◆−時間稼ぎヴァルフィリ再掲示&某向上委員会について−葵楓 扇(6/9-14:07)No.15861
 ┣最後の天使(再掲示)−葵楓 扇(6/9-14:13)No.15862
 ┣青いお月様(ヴァルフィリ・・・?)−葵楓 扇(6/9-14:22)No.15863
 ┣空には満天の星が・・・(詩付き)−葵楓 扇(6/9-14:26)No.15864
 ┣恋人たちの星夜(再掲示ラスト)−葵楓 扇(6/9-14:30)No.15865
 ┣入会したいにょん♪−風林みつき(6/9-15:48)No.15867
 ┃┗早いねぇ♪−葵楓 扇(6/9-16:12)No.15869
 ┃ ┗肩書き〜☆−風林みつき(6/10-01:07)No.15877
 ┃  ┗茶ぁ組め!Σd(>▽<)−葵楓 扇(6/10-01:46)No.15879
 ┣入会について付け足し−葵楓 扇(6/9-16:10)No.15868
 ┣発掘してきた(笑)未完成(続・再掲示)−葵楓 扇(6/9-17:11)No.15870
 ┗再掲示の感想…−風見霊(6/10-05:47)No.15884
  ┗風ちゃんの悪魔〜ッ(マテ)−葵楓 扇(6/10-14:57)No.15886


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15861時間稼ぎヴァルフィリ再掲示&某向上委員会について葵楓 扇 6/9-14:07



 こんにちは。忘れた頃にやってくる、その名もハニー・葵楓扇(マテ)
 お久しぶりです。みなさん、私のこと忘れてくれましたか?(をひ)
 今、知ってる方も多いでしょうが、HP作ってます。受験生なのに。テスト近いのに。
 なので、しばらくの間だけ(夏休み手前くらいまで)ちょっと小説をお休みして(たまに書きますが)それまで再掲示に時間を潰そう、と計画立てました。
 ごめんねみんな☆(マテ)まぁ、HP完成したらどーせ小説書くけど・・・。

 今回は、ヴァルフィリシリーズを再掲示させていただきます。
 それは、立派な理由があるのですが・・・

 知る人ぞ知る、某ヴァルフィリ向上委員会。
 現在製作中HPに、これの名簿を書こうとしたのですが・・・
 『正式に今も委員会に入ってる人って一体何人居るんだ!!?』
 これが不安になってしまったんですよねー。基本のメンバーは、ほとんど最近【書き殴り】に来てない方ばかりですし。
 それなので、今この場を利用して、入会者確認と入会希望者を募らせていただきます。
 入会したいにょん♪という方は連絡下さい。オフ会もないしメールも送らないし、楽だと思うんですけどねー?
 ちなみに、初期の状態を守るというわけかどうかワケ不明の約束によって、入会条件は「ヴァルフィリ小説or絵を最低一つ作成する」です。すでに書いたことのある方はそれでOK。送り先は【書き殴り】で良いので。

 さてさて、連絡も終わったし・・・
 再掲示いきまーす♪

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15862最後の天使(再掲示)葵楓 扇 6/9-14:13
記事番号15861へのコメント


 懐かしの作品。投稿日は去年の6月28日。約一年ぶりに日の目を見るのですね〜。
 そういうわけで、『最後の天使』です。ど〜ぞ♪

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  地上に舞い降りた最後の天使


 燦々と降り注ぐ太陽に輝き!
 その光を反射し輝く水面!
 繰り返し単調で、しかし安らぐ波音!
 人々の笑い声、ついでに溺れた人の悲鳴!
 ボール遊びをする人、浮き輪でぷかぷかする人、足を攣りピンチな人!
 白いって嘘だろと思いつつマジ白い砂浜!
 常夏のビーチ! それがココ!!
 その砂浜を、一組の男女が歩く。
 町内の福引き大会で偶然特賞を当ててこの地に参った、超運がいい人達、それが彼ら。
 女性の方はその美しきボディと見事にあった水着により、人々の目を釘付け! でも本人気付いてない!
 男性の方は・・・サングラスにパーカー、足にもタオル巻いたりの夏を夏と思わせぬ格好で、見るだけで蒸し暑くなるので、誰も見ようとしない! もちろん本人気付いてない!
「本当に、運が良かったですね、ヴァル!」
「・・・俺にとっては・・・三等の海の幸盛り合わせセットが良かった・・・」
「あら、こっちに来ればいつでも食べられますよ?
 新鮮な、本場の物を!」
「・・・・・・盛り合わせセットに紫外線はないけどな・・・」
 どうやら、男性のほう・・・ヴァルというらしい、重装備の彼は、どうやら日焼けが死ぬほどイヤらしい。
 たしかに、サングラスの隙間から見える肌は、白雪姫顔負けなほどの美白である。『美』を忘れちゃいけない。
「わたしは、日焼けって健康的で良いと思うんですけどねぇ・・・」
「お前みたいな世間知らずには、俺の繊細な心は分からないのさ・・・」
 肩をすくめ、ふっと息を吐くヴァル。
 その言葉に、女性・・・フィリアは叫ぶ。
「なんですって!?
 こう見えても私は、元火竜王神殿の・・・」
「バザード=ウル=コプトの娘で聖位一位の巫女なんだろ?
 そんなの、もう耳にタコができるくらいしょっちゅう聞いてる・・・」
「あら?
 今日はまだ3回目ですよ?」
 そんなに言ったのか。
「あっ、あっちの岩場行きましょ!
 ああいうところは、カニさんとかがいっぱいで・・・」
 言うが早いか、さっさと駆けていくフィリア。
「・・・ガキだな、ありゃまるで・・・」
 呟くヴァル。納得。
 外見的にはフィリアのほうが年上のようだが、精神年齢はどう考えてもヴァルの方が上だった。

「きゃぁぁっ!」
「!?」
 岩場を必死に登っている半ば(暑くなってきたらしくスピードが遅い)上の方からフィリアの声が聞こえ、人目をはばからず(人居ないけど)空間転移をし、フィリアの元へとヴァルは向かった。
 なんだかんだ言ってもヴァルは結局、フィリアにベタ惚れなのである。
「ど、どうしたフィリア!?」
 カニのはさみに指でも挟まれたか――ヴァルがそう言うより早く。
「ほら見て下さいヴァルっ!!
 可愛い可愛い〜っ!!」
 そこには、指先ほどあるか無いか、ごく小さなカニさんたち。
 沢ガニだった。海にいるか、フツー?
 それを見て、がくっと肩を落とすヴァル。本気で焦った自分がバカみたいに思えたのだ。
「まったく・・・心配かけるなよな」
 屈み込んで沢ガニをつついて笑っているフィリアの隣に座るヴァル。
 そのフィリアの横顔は本当に美人で、それが沢ガニによるものとはどうも思えない。
 ちゃっかりその肩に手を回し、自分は水平線を見る。
 本当に、最近の生活はのどかだ。
 消えたと思っていたけれど、しかし徐々によみがえりつつある自分の『前世』と比べてみる。
 あの頃の自分は、水平線を見ているヒマなど無かった。
 今の自分は、水平線を見つめ昔を思い出すヒマがある。
 ヴァルは、大空や海のような、果てしないものを見ていると、少し悲しくなる。
 自分は、空や海にとって、本当に米粒程度でしかないのだ、と。
「・・・どうしたんですか?」
 その声に振り返ると、自分の片手を肩に乗せたまま、こちらを心配そうに見つめるフィリア。黙ってしまったヴァルが気になったのだろう。
「あ・・・やっぱり、沢ガニなんてつまらないですよね・・・ごめんなさい、つきあわせてしまって。
 泳いできましょう・・・」
 フィリアがすっと立ち上がって、早くその場を去ろうとする。
 だがヴァルは片手を掴み、もう一度座らせる。
「もう少し・・・ココにいよう」

