◆−セント・オブ・リリィ−Scent of Lily−3/14(ゼラゼロ&ゼロフィリ)−toto(3/14-01:24)No.14260 ┗ホワイトデーに純白のユリを。−葵芹香(3/16-00:21)No.14315 ┗暖かいですね。−toto(3/16-14:26)NEWNo.14332
14260 | セント・オブ・リリィ−Scent of Lily−3/14(ゼラゼロ&ゼロフィリ) | toto | 3/14-01:24 |
■まえがき■ ふつつか者ですが宜しくお願いいたします。"ホワイト・デー"にあやかっております。 「ゼラゼロ、ゼロフィリ」要素を含んでおります故、気分を害される方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。 ■本文■ 3月14日/フィリア邸 「来たわね!!生ゴミ魔族。」 フィリアは、ざっと壁際へ後退する。 「お久しぶりです。ヴァルガーヴさんの卵は無事ですか?」 ゼロスはにこやかに問う。 フィリアは答えず、警戒心むき出しでゼロスを睨んだ。 何故なら、さかのぼること一ヶ月、すなわちバレンタインの日、ゼロスに酷い目に遭わされていた。 バレンタインの主旨と全くかけ離れた、『魔族のバレンタイン』なるもの−若い娘さんから負のエネルギーを貰う日♪ のフィリアは尊い(?)犠牲者だったりする。ちなみに契約の証となるチョコレートはあげたのではなく、棄てたのを拾われた。 「今日はホワイト・デーですね。ついでですから何かお返しでもしましょうか。」 「結構です!もーっ訳の分からない魔族の行事(暇つぶし)につき合わされるのはご免ですっ!」 「安心して下さい。魔族もホワイト・デーまで人間の行事に便乗したりしません。あくまで、僕の好意です。」 さらに猜疑心をつのらせるフィリアの表情に、ゼロスはため息をつく。 「"ユリ"と"バラ"、どちらがお好きですか?」 そういうと、ゼロスの両手にそれぞれユリとバラが一輪ずつ現れる。 しかしながら、ユリもバラも、無色でガラスの様に透き通っていた。 思わず、興味をそそられ、フィリアは顔を近づけた。 「これ何ですか?」 「まあ、いいから。」 「バラが好きです。」 フィリアは上目遣いでゼロスに言う。 すると、ユリがふっと消える。 「何色のバラがお好みですか?」 「…赤。」 すると、花弁が薄いピンクに色づきはじめ、葉や茎もほんのり黄緑を帯びる。 「…すごい。」 フィリアは目を丸くし、ゼロスの手の中を食い入るように覗く。 実際、魔族の使う魔術は竜族よりずっとバリエーションが広く、その洗練具合も桁違いだ。 しかも、ゼロスは高位魔族。性格に問題があるにせよ腕は一流である。 フィリアはくやしいのを通り越し羨望のまなざしを送る。 ゼロスは微かに笑った。 …相変わらず単純ですねえ。 「綺麗なピンクですね。もっと赤くできますか?」 フィリアが言うと、ゼロスの手の中でバラは濃厚なピンクへ変化した。 それに合わせ葉も深い色へ、トゲも少しずつ顔を出す。 「もっと。」 フィリアは子供のようにせがむ。 「ストップ。」 フィリアが言った時、バラはこの世のものとは思えないほど美しい真紅に染まっていた。 葉の緑も深く、トゲも恐ろしく鋭くなっている。 「こんなに綺麗なバラを初めて見ました。」 「それは何よりです。では、よろしいですね?」 すると、一輪のバラが両手に溢れんばかりの花束へと変わる。 心底嬉しそうな笑顔でフィリアは花束を受け取る。 そして、すぐに何かを思いついたように台所の方へ走っていく。 一方、ゼロスは顔をひきつらせ傍らのソファーへ崩れた。 フィリアの笑顔にすっかり消耗してしまった。 ほどなくして、フィリアはバラを抱いて戻ってきた。 妖しいほど美しいバラは渋みのある黒陶器の花瓶に生けられていた。 「どうですか?」 フィリアは、ソファーでうなだれているゼロスに尋ねる。 「…おしめも取れない赤ん坊が、ヴィンテージもののワイン・ボトルを抱えこんでいる様な図に見えます。」 「どーゆー意味です?」 フィリアの声がワントーン下がる。 「率直なたとえです。今、ガウリィさん並に後先を考えていませんでしたから。」 「ガウリィさんはそんな意地悪を言いません。第一あの方はそんな遠回しな嫌味は言えません。 たまには親切なまま帰ったらどうです?」 フィリアは声こそ荒げているが、バラは大切らしく、そっーとテーブルに置く。 