◆−勇者騎士ヴォルゼファー−雪月花(4/17-20:01)No.15011


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15011勇者騎士ヴォルゼファー雪月花 4/17-20:01


アヤメ桜さんに影響されて、始めちゃいました(笑)


『・・・・ほう・・・ここが一番子供達の純粋な魂で満ち溢れておるわ・・・』
「如何致しますか?ザンギャック様』
妖艶なる美しさを秘めた女性は、闇の玉―――ザンギャックに問い掛ける。
『決まっておろう―――・・・準備が整いしだい、すぐに日本へ潜入し、
子供達の魂を奪ってくるのだ!』
『ははっ!』
女性―――メフィストフェレスと、隣の黒い甲冑を纏った騎士、グラディウスは
答えた。

第1話「魂を守る騎士達」(第一章)

「・・・・ふあう〜〜っ・・・・」
下校途中、彼女は思いっきり伸びをした。
この女子高生こそ、本編の主人公たる七梨響古(しちり きょうこ)・十六歳
である。
黒く長い髪をだらーん、とおさげにし、眠そうなその瞼は、彼女の垢抜けない
雰囲気をより一層かもし出していた。
眠そうなのは当たり前。
彼女の家は牛乳配達をしているため、毎日早起きなため寝不足なのだ。
おまけに不運な事に、授業中の先生の説明などが眠気に拍車をかけてしまう
らしく、居眠りをこいてしまってはいつも廊下に立つ始末である。
・・・最も、本人はそこでも眠れる程の、図太い・・・・というよりも
無いのではないかと疑ってしまいたくなる程の神経を持っているのだが。
「さ〜てと、帰ったら今度こそたっぷりと休眠を・・・・」
その時の様子を脳裏に思い描き、響古がしばし自分の世界に浸っていた時。

ぬうっ。

―――信じられないことが、目の前で起こった。
一人の少年が、目の前に現れた―――。
そこまでは、普通といっても過言ではないだろう。
しかし、あくまでもそれは『結果的に言えば』である。
問題なのは、その出現方法。
―――抜け出てきたのだ。壁から。
「・・・はあ、はあ・・・何とか・・・振り切ったみたいだ・・・・」
少年は、こちらに背を向けて、壁に向かってそんな事を呟く。
青いジャケットに黄色い半ズボン、年の頃なら10、11歳位の、一見普通の
少年に見えるのだが―――・・・。
今の出来事は、決して見間違いではない。
しばし迷っていた響古だが、意を決して大声で呼びかけてみた。
「・・・・あの!」
「わあ!?」
ずでっ!
いきなり声をかけられて驚いたのか、少年はその場でひっくりこける。
「あ、ごめん!・・・・大丈夫?」
言いながら、響古が少年の手を取った瞬間。

びしゅうっ!

『うわっ!?』
刹那的な二人の驚きの声が、綺麗にハモる。
いきなり青い光が迸ったかと思うと、静電気のようなものが響古と少年の手と手の
間を走り抜けたのだ。
(・・・な、何今の・・・?)
響古と少年が、全く同時に顔を上げた瞬間―――
『―――へ?』
二人の声が、またもやハモった。
こちらを見つめて覗いている顔は、純真そうで明るそうな風貌をした、少年の
顔立ちであった。
「・・・・聖(ひじり)・・・・ちゃん・・・・?」
響古は呆然と、その名を呟いた。
―――両親の離婚によって別れ別れになった、実の弟の名を。
そしてその弟―――聖は、信じられないといった表情で、自分の手、そして
響古を交互に眺め―――

・・・だっ!

「ち、ちょっと!?」
そして、地を蹴りその場を走り出した。
「・・・何なの・・・?どーして・・・聖ちゃんがここに・・・?」


―――光神神社(ひかみじんじゃ)。
今は神主すらいない、荒れ果てた神社だが、一ヶ月程前から、ここは『ある
集団』の秘密基地と化していた。
「・・・・聖!無事だったか!」
響古と同じ位であろう、学ランを着た元気そうな面差しの少年が、聖の肩に
手を置き安堵のため息をもらした。
『私達がつかずに『四人目』を探すというから始めはどうなるかと
思ったが―――・・・。取り越し苦労だったようだな』
『だから言ったろゼファー?聖だって自分で何とか出来る位の力はあるって』
どこからか、声がする。
「う、うん・・・ごめんね、心配かけて・・・」
「それで―――『龍の剣(りゅうのつるぎ)』は見つかった?」
焦げ茶のセミロングの活発そうな顔をしたセーラー服の少女の言葉と同時に―――
聖の中に、あの時の記憶が鮮烈に蘇る。

―――実の姉と手を触れ合った時、閃光が迸ったあの時が。

「・・・ううん、まだ・・・ごめん・・・」
下を俯き言う聖に、鋭い面差しをしたブレザーの少年は、
「・・・まあ、そう簡単には見つからないだろうな」
続けて、片目の青い黒髪の、聖位の少年が、
「けど、早く見つけなきゃ駄目なんだろ?なんたって勇者騎士団(ブレイブ・
ナイツ)のリーダーなんだから」
「・・・けど、ザンギャック達に見つかる前に、探し出せるのかしら・・・?」
今度は、栗色の髪のショートカットの可愛い女の子が言った。
全員がその場でうーん、と唸る。
だが―――
彼―――『ゼファー』だけは気づいていた。
聖のついた嘘に。