◆−朧夢月爪痕奇譚・参−ろれる(3/17-12:45)No.14358 ┣私ってバカなんでしょうか(泣)?−あごん(3/18-00:31)No.14388 ┃┗今はヒントだけ……−ろれる(3/18-01:28)No.14398 ┗朧夢月爪痕奇譚・四−ろれる(3/24-23:52)NEWNo.14568 ┗待ってましたっ−みてい(3/25-00:31)NEWNo.14574 ┗滑り込む!−ろれる(3/25-00:53)NEWNo.14575
14358 | 朧夢月爪痕奇譚・参 | ろれる E-mail URL | 3/17-12:45 |
お久しぶりでございます。朧夢月爪痕奇譚第参話、ようやく掲載できますです。 前のツリーが落ちてから、ずいぶん間があきましたからねぇ。もう完全に忘れられてそう…… もし以前の記事を読み返そうという愛と気力に溢れた方は、うちのページで再掲載していますのて、そちらをご覧ください〜(著者別があるけど)。 ///////////////////////////////////// 朧夢月爪痕奇譚・巻の三 夕焼けが天を覆う暮六つ時。いつもならば、口では店終いと言いつつも、話に興じ居座る客に、ついずるずると引き延ばす──そんな頃合だが、今日は別。 早々に客を締め出し、いつもの顔ぶれ──昼さん、あたし、めりあ、がうり、豪、張との六人で、今日一日の動向を、六から聞き出そうという次第である。 ……とにかく彼の言うことにゃ、今朝見つかったあの死体、一応は調べるつもりでいたらしい。 しかし今の八丁堀は、別件で手一杯。そのため、人手を割くことが出来ないのだそうだ。 そこまで利いたらもちろんのこと、その『別件』とやらの内容にも話は及ぶのだが……いったいなにを警戒しているのか、『絶対に口外しない』と誓わせたうえ、あたりに目を走らせ、他に誰もいないことを確認してから、ようやく六は口を割った。 「浜町の方にさ、でっけぇ屋敷があんだろ」 「そりゃあるけど……」 日本橋浜町は、下屋敷──全国の大名が江戸のくらしに備えて建てた屋敷のうち、別邸などとして使われるものが、いくつか立ち並んでいる地域である。 この切り口から察するに、おそらくそちらのあたりでも事件が起きて、その解決のために六たちが駆り集められてる、とゆー流れになるのだろうが……なんで町方同心に雇われてる六が、武家方の揉め事に首を突っ込むはめになるのだろーか? 「その中の……確か、讃岐守だっけな? お姫(ひい)さんが昨夜っから姿が見えねぇらしーんだ」 「なにっ!? 姫君が朝帰りっ!?」 「違うわぁぁぁぁぁぁっ!」 すこかぱんっ。 「それなら単に、その姫さんの落ち度だろうが。 帰ってきてねぇから、俺達が手間かけさせられてんんじゃねーかよこのスットコ侍っ!」 いきなりボケ倒したがうりのおでこに、六の投げた十手が当たってやたら景気のいい音を立てる。 ……って、それは危ないぞ、おい。 「た、たしかに、そりゃ一大事ですね」 「そうだな、そりゃ大変だ」 どっちらけた空気を払おうと、とりあえずもっともらしくうなずくめりあに、棒読み口調で応じる張。 ふたりとも、まだまだ修行が足りてない。 「で……そのお姫さんを見つけるのが最優先、てわけね」 上から申し付かりはしたが、あまり気乗りしないのだろう。首肯する六の顔は、口いっぱいの苦虫を噛み潰したかのようだった。 しかしそれならば、あの気の使いぶりもわかろうというものである。なるたけ人知れず事を終らせたいのだろう。こうして話してくれたのは、それだけあたし達が信頼されているという証である。 これもひとえに、あたしの人徳の賜物である。 「けどよ…… そんなところの姫さんが、なんだって江戸に来てたんだ? 物見遊山とかか?」 ちょっぴし赤くなった額を撫で撫で、ぼやくようにがうりが続け── ふっ。 風を切り六が再び投げた十手を、首を動かしひょいと避けるっ! が、その先には既にして、はじけるように飛び出した、あたしのお盆が待ちうけていたっ! 相手の動きを利用して、巻き込むように上方へと払うっ! すっぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ。 みごとはたかれ、大きくのけぞるがうり。その鼻先を、張の投げた湯呑みとめりあの布巾がかすめ飛び、さらに豪の空徳利が、とどめとばかりに顎に決まる。 「これ、食器はも少し丁寧に扱わんか。 ……にしても、いい連携をしとるの、おぬしら……」 亀の甲よりなんとやら、とただ一人動かずにいた昼さんに、あたしはお盆をぱたぱた振って、笑って誤魔化したのだった。 ……さっき殴った時、ちょっぴし『めりっ』とかゆー手応えがしたことは、いずれ機を見て話すとしよう…… ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「あのね。大名家の姫が江戸にいなかったら、それこそ一大事でしょーがっ!」 恨めしげにあご擦(さす)りつつ、何かを無言で訴えるがうりに、心底あきれ返りながらもあたしは説明をはじめた。 「大名本人は、一年おきに江戸と国許を行き来する。……それぐらいは知ってるわよね?」 「馬鹿にすんなよ、俺だってそのぐらい」 じゅーぶん馬鹿だって。 ともかく。このいわゆる参勤交代制度だが、もちろん殿様に、一人旅なぞさせるわけがない。お供の侍やら下働きの小姓やらを引き連れて、けっこうな人数がごっそり一遍に移動する。 その一方、江戸に常駐する人間とゆーのもむろんいて、彼らは大名の留守中、屋敷を預かったり、情報集めに精を出したりしているわけだが……藩主、つまり大名の妻子とゆーのも、この居残り組に入れられるのである。 