そして、手が空いた途端、ゼロスに詰め寄る。 「大体、ずっと言いたかったのですけれど、リナさん達と一緒の頃は、お腹の中は黒々していても、 表面的には穏やかで紳士的に振る舞っていたではないですか!それがどうです? 私だけになってから目つきは悪くなるし、嫌味は酷くなるし。もーっ言い出したらキリがありません。」 「まあ、リナさん達は人間ですし。大事なゲストでしたし。」 「私だけ大事じゃないって言うんですか!竜だからって差別しているのですね?!」 フィリアはゼロスの胸ぐらを掴む。 が、形勢逆転。 「っ…」 フィリアの身体にひんやりとした空気が密着する。 気が付くと、ソファーに押し倒され、思いっきり上に乗りかかられていた。 「そんなにおっしゃるのなら、貴女だけ特別に優しくしてさし上げます。」 「言っていることとやってることが全然違うじゃないですか!どこが優しいんですか、この状態。重いです!!」 両腕をがっちり押さえられ身動きできない状況で、フィリアは小犬の様にきゃんきゃんと抗議する。 「そうでもないんですけど、貴女の望まれる”人間の扱い”からすれば。」 不思議そうに見上げているフィリアの横をかすめ、 ゼロスはその白い首筋に唇をあてると、うなじに沿ってゆっくりと滑らせる。 が、次の瞬間、 「――帰ります。貴女みたいな馬鹿な子供とじゃれても時間の無駄ですので。」 数メートル先に立ち、ゼロスはマントのしわをはらっていた。 そして驚くほどあっけなく退散。 フィリアは横たわったまま、言葉をかける間すらなかった。 「一体、何です?くすぐったいんですけれど…?魔族のやることといったら本当に意味不明…」 それに、そもそも何をしにいきたのです? ヴァルの卵ならそんなにちょくちょく見に来なくたってまだまだかえりませんのに。 魔族も勉強不足なのかしら? フィリアの頭の中に疑問符がずらりと並ぶ。 不信顔で、ふとテーブルのバラに目をうつし唖然とする。 そこには、真紅のバラではなく、白いユリの花が… 目映いほどの光りを放つ純白のユリが繊細なガラス花瓶に生けられていた。 「やはり仕掛けつきだったのですね。バラが好きと言ったからですかあ?」 フィリアはため息をつく。 そんなに細かい意地悪しなくても…。 しかし、美しいユリの花を眺めているうちに、例えようもない奇妙な感覚に襲われる。 小さく、繰り返される、大切なメッセージを聞き落としてしまったような。 何か取り返しのつかないことをしているような。 しかし、もはや、それを確かめるすべはなかった。 「ほんとうに…なにをしにきたのです?」 フィリアは思わずユリに問いかけていた。 3月14日/獣王宮殿 ゼロスは、黒大理石の壁に覆われた宮殿の執務室に立っていた。 「仕事をほったらかして、何をしていたの?」 りんと響く声。豪華な銀細工を施された執務台にゼラスが腰を下ろしている。 その姿は『妖艶』の一言につきる。 氷のように冷たい紫色の瞳、黒紫の豊かな髪。 しなやかな肢体は深くスリットの入った漆黒のドレスに包まれ、 身体の要所要所−耳元のピアス、白い腕のブレスレット、細い左足首のアンクレットに、 瞳と同じパープル・ダイヤを輝かせていた。 ゼロスは低く頭をたれる。 早いところ仕事を片づけないとまずい。 自分もサド気味だが、その創造主は…極めている。 「薔薇の花弁…?」 ゼラスの白い指が、ゼロスの胸元から真紅の花弁をすくい取った。 彼女の手の中で花弁は一輪の薔薇へと再生される。 妖しいほど深い真紅の薔薇。ダークグリーンの鋭利な刃物のような棘。 ゼラスは薔薇に唇を近づけた。 「…やはり、よくお似合いですね。その薔薇。」 ゼロスは微かに頬笑む。 「だれと比べて?」 ゼラスは部下の顔を見つめる。 「誰と比べても、誰よりも。」 ゼロスは静かに告げた。 ふっと、ゼラスは、ゼロスの懐に移動した。 そして、ゆっくりと部下の首に手を絡ませる。 まるで一対の彫刻の様に、二人は美しく重なり合う。 いつのまにか、二つの影は執務室の端にあるソファーへ移り、 ゼラスがゼロスの胸に深く寄りかかっていた。 「…私が薔薇を嫌いなの知っていた?特に真紅の薔薇が大嫌い。」 「部屋にいつも飾っておられるのに?薔薇園で何時間もお過ごしになるのに?」 ゼロスは腕の中のゼラスをのぞき込む。 「ええ、それでも嫌い。」 「…やれやれ、可哀相ですね、薔薇の花が。」 ゼラスはゼロスに口づけながら尋ねた。 「ん…ゼロスは"薔薇"と"百合"、どちらが好き?」 