◆−とってもありがちな話。−まよ(5/20-12:53)No.15529 ┗はじめまして−toto(5/20-22:49)No.15542 ┗Re:はじめまして−まよ(5/25-22:08)No.15629
15529 | とってもありがちな話。 | まよ | 5/20-12:53 |
陶器の触れ合う音がする。 清潔にまとめられた居間。小さなベッド。 「ひりあ、ひりあ」 やっと喋り始めた赤ん坊の声。 「どうしたの、ヴァル?」 赤ん坊――ヴァルに呼ばれた女性、フィリアが尋ねた。 「へん。によい」 「におい?………ああああああ――っ!!」 優しかった笑みはフィリアの顔から消え去り、彼女は秒速3メートルほどのスピードでキッチンへ向かった。 ヴァルはベッドの柵に手をかけ立ち上がり、フィリアの姿を目で追った。 「いやああああああ…」 フィリアがこんな風に料理に失敗する事はめったにない。ヴァルは、珍しい育ての親の行動を楽しそうに見ていた。 「せっかく、久しぶりにリナさんたちが来るのに…」 何とか原形をとどめているケーキを見て悲しそうに呟く。 彼女らと別れて、もう五年ほど経つだろうか。 別れるときに全員が一枚ずつ持ったレグルス盤がテーブルの上にある。 『あたしの傑作よ!これね、普通対になったやつとしか話せないのを、呪文によって他のものとも話せるようにしたのよ。一人金貨百五十枚ね♪』 『ひ…ひゃくごじゅう!?普通二枚で金貨百枚でしょう!?』 『そうですよぅ、リナさん。三倍なんてあんまりです!』 『オレにそんな金があると思ってんのか、リナ…』 『ガウリイの言うとおりだ。オレの所持金全部ぐらいあるじゃあないか』 『なぁにいってんのよ!これは!あたしの!傑作!なの!! …しかたないわねぇ…じゃあ、出世払いでどう?』 『ぶんかつ?(…ってなんだって言ったら怒られるだろうな)』 『最初金貨十枚払っといて、後から金貨百四十五枚払うのよ』 『リナさん…五枚増えてますよ…』 『それに後からって』 『もちろん、次に会ったときよ。料金踏み倒したらただじゃおかないからね!』 当時の会話を思い出し、小さく笑った。 リナさんは、また皆さんと会いたかったんですよね? 『もしもし、フィリア?久しぶり。あのさ、なんてゆうか…』 『どうしたんです?リナさん』 『えっと…びっくりしない?』 『……なにか、あったんですか?』 『あの、その………子供、産んだの』 『ええええええ!?』 あの時の事を思い出すと、おなかの皮がよじれるほど笑ってしまう。 「ひりあ」 ヴァルの声に、我に帰る。手にはケーキ(だったもの)がある。 「しまった!早く何とかしなきゃ…っ!あ、金貨百四十五枚!!」 慌てて立ち上がったフィリアの耳に、ちりりん、と呼び鈴が聞こえた。 もう…、もう来てしまった!? 「すみませーん」 懐かしい男の声。 ガウリイさん……どうしよう…… 一瞬迷ったが扉を開け、大きく頭を下げた。 「すみません!今ケーキ作ってたんですけど、失敗しちゃって〜」 「こんにちは、フィリアさん。久しぶりですね」 自分にひびが入った音を、フィリアは確実に耳にした。 声は、聞き間違えることなくガウリイで、顔と口調は間違えることなく… 「生ゴミっ!!」 「会っていきなりそれですか」 不機嫌そうに答えたその声は、やはりガウリイなのだが顔はやはり生ゴミ、もといゼロス。 「なっ…何をしに来たんですか!?ヴァルを殺すつもり!!?」 反射的に構える。ゼロスと戦っても勝ち目が無いのにも関わらず。 「いえ。殴りこみに」 「なっ…、あなたに殴りこまれる理由はなきしにもあらず!」 「フィリアさん…錯乱してませんか? 僕がここへ来たのはリナさんたちが僕のことを無視して集まるからですよ」 ゼロスはわざとらーしく悲しーい顔をした。 