◆−「皇帝」(気まま2-25)−CANARU(4/8-10:09)No.14936 ┗人間罠探知機(笑)−P.I(4/10-22:24)No.14956 ┗ぢつは秘話ありでっす!−CANARU(4/10-23:08)No.14957
14936 | 「皇帝」(気まま2-25) | CANARU URL | 4/8-10:09 |
久々、気ままシリーズをお送りします!! *********************** その絵はとても綺麗だった。 幼い時分の事である。 本当に語彙は『綺麗』としか言いようが無いのだが。 完成は多分、今以上に鋭かったと思う。 ・・・・・・理論武装も・・・何も無く・・純粋に見上げる事が出来たし。 ・・・理論武装無く・・・純粋に? そういえば・・・そんなモン最近の時分にはとんっと無関係と言う関係(何のこっ ちゃ・・・・)と思っていたが。 それでいてなんと言うか・・死ぬほど身近にそんな存在が・・・・・・・。 暫しリナは考え込む。が、諦めたように目を開くと・・・・・。 「よお。リナ!!」 目の前にはまったくもって(リナとしちゃあ・・・)『無関係という関係』・・ (酷)。 『理論武装』も『頭脳労働』も『論理』も『常識』も『知識』もへったくいれも無い この男・・・・・。 仕事上のリナの相棒、ガウリイである。 「何そんなにビビってるんだよ・・・?」 いや・・真坂・・今まで考えていた モノの権化がマトモに目の前に居ると・・。 確かに焦るぞ!!普通は!! などと勝手なことを考えて未だに同様から抜けきらないリナに向かってガウリイは。 「馬鹿兄が呼んでるぞ?」 リナの義兄のゼロス。 名目上はナポリ、ヒチリアを取り仕切るまだしも合法的なマフィア組織 「カタート」の若き総帥・・・・・・・。 しかし、実態はルクセンブルク公国「ワルキューレの騎士団」の副旅団長・・・。 ついでにいえばリナ自身もそのルクセンブルク公国の姫君だったりする・・のだが・ ・。 ガウリイも言うように彼はリナにとっては単なる『馬鹿兄!!』にしか過ぎなかっ た。 「アンタも最近、言うようになったわね・・ガウリイ・・・」 今までは本名で『ゼロス』と呼んでいたのに、すっかり今ではリナの口癖が感化して いる。「ま〜な・・・ところでさ・・・なんで俺見て動揺したんだよ・・?」 未だにソレが不満らしいガウリイにリナは。 「ン・・?別に。ただ寝起きに変なもん見ちゃったなあ・・って思ってね」 「・・・変なもんって・・・・・・・・・俺・・」 「うるさい。あんたは変なもんなの!!」 意味不明なリナの答えにスゴスゴと落ち込みながらも従っていくガウリイ。 さてはガウ、ゼロス苛めに僅かながら人生の生きがい兼ストレス解消を見出したので はないだろうか・・・? まあ、リナとしてはソレこそど〜でも良いことなのだが。 「マドンナ・リナ。随分遅かったですねえ・・おやぁ・・シュニョール・ガウリイは 随分落ち込んでいるよ〜ですが?」 スペインかネーデルラント直輸入のパウダーココアだろうか? このクソ暑い気温だって言うのに湯気をたてた液体を美味しそうにゼロスは啜ってい る。 「未婚女性、既婚女性でマドンナ、モンナと呼び分けるのは・・。フェミニストのす ることじゃ無いんじゃないの?馬鹿兄」 寝起きに急に呼び出されたこともあってリナはとことん機嫌が悪い。 出窓に腰掛、未だに落ち込んで大理石に敷き詰めてあるアラビア産のカーペット にいぢいぢとのの字を書き書きしているガウリイの頭をポカンと蹴り上げる。 「・・相変わらず残酷ですね・・・リナさん・・あ、ラムネ飲みます?」 かく言うアメリアも結構このガウリイの状況を楽しんでみているらしいし・・・。 残酷度合いは変わらない気がするのだが・・・・。 「戴くわ、アメリア、ぷはあ〜〜〜!!