 もしヴァルが、水平線に沈む夕日を見ようと言い出さなければ、その日一つの命が消えるところだった。
「こんなところに居るとは・・・な」
 ヴァルは、小さなくぼみに手を入れ言った。
 くぼみから出したヴァルの手のひらには、羽がばさばさになり汚れた小さな鳥が一羽。
 どうやら雨風にやられてくぼみに避難したが、そのまま出られなくなった、というところだろう。
 自然好き動物好きのヴァルに助けられたのがラッキーだった。
 ヴァルは、動物が相手になるとそれはもう人格が変わったかのように優しくなる。ちなみに、竜族のような人型になれるのはダメらしい。
 さらに、おまけのフィリア(おい)は、これでも元巫女。回復魔法はお手の物だ。
 鳥は、徐々に暗くなる空によってみーみー鳴き出したため、運良くヴァル達に発見されたのだ。
「でも、珍しい鳥だなぁ」
 フィリアの回復魔法を使いきれいに洗ったら、それはもう『純白』の鳥がさぞ可愛いらしくぎゅーっとしながら(死ぬぞ、おい)ヴァルは言った。
「白いけど、白鳥はこんなにでかくないし・・・でも、鳴き声はウミネコに似てるし・・・」
「なんて生物でしょうねぇ」
 フィリアも見当が付かないようで、首をひねっている。
「旅館の人に聞いてみましょう」

「こ、こりゃぁっ!」
 旅館のおばちゃんは、それはもう驚いて、大きな声をあげた。
「珍しい、『天使』じゃないかいっ!」
「・・・は?」
 その言葉に、ヴァルとフィリアは目を丸くする。
「天使・・・って・・・」
「ああ、この鳥の名前さ。
 昔、太陽と共に地上に舞い降り、月と共に人々を見守ったとされていた、守り神的な鳥さ。
 昔はたくさん居たんだけど、どんどん狩られたりして数が減っていってねぇ・・・」
 ヴァルは、『天使』を見下ろし、ため息を付いた。
「可哀想に・・・・・・。
 結局、そうなんだ。人型の生物は・・・自分たちが気にくわなかったり、何が何でも手に入れようと思ったら・・・無茶苦茶なことをする・・・」
 ヴァルのつぶやきに、フィリアはズキっと胸を痛める。
 自分たちの一族が、私利私欲のためにヴァル達古代竜の命を奪ったのは、紛れもない事実なのだから。
(けれど・・・わたしは、火竜王神殿最後の黄金竜。その罪を・・・償わねばならない)
 真実から逃げることは許されない・・・ならば、いっそ真実と向き合い、戦い抜く。
 それが、フィリアの出した決断だった。
「で、ヴァル・・・その子、どうするんですか?」
 フィリアは、俯いているヴァルの肩に手をかける。
「・・・人の手が届かない自然に・・・帰してやらなければ。
 森の中でも・・・平気かな」
「昔、『天使』たちは森林より参ったとされているから、大丈夫じゃないかねぇ?」
 宿屋のおばちゃん、ナイスフォロー。

「・・・ヴァル?」
 『天使』はどうやらお腹がすいていたらしく、みーみー鳴き続けるので餌をやり、そのままヴァルは一緒に寝入ってしまったと思ったが・・・。
 フィリアは彼の部屋に行ったが、どこにもその姿はなかった。
「・・・まさか」
 フィリアは一カ所思いつき、そこに転移をする。
 その場所は・・・・・・。

 その場所は、忌まわしく、そして神聖な地。
 ・・・古代竜族の神殿。
 今は闇を撒くものとの戦いにより神殿は姿を失ったが、そのあたりをつつむ豊かな緑は顕在していた。
 月明かりの元、その木々は、本当に神秘的な印象を醸し出していた。
 そしてそこには、思った通りヴァルの姿があった。
「フィリア・・・よく、この場所が分かったな」
「この前来たとき、綺麗な森がありましたから・・・きっとここだろう、と思って」
 フィリアはヴァルの隣に立った。
「『天使』、離さないんですか?」
 ヴァルの手の内には、まだ純白の鳥の姿があった。
「・・・ちょっと、な」
「ちょっと、なんですか?」
 意地悪く、フィリアが聞き返す。
 ヴァルが俯いて、呟いた。
「・・・こいつの一族も、もうこいつしか残ってないのかな、って思って・・・だったら、危険が多い森より、うちに連れて帰った方が良いかな、って。
 俺と・・・同じだから」
 その様子を見て、フィリアはまたズキっと胸が痛んだ。
 自分は必死に乗り越えようと、真実と向き合っている。
 けれど、彼は・・・加害者ではなく、被害者なのだ。
 それだけ一層、事実との対面はつらいものなのだ・・・。
「・・・・・・わたしは」
「・・・でも。
 こいつは、そうは思っていないかもしれない」
 フィリアが言いかけたのを遮って、ヴァルが言った。
 フィリア自身、自分が何を言うのか分からなかったため、それで良いと思った。
「俺がこのまま、家に連れ帰ったら、こいつはもう森には戻れない。
 けれど、ここで離せば・・・こいつがうちに来ることは出来る」
 ヴァルの手が、ぱっと離される。
 月明かりに、『天使』の白さが反射する。
 ばさばさ、と天高く飛び行く『天使』。
 たしかに、その名前はその姿にぴったりだった。
 白い羽が一枚、また一枚とヴァルとフィリアの元に降りてくる。
「・・・これで・・・良かったんだよな」
「・・・・・・わたしは・・・良かったと思います」
 そのまま、二人とも黙ってしまう。
「・・・帰るぞ。腹減った!」
「・・・は!?」
 ガシっとヴァルに手を捕まれ、フィリアは引きずられるように、ヴァルと共に歩く。
「しんみりしてるのは、ガラじゃない。お前もだ!」
 ヴァルはそう言ってから、フィリアの手を離した。
 きっ、とフィリアの目を見る。
 つい、頬が紅くなるフィリア。
「・・・お前も、一族のただ独りなんだよな」
「・・・・・・」
 そう言われ、フィリアは俯いてしまう。
「だぁかぁらぁ。しんみりするのはガラじゃないだろ!
 んな『真実』、気にすんな!
 俺だって平気なんだ。俺を見ろ、こんなにも立派に育っただろう」
 立派かな?
 そう思ってヴァルを見て、フィリアはふと思った。
 彼も、彼なりに真実と戦っているのだなぁ、と。


  END.

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 なんだか、とっても懐かしい作品です。
 もう、これを書いた時の気持ちなんか覚えていない(笑)
 ちなみに、これの投稿時の恒例の『注意事項』は、頭蓋骨陥没でした。

 ではではっ、次は神秘的?なあの作品です♪

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15863青いお月様(ヴァルフィリ・・・?)葵楓 扇 6/9-14:22
記事番号15861へのコメント


 今回は、いまだに扇が「雰囲気大好き☆」という、沖縄戦後話(?)『青いお月様』です。
 ほんとーにヴァルフィリかどうか不安な話。っていうか、ゼロヴァル?(笑)
 でも、やっぱりこの話好きです・・・。
 ではでは、どうぞ。

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  Blue Moon Tear and Ocean


 青いお月様が泣いております。
 忘れられない事もあります。
 海に消えていった人々のこと。

 誰が、「この国は平和だ」と決めたのだろう。
 人々がいつも思っている。
 夢も見た。
 平和の夢?
 終戦の夢?
 違うんじゃないでしょうか。
 真実の夢ではないでしょうか。
 お願い、と。
 訴えの夢ではないでしょうか。
 今だ終わらぬ過去から、みんなを助けてくれる夢。

  ウソヲ ツカナイデ
  ギゼンニ スベテヲカクサナイデ


 それは、いつだったかの夏のこと。
 彼は、いつもの格好で、海に遊びに来ていた。
 波音が好き。
 一定の間隔と思わせて、微妙に変わるその音が。
 その浜辺には、小さな海の家があった。
 かき氷とかアイスとか、甘くて冷たい物を売っていた。
 彼は、手に小銭をつかんで、毎日そこでアイスを買って食べていた。
 海に足をつからせて。


「貴方、変わっているでしょう」
「お前よりかはマシだって。絶対」
 その友達(?)の言葉に、彼は毒づいた。
「類」
「友」
 そいつに指さされて言われて、自分も言い返した。
「ていうか、お前地元住人だろ? お前が類。俺引っ越してきた人」
「違いますよぉ、僕だってまだ赤ちゃんの時にこっちに来たんですっ」
 その言葉に、彼は相手を見た。
「まぁ、それでセンソーに突き当たっちゃいましたけど」
「へぇ。お前も引っ越した人?」
 初めて知った、とばかりに彼は呟いた。
「んじゃ、類は誰?」
「それは・・・・・・」
 言われ、彼は考えた。
 言おうと思った名が言えなかった。
「・・・死者の冒涜は止めましょう」
「・・・・・・・・・・・・そうだな」
 言われて、気づいた彼もそう答えた。

