◆−迷夢(気まま2-20)−CANARU(12/21-21:51)No.12794 ┗これも家族愛〜♪−P.I(12/22-23:50)No.12801 ┗ついでに方向音痴(苦笑)−CANARU(12/23-10:46)No.12806
12794 | 迷夢(気まま2-20) | CANARU | 12/21-21:51 |
ナポリ、ヒチリアを取り仕切るまだしも合法的なマフィア組織「カタート」。 その若き総帥、ゼロスは実はルクセンブルク公国『ワルキューレの騎士団』 の副旅団長にしてリナの義兄、そしてそのリナはルクセンブルク公国の公女 だったりする・・・・・。 更に言えば・・・・・・・・。その仕事上の相棒ガウリイは旧『フレイの騎士団』 の旅団長、フィリップの長男なのだが・・・・・・・。 「そうですか・・・・・・・・・・・・。」 名目上の総帥、ゼロスが留守中という事もアリ、リナが総帥室の机の上に 置かれた電話に応答し・・・・・・。 やがて静かに受話器を置く。 「どした?リナ〜〜?」 眠そうに机に今まで突っ伏していたガウリイが顔をあげて其方に言う。 「・・・・アンタのお父さん・・・。フィリップのことなんだけど・・・。」 これで・・・。 いつもならこの時間帯のんびりココアを飲んで決していくら『どけ!!』と 言っても朝のワイドショーの前からどかない馬鹿兄ゼロスが・・・。 あわただしく何処かに出かけて行った訳が分かったような気がする。 「・・・・親父がどうしたんだ・・・????」 少々眉をしかめてガウリイが言う。 「一週間後・・裁判ですって・・・・・・。」 「・・・・裁判・・・だと・・?」 「ええ・・・。ワルキューレ騎士団やルクセンブルクに関係の無い第三国を 法廷に選んでの裁判ですって・・・・・。今の電話の内容はそんな所よ。もっとも・・。 その『第三国』がどこかは聞いては居ないんだけどね・・・。」 「そっか・・・・・。」 それ以上ガウリイも何も言わない。 思い詰めた様な沈黙が部屋中を支配する。と、その時である・・・・・・・・・・。 「う〜〜〜〜ん・・・困ったもんですね・・・・。」 不意にゼロスが入室し、何時もの如く自分の席に陣取ってテレビのリモコンを 手際よくいじり・・・スキャンダル塗れのワイドショーをココアを飲みながら 楽しそうに見出す。 「・・・何時もの事ながら・・悪趣味ですよ。ゼロスさん。ワイドショーばっかり 見てるとそのうち頭悪くなりますよ!!!!」 「・・・と言うか・・・。他人のスキャンダルばっかりみて何が楽しい?」 さっきのリナとガウリイの会話に重いものを感じていたのだろう。 すかさずアメリアとゼルがゼロスに非難の声をあげる。 「・・・放っておいてください・・。『他人の不幸は蜜の味』って昔からいうでしょう?」少々不貞腐れたよ〜にココアをすすりそう反論するゼロス。 「・・・物語に出てくる魔族みたいなこと言うやつだなあ・・・・。」 ガウリイも今のゼロスの発言にはほとほと呆れる物があったらしい。 頬杖をつきながらジト目で何故かアヒルさんのカップでココアを飲んでるこの男を 横目で見遣る。 「・・・て、ゆ〜か・・・。この馬鹿兄。ワイドショーで占いの結果が悪かった日には 一日中ラッキー・カラーを手放さないのよ。ま〜〜ったく・・。迷信深いとゆ〜か。なんと言うか・・・・・。」 はあ・・とリナは甘ったるいココアよりも好物の飲み物を飲みながら言うのだが。 「・・・『ラムネ』が好物な貴女には言われたくありませんね・・・。リナさん。」 そんな義兄と義妹の攻防をガウリイはやっぱり好物の日本茶を飲みながら眺める。 「・・・で・・・何が困った事なのよ。馬鹿兄・・・・・。」 「いや〜〜・・。別に僕自身が一寸個人的に困っただけの話なんですけどね。ガウリイさんとリナさんにお友達から手紙が着ているんですよ。で・・。」 そう言うゼロスの頭に飲みかけのラムネのビンが容赦なく炸裂する!!!! バッシャアアアアアアアアアアアアアア〜〜〜〜〜ンン!!! 「ああ!!リナさん!!なんという事を〜〜〜〜!!」 さすがにブランド物のスーツに折角バシッと決めた髪形をラムネでビチャビチャ にされたゼロスを見て堪り兼ねたのだろう・・・・。 アメリアがビシっとリナの方を指差して・・・・・・。 「リナさん!!ラムネがもったいないじゃないですか〜〜〜〜!!!」 「・・・それに・・折角のビードロ素材のソファも台無しだな・・・・。」 