その役目は、ただひたすら江戸にいること。そうやって、幕府に対する忠誠心の証となること。 ──人質、である。 いくら奇麗事を並べたとて、所詮力による支配。色々と無理を通しては反感を買うこともあろうし、個人的な確執や、単なる野心のために異心を抱く藩が出てこないとも限らない。だからあらかじめ、家督を継ぐべき人間を押さえておくことで、安心材料のひとつとしているのである。 その人質が消息を断った──ということが知られれば、下手をすれば、即幕府への謀反と見なされかねない。そうでなくとも目をつけられ、改易や国替えなどといった処分が下される恐れがある。 「……って訳なんだけど、わかった?」 ったく、いったい何が悲しゅうて、町人が侍にンなこと教えにゃならんのだ? 「……なんとなく……」 なんとなくかい。しかも。 「本気で謀反を企んでるって言うなら別だけど──たぶんそのお屋敷の人たちは、なにが何でもお上に気取られないうちに、お姫さんを見つけて連れ帰ろうとするでしょうね。 で、たぶん日頃から、町方奉行に付け届けでもしてあって、そのツテで非公式に手を借りてる、ってところじゃないの?」 「ま、そんなとこだな」 壁から引っこ抜いた(だから危ないって)十手をもてあそびつつ首肯する六。 「まあ俺としちゃあ、ンな面倒ごとに関わりたかねぇんだがよ…… つーわけだから、くれぐれも内密に頼むぜ。俺んとこから話が漏れた、なんてことになった日にゃ、間違いなくコレだからな」 と、片手で首を引くしぐさ。単に職を失う、という意味で言っているのか、それとも本当にそうなのか、いまいち判然としなかったが、 「しゃあねぇな、だいいち約束しちまったし。んな不義理な真似はしねぇよ。なあ?」 「う、うむ……そうだな。 ひとまずこのことは、わしらの胸のうちだけに収めておくとしよう」 豪からいきなり話を振られた昼さんの、重々しいうなずきが、いつもよりほんのちょいと遅れた気がしたが…… 「まあそういうことだからよ。あっちの事件の方をおめえらが調べてくれるってんなら、こいつぁ渡りに舟ってもんだ。この際だから任せんぜ。 でもって時々、様子を知らせてくれ」 「そいで上には、さも自分が解決したかのよーに報告する、と」 「う゛っ…… だ、誰がっ! 愛するみりなvの手柄を横取りするような真似なんざっ!」 すかさず突っ込んだ張に、説得力あるのかないのか、ようわからん理屈で反論する六。 だがしかし、 「……じゃあ今の『う゛っ』はなんだ、『う゛っ』てのは……」 「いっ、いちいち男が細けーこと気にすんじゃねぇっ。 とにかく頼むぜ」 畳み掛けるような見事な呼吸でぽそり、とがうりに突っ込まれ、すかさず話題を切り替えた。 「ま、いちおう交渉はしてみるから、期待しないで待っててちょーだい で……」 心持ち声の調子を落とし、ひた、と相手の目を見据える。 「もちろんお礼は出るんでしょうね?」 「……ま、交渉はしてみる」 こら待てぇっ。 「ちょっとっ! 善意の協力者に、せめてものお礼として金品で感謝の形を示すってー人の道を、なんだと思ってんのっ」 「単におまえが強欲なだけだろーがっ! 嫌ならやめろよ、別に無理強いしてる訳じゃねえんだからよっ!」 「いいえっ。見返りなどなくとも、とりあえず脊髄反射で悪を成敗するのが人の道とゆーものですっ!」 そんな人道ヤだ。 ……いやまあ確かにあたしとて はじめはそのつもり……もちろん正義感とゆーよりは、単に犯人の動機──はっきり言えば、あたしや周りの人たちに危険が及ぶのどうかを確かめないと、おちおち安心していられない、とゆーのが正直なところだが、まあ只で調べてもいいとは思っていた。 がっ。少なくとも成果を六に報告するということは、あたしたちは彼の……ひいては八丁堀全体のために働いている、といっても過言ではない。 だったら、正当な報酬を要求したところで罰は当たんないだろう。 「つまりそーすると、あんたがお姫さんを探し回ってる間中、あたしたちもみりなも知らん顔で、それぞれの仕事に精を出す、ってことね。 その間、当然あんたは自由時間なんかほとんどもらえないでしょうし…… まあ暇になったところで、むやみと押しかけたら嫌われる一方だけど」 「そっそっ、そんなわけねーだろぉぉっ。 いいか、みりなはなぁ、俺の情熱とまめまめしさで、もう心がぐらぐらと……」 「そういえばこの前、六さんが頻繁に訪ねてくるせいで、仕事が滞って困るっていってましたよね」 「どー考えても、情報収集のために我慢して縁を切らずにいるんだよな、あれは」 無邪気なめりあの証言に、さらに追い討ちかける張。 「しつこい男って嫌われるわよねー」 むろんあたしもこの機を逃さず、とどめの一撃食らわせる。 「そんな……そんな……」 がっくりと肩落とし、ぽたぽたと落涙しだす六。よし、あと一息っ。 ……って、なんか目的がずれてきてるような…… 「そんなはずはないんだぁぁぁぁぁっ!」 脱兎のごとく駆け出したその顔が、店を出る直前で、にへらぁ〜〜〜〜と溶け崩れた。実のとこ、互いの位置の関係で直接顔は見えないのだが、気配でわかる。 「邪魔よ、どいて」 馬鹿みたいに立ち尽くす六の向こうから、宵闇が、みりなの声で喋っていた。 戸口をくぐる彼女の後を、指差して笑う気にもなれない表情で、のこのこついて戻る六。 そして。 「本当は来る気はなかったんだけど、面白いことを聞いたから、知らせておこうと思って」 早春の肌寒い空気にさらした身体を茶で温(ぬく)め、みりながもたらした情報は、確かにずいぶんと興味深いものだった。 