「僕だってダークスターと戦ったナカマなのにぃ〜。いじいじ」 最後の擬音はきっちり声にして出し、後ろを向いてのの字を書く。 フィリアは、後ろを向いた生ゴミを、モーニングスターで釘のごとく、もしくは餅のごとくバコバコ叩くと、きっちりドアを閉め鍵を閉め後ろからカンヌキをして、更にテーブルでドアを押さた。 「ふう」 「酷いですよ、フィリアさん」 真後ろから聞こえた声に、みぎゃとか悲鳴をあげながら、ヴァルをかばう位置に移動する。 「器用ですね。 僕は、ヴァルガーヴを殺すつもりは無いんですって」 「あなたが無くても、あなたの上司さんはどうなの?」 「聞いたら、『別に何もしなくていいのではないか?何もいわれてないし』とのことですけど」 「……あなたの上司だってすぐわかるわね」 中間管理、傍若無人、あとは野となれ山となれ、etc.という単語が頭の中を交錯した。もう一度ため息をつき、目を閉じる。 目を開けたら、ゼロスはそこにいなかった。 「よかった…ヴァル」 振り向くと、ヴァルを抱っこしているゼロスの姿が目に入った。 「いやああああああああああ!!」 やっと構えてもらえてうれしそうなヴァル(ゼロスの表情は見えない)をひったくると、ヴァルに髪の毛をつかまれていたゼロスも付いてきた。 「いたいいたいいたいいたい!」 「ヴァル、離しなさい!!こんなのに触っちゃいけません!」 「やーだー」 「うごが!」 「離しなさい!!」 「や―――!」 トントン。 ガウリイは扉を叩く。返事は無い、が留守ではないだろう。騒がしすぎる。 「とーちゃん、入んないの?」 手をつないだ幼い少女がガウリイに言う。 「……女の子がとーちゃんとか言わないの」 「かーちゃんはゆうよ」 「…まぁ…確かに……」 「入んないのー?疲れたツカレタつかれたー!!」 「ンな事いったってなぁ」 「あれ?フィリアさん、今戸を叩く音が聞こえたような」 「ええ?あ、ドア閉めたまま!!」 あわてて、(ゼロスの髪をつかんだ)ヴァルを抱えたまま行こうとしたが、この状態では無理だと気付いたらしい。動きが止まった。 「僕が預かりましょうか?」 「なっ…誰があなたに…」 イヤよねー、とヴァルの方を見ると、うるうるキラキラした目で見つめられた(ゼロスの髪は離さない) 別名、魅惑の瞳。 「何もしないでしょうね…?」 「僕はそんな趣味じゃないですよv」 無言でゼロスのみぞおちに右ストレートを叩き込んでから、ヴァルを彼の頭にのせた。 「ガタガタいってるなー。もうすぐあくぞ、たぶん」 「どんだけおーきーのー?こんなちっちゃいドア、「ふぁいあーぼーる」でふきとばそーよー」 「んなことするなあああああ!!」 「かーちゃんはするよ」 「やってないッ!リナは盗賊に対してぐらいしかやってない!!」 「あの、ヴァルガーヴくん。出来ればこの手を離して欲しいんですけど」 「やぁだぁ」 何をやっても髪を離そうとしないヴァルにため息をつくゼロス。 フィリアは苦労して巨大カンヌキを外そうとしている所だ。つけるときは一瞬だったのに、とゼロスは不思議で仕方が無かった。 「ひりあ、がんばれぇ」 「ママ、とか呼ばないんですねぇ」 「当然です。私はそんな資格ありません」 うるさそうに答えたフィリアに、ゼロスは感心した、と言うように「律儀ですねぇ」と言った。 彼はヴァルの方を見ると、おどけて言う。 「僕はゼロスです。よろしく、ヴァルガーヴくん」 「ぜろしゅ」 「わ、すごい。一発でいえましたね〜」 「ヴァルで遊ばないで下さい!」 巨大カンヌキを半分まで抜いたフィリアが言う。額にはうっすら汗がにじんでいる。 「時間かかりすぎですね。手伝いますよ」 ゼロスがヴァルをおこうとした時、 「ぱぱ」 ………… 間違いなく、二人とも時間が止まった。 