◆−歌の精霊たちの都市6−みー(8/18-10:20)No.16617
16617 | 歌の精霊たちの都市6 | みー | 8/18-10:20 |
反射的に入り口のほうを振り返って、あたしは思わず言葉を失った。 そこにいたのは、あたしより少し年下の少女だった。 透き通るような長い銀の髪に、透明で大きくパッチリとした緑の瞳。やや童顔で、十分すぎるほど美少女といえる顔立ち。着ているのは白を基調としたローブと、ほとんど白ずくめだ。 今日二回目の表記だが、見とれてのことではない。今回もまた、見知った顔だった。 「・・・マナ?」 あたしは呆然と呟いた。 「そうだよ。お久しぶり、リナお姉ちゃん」 こちらの席に歩み寄ってきた彼女―マナは、にぱっと笑って答えた。 「・・・なんか、あんたまで来てたなんて意外ねえ・・・」 食後の香茶をすすりつつ、あたしは目の前の席に腰掛けたマナに向っていった。 ガウリイとの食事合戦もおえ、ようやくひと段落ついたところである。それまで待ってもらっていたせいか、彼女の表情にやや疲れの色が見えた。 「ほとんど無理言ってついてきたから。この街、一度来てみたかったんだ」 「ま、あんたに頼まれたら先生も断りきれないところもあるでしょーね。 ・・・あ、紹介しとくわね。さっきのラディウス先生の弟子で、魔道士としてはあたしの先輩の・・・」 「マナです。よろしく」 ほんわりした笑顔を浮かべて会釈するマナ。 「で、たぶん先生から聞いてると思うけどあたしの旅の連れの、ガウリイ、ゼル、アメリア、おまけのゼロスよ」 もはや説明すらなしである。みんなの何かいいたげな表情は無視。 「うん。師父から聞いてきた。お姉ちゃんに春がきたとか何とか喜んでたけど」 そりゃ、からかうねネタが出来たと喜んでたんだろう。 「マーナぁ? 頼むからその話はやめてちょーだい」 「なんで? いいことだと思うけど・・・」 あたしの言葉のうちの険悪なものにまったく気づかず、きょとんと首を傾げて見せる。・・・悪気がない分、ねーちゃんや先生よりたちが悪いと言えなくもない。 「結婚とか妊娠といえばねえ、南の町長さんの奥さんも、もうすぐ赤ちゃん生まれるらしいよ」 「だから、ねーちゃんの手紙の話題から離れろって・・・そーなの?」 「うん。このまえ師父と一緒に、南の町長のデトラさんに会いにいったの。奥さん―ミネアさんっていうんだけどね―とも話してきたんだ。 最近選挙の影響からか街の空気がちょっとぎすぎすしてて・・・デトラさんも困ってるみたい。聞いた話じゃ、盛り上がってるのはどっちかっていうと本人たちより周りって感じだし」 「ふーん・・・ ね、マナ。ひょっとしてあんた、町長の屋敷にフリーパス?」 「んー、そこまでじゃないけど、話くらいはできると思うよ」 おし、ラッキー! 「じゃあ、明日ちょっとつきあってもらえる? 町長と話するのに、取り次いでもらえれば話がスムーズにいきそうだから」 「うん。いいよ。もともとそうするつもりで手伝いに来たんだから」 「・・・? どういうことだ?」 今まで黙っていたゼルが口をはさむ。その視線を正面から受け、しかしまったく動じずにマナは答えた。 「こんな騒ぎ、早く終わってほしいもん。師父は立場上、あまりおおっぴらに動けないから、かわりにボクができる範囲ならなんでもやるよ。そうしないと、お祭りみれそうにないし、ストレスはミネアさんの体に悪いし、街の空気が悪いまんまだし・・・とにかく、早く解決してほしいの。お姉ちゃんなら、トラブルを引き寄せて事態をひっくり返す天才だから、円満解決になるかはともかくとして、まあなんとかなるんじゃないかなーって・・・師父が言ってた」 「・・・いーのか? そんなにいーかげんなこと期待してて・・・」 「いや、ボクも間違いじゃないかなーって納得しちゃって」 「・・・ま、いーわよ、もう。 ところで、さっきいってた祭り・・・ってなんのこと?」 あたしの問いに、マナはにっこりと笑って、 「お姉ちゃん、この街のシレークの意味知ってる?」 「は?」 「古代のエルフの言葉で、歌っていうらしいよ。歌の都って感じかな。その名のように、一年に一度、みんなで昔から伝わる歌を歌い、踊って、神様に祈りをささげるって儀式をするお祭りだよ」 「へえ・・・」 「で、ほんとは一般の人には内緒なんだけどね」 ここでマナは声をひそめ、 「魔道士協会の、上層部の人だけが、こっそりやる重大な儀式っていうのがあるらしいの。そこで使われるのが、盗まれた魔道書なんだ」 「それって・・・!」 「関係があるのかはわからないけど、それが犯人さんの目的なら、だいぶしぼれると思うの。でも、その儀式が何なのか。それがぜんぜんわかってないんだ。協会の資料にトップシークレットってのってるし」 「なるほど・・・」 古代エルフ、伝説、魔道書、儀式、トップシークレット・・・ パズルのピースはまだ形がばらばらだが、調べる必要はありそうである。 「と、ゆーわけで、ボクも協力するよ。よろしく」 黙って話を聞いていたガウリイたちにむかって、マナは微笑んでいった。 かくて。 あたしたちの探偵パーティが結成されたのだった。(ちょっと違う) どーも、みーです。塾と宿題と合宿とをのりこえ、戻ってまいりました。 これからぼちぼちとやってくつもりですので、よろしくお願いします。 あ、2のほうにも別の小説送ってるので、そっちもよろしく。 では。 |