◆−貴方と一緒に・・・−夏青龍(5/27-22:14)No.15665


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15665貴方と一緒に・・・夏青龍 E-mail 5/27-22:14


 こんばんは〜。夏青龍です。連載物(・・・?)をすっぽか
して(おいっ!!)ルークとミリーナの話を考えましたので
投稿しちゃいます。この話の設定としては原作15巻のルーク
が倒されちゃうとこあたりから、です。ではよろしくっ!(何)

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風が吹く。
言葉が流れる。
声は細く――細くなり――
「・・・・・・すまねぇ・・・な・・・」

風が吹き、砂と化したルークを運び去る。
何処とも知れぬ何処かへ。

 ――『俺』は人であることを捨てた。魔族の王になったんだ。
   『あいつ』の言ったことを受け入れることもせずに。
   もう誰もいない。何もない。
   どこへ行くのかも分からないし、知ろうとも思わない。
   もう・・・『あいつ』はどこにもいないんだ。
   『あいつ』がいない世界なんか想像したこともなかったから、
   その分辛かったのかもな・・・。
   『あいつ』はどこへ還っていったんだろうな・・・。
   『あいつ』はどこにいるんだろうな・・・。

滅びていく。自分が滅びていくのを感じつつ、ルークはいろんな
ことを考えていた。
自分の過去。ミリーナに関係している自分の過去を。
彼女はもうどこにもいないと、自分もこの世にはもういないと、
分かっていた。このまま独りで消えていくのだろうと――。
『ルーク』
誰かの声が聞こえた気がした。でも、もう何も聞こえないはずだった。
ルークの体はもう砂になって吹き散らされたのだから、音を
聞くことなどできないはずなのだ。空耳だと、思った。  
『ルーク』
また声が聞こえた気がして、呼ばれた気がして、振り返った。
でも、誰もいない。分かっていたのに、絶望感が襲ってきた。
「もう誰もいない。何もない――」
『ルーク』
「独りなんだよ」
自分に言い聞かせるように、ルークは呟いた。呟くというよりは、
ただ自分が考えているだけで、たぶん声にはなっていないだろう
と思ってはいたが。
『ルーク』
「俺は独りになったんだよ!」
叫ぶように言って、諦める。もう滅んだ。なにも残っていない。
自分が今、どこに向かっているのかも、どこにいるのかも分から
ない。
『ここにいるじゃない』
はっとして、振り返ると・・・
「おま・・・え・・・」
かすれた声で、言う。そこにいたのは間違いなく、『彼女』。
「ミリーナ・・・?」
呆然と呟くと、『彼女』は笑った。彼のすぐ隣にやってくる。
「どうしておまえ、ここに・・・」
あわてふためくルークに、ミリーナはくすっと笑った。
『そんなこと、どうてもいいじゃない』
「・・・・・・」
『あなたが何処へ行くのか、私は知らないし、分からないわ。
でもね、私の居場所は貴方の隣って決まってるのよ』
「ミリーナ・・・」
名を呼べたことが、彼女が横にいることが、ルークはとても
嬉しかった。だが、このまま行けば二人とも意識はなくなる。
何のつながりもない混沌だかなんだかに入っていくしかない。
『あなたが居場所を求めてたように、私も貴方を求めてたのね。
多分・・・貴方は私のことを大切に思っててくれた。私もそれは
同じだけど・・・』
ルークは嬉しいながら、赤面した。幻のように半透明ながら、
彼らは姿形を取り戻していた。幽霊のようなものだ。
『ごめんなさい。悲しい思いを・・・させてしまって。
貴方を・・・追い詰めてしまって』
「おまえの・・・せいじゃないだろ・・・」
『だけど、謝っておきたかったの。それに逢いたかった。
「あの時」、貴方に言った言葉があったでしょう?あれは私も
守れなかったんだと思うの。貴方を止めることもできなかった。
生き延びることも。貴方だけが悪いわけじゃないわ』
「でも・・・」
何かを言おうとして、口篭もる。ミリーナは続けた。
『彼女たちにも・・・私は辛い思いをさせてしまった』
リナたちのことを言っているのだと、ルークはすぐわかった。
「一番苦しめたのは・・・俺だ。あいつらは悪くねぇんだ。
何も・・・確かに一度は憎んだ。俺を阻んだあいつらを。
でも・・・本当は気に入ってた。おまえと、あいつらと一緒
だったときは・・・はっきりいって楽しかった」
『そうね。ね、ルーク』
「?」
ミリーナがルークの頬に手を伸ばした。びくっとルークは硬直
する。ミリーナは一瞬、珍しくきょとんと顔になったが、言葉
を続けた。
『もし・・・もしも私たちが2人、生まれ変われたとしたら、
また逢えるかしら・・・?』
「・・・・・・」
しばし、ルークは沈黙した。だが、今までになかった笑顔で、
言った。優しい声で。
「逢えるさ。きっと。いや、もし離れてたとしても、
絶対見つけてやるよ」
『・・・ありがとう』
いって、ルークに口付けした。ルークも、ミリーナも、その
直後に消えた。

ルークを待っていたミリーナも、
ミリーナを追っていたルークも、
消えた。

「また、一つ消えた。欠片が消えた」
金の髪の女性が、呟いた。『何処か』で。独り。

それから何年経ったのか、知るものは居ない。調べるものも。
シャブラニグドゥの欠片が消えてから、数十年・・・。
ここはとある村の草原。そこに16、7歳ほどの少女と少年がいた。
少女は綺麗な銀の髪を、少年は赤毛を穏やかな風になびかせて
いた。
草原に仰向けになる形で、2人は寝転んでいた。
「なあ・・・」
「何?」
少年が話し掛ける。少女は応える。
「俺たち、ずっと前にもあったような気がするんだが・・・」
「ずっと前っていつのことよ」
そっけなくつきかえされ、少年は一瞬落ち込んだような表情になった。
が、すぐさま復活し、
「多分ここに生まれる前に!」
「そんなこと・・・」
「あるはずない、か?」
ややからかうように、少年。少女はややむっとしたようだったが、
「・・・そんな気がしないでもないわね。夢に見るの。赤毛の
・・・貴方みたいな人」
「俺も夢に見たんだがなぁ。おまえみたいな美人を」
笑いながら言う少年。少女はこめかみのあたりを抑えてしばし
黙り込んだが、
「貴方と一緒にここへ来て、ここからも貴方と一緒に出て行く
・・・そう思うのよ」
「へえ」
受け流すように、少年は言った。空を見上げる。
「『ルーク』」
「何だ?『ミリーナ』」
「・・・やっぱり、言わないで置くわ」
「何だよそれは・・・」 
呆れたような声を出しつつ、少年は起き上がった。
「『おまえはどこにも行かないでくれよな』――」
「何?」
「ミリーナ・・・聞いててくれなかったのか・・・?」
悲しみの表情で、言う。少女はそれに対して何処吹く風である。
「よく聞こえなかったわ」
少女も起き上がった。が、すぐそこに少年の顔があったので
びっくりしたようだった。
「な、何?」
「・・・別に」


 ――今回生まれ変わった体では、素直に『好き』などと言えない
  ようだったな。『ルーク』。

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 もはやきっと苦情の嵐です。すみません。連載の方もなんとか
しますので・・・(汗)。では!
                 by 夏青龍