暑い時はラムネに限るわね〜!! 後でビンを破壊してビー玉取り出すのも楽しいのよね〜!!」 チリン・・とラムネのビンで中身のビー玉をならすリナ。 「ボクがギンッギンに冷えた炭酸飲料がだいっきらいなのにそ〜ゆ〜事言うのは あてつけですか?リナさん・・・。ついでに言えば・・ボクの机の角使ってビン破壊 するのはやめてくださいね・・・」 先手をうったゼロスに対してリナはチィっと舌を鳴らし・・・。 やおら腰掛けた出窓のすぐ真下に見える物体に目をこらすのだが・・・。 「リナ・・ガウリイの旦那の頭を使うのは・・殺人未遂と言われても文句は言えんぞ ・・やめとけ・・・」 ゼルの鋭い『殺人未遂』の一言に、アメリアの目がキュピラ〜〜〜ン!! と光るのがココからでも見て取れる・・・。 チ・・・こっちも使えない訳ね・・・・・・・。 仕方無しにこのビンは廃品回収に出す決意を泣く泣く(?)するリナに。 「今日はサクサクとスペインに行って下さい。『カルロス1世』の秘宝を探してるん ですよ」 ・・・・・ルクセンブルクの秘宝にスペイン・・・・・・・・。 今度はゼロスの話にすれば、それはガウリイの父、フィリップが流失させたものでは ないという・・・・。 自然に時の流れに消失したらしい・・・と言うのだが・・・。 「なあ〜・・ルクセンブルクとスペインの王様・・・ど〜ゆ〜関係があるんだ?」 マドリッドに到着した途端。 ガウリイが不満そうな声を出す。 まあ・・無理も無い。 もともとガウリイは森林と平原、さしたる小高い山も無い北国、ルクセンブルクの生 まれである。 剥き出しの岩山に灼熱の大地に太陽。 荒涼とした土地が続くスペインとの差を考えれば・・少々面白くないのかもしれな い。 最も南国のナポリで育ったリナには本当に些細な問題だし、理論的に説明も出来る が。 あえてこれ以上ガウリイの気を損ねるほど無神経な真似はいたくない。 「ヨーロッパ最大の君主、スペイン王カルロス一世・・ついでに言えば彼は神聖ロー マ帝国の皇帝でもある・・・・」 リナとしてもココまで言って初めて少々面白くないような感覚がする。 カルロス王のイメージは強持てで寡黙な・・最大の権力者なのだが。 この国王はナポリを領有し、イタリア(ローマ)に『西ローマ帝国崩壊以来の破壊』 をした『サック・ディ・ローマ』(ローマ略奪)の演出者である。 西ローマの崩壊の歴史を聞かされ『まるでサック・ディ・ローマ』とこの時のことを 逆に思い出した程だった。 あまり良い感情を歴史的に持てるはずが無かった。 ともあれ、話を元に戻さねばならない・・・・。 「この王様のママはスペインの女王様、でもってパパはフランドル(ブルゴーニュ公 国)の主でね。もともとカルロス王はブルゴーニュ公国の生まれだったの。で、17 歳のときにフランドルからスペインに渡って王様になったんだけど・・領地的に言え ばフランドル、スペイン、新大陸のスペイン領、イタリアのシチリアやナポリ、更に 言えばハンガリーの東欧方面の君主でもあったの。まあ・・地盤はフランドルとスペ インなんだけど・・そのブルゴーニュ公国に当事はルクセンブルクも含まれていたっ て訳」 「成る程ね・・・で、スペインにか・・・・」 「アタシの予想だと、もともとその宝はスペインにあったものだと思うのよ。フラン ドルからスペインに渡ったブルゴーニュ公国の家臣団は何かと理由をつけてこの国の 主人面してスペイン人を王から遠ざけようとしたらしいの。んでもって・・このスペ インの富・・新大陸からもたらされる金、銀を何かと口実をつけて母国に持ち去った らしいの・・・」「・・・で、スペインがそれを死守しようとして・・どっかに隠し たのかな?」 妙に勘がいいわね・・今のガウリイ・・・・。 