◆−滅びの匂い−庵 瑠嬌 (2001/9/30 23:08:46) No.17315 ┣きゃああああ♪−ねじばな (2001/10/1 22:56:22) No.17331 ┃┗まあああああ♪−庵 瑠嬌 (2001/10/6 00:09:58) No.17412 ┗素敵すてきステキです〜っ!!−高砂時緒 (2001/10/11 23:45:15) NEW No.17497
17315 | 滅びの匂い | 庵 瑠嬌 | 2001/9/30 23:08:46 |
こんにちは、庵 瑠嬌でございます。 はじめましての方が殆どでしょう。実は、二年ほど前は、頻繁に投稿していた者なんです。最近、時間的都合により、時たまロムる一方だったのですけれど。 この話を読んで頂けて、なおかつお気に召して頂けて、更にコメントなど書いて下さったり、著者別作品の方に、ちょっと足を向けて下さったりしたら、この上ない喜びです……。(欲張り←殴) ジャンルで言うならば、ゼラス様、ゼロスさんメインのゼロリナでしょう。 では、どうぞ。 ****** 〈 滅びの匂い 〉 「お前……滅びの匂いがする。」 うつくしき主は、さらりと言って視線を外に流した。 世界の滅びを望むのは魔族。 世界の存続を望むのが神族。 生きることを望むのは人間。 境界線を定めたのは金色の魔王。かのすべての母が、何を思ってこの図式を作り上げたか、それは誰も知らない。 けれど確かなこと。 「僕たちは、混沌に還ることを望んでいる………。」 暗い廊下を歩きながら、ゼロスは感情のこもらぬ声で、つぶやいた。 獣王の住まう群狼の島。そこに建てられた主の城は、どこか陰鬱な闇を抱えている。 日の射すところ、射さぬところ。 そこには明確な線が引かれ、獣王の気分によって、彼女の私室は変わる。 心が求めるのは闇。金色の闇。 そして紅。血よりも紅き、深き紅。 本能的な郷愁心と、絶対的な服従心が、魔族の心を支配する。 刻み込まれているのは、それだけ。 それだけ、の筈……だった。だが。 「不純物……不必要に混ざり込んだ異物のようなものでしょうかねぇ……?」 一心に滅びを願うはずの心。一途に混沌に還る日を夢見続けるはずの、心。 いつか必ず訪れる、来るべき未来へまっすぐのびた道が、歪みを抱えたような。 ―――ゼロス。 ふとかけられた呼びかけに、彼は心持ちうつむいていた顔を上げ、その場から空間を渡った。 気配のみをたどって、主の元へと向かった彼は、精神世界面から出た瞬間、思わず戸惑った。 闇。濃密な質感を持った闇の気配。己に最も近い主が持つ、それゆえ、もっとも慣れている筈のその闇の深さと冷たさ。 なぜか馴染みのないもののように感じられた。 まるで、拒絶されたかのように。 「どうした……ゼロス?」 淡々とした声に、ゼロスははっと我に返った。 「このまえ渡した仕事――首尾はどうだった。」 常に変わらぬ獣王の声音。彼は努めていつも通りにと気を遣いつつ、平坦な口調で答える。 「因子を。因子を撒いておきました。」 「―――因子。」 「混ざり込んだ因子こそ、根底から存在を崩壊せしめることが出来ますので。下手な介入より、ずっと波紋も大きいかと。手間もありませんし。」 「合理的だな。」 ふっと笑む気配。とりあえず不興は買っていないと、ゼロスはほっとした。 今回彼が得た、仕事を片づけるための材料。昏き闇を飼っていた人間――笑えるほどに容易く契約は結ばれた。 いずれ、魔族にとって害になる存在を持った街は滅びるだろう。 「―――ゼロス。」 不意の呼びかけに、ゼロスの背中にぞくり、と悪寒が走った―――否。 彼に、持つべき身体はない。悪寒を感じたのは、彼の心、それ自身。 無関心とも、不快ともつかぬ冷ややかな声で、獣王は言う。 「どうした。……お前。」 視線が己に据えられて、ゼロスはじり、と圧倒されるものを感じる。 かまわず主は続けた。 「滅びの匂いがする。」 何を言うのかと思った。 滅びを望む魔族。混沌に還る日を夢見る魔族。 その身は闇をまとい……滅びをまとっているというのに。 何を今更。 主の言葉が何を意味するのか、ゼロスはじっと次に発せられる言葉を待った。 「危ういぞ……不安定だ。歪みが見える。」 ゼロスはどう反応すればいいか、迷った。 