ゼロスをどかし、彼の腰掛けていたソファを雑巾がけするゼル。 「な〜リナ。そろそろ俺の見たいアニメやる時間だけど・・・・。この スキャンダル番組、チャンネルかえていいか〜〜?」 「そ〜は言っても・・。ラムネもう残り少なかったし、ビン割ってビー玉も取り出したかったから丁度良いじゃない、アメリア。大丈夫、それ、似非の素材だから。本物は 先日競馬でスっちゃって質屋に入れたわ、ゼル。アニメでもお子様番組でもこんなワイドショーよりマシよ。馬鹿兄もも〜見てないみたしだし。どんどんチャンネル変えちゃって ちょ〜だい。ガウリイ。」 てきぱきと一人一人にリナはさっさと返答する。 「・・・リナさん・・・ど〜ゆ〜つもりですか・・・????」 「やっかましいいい!!他人の手紙を読む!!そんなプライバシーの侵害行為!! 許されるわけないでしょうが!!」 ビシっとゼロスを指差しながら似非素材のソファに立ち上がり・・。 仁王立ちになって抗議するリナにゼロスは・・・・。 「・・・それじゃあ・・ガウリイさんは・・ど〜なるんです?いっておきますけど・・。 彼はリナさん宛てにきた税金の滞納請求書まで開封してるんですよ・・・???」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 暫しの沈黙。が・・・やおらリナはガウリイの手元にあるリモコンを取り上げて・・。 ピッポパ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 チープなチャンネルを変える音だけがあたりに響き渡り・・・・・・。 「あ〜〜♪古代ラテン語で聞く『イーリアス』は面白いわねえ〜〜〜♪」 「・・・うわあ〜〜〜!!リナ!!俺が悪かった!!頼むから『衛星大学』の プログラムだけは勘弁してくれえええええ!!!!」 ガウリイの懇願の声が周囲に響くのだった・・・・。 「・・・で、ゼロスさん。話を戻しますが・・困った事ってなんですか?」 このままではどんどん局面が低レベルな方向に行くと悟ったアメリアが話を元に戻す。 「・・リナさんとガウリイさんに・・。一寸『猿楽』のチケットが着てるんですよ・・・。気晴らしになればと思ったんですが・・。その必要は無さそうですね!!」 少々プンスカ怒ったようにゼロスは言う。 「それって・・・もしかして廻から・・・・?」 一寸興味を示したリナがリモコン片手にガウリイを甚振りながらゼロスに聞く。 「・・ええ・・。何でも・・お姉さんと行く予定だったらし〜んですが・・・。 この手紙の消印の日本時間、おね〜さんがバイクで疾走して楽しんでいらっしゃったら・・・。止まった違法駐車のトラックに思いっきり激突して・・・。更に道路に投げ出されてヘルメットがすっ飛んで・・。思いっきり小学生の子供が運転するお子様自転車にひかれて全治3週間の怪我・・だそ〜です。で、一人で京都まで行くのも怖いから、リナさんとガウリイさんにあげます、だそうです。ついでです。ルクセンブルクの宝物ですが・・。『世阿弥の風姿花伝』の写本を探して下さい。多分・・見当たらないけど売りさばかれて京都にあると思われますし・・・・。」 「・・・・・緋雨裡さん・・・そ〜いや・・元ヤンだったんだよな・・・。 そっか〜〜・・族もやってたんだ・・。」 リナの手からリモコンをようやっと奪ったガウリイが思い出したように言い・・。 「・・族じゃなかったと思うわ・・・。あの人の悲運を考えてみなさいよ・・? 今回のことといい・・・普通毎日暴走なんてしてたら・・・。命が無いわよ・・? 彼女の場合・・・・・。そりゃ〜〜まあ、違法駐車はいけない事だけど・・。」 「う・・・・・・確かに・・・・・。」 リナの最もな一言にガウリイも頷かずにはいられないのだった・・・・。 新幹線の窓から京都タワーが見える・・・・・。 「・・・ふわ〜〜〜〜・・到着か・・・。」 「ま〜〜ね・・・。」 関西新国際空港から京都まできても良かったのだが・・・・・・・。 「ふわ〜〜〜〜〜!!何考えてるんだろうね!!この僕がグリーン車に乗れないんだなんて!!まったく!!フザケてるにも程があるよねえ〜〜〜〜!!」 ナルシスト、危な系のロクデナシ・・更に言えば銀髪、自称の超絶美形・・・。 リナの中学時代の同級生・・・氷(ひょう)が後ろから眠たそうな声で文句言う。 「・・・・このお荷物運ぶため・・あたし達・・ナポリからローマへ行って・・・。 