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16700 | 華物語〜月影の女神である先輩へ〜 | 愛矢 E-mail | 8/22-17:04 |
連作・第一話・・・・。 千堂凪帆(なぎほ)先輩が死んでから、もう何ヶ月経つだろう。いや、もう2年半たった。私は中1の時から剣道をクラブで始めて、凪帆先輩に会った。先輩はそこらへんにいる男子より格好よくて、ファンクラブがつくほど。もっと具体的に言えば、先輩は男よりも女に人気があったんだ。あぁ、でも先輩に会ったのは武道場が最初じゃない。入学式の日に初めてあったんだ。千堂先輩と同じ学年(当時3年生)の男女の先輩7人から、行き成りかつあげされていたとき。私は泣いてしまった。殴られそうになった時、先輩が殴ろうとした人の拳を竹刀で叩き落したのだ。 「じゃかぁしい。新入生に何しさらしとるんじゃ。」 低い声、ショートカット、地毛なのだろうか、綺麗な茶色い髪。そして上下紺色の道着に、剣道の防具。垂れに書いてある名前を見ようとしたけれど、光がまぶしくて見えなかった。 「大丈夫?きぃつけぇよ。」 そういうとそのときは先輩はさっさと帰ってしまった。かつあげしようとした先輩もびびってどこかへ行ってしまい、そのときは名前も知らない先輩に助けられた・・・。そして待ちに待ったクラブ見学。覚えていたのは低い声、ショートカット、上下紺の道着、剣道の防具。そして、逞しい後姿と、少しだけ見えた格好いい笑顔のみ。 「亜貴!あんた剣道部はいって大丈夫なん!?」 親友の碧なんか、このときはどうでもいいくらい興奮していた。武道場を見つけて中に入ると、6人の先輩に囲まれた。その中にあの先輩の姿は全く見えず、落ち込んでいた時。 ガラッ・・・・ 更衣室のドアがあいて、私は目を疑った。あの先輩がいた。そう、あの先輩こそ、いっていた千堂先輩。垂れに”緑陽中・千堂”そう書かれてある。私の足は、ひとりでに立ち上がり、先輩の所へ走っていっていた。 「先輩!」 そう呼ぶと、千堂先輩は振り返り、少し不思議な顔をしたけどすぐに笑ってくれた。そう、助けてくれた時にみた、あの格好いい笑顔。 「あ、あんたこの前の子やぁ。」 間違いない、この人だ!と思った瞬間。私は腕をぐっとつかまれ、もといたいちに引きずり返された。最初にいた、6人の先輩達。 「凪ちゃんには近づいたらあかん!」 そう言って。先輩なのは判っていたけど、なぜかカチンと来た。向こうに居る千堂先輩もかなり切れかけの様子だった。 「何でですか?」 私は睨みを聞かせて先輩を見た。6人の先輩はかなり真剣な顔で話し始めた。私は確か、この内容で6人の先輩に切れたんだ。 「凪ちゃん、いっつも男子とおるの。うちらとは一言も喋らんし、こういう特別な時にもぜぇったい練習するの。めっちゃむかつくって、剣道部の女子の中では嫌われてるの。やで、君も入るんやったらうちらとおった方がいい・・・」 そこまで言ったとき。がっと竹刀が円の中心に叩きつけられた。ぱっと見上げると、千堂先輩!他の先輩とは比べ物にならない格好いい顔で立っていた。 「はよう練習せんかい。阿呆。大会近いぞ。」 それだけいうと、男子の輪の中に入っていった。私、ずっと見ていた。千堂先輩が竹刀を振るところ。速かった。竹刀振りが終ると、先輩と他の男子の先輩は肩を組み、ドツキアイをしながら水を飲みにいった。 「あの。」 知らないうちに私の口は開いていた。 「千堂先輩に憧れて私、剣道部に入りました。偉そうって虐められるかもしれないけど、先輩達のいってること間違ってます。」 で、現実に戻る。先輩に憧れて剣道部に入って、先輩と一緒に練習をした。毎日毎日毎日。