「静かになったな。開いたんじゃねえのか?」 「くらげー。かぎ開いたらかちゃってゆーもーん」 「かわいくねーなー…。誰に似たんだか」 「とーちゃん」 「間違いなくリナだな」 『だあれが「ぱぱ」ですかあああああ!?』 乱れも無くハモッた二人(二匹?)の声に、ヴァルは一瞬びくっとする。 「あ、ごめんねヴァル。取り乱しちゃったわ」 「なんでよりにもよって僕がぁ」 フィリアも内心同じ気持ちだった。何故よりによってこの生ゴミに。…と。 「そうよ!きっとヴァルは男の人=ぱぱだと思ってるんだわ!」 「そうですよね!そうじゃないと困りますね!!」 「きっとガウリイさんにもそういうわ!」 急いで鍵を開た。 ガウリイと、手をつないだ金髪の少女。少女はリナを小さくしたようだ。 「まちくたびれた」 「ごめんなさいー。ちょっといろいろとあって…」 「リナはなんかマジックショップを見てくるんだと。ゼルたちは遅れるって」 「ガウリイさん…伝言できるようになったんですね…」 「おーゼロス。ひっさしーなー」 ここで一方的に雑談を打ち切ったフィリアとゼロスはヴァルをつれてくる。 「ヴァル…なんとかか!?こいつ!!」 「ヴァル、このひとは、ガウリイさんですよ〜」 「あうりい」 ここまではゼロスと一緒だ。ゼロスがガウリイを指し、 「この人は?」 「あうりい」 二人はまともにこける。 「すっごーい!!とーちゃんよりすごい!!」 「いや、ちょっとそれは…」 何とか起き上がると、ゼロスは部屋のソファーでうなだれた。 「嘘です、何かの間違いです魔王様。僕は何も良い事はしていません」 と呟き天を仰ぐ。そこに、ヴァルが 「ぱーぱ?」 ソファーから崩れ落ちるゼロス。フィリアも半ば魂が抜けかけていた。 そこに、トドメがさされた。 「なぁんだ。ヴァル何とかかと思ったら、フィリアとゼロスの子供だったのか」 倒れてぴくぴくしている二人を眼下に 「竜族ってかわったひとがおおいね」 「たしかに。そんな感じがするな〜」 二人は確かに親子だった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 最後までリナは出てこなかった…あーあ。 ストウリィ滅茶なこれを読んだ下さった方。ありがとうございます。 ガウリナ、ゼルアメ、ゼロフィリ大好き人間です。 他のカップリングも好きです。節操がありません(ぉ ガウリイ・リナ娘の名前が出てこないのはわざとです。 だって、ネーミングセンスが腹心様数名以下なんですもの(笑) |
15542 | はじめまして | toto E-mail URL | 5/20-22:49 |
記事番号15529へのコメント はじめまして、totoと申します。 テンポのよい会話のやりとりがすごく良かったです。 文章描写も、無駄なく、適切で読みやすかったです。 何より、ヴァル赤ちゃんの可愛さ…は溜まりませんでした。 何気ないガウリィと子供の会話も、脳天気な雰囲気が何とも言えませんでした。 次回作を楽しみにしております。 |
15629 | Re:はじめまして | まよ | 5/25-22:08 |
記事番号15542へのコメント >はじめまして、totoと申します。 はじめまして。まよです。 知り合いの間ではレス遅魔と呼ばれています(汗 >テンポのよい会話のやりとりがすごく良かったです。 >文章描写も、無駄なく、適切で読みやすかったです。 うう…あんな文章をほめてもらって…うれしいです!! >何より、ヴァル赤ちゃんの可愛さ…は溜まりませんでした。 >何気ないガウリィと子供の会話も、脳天気な雰囲気が何とも言えませんでした。 その2つに命かけました(ぉ 気に入ってもらえてうれしいです! >次回作を楽しみにしております。 がんばります! |