んでもって東京から・・・更に三島まできて・・新幹線で京都へ・・・。」 ブツブツ文句を言うリナに・・・・。 「ばっか行って貰っちゃ困るね〜〜〜!!僕は一人で出歩いた事なんて生まれてこの方 一回も無いんだ!!い〜〜かい!!そ〜〜んな僕が!!静岡から一人で京都まで来れる 訳無いに決まってるだろ〜〜〜〜〜〜!!!!!」 「いばるなああああああああああああああああああああ!!!!!!」 リナのスペシャル・キックが氷の顔面に思い切り直撃する・・・。 「ああああ〜〜〜〜!!僕の顔に!!僕の顔に!!靴の跡があああああ!!」 「・・・行きましょう・・。ガウリイ・・・・・・・・・。」 「・・・まったくもって同感だぜ・・・・・・・・・・・・・・・。」 新幹線の窓に映った自分の顔を見て絶叫する氷を残し二人はさっさと駅に向かうのだった。 駅周辺を過ぎ、京都市街地に至る。 「リナ・・。これから何処に行くんだ〜〜?」 何時の間にか買ったのだろうか?抹茶のアイスをリナに渡しながらガウリイが聞く。 「・・さしあたり・・・清水寺に行ってみようと思うわ・・・・・。」 何処と無く惚けたような様子でリナが言う。 「・・・何か・・・あったのか・・・?」 「さあ・・・・・・・・・・・・・・。」 何も覚えていない。ただ、何か昔この場所で何かがあったような気がする。それだけ。 そんな思いを抱きながらも清水寺に到着する。 紅葉も既に散り始め、高地にあるこの『清水の舞台』は心なしか風が冷たく 感じられて成らない。 しかし、観光名所というだけあると言うべきだろうか。学生を含め観光客の 多さはかなり目を見張るものがある。 「今回見るのは田楽能と言っても・・能の間に公演される『狂言』ね・・・。」 そう言いながらリナは『附子』と書かれた水あめを食べ始める。 「おいおい〜〜〜!!オマエなあ・・。まだ食べるのかよ?」 とかなんとか言いながら・・。ガウリイ自身、リナが片手に持った箱から自分も 水あめを食べ始める。 甘い飴をガウリイが完全に口の中に入れるのをリナは確認して・・・。 「ねえ、ガウリイ。この飴ね、日本語で附子(ブス)って言うんだけど・・・。」 にやりっと笑いながらリナはガウリイに更に語りかける。 「・・・ブス・・・?オマエには似合わないなあ〜〜♪」 本音とも褒め言葉ともつかない言葉をガウリイは口にする。 「・・・・ブスの意味、分かって言ってる訳?」 再度リナはニヤリ、と意味深な笑みをガウリイに向かって送りつけるが・・・。 「そりゃ〜〜まあ。顔かたちのことだろ・・・????」 「甘いね。そもそも附子の原料は・・・。と、ある植物の根から採取するのよ・・・・。」 「・・・?サトウキビじゃ無いって事だな・・・????」 そんなガウリイの質問には一切合財答えずりリナは・・・・・。 「でね、その植物の太い母根から取ったのを『烏頭』・・・。で子根から取ったものを 『附子』っていうんだけど・・。元々は神経痛薬として使ったらしいんだけど・・。 使い方によっては猛毒にもなるらし〜〜わね・・・ぇ・・。」 にゃはは・・と言うように人の悪い笑みを・・・しかしガウリイにはまるっきり屈託の無い笑みを浮かべながらリナはそう告げる。 「・・・・おい・・一寸聞くが・・附子の原料って・・一体全体ナンなんだ・・?」 半ば顔色を悪くしながら・・ガウリイはリナに向かってそう尋ねる。 「あら〜〜?言わなかったかしら?トリカブトよ!!ト・リ・カ・ブ・ト!!」 たちまちガウリイの顔色が真っ青に変わり・・・・。 「オマエな〜〜〜〜!!何でそんなもん、俺に食わせるんだよ〜〜〜〜!! 俺、まだ死にたくね〜〜ってえええええ!!!!!」 「あら、アンタの幽霊ならあたし、年中歓迎よ〜〜♪」 「だああああ〜〜〜〜〜!!お化けの話は止めてくれ〜〜〜(涙)」 あ・・・自分が幽霊になるとしても・・彼はお化けが大嫌いらしい・・・・・。 しかし、このままでは流石に性格が悪すぎるかな・・と思い・・・。 「冗談よ・・。それは正真正銘、サトウキビから作った単なる水あめ。ま、『附子』は 『商品名』って言ったところかしらね?」 あまりにもガウリイの取り乱し方が面白かったのだろう。リナは未だに面白くて 仕方が無い、といった調子を崩さないでガウリイに言う。 「本当か〜〜〜〜???」 あ・・・・半泣きしてるわ・・・一寸可愛いかも・・・・・。 