「おや、珍しい」
 本当に子供だった頃、自分はここに引っ越してきた。
 毎日海に通って、アイスを食べていた。
 それを思い出して、彼はその日海へと来た。
「どうしたんです?」
 昼間の彼・・・二代目海の家店長、とばかりの友達が言う。
「貴方が此処に来るなんて」
「お前があんな事、言ったからだ」
 砂浜に寝っ転がって、彼は顔だけで相手を見た。
「あいつのこと、忘れようとしていたのに・・・」
「はい」
 耳元でそう聞こえて、彼は目を開けた。
 其処には、見慣れたおかっぱ男のニコ目。
「手、出して下さい」
 言われたとおりにすると、手のひらに、米粒を平たくして大きくしたような物が幾つか乗せられる。
「向日葵?」
「ええ」
 彼は、笑っているのかどうか分からない目で、見つめてきた。
「あの人の特徴でしたね」


『ほーら、アイスばっかり食べていたら、病気になっちゃいますよ?』
 彼女は口うるさかった。
『うるさーい、フィリアのおばばー』
『誰がおばばですって〜?』
 しかも、すぐ怒る。
『わーっ、ごめんなさーいっ』
『まぁ、とりあえず許して上げましょう』
 単純だった。
 すぐ笑う。
 喜怒哀楽が激しい人だった。

「弟、元気?」
 まだ小さな彼は、フィリアに聞いた。
 海の家の後かたづけ。夜の九時になると閉まる。
 その最中だけれど、フィリアは答えた。
「ええ、元気ですよぉ。ちょっとずる賢くなってきてますけど」
「ゼロスらしいや――――」
 遠い空で、月が光った。

 彼の所に、再びゼロスがやってきた。
 二代目になっても変わらない。夜九時になると閉まる、海の家。
「はいはい、貴方も早く帰ったらどうです? ・・・ヴァルさん」
「もーちょっと、此処にいる」
「そうですか?」
 ゼロスは隣の家・・・自分の家に入って行った。
「・・・・・・・・・」
 あの人が消えてから、もう何年だろう。

  ウソヲ ツカナイデ
  ウミニ カノジョハ・・・・・・

「はい」
 また、ゼロスがやってきた。
「一本、どうです?」
「貰う」
 渡されたのは、砂糖黍。
 口に広がる甘さ。
「あの人は、僕を弟って言ってましたよね」
「従兄弟だろ? たしか」
「そうですよ」
 問われて、ゼロスは答えた。
「あの人は、生まれも育ちもここで・・・センソーで僕の一家が此処に来て、それから貴方が来て、貴方が僕を弟って言ったんです」
「・・・そうだっけ?」
「そうですよ」
 すっかり忘れている彼に、ゼロスは笑って言った。
「ご近所方、みんな信じちゃったんですよ。僕に言うんです、『どうしてお姉さんを、『お姉ちゃん』って呼ばないの?』って」
 彼は、そのことを思い出したように笑った。
「僕が答えないでいると、いつの間にか僕とあの人は腹違いの姉弟とか思われちゃって・・・ちょっと迷惑、と言えば迷惑でしたね」
「そーかそーか。ちゃんと言わなかったお前の自業自得だろ?」
「元はといえば、貴方が・・・・・・」
 言いかけて、ゼロスは止まった。
「貴方も、あの人も似てますね・・・・・・」
「そっか・・・・・・」


『何、これ』
『向日葵の種よ』
『ひまわり?』
『そう』
 フィリアが指しだした種を手の上で転がしながら、彼は呟いた。
『ネズミとかが食べてるヤツ?』
『そうですね』
 彼女は、砂浜を軽く掘って、その種を植えた。
『毎日、忘れずに水を掛けて下さいね』
『何で俺が・・・・・・』
『私に、出来ないことですから』
 彼女は笑っていた。
 彼には、その理由が分からなかった。

 次の日、彼が向日葵の事をすっかり忘れて、海に来た日。
 海の家は開いていなかった。
 ただ、隣で子供がうずくまっていた。
 見ているのは、前日掘られた砂・・・向日葵の種を植えたところ。
「ゼロス・・・フィリア、どうした?」
「消えちゃいました」
 ゼロスは、彼より少し幼いのか(両親が死んで、本人は幼かったため年齢が分からない)その重大さと言うものが分かっていないのか、あっさりと言った。
「海の中、ざぶざぶって進んで、消えました」

 大人達がゼロスの言ったところをあさった。
 海の底をさらう。
 結論は、その日の内に出た。

「もう、生きてるとは思わない方が良い」


 石碑は立てられなかった。
 墓も無かった。
「僕のせいなんでしょうか」
 ゼロスが俯いて、呟いた。
 彼は寝っ転がっていたから、その表情が見えるかな、と思って覗き込んでみたが、髪が邪魔だった。
「僕があの時、もっと早く人を呼んでいたら、あの人は助かったんでしょうか」
「さぁな」
 彼はゼロスの顔を見ようとするのを諦めて、空を見た。

 星が、月の涙。

 誰がそう言ったのか、彼は覚えていなかったけれど。
 たしかに、今日はそう見えた。
 波音だけが響く。
 それから彼らは別れて、自分の家に帰っていった。
 けれど夜中、ヴァルは「花火をする」と嘘を付いて家から出た。

 ゼロスは居なかった。
 砂浜に座る。
 波音だけが響いた。

「・・・どうして、俺たちを置いていったんだ・・・・・・?」

 向日葵の花が咲いている。
 毎日、ゼロスと一緒に水を上げたから。

『向日葵の種は、太陽の種なのよ』

「夜中の太陽は、今日もちゃんと咲いてるから・・・・・・」
 彼が呟いた。
「どうして、俺たちを置いて消えていったんだ・・・・・・」

 海の真ん中が、夜なのに青い。
 月が反射していた。
 青い月だった。
 そして、星が輝いていた。
「青いお月様が泣いてるぜ・・・・・・フィリア」
 彼の声は、次第に波に消えていった。

 月の真ん中に、フィリアの顔が見えた気がする。

「やっぱり来ましたか」
 顔を上げると、其処にはコートを羽織ったゼロスが立っていた。
「暑くないか? そんな格好」
「夜は冷えますからね」
 ゼロスは笑っただけだった。
「貴方は、あの人のこと、好きでしたか?」
 言われて、少しその意味を考える。
 顔を真っ赤にして、ヴァルは首を左右に振った。
「ななななな、なにを・・・・・・」
「・・・何か、勘違いしていません?」
 ゼロスがジト目で言った。
「別に・・・嫌いじゃなかったけど」
「じゃあ、好きなんですね?」
 普通、と言う選択肢を少し心で求めながら・・・・・・
 彼は頷いた。
「俺・・・あいつが許せない」
「なんでです?」
「俺たちを置いていったから」
 ヴァルは頭を、抱えた膝に埋めた。
「・・・食べます?」
 ゼロスが言った。
 見ると、手にはアイスを持っていた。
「あの人直伝のやつですから・・・貴方、最近これ食べてないでしょう」
「・・・・・・まぁな」
 受け取って、一口食べた。
 バニラの味。
 砂糖黍とは全然違う甘さ。
「・・・・・・・・・・・・それで良いんじゃないですか?」
 なんだか、胸の奥で強い想いを感じて・・・・・・
 彼は頷いた。


 太陽の種を植えましょう。
 愛の種を植えましょう。
 再び、夢を見た。
 きっと、あの人の夢。

 海の精霊が、月の涙を慰めております。


__________________________________


 この話の目標は、当時のあとがきにも書いたとおり『終了しても謎だらけの話』でした。
 その通りになって良かった・・・うふふ・・・(謎)
 ちなみに、これの投稿時の『注意事項』は網膜出血でした。何考えて書いたんだろう?
 さて、次は某詩付き極短小説です♪

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15864空には満天の星が・・・(詩付き)葵楓 扇 6/9-14:26
記事番号15861へのコメント


 これ、ちゃんと前書きに書いてありましたね。「もう怪我ネタすらない」って(笑)
 これについては、あんまり想いがありませんでしたねー。っていうか、存在忘れてました(笑)
 ともかく、どーぞ♪