「"薔薇"です。だいたい"百合"とは縁遠い花をあげられますね? 受胎告知の場面を想起させられて気分が悪くなりますよ。」 ゼロスは薄く微笑んだ。 ゼラスはゼロスの上に完全に乗った状態で、その胸に顔をうずめる。 「私は"百合"が好きよ…純白の百合がね。似合わないから触れはしないけれど。 あの香りがたまらない。あの香りに酔わされる。…そう、ゼロスの服に染みついているような香りにね。」 ゼロスは身じろぎして何か言おうとするが、唇を塞がれてしまう。 弁解を諦め、ゼロスは上司の身体に負担がかからない様に支えた。 そして、目を伏せ、声に出さずに呟く。 確かにユリの香りは悪くないですね。実をいうと僕もあの香りには弱いです。 でも、だから何だというのです? 僕は、貴女のものですよ。 僕は、貴女だけのものなんです、永遠に。 だって、そうでしょう? 僕は、"貴女の一部"にすぎないのですから。 僕は、虚無を渇望する貴女を護り、なぐさめるためだけに存在する、 貴女が創りあげた道具(黒い錐)にすぎないのですから。 貴女が一番よくおわかりでしょう? ゼロスは、獣王の細い肩をしっかりと引き寄せた。 「…ゼロス。」 視線が絡み合うと、瞳に宿る同じ色の光が共鳴する。 なのに、僕(ご自分)を求め続けるなんて… 「哀しい方ですね。」 ゼロスは獣王の髪を優しく撫でる。 …いいですよ。 いくらでも、なぐさめて差し上げます。 どこまでも、いっしょにいて差し上げます。 だって、それが、未来永劫に続く僕の役目ですから。 僕の暗い花壇ではユリは育ちません。そこには、鋭い棘をした美しい薔薇が永遠に咲きみだれることでしょう。 ■あとがき■ 読んで下さった方いらっしゃいましたら、ほんとうに有り難うございます。ご気分を害された方申し訳ありません。 モチーフは、"美貌"(the lilies and roses)から。一応50/50の「ゼラゼロ&ゼロフィリ」のつもりです。 読む方によってゼラゼロ、ゼロフィリと捉えられるかなあなんて…甘かったです。 フィリアを「赤ちゃん扱い」、獣王様にいたっては「だって僕、黒い錐なんだもん。てへっ」」状態と、すみません…(涙) |
14315 | ホワイトデーに純白のユリを。 | 葵芹香 E-mail URL | 3/16-00:21 |
記事番号14260へのコメント こんばんわです、totoさんのお話にレスするのは久しぶりな葵芹香です。 今回はバレンタインと対になる、ホワイトデーのお話でしたね。 バラとユリ、フィリアが望むのが真紅のバラの花でも彼女に相応しいのはユリの花、逆に獣王が望むのが純白のユリの花でも相応しいのはバラの花…という、まったくかけ離れた位置にある者が対極にあるものを求めるといった心情というか、深層心理がよく表現されてるなぁと思いました。 ゼロスさんに至っては、フィリアさんに対する魔族ゆえの感情とか、獣王様に対する部下としての・分身としての思いとかが交錯してて、キュンとくるような切なさを感じました…『切ない』なんて感情、ゼロスは持ってないんでしょうけど。 それでは思いっきり感想短い&支離滅裂ですが、この辺で〜。 |
14332 | 暖かいですね。 | toto E-mail | 3/16-14:26 |
記事番号14315へのコメント >こんばんわです、totoさんのお話にレスするのは久しぶりな葵芹香です。 どうも有り難うございます♪ >今回はバレンタインと対になる、ホワイトデーのお話でしたね。 はい。一応… >バラとユリ、フィリアが望むのが真紅のバラの花でも彼女に相応しいのはユリの >花、逆に獣王が望むのが純白のユリの花でも相応しいのはバラの花…という、まっ>たくかけ離れた位置にある者が対極にあるものを求めるといった心情というか、深>層心理がよ表現されてるなぁと思いました。 無謀にも、ユリ/バラ&ゼラス/フィリアで対立概念っぽくしたつもりだったので あの駄文から意図通りとって下さってとっても嬉しかったです。至難の業ですね。 >ゼロスさんに至っては、フィリアさんに対する魔族ゆえの感情とか、獣王様に対す>る部下としての・分身としての思いとかが交錯してて、キュンとくるような切なさ>を感じました ちょーーーーーーとでもきゅんとしてくださったら感無量です。 >それでは思いっきり感想短い&支離滅裂ですが、この辺で〜。 いえいえどうも有り難うございました。 |