などと下らないことを一瞬思いつつリナはアッサリと宥めにかかる。 「嘘ついてもしょうがないわよ。これが・・今日の狂言の演目よ・・・。 まずは狂言の構造から説明するけど。狂言は1400年代、室町幕府の3代将軍、足利義満の庇護の元、観阿弥と世阿弥親子が提唱した演劇なんだけど・・・。その劇の合間に演じられるのが(大方の能が悲劇に対して)喜劇や社会風刺の狂言。砂糖を附子。 つまりは毒薬と偽ったせ〜で結局は大損する男の話よ。って・・。聞いてるの? ガウリイ!!?」 なにやらあらぬ方向を見ているガウリイにリナの抗議の声がようやっと届く。 「・・おい・・リナ・・あれってラウラとジョヴァンニじゃないか?」 「え・・・???」 別に彼ら・・(しいて言えば何処の騎士団にも属さない)ラウラと・・・。 そしてリナの実兄たるルクセンブク家のジョヴァンニが動く事態なんて。 今のところ聞いては居ないが・・到底二人の様子は『観光旅行』と言った様子には 見えない物々しい雰囲気が漂っている。 「リナ・・・・・・・。それに・・ガウリイもか・・・・・。」 二人に歩み寄ってきたリナとガウリイに気がついて・・・。 バツが悪そうに軽くジョヴァンニが声をかけてくる。 「・・駄目だ・・・。星の検討は・・まったくつかないね・・ついでに言えば・・。 被告人も・・・・・。」 先程までジョヴァンニの側を離れていたラウラが戻ってきた早々、なにやらそうジョヴァンニに告げるが、リナそしてガウリイの姿を見て不意に口ごもる。 「・・・ラウラ・・・。」 「分かってるよ・・・・・。」 ジョヴァンニに促され、ラウラは何処へと無く再度何処へとも無く去っていく。 「何があったのよ・・・????」 中々何もしゃべろうとはしないジョヴァンニに促されて・・・・・・・・・・。 バスを使い、街中を歩きながらついに北山の金閣に至る。 「・・何があったんだ・・・。ジョヴァンニ。」 先程からずっと続いているこの沈黙にたまりかねてしまったのだろう。 この黄金の寺に到着した途端、開口一番ガウリイはそう切り出す。 「・・・裁判が開かれる事は・・知っているな・・・???」 鹿苑寺が周囲に巡らされた水面に表面世界よろしくもう一つ姿をあらわす。 「ああ・・・。親父の・・だろ・・・・?」 この件に関してはガウリイが人にあまり触れられたくない事はジョヴァンニもラウラも 良く知っている。が、しかし彼自身はそれ故に彼らがなかなか口を開かなかったものと判断したらしい。平気な表情で続きを語るように促していく。 「・・・やられたよ・・・・・・・・。」 ぼそり・・とジョヴァンニは聞き取れるか、聞き取れないか程度の声で話し出す。 「・・・やられたって・・・何がよ・・・???」 「・・落ち着いて聞け。奥方の警護には今ラウラが回っている・・・。フィリップが・・。先程から吐血をし始めたんだ・・。無論、裁判に出廷できる状態ではない。奴が自分でそんな事の出来る状態ではない・・。恐らく・・何者かの手によって・・・。」 「・・・誰かがこの裁判を妨害したい・・。そういう事か・・?」 射るようなガウリイの視線・・・・・・・・・・。 「十中八九そうでしょうね・・・・・・・・・。」 『ミッドガルズ』は所詮『ミッドガルズ』・・・・。 『アーズガルズ』には決して及ばない存在である。その事がただただ頭の中 を駆け巡る。 「で、その毒の種類はナンなの?大抵の解毒の処方箋なら心得てるつもりだけど?」 苛立つガウリイの腕を落ち着かせるように握り、さしあたり『毒』の影響と踏んだ リナはジョヴァンニにそう提案する。 「非常に言い難いのだが・・・。まったくの不明だ・・・・・・。今、ガストンが事態を重く見たんだろうな。単独で行動しているらしいとラウラが言っていた。」 「・・・あの馬鹿!!!!」 さしものガウリイもこんな無謀な行動には頭に来るものがあったらしい。 知らず知らずのうちにリナの手がギリギリと痛み出すほどに手を握ってくる。 落ち着いて・・と言わんばかりにリナに髪を引っ張られ、やっとの事自分を取りも出す。「ともあれ、リナとガウリイは当初の予定通り狂言を見に行ってくれ。フィリップの裁判が行われる予定であった会場、その会館の真上だしな。」 カモフラージュにも丁度いい、と言った所だろう。 話の筋はこんなところか・・・・・・。 一人のケチな主人が居た。自分が一人で食べていた砂糖を留守中、従者二人に食べられないかと心配する。そこで・・・・。 