざわっと木の枝が揺れたかと思った瞬間、木の上から真っ直ぐに剣士はガウリイに斬りかかってきた。 ぎゅんっ! 大きく剣が交わり、双方とも大きく後ろに下がった。 「ほんと手掛かりから来てくれるとはね。」 全員の正面にはあの時と同じ虚ろな眼差しをこちらに向ける剣士風の男。 「お前達に用はないと言ったはずだが・・・・・・何故その小娘と共にいる。」 「あたしの勝手でしょ。まあ、どうしても理由が欲しいってんなら―――旅の仲間だからね、一応。」 「くっくっくっ、仲間?その娘がか。人とエルフの混血のそいつがお前達人間と仲間か、これは傑作だ。」 「―――何が可笑しい。」 ガウリイが怒気をはらんだ声でその男に言う。 しかし男はかまわず低く笑う。 「可笑しくって腹がよじれるさ。何が仲間、だ。凝り固まった愚かな考えだな。バカバカしさに反吐がでる。」 「どういう意味よ。」 「その通りの意味だ。何ならその娘にでも聞いてみればいいさ。」 あたし達をからかうようにその男は卑下した笑みを浮かべる。 どうもこの前あったときと雰囲気が違う。 あの時は余計な事は喋らず、一気に蹴りをつけようとしていたのに、今回はやたらと喋る。 あたしとその男の話の隙にゼルとアメリアは左右に展開して、男を包囲する位置に付いていた。 セフィルはあたしとガウリイの後方に立ったままその男を黙って見ていた。 「・・・・・・・・・・・・貴方もわたしと一緒ってこと?」 セフィルは固い声で男に話しかけた。 「近からず遠からずと言う所だな。」 男はセフィルを見るとにやりと口を歪めた。 「だったらそれがどうだって言うのよ。」 セフィルがずいっと一歩前に歩み出る。 「言っとくけど、わたしは貴方とは――違う。」 「ああ違う、オレとお前とはな。だが、同質でもある。――奥底に眠るものがお前にも分かっているはずだ、オレと同じものがな。」 「違うっ――――!」 セフィルが叫んだ。 「何も知らず、何も知らされていないからそんなセリフが吐けるのさ。・・・・・・面白い、証明してみせなオレとお前の違いを、ただし――――。」 ぶわっと男の纏っていた気が膨れ上がった。 「―――頂く物は頂いて行く。」 と、その瞬間男の姿がかき消えた。 「ガウリイ!!」 ひたすら嫌な予感がして、あたしは呪文もそっちのけで叫んだ。 ゼルとアメリアが同時に呪文を放ったがそれも間に合わなかった。 「――ちぃっ」 ガウリイは小さく舌打ちしながら、体を反転させてその方向へと剣を閃かせる。 ―――が、向こうが速かった。 「!!!!!!」 声もなく、セフィルは男に斬りつけられ、大きく後ろへと吹っ飛ばされた。 「「「セフィル!!」」」 その場の全員が倒れたまま動かないセフィルへと視線が釘付けになった。 男の抜き身の剣からは赤い鮮血がしたたり落ちている。 素早く飛び込んだガウリイが切り込み男をその場から引き離す。 その合間にアメリアとゼルがセフィルの側に駆け寄り後ろへと連れていった。 それを確認した後、目配せでガウリイに合図を送り、あたしは唱えていた呪文を解き放つ。 「冥魔槍(ヘルブラスト)!!!」 暗黒の槍が男に突き刺さる瞬間、また男はその場から姿を消した。 「ばかなっ!!」 ゼルが驚愕の声を上げる。 無理もない、普通ならこんな芸当は魔族か一部の竜族にしか出来ないのだから。 でもあたしは知っている、それ以外の者が在る方法で空間を渡る能力を手に入れた奴を。 ひたすらに想像したくない現実ではあるが・・・・・・間違い無い。 「―――人魔。」 あたしとガウリイは苦々しい記憶と共に呟いた。 そんなあたし達をあざけ笑うように、声は頭上から聞こえた。 「この呪法珠、いやVilya(ヴェルヤ)は頂いていく。―――このスナガがな。」 再び木の上に姿を現した男は青い石を手に持ち、そう言い残してまた消えた。 「セフィルの具合はどう?!」 駆け寄った彼女の脇腹からは赤い血がにじみ出ていた。 ゼルが体を支え、アメリアが《復活−リザレクション》の呪文の詠唱を必死で唱えている。 「出血は止まりました・・・・・・・けど、ちゃんとした場所でキチンと治療しないと危険ですっ!」 うっすらと涙を浮かべてアメリアは再び呪文を唱える。 「どうする、リナっ!」 ゼルからセフィルを受け取ったガウリイが焦って聞いてくる。 「この先にあるアノールの村に行く。それしか方法は無いわ。」 「だが、道が解らないぞ。」 冷静な声でゼルが言う。 「・・・・・・・か・・・・ぜ・・・」 小さな掠れた声が聞こえた。 「セフィルさんっしゃべっちゃダメですっ!」 「・・・・・かぜの・・・はしる・・・・みち・・・ひのいり・・・むらが・・・・こふっ」 必死で言葉を紡ぐセフィルが空気と一緒に口から吐血した―――これはマジでやばい。 ひのいり・・・・・・日の沈りの方角という意味ならば、西だ。けど風の走る道ってのは――― 「―――とにかく行こう、このままだとセフィルが―――」 ぎりっと奥歯を噛み締める様に言うと、そっと大事そうにセフィルを抱きかかえるとガウリイは真っ直ぐ西へと歩き出した。 「ちょっと!ガウリイ、道わかってるの?!」 「知らんっ!ただこっちだと思うんだ。」 その割には確信したようにざくざくと歩いていくガウリイ。 焦って闇雲に歩きこの道が間違っていたら―――アウトだ。 呼び止めようとその後を追いかけた時、ぽんとゼルがあたしの肩を叩いた。 「ガウリイのカンを信じてみようじゃないか。」 「そうですっ!今は躊躇しているより動いた方がいいです!」 後ろを押すようにアメリアが手をとり話しかける。そうだここで考えあぐねている場合じゃない。 「―――そうね、解った。―――急ぎましょ。」 あたしは先に進むガウリイを追いかけた。 「ガウリイ!」 なんとか追いついた時、頬の横を何かが通り越していった。――それは一本の道の様に吹き抜ける一陣の風。 そうか、これが風の走る道というわけか・・・それなら、 「この方角で間違いないわっ!急ぐわよっ!」 あたしに続けてゼルとアメリアも呪文を唱えてガウリイを3方向から支えるように掴み飛び上がる。 「翔封界(レイ・ウイング)!!」 3人でガウリイとセフィルを抱えで森の中を走る一本の風の道を飛び急いだ。 「見えたっ!」 ガウリイが言うとまもなくあたし達にも村の家々か見えてきた。 森の深層部分を突き抜けた所に目指すエルフの村―――アノールがあった。 入り口部分で術を解き、大声で呼びかけた。 