先輩は私に凄く良くしてくれて。でも、幸せってそう長くは続かなかった。先輩、死んじゃったんだ。あの衝撃的な出会いから3ヶ月で。交通事故で、死んじゃったんだ。信号無視の車とぶつかって即死だった。次の日は剣道の試合で、先輩なしでは超えられない試合だった・・・・・。亡くなる直前、先輩は私に言った。 「明日、勝つでな〜!」 そう叫んでたのに・・・・・。お葬式は皆泣いていた。先輩の遺影は道着を着て笑っている写真。あの上下紺の道着を着ていて、私が上手くなるたびに見せてくれた、どの男の人よりも格好よくて、学校中の女の人集めても絶対負けないくらいの美人な笑顔で。剣道部の先輩だったという、高校一年生の先輩も来ていて、中に先輩の元彼だという人もいた。お棺の中を見ては、来ていた男子も男子の先輩も、千堂先輩の親友の人も、皆声をあげてないていたんだ。私も崩れてないた。もう、先輩と剣道はできない。元彼だという人は、名前を呼びながらないていた。男子の先輩は 「馬鹿野郎!死ぬなよ馬鹿凪帆!!」 そう絶叫して・・・・・。次の日から、剣道部に男子の先輩は次々と来なくなった。また一人また一人・・・、剣道部に火は消えた。 そしていまだが、私も中三。そう、先輩と同じ年になったのだ。来ている道着は凪帆先輩の物。 「亜貴ちゃん、今度の大会さぁ、凪帆先輩の命日じゃなかった?」 そういわれてみるとそう。先輩の命日と地区大会がかぶっている。先輩が出たくても出れなかった、あの試合。大会の日に先輩は死んだ。あの日に皆が泣いていた。 「あぁ、そうやね。でもさぁ、あれやん、うちらいかれへんやろ?じゃぁ、かたなあかん。先輩にかおあがらへんで。優勝して、トロフィー先輩の仏壇に飾るの。」 それしかできる事はない、とおもった。そして、先輩に捧げるトロフィーをとることができたのだ。 このあと、あの不思議な出来事が起こるとは思わずに・・・・・・・・。 「あれ?剣道部の子?」 先輩の家にいくと、お母さんが出た。口元が先輩とよく似ているのに変りはなかった。トロフィーを見せて、飾ってほしいという事を話すと、お母さんは泣いた。先輩の仏壇の横には、あの遺影が飾ってある。笑顔。先輩のあの笑顔を写真だとはいっても久し振りに見た。 「凪帆先輩・・・・。」 私は今にも泣きそうだった。先輩が喜んでくれているかはわからないけど、先輩に恩返しができたと思ったんだ。先輩の家から帰ってくる途中、大きな神社を通る。まだ明るかったし、私は神社に足を踏み入れる。そのとき、生暖かい風が私の首筋を吹き抜けていった。 「きゃっ!」 思わずあげた声が、近くにあった気の根元に吸い込まれていくではないか。私の気持ちは妙に怖くなっていった。ドキドキする気持ちを抑えて覗き込もうとしたが、恐怖に負けて全力でケッタをこいで帰る事にした。 「なんやってんやろう?あれ。」 寝るが寝るまでその気持ちでいっぱい。あの風・・・・少し先輩の匂いが混じっていた気がしたけど・・・・・・。まぁそんな訳無い、そう思って私は眠りについた・・・。次の日、学校でその風のことと、穴の事を話すと、意外な言葉が帰って来たのだから驚いた!あの穴にはいろいろな噂があるそうだ。一つ目はあの穴に入ると地球の反対側に出てしまう。二つ目は性別が逆になる。三つ目は、私の気持ちを一気に駆り立てた。 「死んじゃったけど、自分の大切な人に会えるんだって。要するに、生きたままあの世にいっちゃうってわけ!」 碧の口調が高ぶっているという事は、この子、本気なのだろう。 「ねぇ、放課後、行かない?あの神社。」 碧の提案はクラス全員を駆り立ててしまった。この子、何言ってるんだか・・・・。 いざ放課後。神社の前に18人集まった。勿論、私は強制連行。 