「ねえ、ガウリイ、アンタさあ・・ガストンちゃんに何かにつけて理由をつけられて ・・小遣いとか取られなかった・・?」 「・・そうそう!!アイツ・・そ〜ゆ〜事にはやったら滅多ら頭が働くんだよなあ・ ・」 ウンウンと頷きながら言うガウリイに・・リナはと、ある可能性が頭の中に生じる。 「でもって・・残りの小遣いを死守しようとして・・どっかに隠す!!」 「やったやった!!何だ・・リナ・・お前も体験あるのか!!」 ポンと手を打ちながらリナに嬉しそうに答えるガウリイ。 「でもって!!」 ビシっとアメリアよろしくガウリイを真っ直ぐ見据え、人差し指で彼を指差し・・ ・。 「でもって・・その隠した小遣いが何処にあるかすっかり分からなくなる!! そ〜でしょ!!アンタ!!」 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! お前、ど〜して分かったんだ!!もしかしてエスパーか!!!!」 ・・・・・・・・・・・・ガク・・・・・・・・・・・・。 予測はしていたとは言え・・やっぱりかなりショックは・・ある・・・・。 何やら浮かれているガウリイを傍目に、リナは一人詮索したことを激烈に後悔 しているのだった・・・・・。 そ〜ゆ〜奴って・・昔も今も居るのねえ・・・・・・。 「おいいいいいいいい!!!リナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 今すぐ来てくれええええええええええええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 寝ぼけたリナの頭に真っ先に響き渡ったのはご存知、リナの実兄ジョヴァンニの懇願 声である・・・。 「ど〜したのよ・・兄様・・・・溝にでも落っこちたわけ・・・??」 時差無視の問答無用、世界中何処でも通じるイリジウム携帯にかかってきたこの電話 にリナは頭を抱えつつも冷たい声で答える。 「・・・安心しろ・・ちゃんと足と靴とズボンは洗濯した!!」 ・・・・・・・・本気で落ちたのか・・・・・・・・・・・・・・・・。 まあ、さしものジョヴァンニとはいえ、溝に落ちただけでこれほど慌てた電話をかけ てくる訳は無い。この男がこれほど大慌てする理由は唯ひとつ・・・・・・。 「・・ラウラになんかあったの・・・????」 頭を更に深く抱えつつ・・リナ・・・・。 「今、ブリュッセルに居る・・直ちに来てくれ〜〜〜〜!! うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!ラウラに嫌われる〜〜〜〜〜〜〜〜 !」 ・・・・・・・放っておいたら・・翌日には確実に首つってるわね・・・・・。 幸いベルギーのブリュッセルと言えかつてのブルゴーニュ公国の領地の一部だし・ ・。 まあ、手がかりとは行かなくても何か証拠はあるかもしれない。 真夏のマドリッドはガウリイにも精神衛生上よろしくない様子だし・・・・。 「分かったわ・・今すぐって訳にはいかないけど・・今日中には行くわよ・・」 はあ・・とため息をつきつつリナ。 ガウリイの機嫌が優れないわけとココを直ぐに発てないわけは他でもない・・・。 『オーリママ』との面会がも〜じきある・・それだけである・・。 「ガウリイ・・これはど〜ゆ〜ことなのです・・・?私は貴方を隠し事したり・・コ ソコソしたりするよ〜に育てた覚えは・・ありません!!」 ズバン!! 机の上に叩き付けられる札束数枚!! 「・・・・・・母さん・・なんです・・?その金・・。だいたい・・俺」 「おだまり!!コレは貴方の部屋の百科事典の間から発見されたヘソクリです!! 何を考えてるんです!!ガウリイ!!こんな大金をヘソクリするなど!!」 周囲の目を気にせず大の大人の男を叱り付けるオーリママ!! 