名は文吉(もんきち)、廻船問屋「青菱屋」の雇われ船頭のひとり── それが、殺された男の素性だというのである。 みりなはそれを、仕上げた版木を持ち込んだ先で、たまたまかち合った別の瓦版屋から仕入れたのだそうだ。 「その浅吉さんの仕事仲間の居場所も聞いてきたから、明日にでも行って来るわ」 「俺も俺も俺もっ」 一人で喚く六からごくごく自然に目をそらし、明日、あたしとめりあのどちらかに同行するよう頼むみりな。 しかし彼女、孤独癖とまではいかないが、いつもは一人で動くはず。わけもなく群れる趣味はなかったはずだが? 「お願いします。──私は不器用ですから」 そんな言葉すらも淡々と、無表情で言う彼女。 たしかに、一見すると冷たい印象がある。しばらく付き合っていればそんなことはないとやがてわかるが……彼女と初めて会った人間は、必要以上に身構えてしまうのが常である。 見ず知らずの相手から、それも死んだ人間のことを聞き出すとなれば、ただでさえ思いっきし怪しまれる。ならば、このあたしのあふれんばかりの愛嬌で、多少なりとも相手の警戒を緩める警戒がある、とそういう訳なのだろう。 「わかったわ。あたしが一緒に行く。 というわけで昼さん、すみませんけど……」 「よく言ったっ! 店のほうならば構わん。一日や二日空けたとて、江戸の平和のためならば、なにを惜しむことがあろうっ! こころおきなく精を出すが良いっ!」 皆まで言わせず、握りこぶしさえ振り上げて、昼さんは許可をしてくれた。こーゆー矢鱈(やたら)な張り切りようは、さすがめりあの親父さんである。 「ありがとうございます! じゃそーゆーことで、張り切って働いてねがうりv」 「……なんで俺?」 うーみゅ……まさかわかっておせんとは、本当に血の巡りの悪い奴。 「この店、ご飯時はめちゃめちゃ混雑するでしょ。二人がかりでもいっぱいいっぱいなんだから、めりあ一人に押しつけるなんて、とてもじゃないけど出来ないわ。 でもあたしは明日、みりなと行かなきゃならない。 となると…… 誰かに代わりにやってもらうしかないじゃない」 「だからなんで俺っ!?」 「ちっちっち。あたしはこう見えて至極当然だけど、『せいるん』の看板娘よ。あんな突飛な格好の豪や張にゃあ、代わりを任せられないじゃない」 この極力主観を排した評価の一体どこが不満なのか、張が顔をしかめたが、 「そりゃそうだろ。おめぇみたいなちんくしゃの代理は、とてもじゃないが出来ねぇよ」 という豪のひとことで、憎ったらしいにやにや笑いに変化した。 ……覚えてろよこいつら。 「じゃ、そういうわけだから、気張って働くのよ」 「わ、わかった」 よーし言いくるめた。これで今月のお給金も、まるまるあたしのもんであるっ! 「……がうりさんに注文や配膳任せるのも、かなり不安じゃないかと思うんですけど……」 めりあのもっともな指摘を聞かなかったフリをして、みりなと多少の打ち合わせ。帰るみんなを見送ったあと、しゃがみこんで床つついてる六を締め出し、ようやく『せいるん』の二階に借りた自分の部屋に引っ込んだのだった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ そして翌朝。 「ここよ」 みりなに連れられ着いたのは、せいるんからはやや離れた、どこにでもある長屋のひと間。 見るからに安普請の戸を軽く叩くと、鈴を転がすような声で誰何(すいか)の言葉が返ってきた。 二人して名乗り用件を話すと、しばしの逡巡はあったようだが、ほどなくして扉を引き開け、一人の童女が顔出した。童女といっても見たところでは十二歳前後、もう少ししたら娘と呼んでもいい頃ではあるが。 「とーちゃん、この人たちが聞きたいことがあるってさ」 幼さの残る外見に似合わぬ蓮っ葉な言葉遣いで彼女は怒鳴ったが、薄暗い部屋の隅から返ってきたのは 「な……なんだとっ!? ダメだ、帰ってくれっ!」 という、ずいぶんと慌てふためいた中年男の声だった。おそらくこれが目当ての人物──殺された文吉とやらの仕事の相棒、舟漕ぎの浅吉さんなのだろう。 「……って言ってるけど、構わないから上がっていいよ。 あ、あたしの名前はお鈴(りん)ね。で、そっちでがたがたいってるのが親父。そいで……」 「ワシが、お鈴の祖父の小兵衛(こへえ)じゃ。 よう来なさったの、あんたがた」 浅吉さんとは対照的に平静なお鈴ちゃんの言葉に割り込み、総白髪のおじいさんが、ぬっ、と顔を出す。うわびっくりしたっ。 「ささ、狭いところじゃが、ゆっくりしていくがええ」 手土産の風呂敷包みを受け取ると、あたしたちを先導するように小兵衛さんはたたきに上がった。一方で、置くまではお鈴ちゃんが父親と言い合う声が聞こえてくる。どうやら浅吉さんのほうは、何が何でもあたしたちを家に上げたくないようである。 「い、いいのかな……」 「ここの人がいいって言ってるんだもの、別に問題ないわ」 なんとなく気が引けたあたしを促すように、みりなが草履を脱ぐ。一人でうだうだしててもしかたないので、後ろ手に戸を閉めて、あたしもそれに続いたのだった。 /続/ ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ あとがき。 またまた出ました人名もじりシリーズ(笑)。登場してすぐ話が終ってるので、次回にまわそうかとも思ったんですけど、なんか毎回新キャラ出さなきゃいけないような気がして。 相変わらず、あんまり話が進んでませんねー。前二話ではドツキが欠けていることに気付いて、今回入れてみたらいきなし増量してしまいました。 時間的にも量的にも先は長いのですが、よければお付き合いくださいませ。 でわでわっ。 |