「来たね〜。」 碧はウキウキしながら私の肩をゆする。周りの子達もキャァキャァ言っている。私もそのなかの一員だといえばそうだけど、一つ目の噂も二つ目の噂も私は信じないけど、三つ目は信じている。もしも本当なら、凪帆先輩に会えるから。 「私、二つ目を信じる!」 「俺一つ目!」 「ねぇ、亜貴は?」 そう話題を振られると、なんと言っていいのか(笑)。 「私は三つ目や。」 皆黙った。そして5秒後に笑い出す。こんな事だろうと思った。 「馬鹿か!?」 男子はそう言ったけど私は信じていた。っていうか、この穴から出た風に混じっていた、気のせいかも知れないけど凪帆先輩のにおい。信じる! 「碧、私、穴の中はいる。」 「はぁっ!?」 そう言った直後に私は穴の中に飛び込んだ。真っ暗な中を只管落ちていく。気がつくと、辺りは町。私のすんでいる、あの町。でも、碧も誰も居ない。 「あれ・・・・・?」 不思議な気分だった。夢でも見ているような、そんな感じ。と、そのとき。私の肩に誰かぶつかった。 「あ、ごめんな・・・・」 そこまでいって私は口をつぐんだ。ぶつかったのはなんと、5年前になくなったお隣りのおじいさん!!!目を疑った。おじいさんは私を見て笑った。 「あれ?亜貴ちゃん。何でこんな所に?」 全ての事情を話すと、おじいさんは納得して、ある場所を教えてくれた。この世界の、あの場所。緑陽中ヘ行けといった。そこに凪帆先輩が居るからといって。 走った。ただ全力で。顔は笑っていた。私は本当だった。ここは霊界と繋がっていたんだ!!緑陽中につくと、今更といっていいほど心臓がバクバクする。 先輩、先輩、先輩・・・・・・。 武道場の前に立つと、中から竹刀の音がした。覗き込んだ私は言葉を失う。そして、その人と目があった瞬間、叫んだ。垂れに「緑陽中・千堂」とつけた人と目が合った。気合よりも大きな声で私は叫んだ。 思いっきりなきながら、さけんだ。着ている上下の道着は亡くなった時に着せられた上下白の道着だったけれど、間違いなくあの人。 「凪帆先輩!!!!!!」 |
16718 | 華物語〜月影の女神である先輩へ〜 | 愛矢 E-mail | 8/23-06:02 |
記事番号16700へのコメント 連作・第二話 「凪帆先輩!!!!」 たとえ夢であってもいい。幻でも私は構わない。先輩に会えた、それでいい。 「・・・・亜貴?」 間違いない、先輩の声。あの、格好いいくらいの声。私を誉めてくれたあの・・・大好きだった、先輩の声。女子で一番を名乗った人の・・・・。私の涙は止まらなかった。すでに生きていないといえど、私の心はいっぱいだった。まるで生きていた時のように、肌の色もまるで同じ。 「亜貴、何であんたこんな所に!?なんでこの霊界にいてるんや?」 先輩が走ってきて、私の手を掴んだ。昔の体温がそのまま伝わってきた。先輩は私を見てないていた。そして何より驚いたのは、先輩が鞄らしき物に入れているものだった。・・・・私たちが獲ったトロフィー。 「先輩、トロフィー見てくれましたか?私たち、優勝したんです。」 それを言うだけに苦労するほど涙が出る。会いたかった。二年間、先輩が他界してからずっとずっと会いたかった。先輩と剣道がしたかったのに、できない悔しさも、先輩に話したい。でも今は話せるほどしっかりしていない。 「わかったよ、亜貴。とりあえず武道場はいりぃや。もう、あんたそんな泣いたらあかんっていうてん!」 懐かしい先輩のにおい。いつもいつも、メンズのオーデコロンをつけていた。アクアマリンかムスクの。私はアクアマリンのにおいが好きで、先輩がアクアマリンのコロンをつけているときはもう女同士でもメロメロだというほど。そして今、隣りに居る先輩はアクアマリンの匂いがした。