◆−風の吹く街から(一応ゼルアメ)−時貝崎 刻弥(6/3-15:56)No.15789
 ┗Re:風の吹く街から(一応ゼルアメ)−たつき(6/4-10:33)No.15801
  ┗ありがとうございます〜〜〜〜〜vvv−時貝崎 刻弥(6/4-16:40)No.15811


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15789風の吹く街から(一応ゼルアメ)時貝崎 刻弥 6/3-15:56



 こんにちは、時貝崎です。
 今回は、珍しく短編を書いてみました。
 ゼルアメです。結構頑張ってみました。
 読んでくださると嬉しいです。

*****

  風が吹く街から


 ────季節の 匂いが
     そよ風 呼んだら
     手紙を書きたい
     あなたへ この道の上から


「ゼルガディスさん」
「ん?」
「ゼルガディスさんって、優しいにおいがしますね♪」
「・・・はぁ?」
 突拍子もない言葉に、ゼルガディスは思わず変な声を出してしまった。

「何をどうひねったら、そーいう結論になる?」
 自分で「自分は優しくない」と認めているのか、ゼルガディスは必死に否定しようとする。
 けれど。
「でも、私にとってはゼルガディスさんは『優しい風』なんです♪」
 アメリアはそう言って、一歩ゼルガディスの前を歩いた。


「それで、今日は何のようですか?」
「ん?ああ・・・これ、見せに来たんだ」
 そよ風が吹く公園のベンチに、二人は腰掛けた。
 ゼルガディスは言って、カバンから一枚のCDを取り出した。
「ああっ、これ!私が聞きたいって言った曲・・・」
「これが店で売り切れって聞いた時のお前の顔が・・・その・・・残念、だったからさ」
 少し照れながら、ゼルガディスは言う。
「ありがとうございます・・・でもこれ、人気高くて、どの店でも売り切れ、って聞いたんですけど・・・」
「まぁ、そこは・・・バイト先の店長のコネだ、コネ」
 ゼルガディスは軽く言って、CDケースを包むビニールをはがす。
 アメリアは、なんとも申し訳ない気分になる。

 ゼルガディスのバイトは、ただの文具店だ。
 どうやっても、CD入手に対してコネがあるとは思えない。


「じゃあ、聞くか」
 ゼルガディスは、今度はカバンからCDプレイヤーを取り出す。
 ほれ、と言って、それをアメリアに渡す。
「え?これ、一人しか聞けませんよ?」
「お前が聞け」
「そんなっ・・・悪いですよ。CDを買ったのはゼルガディスさんなのに!」
「いーからいーから」
 返そうとするアメリアに、CDプレイヤーを押しつける。
 アメリアは、はぁ・・・とため息をついて、CDプレイヤーの中にCDを入れる。
 それから、二つのイヤホンのうち、片方をゼルガディスに渡す。
「・・・は?」
「はいっ!」
 アメリアは、笑顔でゼルガディスの耳にイヤホンをつっこみ、自分も片方を耳に入れる。
「一緒に聞きましょう!」
 にこにこしたまま、再生ボタンを押した。


 ────通り過ぎる風を
     感じてる時
     おぼろげなあの日の夢
     近くなる気がしてるから


「良い歌ですね」
「・・・たとえば、どの辺が?」
「・・・・・・ゼルガディスさんみたいな感じがするところ」
「はぁ?」

 優しい風を感じるところ。

「おいアメリア、どーいう意味だ?」
「自分で考えてくださーい」
 ふふっ、と笑って、アメリアは歌に耳を傾ける。


 ────何時かは何処かへ
     去ってくあの日も
     昨日の記憶も
     遠くで 輝き放ってる


「あっ、もうそろそろ帰らないと・・・」
 腕時計に目をやって、アメリアはベンチから立ち上がった。
 もう、歌は終わっている。
「そうか・・・送ってく」
「ありがとうございます♪」
 ゼルガディスも立ち上がって、CDプレイヤーをカバンの中に入れる。
 中に、あのCDを入れたまま。
 ゼルガディスは、このCDはアメリアにプレゼントするつもりで持ってきたけれど、今はうっかり中に入っていることを忘れていた。
 アメリアは、気づいていたけれど言わなかった。

