◆−魔槍伝承談9−CANARU(6/3-14:36)No.15788
 ┗無断外泊の舞台裏(笑)−P.I(6/3-22:38)No.15794
  ┗ババ抜き〜〜♪−CANARU(6/4-10:01)No.15800


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15788魔槍伝承談9CANARU URL6/3-14:36




「よお・・・・てめぇら。ヤロー二人で夜中に七並べやって何が楽しい?」
ハンニバルとゼルが二人寂しく夜中にカード遊びをしているその時。
不意に天幕が開かれ、黒髪の男が釣竿を担いだまま此方にやって来る。
「・・・・・放っておいてください。叔父上・・・・それに・・ババ抜きです・・」
いぢけたようにハンニバルはゼルの持ち札から一枚のカードを引き抜いて。
マトモに顔をしかめる。
ど〜〜やら・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・ババひいた・・・・・」
「おう。俺もババ抜き混ぜろや・・・ど〜せ・・おめ〜も阿呆の片割れのせ〜で
眠れないんだろ・・・?」
何時の間にか二人に加わるリナ父。
「・・・・阿呆の片割れって・・・?それに叔父上も眠れないってど〜ゆ〜
事です?」
困った顔をしながらハンニバルがリナ父にも手札を渡す。
ちゃんときっちりちゃっかりババを入れることを忘れずに・・・。
「てめぇ・・ババ入れやがったな・・・。まあ良い。ヴァノーの奴が俺のテント
の前に蹲ってシクシクシクシク・・・シクシクシクシクっと夜泣きしやがるんだよ・
・・。最初のうちは毛布被って無視して眠ろうとしたんだが・・・しまいにゃ何か金
属を木に打ち付ける鈍い音がしてきやがって・・・天幕の裏口から逃げてきた」
「・・・偶然だな・・。此方も此方で生ゴミが騒ぐんで眠れんので・・ババ抜きをハ
ンニバルと仕方無しにやっていたと言うわけだ・・・」
はあ・・っとため息をつきながらゼル。
「・・・・ババ抜きとは随分と・・って・・ハン!てめぇ。俺の手札にババ入れや
がった代償は高いぞ?」
「・・・・・・・ヴァノー・・・・ババァじゃない・・・・もん・・・・・年増ぢゃ
・・・・ない・・・・もん・・・・・ヴァノー・・・・まだ・・・にぢうに・・・・
だ・・もん・・・・・・・」
何時の間に侵入したのだろうか?
貴重品の蝋燭を頭に二本、鉢巻でくくりつけ・・・・・。
手には謎のストロー・ドールに五寸釘、木工用の金槌を持った美しいヴァノッツァが
・・・。
涙で目を、鼻水で鼻筋を、蝋燭のカスで見事なウェイブがかかった黄金の髪の毛を汚
していた・・・・・・。
『うわあああああああああああああああああああああああああああ〜〜〜〜〜!!』
その姿・・と、言うかその存在そのものに咄嗟にテントの中央からずざざざ!!っと
飛びのく男三名!!!!
「ひどい・・・・・ヴァノーのこと・・・ババァって・・・言った・・・・。
うわ〜〜〜ん・・・リナちゃ〜〜〜ん・・・・みんながヴァノーの事・・いぢめる!
何処いっちゃったの・・・?うわ〜〜〜〜〜んん・・シクシク・・・・呪う・・・・
ヴァノーのこと・・・いぢめる人・・・・呪う・・・」
訳の分からない服装のままヴァノッツァはカ〜〜んカ〜〜〜んカ〜〜〜んと更に金槌
で地面&ストロードールを打ち付ける!!
その間でもシクシク啜り泣きをする事は忘れない。
「・・・ったく・・。泣きたいのは俺のほうだぜ!!」
文句を言いながらリナ父が手にしたババ(いや。この場合は身の危険を避ける為に
『ジョーカー』と呼ぶべきだろう)を投げ捨て釣り竿の手入れを始めようとするが・
・・。
「まったくですよ!!!」
その声に一気に動きは硬直する。
すなわち・・・・最悪の事態だ・・・・・・・・・・・・・・。
「ゼロス・・・ヴァノッツァもだが・・一体どっから入って来た?さっきまで外で泣
いてたじゃないか・・・・?」
ゼルがずざざざと後ずさりながら聞く。
「それは秘密です・・・。それに・・過去のことにこだわると大物になれませんよ・
・・ゼルガディスさん・・・・・」
「お前にだけは言われたくないぞ・・・」
さしものゼルもこれには一寸ムっときたらしい。
「ああああああ〜〜〜〜偉大なるガウリイ様ぁぁぁぁぁぁ!!貴方はこの哀れなボク
をこ〜〜〜んな人外魔境地なひとたちの仲間に置き去りにして何処に行かれたのです
かああああ!!!特にこの人!!この人とボクを同じところにだけは置き去りにしな
いでくださいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」
あ、ついに切れた・・・・・。
この調子でさっきからず〜〜〜っと行方不明のガウリイを探して泣いているのであ
る。
無論・・・ヴァノッツァも負けてはいない。
「・・・リナちゃん・・・ヴァノーね・・・この・・・生ゴミみたいな変なひとに物
凄く・・・・・いぢめられてるの・・・・は・・・・もしや!!!ガウちゃんも・・
・リナちゃんも・・・いない・・・・ガウちゃんが・・リナちゃん誘拐して・・・
ヴァノーから・・・みのしろきんとろうと考えてるのかも・・・・そう・・・絶対に
そう!!ヴァノーの・・・お小遣い・・・・・減らそうなんて・・・・許さない・・
・・ヴァノー・・・・呪う・・・・・・・ガウちゃん・・・呪う・・・・・・・・・
・・・」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああ!!!!!!!!!!!ガウリイ様になんと言うことを
おおおおおおおおおおおおおおおするんですううううううう!!」
ヴァノッツァの分けのわからない納得にゼロスの絶叫が重なる・・・。
「おう・・お前ら・・・仕方ね〜から野宿だぞ・・・・?」
「賛成です・・・」「異議なしだ・・・」
かくして。情けない男三人のババ抜きは野宿で続くのだった・・・・・。