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  空には満天の星が・・・
 
 
「綺麗な夜ですね」
 彼女が、空を見上げながら言う。
 けれど彼は、空より彼女を見つめながら、頷いた。
「綺麗な星空・・・・・・」
「・・・そうだな・・・」
 流れ星が、一筋流れた。
「あっ、ほらヴァルっ! 見て下さいっ!!」
 彼女は、彼の腕を引いて叫ぶ。
「あれが、何だって言うんだ?」
「流れ星のお呪い、知らないんですか?」
 そう言われ、彼・・・ヴァルは、小さく頷く。
 また、ガキみたいだと思われたか・・・・・・
「・・・仕方ありませんよね」
 彼女は、悲しげに呟いた。
「今まで、死ととなりあわせの人生を歩んできたんです・・・から・・・」
 苦しげに、哀しげに、静かに呟く。
 こんな雑学に興味を示すことなど、出来ない人生を歩んできた・・・・・・
 けれど、彼女はしっかりと顔を上げた。
 もう、過去は振り返らない。
「過去を悔やんだって、仕方有りませんよね・・・」
 しっかりとヴァルを見つめ、彼女は微笑んだ。
 力強い微笑みだった。
 思わず、ヴァルも口元に笑みを作る。
「流れ星のお呪い。流れ星が見える間、三回願い事を言うと叶う、って言われているんです」
「ふぅぅん」
 ヴァルは聞いて、いかにも『命有る者』が考えたお呪いだな、と思った。
 けれど、面白いと・・・思った。
「あっ、またっ!!」
 彼女が、また空を見上げると、もう一筋流れ星が流れていった。
 それを見て彼女が手を合わせ目を閉じ、何かを念じているのを見て、ヴァルもそれにならう。
 心の中で・・・願い事を言う。
「なんて、お願いしたんですか?」
 彼女が、目を開けて言った。
「フィリアこそ、何を願ったんだ?」
 ヴァルに言い返され、彼女・・・フィリアは少し恥ずかしげに、口を開いた。
「また、いつか・・・こうして、家のベランダで・・・ヴァルと一緒に、流れ星が見たいです・・・って・・・」
 頬を赤らめて、途切れ途切れに、だがしっかりという。
 それを聞いて、今度はヴァルが顔を紅くした。
「・・・どうしたんですか?」
「い・・・いや・・・・・・」
「ヴァルは、なんてお願いしたんですか?」
 そう言われて、思わず頭が真っ白になる。
 なんとか呼吸を落ち着かせ・・・ヴァルは言った。
「・・・・・・同じ」
「え・・・?」
「フィリアと、全く同じ」
 その言葉の意味を、思わずしばらくフィリアは考えた。
「フィリアと同じで・・・またいつか、こうやってフィリアと星が見たいな・・・って・・・・・・」
「き・・・・・・奇遇ですね・・・・・・」
 フィリア自身、顔を紅くして・・・言った。
 しばらく、二人は黙り込む。
 ヴァルが、ゆっくりと空を見上げる。
 空には、満天の星が輝いている。
 それこそ、何かを・・・自分たちを・・・他の誰かを・・・世界を、祝福し見守っているかのように。
 この空の元、いくつもの尊い命が失われていく中・・・・・・
 いくつもの尊い命が、誕生していく。
 その、生命のサイクルを見守っているように、星は静かに輝いている。
 満天の星空の中、輝いている。
「・・・ヴァル、こんな言い伝え・・・知ってますか・・・?」
「・・・・・・どんな?」
「人が死ぬとき・・・流れ星が流れるそうです」
 ヴァルが、フィリアの言葉に黙り込む。
 もしかしたら、さっきの二つの流れ星により、二人の人間が死んだのか・・・と、思わず考えてしまった。
「それと、人が死ぬと・・・その命が、星になるって」
「そっちは良いな」
 フィリアのもう一つの言葉に、ヴァルが頷いた。
 フィリアが、疑問げの表情でヴァルを見つめる。
「何故です?」
「星に・・・なったら」
 ヴァルが、まるで夢見るような表情で、空を見上げる。
 星を、見つめる。
「星になったら・・・また、大切な人たちと・・・一緒に居れるから・・・・・・そうして、世界を見守れるから」
 古代竜の仲間。
 友達、親友、もしくは恋人。
 母親、父親、兄弟。
 ・・・・・・自分を救ってくれた命の恩人・・・・・・
「あの人たちとまた一緒に居られるなら・・・少し、嬉しいかな」
 頬を、照れくさそうにぽりぽりと掻く。
 この星の中に、自分の知り合いが居るだろうか。
 この、満天の星の中。
 天空を一面に埋める、満天の星空。
「そうですね」
 フィリアも、かつて共に戦い、世界を護った仲間達のことを思う。
 あれから、何年経ったか。
 もう、手紙などのやりとりをやっていないくらい。
 十年か、もう少しか。
 もしかしたら、彼らは生きているかも知れないが・・・・・・あるいは・・・・・・
 そう思いながら、星空をヴァルと共に見上げる。
 満天の星が、空の中で輝いている。
 何かを・・・自分たちを・・・他の誰かを・・・世界を、祝福し見守っているかのように。
 そして同時に今また、その全てに見守られている。
 
☆☆☆☆☆
 
  〜フィリアバージョン〜
 
 こんな事を言ったら、貴方は笑うだろうか。
 星が、人の命だなんて。
 けれど、私は信じている。
 ・・・・・・人は死んだら、星になるのよ・・・・・・
 昔、誰かに言われた言葉。
 今でも忘れない。
 空には、満天の星が・・・・・・
 まるで、誰かを見守るように、輝いている。
 それぞれが、人の命の化身。
 死してなお、愛する者、そしてその愛する者が愛した者を、見守っている。
 どんどんと、守りの加護は世界へと広がっていく。
 だから、貴方だってどの星かに、見守られているのよ・・・・・・なんて。
 貴方は、笑うだろうか。
 けれど、私は分かっている。
 貴方はきっと信じてくれる。
 事実、空には満天の星が輝いているから。
 あの光が、加護の光でない証拠など、何処にもないのだから・・・・・・
 私は、今日も信じて星を見る。
 
☆☆☆☆☆
 
  〜ヴァルバージョン〜
 
 どうして、お前は未だに過去を背負っているのだろうか。
 過去の業を。一族の犯した大罪を。
 お前が犯した禁忌ではないのに。
 その気持ちは、よく分かるけれど。
 もっと、もっと前を向いて欲しい。
 今日は、それを言おうと思っていた。
 外で話をしよう、と言った。
 満天の星空の下、俺たちは一緒に星を見た。
 あぁ、綺麗だな。
 たしかに、お前の言うとおり、世界は星に加護され、見守られているのかも知れない。
 ・・・人の命が、星になる?
 そんな言い伝えが・・・・・・
 いいや、お前が心配しているようなこと、俺はしない。
 笑ったりなど、絶対しない。
 ・・・・・・人は死んだら、星になる・・・・・・
 そうして、愛する者、その愛する者が愛した者を、さらに愛された者を・・・見守っていく。
 死してなお、世界を見つめる。
 あぁ、この綺麗な星の中、あの人たちが居るかも知れないのか。
 何故、俺がそれを笑う、など考えた?
 ・・・おい、空を見てみな。
 また、流れ星だ。
 流れ星が流れるとき、人が死ぬ・・・・・・
 昔、誰かに聞いたことがある。
 哀しい言い伝えだ、と思った。
 流れ星が流れ終わるまでの間、願い事を三回唱えれば、叶う・・・・・・
 最高の呪いだ。
 ならば、こう願おう。
 ・・・・・・この流れ星が流れたことにより死ぬ人を、無事に星にしてあげて下さい・・・・・・
 またいつか、一緒に星を見ような。

__________________________________


 補足説明。「呪い」は「のろい」ではなく「まじない」です。以上。
 今回の詩は、最近の私の作品とは一風変わってますね。こういうのもOKです。
 あー、なんだか丁度良いから、新作のヴァルフィリとかも書こうかなー・・・(マテ)
 ともかく、次回は再掲示シリーズラスト! 超絶季節はずれのフィリア暴走話です♪(笑)

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15865恋人たちの星夜(再掲示ラスト)葵楓 扇 6/9-14:30
記事番号15861へのコメント


 これってギャグなんですよねー・・・
 『油断大敵』並なんですよねー・・・
 ああ、『油断大敵』再々掲示するかなー・・・する気ないけど。
 ともかく、コメントは以上(笑)さっそくどうぞv