『この壷に入ったものは臭気を吸っただけでも死ぬ附子である。決して触ってはいけない』そういい残してさっさと用事に向かってしまう。 「・・・そんな愉快なもの・・あったら見てみたいもんだな・・・・。」 苛立ちも大分収まったのだろう。隣に座ったリナの説明に肩を竦めながらガウリイは答える。 「・・・まったくもってその通り。『見るな』と言われれば見たくなるのが人間心理。ここでもその心理は健在でね。二人の従者はかわりばんこに臭気を扇子で扇いで壷に近づいていくの・・。で・・蓋を開けて・・。好奇心のみで『毒』といわれた・・実際は甘くておいしい『砂糖』を食べてしまうのよ・・。」 「・・・真坂と思うが・・・・・・・。」 「ご名答。全部食べちゃうのよ・・・。でも、そんなことがばれたら主人に怒られる。 そこで・・二人は主人が大事にしている代天目の茶碗と掛け軸を『相撲をとっていた』 とか言う嘘をくために壊してしまうのよ。」 「・・・それって・・余計怒られるんじゃね〜か・・・???」 「其処でよ!!主人が自分で『毒』だと言った『砂糖』を食べて責任を取って死のうとした。けど・・死に切れなかったとホザく喜劇なのよ。」 そう言っている間にも劇中の三人。 『シテ(主役)』の主(主人)、太郎冠者、そして『アド』(副主役)の次郎冠者の 劇はだんだんと進行していく。 「だいたいね・・次郎冠者は止めながらも太郎冠者の『やらかす』事柄に だんだん引きずられていく、ってパターンが多いのよ。けっして・・自分の意思では 無い『洗脳』のね・・・・・・。」 考えながらリナは思う・・・・・・。 「砕けた言い方かもしれないけど・・。ある意味『アースガルズ』は太郎冠者・・。 そして・・ガウリイ。アンタの父さん・・。フィリップの『ミッドガルズ』は 次郎冠者だったのかもしれないわね・・・・・・・。」 何故か・・そんな思いがしてならないのだった。 ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンン!!!!! 不意に聞こえる轟音・・・・・・・・・。 「このガキ!!!!!!!」 罵声とも焦りを含んだ声ともつかない男たちの声が聞こえる。 「離せ!!!!!!!」 言うまでも無い、見知った少年の声が夜の『哲学の道』いっぱいに響く。 木々が茂るこの町並み、そして小道の隣は川が流れている。 無論、そんな状況では誰もこの窮地を救ってくれるとは思えない!! 「くっそ!!離せ!!!」 いつもなら幾らなんでもここまで追撃されるような事は決してありえないのだが・・。 やはり事情が事情と言った所か? この追跡は並大抵なものではない事に今更になって気付く。 「・・・く!!!これまでかよ!!!」 箱を抱えたまま少年は半ば諦めたように瞼をきつく閉じる・・・・・。 ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンン!!! 少年・・ガストンの頬を軽く通り抜け・・銃弾が木々の間を更に通り抜ける。 「・・・・母さん・・・・・・・・・・・。」 夜風に長い金髪を撫ぜられ・・・ガウリイに良く似た容貌の美しい女性・・・。 手に握られた拳銃からは煙がいまだにあがっている・・。 「・・無茶するなっていってるでしょ・・・まったく・・この子は・・ いっつもいつも・・・・・。」 「・・無茶してるのはアンタのほ〜だろ・・。マダム・・。ったく。あたしの目を盗んで『アースガルズ』連中のアジト襲撃しようなんてさ・・・。ま。アンタの息子が既に 襲撃してたなんて・・。とんでもない偶然だろうけどね・・。」 「すみませんね・・。ラウラお嬢様・・。」 いまだ怯えきったガストンをそっと腕に抱き、オーリは背後に現れたラウラに言う。 「勘弁して欲しいね、マダム。アンタが勝手な事すると、アタシがジョヴァンニに怒られるんだからさ・・・・!!」 苦笑しながらボリボリと無造作に髪を掻き揚げるラウラ。 「・・・そうですね・・。けれども・・リナお嬢さまにだけは・・。負担をかける 訳には参りません・・・・・。」 「・・そりゃ〜・・無理な相談だね・・・・・。」 「何処行こうって言うのよ。ガウリイ・・・・。」 彼の行動パターンはおおよその検討がついている。そうなれば・・・。 先回りしてこの『哲学の道』の入り口に立っているくらいの余裕はリナにもある。 「どうしてココが分かったんだ?」 