「・・・ちりも積もれば・・ね・・・・」 そんな二人のやり取りを眺めながらリナはボソリと呟いてみる。 きっとこれはガウリイがガスちゃんから死守した小遣いが溜まりに溜まったのに違い ない。でもって・・・ガウリイが間違っても『百科事典全集』なんぞと言うものを開 く事は・・うん。まずもって絶対に考えられない事だったし・・・。 「ともあれ・・ガストンが今ブリュッセルに行っています・・。何でもエリザベスお 嬢様が厄介な事に巻き込まれいるとか・・・」 一先ずガウリイを怒鳴るだけ怒鳴り、さしもの彼をも抜けガラにしてしまってやっと 話を始めるオーリ・ママ。 「それって・・・・・・・」 まぐれも無く・・ジョヴァンニが現在居る所在地・・であった・・・・。 グズグズグズ・・・・・。 「に〜様・・首つりそうだったわよ・・・???」 「そうかい・・。そりゃ〜是非見てみたい光景だねえ・・・」 ったく・・と呆れた口調で寝台に横たわったラウラはリナの方を見遣るために寝返り を打つ。 「大丈夫?」 「ああ・・こっちの方は強打しなかったからね・・・・」 何てことは無い。先日、今リナの世話になっているエリザベスの従兄のこの屋敷の持 つ牧場。 偶然ジョヴァンニはと、ある事情で其処に世話になっていた。 其処に、ラウラ、エリザベス、ガストンが偶然お客としてやってきたのだが・・・。 「若い女の人が派手に落馬したの目撃して・・、『危ないラウラ!!馬なんて乗っ ちゃ駄目だ〜〜〜!!』とか言って世界的に有名な騎手でもあるラウラ、貴方の馬に 飛び乗って・・・」 「・・・逆にアタシを振り落としやがったのさ・・あのスットコドッコの薄らトーヘ ンボク!!」 ごろり!!とムクれたよ〜にリナに背を向けるようにまた寝返りを打つラウラ。 「ま・・・アンタの顔に免じて・・今回は許してやるよ・・あのクソ間抜け・・。 ま、ココにアイツが居た理由・・聞いてみるんだね。腹がよじれるほど笑えちまうよ !」投げやりにそう言うラウラの表情はココからは当然ながら確認出来なかった。 「・・・『派手に落馬した若い女性』ってのも気になるけど・・そ〜するわ・・」 一寸考えながらリナはそうラウラに告げた。 「おお〜〜!!廻!!久しぶりだなあ〜〜〜!!お前のね〜ちゃん今日はどうした! ?」 ・・・日本製クラゲの少年、廻・・恐らく彼の主のロクデナシの銀髪、危な系のナル シスト、英国貴族と日本人のハーフ、リナの中学時代の同級生氷(ヒョウ)の付き添 いでココまで来たのだろう。そして・・少年廻はガウリイに・・・・。 「ああ!!お久しぶりです!ガウリイさん!!緋雨裡ね〜ちゃん、つい先日ド派手に 落馬して・・骨折ったのかな・・?多分今ごろ病院でのた打ち回ってると思います! !」 ・・・・・・・・・・案の定・・だったか・・・・・・。 この二人のクラゲは放っておくとして、なにやら未だにいじけているジョヴァンニ に。 「に〜さま・・今回はラウラ、アタシの顔に免じて許してくれつって・・って・・」 「本当・・・・嘘ついたら怒るよ・・ねえ・・本当!!?」 ・・・棄てられた子犬か・・・アンタは・・・??? 「嘘ついたってあたしの特にはなんらいもん。で、に〜さま・・なんでココにいたの ?」別に今日は無いが、ラウラ聞いてみろ、と言うから聞くまでの事である。 「ん・・・ブリュッセルに遊びにきたら財布落として・・通りかかったヴィンセント さんい助けて貰って・・うん・・牧場の馬番として働かせてもらったんだ・・・」 ・・・・・・・泣きながら言うな・・余計虚しい・・・・・・。 しかもこの人と同じ血が流れていると思うと・・笑えないわよ・・ラウラ!! 「ヴィンは私の従兄のおに〜さまなの・・イングランドからここ・・・。 