「けが人がいるの!!だれか医者と安静に出来る場所を!」 その間もアメリアは《リザレクション》を唱えている。 突然の来訪者に驚いた様子の村人が数人いたが、一向に誰も動こうとはしない。 じれたガウリイが声を張り上げた。 「大怪我をした子がいるんだっ!頼むっ!」 悲鳴にも似た叫びだった。 その声で目が覚めた様に動き出した村人の女性が近づき、ガウリイの腕の中で荒い呼吸をしているセフィルをみて顔色がまともに変わった。 「・・・・セフィルっ!あんたアルウェンところのセフィルじゃないのっ!―――と、とにかくこっちに来なさいっ!」 あたし達はそのエルフの女性の家に転がり込むように入っていった。 その女の人とは対照的に周りのエルフ達の冷ややかな視線を受けながら。 ――――オレンジ色の太陽はまさに地に沈もうとしていた。 全ての人を愛せる訳じゃ ないならせめて愛する人を 裏切らずに 疑わずに 責めたり 憎んだりしないで 無邪気でいることが人を傷つけてしまうの? 静かな情熱が 瞳の奥で騒ぎ出す あなたに巡り会えて こぼれそな 涙の粒 流さず胸に溜めて 一瞬を強く生きよ 一途な雫になって ======================================= 落ちつつもなんとか続けてます(おい) 今回はご指摘通り、不幸パートです(笑)暫く不幸というか、くらーい話になります。 話もここから一気に真相へと突き進む予定です。 使いたい歌詞はやまほど在るんですが、使ってたらきりがない事に気が付いた私は(先に気付よ)泣く泣くカットしていくことに。 それでも1話の中に2,3曲混合してることも(笑) 今回はメインはGTOのエンディング「しずく」です。そしてひっそりとまた8話で使った「I BELEVE」もさりげなく・・・・・ 落ちるのが投稿より速いので、作者別の方へ順次登録していきます。 まだ話は続きますが、よかったらおつきあいくださいませ。 |
12514 | わーい、16! | 桐生あきや | 12/2-03:25 |
記事番号12513へのコメント こんばんわ、ゆえさん。 続き待ってたんです。来てみたらアップされてて、嬉しい♪ >おーちた落ちた♪なーにが落ちた♪ ごめんなさい。画面が表示された瞬間、これ見て爆笑してしまいました。 なーにが落ちた♪ セフィルが大変なことになってますね(^^; ガウリイの意味深な呟きも気になりますし。 ホントゆえさんお上手です〜。 >落ちつつもなんとか続けてます(おい) 落ちるのは定めですから(笑)。 >今回はご指摘通り、不幸パートです(笑)暫く不幸というか、くらーい話になります。 2の方の私の話もくらーい話に突入です(笑)。 最近気づいたんですが、私の女のコキャラはやたら泣きます。 桐生本人が泣き虫だからでしょうかね(苦笑)。 健気なセフィルにはぜひがんばってほしいです。 >まだ話は続きますが、よかったらおつきあいくださいませ。 それはもう、振り払われてもついていきます(はぁと)(それはヤメロ・汗) それでは、また。 桐生あきや 拝 |
12537 | やーっと16 | ゆえ | 12/5-03:03 |
記事番号12514へのコメント > 続き待ってたんです。来てみたらアップされてて、嬉しい♪ そう言っていただけるのが、明日への活力へとなっております。ファイトーっ!いっぱぁつ!!! >>おーちた落ちた♪なーにが落ちた♪ > ごめんなさい。画面が表示された瞬間、これ見て爆笑してしまいました。 > なーにが落ちた♪ 財布か体重が落ちてるなら嬉しいんですけどねぇ(笑) > セフィルが大変なことになってますね(^^; > ガウリイの意味深な呟きも気になりますし。 実はこのガウリイの呟きに毎回悩まされております。 あとの設定どうしよってな感じで。・・・・・考えてかけよ、おい。 セフィルも怪我させる予定じゃ無かったんですが・・・・・うーむ、勢いって恐いです(笑) > 最近気づいたんですが、私の女のコキャラはやたら泣きます。 > 桐生本人が泣き虫だからでしょうかね(苦笑)。 > 健気なセフィルにはぜひがんばってほしいです。 セフィルそーいやあんまり泣いてないですね。 結構泣き虫さんだと思うんですが・・・・泣いてる場合じゃないぞと。 暫くはセフィルには辛い展開ですから、ガウリイに目一倍慰めてもらいましょう(笑)いいのかそれで。 > それはもう、振り払われてもついていきます(はぁと)(それはヤメロ・汗) いいんですか?振り払うどころか、取り憑きますよ〜(笑) |
12536 | 天空歌集 17 | ゆえ | 12/5-02:55 |
記事番号12513へのコメント 今回は長くてくらーいです・・・。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 天空歌集 17 I am GOD’S CHILD(私は神の子) この腐敗した世界に堕とされた How do I live on such a field?(こんな場所でどうやって生きろと言うの?) こんなものために生まれたんじゃない −−−−セフィルの受けた傷は深かった。 けど、本当の傷はもっともっと深いものだった−−−−− セフィルが目を覚ましたのは日も昇りきった頃だった。 「・・・・・ん・・・・ガウリイ・・・・・・?」 ベッドの横に座っていたオレはやっと起きた彼女にほっとしていた。 あの時助けてくれたアエラさんというエルフの女の人が、治療の魔法で治療してくれた。 アメリアの話だと、自分たち人の治療呪文より遙かに強大な魔力をもつエルフの呪文の方が数倍も回復が早いって言っていた。 まあ・・・・・理屈はよくわからんが、とにかくセフィルの傷はすっかり治っていた。 が、あれだけの出血だ。体力がかなり落ちていたらしくセフィルはあのままずっと眠り続けていた。 「おはようさん。気分はどうだ?」 「・・・・・ちょっと怠いけど、大丈夫。・・・・・・心配かけちゃった、ごめんね。」 上半身だけベッドから起こすとぽりっと頬をかいた。 「無事ならそれでいいさ。」 ここに来てからの経緯を覚えるだけ説明すると、オレはうーんと背伸びしながらオレは椅子から立ち上がった。 「さてと、めし、食べるか?」 「・・・・・・・ガウリイ、村の名前ぐらい覚えていようよぅ・・・・・・・まあ、おばさんの名前覚えてだけでもいい方か・・・・・・じゃあここはアエラおばさんの家なんだ。」 