苦笑とも少々怒りを含んだともいえない様子でガウリイがリナに言う。 「・・・アンタがあたしにいつもしてる方法・・・。逆応用させて頂きました。」 言ってリナは人の悪い表情を一瞬作る。 「・・・ど〜ゆ〜事だよ・・・??」 「・・アンタがあたしのアメリアとかラウラ・・ついでに言えばジョヴァンニに〜さま とする雑談。一生懸命聞き耳立ててることは分かってるのよ?」 そう言いながらリナは耳元から何かイヤホンのようなものを不意に取り出し・・・。 「アンタとオーリさんとの電話の会話。盗聴させていただきました。」 にっこりと笑いながら公然と違法行為をガウリイの前に披露する。 「・・・オマエ・・俺よりやってる事・・悪くないか???」 「そうかもね。でもね、自制心無くなった暴走族をあたしだって黙って野放しにしといてwやる程お人よしじゃ無いのよ。」 自制心が無くなった暴走族か・・・確かにそうかもしれないな・・・・。 そんな思いのみリナに言われて今更のようにガウリイは自覚する。 「で・・今からど〜するんだ・・・?」 既にラウラ、オーリ、ガストンはこの『哲学の道』の入り口方面に向かってきている。 ルクセンブルクの宝物は・・敵の居る場所を示す『手がかり』にしか過ぎない・・か。 そうなれば、今回の宝物『世阿弥の風姿花伝』の場所は大まかな検討がついている・・ といった所か。 「鹿苑寺、金閣へ。世阿弥はね・・・義光の死後・・変質的共謀性を持つ将軍義教に『秘伝』を彼ご贔屓の能の家元、音阿弥に公開するように迫ったの。けど・・・。 世阿弥はあくまでそれを拒んで・・・。1428年、佐渡島に流されたのよ。」 おそらく・・その秘伝書とは世阿弥の『風姿花伝』のことである・・。 更に言えば・・その『写本』があるとすれば・・・。 足利氏の『花の御所』と言われた場所か・・はたまた別荘であった『金閣寺』 のどちらか・・である・・・・。 直感的に金閣のような気がした・・それだけのことと言ってしまえばそれまでなのだが・・。 「母さん・・・。ガストン・・・。」 自分の前を進む母親と弟にガウリイはコソコソっと声をかける。 「ナンだよ・・馬鹿兄・・・。」 不満そうにその声にガストン、そしてオーリママが不満そうにながら耳を傾けようと したのは金閣まであとわずか・・という距離にまで達したその時だった。 「ご免!!やっぱり・・連中の待ち伏せてるとこ・・多分『銀閣』だった・・。」 ゴチン!!!!!!!問答無用のオーリママの鉄建とガストンの冷たい視線がガウリイに 突き刺さる!! 「いでええ!!何すんだよ!!母さん!!ガストンも兄の事そんな目で見るなよ!!」 頭を摩りながらガウリイは抗議の声をあげる!! 「何言ってるの!!ガウリイ!!金閣まであと少しってとこまで来て!!」 「・・・やっぱり馬鹿だ・・。この馬鹿兄・・・・。」 急なことの展開にオーリママとガストンの態度は硬化するばかりである・・・。 「俺じゃね〜〜よ!!リナだよ!!リナ!!」 コソリっとガウリイの後ろから顔を出したリナが舌を出し手を合わせて二人に謝る。 「・・まあ・・。」「お嬢様が言うんじゃあ・・・・。」 さっきのガウリイへの対応とは打って変わり、仕方ないなと言った調子で言うガストンとオーリママ・・・・。 「俺たちは一寸遅れていくから、ま〜〜一寸待っててくれ・・・。」 「そうそ!!ガウリイトイレ長いもんねえ〜〜〜♪」「・・リナ・・(涙)」 「・・早くしろよ・・馬鹿兄・・・。」 そんなガウリイにコールドな視線を再度送り、さっさとオーリママの後ろに続くガストン。「・・いいの?ガウリイ・・。騙しちゃって・・・・。」 「ああ・・・・。」 ラウラとジョヴァンニがガードしている限り・・あの二人には害は及ばない。 そう見越しての判断である。 「さってと・・。ガウリイのトイレも終了したことですし。行きますか!!」 「そ〜〜だな・・・・・・。」 天上界・・『ミッドガルズ』の連中が待つ。金色の寺院へ・・か・・・。 「グワ・・・・・ハア・・・・・・・・。」 白く敷き詰められた砂利の一部に赤い・・血痕の跡が見受けられる・・・。 そして、其処に佇む一人の人影・・・・・・。 「親父!!!!??」 巨木に縛り付けられ、動けないようにされてしまっているその姿は・・。 まるで『フレイの騎士団』・・そして犯罪組織の『ミッドガルズ』だったかつての 彼の面影はまるで見受けられない。 「・・遅効性の毒物ね・・・・・・。」 