このにおいがすると、凄く落ち着く。誰が付けていても落ちつくというわけじゃないけど、先輩が他界してからは私だって毎日つけていた。いやな事も全部忘れられるにおい。私のなかで特別な。 「神社の木の根元からきたん?」 先輩の声ではっと我に帰った。急いで頷くと、先輩はにぃっと笑って、トロフィーの事を話し始めたのだ。私たちが持ってきたこと、嬉しくて自分も思わず泣いてしまったこと。 「なんかな、あんたが来るって事もわかっとったきぃするんよ。」 静かにそう言って先輩は笑う。私も笑い返した。暫くして、二人一緒にケラケラ笑い出した。武道上の畳の上を二人で転げまわって笑った。なんか不思議だった。こうしている事は夢なのかもしれないのに、妙な現実感がある。もう、ずっとここにいたい。ここにいて、先輩と一緒にいられたらもっといいのに。そう思うけど、きっと無理だろう。 「ここはいいよ。」 私は先輩の方に顔を向けた。 「でも嫌だ。つまらん。」 なんで?私はそう思った。だって、今ここはいいっていったのに。 「誰も居ない。仲の良かった子なんて居ない。なんでかな・・・。もっと生きていたいって思ってたのにね。」 妙な気分に刈られた。次の瞬間、私の口は思いもよらない事を言った。 「私、ずっとここに居ましょうか?」 はっとした。ここに居るって事は、もう私も死ぬって事。でもいいか、と思ったとき。先輩が私の手を掴んでこういった。 「あかん。あんたはここにおったらあかん。死んだらあかん。うちは生きたくても死んだ。剣道の試合に出たいって思うたのに死んだ。めちゃつらかってん・・・。葬式の時の情景もみててんけど、皆泣いてたやろ?あんたも泣いてたやんか。うち、もう誰かが泣く所も、死ぬところも見たくない。うちの分まで生きてほしい。」 私はいいたいことも忘れた。先輩の必死の眼差しに私は言葉をなくしてしまった。先輩に会えた。やっと会えたのに。このまま一緒に居たいのに。 「じゃあ先輩は淋しくないの!!?誰も居ない、誰とも一緒に居ないで!」 「淋しくない。全然淋しくないよ。みんなうちのこころのなかにいてん。せやで、なぁんも淋しくない。大丈夫。あんたはいきな。このままここにおるとほんま死ぬ。はよう帰り、あんたの生きるべき場所へ。」 「でも先輩に会えたのに!」 「いつでも会える。いっつでも会えるよ。あんたが会いたいと願えば、夢に行く。あんたに会いに、先輩行くから。亜貴、強くなってな。先輩の分も、必死に生きて。」 「先輩!」 「亜貴、ばいばい。亜貴、バイバイ」 はっと目が覚めた。すると、真上に碧たちが泣きながらこっちを見下ろしている。思わず笑ってしまった。 「何ないてん?うち、死んだと思うた?」 Vサインをみせると、碧たちは泣き怒り。もう、ホンマ。 〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜 「凪帆!!」 あれから十年。私は一児の母になった。娘で、名前は凪帆。 そう、先輩の名前。 END わけわからん話ですいません(T_T)。 またいろいろ書くので、愛矢の応援宜しく!!! |
16719 | 第2話を移動しました | 一坪 E-mail | 8/23-06:17 |
記事番号16718へのコメント はじめまして一坪です。 えっとタイトル通り『華物語〜月影の女神である先輩へ〜』の第2話を、このツリーに移しました。 その方が分かりやすいと思いますし。 というわけで、あらためて、投稿ありがとうございました! いやーおもしろかったです。 ストーリーがいきなりすごい展開からはじまってて引き込まれました。 あと凪帆先輩がとにかくカッコイイですねー。 では、次回作楽しみにしてます! |