14388 | 私ってバカなんでしょうか(泣)? | あごん E-mail | 3/18-00:31 |
記事番号14358へのコメント こんばんは〜〜! 三年前に途中で治療を放っぽり出した虫歯が最近また疼き出したあごんです! お待ちしておりました〜〜vv あうあうあうあう。 相変わらずの世界設定の完璧さに脱帽です〜! お姫さま、誰なんでしょう? メンフィスがいいなぁ、と個人的に思っておりますが。 それか、ナーガv 推理は当たるでしょうか? お鈴ちゃん・・・すみません。 誰かわかりませんでした・・・。 ?リン・・・リ・・・ですよねぇ? リィナ=サンバースしか出てきません(笑)。 うぅみゅ。長編でしょうか? スペシャルでしょうか? とにもかくにも! 続きを楽しみにお待ちしております! あごんでした! |
14398 | 今はヒントだけ…… | ろれる E-mail URL | 3/18-01:28 |
記事番号14388へのコメント >こんばんは〜〜! >三年前に途中で治療を放っぽり出した虫歯が最近また疼き出したあごんです! こんばんはっ。ここ数年、怖くて歯医者に行ってないろれるです。 >お待ちしておりました〜〜vv あああああ、良かったです、待ってて下さる方が居て! >お姫さま、誰なんでしょう? >メンフィスがいいなぁ、と個人的に思っておりますが。 >それか、ナーガv >推理は当たるでしょうか? それは秘密です♪ >お鈴ちゃん・・・すみません。 >誰かわかりませんでした・・・。 いや、本格的な出番は次回の予定なんで、今はわからなくて当然です。 >うぅみゅ。長編でしょうか? >スペシャルでしょうか? ではちこっとだけヒントをば。 すぺしゃるのほうです。でもって、おじい様と合わせてお考えになるとわかりやすいと思います。 ……って、半分ばらしたよーなもんですが。 >とにもかくにも! >続きを楽しみにお待ちしております! >あごんでした! はぃぃっ! 頑張ります! これからもよろしくです! でわでわ〜♪ |
14568 | 朧夢月爪痕奇譚・四 | ろれる E-mail URL | 3/24-23:52 |
記事番号14358へのコメント ……なんか今日当たりあっさり落ちそうだな、このツリー……。 どもどもお待たせいたしました。『エセ和風もじり人名当てクイズ』、正解発表です! ついでに予定を繰り上げて、あのヒトも登場です。 ……それに関連して、いきなりりなの一人称から、三人称になってたりしますが、ご了承ください。 //////////////////////////////////////////////////////////// 朧夢月爪痕奇譚(おぼろゆめづきつめあときたん)・巻の四 殺された文吉とよく組んでいたという浅吉さんから、話を聞くことにしたあたしたち。とりあえず、被害者に殺されるような理由……つまるところ個人的な恨みを買ってたか、というのを知りたかったのだが、こちらが何を尋ねても、彼は『話すことは何もない、いいから帰ってくれ』との一点張り。 ここまで意固地になられると怪しいことこの上ないが、押しかけたのはこちらのほう。あまり強く出られた義理でもないので、結局埒があかず、それ以上の追求は断念することとなった。 かわりにお鈴ちゃんが話してくれたが、やもめ二人はもっぱら外で遊ぶほうが多く、年に一・二回ほどの割合でこの家に来ることはあったが、そのときも子供は邪魔とばかりに追い払われるのが常だったとか。 浅吉さん本人からなら、もうちょっと実のある話が聞けるのだろうが……これじゃなぁ。 「ごめんね、愛想なしのとーちゃんで。変なんだよ、昨日っから。 まぁ、文吉のおいちゃんとはけっこうよくつるんでたから、驚くのもしょーがないんだけど」 済まなさそうに茶をすすめるお鈴ちゃん。小兵衛さんは、お土産の蓬饅頭をよほど気に入ってくれたのか、口いっぱいに頬張って、あたしとめりあもそのお相伴にあずかっていた。約一名を除いては、和やかなとすらいえる雰囲気である。 ……まあたしかに、長年の知り合いが死んだというのに、赤の他人と気安く打ち解けられるのは、それはそれで問題ある気もするが──文吉の死に動揺して、というにはあまりにも、彼の警戒振りは度を超していた。これはもぉ、『怪しんでくれ』と言っているようなものである。 まさかとは思うが、この人── 「おかしい、か。そりゃそうじゃろう。 なぜなら……文吉を殺したのは、この浅吉に他ならんのじゃからなっ!」 なっ……っ!? がたたたたっ! 両手をちゃぶ台をしたたかに打ち付け、即座に立ち上がるお鈴ちゃん。 そして……あたしの胸の内に芽生えたかすかな疑念を先取りし、断言したのは、その朝吉の父……すなわち、小兵衛さん! 引き絞られた弓蔓(ゆんづる)よりも張りつめた空気の中、さらに語を継ぐ小兵衛さん。 「……なぁ〜んてな。 冗談じゃよ、冗談」 ………あ……… 「あほかぁぁぁぁぁぁぁっ!」 ずぎゅりぃぃぃぃぃぃぃっ! お鈴ちゃんのまな板に、あたしと浅吉さんの飛び蹴りが、ただ一点に炸裂したのは、次の瞬間のことだった。 「冗談は時と場合と相手を選べって、いっつも言ってるだろーがこのじじいっ!」 ……普段っからこんなことやってるのか……? この家族は…… 「くくぅ、腕上げたの、お鈴。 お客人もいい蹴りをしておる」 額に青筋浮かべて怒鳴る孫娘を慈愛に満ちた眼差しで包み、さらに鼻血を振りまきつつ、よくわからない感慨に浸るご老体。 