状況を見て取ったリナは何とかまだ間に合うと判断し、ひとまずの安堵をする。 が、無論そんな安心した状況を維持出切る筈は無かった。 ザ・・・・・・・・・・・!!!!周囲にみなぎる殺気・・・・。 しかし、それはガウリイとリナに向けられたものではない!! 「・・親父!!!??」 まずは第一の邪魔者を始末する・・・。そう言った所であろうか? 一斉に銃口・・(恐らく詰められているものは銃弾ではないだろう・・)が発砲を開始する中、ガウリイは一目散にフィリップの方向に駆け出して行く!!? 「ガウリイ!!気をつけて!!」 ・・・それは唯の銃弾じゃないわ・・・・・・・・・・。 そうリナが警告を発想としたその時だった!! ズダアアン!!!一瞬の油断・・・。肩にとてつもない激痛が走る!!? 「リナ!!!?」 既に縛りつけられた場所からフィリップを助け出し、リナの方に駆け出したガウリイの目に映ったものは・・・・・・。 「く・・・はあ!!!」 肩から血を流し・・・更に口からも吐血をする・・リナ????????? 「おい!!しっかりしろ!!!」 そうとだけ言い、咄嗟に傷口を縛り上げようとするが・・・。 「駄目!!かえって毒が・・全身にまわる!!」 ハンカチを取り出したガウリイの腕を問答無用で押しのけ、自分自身で傷口から毒気を極力吸出し・・・・・。 「・・多分・・フィリップも同じ手口で・・・。」 まだかすかに咳き込みながらリナはそうガウリイに説明する・・・・。 「・・・どうする・・・・・・・。」 さしものガウリイにも焦りの色が現れたその時・・・・・・・・・・。 「・・・走るぞ・・・・・。」 フィリップが二人にそう告げ・・・あらに方向について来る様指示を出す!!? 「・・行くしか無さそうね・・・。」 「分かった・・。ともかく・・・・。」 無理にリナに腕を貸しながらガウリイもフィリップの後方を全速力で追い上げる!! 三人が人気の無い雑木林に至ったその時・・・・。 『逃げ切れない』と油断してゆったりと追ってきた追っ手が全員揃い・・・・。 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウウウウウウ!!!! その瞬間・・・一瞬にして周囲一体が燃え上がる!!!!!??? 「連中が仕掛けておいた爆弾だ。偶然ここにつれてこられたとき発見し・・。」 「・・・自分に都合のいいよう・・改良したって訳か・・・・・・。」 無表情の中にもガウリイは苦笑を隠しようも無い・・・・。 「まあな・・。まだまだオマエにも・・ガストンにも負けられないからな・・・。」 そう言ってフィリップはぐったりと地面に倒れ伏すのだった・・・。 「・・ガウリイ、あなたの顔を立てて嘘につきあってあげたけど・・・。 りなお嬢様に負担をかけたことは、絶対許しませんよ・・・。」 あの後・・ガストンの盗み出した解毒剤を飲み・・・。 重症だったフィリップも軽度であったリナも完全に解毒が終了し・・・。 オーリの疑問視するような視線に目をそらし・・彼は再び連行されていった・・。 「・・反省している・・・・。」 さしものガウリイも今回のことばかりは少し堪えたらしい。 既に、東の空は少し白みかけている。 「・・・ま、男なんか信用したこの子にも責はあるわけだし・・。マダム、今回は 許してあげたらど〜だい?あたしも結構、馬鹿男には失望されてるしねえ〜!!」 ケタケタ笑うように言うラウラに・・・。 『全然フォローになってない!!』 というオーリママ、ガウリイ、リナ、そしてジョヴァンニの突っ込みが炸裂した事はもはや言うまでも無い・・・・。 「探したわよおおおお〜〜〜〜〜!!ガスちゃんんん〜〜〜!!」 「エリザベス〜〜〜!!ココまで来たの〜〜〜??」 そんな若い二人には・・まるっきり無縁の事柄・・なにかもしれない・・・。 「ねえ、ガスちゃん・・。ガスちゃんのおか〜さまって・・・。ガスちゃん より美人ね!!」 「うううう〜〜〜〜(涙)」 「ほほほ!!当然ですわ!!お嬢様〜〜〜♪」 ガウリイ・・どうやら更に家族の問題で頭を抱えることが増えた様子である・・・。 「ま・・。そ〜落ち込む事はないわよ・・。」 「そうだな・・・・。」 まだまだ・・これからが『ミッドガルズ』を操っていた何者か・・・。 『アースガルズ』との対決のときである・・・。 今分かっている事は・・それだけなのだから・・・・・・。 (気が向いたらまた書きます) 「闇の末裔」の京都編見て影響されたので今回は 京都でした!!修学旅行で5年以上前にいっただけなので・・・・。 正確でなかったらゴメンナサイでっす(汗) |