ブリッセルにステファニーお姉さまのお婿としてうつられたんだけど・・・」 ひょっこりと現れたエリザベスが泣きそうな顔でリナに説明する。 これは・・・間違いなく何か一大事に巻き込まれた顔である。 「・・・よお・・馬鹿兄。イカレ男ならトイレに閉じ込めたから安心しろよ・・」 やおらエリザベスの隣にこれまたひょっこりと現れたガストンがガウリイに言う。 「おお!!暫く氷様から解放される〜〜〜!!嬉しい限りです!じゃ、ボク、緋雨裡 ね〜ちゃんのお見舞いにいってきます、じゃ、ガウリイさん、また!!」 「おお!!廻、どさまぎでね〜ちゃんに何か盛るなよ〜。じゃ〜な」 ・・・・・・分かってるじゃん・・ガウリイ・・廻の性格・・・・・・・。 話によれば・・・・・・。 つい一週間ほど前からこの家の女主、ステファンことステファニーさんが失踪してし まったとのこと。 当然、警察の捜査もあったが証拠は皆無。 疑いは『婿養子』であるヴィン・・ことヴィンセントさんに向けられたと言う訳だ。 「・・確かにこれだけの資産がある家に婿養子に入ったのも事実だが・・・。夫婦仲 は円満、ヴィンがステファンを『失踪』させる理由は無いぜ・・・?」 考えながらガストンが言う。 「ヴィンはもともと人望があったから味方も多いんだけど・・・。何せよそ者でしょ ?ヴィンに反発する一派があって・・今すごく大変な立場に居るの・・・。それに・ ・ヴィンを狙ったんだと思うけど・・牧場で乗馬した女性が誤って『仕掛け』された 罠で数日前に落馬して入院したこともあって・・私・・すっごく申し訳なくて・・ ・」 ますます泣きそうな声で言うエリザベスにガウリイは・・・。 「大丈夫だよ、エリザベスちゃん。廻ならこ〜言う筈だぜ!!『あははは〜〜♪い〜 んです!!ど〜せ緋雨裡ね〜ちゃんだしぃ・・殴っても蹴っても、塩酸ぶっ掛けて も、鞭打っても、首しめても、袋叩きにしたって壊れないですから〜〜♪』ってな! !」 『鬼か・・?お前ら・・・・・?』 見事にガストンとリナの声がハモる。 「ともかく・・手がかりが欲しいわね・・・何処か検討つきそうなところ無いかしら ?」 リナの質問にエリザベスが・・。 「一応美術品が飾ってある部屋・・なんて如何でしょう?ステファンお姉さまとヴィ ン、二人にとってお気に入りの場所だったので・・・・」 自身無さそうな声でエリザベス。 「まったく・・まるでマクシミリアン皇帝とマリー妃ね・・・」 はあ・・・とフランドル派の美しい絵画が飾られた部屋を見ながらリナはため息をつ く。 「マクシミリアン皇帝とマリー妃・・?」 一人の鷲鼻の男、黄金の波打つ髪の毛に黒い帽子。 何よりも印象的なのは鋭い眼差し・・昔の貴族である事は確かである。 「カルロスの祖父と祖母よ。もともとハプスブルク家のマクシミリアンは・・・ハプ スブルク家はマクシミリアンの父、フリードリヒ三世が神聖ローマ帝国皇帝、と言う 以外なんらとりえも無い弱小貴族でね。そのフリードリヒが当事栄華を極めた、ヨー ロッパで一番富んでいた公国、ブルゴーニュ公国の只一人の継承者、『シャルル突進 公爵』の緋折娘マリーに息子マクシミリアンとの結婚を申し込んだのよ」 「・・・・貧乏の癖に・・・?相手にもされなかったんじゃね〜か・・・?そのマ リーっての、金持ちだったんだろ?」」 ん〜〜・・・と考えたようにガウリイ。 「普通なら、ね。けどあくまでシャルル突進公は君主であっても『ブルゴーニュ』の 『公爵』・・決して『国王』じゃないの。もともとフランスのヴァロア王朝から喧嘩 別れして樹立した国だったから・・いっくら『国王』とよがって見せても諸国は完全 無視。けど、一つだけ『国王』とシャルルがなりえる方法はあったの・・。それが、 『皇帝』から『ローマ王』に推挙されるって事よ・・・」 「・・・で、シャルルは王様になれたのか・・・???」 