さっきの飛び蹴り、けっこういい手応えだったんだが……意外と頑丈なじさまである。 「今日はもう、お暇(いとま)したほうが良さそうね」 ひとり冷静に、台所から借りた布巾でこぼれた茶をふき取ったみりなの提案に、あえて異を唱える気力は残っていなかった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 「……って、結局分けわかんないまま出てきちゃったけど…… ありゃ絶対なんか知ってるわよね」 せいるんへと戻る道すがら、昼下がりをふたり並んで歩きつつ、今日の収穫を振り返る。……とはいえ実質的には、互いの意見を交換、というより確認するだけなのだが。 「考えられるのは二つね。 ひとつは彼が犯人で、小兵衛さんの冗談は、あたしたちの気をそらすための目眩(めくらま)し。 もうひとつは──」 「誰かに口止めされている。多分、脅しつきでね」 「そういうことね。もしかしたら、それなりの見返りも用意されてるのかもしれないけれど…… それだけなら、あそこまで怯える必要はないはずだわ」 ふむふみ。するってぇと…… 「ん?」 「あら、あの子ね」 そう。三つ編み揺らし小路の角から現れたのは、先日知り合いになったくそ生意気な少女、しえらだった。 向こうもこちらに気付いたか、一瞬顔を強張らせ、開口一番 「おっ、お前たち! こんな所まで来て、いったい何を嗅ぎ回っているっ!?」 ……おいおいおい、いきなりこれだよ。 むろんあたしたちは、どこに何しに行ってきたか、まだひとことも言ってない。 「あら、奇遇ね。あなたもこの界隈にお知り合いが?」 「お前たちには関係ない!」 ……まあ相変わらず、おじょーひんな口の利きようで。 からかいの言葉が喉まで出かかるが、ここで引き止め無駄口叩いて、わざとさらりと流してくれた、みりなの手柄を無駄にするのも忍びない。 ……絶対気付いてないもんな、この子……。さっきの発言、『この近辺に秘密があります』とバラしたも同然だってこと…… 「いい、自分の身が可愛いんなら、余計な真似はするんじゃいわよっ」 ご丁寧にも去り際に、あたしたちの疑惑を確信へと変える言葉を残して、あたし達が来た道を歩み去る三つ編み頭。 ありがとう。猪突娘。 「……それじゃ明日、誰か男手連れて、も一度来るってことで。 やっぱ豪あたりが適任かしらね?」 十中八九、とゆーかもう確実に、浅吉さんが何者かに脅されている。そして、好きで脅されるとゆー特異な趣味の持ち主でもない限り、その状況から抜け出したいと願っているはずである。 清らかなあたしに儚げなみりな。見るからにか弱そうな乙女たちが相手では、期待しろというのが無理な話だが……腕の立つ連中が味方につくと知れば、話のもっていきかた次第で、こちらに引き込むことも可能なはず。 剣の冴えならがうりも相当なものだが、いかんせん彼の外見は、その実力から程遠い。まずは豪の強面(こわもて)で圧倒して、あんまし好きなやり方ではないが、六の名前をちらつかせてやれば、わりと簡単に落とせそうな気がする。 むろん、浅吉さんは犯人ではない、という前提に立ってのことだが。 「任せるわ。私は明日は、別の線から探ってみるつもりだから」 「ん、わかった。気をつけてね」 脅されているとすれば、その相手は単独ではなく集団。そして浅吉さんと文吉の両方にかかわりを持つ……となると一番臭いのは、他でもない、勤め先の廻船問屋『青菱屋』。 さもなくば、遊び歩いた先ででも、二人まとめてそこらのヤクザもんと悶着があったか……だが、そっちの筋にはあたしたちより、裏街道驀進中の六に尋ねたほうが早いだろう。 ところで……気をつけるといやぁ、さっきのはなんなんだ? 「あのしえらって子、あたしたちに手を引かせたいみたいだったけど…… やっぱし、どっかの回し者だったりすんのかしら?」 「どうでしょうね。 あの言い方から考えて、何かを知る立場にいることは間違いないでしょうけど…… はじめからあたしたち──とは限らないけれど、とにかく他の人間が浅吉さんに近づくことを想定していたようでもなかったわね。 彼女自身、あの先──十中八九浅吉さんでしょうけど──に用があったと考えていいと思うわ」 たしかに、誰かがやってくることを見越していたなら、あんなに動揺はしないだろう。つまり、別に浅吉さんを見張ってるとか、そういうことではない。 「……まさか、あの子が脅迫している張本人、なんてことは…… なさそうだし。いくらなんでも」 年齢や性別を別にしても、そんな芸の出来そうな感じじゃなかったもんなぁ……。あの何も考えてなさそうな活きの良さ、もしあれが全部演技だとしたら、それこそ大したもんである。 「でも、よ。あの子が脅迫してる連中と無関係で、なおかつ何かを知ってる、ってことは……」 あたしたちのように、文吉が殺されてからでは間に合わない。もっと前から調査していたか、あるいは……また別の、とてつもない規模の組織による支援があるか。 「どうやらこの事件……思ってたより、根が深そうね」 どちらにせよ、殺しに先立ってなんかの事件が起きている──もしかしたら今回の殺人は、その一部が表面に現れたものに過ぎないのかもしれない。 「お互い、慎重に事を進めたほうが良さそうね」 みりなの言葉に深く頷きはしたものの、あたしの胸のうちでは期待が渦を巻いていた。 理由は言わずもがな。事が大きいということは…… 解決した時の謝礼も、それだけ期待が持てるはず! 「じゃあ、また」 ──唐突に言われ気が付けば、既にみりなの家の前。 