ぞくぞくぞくぞくぞくぞくぞくううううううう〜〜〜〜〜〜〜!!!
不意にガウリイの肩と、長い金色の髪の毛が震える。
「・・・?時差ぼけ?」
そんな彼の様子を不審そうに見ながらリナは出された東方の産物・・・。
確かお茶とか言った・・・飲み物をふうふういいながら飲み込む。
が、ガウリイは出されたお茶には手をつけず・・いや、手をつける余裕すらなしと
言った様子で・・・・・・・・。
「いや・・なんか今・・物凄く恐ろしい人間から怨嗟を買ってしまったような・・
・。それで・・・何か・・頭を釘で打たれるような・・途轍もない激痛が・・・・・
ついでに言えば寒気も・・・」
「何ヴァノッツァね〜様に呪われたみたいな事言ってるのよ・・・?」
実はその通りだったりするのだが。
未だ寒気を覚えてなにやら引き攣った顔をしているガウリイを尻目に彼が手をつけて
いないお茶までリナは強奪する。
無論、今のガウリイにそれに反論する手段は・・いや、余裕は残されては居ない。
「変なモンでも食ったかなぁ〜〜?俺・・・」
珍しく少々今日のガウリイは弱気な様子だった。
「まぁ・・・。この状況じゃ何が『変なもん』かわからないのも事実だけどね」
はあ・・っとため息をつきながらガウリイにリナ。
ここは・・・・かつての共和制時代のアモーロに違いない。
そのことは既に確信に至っている上に・・『スラ』という一人の人物を倒す。
其処まで状況は決定しているのだが・・・・・・。
どうも今ひとつ腑に落ちない・・・強いて言えば引っかかる部分があった。
「お〜〜い!に〜ちゃん!ね〜ちゃんよお!!」
いまだに寒気から覚めやらぬ、といった様子のガウリイの頭に突如、誰かがド派手な
蹴りをカマす!!
何時ものガウリイならその程度の攻撃なら・・たとえ常人には不可能でも難なく避け
ている事は請合いなのだが。
「グエエエエエエエエエエエ〜〜〜〜!!!」
かなり呪われていたらしい・・・・・・。
マトモに前頭葉に捻りの入った素早いキックを受けてやおら痛そうなうめき声をあげ
る。
「・・・・・ガウイス・・・・」
唐突の少年の登場にリナは呆気に取られながらも彼の名前を呼ぶ。
「おっはよ〜〜ん。あ、兄ちゃん・・白目向いてるけど・・平気?」
「あ・・・?うんうん。ガウリイだからい〜の、い〜の!」
何がいいのだか自分でも訳の分からないうちにリナは思わずそう口にしてしまった。
いつもだったら・・・。
「平気なもんかああ〜〜〜!!この馬鹿がきいいいい!!!」
の一言くらい言って・・自分の獲物・・『魔槍』ゲイボルグの尻の飾りの燻し銀で
殴ってやるところなのだが。
どうも調子が狂って仕方が無かった・・・・・。
蒼い瞳に・・・長く伸ばした黄金の髪の毛。
まるで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そうリナが思うに至ったとき、背後から気配を感じ取る。
ガウイスの渾身の一撃を食らったガウリイもその気配に敏感に気付いたのだろうか・
・。
既に完全な復活を果たし、リナの位置からは背後と言う事で死角になっている訪問者
たちの顔をマジマジと眺めている。
ガウリイの顔から・・そして自分が感じ取った気配から判断して。
恐らく『敵』では無いことは確実だろう。
その中の一つは見知った感覚でもあった。
「に〜ちゃんの協力者の方々だよ。まあ、位は俺やに〜ちゃんより高いけどね」
言ってガウイスは苦笑をした。
そんな弟・・ガウイスと入れ替わるように演説を始めたのは兄のガイウスだった。
「リナ殿、ガウリイ殿。此方もスラの専制に怒っておられるクラッスス殿にポンペイ
ウス殿ですよ・・・」
そう言って微かにガイウスが苦笑を浮かべたのは・・気のせいであろうか?
「禿げがポンペイウスのオッサン。成金っぽいのがクラッススの兄貴だよ」
ちらり、と後ろを視線だけで振り返り『協力者』を仰ぎ見たリナの耳元に
ガウイスが面白そうに批評紹介を付け足した。
「あ・・・ああ・・・。始めまして。俺はガウリイ。こっちはリナ」
そんなリナを尻目にてきぱきと自己紹介を開始するガウリイ。
なるほど・・・こ〜やって考えてみれば・・・まあ『王子』と見えない事も無いかも
しれない。
「我々は既に一つの事柄を計画している。それには・・ぜひともリナ殿の協力をお願
いしたいのだが・・・・」
なにやら剣呑そうな眼差しでクラスッスがリナを見遣りながら呟いた。
「ええ〜〜〜?俺は・・・?」
先ほどのしっかりした様子とは打って変わったガウリイがだっだこのような声をあげ
る。
こうして考えてみると・・・・・・・・・・・・。
うん・・・やっぱりコイツは単なる『部屋住み』なのかもしれない・・・・・。
「無論、役立って貰う事になるでしょう。このアモーロには軍隊は入れないことに
なっている」
そう。
リミニ辺りにある属州との境目たる・・まあ、正直に言ってしまえばさしたる威光も
無ければついでに言ってしまえば特徴も無い。
そんな『ルビコン』と言う河を渡ってこのアモーロの領地に入れば軍隊は解散せねば
ならない。
例外は凱旋帰国のときのみ・・と制定されていた。
その軍隊が無い限り、スラは倒す事は不可能・・・なのであった。
「で、私は何をすればいいのよ?」「・・・俺は?」
怪訝そうな声のリナの隣で、なにやら目を輝かせているガウリイ。
やっぱりこ〜ゆ〜所はいまだにお坊ちゃま感覚が抜け切らないらしい。
「競馬場に行っていただければ宜しいことですよ」
ニッコリと微笑みながらガイウスは二人に告げるのだった。