はあっとため息を付きながらセフィルはベッドから降りた。けど村の名前って・・・・アノなんだっけ。 「ここの家の人と知り合いなのか?」 「・・・・・まあ、知り合いってゆーかなんてゆーか・・・・母さんと幼なじみなんだって。」 ぺたぺたと廊下を歩きながら話ていると、一瞬セフィルがよろっと倒れそうになった。 倒れ込む前に支えてやって大丈夫だったが、やはりまだ体力が戻りきってないみたいだ。 「ありがと。・・・・・やっぱ半分でもエルフの柔な体力も受け継いでるんだね・・・・・・残り半分は人なのに、ね。」 セフィルは手を離し苦笑しながら呟いた。 オレは黙って頭を軽くぽんぽんと叩いてやった。いや、それだけしか出来なかった。 魔力とかエルフの事とか詳しく知らないオレが下手な慰めを言うのは彼女に対して失礼だと思ったから。 けど、セフィルは頭に手を置いたオレに満足そうな笑顔を向けた。 ドアを開けて食堂に行くと、ゼルが一人コーヒーを飲んでいた。 「気が付いたか。どうだ具合は。」 ぶっきらぼうにいうゼルだか、彼もまた結構心配していたらしく表情に安堵の色が見える。 「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう。」 セフィルに、にこっと笑顔を向けられて「ならいい。」とそっぽを向くゼル。どうやら照れてるらしい。 「けど・・・・・」 そう呟いて当たりをきょろきょろと見渡すと、 「リナさんとアメリアさんは?あとアエラさんも。」 「あの二人なら出かけている。ここの主も一緒だ。」 「そーそー、朝早くに使いの人がきて、ここのおさるさんに呼ばれて言ったんだ。」 すべしゃっ! なんか盛大に二人ともこけてるけど・・・・・・オレなんか変なこと言ったかぁ? 「・・・・・・・おさるじゃなくて、おさだ、長。ここを束ねている奴だ。」 「おーおー、そんな名前だった気がする。」 ぽんっと手をうつオレにゼルはやれやれと言いながら席に座り直す。 「・・・・・・・・・・・・・長が呼び出したのね。」 と、セフィルが固い表情で俯きながら呟くと、くるりっと踵を返し食堂を飛び出した。 「―――おいっ!どうしたんだ!」 あわててセフィルの後を追いかけるゼルとオレ。 ばたんっと寝ていた部屋に飛び込むと「着替えてるから開けたらファイヤーボールだからねっ!」とリナみたいなセリフを言う。 暫くしてドアが開くと着替えたセフィルがオレ達の間をすり抜けて、今度は外へと飛び出した。 突風に埋もれる足取り 倒れそうになるのを この鎖が 許さない 「セフィル!一体どうしたんだ?!」 あっさりと追いついたオレは道の真ん中で彼女の腕を掴んだ。 その表情は焦りと不安の色が濃い。 「事情ぐらい説明してくれ。大体お前さんの体はまだ本調子じゃないんだぞ?何の為におれたちが残っていると思う。」 そう、オレとゼルが残っていたのは他でもない、またあのスナガとかいう奴が襲ってこないとも言えないから。無論容態が心配だったのもある。 尚も離れようとするセフィルの腕をぎゅうっと強く握り返す。視線は彼女に向けたままで。 「―――行かなきゃ−−−−じゃないときっと暴れてると思うから。」 「誰がだ?」追いついたゼルが聞く。 「アメリアさん。」 「「はぁ?」」 きっぱりと言い切るセフィルの言葉に間抜けな声を二人同時に上げた。 「とにかく早く行かないと―――いいから付いてきて。」 言われて引っ張るセフィルに促されるまま、オレ達は村の奥にある結構立派な家に辿り着いた。 玄関に入る也聞こえてきたのはアメリアの声だった。 「なんですって?!それでもあなた方は神族と言われるエルフなんですかっ?!しかも貴方は上に立つ立場の方でしょう!そんな人がなんて事を言うんですかっ!!そんなの絶対に正義じゃありませんっっっ!!」 ぱんっと指さして胸を張りながら浪々と口上を述べているアメリアの姿が想像できた。 「ほらね。」 言うセフィルにうんうんと妙に納得しながら頷くオレ達・・・・・って、なんでアメリアが暴れてるんだ? 「おーかた、あの人がリナさん達に言ったんでしょ。」 つかつかと先頭をあるくセフィルの表情は後ろからなんで解らないが面白くないっといった感じだ。 途中何人かのエルフが居たが、皆一様にセフィルを見ると顔を背けたり、こそこそと話をしたりとすこぶる感じが悪い。 「おい、何を言われたってんだ。」 同じくセフィルの後を追いかけるゼルが言う。 「決まってるじゃない。―――――『出ていけ』って言われてるのよ。」 次の瞬間、セフィルは一番奥の部屋の扉を勢いよく開いた。 心を明け渡したままで 貴方の感覚でけが散らばって 私はまだ上手に 片づけられずに 「セフィル!?」 「セフィルさんっ!」 驚いて振り向いて見れば、家で寝ているはずのセフィルと付き添い2名がそこに居た。 あたしたちが驚いてるのなんか構わずにセフィルは部屋に入ると真っ直ぐにここの長であるバルドールさんと向き合った。 「ご豚沙汰しております、長。」 正面を見据えるセフィルの瞳には、明らかに怒りの色が伺える。 「リナさん達に何をおっしゃったかは察しは付いています。言われずとも近いうちにここを後にします。」 あたし達の正面にある机に座ったまま両手を机の上に置き、組んだ掌を口元に当てたまま睨み付ける様にバルドールさんはセフィルを見た。 つんつんと横からマントを引っ張る奴がいる。ガウリイだ。 「どうなってるんだ、一体?」 「あたしが聞きたいわよ。大体どうしてあんた達がここに居るのよ。止められなかったの?」 「いや、止めるには止めたんだが・・・・・」 「どうしても行くといって聞かなくてな。アメリアが暴れてるだろうからとか言って。」 気まずそうに話すガウリイとゼル。 「・・・・・・・・・・・確かに正義の鉄拳振るいそうな勢いだったわね・・・・」 さっきまでのやりとりでのアメリアの行動が目に浮かぶ。 「そんなぁ、まるで私がリナさん見たいにやたらと暴れてる見たいじゃないですかぁ〜。」 「誰がだっ!」 すぺんっと懐から取り出したスリッパでアメリアに制裁を加えた後、ゼルが、 「それで、何を言われたんだ。セフィルは『出ていけ』と言われていると言っていたが。」 「その通りよ。あたし達人間とハーフエルフのセフィルはここに災いをもたらすから即刻立ち去れってさ。」 あたしがそう説明していると、前の方ではバルドールさんの後ろに控えていた若いエルフの男がセフィルに向かって何かを言っていた。 