「あれ? 寄ってかないの?」 「長居してしまいそうですから」 うーみゅ。また何か、仕事抱えてでもいるのだろーか? 「そいじゃね」 なんだかきな臭くなってきたのに、あっさり一人にしてだいじょーぶか? と思ったそこのきみ。いい読みしてるがまだ浅い。 むろん護身の範囲のうちだが、こう見えて、みりなはけっこう強いのである。 最近は六がにらみをきかせるせいで、少なくなってはいるのだが……なまじ色白美人なだけに、とおりを歩けばみりなはよく、行き擦りの男に声をかけられる。むろん中には柄の悪い奴もいるのだが…… ことごとく素気無くあしらわれる無謀な男が十人いれば、そのうち三人ほどは逆上し、身の程知らずの報いとして、これまたあっさり返り討ち。 いずれ手出しがあるにせよ、はじめは向こうも侮って、そこらのちんぴら風情と大差ない連中を送りつけてくるだろう。二度三度と繰り返した後ならともかく、しばらくはみりなひとりで充分である。 直接現場を見ない限り説得力がまるでないので、浅吉さんには黙っていたが。 足取り軽く「せいるん」の暖簾をくぐり…… 「おおっ、ようやく戻ったか!」 「りなさぁぁんっ、がうりさんをどうにかしてくださぃぃぃぃぃぃっ!」 半泣きのめりあに抱きつかれたのだった。 や……やっぱし、がうりに給仕させるってのは無理があったかも…… ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ──堅跡城── 背に海原を透かし見る一面の松林が、その部屋を囲んでいた。──実のところその風景は襖(ふすま)に描かれた絵にすぎないが、初代将軍が何かと好んだ画家の筆は、渡り行く風の根さえも再現するかのごとく真に迫っていた。 現在の仮の主にこの部屋が割り当てられたのも、その見事な建具に因(ちな)んでの事である。 伊豆守・松平九郎世良。歳は数えて二十八。若輩ながら怜悧にして鋭敏、老中筆頭をも兼任し、病床の将軍に代わって政(まつりごと)を執る彼は、実質上の江戸の支配者でもある。家督を継いで十年、元来、ともすれば文弱とも見られがちな端整な容貌であったが、歳を経るに連れて生来の凛々しさに威厳と風格を備え、紛う事無き重鎮として辣腕を振るっている。 黄昏が忍び寄る早春の夕。江戸の中心に聳え立つ、壮麗にしてだだ広い城の一角で、彼は碁石を手にしていた。 盤を挟んで差し向かうは、将軍嫡男・一二千代(ひふちよ)。 形式の上では未だ元服も済ませぬ子供だが、その利発そうな瞳の輝きに目を留めたなら、あるいは黒白の織り成す模様を読み取れば、彼の真価の一端なりとも感じ取ることは出来るだろう。 無造作に、気まぐれなように見えながら、彼の打つ手はことごとく、理に適った隙のない図形を描いていたのだから。 石置く音があるいは軽く、あるいは鋭く続けざまに響くなか、それとよく似た物音が、彼らの頭上でただ一度。 「──しえらか」 低い声に答えるように、再び天井板が鳴る。 「上様のお越しだ。降りてきて報告せよ」 「──承知いたしました」 押さえ気味だが明瞭な返答に続き、かすかな足音を残して隠密の少女は── ごぢっ。 「にゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜」 「……頭、ぶつけたみたいだね……」 七年前の政変の折、市井(しせい)に難を逃れた少年は、私的な場では庶民と代わらぬ喋り方をする。それと関係あるのかどうか、相手をいびる場合は別として、あまり歯に衣を着せない。特に近しい者に対しては、身も蓋もない言い様をするのが常である。 今回もその例に漏れず平静な指摘を受け、手にした扇子を意味もなく閉じたり広げたりする世良だった。 ほどなくして、墨で出来た松林が横にすべり、あでやかな(しかしあまり似合っていない)腰元姿に身を包んだしえらが現れ、部屋に灯を入れる。すべての行灯や蜀代に明かりをともしたそのあとは、種火を消し、主の傍らにて膝をつき、報告を始めた。……きつめに編んだ三つ編みに蜘蛛の巣が絡み付いていることには、あえて誰も触れようとしなかった。 「例の件── 証拠となる品は、未だ所在が知れませぬ。人手に渡ったものと思われますが、浅吉ではない模様。 少なくとも、青菱屋が取り戻したわけではないようです」 吉報とはいえぬその内容に、視線は盤上に据えたまま、唇に親指を当て、しばし世良は黙考する。渋さ漂うその仕草に、しえらの表情が幸せそうに緩んだことには、まったく気付いていない。 仮に気付いたところで、省みることはなかろうが。 「で、どうなのだ? 首尾よく運びそうでないのならば、手を引いても別に構わぬ。もともと、さほど重大な件でもない」 「も、申し訳ありません! 私の手際が至らず──」 突き放すような物言いに、しえらは恥じるように平伏したが、言ったほうではそれほど失望していた訳ではなかった。 たしかにしえらの働きは、目覚しいとは言い難いが、初めて一人で任された仕事としてはさほど悪くはないだろう。潜入して三日と立たずに鍵となる人物が殺されたとあっては、どう考えても派遣の時期そのものを逸していたとしか言いようがない。 充分以上に有能な彼には、己の失策を部下になすりつける趣味も、その必要もなかった。 「取り立てて危険がないならば良い。そのまま続けよ。 ──他には?」 「はい、鼠が何匹か── 素人のようでしたので、係わり合いにならぬよう、それとなく警告いたしましたが、聞き入れる気配はなさそうです」 その『鼠』の一人が耳にしたら、「あれの一体どのあたりが『それとなく』なわけ?」