「なにか――不手際でも。」 「違う。」 即座に彼の言葉を退けて、獣王は彼を見つめる。 「何があった。お前からは――魔族以外の匂いがする。」 翳ったように暗い灰緑の瞳が、何も含まない冷えた光を、さえざえと放っていた。 その無に近い眼差しに、ゼロスは動揺する。 ゼロスは魔族だ。それ以外には成り得ない。魔族ではないゼロスなど、決してあり得ない。 そうでなければならない。 「我らが望みは、世界と共に混沌に還ること。そのためだけに世界は在り、我らが在り、全てが在る。それを解さぬものの代わりに、我らが滅ぼすのだ。――役目を忘れるな。望みを忘れるな。」 存在の根底に関わる言葉を向ける獣王。 主に言われれば、その言葉は単なる言葉に終わらない。ゼロスは己の存在について、考えなおさねばならない。獣王の今の言葉は、疑うことを命じたという意味につながる。 それは、己の心の在りようだけを拠り所にする魔族にとって、常に危険な行為だ。 「誤った望みは、おまえに歪みを与える。そのままで許すわけにはいかない。いいか。」 これだけの言葉を口にするのは、獣王にしてめずらしい。 感情だけをぬぐい去った声音で、忠告とも警告ともつかぬ事を言う。瞳の灰緑は暗さと光を増して強い。 「おまえからは……滅びの匂いがする。」 それきり言葉を切って、獣王はゼロスから視線を外した。 無言になった主に、用件が終わったことを悟り、ゼロスは御前から姿を消した。 *** 滅びの匂いがする、と。 それはある意味正しいのだと、ゼロスは思う。 彼は自覚している。現在、自分はこの世界にあった今までで、最も己の滅びを近くに感じている。 そして、ゼロスが得ようとしている滅びを、主は好まないのだと。 魔族の滅びとは、世界を混沌に還すという、望みの成就に付随するものなのだから。 そしてゼロスの得る滅びとは、まったく魔族と違う望みに付随するものなのだ。 数え切れぬほどの星霜を越えてきて、初めて彼は覚えたから。 世界に対するものと違う、まったく違う、執着を。 もっと強く、理屈を跳ね返す、いっそ不条理な執着。 ――――心を惹きつけてやまない存在に対する、独占欲―――― 「さすがに悟られましたか……。」 しっかりと釘を差された。 私が許さないと。世界の滅び以外を求めるなと。 「けれど、獣王様。」 主の厳然としたその意志を知りつつも、ゼロスは揺らがない。望みは変わらない。 なぜなら、彼は既に選んでいる。 魔族の性に反する望み。それゆえに、いずれ魔族たる己を滅ぼすであろう望み。 それでも。 「―――もう、遅いんですよ……。」 口元にはいつもの笑みが刻まれていた。 ****** 魔族にとって、全てに先立つ望みは世界を滅ぼすことです。 その望みを持ってこそ、魔族は魔族として、存在しているのでしょう。 人や動物などが混じっているならともかく、純魔族は間違いなく、滅びを望むことを前提として存在している。ならば、そんな魔族が、その望みよりも優先する望みを抱いたら、その先にあるのは、世界ではなく自分の滅びだろうな、と……。 そういう考えで書いたものでした。私見ばりばりですわね。 ここまで読んで下さったあなたに、心からの感謝を。 それでは失礼をば――― |
17331 | きゃああああ♪ | ねじばな E-mail | 2001/10/1 22:56:22 |
記事番号17315へのコメント こんにちはっ! 半年くらい前から出没しはじめたねじばなというものです。はじめまして。 過去ログとか著者別とかで貴方様の作品よんでるんですけれども・・・ツボ。 もをさいこーですわ♪ ゼロス様出てくるし♪ あ、そうそう・・・・千と千尋見て思ったんですが・・・・ハクがゼロスに見えてしまうのは私だけ? ゼロス意外にもあんな髪型してる奴は始めてですわ。 楽しみにしてますから♪また書いて下さいね(はぁと) (よければ私のもみてくださいな。ゼロリナではないんですが。) ゼロリナが好きなのにかけないという悲しい性格のねじばなでした。 それではっ! |
17412 | まあああああ♪ | 庵 瑠嬌 | 2001/10/6 00:09:58 |