「やはりお前の様な者の存在自体が間違っているんだ!お前が現れてからと言うものどうだ?!平穏だった村が騒がしくってしようがないじゃないか!それに――――」 その男の言葉を遮ったのはバルドールさんの差し出した手だった。 セフィルは黙ってその言葉を聞いていた。 「―――人間と行動を共にしておるのか。」 低い声でバルドールさんが問いかけた。 セフィルはただ頷いて答える。 「お前の力を利用しているだけでは無いのか。」 『―――――っな?!』 彼女の後ろにいたあたし達が怒りの声を上げるのも構わず、バルドールさんは話を続けた。 「元々人間などが、なんの裏も考えもなくお前の様な者と一緒に居るはずはない。だとすれば―――」 ぴしっ!! 部屋中の空気がまるで弾けるように動いた。 その中心にいたのは黙ったままバルドールさんと対峙しているセフィル。 「いい加減にして下さい。――――わたしはともかく、彼らを侮辱するのは許しませんよ。」 セフィルは静かに、しかし怒気をはらんだ声でバルドールさんに話しかけた。 「どういう意味だね、それは。」 全く動じずバルドールさんが問い直す。それ以外のエルフ達には一様に動揺に色が隠せない。 この余裕はハーフエルフと純粋なエルフとの魔力の差から来るものなのだろうか。 しかし、セフィルも下がることなく言う。 「あれからわたしも旅をしました。・・・・・そんな旅の途中にいくつかの攻撃呪文を会得しましたよ。あなた方が一番恐れて近づけようともしなかった黒魔術もしかり、です。―――――それもと、あの時の唄を紡ぎますか?」 まるで相手を挑発するかの様にセフィルはにっこりと笑う。 「――復讐、とでも言いたいのかね。」 その言葉バルドールさんが初めて焦りの様なものを混じらせた。 あたし達は事の成り行きをただ黙って見届けるしかなかった、いやセフィルからの気配がそうさせているのだ。 初めて感じるセフィルの怒りの気。あの小さな体から発せられているとは思えないほど圧迫感があるのだ。 その気に気圧される様に他のエルフ達はその場所から動けないで居る。 不愉快に冷たい壁とか 次はどれに弱さを許す? 最後(おわり)など手を伸ばさないで 貴方なら救い出して 私を 静寂から 時間は痛みを 加速させ行く 「わたしに復讐される様な事をあなた方がやったとお認めになるんですね?」 静かな、それでいて揺るぎ無いセフィルの言葉にその場にいたエルフ全員がぐっと言葉を飲み込んだ。 彼らエルフがセフィルにやった事? 何がなんだかか解らずにいると、一緒にここまで来たアエラさんがそっとあたしの側にきてた。 「悪いけど、説明してくれる?」 この中で話が出来そうなのは彼女だけだと思い訊ねると、ぴくんっと体を硬直させ、そして絞り出すように語り始めた。 「・・・・・・・私達エルフは以前から人間の間に生まれた子供、ハーフエルフを危険視していました。故に人間との交わりを絶ち、森の奥深くへと住まいを移しひっそりと暮らして来ました・・・・・しかし心までには歯止めはかけられず、時折人間との恋に落ち一族を離れていくものもおりました・・・・・セフィルの母親、アルウェンもその一人でした――――」 人間と恋に落ちたアルウェンは村を離れ、森の一角に住まいを構えてそこで一人の娘を産み落とした――それがセフィルだ。 しかしどうしてアルウェンだけは一族を追われず、村から離れているとはいえ同じ森の中に住むことが許されたのか。 それは一重に彼女の魔力―――巫女としての能力があったからだ。 『呪歌』を唄い、精霊の力を使いこなす彼女のような巫女を『精霊使い(エレメント・マスター)』と言って、エルフの中でもかなり特別な存在らしい。 森の糧で日々の生活を生きるエルフ達にとって彼女の力は手放しがたいものだったのだろう。 時々村の為に『呪歌』を唄い、後は離れた家で親子ひっそりと平穏に暮らしていた―――セフィルが唄うまでは。 母親が子守歌の様にすぐ側で聞いていた『呪歌』をセフィルが覚えていくもの当然の話で、何時しか彼女も呪歌をうたえるようになっていた。 「しかし、セフィルの『呪歌』は母親アルウェンの物とは明らかに違っていました。―――彼女の方がより強く精霊に働きかけるのです。」 だからセフィルの『呪歌』は唄うのではなく、本来の(紡ぐ)という言葉で現された。 村は騒然となった。本来エルフのごく一部にしか唄えない『呪歌』を本来の形そのままに紡いだのがハーフエルフだと言う事実に。 ――――このハーフエルフは危険だ―――エルフの間にそんな感情が広まっていった。 その後エルフ達はセフィルに唄うことを固く禁じ、呪文・魔道などの習得も禁じた。無論村に来ることも、森から出ることも。 いわば軟禁状態に置かれたのだ。 「それでもどこかでセフィルの力を甘くみていた部分があった様です。そんな考えの若いエルフ達がおもしろ半分でセフィルを在る場所へと誘い出しました――――それがこの森の聖域、ミナス・ティリスです。」 おや?ティリスってどっかで聞いたことがあるような・・・・・・? 「エルフの言葉でミナスとは『塔』のこと、そしてティリスとは『守護』の意味、セフィルとアルウェンの一族が受け継ぎし名前でもあります。」 ――セフィル=フィラ=ティリス―――これが彼女の本当の名前。「フィラ」というのは巫女や神聖なものという意味らしい。 「ミナス・ティリス――《守護の塔》には結界が張られて、在る物が封印されていると言い伝えられられてきました。彼らはその封印をセフィルに解かせようと思いそして・・・・・セフィルは本当にその結界を解いてしまったのです。」 そしてその塔に封印されていたのがあの《呪法珠》Vilya(ヴェルヤ)という訳か・・・・・ 「その事件を境にセフィルに対する村の者の態度はあまりにも酷いものでした・・・・恐れるも排除することも出来ず・・・・・私たちはセフィルの存在を全て無視し続けるという行動に出たのです。」 ぼろぼろと涙を流しながらアエラさんは震える声で語りつづけた。 「あの子は誰からも話しかけられず、それどころ見かけただけでその場を立ち去る者もいたぐらいでした。」 孤立無援。誰からも相手にされず、存在も認められず、ただ一人孤独な毎日。 あの明るく笑うセフィルが今までそんな哀しいくて辛い毎日を送っていたなんて・・・・ あたしは言葉も無く、ただ前に立ちつくしているセフィルの背中を眺めていた。 