__________________________________


  恋人たちの聖夜


「ねぇ、ヴァル♪」
 フィリアが、嬉しそうに歩み寄ってきた。
 そして、一言。
「クリスマスイブは、何して過ごしましょうか?」
「あっ・・・その・・・悪い。クリスマスイブ・・・予定があるんだ・・・・・・」
 ヴァルは、妙に口ごもりながら言った。
 おそるおそる、口を開きながら。
 それを聞いた直後、フィリアは一瞬にして泣きそうな顔になる。
「そんなっ・・・私のこと、嫌いになったんですか・・・!?」
「ちっ・・・違うっ!!」
 あわてて言いつくろおうとするヴァルだが、フィリアは聞いちゃいない。
 驚愕に顔をゆがませると、声を震わせ言ってきた。
「まさか・・・・・・ほかに好きな人が・・・・・・!?」
「断じてないっ!!」
「じゃあ、いったいどんな予定があるんですか!?」
 フィリアが、涙を目に浮かべて言った。
 もうだめだ、と覚悟を決めて・・・ヴァルは言った。
「実は・・・俺・・・・・・サンタなんだ」
「・・・・・・・・・・・・は?」
 フィリアは目を丸くした。

 それが昨日のことだった。
 そして、今日。
 12月24日夕方・・・クリスマスイブの日。ちなみに言うと、クリスマスイブってのは24日の夜だけを指す。
「まさか・・・まさか、ヴァルが宇宙人だったなんて・・・・・・」
 フィリアは自室で一人、何か膨大な勘違いをしていた。
「あまつさえ24日の真夜中に、子供のいる家庭に不法侵入をして、謎の物体を置き去りにしていくなんてっ・・・・・・!」
 それ、もうサンタじゃないだろ。
 そんなツッコミを入れる者は誰も無く、彼女は枕を抱えてうずくまる。
「私はこれからいったいどうすればいいのーっ!? もうお嫁にいけないーっ!!」
 何故に?
 もちろん、そんなツッコミを入れる者は以下略。
 彼女は首を振りながら、枕を壁に投げつける。
 どがしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
 彼女の細身(?)な外見からはいっさい感じられない、馬鹿力的な大音響が響く。
「もう・・・・・・もう、あんな人のことは忘れよ・・・・・・」
 フィリアはとうとう呟き、立ち上がった。
「彼女いない人狙いのボーイハントに行きましょっ!」
 一生の内に何度言ったことか、とてつもなく似合わないことを口にした。
 どうなることやら・・・・・・相手の男性・・・。

(失敗した・・・・・・)
 フィリアは心底、そう呟いた。
 この、これからクリスマスイブと言うときに町の広場に来ても、彼女居ない悲しい殿方が居るはずもなく・・・・・・。
 フィリアは、嫌と言うほどカップルたちのいちゃいちゃ(?)を見せつけられるハメになる。
 それに、商店街の中心で、さらに駅前という絶好の場所に位置するこの公園には、カップルのほかに、サンタやらトナカイやらの着ぐるみをまとった客引き連中のうるさい声が、フィリアを包み込む。
 気分は最悪。あたりは最高。これほどまでに、惨めな思いをしたことは・・・・・・無いとは言わないけど・・・・・・・・・・・・。
 もう、どこか誰も居ないところに行きたい・・・。
 本当なら、昨日(フィリアが一人で)たてたプラン通りで行くと今頃、フィリアはヴァルと一緒に綺麗な夜景の見えるレストランで優雅な食事をしているはずなのに・・・・・・。
 何故自分はヴァルとつきあっているのだろう、とフィリアは思う。
 結局、どこか根が似ているらしい。頑固で、勘違いが多くて、そして・・・互いを大切に思っている。
 けれども。
 二人の間に立ちふさがる、人間と宇宙人という種族の壁!!(嘘)
「今日という日は・・・・・・」
 フィリアは、広場の真ん中に目をやる。
 巨大な、綺麗に飾られたクリスマスツリー。
「永遠に一度しかないんですよ・・・・・・」
 誰ともなし、呟くしかできなかった。

(結局、私は・・・ヴァルが居ないと、何もできない)
 フィリアは動けずに、ずっとツリーを見つめていた。
(一人で居ることすらできない・・・・・・)
 あたりはだんだんと暗くなっていく。
 そして、日は沈む。
 すると、ツリーについた電灯が、一斉に明るくついた。
「・・・!」
 それに、フィリアは思わずとも見入ってしまった。
 まるで蛍のような明かり。
 一つ一つは、小さな小さな光にしかすぎない。
 けれど、たくさん集まることにより、見事にその樹を飾り立てている。
 フィリアは、目の前の電灯に視線を寄せた。
 寄り添うような、二つつながった明かり。
 自分と、彼。
(・・・・・・聞きたい)
 どこかで、ずっと思っていたこと。
 今なら、やっと表に出せる。
「貴方の声が聞きたい・・・!」
 フィリアは駆け出した。
 ヴァルの家へ。

 ピンポーン♪
 マンションの一室のドアベルを鳴らす。
 けれども、インターホンからは何の返事もない。
「やっぱり、居ないんでしょうか・・・」
 夜中の12時でもないのに何をしているのやら、少し考えつつ、フィリアは呟く。
「居なければ、捜すまでです!」
 明るく、フィリアは言った。
 絶対に、今日中にもう一度彼に会う。
 マンションを飛び出て、フィリアは走った。
 あてはない。ただ、思いつく限りの場所に行く。
 初めて彼と一緒に行った場所。大好きだといった池。お金はないけど、二人で出し合って買ったハンバーガーを食べた店。
 想い出ならたくさんある。
 ただ、この場に足りないもの。
 ────ヴァル自身。
「・・・っ!」
 あの広場に再びたどり着いたとき、フィリアは街路樹に足をぶつけて転んでしまった。
 足はくたくたで、もう立ち上がりたくない。
「・・・・・・ヴァル・・・・・・」
 涙がにじんでくる。
 なんで、自分はここに居るんだろう・・・・・・?
「お嬢さん」
「・・・!?」
 どこかで聞いたことのある言葉。
 顔を上げると、そこにはサンタクロースの顔・・・・・・。
 サンタの格好をした、どこぞの店の人だった。
「大丈夫?」
「・・・はい・・・・・・」
 手を貸され、フィリアは立ち上がった。
 昔のことを思い出す。
 そう、ヴァルと初めて会ったときのこと。
 あのときもフィリアは転んで倒れていて、ヴァルが助けてくれた。
「どうしたのさ、こんなところで? こんな美人さんなのに、彼氏も居ないで町で一人居てさ?」
「・・・・・・その彼を捜しているんです・・・・・・」
 なんだか懐かしい感じのする声に、フィリアはうち明けた。
「私・・・クリスマスイブにどうやって過ごそうかずっと考えていて、楽しみにしていたのに、彼、用事があるって言って・・・彼、自分はサンタだって言って・・・・・・。私、もうばっくれてボーイハントに来たんですけど・・・・・・」
「けど?」
「・・・・・・・・・・・・」
 言っていいものかちょっと考えつつ、フィリアは口を開いた。
「・・・やっぱり・・・・・・彼が居ないと、私・・・・・・」
 これ以上は言えない。
 フィリアは口を閉じる。
 目から、あついものが零れる。
「その・・・彼ってさ」
 サンタの格好のその人は、言って頭をつかんだ。
「こんな顔じゃないか?」
 そのまま引っ張る。
 ありがち、と言えばありがち。
 でも、驚きと悲しさと嬉しさは、ほかの何者にもかなわない。
「・・・ヴァルっ!?」
 サンタの客引きは・・・・・・
 ヴァルだった。
「なんでっ・・・貴方、宇宙人で不法侵入して爆発物所有じゃ!?」
「・・・何の話なんだかさっぱりわからねぇんだけど・・・・・・」
 サンタの格好のまま、サンタの頭を小脇に抱えて、ヴァルはもう片方の腕で自分の頭をかいた。
「その・・・なんだ・・・イブ一緒に過ごせないって言ったこと・・・それにちゃんと説明しなかったこと・・・悪かったって思ってる。ずっとそれしか考えてなかったから・・・・・・」
 ヴァルが、謝りなれていない様子で、けれど精一杯思いを伝える。
「バイト先のオーナーがさ、根性ひねくれてて・・・バイト代払うの24日だなんて言ってきてさ。俺、この金もらって、フィリアにプレゼント買って・・・それから、お前のこと迎えに行こうと思っていたんだ」
「なんでそう言ってくれなかったんですか!?」
 ヴァルの言葉に、フィリアが涙を流しながら言った。
 手袋をつけてふかふかな手をフィリアの頭の上に置いて、ヴァルはとまどった顔で言葉を続けた。
「そりゃ・・・秘密にしてフィリアをびっくりさせたかったし・・・それに、こんなバイトしてるなんて恥ずかしくて言えないしさ」
「そんなこと・・・・・・」
 フィリアが、恥ずかしさと嬉しさとわずかな怒りが入り乱れた顔で、ヴァルを見た。
「自慢になって、良いじゃないですか。私の彼はサンタクロースなんだ、って」
「そ・・・そうかぁ?」
「そうです!」
 フィリアは力一杯、そう言った。
「でも・・・よかった・・・貴方が人間で」
「・・・え・・・??」
「ところで、いつバイト代がもらえるんですか?」
 フィリアの言葉に、少し混乱モードでヴァルは答えた。
「あと・・・1時間くらいだと・・・」
「じゃあ、それまで待ってます。ここで」
 フィリアは微笑んで、ヴァルに言った。
 その時こそ、きっと笑顔で言えるから。