そんなガウリイの答えにリナは首を横に振る。 「そもそも無理難題よ・・。かなろドあつかましい願いだしね。で、結婚の交渉は決 裂、でもってシャルルはまんまとドイツ(オーストリア)に攻め込んだけど当のマク シミリアンによって大敗を余儀なくされる事になって・・。そんなこんなゴチャが続 くうちにフランスのルイ11世がブルゴーニュに攻め込もうとしてね。結局彼は娘む こにはマクシミリアンしか無い、って認めたのよ」 ふう・・とココまで言ってリナは一息をつく。 「・・・・めでたしめでたし・・か・・?」 「でもない。その後、もともと仲の悪かったフランスとブルゴーニュの争いはハプス ブルクVSフランス(ヴァロア、ブルボン王朝)に持ち越し。更に悪い事にルイ11世 は時分の息子シャルルにマリー姫を・・と企んでいてね。なお更争いは激化。そんな こんなで結婚四年半でマリーが落馬の事故で死んでしまったのよ。それって、マクシ ミリアンにとっては大打撃。あくまで彼はブルゴーニュでは余所者。彼の息子フィ リップを盛りたてて彼を排斥しようとするブルゴーニュ貴族の運動もかなり盛んだっ た。その後ろ盾は無論ルイ11世。しかも一人娘のマルガレーテもどさまぎでルイ1 1世の息子、シャルルの嫁にすべく、フランスに誘拐されてしまったのよ・・・」 「・・・天国から地獄だなあ・・・・」 さしものガウリイもこの話にはたまったものじゃないと思ったらしかった。 「何か変だと思わない・・?」 「何が・・?」 コレといった手がかりも無く、ヴィンも既にどこかに外出し、この屋敷にはいない。 さしあたってヴィンを探して話を聞くのが先決。 そう判断したリナが何処をともなくエリザベスから渡された地図を眺めつつ市街地を 歩き回っている今。 何となく疑問に思ったことをガウリイに話し掛けてみる。 「だって・・あくまでマリー妃と違ってステファンさんは生きている・・・のよ? 何で『探す』という行動に出ないで・・敵陣営は真っ先に『ヴィン』排斥に走ったの かしらね・・?普通、必死こいて探すモンだと思うけど・・・」 「・・・そういえば・・・・・・・・」 ガウリイがその言葉を発しきらないそのうちだった。 何処へとも無く歩き回っていたのが功を奏した・・としか言い様が無い・・。 いいや・・それとも・・・。 リナは意図的にガストンガ『この辺りには近づかないほうが良いですよ』と告げた市 街地の中でもかなり治安の悪い場所に向かっていたのか。 ヴィンセント捜索とは上手く言った言い訳だ・・・・・・。 既に彼女は核心部分の捜索にかかっていたのかもしれない。 道端に転がった数多くのコンテナの中から恐らく一番新しいものだろう・・・。 まだまだ塗装用のシンナーの匂いが漂ってきそうなものの蓋をやおらリナは蹴り上げ る! 「・・・う・・・・・・・・・・・・・・・・」 久々に見た光がまぶしかったのだろう。 様子からして水や食事はそこそこ与えられていたらしい。 「・・・ステファニーさん・・・?おい・・リナ・・どう言う事だ!!?」 コンテナの中から女性を助けているリナに向かってガウリイ。 「早く通りの奥に行って!!多分・・連中はヴィンセントさんを今回の一軒の『犯 人』に仕立て上げて・・・」 『目的』を実行しようとしているに違いない!!! 「・・・連中??」 「それが誰か分かれば苦労はしないわよ!!!!」 おかしいとは思った。 あのステファンの家で見学した数々の美術品は恐らく世の中に出回っていないものだ ろう。実際どんな本でもリナは見たことが無かった。 しかし・・明らかに素人目では分からないほど『精密』な「贋作」が混じっていた。 「・・・あれは・・・・中世の・・・羊毛騎士団が・・・・・」 「・・・喋らないで・・・・・・」 羊毛騎士団・・シャルル突進公が設立したブルゴーニュの騎士団。 