I am GOD’S CHILD(私は神の子) 哀しい音は背中に爪跡を付けて I can’t hang out this world(この世界を掲げる事など出来ない) こんな思いじゃ どこにも居場所なんて無い ――体の傷は癒えても、心の傷が癒える日が来るのだろうか。 「・・・・・・確かにわたしの力が驚異となっている事は知っています。でもわたしは今ここに存在しているんです。それをあなた方エルフにとやかく言われるつもりは在りません。――――私は私だから。」 泣き崩れるアエラさんの側にいくとセフィルは「ありがとう。」と小さな声で囁き、また真っ直ぐにエルフの長、バルドールさんを見た。 「別に復讐なんて馬鹿な事は考えてません。ただ2,3わたしの質問に答えて頂きたいだけです。その後はお望み通り、ここから出ていきます。」 苦々しい表情のままバルドールさんが椅子から立ち上がった。 ふと、横にいたガウリイが天井の方を見上げていたのに気が付きあたしもみてみたけど・・・・なにもないぞ。 が、そう思った時、その場所から聞き覚えのある声だけが響いてきた。 「―――いやぁ、その話、僕にもお聞かせ願いませんか。バルドールさん。」 ゆらりと虚空から現れたのは、黒い法衣に錫杖を手にした自称「謎の神官」こと、 「あんたっ―――ゼロス?!」 そう、獣神官ゼロスだ。 ====================================== やっと更新できました。実はこれ3回目の書き直しでやっとできあがった物です。 内容がめちゃ重いです。長くなりましたが、在る程度話の重要部分でもあるので、ちょっと説明ぽいですが、一気に書かせて頂きました。 集団の中で異質なものに対して、無視をするというのはやられている本人には周りが考える以上に辛いものだと思います。 セフィルも自分の存在意義を見失いかけていた所にリナ達と出会っているのですから少しは救われているのかなと思います。 歌詞も重く鬼束ちひろの「月光」です。とても気に入っている曲なので、どうしても使いたくて書いたような話です。 いや〜どうも重い歌詞が好きなもので。 あと、やっぱり出てきたゼロスくん。これ以上登場人物が増えたら私、対処できるのだろうか・・・・・まずいっ非情にまずいぞ。 次回もくらーい話になると思いますが、おつきあい下さいませ。 |
12549 | あううううう・・・ | あごん E-mail | 12/6-01:03 |
記事番号12536へのコメント こんばんは。あごんとゆーモノです。 天空歌集17。 読み終えた第一声はとゆーと。 あううううううううう・・・・。 です(いや、わからんよ、それじゃ)。 「しかし、その幸せも永くは続かなかったのです・・・」 てゆーノリですね(泣)。 ハーフエルフといえば、大体が迫害されてますよねぇ、大抵の漫画や小説では。 ひょっとしてセフィルも・・・? とか思ってましたがその通りで大泣きです。 ちなみに私は小泣きジジイが好きです(関係ねぇよ)。 でも、なんだか、迫害の理由に筋が通っていて妙に納得してしまいました。 大抵の小説や漫画では、そこいらがボカされているんですけど、ゆえ様はきちんと理路整然とされた説明で純粋にスゴイな、と思いました。 ああ。次回が気になりますぅぅぅっ。 とーとーヤツも出張ってきやがりましたし。 あ、ヤツってあのオカッパのことです(笑)。 ↑どーやら嫌いらしい(苦笑)。 なんだか取り留めのない感想になってしまいました。 ではでは、愛想なしで申し訳ありませんがこの辺で。 続きを楽しみにしてります。 ではでは、あごんでした。 |
12550 | ひやほぅ(意味不明) | ゆえ | 12/6-01:25 |
記事番号12549へのコメント >天空歌集17。 >読み終えた第一声はとゆーと。 >あううううううううう・・・・。 >です(いや、わからんよ、それじゃ)。 いえいえ、なんとなーく分かります。 自分で書いていてもあうううう〜って感じでしたから(笑) >「しかし、その幸せも永くは続かなかったのです・・・」 >てゆーノリですね(泣)。 はい、もーそのノリです(笑)不幸話が好きなものですから・・・・(悪趣味) >ハーフエルフといえば、大体が迫害されてますよねぇ、大抵の漫画や小説では。 >ひょっとしてセフィルも・・・? >とか思ってましたがその通りで大泣きです。 ハーフエルフの設定は以前から考えていた話から持ってきました。まあ、某RPGの影響もあるのですが。ちらちらとその影が見えますし(笑) セフィルにはもちっと不幸モードになって貰います。 というより、リナの出番が少ないぞ。ゼルとアメリアに関しては・・・・・ごめんなさいと(おーい?) >大抵の小説や漫画では、そこいらがボカされているんですけど、ゆえ様はきちんと理路整然とされた説明で純粋にスゴイな、と思いました。 そう言っていただけると、救われます。 書いていて気が付いたんですが、これってTRYの黄金竜族とエイシェントドラゴンの関係ににてるかなーと。 この設定も伏線はりまくりです。だからもつれかかってるってば。 >あ、ヤツってあのオカッパのことです(笑)。 >↑どーやら嫌いらしい(苦笑)。 お嫌いですか(笑)ほほほほほ。 今回もけっこういやな役を担って頂くつもりです。まあ、元々そーゆー存在ですし(笑)でも書ききれるかなぁ。 >なんだか取り留めのない感想になってしまいました。 本当に毎回頂く感想が楽しみと申しますか、これを支えに続けています。 一言でもいただけたら、私は木にでも登って書きますので(笑) がんばります。 |
12552 | 天空歌集 18 | ゆえ | 12/6-15:05 |