「Merry Christmas!」


__________________________________


 あと半年ほどしてから投稿した方が良いよねぇ、この話(笑)
 まさか、夏にクリスマスネタをやるとは思っても居ませんでした。こりゃ愉快愉快(マテ)
 この話は、ラストが結構好きでした。だってサンタなんだもん♪(笑)
 ではではっ、扇でしたっ! もしかしたらヴァルフィリ新作書くかもなので、これからもよろしくです☆

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15867入会したいにょん♪風林みつき 6/9-15:48
記事番号15861へのコメント

葵楓 扇さんは No.15861「時間稼ぎヴァルフィリ再掲示&某向上委員会について」で書きました。
>
>
> こんにちは。忘れた頃にやってくる、その名もハニー・葵楓扇(マテ)
> お久しぶりです。みなさん、私のこと忘れてくれましたか?(をひ)
全然v
最近、見かけなかったから心配してたさねよー・・・・よよよよよよよ。

> 今、知ってる方も多いでしょうが、HP作ってます。受験生なのに。テスト近いのに。
頑張って!

> なので、しばらくの間だけ(夏休み手前くらいまで)ちょっと小説をお休みして(たまに書きますが)それまで再掲示に時間を潰そう、と計画立てました。
> ごめんねみんな☆(マテ)まぁ、HP完成したらどーせ小説書くけど・・・。
待ってるさねよ。

> 今回は、ヴァルフィリシリーズを再掲示させていただきます。
ヴァルフィリv
読んだことあるの『空には満天(何故略す?)』しかないや・・・。

> それは、立派な理由があるのですが・・・
>
> 知る人ぞ知る、某ヴァルフィリ向上委員会。
> 現在製作中HPに、これの名簿を書こうとしたのですが・・・
ほうほう。さねさね。

> 『正式に今も委員会に入ってる人って一体何人居るんだ!!?』
> これが不安になってしまったんですよねー。基本のメンバーは、ほとんど最近【書き殴り】に来てない方ばかりですし。
> それなので、今この場を利用して、入会者確認と入会希望者を募らせていただきます。
> 入会したいにょん♪という方は連絡下さい。オフ会もないしメールも送らないし、楽だと思うんですけどねー?
入会したいにょん♪

> ちなみに、初期の状態を守るというわけかどうかワケ不明の約束によって、入会条件は「ヴァルフィリ小説or絵を最低一つ作成する」です。すでに書いたことのある方はそれでOK。送り先は【書き殴り】で良いので。
イラストの方は最近『送りたいさねー』とか思ってた所なのでいいとして、小説・・・大丈夫かなぁ・・・。
とりあえず頑張るさねよ。

> さてさて、連絡も終わったし・・・
> 再掲示いきまーす♪
読ませてもらうさねよー☆

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15869早いねぇ♪葵楓 扇 6/9-16:12
記事番号15867へのコメント

風林みつきさんは No.15867「入会したいにょん♪」で書きました。

>> こんにちは。忘れた頃にやってくる、その名もハニー・葵楓扇(マテ)
>> お久しぶりです。みなさん、私のこと忘れてくれましたか?(をひ)
>全然v
>最近、見かけなかったから心配してたさねよー・・・・よよよよよよよ。
 おひさしっすー☆

>> 今、知ってる方も多いでしょうが、HP作ってます。受験生なのに。テスト近いのに。
>頑張って!
 頑張るさね〜。

>> なので、しばらくの間だけ(夏休み手前くらいまで)ちょっと小説をお休みして(たまに書きますが)それまで再掲示に時間を潰そう、と計画立てました。
>> ごめんねみんな☆(マテ)まぁ、HP完成したらどーせ小説書くけど・・・。
>待ってるさねよ。
 たのむさね。

>> 今回は、ヴァルフィリシリーズを再掲示させていただきます。
>ヴァルフィリv
>読んだことあるの『空には満天(何故略す?)』しかないや・・・。
 まぁ、一年近いし・・・

>> それは、立派な理由があるのですが・・・
>>
>> 知る人ぞ知る、某ヴァルフィリ向上委員会。
>> 現在製作中HPに、これの名簿を書こうとしたのですが・・・
>ほうほう。さねさね。
 ねねねねね。

>> 『正式に今も委員会に入ってる人って一体何人居るんだ!!?』
>> これが不安になってしまったんですよねー。基本のメンバーは、ほとんど最近【書き殴り】に来てない方ばかりですし。
>> それなので、今この場を利用して、入会者確認と入会希望者を募らせていただきます。
>> 入会したいにょん♪という方は連絡下さい。オフ会もないしメールも送らないし、楽だと思うんですけどねー?
>入会したいにょん♪
 じゃあ、肩書き考えてちょん♪

>> ちなみに、初期の状態を守るというわけかどうかワケ不明の約束によって、入会条件は「ヴァルフィリ小説or絵を最低一つ作成する」です。すでに書いたことのある方はそれでOK。送り先は【書き殴り】で良いので。
>イラストの方は最近『送りたいさねー』とか思ってた所なのでいいとして、小説・・・大丈夫かなぁ・・・。
>とりあえず頑張るさねよ。
 てきとーで平気さね。
 マイHPが完成したら、そっちにも載せさせて欲しいさね。

>> さてさて、連絡も終わったし・・・
>> 再掲示いきまーす♪
>読ませてもらうさねよー☆
 れっつごー☆

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15877肩書き〜☆風林みつき 6/10-01:07
記事番号15869へのコメント

葵楓 扇さんは No.15869「早いねぇ♪」で書きました。
>
>風林みつきさんは No.15867「入会したいにょん♪」で書きました。
>
>>> こんにちは。忘れた頃にやってくる、その名もハニー・葵楓扇(マテ)
>>> お久しぶりです。みなさん、私のこと忘れてくれましたか?(をひ)
>>全然v
>>最近、見かけなかったから心配してたさねよー・・・・よよよよよよよ。
> おひさしっすー☆
すー☆
さっきチャットやったら緊張しすぎてお腹壊しちゃったさね・・・。

>>> 今、知ってる方も多いでしょうが、HP作ってます。受験生なのに。テスト近いのに。
>>頑張って!
> 頑張るさね〜。
おーえんしてるさねよー。

>>> なので、しばらくの間だけ(夏休み手前くらいまで)ちょっと小説をお休みして(たまに書きますが)それまで再掲示に時間を潰そう、と計画立てました。
>>> ごめんねみんな☆(マテ)まぁ、HP完成したらどーせ小説書くけど・・・。
>>待ってるさねよ。
> たのむさね。
たのまれるさね。

>>> 今回は、ヴァルフィリシリーズを再掲示させていただきます。
>>ヴァルフィリv
>>読んだことあるの『空には満天(何故略す?)』しかないや・・・。
> まぁ、一年近いし・・・
うむ。

>>> それは、立派な理由があるのですが・・・
>>>
>>> 知る人ぞ知る、某ヴァルフィリ向上委員会。
>>> 現在製作中HPに、これの名簿を書こうとしたのですが・・・
>>ほうほう。さねさね。
> ねねねねね。
さささささ。

>>> 『正式に今も委員会に入ってる人って一体何人居るんだ!!?』
>>> これが不安になってしまったんですよねー。基本のメンバーは、ほとんど最近【書き殴り】に来てない方ばかりですし。
>>> それなので、今この場を利用して、入会者確認と入会希望者を募らせていただきます。
>>> 入会したいにょん♪という方は連絡下さい。オフ会もないしメールも送らないし、楽だと思うんですけどねー?
>>入会したいにょん♪
> じゃあ、肩書き考えてちょん♪
んっと、『委員会専属お茶くみ係』って有りさねか?