と突っ込まれること間違いなしの言いようだが、本人がそう思い込んでいるものはしかたない。 よって上の反応も、 「ふむ、素人か。ならばまず、捨て置いてよかろうが…… 如何いたしますかな? 一二(ひふ)様。」 「いいんじゃない? まあ、出来るんなら、これ以上の騒ぎにはしないで欲しいけど」 ……というものであった。 結局のところそれ以上の沙汰はなく、 「その者らが引かぬとあらばそれでよし、逆に利用するという手もある。さし当たっては、青菱の猜疑心を引き受けさせる、というあたりか。 よい、さがれ」 との世良の言葉に、もう一度深く頭を下げると、しえらは退室した。 ちなみに襖をぴっちり閉めたあと、ずどでででっ、という物音と、『わきゃぁっ!?』という短い悲鳴が聞こえたが……やはり両者とも、その件には触れなかった。 「して──讃岐の件は?」 「せらのばん。」 一瞬戸惑う老中に、指の間に挟んだ石を打ち鳴らして急(せ)かす一二千代。 「だから、世良の番だって。早く打ってよ」 碁の話だった。 「一二様……悠然としていらっしゃるのは宜しいですが、優先順位というものが……」 呑気な物言いに、わざとらしくこめかみを抑えた彼だったが、実に風雅な所作でもってお世継ぎ様は無視された。 「だってさ、まさか本気で謀反を起こすとは。世良だって考えてないだろ? あそこはたしか中立だよね」 「……現藩主の正室は、紀州に縁(ゆかり)のものですが」 「あれぇ? ……そうだったっけ。 でも、いなくなったのは側腹の姫なんだろ」 初めて碁石を手放して、前髪を掻き揚げる幼い君主。 「ええ。それに、正室は既に亡く、子もおらぬそうですから…… 浦葉(うらば)殿としても、さほど頼みにしてはいないでしょうが」 世良が出した名は、次期将軍職の第二候補として、最大の政敵となっている少壮の男のものである。堅跡の分家筋に当たり、一二千代から見れば大叔父でもあるこの人物には、本家に世継ぎ不在の場合、将軍の座に就く資格がある。 「……だったらいいじゃん。お互い、騒ぎ立てて得することなんかないんだからさ」 あっけらかんとお気楽に決め付ける一二千代。しかし状況判断は的確である。 一二千代の陣営にしてみれば、弱点はただひとつ、彼の年齢のみである。もう二・三年もすれば自動的に解決する問題である。むろん降りかかりそうな火の粉は払い、火種は完全に潰したりもするが、基本的には『待ち』の姿勢である。 逆に言えば、対立する浦葉側は焦っているわけなのだが、いきなり武力反乱などという過激な手段に訴えるには、なまじ権力の座に近すぎて歯止めがかかる。仮にその気があったとしても、準備が整っていない。それぐらいの情報は掴んでいる。 肝心の讃岐としては、ことが公になればむろん処罰は免れないから、なんとしてでも早く姫を連れ戻し、口を拭っていたいことだろう。 「──誰ぞ、息のかかった者を新たな藩主に据える、というお考えは?」 「誰がやるんだよ、誰が」 むしろ彼自身の現状を茶化すように、小さな体全部から、大きく息を吐き出す一二千代。弱点というほどではないが、彼らの陣営には駒が──ことに、表舞台に立って動ける人材が不足がちであった。付け加えて一二千代は、あくまで緻密に綿密に、万事計画的に進めることを好む。年齢を考えれば、異様なほどの策士であった。 「下手に刺激して、大叔父様に妙な気を起こされるのも困りものだし。 しばらくあそこには、どっちつかずでいてもらうよ。 人事は君が握ってるんだから、向こうに取られるってことにだけはならないだろ?」 得意げに言いながら、どこで覚えた仕草だか、団子にした手で扇子を握り、顔の横でぴっぴ、と左右に振る。 「──御意。 では今しばらく、そ知らぬ振りをしておりましょう」 「……まだなんかあるの? 難しい顔だけど」 「ええ、実に厄介な問題が」 「ええええええええっ!?」 ようやく緊迫した顔つきになった一二千代に向け、満足げに唇を曲げる世良。 「──次の一手、どこに打てばよろしいのでしょうね?」 ささやかなお返し、であった。 ちなみにこのとき、しえらの調査や讃岐の姫行方不明事件より、よほど真剣に世良が悩んでいたのだが、関係者一同、最後まで知ることはなかった。 //////////////////////////////////////////////////////////// つっこまれる前に自分で白状しちまいますが、しえらの『隠密』という設定が浮かんだ時、脳裏には某「○ろ剣」(<実はろくに読んでない)の忍者娘の姿がたゆたってました。 んでもって……ついに登場、この小説を実際に書く気になった、最大の原因ともいえる重要キャラ(でもストーリーには絡まない)! 九郎世良 as グラウシェラーっ! 名前だけを気に入って、造形は、はっきり言っていい加減! 怒った方は、遠慮なくレスで罵詈雑言ってくださひ〜〜 でわ! |
14574 | 待ってましたっ | みてい | 3/25-00:31 |