記事番号12513へのコメント さあて、今回も話が進んでないぞぉっ。暗いぞうっ。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 天空歌集 18 夜 目覚めれば 窓のかなたに さざめく 水銀の星たち あの窓この窓に 人たちの灯す 見知らぬ灯が ゆれてる 「貴方には初めましてと言うべきでしたね。バルドールさん。」 虚空より現れた黒い神官はにこやかな笑みを浮かべてエルフの長であるバルドールさんに話しかけた。 「―――――魔族か。」 呻るように警戒しながら彼は認めたく無い事実を呟いていた。 「ここで否定しても意味は無いでしょうから。」 黒い神官はひょいっと肩を上げると顔をこちらにむけた。 「なんであんたが湧いて出てくるのよ、ゼロス。」 と、リナさんが腰に手を当てて、片手は頭をがしがしとかいてあきれたといった感じた。 「おや、これはリナさんじゃないですか、お久しぶりですね。ガウリイさん、ゼルガディスさん、アメリアさんも。」 まるで古い友人に出会った様に軽くいうゼロスと呼ばれた魔族は、相変わらずニコニコとしていた。 「何がお久しぶりよ。んなややこしい時に現れて・・・・・何の用なのよ。」 「言ったでしょう?興味深いお話されてるので、僕も聞きたいなーと。彼女にどう説明すのか。ねぇ、バルドールさん?」 そういって振り向いたゼロスの顔は面白がっているみたいだった。いや、実際面白がっている。 「・・・・・・・・何故、私を知っている。」 魔族に知り合いの様に言われたのがよっぽど嫌だったのかバルドールさんは面白くなさそうに低く問いた。 「ああ、貴方とは初対面ですよ。ただ貴方のお父上と多少面識がありましてね。――そう降魔戦争の時といえばおわかりになるかと。」 びくっとバルドールさんが大きく反応した。その表情には明らかに焦りが見える。 ふーん・・・・・・そうなんだ。わたしは心の中でそう呟いた。 他の村の人たちも動けないでいる。無理もない、彼からが魔族そのものを目の当たりにするのはおそらく初めてだろうから。 それに・・・・これはわたしの感だけど、このゼロスって人(人じゃないけど)ただもんじゃない。 現にリナさんやガウリイさんも話こそ普通にしているけど、警戒は怠っていない。 ・・・・・・・・・・・ま、いいか。わたしは突然の来訪者を気にするでもなく、バルドールさんに話の続きを始めた。 「質問、初めてもいいですか?」 何を言い出すんだこいつはといった感じでバルドールさんが睨み付ける。 でも、わたしは構わず話を続ける。―――いくつかの疑問を解決してから、さっさとここの場から離れたいから。 けど、この様子だと質問に答えてくれるかどうか・・・・・その懸念は予想通りだった。 「一つ、わたしが封印から解いたあの呪法珠はシルフが宿ってるんですね?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「二つ、この村にわたし以外のハーフエルフが存在してましたね。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 やっぱり何にも答えない。けど、別にこれは予想範囲だったし、実際の所聞くまでもない話なのだけれども。 呪法珠の事もあのスナガといった奴の事も何となく分かったから。バルドールさんの顔色と周りの反応で、事実だと。 それでも質問しているのは、わたし也のささやかな仕返しだ。復讐なんかじゃない、リナさん達対しての態度と今までの報復だと。 聞かれたくない事を聞かれたくない者に問いただされているのだから、彼らが不機嫌な訳がない。 「まあ、いいです。大体分かりましたし・・・・・あなた方に聞くより、こっちの人に聞いた方が良さそうですから。」 そういってわたしはゼロスを見た。 この人は知ってる。おそらく全てを。 だから出てきたのだろう、自らの罪を肯定も否定もできないエルフ達の苛立ちの負の感情を食らう為に。 実際、ゼロスは満足そうにこちらのやりとりを眺めているし。さすがは魔族と言ったところか。 疑問はここでは解決出来ないだろうし別の道筋から答えは出せる、でもこの問いだけは彼らからでしか答えを導き出せない。 わたしは極力冷静な口調で話しかけた。 遠い異国に 置き去りにされた 名前も忘れた 子供の心が あかりをつないで 星座をつくる 想いをつないで 星座をつくる 「三つ・・・・最後にこれだけには答えて下さい。・・・・・・わたしの父・・・・フィガロはどこに居ますか。」 わたしの父、母であるアルウェンが愛した人間の存在。 確かに存在するはずのその人は、わたしの側には居なかった。 母に一度聞いては見たけども、名前だけを告げ後は哀しそうな顔で微笑むのでそれ以上聞けなかった。 別に会いたい訳じゃない。 ただ知りたかったし確認したかった―――――自分のもう一つのルーツを。 「フィガロ=フェラグランドは既にこの世に存在しない。」 吐き捨てるようにバルドールさんが答えた。 やっぱりそっか・・・・半ば諦めてはいたけど、これで踏ん切りが憑いた。フルネームが分かっただけでも良かった。 「ありがとうございました―――それでは。」 わたしはそう言うとぺこんと頭を下げて、リナさん達の方へ向かった。 「・・・・・やはりハーフエルフだな、人間はともかく魔族も近づけるとは。」 嫌みたっぷりといった感じだけど、別にわたしは何も感じなかった。と、いうより感覚を麻痺させてないと自分を保っている自信が無かった。 歩み寄ったわたしをガウリイ達は何も言わず迎え入れてくれた。それかとても嬉しかったし、ありがたかった。 無言のまま、全員がその場から立ち去ろうとした時、バルドールさんがわたしを呼び止めた。 「お前は・・・・半分とはいえエルフの誇りというものがないのかっ!」 わたしは振り向かず、その声を背にしたまま、 「わたしにとっては闇も光も同等であり、分けて考えるものでは無い。そうお話したことがあったはずですが。」 それ以上、彼らは何言ってこなかった。 「わたしは村を離れます。もうお会いすることもないでしょう。皆さんお元気で―――。」 これでいいよね、母さん。 長の家を出てから、セフィルはずっと黙ったままだった。 アエラさんの家に戻るとセフィルは簡単な手紙をしたためた。『ごめんなさい、そしてありがとう。』とだけ。そして荷物をまとめ、あたし達はアノールの村を後にした。 ここに来た時と違うのはセフィルから笑顔が消えていたのと、後ろからひょこひょこと憑いてくるゼロスの存在。 「あんた、いつまでついて来る気よ。」 「おや、いけませんか?」 「嫌。」 「そんなぁ〜つれないじゃないですかぁ〜。」 よよよと泣き崩れるポーズを取るが、そんなもん知ったこっちゃない。 あの事件以来、姿を見せることが無かったこいつにあたしは正直会いたくなかった。 問答無用ではり倒したいのは山々なのだが、今回の騒動にはどうもこいつがまた一枚噛んでいるようなので仕方なく一緒に行動している。 さっきのエルフ達の事といい、ゼロスの事といい、あたしはかなりムカついていた。 「リナ、お前がイライラしても仕方がないだろう。」 