「なあ・・・リナ・・・・・・・・」
ブスっと・・さっきとは打って変わったきわめて虫の居所が悪そうなガウリイの声が
聞こえる。
「何よ?護衛の傭兵」
王子様に向かって多少悪いかも知れないが・・ハッキリと傭兵の服装のガウリイに
言ってやる。
それとは打って変わってリナは普段の男装に近い遊牧民の動きやすい服装ではない。
共和政時代のアモーロの貴族の娘の服装だった。
「・・・・やめないか・・・・・・・・・」
「・・・・・・怖気ずいたの・・・・????」
「真坂。俺だって王子やってた頃。ゼロスのおつきありとは言え・・。こっそり宮殿
抜け出して『傭兵』やってたことあるんだぜ?」
「・・・・・マジ・・・・・・・・・????」
「・・・・・・マジ。実際戦争にも行った」
こりゃ〜〜〜また・・・・意外な事実を聞いたしまったもんである。
だが、リナだって負けては居なかった。
「あのねえ・・アタシは正々堂々戦場に出るんじゃなくてね・・・・」
キョトンとした顔でリナのことを見てるだけ・・まだまだガウリイはお坊ちゃまだ。
「正々堂々じゃなくて・・飛び道具で後ろで卑怯に狙い打つか?」
・・・・・・・・近いけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「戦場には出ない・・・。プロの暗殺術ならアンタよりアタシのほうが上・・と自覚
はあるつもり・・・・・ですけど?」
そうとだけ言ってリナは不敵に笑うのだった。