記事番号17331へのコメント こんにちは。はじめまして。コメントありがとうございます♪ > こんにちはっ! > > 半年くらい前から出没しはじめたねじばなというものです。はじめまして。 > > 過去ログとか著者別とかで貴方様の作品よんでるんですけれども・・・ツボ。 ! あな、嬉し。 著者別に、書いた順ごとに入れなかった為に、上から読んでいくと、文体やら話のタイプがえらくばらばらで、少し恥ずかしくもあるのですが。 それでも、時の流れに埋もれし私の話に目を留めていて下さっていたとは光栄ですわ! > > もをさいこーですわ♪ > ゼロス様出てくるし♪ リナさんが出ていないのですが。(苦笑)それでゼロリナと銘打ったのは、あまりに蛮勇が過ぎてましたね……。 なにぶん、一番書きたかったのが、ゼラス様&ゼロスさんの主従でしたので。 ねじばなさんは、ゼロスさんがお好きですのね。 わたくしのゼロスさんをお気に召して下さったようで幸いです♪ > あ、そうそう・・・・千と千尋見て思ったんですが・・・・ハクがゼロスに見えてしまうのは私だけ? > ゼロス意外にもあんな髪型してる奴は始めてですわ。 ああ……至る所で、ちらほらとわたくしも耳に致しますその意見。 確かに、あまりおかっぱ頭の男性キャラクターというのは見かけません。 目も何となく似てますよね。細くて。 ―――中身は全然違いますが。(アタリマエ・笑) > 楽しみにしてますから♪また書いて下さいね(はぁと) > (よければ私のもみてくださいな。ゼロリナではないんですが。) 最近、オリジナルばかり書いてパロディはご無沙汰していたのですが、久しぶりに手を出すととても懐かしく楽しかったです。 不意にまた、何かネタが降ってきたら、投稿させていただくつもりです。 その時に御覧になって下されば、またとない喜びというものですわ。心密かに期待などしてしまったり(殴) ねじばなさんのお話の方は、過去ログまで戻って、これから読ませていただこうと思います♪ 長そうなので楽しみ(^^) > ゼロリナが好きなのにかけないという悲しい性格のねじばなでした。 > > それではっ! コメントありがとうございました。 また、投稿致しましたときは、何かお言葉を頂ければ幸いです。 それでは失礼をば。 |
17497 | 素敵すてきステキです〜っ!! | 高砂時緒 E-mail | 2001/10/11 23:45:15 |
記事番号17315へのコメント どうもこんにちは、高砂時緒と申します。 以前から度々庵さんのお話を拝見して、その都度その文章の素晴らしさに暴走しておりました。 そしてまたこうやって庵さんのゼロリナが読めるだなんて……(至福) それでは、ヲトメゴコロをときめかせつつ感想なのです! >「因子を。因子を撒いておきました。」 >「―――因子。」 >「混ざり込んだ因子こそ、根底から存在を崩壊せしめることが出来ますので。下手な介入より、ずっと波紋も大きいかと。手間もありませんし。」 魔族なゼロスさん大活躍★ 庵さんの書くゼロスさんって凶悪に頭が切れるので、いつも惚れ惚れしてしまいます。 > もっと強く、理屈を跳ね返す、いっそ不条理な執着。 > ――――心を惹きつけてやまない存在に対する、独占欲―――― それはもう、相手が相手ですからっ。 理屈も不条理さもどこかにすっとばす勢いで惹かれても無理はない、と( ̄ー ̄)v > 魔族の性に反する望み。それゆえに、いずれ魔族たる己を滅ぼすであろう望み。 > それでも。 魔族の性だとかそういったものよりもリナちゃんへの愛情を選んでいる割に、自ら魔族であることを捨てたわけじゃない辺り、妙にふっきれてる気が。 こうやって答えを出すまでに彼がどれだけ苦悩したのかが気になるところです。 ………はふぅ…☆(感嘆の溜息) 最近パソコンに触れないくらい危機的状況にあったので、正直読むまでは感想を書こうかどうか迷ってたのです。 でも。ええ、例え前期期末テスト真っ最中で、尚且つ明日の教科が大嫌いな古典であっても! 思わずコメント投稿ボタン押しちゃうくらい素敵な小説だったのです〜っ。 それでは相も変わらず意味不明&暴走した言葉の羅列となってしまいましたが、これにて感想とさせていただきます(^_^;) またここで庵さんの小説が読めることを祈りつつ。(欲張り…/汗) 季節の変わり目なこの時期、お体には十分お気をつけくださいませ。 |