12801 | これも家族愛〜♪ | P.I E-mail | 12/22-23:50 |
記事番号12794へのコメント CANARUさん、こんばんは〜♪ 風邪気味につき忘年会は一次会のみで失礼してきちゃったPでぃす! フィリップとーちゃんのピンチに暴走する妻&息子S!なんのかんのと言っても イザとなるとやっぱり家族よね〜♪ガブリエフ一家の絆の強さが垣間見えました わ!とーちゃん、早く裁判やっておつとめをすませて(笑)家族の許へ帰れると いいですね。(なんか彼が帰ってきたときには、やたら家族の数が増えて賑やか になっていそう・・・笑) 氷殿下、一人で遠出したことないんですか?・・・もしかして一人じゃ切符も 買えず、時刻表も読めないとか・・・(汗) 話は変わりますが、「ルートヴィヒ2世」のマンガ見つけて速攻で購入しました! 作者はあの「カンタレラ」の氷栗さん!これは運命?・・・とか思いつつ 「わくわく♪」と開いてみて・・・そして思い出しました。 角川は「JUNE」やルビー文庫を出してる出版社だとゆーことを・・・(ーー;) 表紙の絵もろくに見ずに買ってしまった迂闊な自分。そう思って見ればいかにも な表紙なのに(苦笑) まぁ、内容はアレですが、作者がルー様にぞっこんなのが伺える点と、巻末の ドイツ探訪記はなかなか面白かったです。 明日から冬休み〜♪ため込んでた本と雑誌とマンガとCDを消化するぞ〜! それではまた!! |
12806 | ついでに方向音痴(苦笑) | CANARU | 12/23-10:46 |
記事番号12801へのコメント >CANARUさん、こんばんは〜♪ >風邪気味につき忘年会は一次会のみで失礼してきちゃったPでぃす! ううう・・(涙) 今年の風邪はしつこいですしねえ・・・。 お体には気をつけてくださいい〜〜(かなりそのせ〜で辛い目にあいましたし!!) >フィリップとーちゃんのピンチに暴走する妻&息子S!なんのかんのと言っても >イザとなるとやっぱり家族よね〜♪ガブリエフ一家の絆の強さが垣間見えました >わ!とーちゃん、早く裁判やっておつとめをすませて(笑)家族の許へ帰れると >いいですね。(なんか彼が帰ってきたときには、やたら家族の数が増えて賑やか >になっていそう・・・笑) ですねえ〜〜〜!! 以外とと〜ちゃん・・・。 戻ってきたときには「日曜日のお父さん!!」状態かもしれません ねえ・・・。 掃除中のオーリママに「其処邪魔!!」 ガウリイに「オヤジ!!リナが洗ったマットを汚すな!!」 ガスちゃんに「・・・・なあ・・保険金・・いくらかけてほしい?(邪)」 な〜〜んて扱い受けてたりして・・・(汗) >氷殿下、一人で遠出したことないんですか?・・・もしかして一人じゃ切符も >買えず、時刻表も読めないとか・・・(汗) はい〜〜!! その上「方向音痴」と三拍子そろっております〜〜!! でもって本人曰く・・。 「はん!!カーナビの発達したこのご時世!!そんな事の必要ないね!!」 だそうです〜〜!! >話は変わりますが、「ルートヴィヒ2世」のマンガ見つけて速攻で購入しました! >作者はあの「カンタレラ」の氷栗さん!これは運命?・・・とか思いつつ >「わくわく♪」と開いてみて・・・そして思い出しました。 おお!! アタシは2巻だけ発見しました!! 確か・・イングランドの話も氷栗さん・・書いていたと思います〜〜!! まだ買ってないですけど(苦笑) >角川は「JUNE」やルビー文庫を出してる出版社だとゆーことを・・・(ーー;) >表紙の絵もろくに見ずに買ってしまった迂闊な自分。そう思って見ればいかにも >な表紙なのに(苦笑) あははは〜〜(汗) 書店でみかけども・・まだ買ってないでっす(汗) おかねなかったのでえ〜〜!! >まぁ、内容はアレですが、作者がルー様にぞっこんなのが伺える点と、巻末の >ドイツ探訪記はなかなか面白かったです。 はい〜〜!! 今度こそ探してみます!! >明日から冬休み〜♪ため込んでた本と雑誌とマンガとCDを消化するぞ〜! >それではまた!! ではでっは!! そうそう!!「すぺしゃる」16巻かいました!!ふふふ・・帯に 隠れた表紙の一部が〜〜〜!!ですわ〜〜!! でっは!! |