「独裁者様、白髪が・・・」
リナの隣に座ってきたその人物・・・・・・・・。
クラスッスの指示でリナとガウリイが競技場にやってきてその日の競技を観戦
していたその時だった。
さして興味があるといった様子でもなく、一人の男がリナの隣の開いている席に
腰を降ろそうとしたのだった。
目敏く、リナはまだまだ若い部類に入るであろうその男の髪から肩に零れ落ちる髪の
中から若白髪を発見し、指で摘み取る。
「・・・ああ・・すまない・・・・・しかし・・・」
何を彼が言わんとしたのかは知った事ではない。
「私も・・髪の毛二本分くらいは・・・貴方様の幸運にあやかりたいものです。
さ、行きますよ、下僕」
笑顔で何時に無く重厚な台詞と・・・ガウリイにしてみれば『・・・覚えてろよ
(怒)」
というような余計な一言を残してリナはさっさとその場を去っていく。


「古典的だとは俺も重々承知してるぜ・・・。て、ゆ〜か・・あのね〜ちゃんじゃ一
寸『物足りない』って所も・・・・」
ガウリイの自棄酒に未成年の癖に強引につき合わされているガウイスが饒舌に語る。
「だろ、だろ!!ったく・・お前のに〜ちゃんも何考えてるんだ?よりによってリナ
・・あの・・『あの』リナでスラの奴を骨抜きにしよ〜なんて!!かなり無理がある
ぜ?」
「・・・提案者は兄貴じゃね〜〜って。クラスッスの成金若旦那!!」
酔っ払いながらもガウイスは注意する事をなまらない。
よっぽど兄が好きなんだな・・・・と言う事はわかるのだが・・・・・。
ドンガラガッシャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンンンン!!
がらがらがらがらんばっき〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んん!!!
・・・・・とっても嫌な効果音と同時に・・・リナの『魔槍』が容赦なくガウリイと
ガウイスの前頭葉に見事な円を描きながら命中した!!
「・・・・いでぇ・・・・・・・・・」
「り・・リナの姉御!!」
泣きながら頭を摩るガウリイと・・・何時からか姉御扱いしてリナの名前を呼ぶ
ガウイス!!
が、リナは轟然としゃがんだまま各々に痛がる二人を見下ろして・・・・・・・。
「悪かったわね!!アタシが色仕掛けに向かない対応なのは重々承知!!
ったく・・・一々気にしてる事ゆ〜んぢゃ無いわよ!このボケ!!」
いや・・・そ〜ゆ〜つもりでガウリイとしては愚痴っていたわけではないのだが・・
・。リナのご機嫌を相当に損ねてしまった事だけは事実らしい。
「あの〜〜〜・・リナちゃん・・・・・・・・・」
「でええええい!!煩い、このクラゲ!!!!とにかく!アタシはスラの住宅に呼ば
れてるのよ!夜会ですって。ま、調査を兼ねて・・・アンタと行こうと思ったけど・
・。
も〜、良い。一人でいく!!」
「ああ・・もう!悪かったよ!!だから・・勝手に頼むから行かないでくれえ!俺が
一人で町を歩け無い事は知ってるだろ〜〜(涙)」
「でえええええい!!迷子になって勝手に野垂れ死にしろおおお〜〜〜!!」
そんな二人のやり取りを見ていてガウイスは一言・・・・・・・。
「ありゃ〜〜・・・将来絶対尻に敷かれるな・・・うんうん・・・」
と、なにやら納得顔で頷くだけ・・・なのであった。