  だって、言わなかったら、ゼルガディスさんはこのCDを、私のところにとどけに来ようとするでしょう?
  そうすれば、また彼に会えるじゃないですか・・・


「・・・あれ?」
 ゼルガディスは、あたりを見渡し、変な声を出す。
「・・・・・・バス停はどっちだ?」
「えええっ!?道に迷ったんですか!?」
 ゼルガディスに連れられてここに来たアメリアは、このあたりにはあまり詳しくない。
 ここは、ゼルガディスに頼るしかないのだが・・・
「まぁ、適当に歩けばたどり着くだろう。この辺にあるのは間違いないんだし」
 ちょっと無責任なことを言う。
 けれど、アメリアは笑顔で頷いた。
 しばらく、二人連れだって歩く。
 優しいそよ風が、いつもは吹き飛んでいってしまうのに、今はすぐ隣にある気がした。

  このまま、バス停が見つからなければいいのに。
  そうすれば、このままずっと、貴方と一緒にいられるでしょう?


「アメリア!見つかったぞ」
「ホントですね〜」
 アメリアは、ゼルガディスの言葉に笑顔を浮かべる。
 けれど、内心少し残念がる。
「丁度良い時間だな。あと2、3分でバスが来る」
 時刻表を見て、ゼルガディスは言う。
 そう言うそばから、道路の遠くの方からバスの光が見えた。
 二人の前に停車して、ドアが開く。乗り込んでから、ゼルガディスは運転手になにやら尋ねている。
「・・・だいぶ歩いてしまったようだな。これから駅まで、5分くらいかかるそうだ」
「そうですか」
 残念そうなゼルガディスにならって、くらい声をアメリアは出す。
 でも、もう少しだけ、貴方と一緒にいられる────
 そう思うと、暗さなんて吹き飛んでしまう。
 二人で、一番後ろの座席に隣り合って座る。
 そのまま、時が止まったかのように、静かで動かない二人を乗せたまま、バスは駅へと向かった。


 帰りは予定より多少遅くなってしまったが、寛大(で豪快)な父親は、あっさりアメリアを許してくれた。
 夕食を摂ってから、二階の自室に戻る。
 窓際に椅子を置いて、外を眺める。

  彼と 別れてから 二時間は 経ったかな?

 はぁ、とため息をつく。
 すぐ近くのラジオのスイッチを、軽く押す。
 かちゃかちゃと、適当に局を選ぶ。

『季節の匂いが そよ風呼んだら・・・』

「あ、この曲・・・」
 アメリアは、窓縁に頬杖を付きながら、静かに歌を聴いた。
 偶然流れてきた、あの曲。
 優しいそよ風に包まれながら、ベンチに座って聴いた曲。
 でも、本当はあのとき、全然曲なんて聴いていなかった。
 だって、すぐ隣に彼が居る。
 そう考えると、落ち着いて歌なんて聴いていられなかった。
 だってそうでしょう?
 油断すると、曲と一緒に、自分の鼓動の音まで聞こえそうで────

「ゼルガディスさん・・・」

 携帯電話なんかじゃ嫌。
 メールも嫌。
 手紙は、こっちから送るもの。

 会いたい。
 それなのに。

 会いたい時に限って、そよ風は吹いていない。


 ────眩い光と
     青空見上げて
     口笛吹いたら
     何かが 変わるかも知れない


 今、何かが変わるとしたら。
 何が起こる?


 ・・・コツン。
 小さな音がして、アメリアは顔を上げた。

『ラジオショッピングの時間がやって参りました〜♪』

 ラジオでは、とっくにあの歌は終わって、別の放送をしていた。
 何の音だったんだろう・・・?
 不思議に思って、窓を開けて外を見つめると・・・・・・
「ぜっ・・・・・・るがでぃすさん!?」
 大声が出そうになって、必死に押さえる。
 外には、手を振るゼルガディスが立っていた。
「ど・・・どーしたんですかー?」
 時計を見ると、もう12時を過ぎている。
 父親にばれたら、さすがに一ヶ月外出禁止にでもされかねない。
 小さな声で、彼を呼ぶ。
「これ・・・お前にあげようと思ってたんだが、持って帰ってしまったから・・・」
 ゼルガディスも、アメリアの思いが通じたのか、声を抑えて言う。
 手には、あのCD。
「ちょ・・・ちょっと待っててください!今行きますから!」
 アメリアはそう言って、慌てて、それでいてなるべく音を立てないように、階段を下りていった。