ぽふぽふとガウリイがあたしの頭に手を置いた。 「イライラなんかしてないわよっ!」 「それがしてるって。オレ達がどうこう言えることじゃないだろう。」 おそらくガウリイも気が付いてるんだろう、あたしが何に対してイラついているか。 「分かってるわよっ!」 ぷいっと顔を背けてつかつかと歩き出す。 あたしは先頭を行くセフィルの背中を見ていた。 あたしが怒っても仕方がないことは十分に理解しているし、彼女の立場を悪くしていた一環はあたし達人間にもあるのだから。 でもここまでハーフエルフが迫害されているとは思わなかった。 そして、セフィルの怒りはその事よりもあたし達を侮辱した方へ向いた。 それがイライラしていた原因なのだ。 アメリアじゃないがつい正義という言葉が浮かんできた。―――何が正しくて何が間違っているのか。 少なくとも彼らエルフに正義があるとは思えなかった。 文句の一つも言ってやりたかったが、言ってどうなるものでもないし、何よりセフィルが言うべき事なのだから。 けれども彼女は最後まで自分のされた仕打ちに対しては抗議しなかった。 潔い、と言ってしまえば簡単だか、本質はそんな簡単なものじゃないだろう。 彼女はあたし達に対して誠意を見せた。なのにあたし達と来たら・・・・・・ イライラしている訳―――それは他でもない、あの時何もして上げられなかった自分の不甲斐なさそのものだった。 アメリアもあれから一言も口を聞いていない。 ゼルもまた同じだ。 全員にやるせなさと苛立ちが漂っていた。――ただ一人ガウリイを除いて。 ここは見知らぬ 都会の空の 誰にも見えない 暗い雲の中から あかりをつないで 星座をつくる 想いをつないで 星座をつくる 「オレ達はありのままを受け止めてやればいい。それが一番セフィル対してのオレ達の答じゃないのか?リナ。」 いつもののんびりとした口調で笑いながらガウリイはあたしにいった。ううん、ゼルとアメリアにも。 ふと、あたしはいつぞやか聞こえたあの言葉を思い出していた。 ――― 永劫と刹那と ――― 真昼と暗闇を ――― 宿しものよ ―― ――― 彼のものへ 天空の唄を ――― 彼のものに 海の唄を ――― ――― 彼方より此方へ 届かんことを ―― ――― 我は汝に願い乞う ―― ――― 有と無と 昼と夜を 抱きし汝と共に 在らんことを ―― 意味は未だによく解らない、それが何をさして誰に対するものなのか。 でも直感的にセフィルを一人にしちゃいけないんだと理解していた。 孤独と言う海の中で、彼女が唯一見つけた安息の島がきっとあたし達という存在なんだ。 あたしは初めて彼女と出会った時の、あの輝く様な笑顔を見たいと素直に思った。 「そうね。ストレスは別で発散すればいいんだし。」 あたしは振り向きぴっと指をたてて軽くウィンクした。 あたしのセリフにアメリアとゼルもうなずき苦笑すると、全員から苛立ちもやるせなさも消えていた。 「せーふぃーるっ!」 あたしはがばっと先頭を歩くセフィルの背中に抱きついた。 「うひゃっ?!リナさんっなんです?!」 にまっと笑うあたしにセフィルはひきっと顔がこわばった。 「うふふふふふふふふ。ちょっとストレス解消したなーって♪」 「・・・・・・・・・・それって盗賊いぢめのターゲットが居ないかってことです・・・・?」 「うふふふふふふふふふふふふふふ。」 「うはははははははははははははは。」 向き合うあたしとセフィル。 暫しそのままでいると・・・・・・ ぷっ。 「ぷ・・・・・あははははは!・・・・・・リナさんらしいや。とにもう、しょうがないなぁ。」 そういって笑いながら瞳の端に浮かぶ雫をぬぐい去った。 最初に出会ったときの笑顔そのままで。 「この先に手頃な盗賊一味のアジトがあるから、そこにしましょーか。」 「おっしゃぁ!そこに決まり!アメリアあんたも行くんでしょっ!」 「もちろんです!悪を見過ごす訳にはいきませんから!!」 がしっと腕をあげていつもの調子のアメリアも駆け寄ってきた。 「止めなくていいのか?」 ゼルがからかうように聞いてきた。 「じゃあ、お前さん止められるとおもうか?」 両手を肩まで上げ、ふるふると首を横にふるゼル。 「ま、今回だけは特別な。」 そう言ってオレ達はストレス解消の餌食になっている盗賊どものアジトを眺めていた。 遠い異国に 置き去りにされた 名前も忘れた 子供の心が あかりをつないで 星座をつくる 想いをつないで 星座をつくる 今まで傷つけた 人たちの数を 一粒 一粒 つなげて 冷たいこの肌に ふれる星たちが ふれれば 消えてゆく 幻 ======================================= 18話をお送りしたいます。 うっ、ゼロスが出てきた意味が・・・・おいおい彼には活躍していただきます。 今回はセフィルの一人称がほとんどでしたが、ちらりと彼女の世界観が見えていたのにお気づきでしょうか?(わからんて) このセリフが彼女の存在に大きく関わる・・・・はずです。きっと。(自信なさげ) エルフがみんなこーだとは想いませんし、結構フレンドリーな所もあるでしょうが、このアノールのエルフ達は徹底した人間蔑視の方々です。ああ、正確悪。 その辺の経緯も追えればいいんですが・・・さらに長くなりそうなので、別口でなんとかフォローしますっっ。 今回の歌詞はまたまた谷山浩子さんの名曲で「地上の星座」です。 最後のフレーズは初期のアルバムのにしかない歌詞なのですが、気に入っているので今回使わせて頂きました。 さあ、これからも裏設定でまくりですっ。自爆するぞいつか私っ! それでも応援して下さる方に支えられて、次もがんばります。 でもどこまで続くかなぁ・・・・しくしく。 |
12570 | セフィルは強い子(笑) | 桐生あきや | 12/7-17:23 |