その精神は脈々とルクセンブルクにも伝わっていることは事実だろう。 そして・・贋作の存在・・それさえ分かれば・・・・・。 ズダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンン!!!!! リナがそんな事を考えたその刹那だった!! 巨大な爆発が市街地から離れたこの危険地帯・・倉庫を揺るがす!! 「ガウリイ!!!」 其方の方向では・・敵を追撃しているはずのガウリイが!! 一瞬焦り、其方に向かい 、光と煙で焼かれた目を酷使してでも突き進もうとするリ ナの手を何者かがグっと掴む・・・?? 「ちょっと!!何すんのよ!!オッサン!!ガウリイが!!」 突如現れた黒髪の男に抗議するリナ・・・。 「・・・オッサンって・・この小娘は・・・まあ、云いけどよ。冷静に考えてみろよ ・・」クイっと黒髪の男はガウリイが居るであろう煙の漂う爆発があった辺りを顎で 指す。 「・・・・なんだ・・・派手な音のする煙幕・・ね・・って・・あ・・」 其処には。 巨大なキャンパスと一人の男を肩に抱えたガウリイが戻ってくる様子・・・・・。 「雲隠れって奴だな。ったく・・。ガードルードのババァを『変える』なんて芸当で きる割りにはせこい真似しやがんなあ・・・」 ふう・・とため息混じりに黒髪の男。 そして・・彼を見つけたガウリイが慌てたようにそっと地面に跪く。 「・・気にすんな、ガウリイ。じゃ。このクソ生意気な小娘のことは頼んだぞ」 言うだけ言ってさっさとその黒髪の男は去っていく。 「・・・誰よ・・?アレ・・・・?」 「・・・・・・・・・・・・・・」 言って良いものか悪いものか・・・。さしものガウリイもこの質問にだけは戸惑うの だった。 「ヴィンセントと私を救ってくださったお礼です。リナ様・・・」 そっとステファンは・・ガウリイが『取り戻した』一枚のキャンバスをリナに手渡 す。 「・・・これは・・・???」 黒い髪の絶世と言っても良い15世紀風の美女が描かれた絵。 「・・これがゼロスの言った宝物。カルロスの宝よ。当代一の画家、ティツィアーノ の筆、カルロスの妃の絵よ。もともとはポルトガルの王女でフェリーペ二世の母よ。 連中、かたっぱしから複製を制作してこの美術室にあった絵を運び出そうとしていた みたいね・・この絵以外にも探せばまだまだ出てくると思うわ・・・ ガウリイの問いかけにリナが答える。」 「もともと私達は『ワルキューレ』のブリッセル支部の人間です。迂闊でした。まさ か・・敵陣営が・・私とヴィンを狙っていることに気付かないなどと・・・」 「エリザベスにも世話をかけてしまったな・・」 ステファンとヴィンの言葉にラウラの影から恥ずかしそうに微笑むエリザベス。 「で・・その『敵陣営』が狙うって事は・・」 疑問に思っていたことをついにリナは口にする。 「・・ええ。よくは知りませんが・・この絵は『手がかり』と聞き及んでます・・」 考えたようにそっとステファンは告げるのだった・・・。 「フェリーペ二世、かのレパントの海戦でオスマントルコを破った王様ですね?」 帰り道、未だに絵画に見とれているエリザベスがリナに言う。 「・・正確に言えば違うわ。艦隊の中核はほとんどヴェネツィア船、指揮官こそはス ペインのドン・ファン・カルロスだった。彼はフェリーペの異母兄弟でね・・」 「・・・そうそう。フェリーペ二世自身はこの海戦には参加はしなかったさ。しかも ・・弟の勝利にはかなり嫉妬したらしいね・・・」 リナに続いてラウラ。 「・・・なあ・・それよりかさあ・・何か・・忘れてないか?」 不意にガウリイが思い出したかのように女性陣に言う。 「・・今回は珍しく俺、忘れられてね〜ぞ・・・?」 はたと此方も思い出したようにジョヴァンニ。 