記事番号14568へのコメント >……なんか今日当たりあっさり落ちそうだな、このツリー……。 間にあうかなの滑り込みっ!みていでございます。 >どもどもお待たせいたしました。『エセ和風もじり人名当てクイズ』、正解発表です! >ついでに予定を繰り上げて、あのヒトも登場です。 誰でしょ誰でしょ。 >「冗談は時と場合と相手を選べって、いっつも言ってるだろーがこのじじいっ!」 > ……普段っからこんなことやってるのか……? この家族は…… 笑いと悲鳴の絶えないご家庭でしょうv >「おっ、お前たち! こんな所まで来て、いったい何を嗅ぎ回っているっ!?」 > ……おいおいおい、いきなりこれだよ。 > むろんあたしたちは、どこに何しに行ってきたか、まだひとことも言ってない。 >「あら、奇遇ね。あなたもこの界隈にお知り合いが?」 >「お前たちには関係ない!」 > ……まあ相変わらず、おじょーひんな口の利きようで。 まー、しえらだなぁ(微笑ましい目でみつめる) >「おおっ、ようやく戻ったか!」 >「りなさぁぁんっ、がうりさんをどうにかしてくださぃぃぃぃぃぃっ!」 > 半泣きのめりあに抱きつかれたのだった。 > や……やっぱし、がうりに給仕させるってのは無理があったかも…… 注文取って、報告して、また同じ所へ運ぶ。誰の注文だったか聞く端から忘れていきそうだっ(笑)がうり。 > 今回もその例に漏れず平静な指摘を受け、手にした扇子を意味もなく閉じたり広げたりする世良だった。 大変なご友人(違)をお持ちで。 >「はい、鼠が何匹か── > 素人のようでしたので、係わり合いにならぬよう、それとなく警告いたしましたが、聞き入れる気配はなさそうです」 > その『鼠』の一人が耳にしたら、「あれの一体どのあたりが『それとなく』なわけ?」と突っ込まれること間違いなしの言いようだが、本人がそう思い込んでいるものはしかたない。 …仕方無いか。 『それとなく』ロコツに寄るんじゃないコールのしえらちゃん。 > 如何いたしますかな? 一二(ひふ)様。」 いち、にと書いて一二(ひふ)っ!何だか素朴な名前になられました。 >「して──讃岐の件は?」 >「せらのばん。」 > 呑気な物言いに、わざとらしくこめかみを抑えた彼だったが、実に風雅な所作でもってお世継ぎ様は無視された。 この方がお世継ぎかぁ。どんな国になるのやら…考えるとちと怖いかも(爆) >「──次の一手、どこに打てばよろしいのでしょうね?」 > ささやかなお返し、であった。 チェックメイト、じゃなく王手! >九郎世良 as グラウシェラーっ! >名前だけを気に入って、造形は、はっきり言っていい加減! >怒った方は、遠慮なくレスで罵詈雑言ってくださひ〜〜 いいえ素晴らしい当て字(と言ってよいものでしょうか)ですっ! >でわ! それにしてもろれるさん、「弓蔓が張り切るほどの緊張」とかの数々の場面説明、語彙がすっごく多いですね。 異様に少ないみていにはものすごくうらやましいですっ! ではでは、みていでござました。続きお待ちしています。 |
14575 | 滑り込む! | ろれる E-mail URL | 3/25-00:53 |
記事番号14574へのコメント >>……なんか今日当たりあっさり落ちそうだな、このツリー……。 >間にあうかなの滑り込みっ!みていでございます。 さらに間に合うかっ? のお返事です。 しかし素早いですねぇ。投稿してから三十分しか経ってない。 >>「冗談は時と場合と相手を選べって、いっつも言ってるだろーがこのじじいっ!」 >> ……普段っからこんなことやってるのか……? この家族は…… >笑いと悲鳴の絶えないご家庭でしょうv あと、骨の砕ける音とかもですねv >まー、しえらだなぁ(微笑ましい目でみつめる) ええ、しえらですから。 >> 半泣きのめりあに抱きつかれたのだった。 >> や……やっぱし、がうりに給仕させるってのは無理があったかも…… >注文取って、報告して、また同じ所へ運ぶ。誰の注文だったか聞く端から忘れていきそうだっ(笑)がうり。 台所に着くまでに、注文の内容も忘れてますね、きっと(笑)。 >> 今回もその例に漏れず平静な指摘を受け、手にした扇子を意味もなく閉じたり広げたりする世良だった。 >大変なご友人(違)をお持ちで。 この話だとガーヴが側に居ないので(先入観)、彼にお鉢が回ってきたのです♪ >>「はい、鼠が何匹か── >> 素人のようでしたので、係わり合いにならぬよう、それとなく警告いたしましたが、聞き入れる気配はなさそうです」 >> その『鼠』の一人が耳にしたら、「あれの一体どのあたりが『それとなく』なわけ?」と突っ込まれること間違いなしの言いようだが、本人がそう思い込んでいるものはしかたない。 >…仕方無いか。 >『それとなく』ロコツに寄るんじゃないコールのしえらちゃん。 まづいぞしえらっ! そのうちがうりを抜きそうだっ。 >> 如何いたしますかな? 一二(ひふ)様。」 >いち、にと書いて一二(ひふ)っ!何だか素朴な名前になられました。 ……いいんです、幼名ですから。 >>「して──讃岐の件は?」 >>「せらのばん。」 >> 呑気な物言いに、わざとらしくこめかみを抑えた彼だったが、実に風雅な所作でもってお世継ぎ様は無視された。 >この方がお世継ぎかぁ。どんな国になるのやら…考えるとちと怖いかも(爆) お世継ぎより、ご生母(当然あの方)のほうが問題じゃーないかと。 >>九郎世良 as グラウシェラーっ! >>名前だけを気に入って、造形は、はっきり言っていい加減! >>怒った方は、遠慮なくレスで罵詈雑言ってくださひ〜〜 >いいえ素晴らしい当て字(と言ってよいものでしょうか)ですっ! >>でわ! >それにしてもろれるさん、「弓蔓が張り切るほどの緊張」とかの数々の場面説明、語彙がすっごく多いですね。 いにゃ、人様の文章から、適当に切り貼りして持ってきてるだけっすよん。 最近のタネ本は田○芳樹なんで、漢語が多くなってるかも。 後はその場のノリで適当に。 >ではでは、みていでござました。続きお待ちしています。 はい〜。今度はツリーに、話三つぐらいつけられるように頑張ります! でわでわ♪ |