記事番号12552へのコメント どうも、桐生です。 なんかふざけたタイトルですが、桐生の本心です。 ついにゼロスが出てきましたね。 やっぱり書く人それぞれによって、同じスレキャラでも全然違いますから、ゆえさんのゼロスを楽しみにしています♪ 私のゼロスはというと………「楔」見てください(爆)。 今回は、前回に引き続きテーマが重いですね。それに潰されずにしっかり書いてるゆえさんはすごいと思います。 ………わたしは無理だな。 >疑問はここでは解決出来ないだろうし別の道筋から答えは出せる、でもこの問いだけは彼らからでしか答えを導き出せない。 >わたしは極力冷静な口調で話しかけた。 > > 遠い異国に 置き去りにされた > 名前も忘れた 子供の心が > あかりをつないで 星座をつくる > 想いをつないで 星座をつくる > >「三つ・・・・最後にこれだけには答えて下さい。・・・・・・わたしの父・・・・フィガロはどこに居ますか。」 ここっ、ここ痛いです。セフィルの気持ちというか、場の緊張がダイレクトに伝わってきます。 それにしてもセフィルはホント強いです。 >「お前は・・・・半分とはいえエルフの誇りというものがないのかっ!」 >わたしは振り向かず、その声を背にしたまま、 もう少し、あんたたちが誇りを持てるようなことをセフィルにやってりゃね、とは桐生の心の突っ込み(笑)。 >「わたしにとっては闇も光も同等であり、分けて考えるものでは無い。そうお話したことがあったはずですが。」 ここらへん、独特ですよね。二つの血を持つハーフエルフゆえの世界観なのかセフィルオンリーの世界観なのか。ある意味とても人間らしくて、別の意味では某混沌の姫君らしいです(笑)。 セフィルの子供っぽい部分がどんどん圧迫されているみたいでとっても心配です。無事かしら、この子………。 >うっ、ゼロスが出てきた意味が・・・・おいおい彼には活躍していただきます。 彼の活躍って何やらものすごい不安をあおりますね(笑)。 >エルフがみんなこーだとは想いませんし、結構フレンドリーな所もあるでしょうが、このアノールのエルフ達は徹底した人間蔑視の方々です。ああ、正確悪。 メンフィスとかは結構フレンドリーでしたよね。 どこまで言っても平行線というあたりが、TRYの黄金竜の長老を彷彿とさせます。 彼らなりに、リナたちと相反する理由はあるのでしょうが、リナたちと私たちの視点がリンクしている以上、やっぱりムカツク悪役なのでした(笑)。 >さあ、これからも裏設定でまくりですっ。自爆するぞいつか私っ! >それでも応援して下さる方に支えられて、次もがんばります。 楽しみにしてます♪ >でもどこまで続くかなぁ・・・・しくしく。 ああそんな、泣かないで………。 そういえば、以前出てきたミナス・ティリスって………指輪物語ですか? 違ったらごめんなさいです(汗) それでは。 がんばってください。 桐生あきや 拝 |
12573 | 私は風邪の子(自滅) | ゆえ | 12/7-18:27 |
記事番号12570へのコメント > なんかふざけたタイトルですが、桐生の本心です。 強い子です〜。くっ、おかーさんは草場の陰で見守ってるからね〜っ(←これこれ) > やっぱり書く人それぞれによって、同じスレキャラでも全然違いますから、ゆえさんのゼロスを楽しみにしています♪ うちのゼロス君はどうなるでしょうね・・・・実は話の中にゼロスを登場させるのは今回がまったくの初めてでして。 自分ではTV版のゼロス君のキャラが好きなのですが・・・・・どうなるでしょう・・・・話的にはゼロスに動いて貰わないといけないし。はははは、行き当たりばったりになりそうです。 > 今回は、前回に引き続きテーマが重いですね。それに潰されずにしっかり書いてるゆえさんはすごいと思います。 > ………わたしは無理だな。 自分でもこりゃ重すぎだとちょっと反省しまして。 でもセフィルの設定ではどーしても切り離せない展開だったのですが・・・・消化不良にならないかなとひやひやでした。 >>「三つ・・・・最後にこれだけには答えて下さい。・・・・・・わたしの父・・・・フィガロはどこに居ますか。」 > ここっ、ここ痛いです。セフィルの気持ちというか、場の緊張がダイレクトに伝わってきます。 > それにしてもセフィルはホント強いです。 実はの裏話ですが、最初セフィルのお父さんフィガロさんには生きてて貰うはずでした。なんと適役で。しかし、そりゃあんまりやろうと自分で突っ込みまして、他界して頂きまして。・・・・・ってこれもあんまりかも・・・ セフィルの強さは支えてくれるって存在があるからの強さだと思っています。 リナ達の存在なんですが、ガウリイとの関係もちらほらと・・・そろそろこの辺を突き詰めて行かないとです。うふふふふふふふふ。 >>「お前は・・・・半分とはいえエルフの誇りというものがないのかっ!」 >>わたしは振り向かず、その声を背にしたまま、 > もう少し、あんたたちが誇りを持てるようなことをセフィルにやってりゃね、とは桐生の心の突っ込み(笑)。 ここのセリフ、結構悩みました。セフィルにぐさっと突き刺さるセリフって・・と悶々と考えてこーなりまして。でも結果的には良かったかなと。 >>「わたしにとっては闇も光も同等であり、分けて考えるものでは無い。そうお話したことがあったはずですが。」 > ここらへん、独特ですよね。二つの血を持つハーフエルフゆえの世界観なのかセフィルオンリーの世界観なのか。ある意味とても人間らしくて、別の意味では某混沌の姫君らしいです(笑)。 あ゛・・・・・・・(滝汗) こ、この世界観が今回の主軸みたいな者です。えらい物に手をつけてしまったなとちょっと後悔もしてますが。 某パッキンの姫様は・・・・・・ご想像にお任せします(笑) > セフィルの子供っぽい部分がどんどん圧迫されているみたいでとっても心配です。無事かしら、この子………。 > それは私もひしひしと感じておりました。 改めて今までの話を読み返して、ありゃっと。 大人と子供と、どっちがホントの彼女でしょーねぇ。。。。 > どこまで言っても平行線というあたりが、TRYの黄金竜の長老を彷彿とさせます。 この辺はかなり影響を受けてます。といいますか、まんまかも(笑) 守ってやってるんだぞっていう神族のエゴみたなのですよね。 > そういえば、以前出てきたミナス・ティリスって………指輪物語ですか? > 違ったらごめんなさいです(汗) 正解です。座布団10枚差し上げます(笑) 設定の中に「指輪物語」をかなり使わせて頂いてます。ただし名前や名称だけ(笑) 実は本編は呼んだことなくて、追補編という本を片手にかいてます・・・・名前とかつけるの苦手なんですよ〜。 これからもバンバン出てきますので、見つけたら「あっここも♪ぷっ。」と笑ってやって下さい・・・。実はもう一つ別な物からも設定頂いてます・・・こちらはRPGなんですが・・・・自分で考えろよ・・・・・・ さあっゼロスを動かそっと(笑) |