会場では誰もがガウリイとリナ・・・いいや。
正確に言えばリナ一人をチラチラと覗き見していた。
「どうやら・・・お前さん・・相当スラの奴に好かれたみたい・・だな・・・」
従者という役割の同行なので・・小声でガウリイはリナの耳元に呟く。
「そうね・・。だとしても・・『偵察』だから来る事を承諾しただけよ。まんまと囲
われるのを受け入れるのは御免・・ですからねえ・・」
「と・・?言うと・・・???」
リナの口調からしてスラを落とす・・と言う事は成功したらしいのだが。
日頃『玉の輿!!』などといってガウリイをやきもきさせるリナにしては妙に神妙な
口調で現状を語ってるような気がする・・・・。
もっとも元(だから・・リナにしては『玉の輿』の対象外らしい・・)王子様のガウ
リイがこの状況を理解するのはかなり難しいことらしかった。
「・・・・クラゲなんだかお坊ちゃまなんだか・・・・・」
苦笑交じりのリナの声が微かに届く。
最も『お坊ちゃま』に対しては何時ものあきれたニュアンスではない事にガウリイは
気付く。
「お坊ちゃまって言うなよ・・・・・・」
「『成金』ぢゃ無いって事だよ。まあ、感謝しなさい。一応褒めてるんだから・
・。っと、話を元に戻して・・・。今度の夜会はスラの婚約パーティーらしいのよ。
まあ・・・ついでにアタシをこの屋敷に引き取ろうって魂胆らしいけど・・」
現状ではリナはガウイス、ガイウスの遠縁・・と言う事になっている。
支配下にある彼らの氏族に何をしても構わない、というのがスラの持論らしいのだ
が。
「婚約・・・ねえ・・・・・」
チラリ、と主人の座る席の方向にガウリイは視線を向ける。
スラは・・まだ現れては居ない。
だが、厳重に布、そして鎖で覆われた品物があることをガウリイは目敏く発見する。
「・・・おい・・リナ・・あれ・・・・・」
「ええ。多分、スラが総督時代・・略奪した『聖杯』である事は疑いないわね・・」
気付いた事はそれだけ、か。
そんな事を考えるうちに当の主役、スラが重々しく会場に登場する。
冠に紫の衣装・・・・・・・。
まるで皇帝気取りだな・・・と思い思わずガウリイは嫌悪に顔を背ける。
「婚約者は一緒じゃないんだな・・・」
当り障りの無い事を言って気分を紛らわす。
「みたいね。彼女の名前はヴァレリア。絶世の美女みたいよ。アタシと違って(怒)
ね!」ニッコリと微笑みながらガウリイを見上げてくるリナ。
「あううう・・・・・・」
その目は・・完全に笑っていない事に気付くガウリイ。
まだ先ほどの事を根に持っているらしかった・・・・・・・・・(涙)