>>> ちなみに、初期の状態を守るというわけかどうかワケ不明の約束によって、入会条件は「ヴァルフィリ小説or絵を最低一つ作成する」です。すでに書いたことのある方はそれでOK。送り先は【書き殴り】で良いので。
>>イラストの方は最近『送りたいさねー』とか思ってた所なのでいいとして、小説・・・大丈夫かなぁ・・・。
>>とりあえず頑張るさねよ。
> てきとーで平気さね。
> マイHPが完成したら、そっちにも載せさせて欲しいさね。
んぎょっ!?
そーいえば、あたしって、『せんちゃん☆ふぁんくらびゅ』の会長なんだけど、入れるさねか?
さらに、そーいえば、ふぁんくらびゅの本格的な活動を始めるべく、近々お知らせがあるさねよ。心して待つよーに(微違)。

>>> さてさて、連絡も終わったし・・・
>>> 再掲示いきまーす♪
>>読ませてもらうさねよー☆
> れっつごー☆
ではでは、れっつらごー☆

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15879茶ぁ組め!Σd(>▽<)葵楓 扇 6/10-01:46
記事番号15877へのコメント

風林みつきさんは No.15877「肩書き〜☆」で書きました。

>>>> こんにちは。忘れた頃にやってくる、その名もハニー・葵楓扇(マテ)
>>>> お久しぶりです。みなさん、私のこと忘れてくれましたか?(をひ)
>>>全然v
>>>最近、見かけなかったから心配してたさねよー・・・・よよよよよよよ。
>> おひさしっすー☆
>すー☆
>さっきチャットやったら緊張しすぎてお腹壊しちゃったさね・・・。
 すー☆
 おなか、だいじょび? 私は眠いよ・・・(笑)

>>>> 今、知ってる方も多いでしょうが、HP作ってます。受験生なのに。テスト近いのに。
>>>頑張って!
>> 頑張るさね〜。
>おーえんしてるさねよー。
 ありがたうー。

>>>> なので、しばらくの間だけ(夏休み手前くらいまで)ちょっと小説をお休みして(たまに書きますが)それまで再掲示に時間を潰そう、と計画立てました。
>>>> ごめんねみんな☆(マテ)まぁ、HP完成したらどーせ小説書くけど・・・。
>>>待ってるさねよ。
>> たのむさね。
>たのまれるさね。
 うみゅ。

>>>> 今回は、ヴァルフィリシリーズを再掲示させていただきます。
>>>ヴァルフィリv
>>>読んだことあるの『空には満天(何故略す?)』しかないや・・・。
>> まぁ、一年近いし・・・
>うむ。
 むむむむ。

>>>> それは、立派な理由があるのですが・・・
>>>>
>>>> 知る人ぞ知る、某ヴァルフィリ向上委員会。
>>>> 現在製作中HPに、これの名簿を書こうとしたのですが・・・
>>>ほうほう。さねさね。
>> ねねねねね。
>さささささ。
 ねねねねねねねねね。

>>>> 『正式に今も委員会に入ってる人って一体何人居るんだ!!?』
>>>> これが不安になってしまったんですよねー。基本のメンバーは、ほとんど最近【書き殴り】に来てない方ばかりですし。
>>>> それなので、今この場を利用して、入会者確認と入会希望者を募らせていただきます。
>>>> 入会したいにょん♪という方は連絡下さい。オフ会もないしメールも送らないし、楽だと思うんですけどねー?
>>>入会したいにょん♪
>> じゃあ、肩書き考えてちょん♪
>んっと、『委員会専属お茶くみ係』って有りさねか?
 おぅっ! お茶くみ係了解さねっ!

>>>> ちなみに、初期の状態を守るというわけかどうかワケ不明の約束によって、入会条件は「ヴァルフィリ小説or絵を最低一つ作成する」です。すでに書いたことのある方はそれでOK。送り先は【書き殴り】で良いので。
>>>イラストの方は最近『送りたいさねー』とか思ってた所なのでいいとして、小説・・・大丈夫かなぁ・・・。
>>>とりあえず頑張るさねよ。
>> てきとーで平気さね。
>> マイHPが完成したら、そっちにも載せさせて欲しいさね。
>んぎょっ!?
>そーいえば、あたしって、『せんちゃん☆ふぁんくらびゅ』の会長なんだけど、入れるさねか?
>さらに、そーいえば、ふぁんくらびゅの本格的な活動を始めるべく、近々お知らせがあるさねよ。心して待つよーに(微違)。
 入れますよ。けど・・・一体・・・(笑)<ふぁんくらびゅ
 お知らせ? なにかにゃ〜♪

>>>> さてさて、連絡も終わったし・・・
>>>> 再掲示いきまーす♪
>>>読ませてもらうさねよー☆
>> れっつごー☆
>ではでは、れっつらごー☆
 ではでは〜♪

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15868入会について付け足し葵楓 扇 6/9-16:10
記事番号15861へのコメント


 ヴァルフィリ向上委員会に入会したい方へ。
 肩書きも考えて置いてください(笑)

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15870発掘してきた(笑)未完成(続・再掲示)葵楓 扇 6/9-17:11
記事番号15861へのコメント


 こんにちは、扇です。
 いろいろと過去ログあさりしていたら、あらまぁ! ヴァルフィリ、まだ『未完成』が残っていたじゃありませんか。
 さっそく再掲示です。「うた」という漢字が微妙に通常とは違う物を使っていますが、気にしちゃダメ☆

__________________________________


  『未完成 〜A Reminiscence〜』


      ──昔、そこには森があった──
    ──世に生を受けし者が共に生きる森──
     ──そこには、何の苦しみもない──
        ──何の争いもない──
    ──誰も傷つけない、傷つくことがない──
         ──永遠の楽園──


 よく通る、澄んだ声が響きわたる。
 神に祝福された歌声。
 そう呼ばれたこともあった、歌声。
 その声は、ただ謳(うた)っていた。
 すべてを浄化し、癒すように。
 すべてを忘れられるように。
 だが、その声も、長くは続かない。
 血にまみれた、汚れた歴史。
 皆が望む永遠の楽園は遠い。
 誰も傷つけない、傷つくことがない楽園・・・・・・

 その声が、突然途絶えた。
 観客である彼女・・・・・・フィリアが歩み寄ってきた。
「どうしたんですか、ヴァル? のどの調子でも悪いんですか?」
「いや、別に・・・」
「じゃあ、どうして謳をやめたんですか?」
 彼女は、どうしても歌の続きが聞きたいようだ。
 ここで妙にはぐらかしても、意味がない。
 謳うたいの彼・・・・・・ヴァルは、そのことをわかっていた。
 だから、正直に答えてやる。
「この謳は、未完成なのさ」
「未完成?」
「そう。作りかけで、放棄された謳さ」
 なんども、いろんな人にした説明を、繰り返す。
「どうして放棄なんかされちゃったんですか」
「作曲家が死んだのさ」
「何故?」
 できれば聞かないでほしかった質問をされる。
 もし答えたら、彼女は傷つく。
 だが、教えないではぐらかしても傷つく。
 ──・・・難しい女だ・・・。
 ヴァルは、何かあっても彼女のせい、ということで答えてやった。
「黄金竜に殺されたのさ」
「・・・・・・!?」
「この謳の作曲家は、古代竜だったのさ」
「そんな・・・」
 やっぱり。
 彼女は黙ってしまった。
 今更後悔しても、もう遅い。
 彼女の思い出・・・記憶に記録された事実は、もう消えない。
 こんな思い出、持っていない方がいいのに・・・
 思い出を忘れることはできない。
 だが・・・ほかの良い思い出で、埋もれさせることはできる。
「謳の続きが無いんなら・・・」
 彼が、精一杯明るく、ささやくように言った。
「・・・?」
 彼女が顔を上げる。
「続きが無いんなら、作ってしまえばいいんだ」
「・・・は?」
 フィリアは、なにがなんだかわからないとばかりに、惚けた顔をしてヴァルを見つめる。
 だが、そのときにはもうヴァルはノートとペンを持ってきていた。
 謳を謳うのが得意な彼は、作曲も得意だった。
「完成した方が、謳も喜ぶだろ?」
 そう言って、微笑んでみせる。
 最近よく見せる、優しい微笑みだった。
 つられて、フィリアの顔もほころぶ。
「完成した方が、きっと作曲家も喜ぶ」
 たとえその結末が、誰も予想していないものだとしても。
 もしかしたら、作曲家が全然考えつかなかったような謳になるかもしれない。
 けれど、この謳ができることにより、幸せになる者がいる。
 少なくとも、一人はいる。
 彼の前にいる彼女なら、この謳ができることにより、幸せになるに違いない。
 きっとそうだ。
「ここは・・・こんな感じがいいかな」
 頭をひねり、一生懸命考える。
 こうやって考えることも、良い思い出の一つだ。
 きっと、こうやって思い出はできていく。