「・・・くしゅんっ」
 外に出て、まず出した第一声が、そのくしゃみだった。
「おいおい・・・いくら初夏だからって、夜は涼しいって事をちゃんと考えろ・・・」
「ご、ごめんなさい・・・」
「・・・ほら」
 ゼルガディスはジャンパーを脱ぐと、アメリアにかぶせるように着せる。
「わざわざ・・・ありがとうございます」
 アメリアがそう言うと、ゼルガディスはそのままCDを差し出す。
 しかし、アメリアはにこにこ笑って、彼がまだ持っているカバンを指さした。
 そして、言う。
「CDプレイヤー、持ってますか?」


 ────穏やかな 時が
     ゆっくりと 過ぎ
     心が目覚めたなら
     もう一度 歩き始めよう


 片耳だけで、一緒に聞いた優しい風の歌。
 今はちゃんと、隣にそよ風を感じながら。


 ────向かい風が 強い日も 外に出て
     この道を確かめよう
     行き先を見失わずに
     どんな時も 私なら 元気です
     あなたへと 伝えたい
     この街の風の吹くところから


 メロディーが終わり、CDプレイヤーが小さく音を立てて、動きを止める。
 かちゃかちゃといじって、ゼルガディスはCDを取り出し、ケースに入れる。
「ほら」
 ゼルガディスは、短く言ってそれをアメリアに差し出す。
 けれど、アメリアは受け取らない。
「どうした?」
「それ、ゼルガディスさんが持っていてください」
「何故だ?」
「いいから」
 にこにこと笑って、アメリアはCDをゼルガディスに押し返す。
「変なやつだな」
 ゼルガディスはそう言って、CDをカバンにしまった。

 そのまま、彼は後ろを向いて歩いていく。
 この道を確かめながら。
 けれど、今は静かにそよ風が吹いている。

  CD、また届けに来てください。
  いつでも良いから。
  どんなときでも良いから。
  また一緒に、片耳同士で聞きましょうね。

 アメリアは、静かにつぶやいた。
 丘の上に位置する、この家の前に立って。



  ────Browing the wind...

  終わり。

*****

 えっと・・・割と長かったですね・・・。
 ゼルアメって言うか、ゼル←アメ、って感じです。
 アメリアサイドだから、それは仕方がないことですが・・・。
 これは、WebMIDIの『風の吹く街から』という曲のイメージ詩を使って書きました。良い曲なので、探してみてください。
 さて、これから『逢魔時の空』を頑張って書きますか・・・。
 では、またの機会に(^^)

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15801Re:風の吹く街から(一応ゼルアメ)たつき 6/4-10:33
記事番号15789へのコメント

早速?読ませていただきました。私はゼルアメ大好き人間でタイトルを見て、飛びついてしまいました。

 すっごく爽やかで優しい感じのお話ですね。ゼルさんはすっごく優しいし、アメリアはかわいいし。アメリアがすっごく可愛かったです。

 これからもがんばってくださ〜い。

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15811ありがとうございます〜〜〜〜〜vvv時貝崎 刻弥 6/4-16:40
記事番号15801へのコメント

たつきさんは No.15801「Re:風の吹く街から(一応ゼルアメ)」で書きました。

> 早速?読ませていただきました。私はゼルアメ大好き人間でタイトルを見て、飛びついてしまいました。
 はじめまして!ありがとうございます!!
 私もゼルアメ大好きなんです〜vでも、ゼルが壊れますけどね・・・ふっ・・・(笑)

> すっごく爽やかで優しい感じのお話ですね。ゼルさんはすっごく優しいし、アメリアはかわいいし。アメリアがすっごく可愛かったです。
 ホントにありがとうございます〜〜〜〜〜vvv
 爽やかな話を目指していたので、そう思ってくださって光栄ですv

> これからもがんばってくださ〜い。
 たつきさんも、がんばってくださいね〜v
 ではv