「俺もか〜ちゃんに捕まってないぜ・・・・?」 ・・・・・・・・今度はガストン・・・・・・・・・・・・・・・。 かくして・・忘れられた存在は・・・・・・・・・・・・・・・・。 「だあああああ!!!ど〜してボクはトイレで気を失ってるんだ!!汚い!!出せ! ! 出せ!!だせええええええええええええええええええええええ!!!!!」 かくして・・一同が氷の存在を思い出したのは数日後だった・・・。 しかし・・・。 「ま、氷だし・・・」「害はね〜よな・・ウンウン」 で片付いてしまったらしかった・・・・。 (続きます) |
14956 | 人間罠探知機(笑) | P.I E-mail | 4/10-22:24 |
記事番号14936へのコメント CANARUさん、こんばんは〜♪ 久々の「気まま」シリーズ!HPと投稿と2本立てで大変ですね。 いっぱい読める方は嬉しいですけど(笑) う〜ん、トラップのありそーなところに来たらまずヒウリねーちゃんを先に 歩かせるのがベストですね。絶対全部片付けてくれるし、ダメージくらっても すぐ復活するし(←鬼)今回罠を仕掛けた敵さんも思わぬ伏兵に焦ったんじゃ ないかしら(笑) 今回ちらっと登場した謎のおっさん(笑)!一体なぜあのときあそこに、 何のためにいたんだ!? ・・・でも跪くガウリイはカッコ良かったですわ♪ 冒頭でリナが思い出していた絵は今後の伏線でしょーか? それにしても、悲恋&駆け落ちの顛末はどーなった!?(笑)←第24話参照 続きをお待ちしてます〜♪ 5月の終わりか6月初めの「週刊世界遺産」はラヴェンナとフェラーラが特集だ そうですよ〜♪楽しみですね。 それではまた! |
14957 | ぢつは秘話ありでっす! | CANARU URL | 4/10-23:08 |
記事番号14956へのコメント >CANARUさん、こんばんは〜♪ >久々の「気まま」シリーズ!HPと投稿と2本立てで大変ですね。 う〜ん!! 此方は本を読んでスグに思いついた話なのでかなりスラスラでした〜〜! 「ハプスブルク家」関連の本です〜♪ >いっぱい読める方は嬉しいですけど(笑) ははは・・・(汗) HPの方はいちいち本で調べながら書いたので・・かなりオーバーヒート してたでっす!! 慣れない事に手を染めちゃいました〜〜(汗) >う〜ん、トラップのありそーなところに来たらまずヒウリねーちゃんを先に >歩かせるのがベストですね。絶対全部片付けてくれるし、ダメージくらっても >すぐ復活するし(←鬼)今回罠を仕掛けた敵さんも思わぬ伏兵に焦ったんじゃ >ないかしら(笑) ですねえ〜〜〜〜!! しかも・・「生きてる!!何故!!?何故だ!!?」と滅茶苦茶 パニくった事が予測されます!! ちなみにヒウリさん・・・「石長比売(いしながひめ)」が名前のみ モデルになっていたりします〜〜(今明かされる真実!!?) >今回ちらっと登場した謎のおっさん(笑)!一体なぜあのときあそこに、 >何のためにいたんだ!? ふふふ・・・。 ぢつは・・ルナさん(娘)にいぢめられて・・ちょ〜〜っと ふて腐ってたら偶然!!(爆) >・・・でも跪くガウリイはカッコ良かったですわ♪ う〜ん・・・。 おやぢ様・・今後もまた早く出したいです〜! >冒頭でリナが思い出していた絵は今後の伏線でしょーか? >それにしても、悲恋&駆け落ちの顛末はどーなった!?(笑)←第24話参照 >続きをお待ちしてます〜♪ はい〜〜!! じょじょに伏線もあきらかにしていきますね! >5月の終わりか6月初めの「週刊世界遺産」はラヴェンナとフェラーラが特集だ >そうですよ〜♪楽しみですね。 ふふふ!! 特にフェラーラは楽しみです!! しかも榛名さんの「薫風のフィレンツェ」も買いました!! >それではまた! では〜! |