「大変だ!!スラ様が!!!!」
起こった出来事は一瞬のことだった。
スラが自慢げに『聖杯』を覆った鎖と布を引き剥がし・・・・・・。
もったいぶった様子でその杯にワイン・・・・恐らく彼の好みだろう。
透明の液体を注ぎ、わざとらしく飲み干したその刹那・・・である・・・・・・。
彼が不意に倒れ・・・・そして・・・・。
「暗殺か??」
「真坂。ワインは無色透明だ。何か混入出来るわけがなかろう・・・。聖杯はずっと
厳重に封印されていたし・・ワインのボトル事態も毒見をしたぞ!!」
慌てた配下、賓客、召使達が騒ぎ立てる。
無論、こんなご時世、暗殺など日常茶飯事だが・・・その形跡も無く・・・。
あまりにも劇的な事態なのだった。
「どう言う事だよ・・・・???」
「分かれば苦労はしないわよ・・・・・」
さっぱり状況が読み込めないガウリイにリナも苦虫を噛み潰したような声で答える。
だが・・その答えは直ぐにわかった・・・・。
「ああ・・ヴァレリアさま!!!!」
この騒動を聞きつけてであろうか。奥の間にかしこまっていたというスラの婚約者・
・・。ヴァレリアが室内にしずしずと入室してくる。
漆黒の髪・・恐らく美しいであろう赤い唇に白い肌・・・・。
それ以外の特徴はまったくもって頭から被った厚いヴェールに覆われて確認する事は
出来ない。
「何事です・・・?」
鈴が鳴るような・・美しい声だった。
「スラ殿が・・・・・・・・」
「自然死・・・それ以外に考えられますまい・・・」
状況を大まかながら悟ったのだろう。アッサリとそう言い放つヴァレリア。
「しかし・・・・・」
「反論の余地、証拠はありますまい。それに独裁者を暗殺などする度胸のあるものは
・・・まずもって居ないでしょう・・。もっとも・・それは私以外・・ですがね・
・」
クスクスクスクス・・・・・・・・・・・・。
嫣然と微笑み、彼女はそっと頭から被ったを払いのけ・・・漆黒の髪、青白い顔をあ
らわにしてリナ・・そしてガウリイの傍を通り過ぎこの場から消えていく・・。
通り去り際。
「ユリウス・カエサル、彼の基盤は作ったわ・・・」
意味深、かつ深い謎を残した言葉を残しながら。
「・・・・・・母上・・・・・・????」
すれ違い様にガウリイが彼女・・ヴァレリア・・いいや。
モルガンに向かってその一言を放つが・・無論その答えは返ってくることは無かっ
た。