 ──思い出を作るのは簡単なことだ。
 ──謳を作ることと、大差はない。
 ──思い出も、謳も、未完成のままではいけない。
 ──いつか、完成させるために・・・
 ──小さな幸せが、たくさんできれば・・・
 ──楽園は見えてくるはずだから・・・

__________________________________


 予想通り、短いですわね。でもこれ、雰囲気がわりと好きです。水色、って漢字で。
 ちなみに、これの『注意事項』は脳内出血でした。
 これは著者別に登録していないので、過去記事から探してみてください。ロココ時代の小説で、一年か二年くらい前の物です。
 ではでは、また来るかもです☆

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15884再掲示の感想…風見霊 E-mail 6/10-05:47
記事番号15861へのコメント

葵楓 扇さんは No.15861「時間稼ぎヴァルフィリ再掲示&某向上委員会について」で書きました。
>
>
> こんにちは。忘れた頃にやってくる、その名もハニー・葵楓扇(マテ)
> お久しぶりです。みなさん、私のこと忘れてくれましたか?(をひ)
えぅ…忘れるわけ無いじゃないですか
> 今、知ってる方も多いでしょうが、HP作ってます。受験生なのに。テスト近いのに。
それでも休まないのは…よほど自信でもあるのかな?
HPか…できたら教えてね
> なので、しばらくの間だけ(夏休み手前くらいまで)ちょっと小説をお休みして(たまに書きますが)それまで再掲示に時間を潰そう、と計画立てました。
夏休み手前で受験(呪剣←一発変換)関係が終わるのは…大学?
> ごめんねみんな☆(マテ)まぁ、HP完成したらどーせ小説書くけど・・・。
HPの小説も楽しみにします
>
> 今回は、ヴァルフィリシリーズを再掲示させていただきます。
> それは、立派な理由があるのですが・・・
理由…
>
> 知る人ぞ知る、某ヴァルフィリ向上委員会。
……(←知らなかった)
………組織好き?もしかして
> 現在製作中HPに、これの名簿を書こうとしたのですが・・・
> 『正式に今も委員会に入ってる人って一体何人居るんだ!!?』
ふむ…規模が結構でかいんですねぇ
> これが不安になってしまったんですよねー。基本のメンバーは、ほとんど最近【書き殴り】に来てない方ばかりですし。
> それなので、今この場を利用して、入会者確認と入会希望者を募らせていただきます。
> 入会したいにょん♪という方は連絡下さい。オフ会もないしメールも送らないし、楽だと思うんですけどねー?
その口調でキャッチセールスを思い出してしまった…
> ちなみに、初期の状態を守るというわけかどうかワケ不明の約束によって、入会条件は「ヴァルフィリ小説or絵を最低一つ作成する」です。すでに書いたことのある方はそれでOK。送り先は【書き殴り】で良いので。
入会条件満たせないじゃん…
お絵かきできない…
小説は文才が無い…
なによりヴァルフィリよりゼロフィリ(それはマテ!)
>
> さてさて、連絡も終わったし・・・
> 再掲示いきまーす♪
再掲示見ました
お気に入りは「未完成」
他のもよかったんですが…
自分が結局詩や歌が好きなもので…
後は…「思いで」の単語にひかれてしまったのです
あのころは………フッ
いいですねぇ小説って…
これ以上書くと脱線してしまいそうなのでもう終わらせていただきます
また今度ゆっくり会えることを願って…

夜には…君のことを思い出す。色々と語り合い,そして別れていくいつもの日々を
朝になると…今日も会えるかと楽しみになる。また色々と語り合えるかと,楽しみになる
今日も会えるだろうか…明日は会えるだろうか…その事を考えてしまう
いつか,会えることを願って…一日が過ぎていく…
                                       K’s
それでは失礼します。道化師でした

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15886風ちゃんの悪魔〜ッ(マテ)葵楓 扇 6/10-14:57
記事番号15884へのコメント

風見霊さんは No.15884「再掲示の感想…」で書きました。

>> こんにちは。忘れた頃にやってくる、その名もハニー・葵楓扇(マテ)
>> お久しぶりです。みなさん、私のこと忘れてくれましたか?(をひ)
>えぅ…忘れるわけ無いじゃないですか
 最近もすれ違ってばかりですけどね・・・(遠い目)

>> 今、知ってる方も多いでしょうが、HP作ってます。受験生なのに。テスト近いのに。
>それでも休まないのは…よほど自信でもあるのかな?
>HPか…できたら教えてね
 自信はないです。
 でも、テスト如きに休みたくないので(マテ)

>> なので、しばらくの間だけ(夏休み手前くらいまで)ちょっと小説をお休みして(たまに書きますが)それまで再掲示に時間を潰そう、と計画立てました。
>夏休み手前で受験(呪剣←一発変換)関係が終わるのは…大学?
 秘密です。

>> ごめんねみんな☆(マテ)まぁ、HP完成したらどーせ小説書くけど・・・。
>HPの小説も楽しみにします
 ありがたうです。

>> 今回は、ヴァルフィリシリーズを再掲示させていただきます。
>> それは、立派な理由があるのですが・・・
>理由…
 以下の物です。

>> 知る人ぞ知る、某ヴァルフィリ向上委員会。
>……(←知らなかった)
>………組織好き?もしかして
 いや・・・ヴァルフィリ向上委員会をまず作ったのは、ささはら様という方でして。
 で、その方に会長にさせられた、と(マテ)

>> 現在製作中HPに、これの名簿を書こうとしたのですが・・・
>> 『正式に今も委員会に入ってる人って一体何人居るんだ!!?』
>ふむ…規模が結構でかいんですねぇ
 いや・・・ただ、口約束的の方が多いので。

>> これが不安になってしまったんですよねー。基本のメンバーは、ほとんど最近【書き殴り】に来てない方ばかりですし。
>> それなので、今この場を利用して、入会者確認と入会希望者を募らせていただきます。
>> 入会したいにょん♪という方は連絡下さい。オフ会もないしメールも送らないし、楽だと思うんですけどねー?
>その口調でキャッチセールスを思い出してしまった…
 ・・・何故?

>> ちなみに、初期の状態を守るというわけかどうかワケ不明の約束によって、入会条件は「ヴァルフィリ小説or絵を最低一つ作成する」です。すでに書いたことのある方はそれでOK。送り先は【書き殴り】で良いので。
>入会条件満たせないじゃん…
>お絵かきできない…
>小説は文才が無い…
>なによりヴァルフィリよりゼロフィリ(それはマテ!)
 悪魔め〜〜〜〜〜ッ!!(マテ)

>> さてさて、連絡も終わったし・・・
>> 再掲示いきまーす♪
>再掲示見ました
>お気に入りは「未完成」
>他のもよかったんですが…
>自分が結局詩や歌が好きなもので…
>後は…「思いで」の単語にひかれてしまったのです
>あのころは………フッ
>いいですねぇ小説って…
 遠い目をしないで・・・(笑)
 再掲示読破ありがたう♪

>これ以上書くと脱線してしまいそうなのでもう終わらせていただきます
>また今度ゆっくり会えることを願って…
 これからかぼちゃっと行きます。会えると良いね・・・

>夜には…君のことを思い出す。色々と語り合い,そして別れていくいつもの日々を
>朝になると…今日も会えるかと楽しみになる。また色々と語り合えるかと,楽しみになる
>今日も会えるだろうか…明日は会えるだろうか…その事を考えてしまう
>いつか,会えることを願って…一日が過ぎていく…
>                                       K’s
 詩人だねぇ・・・(爆)

>それでは失礼します。道化師でした
 んではでは。