スラの残党が特権的な専制、横暴を負かり通すようにするために町の治安が目立っ
て乱れる事は容易に想像できた。
「私はこれから元老院に行かねばなりません。ガウイス、お前もついて来い」
すっかりスラ暗殺はリナがやってのけたのだろう。
そう判断し、にこやかに彼女、そしてガウリイに言葉を贈るガウイス。
これでスラ討伐の為に軍団をひきいる必要は無くなった訳だ。
そして・・彼のスラに追われていた議員としての席も復活した訳なのだが。
「ポンペイウスとクラッススがアモーロの城外に陣営を張ってくれて・・無言で残党
に牽制を与えて言う訳ね。で、貴方はその援護を議会でしなくちゃないらないと?」
難しい話で居眠りモードに突入してるガウリイの髪の毛を思いっきり引っ張って目を
覚まさせるようにしながらリナ。
「ええ。私一人でも賛成があれば・・何とか事態は好転しそうですしね・・」
此方もまた居眠りモードに突入しかけた弟のやぁらか〜〜〜いほっぺたをムニムニと
つねりながらガウイスが言う。
リナがガウ起こしの際、かなり顔、特にこめかみの辺りが引き攣るのは自分でもわか
るのだが。
この人は完全スマイリー。
ある意味・・・とんでもなき大物なのかもしれない。
「じゃあ、これでお別れって事だな・・。じゃあな、ガウイス・・えっと・・それに
・・・・」
困り果てたようにガイウスの名前を思い出そうとするガウリイにリナの肘鉄が炸裂し
ようとする寸前。
「ガイウス」
にっこりと笑いながらガイウスはガウイスの顔を引っ張ったまま笑顔で言う。
「・・・ガイウス。ガイウス・ユリウス・カエサルですよ。ガウリイさん」
・・・・・・ガイウス・・・・『ユリウス・カエサル』だって!!!??
リナが突如つげられたその名前に反応し、ガウリイから顔を逸らした時には既に
彼、そして弟のガウイスの姿は後ろ向きだった。
「・・・・どしたぁ?リナ、顔色悪いぞ?」
朝日の中、蒼白な顔で呆然と立っているリナに向かってガウリイは不審そうな視線を
送る。
「ユリウス・・・ユリウス・カエサルって・・・アモーロの・・初代・・いいえ・・
・。初代・・皇帝は・・あああああ〜〜〜〜!!」
滅茶苦茶パニくるリナの手をクイクイと何者かが引く。
「おお、ガウイス〜♪」
すっかりこのカエサル・・(もうそう呼んでも害はあるまい)の可愛らしい小さな弟
と意気投合したガウリイが嬉しそうに声をかける。
「・・あんたたちにだけ特別教えてやるよ。俺の本名はオクタヴィアヌス。滅茶苦茶
長いから気に入った奴にしかおしえね〜んだ。じゃ〜な。ガウリイ兄ちゃん、尻に敷
かれるなよ〜」
「ああ!!」
大急ぎで兄の後ろを追う弟を優しく見送りながらガウリイ。
・・・オクタヴィアヌスって・・・オクタヴィアヌスって・・・あの・・あの!!
完全にパニックの局地にいるリナに彼が気付くのはもう暫く後の事だった・・。


気がついたら・・・・・。
朝日の中、『ネロ』によって破壊された町並みに立っていた。
こうして考えると・・あのネロが消えた事によって『ユリウス・クラウデゥス朝』の
直系の後継者はガウリイのみ・・と言う事になる・・・・。
そう思うとなんだか妙に重い気分がしてならなかった。
「どした〜?リナ?」
先ほどのパニくったリナにはかなりびっくりしたのだろう。
今度は目敏くリナの変化に気付いたガウリイは心配そうに声をかける。
「・・・・ん・・・うん・・・・もっと昔のこの国を見てくれば良かったな・・って
思っただけよ・・」
無論、嘘。ガウリイの運命に関わる事かもしれない事実をあまり大声で言いたくな
かった。「へえ〜〜・・・例えば・・???」
「伝説とか。確か・・共和制時代よ。ルクレチアって女性の悲劇とか。大概ルクレチ
アって名を冠する女性は悲劇的な運命に見舞われるのよ。実証・・とか、ね」
かなり意味不明なことを言ってしまった(いや。ご多分に漏れず結構趣味的なことを
言ってしまってる自覚はあるのだが・・・)。
が、ガウリイはそんなリナの肩にガッシリと手を起き・・・・・。
「リナ!!」
「何よ・・・・??」
もしかしてコイツの将来のこと考えてたこと・・・ばれた?
一瞬そんな不安が脳裏を過ぎるのだが・・・・・・・。
「・・・子供が生まれたら・・ルクレチアって名前だけはつけるよよそ〜な!!不幸
になるんだろ!!」
・・・・・・・・・前言撤回・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「安心しなさい。一生ないわ!!」
キッパリと言い放ちスタスタと歩き出すリナ。
「リナアアアアアアアアアアアアアアアアアア〜〜〜〜〜〜〜(涙)」
半泣き状態で後ろを追いかけてくるガウリイ。さしあたってどうにでもなってしまえ
!(怒)な心境である。


「よお・・・遅かったじゃね〜〜かあ・・・・・・」
「ガウリイさま・・無断外泊はいけないですよ・・・ふふ・・・ふふふ・・・」
「ヴァノーの・・・呪い・・効果なかった・・おかしい・・・・・・」
リナ父、ゼロス、ヴァノッツァ・・そして疲れ果てたゼルとアメリアの呪詛の視線に
が二人を襲う・・・・。
「逃げるぞ!!リナ!!」
ひょいっとリナを抱えてその場を離れるガウリイ!!
「ちょっとおおお!!ガウリイ!何考えてるの!!」
「何って・・身の安全。ま、みんな一寸休めば体力も回復して機嫌も直るって。
そいまで避難!!」
「わかったから降ろせ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
リナの抗議は完全無視。
どうやら・・今回あんまり『いいところ無し』だった事を根に持っているガウリイら
しかった・・・。


(続きます)



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15794無断外泊の舞台裏(笑)P.I E-mail 6/3-22:38
記事番号15788へのコメント

CANARUさん、こんばんは♪
久々の「魔槍」〜〜♪♪今回は残された人々の悲喜交々(悲々交々?)な様子も
出てきましたね〜!
ヴァノーちゃんとゼロスくん・・・・あの二人がいないと壊れ放題!(笑)
翌朝のみんなの怒りはつまるところ
「出かけるんだったらコイツらも一緒に連れていきやがれっっっ!!!」
ってことだったのでしょーね(笑)
もしコイツらがあんなに騒がなかったら、たとえガウリナが一晩無断外泊した
ところでハン兄ちゃんもリナパパも
「いよいよ春ですかねぇ〜♪」
「ちっ! これだから若けぇヤツらはよぉ〜〜!」
とかなんとか、結構楽しく平穏に夜を明かせたんじゃないかと思うんですが・・・
リナちんがガウりんの将来を心配してるとき、ガウりんはガウりんで
二人の将来設計(爆笑)してるのがなんとも良かったですわ〜(^0^)

ガウりんのご先祖様編はこれで終わりですか?
まだモルガンとの決着は着かないのかな〜。続きを待ってます!
それではでは〜♪

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15800ババ抜き〜〜♪CANARU 6/4-10:01
記事番号15794へのコメント

>CANARUさん、こんばんは♪
>久々の「魔槍」〜〜♪♪今回は残された人々の悲喜交々(悲々交々?)な様子も
>出てきましたね〜!
はい〜〜♪
実は今回、ヴァノーちゃんの「ババァぢゃ・・・ないもん・・・」と
男三人、むなしくババ抜きを書きたかったゆえの話しだったりします〜〜!!
(う〜ん・・・ヴァノーちゃんいはちょっと自分を投影!)
>ヴァノーちゃんとゼロスくん・・・・あの二人がいないと壊れ放題!(笑)
>翌朝のみんなの怒りはつまるところ
>「出かけるんだったらコイツらも一緒に連れていきやがれっっっ!!!」
>ってことだったのでしょーね(笑)
ですねえ〜〜!!
「おいていくとヴァノーの夜泣きがうるさいんだよ!!」
「ガウリイさん!ゼロスさんをちゃんと鎖でつないでから出かけて
くださいよね!!」
の苦情がその後、多発した事が予測されます!!
>もしコイツらがあんなに騒がなかったら、たとえガウリナが一晩無断外泊した
>ところでハン兄ちゃんもリナパパも
>「いよいよ春ですかねぇ〜♪」
>「ちっ! これだから若けぇヤツらはよぉ〜〜!」
>とかなんとか、結構楽しく平穏に夜を明かせたんじゃないかと思うんですが・・・
ですねえ〜〜!!
ああ・・これだから放任主義なご家庭は〜〜(爆笑!)
ヴァノーの夜泣きは・・当分の間続きそうです!!
>リナちんがガウりんの将来を心配してるとき、ガウりんはガウりんで
>二人の将来設計(爆笑)してるのがなんとも良かったですわ〜(^0^)
ははは(汗)
このネタは一回やってみたかったので〜〜♪
>ガウりんのご先祖様編はこれで終わりですか?
>まだモルガンとの決着は着かないのかな〜。続きを待ってます!
>それではでは〜♪
はい〜〜!!
次回はまたちょっと場面が変わるかな?と予測されます!!
では、近いうちにまた書きたいです!